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47例目の脳死判定 千葉・帝京大市原病院  indexへ

 帝京大付属市原病院(千葉県市原市)に、くも膜下出血で入院中の40代女性が16日、臓器移植法に基づく脳死と判定された。同日夜から摘出が始まる予定。97年の法施行後、47例目の脳死判定で、臓器提供は46例目。
 日本臓器移植ネットワークによると、心臓が国立循環器病センター(大阪府吹田市)で50代男性、肺が大阪大で10代女性、膵臓(すいぞう)と片方の腎臓は九州大で40代男性、もう片方の腎臓は千葉大で40代男性、小腸が東北大で20代男性にそれぞれ移植される予定。肝臓は医学的理由により断念した。

遺族「もう医者やってほしくない」 慈恵医大3医師有罪  indexへ

 手術後に再び目を覚ますことがなかった夫の無念を胸に、東京地裁の傍聴席にいた妻は15日午前、慈恵医大青戸病院の医師3人への有罪判決に聴き入った。同医大では、事件を教訓に再発防止策への取り組みが本格化した。医療事故の被害者団体など様々な関係者が、その「死」の意味を問い直そうとしている。
 この日、法廷には男性の遺族が傍聴に訪れた。
 午前10時開廷。傍聴席最前列の妻の前を、入廷した3被告が一礼しながら通り過ぎる。妻は目を合わさず、うつむいたままやり過ごした。「主文――」。3人に対する有罪の言い渡しを、そのままうつむいて聞いた。
 妻の脳裏には、手術の朝の情景がよみがえる。
 病院に着くと、夫は病室前の廊下で体操をしていた。夫は8カ月前に60歳になったが、まだ営業の仕事を続けるつもりでいた。腹腔(ふくくう)鏡手術は体への負担が少ないと聞いており、翌日にはリハビリを始める予定だった。
 「おはよう」「来てくれたのか」。手術のため手首にはめたバンドには夫の名が書かれていた。「お見舞いで花やひざかけをもらったよ」
 その5分間が、最後の時間になった。
 半日に及ぶ手術が終わり、医師は「麻酔から覚めるまで1、2時間待って下さい」と言った。だが、たくさんのチューブにつながれた夫が、再び目を覚ますことはなかった。
 病室には、夫が持ち込んだ年賀状300枚とパソコンが残されていた。 判決後、押し黙ったままの妻の隣で、男性の長女は涙をぬぐいながら、「父は全幅の信頼を寄せて医師に任せた。このような結果を聞いても満足するとは思えません。(3人は)もう医者をやってほしくない」と話す。また、長女の夫も「お父さんは帰らないのに、被告の3人は明日から普通に生活していける。悔しいというか、寂しいというのが正直な気持ちだ」と語った。
 患者側から見て、事件は何を教訓として残したのか。医療事故の被害者らでつくる「医療情報の公開・開示を求める市民の会」(大阪市)の山中裕子事務局長は「病院や医師がどんな水準にあるのか、患者が客観的に知ることができるシステムが必要だ」と強調する。
 青戸病院事件は、同種手術の執刀経験がない医師たちによって起きた。「手術について医師の説明を一方的に聞くのではなく、患者が主体的に判断することが大事。そのためには情報が必要です」と山中さんは話す。
 山中さんの実父は膵臓(すいぞう)がん手術を受けて3週間後に亡くなった。病院から、手術実績を教えられたのは死亡の後だった。「後から説明されても遅い」。そんな思いを強くしている。

分娩施設わずか3千カ所、産科医は8千人に減 学会調査  indexへ

  日本全国で実際に出産できる病院・診療所は3063カ所、赤ちゃんを取り上げる医師は7985人に急減している――。14日、日本産科婦人科学会(武谷雄二理事長、1万6000人)の調べで、お産現場の危機的な実態が初めて明らかになった。産科・産婦人科を掲げる施設・医師を調べる従来の厚生労働省調査と比べ、施設数で半分、医師数で4分の3にすぎない。過酷な勤務や訴訟の増加などから、お産をやめて、婦人科や不妊治療専門に衣替えする施設・医師が増加しているためだ。同省の産科医療対策に見直しを迫る内容となっている。
 厚労省調査では、02年に産婦人科・産科を掲げていた医療施設は計6398カ所、04年に主な診療科を産婦人科・産科としていた医師は1万594人。だが、この数字が現場の実感とかけ離れているとして、同学会が昨年11月、実態調査を各都道府県の地方部会長に呼びかけた。
 新生児が受ける先天性代謝異常検査の検体を提出している医療施設名などから、同12月1日現在で分娩(ぶんべん)を扱っていると判断できる施設を割り出した。14日までに全都道府県のうち東京都内4区(中央、文京、豊島、板橋)を除くすべてから回答があった。4区分は、日本産婦人科医会の会員登録などを手がかりに推定値を計上した。
 それによると、分娩取り扱い施設数は病院(20床以上)が1280カ所、診療所(19床以下)が1783カ所。02年の同省調査と比べると、病院が470カ所、診療所が2865カ所少ない。
 常勤医師数は1施設あたり、平均2.45人。医局員数が多い大学病院(110カ所)を除くと平均1.74人だった。
 都道府県別で、医師数2人以下の病院が全病院に占める割合が最も高かったのは福島県の71%。岩手、新潟、石川、福井、滋賀、山口も60%以上だった。医師1人の割合が最も高いのは石川県の40%だった。
 同省は昨年、医師不足に悩む産科医療の安全性確保のために、人口30万〜100万人の産科医療圏の拠点病院に5人以上の産科医を置く「集約化」案を打ち出している。だが、「5人以上」を満たしている病院は334カ所と全体の26%。学会が目指す「10人以上」を満たしているのは全国98カ所しかない。
 データをまとめた筑波大学の吉川裕之教授(産婦人科)は「これまでは、日本の分娩が可能な施設と医師数は約5000施設、1万1000人と推計されてきたが、実働は予想外の少なさだった。昨年12月以降に分娩を取りやめた病院も相次いでおり、実数はさらに減るだろう。安全な産科医療を維持するには、大変厳しい状況だ」とみる。
 各都道府県は今年度末をめどに独自の集約化計画の策定を迫られている。同省母子保健課は「集約後の施設あたりの産科医数は、地域の実情に合わせ、3人以上とするなど、ハードルを下げざるを得ないだろう。集約化だけでなく、待遇改善など、産科医数増のための対策が必要だ」と話している。

医療制度改革法が成立 高齢者の負担増、入院日数削減  indexへ

 高齢者を中心とする患者の窓口負担増や、新たな高齢者医療制度の創設を柱とする医療制度改革関連法は、14日午前の参院本会議で自民、公明の与党などの賛成多数で可決、成立した。患者負担引き上げに加え、長期入院患者の療養病床削減、生活習慣病予防など、高齢化で増え続ける医療費の抑制を強く打ち出した内容で、今年10月から順次実施される。
身近な医療 こう変わる
 10月には患者の負担増が始まる。70歳以上で一定所得以上の人の窓口負担は現在の2割から、働く世代と同じ3割に。療養病床に入院しているお年寄りの食費・居住費が全額自己負担になるほか、70歳未満の人も含め医療費の自己負担の月額上限が引き上げられる。
 75歳以上の全員が加入する高齢者医療制度は08年4月スタート。これに合わせて一般的な所得の70〜74歳の窓口負担が1割から2割に上がる。75歳以上は1割のままだが、全国平均で月6200円程度と見込まれる新保険制度の保険料を払わなければならなくなる。
 現在、全国に約38万床ある療養病床は12年度初めまでに15万床に削減。減らす23万床分は老人保健施設や有料老人ホーム、在宅療養などに移行させる。生活習慣病予防は中長期的な抑制策の軸で、40歳以上の全員を対象にした健康診断・保健指導を健康保険組合などの保険者に義務づける。
 地方に抑制の責任を担わせるのも特徴。都道府県ごとに平均入院日数の短縮など数値目標を盛り込んだ医療費適正化計画を作らせる。中小企業の会社員ら約3600万人が加入する政府管掌健康保険の運営は、国から公法人の「全国健康保険協会」に移管。都道府県の支部ごとに保険料率を決めるようになる。
 厚生労働省はこれらの施策で2025年の医療給付費を、現行のままの場合の56兆円から48兆円程度に抑えられるとしている。
 国会審議では、野党側が患者負担増について「高齢者の家計は大きな打撃を受ける。行き過ぎた受診抑制を招く」と批判。療養病床削減には与党からも、行き場のない高齢者が出かねないと心配する声があがった。
 このため参院厚生労働委員会での採決では、低所得者への配慮や、療養病床再編に対する支援策の充実などを盛り込んだ付帯決議がつけられたが、どこまで実効性があるかは未知数だ。

ビールに前立腺がん予防効果 1日17本飲めば 米大学  indexへ

 米オレゴン州立大学の研究チームは、ビールの風味や苦味を生み出す原料ホップに含まれる化学物質「キサントフモール」に、前立腺がんの予防効果があるとの研究成果を発表した。
 同チームは約10年前にキサントフモールの研究に先鞭(せんべん)をつけ、健康にもたらす効果を調べてきた。これまでに活性酸素の抑制作用などを確認したが、最近の実験で、前立腺がんにつながる悪性腫瘍(しゅよう)の成長を抑える公算が大きいことも分かった。
 ただ、研究チームの1人、エミリー・ホー助教授は「(実験で効果があったのと)同量のキサントフモールを摂取するには、1日17本以上のビールを飲む必要がある」と指摘。アルコール依存症や肝硬変といった副作用を考えると、ビールを通じた摂取は非現実的だが、キサントフモールを抽出した錠剤や効果を強化したビールが開発される可能性はあるという。(時事)

夫の半数が出産立ち会い 産後は実家頼み 厚労省調査  indexへ

 夫の2人に1人が出産に立ち会っているが、逆に産後の手伝いは減り、実家の親頼り――。そんな傾向が、厚生労働省研究班(主任研究者=島田三恵子・大阪大教授)の出産に関する全国調査でわかった。仕事を続けながら出産する女性は増えており、子育て支援には夫の就業のあり方の見直しも必要であることが、改めて浮かび上がった。
 調査は、快適な妊娠・出産のための指針作りの一環として実施。05年9〜12月に全国47都道府県の454施設(大学病院、一般病院、診療所、助産所)で出産した、産後1カ月の母親3852人が回答した。平均30.5歳で、初めての出産は50.3%だった。
 分娩(ぶんべん)室で、医療関係者以外で出産に立ち会った人(複数回答)は、夫が52.6%。99年の前回調査の36.9%から15.7ポイント増えた。親も9.8%から12.1%に増加。だれも立ち会わなかったのは40.8%で16.5ポイント減った。
 「父親としての実感が深まる」「妊婦が安心できる」などを理由に希望する人が増え、また、立ち会いを受け入れる施設が増えたことなどが、背景にあるとみられる。
 退院先は、実家が56.9%、自宅が38.8%で前回とほとんど変わらなかったが、産後1カ月間に育児や家事を主に手伝ってくれたのは、親が60.2%から76.0%に増えたのに対し、夫は35.4%から18.0%に半減。親に頼る「孫育て」の現状が浮き彫りになった。
 仕事を持つ女性は全体の30.6%で、前回の24.5%より増加。妊娠・出産で退職した女性も29.3%と前回の25.9%より増えた。
 希望する子育てサービス(26項目中5項目を選択)は、(1)子どもがいる家庭の優遇税制、保育料の軽減などの経済的支援(69.0%)(2)夜間診療の小児科医(54.2%)(3)働いていなくても利用できる一時預かり保育(37.0%)の順に多かった。

変形性膝関節症、50歳以上女性4分の3発症 東大調査  indexへ

 膝(ひざ)の関節がすり減る変形性膝関節症の人の割合(有病率)は、50歳以上の女性で75%に及ぶとみられることが、東京大「22世紀医療センター」の調査で示された。男性でも54%にのぼり、国内で計3000万人以上が患っていると推定できた。研究グループは今後、股関節なども含めた関節症の発症や進行のメカニズム解明を目指す。
 同センター関節疾患総合研究講座の吉村典子・客員助教授らは昨春以降、東京都板橋区と和歌山県日高川町の住民約2200人に協力を得て、関節の状態をX線撮影で調べた。
 その結果、50歳以上では女性の74.6%、男性の53.5%に関節の軟骨のすり減りなどが見つかり、変形性膝関節症と診断できた。50歳以上の国民に当てはめると、女性1840万人、男性1240万人が該当する計算になる。
 変形性膝関節症は、痛みがひどいと人工関節が必要になることもある。高齢者の生活の質を低下させる病気だが、発生率や有病率はこれまでよくわかっていなかった。
 グループは、今回調査した2カ所に別の地域も加えた計5000人について生活習慣などを調べ、発症とのかかわりをみていく。すでに発症した患者5000人も追跡し、症状の変化についても調べる。

がん患者への告知 医師に学会が伝授  indexへ

 患者に「がん」と告げる時、医師はどんな態度で、どのような言葉遣いをするのが適切か。がん患者の精神的ケアを担う医療者でつくる日本サイコオンコロジー学会は、医師のコミュニケーション能力を養う講習会を今年から本格的に始めた。患者には一生の一大事なのに、医師の態度によっては不安が募るなどして、治療への影響が生じることもある。学会は「話し方も治療の一環だ」と重要さを強調する。
 講習会は、市民に患者役になってもらい、模擬診療する体験学習方式。適宜、参加者同士が評価しながら考える。年に1回程度、参加者を公募して開く。秋には、指導者を育てる研修を開く予定だ。
 国立がんセンター東病院(千葉県柏市)で今春開かれた講習会には、東京や大阪などから医師8人が参加した。進行役は学会代表世話人の内富庸介・同病院精神腫瘍(しゅよう)学開発部長らが務めた。
 医師「腸にできものがありましたので一部を取って詳しく調べました。結果は、悪いもの、がんです」
 患者「覚悟はしていたんですが……。最悪の結果になってしまった」
 医師「治療は」
 進行役「ちょっと、待って。医師は、すぐに治療の話を切り出そうとする。患者は動揺が治まってからにしてほしいと思う。気持ちを受け止めなければ、信頼関係は築けない」
 学会は4年前に米国のプログラムで講習したことがあるが、内富さんのもとで働く臨床心理士の藤森麻衣子さんらが約600人の患者調査を基に、日本の患者に合ったプログラムを作った。
 その患者調査では、患者の質問に答える▽わかりやすく伝える▽主治医として責任を持つ――などは95%以上が望んでいた。一方、余命を伝えることや口調などについては、患者によって意向が分かれた。「淡々と話すと、大変な病気なのに冷たいと思う人がいる。だからといって感情を込めて、深刻そうに話すと、もうだめなんだと感じる人もいる」と内富さん。
 一人前の医師を育てる過程の中で従来は、患者といかにコミュニケーションを図るか、ほとんど教えられてこなかった。医師の心ないひと言が患者の心を傷つけることも少なくなく、医療不信の一因になっているとも指摘されていた。
 参加した大学病院の医師は「だれでも悪い知らせは聞きたくない。でも伝えなければ診療は始まらない。いかに伝えるか。患者さんの気持ちを受け止め、共感することの大切さを改めて考えた」と語っている。

骨粗鬆症薬「エビスタ」に乳がん予防効果 米研究所  indexへ

 日本でも発売されている骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療薬「塩酸ラロキシフェン」(商品名エビスタ)に、乳がんの発症予防効果が認められた。米国立がん研究所の大規模臨床研究で分かり、米臨床腫瘍(しゅよう)学会で発表された。女性ホルモンを調整することで予防効果を発揮しているらしい。
 家族の病歴、閉経や初産の年齢などから、5年以内に乳がんを発症する危険性が高いと予想された女性約2万人を2グループに分け、一方にはラロキシフェンを、他方には既存の乳がん治療・予防薬「クエン酸タモキシフェン」(商品名ノルバデックス)を、約5年間服用してもらい、効果を比べた。
 その結果、ラロキシフェンを飲んだ人で悪性の浸潤性乳がんを発症した割合は、服薬なしの一般的な発症割合に比べ半減し、タモキシフェンと同等の予防効果が確認された。
 副作用で増えるとされる子宮がんの発症割合はラロキシフェンの方がタモキシフェンより36%低く、静脈血栓塞栓(そくせん)症の発症割合も3割ほど低かった。
 ただ、症状が比較的軽い非浸潤性乳がんの予防効果では、タモキシフェンを下回った。
 二つの薬はともに選択的エストロゲン調整剤と呼ばれ、体内の部位によって女性ホルモンと同じ働きをしたり、逆に働きを抑えたりする。乳房では女性ホルモンの働きを抑える。
 米国では、乳がんの発症リスクが高い女性に対し、薬で発症を予防する取り組みが進んでいる。研究チームは「薬の選択肢が増え、浸潤性乳がんの予防にとって大きな前進になる」と強調する。
 東京女子医大の太田博明教授(産婦人科)は「ラロキシフェンの乳がん予防効果が、初めて直接的に確認された。従来薬より副作用が少なく、骨粗鬆症にも効くので、今後、女性の健康に幅広く寄与すると期待される」と言っている。

闘病記700冊データベース化 ネットで無料検索  indexへ

 がんや脳疾患などの患者やその家族の体験記をデータベース化した「闘病記ライブラリー」(国立情報学研究所・高野明彦教授)が12日からインターネットによる無料検索サービスを始める。700冊を57病名に分類し、病名ごとにネット上の本棚で表紙や概略を見て検索できる。高野教授は「今後は各地の図書館の横断検索とのリンクを考えていきたい」としている。
 同ライブラリーは、図書館司書や医療従事者が選書した700冊でスタート。今後も増やしていく。「がん」「脳の病気」「心の病気」など12ジャンルに大分類されたトップページをまず選択すると、「乳がん」「脳卒中」など病名に小分類された本棚が表れる。本の背表紙をクリックすると、著者、出版社、目次などが画面上に出る。また医療従事者らがつくった概略や解説もあり、著者の性別や年齢、生死などの情報が得られる。古書店が運営するウェブや治療法、病院名を紹介する医療情報のホームページと違い、より詳細で自分に近い「生活情報」を探すことができる。
 作製のきっかけは、図書館などに闘病記専用棚の設置運動をしている「健康情報棚プロジェクト」の石井保志代表が、高野教授に働きかけたことだ。石井さんによると、闘病記は、患者が病気になったときに、医学専門書と同時に参考にすることが多い。しかし、書名では何の疾病か分からない本もあり、図書館の中には文学やノンフィクションの棚にばらばらに並べられているため、探しづらいという。
 同ライブラリーは、http://toubyoki.info/

帝王切開20年で倍増 背景に医師不足や妊婦の意識変化  indexへ

 出産時に、帝王切開手術で赤ちゃんを取り上げられる割合が、約20年で倍増している。高齢出産が増えているほかにも、医師不足や医療ミスを避けようとする医師の心理など、社会的事情の変化が背景にある、との指摘もある。(朴琴順)
 厚生労働省統計によると、分娩(ぶんべん)における帝王切開の割合は84年に7.3%だったが、90年には10.0%と年々高まり、02年には15%を突破した=。産科医院と病院の別でみると、医院では11.8%なのに対し、病院は17.9%にのぼる。
 帝王切開は、難産や逆子、胎児の心拍が落ちた場合などに行われる。
 リスクの高い高齢出産の増加が、帝王切開手術増加の背景にあるといわれる。妊婦が35歳以上の分娩は、90年には8.6%だったが、04年には15.2%まで上がった。
 だがほかにも、医師不足や医療過誤の回避、妊婦の意識変化といった社会的要因もあるとする専門家は少なくない。
 国立病院機構名古屋医療センター(名古屋市中区)婦人科医長の井上孝実医師が、帝王切開の増加に気づいたのは10年ほど前。名古屋大付属病院とその関連病院計約40施設の年間1万5千〜1万9千件の分娩を調べると、91年に12%だった帝王切開手術は01年に20%、04年には24%に上昇していた。
 同僚医師らに聞くと、以前ならまず自然分娩を試みていた逆子のケースなどで、最初から手術予定を組む例が増えた。人手不足の中で、医療事故を避けたいという医師側の心理もある、とみる。05年の最高裁統計によると、医療訴訟の約1割を産婦人科分野で占める。
 予定手術なら30分から1時間程度で、昔より安全性も高い。また妊婦側も「陣痛が怖い」「双子で不安」などと手術を希望する人が多くなっているという。
 「医師にとって、帝王切開は精神的にも、肉体的にも楽。少しでも分娩リスクがあって、妊婦が望めば、医師から『経膣(けいちつ)分娩でがんばってみましょう』とは言わなくなっています」と井上医師。
 不必要な帝王切開が増えている、と感じているのは、母子愛育会総合母子保健センター愛育病院(東京都港区)の中林正雄院長も同じだ。勤務医らの激務が、安易な手術選択につながっている、とみる。
 だが、安全になったとはいえ帝王切開は外科手術で、危険性もある。「そのリスクも知って欲しい」と中林院長。
 母親らにも、安易な帝王切開を戒める声がある。千葉県習志野市の主婦、細田恭子さん(41)はインターネット上に帝王切開を経験した母親たちが話し合う掲示板を開設。自身も3人の娘を帝王切開で産んだ。術後3日は傷が痛んで歩けなかった。傷跡がケロイド状に残る恐れもある。
 精神的な負担もある。「楽をして産んだという偏見はまだ根強く、母乳をすぐに与えられなかったという罪悪感を抱く人もいる。最も幸せなはずの出産後に悩む母親が多いことを、医師は知って欲しい」

93歳の女性、心臓手術成功 国内最高齢 東大病院  indexへ

 東大病院(東京都文京区)は9日、心筋梗塞(しんきんこうそく)を起こした93歳の女性の心臓の壁に開いた穴をふさぐ手術に成功したと発表した。同様の手術を受けた患者としては、国内で最高齢だという。
 女性は先月5日、激しい胸痛を訴え、翌日、心臓の右心室と左心室を隔てる壁に穴が開く「心室中隔穿孔(せんこう)」を起こした。他の臓器の機能は正常で「高齢だが、手術に耐えられる」と判断した同病院は、緊急手術に踏み切った。
 心室中隔穿孔は、急性心筋梗塞の1〜2%で起きる。手術は難しく、成功率は5割程度とされている。

胃がん リンパ節広く取る手術 「標準手術と差なし」  indexへ

 進行胃がんの治療で、胃の周囲のリンパ節を広く切り取る「拡大手術」と、一定範囲の切除にとどめる標準的な手術(D2郭清)では、治療効果にほとんど差がないという調査結果を、日本の国立がんセンターなどがまとめた。アトランタで6日まで開かれた米臨床腫瘍(しゅよう)学会で発表した。
 報告した同センター中央病院の笹子三津留・副院長は「リンパ節を多くとったことで、患者の状態を悪化させている可能性もあるのではないか。標準治療はD2郭清と考えるべきだ」と話した。
 同センター中央病院など全国の24医療機関が共同で調べた。がんの進行度(4段階)が2〜4の進行胃がん患者で、95〜01年に拡大手術をした260人と、D2郭清をした263人について、治療効果を比べた。その結果、3年生存率はともに76%。5年生存率は拡大手術が70%、標準的な手術は69%で、ほとんど差はなく、「延命上の利点はない」(笹子副院長)としている。
 日本胃癌(がん)学会の治療ガイドラインは、進行度2〜3の患者については基本的に「胃の3分の2以上の切除とD2郭清」を標準治療とし、拡大手術の実施は、がんの転移が進んだ進行度4の患者などに限っている。

医療ミスで妊婦が死亡 奈良の市立病院  indexへ

 奈良県大和高田市の同市立病院(松村忠史院長)に入院中の妊婦が出産直後に死亡する事故があり、県警が処置に判断ミスがあったとして、産婦人科の30代の男性医師を業務上過失致死の疑いで奈良地検に書類送検していたことがわかった。
 病院側はこのケースについて医療過誤とは認めていないが、医師の負担が限界に達し、医療事故を招きかねないとして、7日から分娩(ぶんべん)予約を制限することを決めた。

東京都内、HIV感染最多 昨年417人  indexへ

 1日1.14人。東京都内でエイズがじわじわと増えている。昨年1年間にエイズウイルス(HIV)に感染した人と、エイズを発症した患者の合計数は、過去最多の417人。15年前に比べて8倍に増えた。一方、感染の有無を調べる検査の受診者数は、伸び悩みぎみ。危機感を抱く都は、今年から始まった「検査普及週間」(1〜7日)に合わせ、啓発に力を入れる。
 「感染者は、実際には報告数の4〜5倍はいる。エイズ患者が増え続けているのは先進国では日本だけ。爆発的な流行につながるおそれがある」
 新宿駅南口にある都南新宿検査・相談室で、10年近く検査に携わる医師の山口剛氏(73)は指摘する。
 都内で検査を受け、感染や発症が明らかになった人は年々増え続け、90年の51人から昨年は417人になった。すでに感染が分かっている人も加えると計3938人で、全国の感染者の累計約1万1000人の4割になる。
 一方、検査そのものの受診者数は、社会問題化した92年に3万1千人以上だったのが、昨年は2万2千人。休日に検査をしたり、即日で結果が分かる検査も実施したりするなど様々な工夫が奏功し、ここ数年、増加傾向にはある。ただ、「手は尽くし、頭打ちになりつつある」と都の担当者は懸念する。
 HIVの増殖を抑える薬物治療の進歩で、エイズは致死的な病気ではなくなった。それだけに早期発見が重要だが、山口氏は「安心してしまっているのか、関心は薄れている」と嘆く。
 昨年、新たに感染が分かった人の9割は日本人男性。6割が外国人だった92年から状況は大きく変わった。感染源は同性間の性的接触が目立つ。
 年齢別では20代、30代が72%を占め、HIV感染の危険性が高まるクラミジアなどの性感染症の若者が増えていることも懸念材料だ。
 一方、全国では昨年1年間にHIV感染832人、エイズ患者367人が新たに報告された。合わせて過去最高の1199人となり、2年連続で千人の大台を超えた。

「脳死」の乳児、判定6日後呼吸戻る 近畿大病院  indexへ

 近畿大病院救命救急センター(大阪府大阪狭山市)で、厚生労働省研究班の小児脳死判定基準で脳死と診断された5カ月の男児が、診断6日後に自発呼吸が一時的に戻り、その後4年3カ月間生存していたことがわかった。回復力の強い乳児では、正確な脳死判定が難しく、「現在の基準では不十分」との声も出ていた。この基準見直しの動きや、子どもの脳死移植を実現しようと国会に提案された臓器移植法改正案にも影響を与えそうだ。富山市で開催中の日本脳死・脳蘇生学会で3日、発表される。
 同センターの植嶋利文講師によると、男児は98年秋、心肺停止の状態で搬送された。厚労省研究班が98年に作った6歳未満の小児の脳死判定用の仮基準に従い、搬送20日目と24日目に診断を実施。その結果、自発呼吸や脳幹反射など五つの検査項目すべてで反応がなく脳死と診断した。
 しかし、脳死患者では調節能力が失われる血圧や尿量、体温などが安定した状態が続き、30日目ごろからは、一時的に弱い自発呼吸が戻ることもあった。ただ、人工呼吸器をはずせるほどの呼吸は戻らず4年3カ月後に肺炎などで死亡した。
 植嶋講師は「脳の血流検査など、新たな判定項目の追加検討が必要」と指摘している。

がん死者、過去最高の32万6千人 厚労省の人口統計  indexへ

 がんによる死亡が32万5885人と、調査を始めた1899年以来最多にのぼったことが1日、厚生労働省の発表した05年人口動態統計でわかった。死亡総数は108万4012人で、前年より5万5410人の増。3年連続で100万人を超え、戦後では47年に次ぐ多さとなった。同省は高齢者数の増加に加え、インフルエンザの流行が影響したとしている。
 死因で最も多いのはがん(30.1%)で、81年以降の連続1位。昨年より1.7%増えた。心臓病(17万3026人、16.0%)、脳卒中(13万2799人、12.3%)がこれに続き、日本人の三大死因と言われるこの三つで死亡者数の全体の6割近くを占めた。
 4位の肺炎(9.9%)は高齢者を中心に前年より12.2%増え、10万7210人に。昨年初めにインフルエンザが流行したためだという。
 がんを部位別でみると、男性では肺が最も多く、昨年より2.9%増えて4万5187人。続いて多い胃と肝臓は微減だったが、4位の大腸は1.4%増えた。女性で最多の大腸は昨年より2.6%増の1万8679人。2位の胃は微減だったが、3位の肺が5.4%増だった。

1日からHIV検査普及週間 70自治体で検査態勢強化  indexへ

 エイズウイルス(HIV)の感染拡大に歯止めをかけようと、厚生労働省は1日から7日までを「HIV検査普及週間」と定め、全国70自治体でHIV検査をする保健所の受付時間を延長するなど態勢を強化する。
 HIVの検査や相談窓口は現在、113の自治体の保健所や検査室で、平日の昼間を中心に、匿名、無料で受け付けている。普及週間中は、このうち70自治体で夜間や休日も受け付けたり、検査当日に結果が分かる迅速検査を実施したりする。
 各地の検査日時などは、エイズ予防財団のエイズ予防情報ネットで。
 同省によると、05年のHIV感染者と患者の合計は1199人で、前年に続き千人を超え、過去最高を記録。一方、保健所などでの検査件数は92年の約13万5000件をピークに低迷しており、05年は約10万件だった。

過労で脳・心疾患、労災認定330人 過去最多  indexへ

 過労による脳出血や心筋梗塞(こうそく)などで05年度に労災認定を受けた人は330人で、過去最多だったことが31日、厚生労働省のまとめで分かった。このうち過労死者は157人だった。一方、うつ病などで労災認定を受けた人は127人(うち自殺40人)。脳・心疾患は40〜50代、うつ病などは20〜30代に多かった。
 過労死弁護団の川人博弁護士は「景気が回復しても働く側の負荷は和らいでいない。特に若者はサポートもないまま即戦力としての働きを求められ、不適応をおこす例が目立つ」と指摘する。
 脳・心疾患による労災請求は869人で、前年の816人から53人増。認定も294人から36人増えた。業種別では運輸業や建設業で増加していた。認定された人は50代が前年より22人増の143人、40代も17人増の95人で、40、50代が全体の7割を占めた。
 背景には、慢性的な長時間労働があり、発症前の1カ月または半年の平均で残業が月100時間以上だった人が半数を超え、29人は160時間を超えていた。
 一方、うつ病など精神障害による労災請求は年100件単位で増えており、05年度は656件で過去最多。認定された人のうち30代が39人、29歳以下が37人で計6割を占め、特に20代の増加が目立った。職種ではシステムエンジニアや製造工が多かった。
 都道府県別では、脳・心疾患は東京51人、大阪27人、神奈川17人。精神障害は大阪19人、東京12人、福岡12人の順。

アルツハイマー病の原因を血液で検査 試薬キット開発  indexへ

 武田薬品工業の子会社、和光純薬工業(大阪市)は31日、アルツハイマー病の原因物質とされるたんぱく質「ベータアミロイド42」(A●42)の血液中濃度を測定する試薬キットを開発したと発表した。脳脊髄(せきずい)液など脳組織を検体とする試薬キットはこれまでもあったが、同社によると、血液を検体とする試薬キットは世界初という。同社は「血液なら容易に採取でき、アルツハイマー病の治療薬開発にもつながる」と話している。
 アルツハイマー病は、長い年月をかけて記憶障害などを発症する脳の神経変性疾患。発症原因は解明されていないが、脳にA●42が蓄積すると、脳の神経細胞が徐々に損傷されていくと見られている。
 試薬キットは樹脂性のプレート板で、微量でも反応する抗体の開発に成功、血液からでも測定できるようにした。今月から大学や研究機関、製薬メーカー向けに販売していく。

エイズ対策費、4年で4倍に 世界総額、国連報告  indexへ

 国連エイズ計画(UNAIDS)は30日、01年にエイズ撲滅を目指して189カ国が採択した国連エイズ特別総会の政治宣言の達成度をまとめた報告書を発表した。05年の世界のエイズ対策費の年額総計は01年の約4倍の約83億ドルと目標値に達し、貧困国や途上国でも治療薬を受けとる感染者の数が01年から5倍と飛躍的に増えた。しかし母子感染対策や若者のエイズに関する知識の浸透は目標を大きく下回った。
 報告は、31日から国連で始まる再検討会議の基礎資料になる。
 エイズウイルス(HIV)感染者のうち、発症を抑える薬を処方されている人は貧困国・途上国の感染者の20%の130万人になり、01年当時の約5倍に上る。目標とした300万人には及ばないものの、21カ国で目標数値を超えた。
 一方、15〜24歳で感染防止法を正しく認識していたのは男性33%、女性20%にとどまり、目標の90%に達した国はなかった。HIVに感染した妊婦のうち、母子感染を防ぐ治療を受けているのは9%で、目標の80%と大きな隔たりがあった。
 昨年末時点で感染者は3860万人。昨年新たに感染した人は410万人でエイズによる死者は280万人だった。感染は止まっていないが、ピークは90年代末に過ぎたとみられている。
 国別では、エイズの被害が最も深刻なアフリカのケニアやジンバブエで大人の感染率が03年に比べて2ポイント以上改善した一方、アジアでは中国、インドネシアなどで増加傾向がみられる。日本のHIV感染者は1万7000人で、うち9900人が女性。エイズ関連の死者は1400人だった。

BCGより1千倍効く結核新ワクチン 学会で発表へ  indexへ

 国立病院機構近畿中央胸部疾患センター(堺市)と自治医科大のグループが、DNAワクチンと呼ばれる新しいタイプの結核ワクチンを開発、ネズミの実験で有効性を確認した。単独接種でBCGの1000倍、BCGとの併用で1万倍の効果を示した。BCGの効果が見込めない高齢者向けに特に期待される。6月1日から東京で始まる日本呼吸器学会で発表する。
 新ワクチンは、結核菌が持つ特定のたんぱく質と免疫力を高める働きのあるインターロイキンを作る遺伝子(DNA)を注射する。細胞内に取り込まれる工夫があり、強い免疫反応が誘導されるという。
 大人のマウスに新ワクチンとBCGをそれぞれ接種した後、結核菌を感染させ、5週間後の結核菌の数を調べた。新ワクチンを接種したマウスの菌数は、BCG接種のマウスの約1千分の1で、発症を抑えられる程度だった。一方で、あらかじめBCGを接種してから新ワクチンを打つと、菌数は約1万分の1まで抑えられた。今後、サルで効果を確かめ、臨床試験に移る準備をする。
 日本では乳児期のBCG接種を推進しているが、予防効果は10年間程度しか続かず、大人への接種は効果が期待できない、とされている。また、結核は感染しても若くて免疫力のあるうちは発病しないが、年をとって病気などで免疫力が下がると、休眠していた結核菌が活動を再開し、発病する場合が多い。
 世界では毎年900万人が結核にかかり、200万人が死亡。日本でも年間3万人の結核患者が報告され、約6割が60歳以上だ。

ES研究で卵子提供医療機関、コーディネーター義務化へ  indexへ

 人クローン胚(はい)からの胚性幹細胞(ES細胞)づくりには再生医療の実現に向けた期待がかかるが、出発点になる卵子の提供に際して、提供を受ける医療機関は提供者の相談に乗ったり意思を確かめたりするコーディネーター(調整役)の配置を求められることになりそうだ。人クローン胚研究の指針をつくっている文部科学省の作業部会が、方針を固めた。
 人クローン胚は、提供された卵子(未受精卵)の核を抜き、代わりに患者の体細胞の核を移植してつくる。作業部会は、病気の治療で摘出した卵巣からの卵子や、不妊治療で必要がなくなった卵子の無償提供を想定している。医療行為と無関係なボランティアからの卵子提供は将来検討する。
 コーディネーターは提供者と利害関係がないことが大前提で、医師や看護師など医療スタッフによる兼任が考えられている。医学的に十分な知識を持ち、患者の相談に応じながら、提供者の意思に反して手続きが進むことや、提供に向けて何らかの圧力がかかるのを防ぐ役割を担う。30日午前の会合で詳細な条件を詰める。
 研究用の卵子提供をめぐっては、韓国ソウル大チームによるクローンES細胞研究の論文捏造(ねつぞう)の過程で、卵子提供者への金銭支払いがあったことが問題になり、提供の透明性や公正さの確保が課題とされていた。

豊橋市民病院部長らを逮捕 贈収賄容疑で愛知県警  indexへ

 人工透析患者を民間医院に紹介した見返りに現金240万円を受け取ったとして、愛知県警は27日、同県の豊橋市民病院腎臓内科部長の医師、三輪俊彦容疑者(47)=豊橋市牟呂町=を収賄容疑で、同市の「愛知クリニック」院長の医師高井一郎容疑者(47)=名古屋市北区成願寺2丁目=を贈賄の疑いで逮捕した。
 捜査2課と豊橋署などの調べでは、三輪部長は05年4月〜今年3月、自分が担当した人工透析患者を、優先的に高井院長の医院に転院させたことや今後も同様の便宜を図ることへの謝礼として、毎月20万円ずつ、計240万円を院内で受け取った疑い。両容疑者とも容疑を認めているという。
 2人は約15年前に名古屋大学付属病院の分院で一緒になり、三輪部長が後輩だった。高井院長が数年前、三輪部長に「一人でも多くの患者を紹介してほしい」と持ちかけたといい、県警は、三輪部長が逮捕容疑となった期間の前から便宜を図っていた疑いもあるとみて調べる。
 腎不全を治療する人工透析は、週3回程度受ける必要があり、一生続くため、公立病院は患者を抱えきれず、民間の専門医院などに転院させているという。
 豊橋市民病院では、医師が、担当患者の意見も聞きながら転院先を決められる。転院先は十数あるが、三輪部長の患者の約半分は高井院長の二つの医院だった。ここ数年は年間約20人のうち10人前後を紹介していた。人工透析の診療報酬は患者1人あたり月三十数万円で、年間で約400万円に上る。
 三輪部長は01年4月から腎臓内科部長を務めている。豊橋市民病院は26の診療科があり、一般病棟のベッド数は約860。
 愛知クリニックは92年に開設。高井院長は、運営母体の医療法人の理事長を経て、02年、院長に就任した。05年4月には、二つ目のクリニックを開業した。

受精卵診断、届けずに11例実施 根津医師が公表  indexへ

 諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(やひろ)院長は28日、日本産科婦人科学会(日産婦)に届け出ないまま11例の受精卵診断を実施したと明らかにした。2人が昨年末と今年の初めに出産、3人が妊娠中だという。診断当時、日産婦はまだ流産予防の受精卵診断を認めていなかったが、根津院長は「患者の年齢を考えると待っていられない」と判断、実施に踏み切ったとしている。
 日産婦は今年4月、会告(指針)を改め、転座の受精卵診断を容認し、実施する際には届け出が義務づけられている。
 根津院長によると、11人は30代を中心とした、3回以上流産を繰り返した習慣流産の女性。受精卵診断で、流産の原因と考えられる相互転座という染色体異常を調べ、その中の転座のない受精卵を子宮に戻した。
 根津院長は98年に非配偶者間の体外受精をしたとして日産婦から除名された。だが、04年に学会ルールの順守を誓約し、再入会していた。根津院長は「日産婦は患者のために活動せず、待っていられない」と話した。

脳死肺移植手術の40歳代女性死亡  indexへ

 金沢大付属病院で50歳代の男性が臓器移植法に基づく46例目の脳死と判定されたことを受け、岡山大付属病院で肺の移植手術を受けた40歳代の女性が27日、同病院で多臓器不全などのため死亡した。
 女性は心臓病が原因で肺高血圧症になるアイゼンメンジャー症候群で、26日に手術を受けた。岡山大病院によると、手術時の出血が多く、肺摘出から移植まで血が流れない「虚血時間」が一般的に許容される8時間より長い9〜10時間となった。手術直後から移植肺がほとんど機能しなかったという。
 日本臓器移植ネットワークによると国内の脳死肺移植は今回を含めて28例あり、移植を受けた患者が死亡したのは9人目。

手術多いと「いい病院」? 厚労省が検討会発足へ  indexへ

 手術件数が多いほど「いい病院」なのか――。病院ごとの年間手術件数と治療成績の相関関係を調べるため、厚生労働省が近く検討会を発足させる。同省は手術件数で医療の質を評価する仕組みづくりを目指しており、検証結果は08年度の診療報酬改定に生かす。
 厚労省は「手術数が多い病院の方が治療成績が良い」との海外文献を元に、02年度の診療報酬改定で手術の種類ごとに年間手術件数の基準を設定。基準を満たさない病院には、その手術に対する報酬を3割カットする仕組みを導入した。特定の病院に手術を集中させることで医療の質の向上を狙った。
 しかし、症状が重い患者ほど手術は難しくなることなどから、医師や病院関係者には件数と質を単純に結びつける方法に疑問を持つ人も多い。中央社会保険医療協議会(中医協)の専門部会も昨年12月、「ごく一部を除き、手術件数と治療成績が相関するとは言えない」との報告書をまとめた。これを受けて厚労省は今年度の改定で報酬カットの仕組みを撤廃したが、相関関係の調査は続けることにした。
 検討会では、治療成績を大きく左右する個別の患者の重症度も詳しく調べる方針で、国内ではこれまでにない本格的な調査となる見通し。

医療2法人、2億6000万円所得隠し 薬局から裏金  indexへ

 全国で44の病院などを経営する「板橋中央総合病院グループ」(東京都板橋区)の二つの医療法人が昨年3月期までの7年間で、計約2億6000万円の所得隠しを東京国税局から指摘されていたことが分かった。グループの病院と関係が深い薬局経営会社から受け取った約5000万円のリベートを収入から除外したり、代表の個人的な経費を肩代わりしたりしていたという。追徴税額は重加算税を含めて約1億円。
 関係者によると、グループの病院近くなどで薬局を経営する「蘭(らん)調剤薬局」(板橋区)が人件費を水増しするなどして約1億8000万円の裏金をつくり、このうち約5000万円をグループの医療法人「明芳会」に提供。最終的には理事長に渡っていたという。
 国税局は、薬局が提供した資金は交際費にあたると認定。さらに明芳会と、もう一つの法人「明理会」では、代表が個人的に使った費用を経費に見せかけて肩代わりするなどの所得隠しも指摘されたという。
 同グループ本部事務局は「何も申し上げることはない」、蘭調剤薬局も「何もお答えすることはない」としている。

46例目の脳死判定 金沢大付属病院  indexへ

 金沢大付属病院(金沢市)に、くも膜下出血で入院中の50代男性が25日午前、臓器移植法に基づく脳死と判定された。97年の法施行後、46例目の脳死判定で、脳死臓器移植としては45例目。日本臓器移植ネットワークによると、心臓と肝臓が東大、肺が岡山大、腎臓が神戸大など。ほかに、膵臓(すい・ぞう)、小腸、眼球が提供される予定。

鳥インフル、人から人へ感染の可能性 インドネシア  indexへ

 インドネシア・北スマトラ州で家族・親類など8人が鳥インフルエンザウイルスに感染したとみられ、うち7人が死亡した集団感染で、世界保健機関(WHO)は23日、家族らはこの一族で最初に症状が出て死亡した女性(40)の看病にあたっていた結果、感染した可能性があるとの見方を示した。ただ、大流行を招くとして懸念されているウイルスの変異は見られないという。
 インドネシア保健省当局者も23日、朝日新聞社に「まだ結論は出ていないが、人から人への感染が起きた可能性は排除できない」と述べた。
 鳥インフルエンザをめぐっては、新型インフルエンザへ変異することで人から人へと感染が爆発的に広がることが懸念されている。しかし、WHOは今回の感染者から検出したウイルスについて、鶏から見つかったウイルスと同じ型だったことを明らかにした。

秋田・玉川温泉でノロウイルス集団感染か  indexへ

 秋田県仙北市の玉川温泉旅館で、5日ごろから宿泊客が吐き気などの症状を訴え、病院で手当てを受けていることがわかった。県大仙保健所によると、22日までに宿泊客100人、従業員20人が発症し、1人が入院した。患者からノロウイルスが検出されたため、感染性胃腸炎の集団感染とみて調べている。
 県によると、22日に旅館から連絡を受けた保健所がさかのぼって調べたところ、連日数人〜20人前後が発症していた。いずれも吐き気や下痢などで、症状は1〜2日間で治まったという。

「ニコチンパッチ」6月1日から保険適用  indexへ

 中央社会保険医療協議会は24日、禁煙治療のはり薬「ニコチンパッチ」を保険適用にすることを決めた。医師の禁煙診察・指導に伴って処方される場合に限り、6月1日から適用される。
 保険適用となったニコチンパッチは、ノバルティスファーマ社の「ニコチネルTTS」。比較的重症の人が体にはってニコチンを摂取し、禁煙後の症状を和らげるもので、禁煙を始めた当初から始めて徐々に弱い薬に交換していき、計8週間かけるのが標準的なケース。費用は計2万円ほどだが、保険適用でサラリーマンなら自己負担は3割の6000円で済むようになる。
 ただ、保険適用の決定にあたっては、複数の委員から「本人が(禁煙前まで)払っていたたばこ代かそれ以下の金額のものを保険でみる必要があるのか。違和感がある」などの異論が出され、2年後の診療報酬改定までに効果を検証する条件で認めることになった。

酸素チューブを食道に誤挿入 福岡の福岡病院  indexへ

 福岡市南区の国立病院機構・福岡病院で4月、肺炎などで入院していた福岡県内の男性(78)が酸素を送る医療用チューブを食道に誤挿入され、窒息死していたことがわかった。病院側はミスを認めており、県警は業務上過失致死の疑いがあるとして捜査を始めた。
 病院の説明では、4月20日午前9時ごろ、肺炎と脳梗塞(こうそく)で入院していた男性の口元のチューブがずれているのに気づいた看護師が、チューブの位置を変えた直後、血中の酸素濃度の異常を知らせる機器の警報が鳴った。
 医師がレントゲン写真などで確認したところ、チューブが誤って食道に挿入されているのを確認。正しい位置に挿入し直し、緊急治療をしたが、男性は同10時20分ごろ死亡した。病院は医療事故と判断し、同日中に南署に届け出たという。
 西間三馨(さんけい)院長は「再発防止に取り組み、遺族には誠意をもって対応したい」と話している。

患者の腹にピンセット置き忘れ 三重の総合医療センター  indexへ

 三重県病院事業庁は24日、県立総合医療センター(四日市市)の医師が今年2月、入院患者に開腹手術をした際に、患者の腹部にピンセット1本を残したまま手術を終えていたと、発表した。
 ピンセットは金属製で、長さ7センチ。執刀医が手術の2日後にレントゲンフィルムを見て患者の右下腹部にピンセットが残っていることに気付き、摘出した。同庁によると、患者に異物残存による痛みはなく、臓器なども傷ついていなかったという。病院側は患者とその家族に謝罪し、患者はすでに退院しているという。

臨床研修、36%が志望科変更 激務敬遠 厚労省調査  indexへ

 大学卒業後に診療能力を向上させるため必修化された臨床研修を終えた若手医師の3人に1人が、研修の前後で志望する診療科を変えていることが23日、厚生労働省の初めての全国調査(中間集計)で分かった。実際に体験してみて「大変そう」「自由時間が少ない」などの理由を挙げ、労働条件の厳しい診療科を敬遠する傾向も出ている。研修後、大学で勤務するという人はほぼ半数しかおらず、大学離れが裏付けられた格好だ。
 臨床研修は04年4月から必修化され、2年間の研修期間を終えた「1期生」が今春、進路を選んだ。厚労省は3月、医師の偏在対策に役立てようと、約7350人に進路希望などを聞いた。回収率34%(回答者の内訳は男性65%、女性35%)。
 調査によると、最も人気の高かった診療科は内科で約14%。次いで外科、小児科、整形外科、麻酔科などと続く。産婦人科では、女性の志望者は7割を超えていた。
 臨床研修の前と後で約36%の人が、元々志望していた診療科を変えた。理由(複数回答)は、「別の科に興味がわいた」が7割を超え、「研修で興味がそがれた」「研修で大変だと思った」など勤務の厳しさを理由にするケースも目立った。
 特に、医師不足が指摘されている小児科と産婦人科を当初希望していたのに他科に志望を変えた理由をみると、小児科で30%が、産婦人科で13%が「研修で大変だったから」とした。
 自分にとって最も大切なことを複数回答で聞くと、「家族・家庭」がほぼ半数で最も多く、「社会貢献」や「技術向上」を上回った。
 研修後の進路では、大学病院での勤務を希望するのは49%で、一般病院での勤務を希望するのは38%だった。研修先別にみると、大学病院で研修を受けた人の76%が大学に残る道を選んだのに対し、一般病院の研修医の58%は、一般病院に残ると答えた。
 かつて研修医の約7割が大学の医局に在籍していたことを考えると、医局による医師供給システムが崩れつつある実態が分かった。

訪問看護師、進まぬ研修  indexへ

 末期がんなど自宅で療養している患者を支える訪問看護師の専門技術向上を目指した厚生労働省の研修事業が、進んでいないことが朝日新聞社の調べで分かった。医療制度改革では医療費抑制を目的に入院期間の短縮や自宅での看取(みと)り推進などが盛り込まれているが、在宅医療の重要な担い手である訪問看護師の技量向上を図る環境整備が遅れている現状が浮かんだ。
 同省は04年度から、都道府県への補助事業として、二つの研修を盛り込んだ訪問看護推進事業を始めた。末期がん患者の疼痛(とうつう)緩和や精神的ケアを身につける「在宅ホスピスケア研修」と、神経難病など人工呼吸器をつけた患者の管理などの最新技術を病院で磨く「相互研修」だ。
 「在宅ホスピスケア研修」は04年度は3県、05年度は11県が実施。「相互研修」は04年度が6県、05年度が21府県。朝日新聞の調べでは、06年度の実施は「在宅ホスピスケア」は17県で「相互研修」は27府県。二つ実施しているのは、12県にとどまる。
 全体として実施自治体は増えているが、医療技術の進歩と制度改革で、末期がんや神経難病など医療依存度が高い患者が今後多く在宅化してくるとみられている。このため訪問看護師の技術向上に二つの研修実施が重要とされる。厚労省は「実施がなかなか進まないのは、在宅医療への理解不足がある。二つは性格の違う研修。補助事業で義務ではないが、今後はもっと広めたい」とする。
 訪問看護師の研修は、各自治体が看護協会などに委託して基礎的研修をしている。二つの研修はこれとは別な専門的研修だ。実施できない事情には、「2年で礎は築いた。看護師確保に力を入れたいので今年度からやめた」(埼玉県)、「他にも訪問看護師の研修はある」(東京都)という意見のほか、地方では「まだ入院医療が中心」(北海道)という声が多い。広島県など一部は独自研修をしているが、自治体の厳しい財政事情も、二つの研修を同時に行うことの足かせとなっている。
 05年度に研修を実施した自治体の多くは、参加者確保に苦労している。「在宅ホスピスケア研修」の実施要綱では、研修期間は「原則3日以上」、参加者数は「原則20人以上」と規定されているが、山形県が05年度に開いた5日間のプログラムすべてに参加したのは13人だった。
 看護師の技量不足を指摘する声もある。「相互研修」で、自発呼吸が次第に難しくなる神経難病の筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)の患者に対して「在宅での酸素吸入器の使い方が分からない看護師もいた」(栃木県)という。
 医療依存度の高い患者になかなか対応できない背景には、訪問看護がもともと、介護分野を中心にスタートした経緯がある。当初から一時的に看護現場を離れていた看護師を掘り起こして活用してきた。

研修後の若手医師、大学病院敬遠 脳神経外科も不人気  indexへ

 全国80の国公私立大と付属病院からなる全国医学部長病院長会議は19日、臨床研修を終えて大学に残る若手医師の割合が、4年前に比べて20ポイント減少したという調査結果を発表した。研修後の診療科別の志望をみると、形成外科や皮膚科が増え、脳神経外科や外科が減っていた。会議は、現行の臨床研修制度は地域医療を担う大学病院の弱体化を招くと指摘。近く、制度の改善策を緊急提言する。
 臨床研修(初期臨床研修)は04年に必修化され、必修化1期生が今春、医師としての進路を選ぶことになる。以前の臨床研修制度は、給与面や教育プログラムの規定がなかったため、大学病院側にとっては若手を自由に安く使える労働供給源としての面もあった。
 同会議は80大学を対象に初期臨床研修の修了者の動向を調べ、68大学が回答した。その結果、大学を卒業し、その大学で後期臨床研修を受けた若手医師の割合は、平均で51%。02年の72%に比べ21ポイント減った。地域別では四国44ポイントと北海道で43ポイント減少し、その幅は著しかった。
 専門家の間では「地方に住むのを嫌がって大都市部に流れているのでは」との指摘がある一方、「地方の別の医療機関に流れているだけ」との見方もある。調査を担当した岩手医大医学部長の小川彰教授は「医師を地域に供給してきた大学病院のシステムは崩壊している」とみている。
 一方、研修後の診療科目別の増減率をみると、最も減少率が大きかったのは脳神経外科で42%減、次いで外科(33%)、小児科(28%)と続いた。反対に、形成外科は41%増で、ほかに皮膚科(24%)、麻酔科(23%)の増加が目立った。調査を担当した小川教授は「仕事がきつく、しかも生命に直接かかわる診療科への希望が減っている」とみている。
 厚生労働省の担当者は「最近の研修医は専門医志向が強く、多くが臨床経験を望んでいる。本来なら専門技術が学べる大学病院に研修医が集まっていいはずだ。一部に魅力ある研修プログラムを用意するなど工夫している大学病院もあるが、多くは研修医のニーズに応え切れていない。臨床研修制度が医師不足の原因になっているとはいえない」と話している。

埼玉県越谷市に8900万円の賠償命令 医療過誤訴訟  indexへ

 埼玉県越谷市立病院(山本勉院長)で卵巣がんの手術を受けた女性(22)が慢性腎不全になったのは、抗がん剤を長期間、漫然と投与したせいだとして、女性と家族が越谷市を相手取り、約1億円の損害賠償を求めた裁判の判決が19日、さいたま地裁であった。近藤寿邦裁判長は「医師は腎機能の低下を見逃し、適切な治療をしなかった過失がある」と認め、市側に総額約8900万円の賠償を命じた。
 同市に住む女性は、9歳だった93年11月、同病院で卵巣がんと診断され、卵巣などの摘出手術を受けた。翌年3月に退院し、その後2年間、抗がん剤を投与された。96年11月、女性は治る見込みのない慢性腎不全で、いずれ透析をしなければいけないと診断された。
 判決は、入院当初、女性に腎疾患がなかったことなどから、長期間の抗がん剤投与で腎不全を発症したと認定。遅くとも女性の腎機能が入院時の半分に低下した95年6月ごろ、抗がん剤の投与を中止して治療を始めていれば、慢性腎不全にならなかった可能性が高いと判断した。
 市は19日、「承服できない。内容をよく検討したうえで控訴したい」との談話を出した。

医療改革法案が衆院通過、野党側との議論すれ違ったまま  indexへ

 高齢者の負担増を柱とする医療制度改革関連法案が18日、衆院を通過した。サラリーマンの窓口負担を3割に引き上げた02年の健康保険法改正の際は衆院で56時間審議したが、今回は34時間。「政府案は医療の崩壊を招く」と野党側との議論はすれ違ったままする終わった。衆院で浮かび上がった問題点は、週明けからの参院での審議に持ち越された。
 ●高齢者に負担集中
 「年金水準の低下や課税強化でお年寄りの生活は極めて不安定だ。こんな負担を強いるのは高齢者虐待だ」(民主・三井辨雄(わきお)氏)
 法案は、70歳以上で一定所得以上の人の窓口負担を今の2割から3割に引き上げるなど、負担増が目白押し。衆院厚生労働委員会ではこの点に議論が集中した。
 野党側は「受診抑制を招き国民の健康を壊す」(共産・高橋千鶴子氏)、「患者が病院に治療費を払えない『未収金問題』に拍車をかける」(民主・古川元久氏)などと批判したが、政府側は「低所得者対策は講じる。必要な医療を妨げるわけではない」(川崎厚労相)との説明を繰り返すだけ。未収金の実態などには言葉を濁し、「少子高齢化社会が進む中、(若者も高齢者も)お互い協力しないといけない」(同)など一般論に終始した。
 ●医師不足問題も
 さらに野党側が力を入れたのが、地方や産科・小児科での医師不足問題だ。国民に負担を求めるばかりで、国民の望む本当の「医療改革」は手つかずだ、という批判だ。
 民主党の菊田真紀子氏は、常勤医の大量退職で診療科の一部閉鎖に追い込まれた病院の例を取り上げ「地域医療は破綻(はたん)寸前」と追及。同党の山井和則氏は小児科医の超過勤務が月平均100時間を超えているという調査を取り上げた。
 川崎厚労相も「診療科や地域による偏在で医師の不足感がある」ことは認たが、解決策は示せないまま。「都道府県がリーダーシップをとり、国は支援をする」と、地域の取り組みに期待する考えを述べるにとどまった。
 ●与党からも批判
 与党からも異論が出た。長期入院患者のための療養病床の削減案だ。
 入院治療の必要がない「社会的入院」をなくして医療費を減らす狙いで、政府案では2012年度までに現在の38万床を15万床まで減らす計画だが、「患者の追い出しは起こらないか」(公明・高木美智代氏)、「療養病床が国民に安心感を与えている」(自民・清水鴻一郎氏)など疑問の声があがった。
 厚労省は、老人保健施設や有料老人ホームなどへの転換を促す方針を強調。ただ、現場からは「多額の費用がかかり、転換は容易でない」(日本療養病床協会)との声もあり、患者の「受け皿」が本当に整備されるのか、懸念はぬぐいきれていない。

医療制度改革法案、衆院を通過 野党は出席し反対表明  indexへ

 高齢者の医療費負担増などを柱とする医療制度改革関連法案は18日、衆院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決、衆院を通過し、参院に送られた。与党は今国会での成立を目指す方針。衆院厚生労働委員会で採決が強行されたことに反発していた野党各党は本会議に出席して反対を表明、国会はひとまず正常化した。
 同法案をめぐっては、「審議が不十分だ」とする野党の反対を押し切って与党が衆院厚労委で採決に踏み切ったため与野党が対立。民主党は本会議や全委員会での日程協議に応じない構えを見せていた。その後の与野党間の話し合いで民主が審議に応じる姿勢に転じ、同日の衆院議院運営委員会理事会で与野党が同法案の採決に合意した。

関節リウマチ薬、がんのリスク調査 学会方針  indexへ

 関節リウマチの治療で高い効果が知られる「生物学的製剤」が、悪性リンパ腫などがんのリスクを高める可能性が指摘されていることから、日本リウマチ学会は長期の安全性調査に取り組むことを決めた。これらの薬をめぐっては17日、がんのリスクが約3倍高まるという米英グループの新たな報告が米医師会雑誌に掲載された。
 関節リウマチは免疫細胞が信号物質を過剰に出すことで、全身の関節の痛みや骨の破壊を招く。「TNF」という信号物質の働きをじゃまする生物学的製剤は、国内では2剤が販売され、2万人ほどが使っている。
 約9割の患者で効果がみられる一方、免疫力にかかわるTNFを抑えることで、感染症やがんになる確率が高まることも心配されている。「関節リウマチ自体ががんのリスク要因」との報告もあり、結論は出ていない。
 学会調査の中心になる宮坂信之・東京医科歯科大教授は「海外とは薬の用量も異なり、米英の報告をそのまま国内にあてはめることはできない。やはり日本人でのデータが必要だ」と話す。

報酬改定で病院1割経営難 看護師不足にも拍車  indexへ

 4月からの診療報酬改定で、看護職員の配置を増やさないと報酬が減る設定にした影響で、中小の民間病院を中心に1割近くの病院が経営困難に陥っていることが、17日にまとまった病院団体の調査で分かった。増大する医療費を抑制するとともに、より手厚い看護態勢をめざした改定だが、大病院ほど看護師が集まるなど病院間の格差は拡大。6割超の病院が「看護師の引き抜きに拍車がかかる」と懸念している実態が明らかになった。
 今回の改定では、看護職員1人が受け持つ入院患者数によって決まる入院基本料の区分を変更。従来の「患者15人」「13人」「10人」の区分に加え、より受け持ち患者が少ない「7人」を新設した。「15人」を超える病院は事実上、採算がとれない報酬に改めた。
 調査は4月、日本病院会や全日本病院協会などでつくる「四病院団体協議会」が全国5570の公立、大学、民間病院を対象に、改定前後の状況を聞いた。
 回答のあった1413の一般病院の内訳をみると、3月時点で最も手厚い区分の「患者10人」だった病院は544だったのが、4月には、新設の「7人」を含めて「10人」の区分までが698に増加。「13人」の病院は532から359に減り、中位ランク以上ではより看護が充実していた。
 「15人」の区分に達しない不採算病院が35にのぼっているほか、一部の病院はすでに病棟を閉鎖。さらに「15人」に達している病院でも95が「計画上の数字で届け出たが実際は継続不可能」と答え、約140病院が経営困難だとしている。
 病院の規模別では、300床台〜500床以上の病院では最高区分の「7人」の病院が7〜11%なのに対し、200床台以下では5%前後にとどまっている。
 看護師確保をめぐる質問(複数回答)では、「特に看護師配置などを変えなかった」は61%で、「募集して対応した」が20%、「募集したが就職者が足りなかった」が16%。「看護師を引き抜かれた」との回答も4%あった。
 報酬改定に対する評価(複数回答)では、「看護師の引き抜きなど看護師不足に拍車がかかる」が66%、「制度改正にはもっと時間をかけて行うべきだ」との意見が67%。「看護師の勤務条件が良くなった」との回答は37%だった。

茨城・千葉ではしか流行 予防接種呼びかけ  indexへ

 茨城、千葉の両県で、はしか(麻疹)の集団感染が発生しているため、国立感染症研究所は「関東一円、全国に広がる可能性が危惧(きぐ)される」との緊急情報を出して、注意を呼びかけている。
 茨城県では、牛久市の市立小や取手市の中・高校で生徒や職員の集団感染が起こり、4月5日から今月17日までに同県内の患者は計88人に達した。千葉県の高校でも26人の患者が出ている。
 はしかは、高熱や、全身の発疹といった症状が出る。ウイルスが空気感染するため感染力が強く、根本的な治療法はない。患者の1000人に1人が死亡するとされる。
 同研究所感染症情報センターは「ワクチンを受けていない人や、学校の先生など子どもと接する機会の多い人は、早急に予防接種を受けてほしい」と話している。

医療制度改革法案、衆院委で可決 与党が採決強行  indexへ

 自民、公明両党は17日の衆院厚生労働委員会で、野党の反対を押して医療制度改革関連法案を強行採決し、両党による賛成多数で可決した。衆院の議席の3分の2を占める巨大与党が、重要法案が目白押しのなかで強気に出始め、「共謀罪」創設法案も今後、強行採決を辞さない構えだ。さらに憲法改正の手続きを定める国民投票法案を近く提出する方針で、国旗国歌法など国民の権利にかかわる法律を次々に成立させた99年の通常国会と似た様相になってきた。
 17日午前の衆院厚生労働委員会では、小泉首相も出席し、高齢者の負担増を柱とする医療制度改革関連法案をめぐる質疑が行われた。野党は「審議は道半ば」と採決に抵抗したが、与党側は審議打ち切りと採決を求める緊急動議を出し、今国会で初めて強行採決に踏み切った。与野党の対立激化は必至だ。
 また、衆院法務委で審議中の共謀罪創設を含む組織的犯罪処罰法改正案についても、与党側は週内に採決する方針。民主党が修正協議で歩み寄らなければ、採決強行の構えを見せている。
 会期末まで残り約1カ月。参院自民党幹部からは「せっかく3分の2を取ったのだから、決断する時はした方がいい」と早期採決を促す発言が目立ち、野党は「悪法を小泉首相にやらせてしまおうという動きだ」(社民党の又市征治幹事長)と警戒を強める。
 小渕政権だった99年の通常国会では、新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法や中央省庁改革関連法に続き、延長国会で国旗国歌法、通信傍受法を含む組織的犯罪対策3法、住民基本台帳法改正など国民に異論も多かった法律が続々と成立。憲法調査会設置法も作られた。
 99年国会では、当時野党だった公明党がこうした法案にことごとく賛成し、同年秋には自自公連立政権となった。一方で今国会は、公明党の神崎代表の今秋の退任が取りざたされるなか、自公連立政権の「集大成」の感もある。
 今国会では、99年国会では自由党党首として連立政権の一翼を担った小沢一郎氏が、攻守所を変えて民主党代表として与党に対峙(たいじ)する。巨大与党の仕掛けがうまく運ぶかどうか。法案処理がどこまで進むかは会期延長問題とも絡むが、ごり押しの印象が強まれば国民の支持を失いかねない。
 87年の通常国会では、前年に自民党が衆院の6割を占めた勢いで中曽根康弘首相が売上税法案の成立を目指したが、世論の反発で断念に追い込まれた例もある。

全国138病院が分娩休止 出産の場急減  indexへ

 04年秋に産婦人科・産科を掲げていた全国の1665病院のうち、8.3%にあたる138カ所が4月末までに分娩(ぶんべん)の取り扱いをやめていることが、朝日新聞の全都道府県調査でわかった。深刻な医師不足を理由に、大学の医局が派遣している医師を引き揚げたり、地域の拠点病院に複数の医師を集める「集約化」を独自に進めたりしているのが主な理由とみられる。出産の場が急速に失われている実態が浮かび上がった。
 厚生労働省が行った直近(04年10月時点)の調査で産婦人科・産科を掲げていた病院は1665カ所にのぼっていた。この時点で複数の病院が分娩の取り扱いをやめていたが、同省は把握していなかった。朝日新聞が今回、47都道府県と政令指定市から聞き取ったところ、こうした病院を含め、4月末までに計138カ所が分娩を取りやめていたことがわかった。
 厚労省の調査によると、産婦人科・産科は90年以降、減り続け、02年10月〜04年10月の2年間では計85病院で廃止・休止された。今回の調査では、この1年半にこれを上回るペースでお産ができない病院が増えている実態が判明した。今年5月以降、産科の休診を表明している病院も多く、減少傾向はさらに続く見通しだ。
 地域別にみると、福島や新潟、山形、長野各県など、特に東北、中部地方で減少ぶりが目立つが、兵庫や千葉、福岡など指定市を抱える県でも、産科が相次いで休止に追い込まれている。昼夜を問わない過重労働や医療訴訟のリスクが敬遠され、医師不足が深刻化したため、大学が病院への派遣を打ち切ったり、高齢出産などリスクが高い分娩の安全性を高めるため、集約化を推し進めたりしている現状が背景にあるとみられる。
 厚労省によると、04年に全国で生まれた約111万人の51.8%が病院での出産だった。同省は昨年末、産婦人科・産科の集約化の必要性について今年度までに検討するよう各都道府県に通知したが、それぞれの地域事情を抱え、具体的な取り組みは進んでいない。「産科がなくなる地域の反発が心配」(京都府)といった慎重論が多い一方、「集約できるほど医師がいない」(宮崎県)、「医師を確保できる仕組み作りが先決」(沖縄県)など集約化に懐疑的な県もある。
 こうした状況下で、県レベルの医師確保策が過熱している。岩手県は今年2月、産婦人科医不足を補うため、厚労省の「臨床修練制度」を利用して岩手医大に中国人の研修医を迎え入れた。新潟県では昨年度、県内の病院に医師を送り込んだ人材派遣会社に支払う成功報酬の半分を県費で負担する独自事業がスタート。富山県や三重県では、県が指定する病院に勤務した医学生に奨学金の返済を求めない「修学資金制度」を産婦人科に適用している。

心臓ペースメーカー、X線撮影でも誤作動の恐れ  indexへ

 胸部X線撮影など比較的被曝(ひばく)線量が少ない場合でも心臓ペースメーカーに不要な電流が流れ、誤作動を起こす恐れがあると、大阪市であった12日の日本医科器械学会で発表された。被曝線量の多いCT(コンピューター断層撮影)では特定のペースメーカーが誤作動を起こすため、厚生労働省が昨年から指導を始めていた。
 広瀬稔・北里大助教授(臨床工学)らが、3機種のペースメーカーに胸部撮影などに使っているX線を当てて影響を調べた。その結果、内部回路にX線が当たると、不要な電流が発生。それが心臓からの信号と誤認され、誤作動になる場合があると分かったという。
 X線を当てる方向や強さによって誤作動は、起きたり起きなかったりした。実験に使った3機種のうち、1機種は誤作動を起こさなかった。
 広瀬さんは「医療現場や健康診断でも、鉛でペースメーカーを守ったり、深刻な誤作動に備えたりすることを考えてほしい」とリスクを減らす努力が必要だとしている。
 ペースメーカー使用者は国内に約30万人いるとされる。製造会社などでつくるペースメーカ協議会は「通常のX線撮影で影響が出た実例は聞いていないが、必要があれば業界として対応したい」と話している。
 厚労省は昨年5月、CTでX線を当てないように製品に表示するようにメーカーを指導。その後、医療機関には、ペースメーカーを使う患者にCTで5秒以上のX線照射をしないように呼びかけていた。

歯科治療の麻酔で女児死亡、遺族が提訴へ 埼玉・深谷  indexへ

 4歳の女児が虫歯治療中に麻酔を打たれた直後に死亡した事故で、適切な救命措置を取らなかったなどとして、埼玉県深谷市の女児の両親が歯科医の男性(56)を相手に約7800万円の損害賠償を求める訴えを18日、さいたま地裁に起こす。
 県警は05年に歯科医を業務上過失致死の疑いで書類送検。さいたま地検は同年7月、「容体の変化に気づいたとしても、救命できたと断定できない」と嫌疑不十分で不起訴処分にしたが、両親は検察審査会に審査を申し立てている。
 訴えるのは、深谷市在住の木部寿雄さん(40)と妻。木部さんの長女、遥加(はるか)ちゃんは02年6月、同市の歯科医院で局部麻酔を注射された直後にアレルギー性発作を起こした。その後、昏睡(こんすい)状態となり、市内の病院に運ばれたが死亡。木部さんらは、歯科医が異変に気づかず、早期治療の機会を逸したと主張している。
 朝日新聞に対し、歯科医側は「答えることはありません」としている。

若手医師、脳外科離れ 激務・訴訟リスクを恐れ?  indexへ

 今春、2年間の臨床研修後に脳神経外科を専門分野として選んだ若手医師が、数年前に比べ2割程度減ったことが、日本脳神経外科学会の調査で明らかになった。同学会理事会に11日報告された。理事らは「産婦人科医や小児科医などと同様、仕事のきつさや訴訟リスクが敬遠されたのではないか」とみている。
 担当した寺本明・日本医大教授らによると、調査は全国の大学の脳外科や学会訓練施設に指定されている約390施設が対象。04年に必修化された臨床研修の1期生が2年の前期研修を終えたのを機に、今春、脳外科を選んだ医師の数を調べたところ170人だった。99〜02年の同学会の新入会員数は203〜229人で、2割前後少ない。
 全国80大学のうち23大学では、新たに脳外科を選んだ医師が一人もいなかった。都道府県別でみても9県でゼロで、地方から影響が出る恐れが指摘されている。
 志望者減の理由は調べていないが、トラブルによる訴訟や昼夜を問わないなど厳しい勤務条件が原因で減っているとされる産婦人科医や小児科医と同じ構図とみる。また「臨床研修のカリキュラムが、脳外科に魅力を感じさせるものになっていないのではないか」との見方も出ている。
 若手医師の進路に関して最近のまとまった調査はないが、日本産科婦人科学会によると、大学病院などの常勤産婦人科医は03〜05年で8%減り、お産の扱いをやめた病院も相次いでいる。
 小児科も志望者減が著しい。日本小児科学会の調査によると、今春、研修後に小児科を志望したのは276人。03年度に比べ4割以上減った。
 厚生労働省調査によると、04年の医師総数は00年に比べ5.7%増えたが、小児科医、脳神経外科医の伸びはこれを下回り、産婦人科医は4%減っている。

中野区歯科医師会元会長ら、1200万円を私的にプール  indexへ

 東京都中野区歯科医師会(西村誠会長)が同区から受託している障害者や寝たきりの高齢者向けの歯科医療事業に絡み、97〜00年度の4年間、本来は区に返還すべき計約1200万円を当時の会長と専務理事が不適正な会計処理で私的にプールしていたことが分かった。歯科医師会は役員が改選された01年春に使途不明金があることに気づいていたが、区に報告していなかった。9日に初めて報告を受けた区は、同会に再調査をするよう求めた。
 中野区は95年度、障害者の歯科医療のための診療所を開設。歯科医師会に年9000万円前後で運営を委託し、97年度には寝たきりの高齢者らへの訪問診療も始めた。同会は毎年5月10日までに前年度の委託業務の支出内訳や診療報酬を明記した清算報告書を区に提出し、黒字分を区に返還する契約を結んでいる。
 関係者によると、同会は改選前の役員が作成した00年度分の清算報告書を、01年5月に区へ提出。区からの委託料や診療報酬などで約1億円の収入があり、諸経費や消費税を除く黒字分として約1350万円を区へ返還した。しかし、同年度の現金出納帳では約1950万円の黒字があり、差額の約600万円が診療所の口座に残ったままになっていた。
 不審に思った新役員が97〜99年度分も調べたところ、この3年分で計626万円が返還されていなかった。各年度の差額は清算報告書に記されておらず、当時の専務理事が自宅に現金で保管しているのがわかった。プールは当時の会長の指示だったという。
 歯科医師会は返還を求めたが、2人は「われわれが責任を持って処理する」などとして返すのを拒んだ。同会は02年に業務上横領容疑で2人を刑事告発する準備を進めたところ、元会長らが返還の意思を示したため見送り、昨年3月になって全額が同会へ返された。
 97〜00年度の会長は「私的に使うつもりは毛頭なく、障害者の歯科医療に役立てるため、会員が学会へ出張する際の経費などとして一部を使った。後任の役員や歯科医師会に迷惑をかけ、申し訳ない」と話している。

変形性関節症治療に朗報 原因たんぱく質を発見  indexへ

 高齢者に多い変形性関節症で痛みが出るのは関節の軟骨が硬い骨に変わるためだが、東京大学の川口浩・助教授(整形外科)らは軟骨から硬い骨になるとき働くたんぱく質をマウスを使った実験で見つけた。治療法の開発につながる可能性があるという。8日付の米医学誌ネイチャーメディシン(電子版)で発表した。
 摩耗した関節の軟骨が石灰化して硬い骨になると、骨がトゲのようになって神経を圧迫し痛みを生じる変形性関節症につながる。国内の患者数は700万人と推定されている。
 川口さんらは、マウスの耳の軟骨が硬くなる際に活性化するたんぱく質「カーミネリン」を見つけ、これを人工的に壊したマウスを作った。
 このマウスは普通の状態では骨の発育は正常だったが、ひざの関節をすり減らした病的な状態にしたところ、骨がトゲのようになる割合は、普通のマウスの3分の1以下に抑えられた。

献血しない理由は「痛い、怖い」3割 未経験の若者調査  indexへ

 献血をしたことがない若者の約3割が、献血を敬遠する最大の理由として「採血時の痛みや恐怖心」を挙げていることが10日、厚生労働省の調査でわかった。一方で、献血未経験者の半数以上が「関心はある」と回答。献血ルームでは最近、若者向けに占いコーナーを設けるなど趣向を凝らす所もあるが、厚労省は「若者をひきつけるには、まず献血に対する不安を取り除くことが第一」と分析している。
 献血は16〜69歳の人ができるが、99年に年間約614万人だった献血者数は05年には約530万人まで減少。少子化の影響もあり、特に20代以下の献血者の割合は99年の約43%から03年には約35%まで落ち込んでおり、若者の掘り起こしが課題となっていた。
 このため同省では、若者を対象に初めての意識調査を実施。1〜2月、全国の16〜29歳から無作為で献血の未経験者と経験者の各5000人を選び、インターネットでアンケートした。
 それによると、未経験者が献血しない最大の理由は、「針を刺すのが痛いから」が14.2%で最多。「何となく不安だから」(6.5%)、「恐怖心」(5.0%)、「血を採られる感じが嫌だ」(4.6%)を合わせると、採血時の痛みや不安で全体の約3割を占めた。
 一方、献血への関心は、「非常にある」(6.4%)と「ある」(45.8%)が過半数を占めた。献血する場合の希望(複数回答)では、「献血場所が入りやすい雰囲気」(33.4%)、「針を刺す痛みを麻酔などで和らげる」(27.6%)、「献血が健康管理に役立つ」(25.7%)などが挙がった。

入院治療費「定額制」の病院、急増 今年度2.5倍に  indexへ

 入院治療費を病気の種類ごとに定額払いにする「診断群分類別包括評価」(DPC)の仕組みを、今年度新たに216の病院が導入する予定であることが厚生労働省のまとめで分かった。昨年度までの144病院から一気に2.5倍に増える。DPCは平均入院日数の短縮など医療費抑制に効果があるとされ、厚労省は来年度以降もさらに普及をはかりたい考えだ。
 DPC導入を前提に同省の調査に協力している病院の意向を確認した。4〜7月に順次採り入れる予定。
 検査や投薬をした分に応じて治療費を支払う「出来高払い」方式に対し、DPC方式では、入院治療のうち投薬・検査などの部分が、量や回数にかかわらず1日ごとの定額払いになる。病気の種類や程度が同じなら、全国どこの病院でも同じような検査や治療が行われる「治療の標準化」や、平均入院日数短縮などに効果があるとされ、03年4月から大学病院などで導入された。
 ただ、医療関係者の間には、必要な治療が行われなくなる恐れがあるとして、同方式の拡大に慎重な意見もある。

内臓脂肪症候群、40歳超男性の半数危険 脳梗塞の原因 indexへ

 心筋梗塞(こうそく)や脳卒中など生活習慣病の引き金となる「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の疑いが強いか、その予備群とみられる人が40歳を過ぎると急増し、40〜74歳の男性の約半数に上ることが8日、厚生労働省の初めての全国調査で分かった。女性も同じ年代で5人に1人が当てはまり、該当者は全国で約1960万人と推計されている。同省は深刻な事態と受け止めている。
メタボリックシンドロームの判定基準
 国民健康・栄養調査の一環として04年11月、無作為に選んだ20歳以上の男性1549人、女性2383人を対象に身体計測や血液検査などを実施した。
 メタボリック症候群の判定は、内臓脂肪の蓄積を示す目安としてウエストが男性で85センチ以上、女性で90センチ以上を必須条件とし、さらに血中脂質、血圧、血糖の二つ以上で基準値を超えた人を「疑いの強い人(有病者)」、一つ超えた人を「予備群」とした。
 内臓脂肪は皮下脂肪と異なり、腸や肝臓など内臓の周囲にたまる。内臓脂肪がつきすぎると、ホルモン分泌のバランスを崩し、放置すると高血圧や高血糖などを引き起こし、心疾患などのリスクを高めるとされる。
 調査によると、20代と30代では予備群を含めてもメタボリック症候群の該当者は男性で20%前後と低い。女性はゼロに近い。これはダイエットの影響とみられる。だが、40歳を境に急増。40〜74歳の男性では、有病者と予備群の合計は50%を超えた。女性の合計も20%近くに達した。
 背景として厚労省は運動習慣の減少や食生活の影響を挙げる。同じ調査で、生活習慣病の予防に効果があるとされるウオーキングなどの手軽な運動(1回30分以上)を週2日以上、1年以上続けている習慣がある人は、30代が最も低く、男性13.8%、女性13.5%。60代男女よりもそれぞれ20〜30ポイントも低かった。同省は内臓への脂肪の蓄積は長い年月をかけて進んでおり、30代の運動不足が40代で急増する引き金の一因とみている。
 同省は「油の多い食べ物を控えて野菜を多く取ったり、たばこを吸っている人は禁煙をしたりするなど、生活習慣を少し変えるだけでも効果は大きい」としている。

C型肝炎、根治療法は少数 indexへ

 全国の各市町村が住民に実施しているC型肝炎検診で病気が見つかっても、十分な治療につながっていない実態が厚生労働省研究班の調査で分かった。検診をきっかけに治療を受けた人で根治につながるインターフェロン治療を受けた患者は17%。インターフェロンは将来の肝がんを防ぐことができ、専門家は「17%は低すぎる」と指摘する。検診から治療への連携が課題になっている。
 調査はB型・C型肝炎治療の標準化研究班(班長=熊田博光・虎の門病院副院長)が実施した。沖田極・下関厚生病院長らが全国の都道府県の担当部署から回答を得てまとめた。
 厚生労働省はC型肝炎等緊急総合対策として、02年度から40歳以上の住民向けにC型肝炎ウイルス検診を導入した。この04年度分で「要精検」とされた約1万3000人のうち、医療機関で何らかの治療を受けたと分かった1435人を分析した。治療法はインターフェロン注射が17%。その他は飲み薬35%、インターフェロン以外の注射薬10%などだった。
 この結果について沖田院長は「将来の肝がんを防ぐためには、飲み薬などで治療を受けている患者を含めて8割程度の患者がインターフェロンを使ってもいい。17%は低すぎる」と語る。他の専門家も、5〜7割程度はインターフェロンを試みるべきだとみている。
 飲み薬などは肝機能を良くする働きがあるが、C型肝炎ウイルスを駆除する根治効果は期待できない。インターフェロンはうまく効けばウイルスを駆除できる。根治できなくても将来の肝がん発生の危険を減らす効果がある。しかし、うつ症状、間質性肺炎などの副作用があり、専門の医師でないと扱いにくい薬とされる。沖田院長は、検診後に専門の医師の治療を受ける連携がうまくいっていないとみている。
 C型肝炎ウイルスの感染は過去の輸血や血液製剤、不衛生な注射などで起きた。検査の普及で現在では新たな感染はほとんどないが、国内の感染者は150万人以上とされる。04年度の検診では受診者の1%が感染者だった。

がん代替医療に公的手引書 厚労省研究班 indexへ

 通常の医療とは別に、がん患者がキノコなどの健康補助食品に「補完代替医療」の効果を期待する動きが広がるなか、厚生労働省研究班(主任研究者=住吉義光・四国がんセンター病棟部長)が、一般向けの手引をまとめた。ヒトで科学的な検証がなされているかを重視して、調べた。日本補完代替医療学会が監修している。公的研究グループが補完代替医療について、包括的な見解をまとめたのは珍しい。
 手引では、代表的な健康補助食品全体への見解として「がんの縮小や延命効果など、多くの患者が期待する直接的な治療効果を証明する報告はほとんどなかった」とまとめている。
 研究班は、補完代替医療の実態に関する過去の調査で特に使用頻度が高かった5つの健康補助食品について、国内外の医学や科学の学会誌などに公表された科学論文を検索。科学的根拠として臨床試験の有無などを調べた。
 例えば、最も多くのがん患者が使っていたアガリクスについては、ヒトでの臨床試験1件と動物実験など3件の、計4件の論文を見つけ、精査した。それをもとに、手引では表のように「子宮がん、卵巣がんの患者で、抗がん剤治療の副作用軽減に有効との報告があるが、複数の試験で検証が必要」と結論づけた。
 補完代替医療には健康補助食品のほか、はり・きゅうや民間療法なども含まれる。手引では、こうした補完代替医療を利用するにあたり確認や注意すべき点について、約30項目のリストに示した。(1)がんの進行に伴う症状を軽減できるか(2)現在受けている治療に影響があるか(3)その補完代替医療の専門家は主治医と一緒に治療に取り組んでくれるか、といった点で、主治医や看護師らに相談することを勧めている。
 手引「がんの補完代替医療ガイドブック」は四国がんセンターのホームページで公開している。希望する病院への配布も検討されている。

終末期の病名告知 患者本人46%、家族は96% indexへ

 全国の中小規模の一般病院で、余命が半年以下と思われる「終末期」の患者本人に病名を告知している割合は45.9%で、延命処置の希望確認はさらに低く15.2%だったことが、厚生労働省の研究班の調査で明らかになった。一方で、患者家族には病名告知で95.8%と高い割合で伝えており、終末期医療の現場で、患者本人の意向より家族の意見を重視する実態が浮かび上がった。
 調査は04年10〜11月、全国にある中小規模の一般病院(50〜300床)から1000病院を無作為抽出して質問票を郵送し、145病院から回答を得た(回答率14.5%)。終末期患者の多くが、ホスピスや緩和ケア病棟などではなく、中小規模の病院で死亡しているため、対象を絞った。
 全入院患者中、終末期患者の占める割合は9.1%。患者本人に病名を告知している割合は、単純平均すると45.9%だった。家族に対しての病名告知は全体の4分3強の病院が100%としており、平均95.8%。抗がん剤治療などで積極的な治療を目指すか、緩和ケアに徹するかなど治療方針の確認も、患者が47.2%に対し、家族が83.4%だった。
 余命告知は患者本人には平均26.6%だが、家族には90.8%。余命1カ月以内の「最終末期」に、心臓マッサージ、人工呼吸器の装着、昇圧剤投与などの延命処置に関する希望確認も、患者本人に15.2%で、家族が86.8%だった。
 主任研究者の松島英介・東京医科歯科大助教授は「患者本人が希望する場合は基本的には情報提供をするべきだが、チーム医療が充実している大病院と違い、中小は限られた人員で、本人に知らせても、その後のケアが十分にできないという面もあり、大きな課題だ」と話す。

WT1がんワクチン臨床研究、全国展開へ 阪大グループ indexへ

 大阪大グループが進める「WT1がんワクチン」の臨床研究が、年内にも全国20医療機関に広がる見通しになった。がんワクチンでは過去最大規模だ。肺がんや脳腫瘍(しゅよう)などを対象にした安全性試験で、現在まで目立った副作用がなく、がん縮小などの効果が見られているためで、今後効果が確認されれば、実用化に向け大きく前進する。
 WT1は、細胞増殖にかかわり、様々な種類のがん細胞に多く現れるたんぱく質。杉山治夫・大阪大教授(機能診断科学)らのグループはWT1の特定の断片(ペプチド)が、免疫反応の目印になることを発見。がん細胞にWT1が見つかった患者であれば、人工的に合成したこのペプチドを注射することで、患者の免疫系にがん細胞を攻撃させることができると考えた。
 大阪大病院で01〜04年に、主に安全性確認の目的で実施した20人(白血病10人、乳がん2人、肺がん8人)では、3人でがん組織が小さくなったり、進行が止まったりしたほか、9人でがん細胞の指標とされる腫瘍マーカーの値が下がった。
 その後、対象のがんを拡大。04年に始めた脳腫瘍でもがん組織が小さくなったり、進行が止まったりする例が確認された。白血病の一部で白血球や血小板が減る症状が認められたが、それ以外に目立った副作用は確認されていない。
 拡大臨床研究には東北から九州までの20医療機関が参加予定で、大阪大病院、高知大病院、愛媛大病院、広島赤十字原爆病院、大阪府立母子保健総合医療センターではすでに始めている。
 臨床研究の情報はhttp://sahswww.med.osaka-u.ac.jp/〜hmtonc/vaccine/index.htmで紹介されている。

京大、肺移植を当面自粛 indexへ

 京都大付属病院(京都市左京区)で、脳死と判定された男性から肺の移植を受けた30代の女性患者が、手術後、意識不明の状態が続いているため、同病院は2日、原因がわかるまで、肺移植手術を自粛する、と発表した。
 女性は、肺リンパ脈管筋腫症という難病で移植が必要とされていた。京大病院によると3月21日の移植手術後から脳全体に腫れが広がり、意識不明の状態が続いていた。同病院では、原因解明のための事例調査委員会を立ち上げたが、原因は特定されず、再発防止の体制が整うまで、肺移植手術の自粛を決めたという。脳死肺移植は、京大病院では5例目。このうち昨年3月には肺移植を受けた男性が8時間後に死亡している。今回は手術中から脳障害が起きたとみられ、過去にこうした例が見られなかったことから、病院側は「今回の事例を重く受け止め、改めて関係職員に注意を喚起したい」としている。
 脳死肺移植は、京大病院のほか、岡山大や大阪大、東北大など7つの大学病院が移植施設として認定されている。
 このうち、西日本では岡山大病院で8例、阪大病院で6例の脳死肺移植を実施している。
 岡山大病院の伊達洋至教授(腫瘍胸部外科)は「肺移植手術は、10%前後の手術関連死亡のあるリスクの高い手術。重篤な合併症の原因を十分に検討し、再発防止策を立てることが重要」と話した。

がん治療で注目 放医研、重粒子線装置の小型化に成功 indexへ

 イオンなどの粒子をがんにあてる重粒子線治療の装置を従来の3分の1に小型化する技術を、放射線医学総合研究所(千葉市)が開発した。群馬大が、この技術で新装置を前橋市につくる。厚生労働省の認可を経て、早ければ10年度に患者の受け入れ態勢が整うという。
 重粒子線は、がんの治療効果が注目されているが、装置が巨大で普及の壁になっていた。
 放医研では、94年から今年2月まで約2600人が重粒子線治療を受けた。期間が放射線治療の半分ですみ、手術の難しい脳腫瘍(しゅよう)などにも応用できる。03年、入院費などが保険適用される高度先進医療に指定された。
 装置は線形と円形の加速器を組み合わせ、建屋面積は7200平方メートルと巨大だ。全国でこの治療が受けられるのは他に、兵庫県立粒子線医療センターに限られる。
 放医研は今回、最も困難とされていた線形加速器で、加速電極の配置を工夫して小型化することに成功した。この技術を群馬大に提供する。新しい施設は建設面積3000平方メートルで、建設費は125億円程度。

公・民病院の統合容認 厚労省、赤字解消へ特例拡大 indexへ

 全国に千余りある自治体病院などの公的病院と民間病院の統合を促すため、厚生労働省は、病床数の多い地域で再編・統合できる特例措置を拡大する方針を決めた。約8割の公的病院が赤字(医業収支)とされ、官民の「壁」を超えた再編・統合を促して機能分化や経営の立て直しにつなげる考えだ。厚労省は医療法施行規則の運用の幅を広げ、5月中にも各都道府県に通知する。
 公立病院の一部は民間の医療法人や地元医師会に病院運営を委譲しているケースが全国で広がっているが、規制緩和により、民間主導の経営が本格的に進む可能性もある。そうなれば、患者が多く診療報酬も高い診療科が多い病院が増える一方で、へき地医療や難病治療など不採算部門の切り捨てにならないかと懸念の声も出ている。全国自治体病院協議会の小山田恵会長は、「民間経営のノウハウを採り入れることは時には重要だが、医師不足の小児科や産婦人科などの診療科目が捨てられるという行き過ぎた効率化にならないよう監視する機関が必要ではないか」と指摘している。
 医療法は、ベッド数が多い地域では開設主体の異なる病院同士の再編・統合に制約を設けていたが、赤字に加え、過剰なベッド数や医師不足の深刻化に悩む自治体側などから「ベッド数が多い地域でも病院の再編に柔軟に対応すべきだ」と規制緩和を求める声が出ていた。
 厚労省は昨年1月、合計病床数が統合前より少なくなるなら、公的病院同士に限って再編・統合を認めるようにしたが、今回、さらに特例措置を民間病院にも拡大した。
 また、各都道府県の医療審議会が認めれば、より広範囲な再編統合も可能にする。

ICU延命治療「控えた」9割 回復見込めない患者に indexへ

 集中治療室(ICU)の多くで、回復が見込めない患者に対する延命治療が手控えられる場合があることが、日本集中治療医学会の調査で明らかになった。ICU責任者など指導的な立場の医師75人に尋ねたところ、回答した60人中54人(90%)が、過去1年程度の間に「延命治療を控えたことがある」とした。こうした実態調査は珍しく、終末期医療をめぐる議論に波紋を広げそうだ。
 同学会は来年3月までに終末期医療のあり方について指針を作る方針で、今年2月にこの調査をした。手控えた内容は、血圧が急低下しても昇圧剤を使わないなどの「現状維持」が39%、薬などの量を減らす「減量治療」が28%、治療の一部をやめる「部分的中止」が27%、「すべて中止」が4%だった。
 手控えた理由は「家族の希望」(45%)よりも「医師の治療上の判断」(55%)が多かった。また、最終的な決定主体は、担当医グループが45%で最も多く、次いで医長や所属長(28%)、検討会会議(24%)と続いたが、「担当医が単独」も3%あった。70%は治療手控えは法的に問題ない、22%は問題があると考えていた。
 開業医で日本尊厳死協会副理事長の荒川迪生(みちお)さんは「スタッフや委員会で検討し、誰が見ても患者の容体が戻らないと判断した場合に延命措置を中止するのは医学的には問題ないと考えるが、患者の意思を家族から確かめることが重要だ。現場医師の間違いをなくすためにも、基本的な法律を作る必要がある」という。

HIV感染者・エイズ発症患者、過去最多の1199人 indexへ

 厚生労働省のエイズ動向委員会は28日、昨年1年間にエイズウイルス(HIV)に感染した人と、エイズを発症した患者の合計数が前年を34人上回り、過去最多の1199人にのぼったと発表した。前年に続き2年連続で1000人の大台を超え、感染者の72%を20、30代が占めた。同委員会は「学校現場などで重点的に予防策を打ち出すべきだ」と指摘している。
 委員会のまとめによると、05年のHIV感染者の総数は前年より52人多い832人。このうち日本国籍の人は741人、外国籍は91人。男女比では男性が92%。特に日本人男性の増加が目立ち、前年より73人多い過去最多の709人に達した。
 感染経路別では、感染者全体の約9割が性的接触によるもので、内訳は「同性間」が64%、「異性間」は24%だった。

延命治療中止の外科部長、射水市の福祉保健部参事に indexへ

 富山県の射水(いみず)市民病院の延命治療中止問題で、射水市は28日、6人の人工呼吸器を外したことを認めた自宅待機中の外科部長(50)を、5月1日付で市福祉保健部参事(保健担当、部長級)とする人事を発表した。
 殺人容疑を視野にした捜査が続く中、医療現場からはずれる人事異動だが、市によると、外科部長は「しかるべき人に相談してみたい」と話しているという。
 同市の宮川忠男助役は記者会見で「自宅待機を長く続けるべきではない。いろんな選択肢があったと思うが、(この措置が)市民のためにも本人のためにも一番よいのではないか」と述べた。
 同病院が問題を把握した昨年10月、院長は外科部長に自宅待機を命じた。外科部長は今年3月にいったん退職願を出したが、退職直前の同月31日に撤回。改めて分家静男市長が4月1日から1カ月間の自宅待機命令を出していた。

血管再生の遺伝子治療、効果の確証得られず 阪大委結論 indexへ

 血管再生の働きがある肝細胞増殖因子(HGF)を使い、足の動脈が詰まる患者を治療する臨床研究について、大阪大学病院の遺伝子治療臨床研究審査委員会(委員長・堀正二教授)は26日、効果の確証が得られなかったとする最終報告書案をまとめた。5月に文部科学、厚生労働両省に提出する。
 臨床研究で使われた遺伝子治療薬は、森下竜一・同大教授が主な特許を持ち、99年に事業化をめざして「アンジェスMG」を創業した。同社は01年に大手製薬会社と提携し、02年には東証マザーズに上場している。
 同委員会によると、治療は、閉塞(へいそく)性動脈硬化症などにより足の血管が詰まった患者17人の計22本の足に対し、HGFを注射。治療後の血流、潰瘍(かいよう)や痛みなどの改善具合を調べた。
 委員会によると、重症な15例のうち、9例が3、6カ月後の検査で改善を示し、うち7例が2年後の検査でも改善を維持していた。しかし、同委は、薬が効いていなくても心理的な効果で改善する偽薬効果を調べていないなどとして「改善をもたらしたとの結論に達するには科学的な根拠が十分でないと考えた」との慎重姿勢を示した。
 森下教授は「次の段階の臨床試験をしないと効果は明確にはならない」とし、アンジェスMGで100人以上を対象とした治験を進めている。

「脳死は人の死」医療スタッフで肯定4割 厚労省委報告院 indexへ

 「脳死は死の妥当な判定方法か」という問いに対し、臓器移植にかかわる病院の医療スタッフでさえ「妥当」との答えは約4割にとどまることが分かった。厚生労働省の臓器移植委員会で26日、厚労省研究班による調査結果が報告された。臓器移植法について「脳死を一律に人の死とする」など二つの改正案が国会に提出されているが、波紋を広げそうだ。
 臓器提供を扱う10都道府県の31病院で医師や看護師など医療スタッフ7456人に聞いたところ、脳死による死の判定を「妥当」と肯定したのは38.6%。「わからない」が46.9%を占め、否定も14.5%いた。
 報告書は「日本の医療スタッフは脳死について懐疑的であり、十分な経験と教育を有していないために、臓器提供者に適切なアプローチができていない」と結論づけた。
 26日の委員会で、研究班で調査にもあたった大島伸一・国立長寿医療センター総長は「がくぜんとした。根本的なところから考え直さないといけない」と報告した。
 一方、脳死を人の死とする法改正に慎重姿勢の田中英高・大阪医大助教授(小児科)は「脳死状態でも、体は温かい。わからないと答えた人が多かったのは『脳死になっても死んでいないのでは』という疑問があるからではないか」と言う。

「医療記録改ざん、偽証」 医師が教授ら告発 金沢大病院 indexへ

 臨床試験のインフォームド・コンセント(十分な説明と同意)をめぐる損害賠償請求訴訟の被告だった金沢大の医学部付属病院の教授(59)と講師(45)が、原告の患者の医療記録を改ざんして裁判でうその証言をしたとして、同病院講師の打出喜義医師(53)が26日、2人を偽証などの疑いで金沢地検に告発した。打出医師は同日午後、1日に施行された公益通報者保護法にのっとり、告発で不利益な扱いを受けることがないよう厚生労働省に求める。
 打出医師は患者側からの相談がきっかけで医療記録の改ざんを知ったという。真実をさらに明らかにしたいと公益通報者保護制度を使って告発に踏み切った。
 告発状などによると、卵巣がんで同病院に入院していた県内の女性が98年1月に比較臨床試験の対象になり、間もなく別の病院に移って治療を続けたが同年12月に51歳で死亡した。
 女性の遺族が翌年、同病院で勝手に比較臨床試験の対象にされ、精神的苦痛を受けたとして、国(後に金沢大が承継)に1080万円の損害賠償を求めて提訴。一、二審とも無断で比較試験の症例にしたと認定し、説明義務違反があったとして大学側に支払いを命じた。今月21日、最高裁決定で二審判決が確定した。
 訴訟で打出医師は、手元にあった資料をもとに「試験対象だったのは明らか」と証言していた。
 告発状によると、教授は臨床試験を統括する立場で、講師は女性の治療を担当。この講師は一審で証拠として提出した「卵巣癌(がん)症例登録票」を女性が登録の条件を満たしていないかのように改ざんし、教授は二審で「(女性は)卵巣がんじゃないので登録されていない」と偽証したとされる。

看護師が麻酔導入剤など持ち出し、自宅で服用し死亡 愛知 indexへ

 愛知県蒲郡市の市民病院(伊藤健一病院長)手術部の40歳代の男性看護師が、病院から麻酔導入剤など複数の医薬品を持ち出して自宅で服用、10日ほど前に窒息死していたことが25日わかった。何らかの原因で吐いたものをのどに詰まらせ、呼吸ができなくなったらしい。同病院は26日、記者会見して状況を説明した。
 病院によると、看護師は今月16日午後2時ごろ、自宅で倒れて死亡しているのを同僚の看護師が見つけた。近くには酒の瓶のほか、多量の医薬品の空き箱がいくつもあったという。周囲の状況から自分で服用していたとみられる。病院から無断で持ち出した医薬品は麻酔導入剤(50ミリリットル入り約150本)や精神安定剤などだった。
 蒲郡署の調べでは、死因は窒息で、検視の結果、自分で吐いたものを詰まらせていたことが分かった。遺書などはなく、周りの状況なども合わせ、同署は事件性はないと判断している。
 一方、病院側は医薬品が持ち出されていた事態を重くみて、薬の種類や管理状況などをあらためて確認している。

産婦人科医、2年で8%減 非常勤への異動など影響か indexへ

 全国の大学病院と関連病院に常勤する産婦人科医が2年間で8%減り、お産の扱いをやめた関連病院も相次いでいることが、日本産科婦人科学会(日産婦)の調査で分かった。24日、日産婦が開いた産婦人科医師不足対策などを話し合う会議で公表した。
 日産婦の「学会のあり方検討委員会」(委員長=吉川裕之・筑波大教授)が全国110の大学病院を対象に、各大学病院とその関連病院の状況を尋ね、109の大学病院から回答を得た。
 常勤産婦人科医の総数は03年4月には5151人だったが、05年7月には4739人に減った。特に近畿(13.4%減)、北陸(10.2%減)両地方での減少が目立った。お産を扱う関連病院も03年の1009病院から、2年間に95病院(9.4%)減っていた。
 日産婦は、常勤産婦人科医減少の主な要因として、複数の診療科で研修を受ける臨床研修制度が04年度にスタートしたことや、常勤から非常勤への異動などを挙げる。その一方で、常勤の産婦人科医に占める女性の割合は年々急激に大きくなっているといい、吉川委員長は「意欲はあるのに、出産や子育てで当直が出来ないばかりに、非常勤に回らざるを得なくなる女性医師も多い」としている。

厚労省がH5N1型症例案 38度の高熱や鳥との接触 indexへ

 新型インフルエンザへの変異が懸念されている鳥インフルエンザ(H5N1型)について、厚生労働省は24日、感染が疑わしい患者を診断する際の基準となる症例案を決めた。38度以上の高熱や感染可能性のある鳥への接触などで、H5N1型の「指定感染症」への指定に伴う措置。詳細を詰めて6月にも都道府県に通知する。
 同日、専門家会議で了承された案によると、感染する可能性がある鳥や人、または死んだ鳥に10日以内に1〜2メートルの範囲で接触した人で、38度以上の発熱などインフルエンザ特有の症状に加え、(1)原因不明の肺炎や呼吸困難(2)原因不明の死亡――のいずれかに当てはまる場合、病原体の検査が義務づけられる。
 検査の結果、H5N1型のウイルスや遺伝子が検出されれば、入院勧告など指定感染症が定める措置の対象になる。確定されない「疑似症患者」については、今後、対応を検討するという。

大学病院の小児科医、目立つストレス・疲労 学会が調査 indexへ

 小児科医が感じているストレスや疲労は、大学病院の勤務医で特に高く、背景には責任感による重圧や長時間労働がある――日本小児科学会のプロジェクトチームによる調査で、こんな傾向が改めて浮かび上がった。
 小児科医の労働環境の改善を検討するチームが昨年夏、学会に所属する3000人を対象に調査。948人から回答があった。23日の同学会のシンポジウムで発表する。
 労働者の平均的ストレスを基準値(100)として作られたという調査票を使って調べると、小児科医全体のストレスは112、中でも40歳代の医師で122となった。さらに勤務時間や休日数から割り出したという疲労度を比べると、特に大学病院の勤務医では、「高い疲労度」に分類される人の割合が、労働者平均の9倍近くになったという。
 ストレスの要因を選択式で答えてもらったところ、責任の重さや緊張感の持続などのほか、「病院経営におけるプレッシャー」「診療報酬の少なさ」などの回答が目立った。調査にあたった国立成育医療センターの大矢幸弘アレルギー科医長は「勤務時間の長さなどによる身体的影響のほか、総合病院の赤字解消で小児科へ向けられる要求がストレスとなっているのが実証された」という。
 対策として、同チームは(1)週の総労働時間を60時間以内とする(2)完全休日を少なくとも週1日は確保する、などの提言をし、小児科医不足に歯止めをかけたい考えだ。

呼吸器外し、発覚から1カ月 同意の有無、焦点に捜査 indexへ

 富山県射水市の射水市民病院で末期がんの患者ら7人が人工呼吸器をはずされ死亡した問題で、富山県警は遺族と病院の医師ら関係者から一通りの事情聴取を終えた。今後は殺人容疑を視野に、専門家の意見を聞きながら、立件の可否を検討する。25日で問題発覚から1カ月が経過する。
 県警内では捜査方針について様々な考えがあるが、「呼吸器をはずしたことによって患者の死期が早まったのなら、殺人容疑で送検し、検察庁に判断をゆだねるべきだ」との意見が大勢だ。
 家族同意の有無が注目されているが「同意の有無にかかわらず、捜査としては刑法の殺人罪を機械的に当てはめるしかないのではないか」との考え方だ。このためカルテの分析などを専門家に依頼、呼吸器外しと死亡との因果関係に重点を置いて捜査を進めている。
 呼吸器を外したとされる外科部長(50)は、病院が届けた7件中1件については自身の関与を否定している。他の医師の関与についても調べているが、県警内には「家族の同意を得ていることがはっきりすれば、立件は難しいのではないか」との意見も根強い。
 県警が捜査の参考にしているのが、昨年5月に北海道立羽幌病院の医師が殺人容疑で書類送検された事件だ。地検の判断はまだ出ていない。人工呼吸器をはずして患者を死亡させており、射水のケースと似ている。
 死亡した患者が1人だった羽幌病院事件は発覚から書類送検まで約1年3カ月を要した。富山県警の捜査員は「結論までにはかなりの時間がかかる」と口をそろえる。

◇外科部長「家族のこと考えて」
 病院が県警に届け出たのは7件。昨年10月12日、70歳代男性患者の人工呼吸器を外すよう外科部長から指示された内科病棟の看護師が、不審に思って副院長に報告。麻野井英次院長はすぐに院内調査委員会をつくって2日間でカルテを調べ、00〜05年にこの7件を発見した。
 同16日に県警に届け、カルテなどの書類も任意で提出。その後は「真相解明は警察に委ねる」として医師や看護師などへの独自の調査や聴取はせず、遺族にも接触していない。外科部長に対しても発覚直後に計4時間ほどの聞き取りをした後は警察に任せっきりだ。
 外科部長は10月14日以降、現在も自宅待機命令を受けている。散歩などで外出する際に報道陣との雑談に応じ、医療への思いなどについて話すこともある。「治療に最善を尽くした後、自然な形で永眠できるよう患者と家族のことを考えてやった。罪の意識はない」と、問題発覚当初から姿勢は変わらない。県警の任意聴取にも同様の話をしていると見られる。
 「何度聞き返してもいやな顔をせずに教えてくれた」「夜中2時ごろにすーっと巡回に来て触診してくれた」。患者の間で外科部長の評判はよかった。問題発覚後も「罰さないでほしい」との声が患者や市民には多い。

体外受精、事実婚カップルも 学会が指針改定 indexへ

 日本産科婦人科学会(理事長=武谷雄二・東京大教授)は22日、婚姻届を出さない事実婚カップルへの体外受精も事実上、認めることを決めた。従来は医師が戸籍の確認をする原則があったが、多様化する「結婚」のあり方に学会が根負けした形だ。
 横浜市内で同日開いた総会で、学会の「会告」(指針)などを改定した。体外受精に関する会告では、「法律上の夫婦」を原則とする記述は残したが、厳密な確認は難しく、社会的に夫婦と認められている男女に治療機会を提供しないのは「医の倫理の問題を生ずる」といった理由から、「原則には固執しない」ことを決めた。
 野田聖子衆院議員が事実婚のまま体外受精を試みるなど、事実先行の実態もあった。吉村泰典倫理委員長(慶応大教授)は記者会見で「学会として婚外子の出生を奨励はできないが、ご本人たちが望むものを拒否できない」と説明した。
 総会ではまた、2月の理事会で打ち出した受精卵診断の対象の一部拡大を正式に決めた。
 2回以上の流産経験があり、妻か夫のどちらかで染色体の一部の場所が入れ替わって遺伝情報に異常が生じる「転座」があることが確実な場合、3回以上の流産(習慣流産)を防ぐ目的で、染色体に異常が認められない受精卵だけ選んで子宮に戻すことを認める。医療機関の実施申請をもとに、遺伝カウンセリングや個人情報管理などの態勢が十分整っているか、学会が個別に審査する。
 また、産婦人科医不足の対策を考える、武谷理事長の私的諮問機関の中間報告の骨子が報告された。地域の中核病院を拠点として産科医療体制を整備する案を示すとともに、福島県立病院での帝王切開手術で母親が死亡したことに関連して、リスクの高いお産を扱う公的病院には、原則3人以上の産婦人科専任医の常勤を求める緊急提言を盛り込んだ。

タミフル耐性ウイルス、人への感染を初めて確認 indexへ

 インフルエンザ治療薬のタミフル(一般名・オセルタミビル)に耐性を持つウイルスが、国内で治療前の患者から検出されたことを、東京大医科学研究所と、けいゆう病院(神奈川県)などのグループが21日、東京で開催中の日本感染症学会で発表した。タミフル耐性ウイルスの人から人への感染が確認された初のケース。今後、耐性ウイルスが広まれば、タミフルの使用方法を見直す必要が出てくる。
 04〜05年に神奈川県内の4医療機関を受診したインフルエンザウイルスB型の患者422人を調べた。その結果、タミフルの治療を受けていない患者6人(1・4%)で、耐性を示す遺伝子変異を見つけた。3人は街の中で感染し、残り3人は家族から感染した可能性が高いという。
 これまでは耐性が出ても、ほとんど感染しないとみられていた。ただ、こうした患者も通常の治療で回復し、経過も順調だった。
 タミフルの治療を受けた患者からは、これまでも耐性ウイルスが見つかっている。また、ベトナムで鳥インフルエンザH5N1型に感染した患者で、耐性ウイルスが確認された例もある。

寝たきりから植物状態、医療事故慰謝料の減額認めぬ判断 indexへ

 寝たきりだった女性が入院中の医療事故で植物状態になった場合、慰謝料をどう算定するかが争われた訴訟の判決が20日、東京地裁であった。病院側は「普通の人の場合より減額されるべきだ」と主張したが、金井康雄裁判長は「従来問題のなかった脳機能に障害が新たに生じた以上、運動機能に重い障害があったからといって減額すべきだとはいえない」との判断を示し、女性側のほぼ請求通りの慰謝料など計3856万円を支払うよう病院側に命じた。
 虎の門病院(東京都港区)に入院していた都内在住の70代の女性とその夫らが、同病院を運営する国家公務員共済組合連合会を相手に訴えていた。
 金井裁判長は「女性が残された人生をいかに生きるのかは、生涯の中で極めて重大な意義を持つ。事故の結果、夫や子と意思疎通すらできなくなった精神的被害は極めて大きい」と述べた。
 判決によると、この女性は00年ごろ、原因不明で寝たきりとなった。虎の門病院に入院中の02年3月、看護師が女性を入浴させる際、のどに穴を開けた唯一の空気の通り道に誤って通気性のないフィルムをはりつけた。このため、女性は無酸素脳症となった。
 原告側代理人の寺町東子弁護士は「寝たきりだからといって命の値段が低いのかと提訴した。障害を持っていても健常者と同じように生きられる社会をめざす『ノーマライゼーション』の考えに沿った判決だ」と話す。

妊婦の糖尿病、年々増加 赤ちゃんの先天異常率高く indexへ

 妊婦の糖尿病(糖代謝異常)が年々増えており、特に妊娠中に検査を受けて初めて見つかるケースが多いことが日本糖尿病・妊娠学会の調査でわかった。妊娠初期に血糖値が高いと、生まれてくる赤ちゃんの心臓などで先天異常が起きる割合が通常より高い。専門家は「出産適齢期の女性、特に両親が糖尿病だったり、自分が肥満だったりする場合は、妊娠前に血糖測定検査を受けてほしい」と呼びかけている。
 調査は日本産科婦人科学会の専門医研修施設になっている医療機関816施設を対象に実施し、231施設から回答があった。96〜02年の7年間の延べ74万427人分の妊婦のデータを分析した。国内の出産数の約10分の1を占める。
 このうち5232人が「糖尿病」と診断された。全体に占める割合は96年は0.55%だったが、毎年増え続け、02年には0.87%と1.6倍になった。脂肪分の多い食事や運動不足が原因とみられる。妊娠中の検査でわかったのが全体の58%の3057人だった。妊娠前から糖尿病だったのに知らなかった人に加え、妊娠中は体質的に血糖が上昇しやすく、初めて軽めの糖代謝異常を発症する人も多い。
 また、診断された人のうち詳しいデータがそろった3973人分を解析すると、赤ちゃんに先天異常があったのは4.9%の195人で、通常の1〜2%より高い傾向がみられた。
 妊娠初期は、赤ちゃんの体中のさまざまな器官が形成される重要な時期だが、妊婦が高血糖だと、神経管異常、心房・心室中隔欠損、口蓋裂(こうがいれつ)などの先天異常になりやすいとされる。妊娠中期や後期でも血糖が高いままだと、赤ちゃんが低血糖や多血症、巨大児などになるリスクも高くなる。
 調査を担当した佐中真由実・東京女子医大糖尿病センター講師は「35歳を超えると特に妊娠糖尿病の頻度が高くなる。妊娠する前に検査を受けて、糖尿病とわかれば、食事や運動、インスリン療法などで、血糖をコントロールして出産準備ができる」と話している。

「プール熱」大流行の兆し 国立感染症研究所調べ indexへ

 発熱や結膜炎などの症状が出る咽頭(いんとう)結膜熱(プール熱)が今年、急増している。国立感染症研究所の調べでは、過去10年間の同時期と比べて最も多く、大流行した04年を上回りそうなペースという。
 感染研への全国約3000の小児科からの報告では、3月27日〜4月2日の1週間に受診した患者数は、1施設あたり0.4人。今年1月の0.25人付近から上昇傾向となり、1月中旬以降は11週連続で、大流行の04年同時期を上回っている。04年の大流行では、感染研が定点観測している小児科の患者数が前年の1.5倍にもなった。
 都道府県別では島根(1.6人)、岐阜(1.4人)、福井(1.2人)、鹿児島(1.2人)が多い。
 39度前後の発熱やのどの痛み、結膜炎などを伴うウイルス性の感染症で、子どもがかかりやすい。感染者との手指の接触などを通じて目や口からうつる。夏に流行が広がり、プールでの感染が多くプール熱と呼ばれるが、感染研によると感染は通年ある。最近の調査では、冬にも小さなピークがあると言えそうな傾向も見えてきたという。
 感染研・感染症情報センターによると、治療で症状が消えても便から1カ月間ほどウイルスが出続け、新たな感染源になるので注意が必要。予防には感染者との接触を避け、タオルを共用しないことや、手洗いの徹底が有効という。

診療報酬改定の「検証」スタート indexへ

 厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は、今年度の診療報酬改定の影響を調べる検証作業を始めた。中医協改革の一環で、改定結果の本格的な検証は初めて。セカンドオピニオンがどの程度普及するかや、新たに保険対象とした禁煙治療の成果などを調査する。
 検証項目は、医療費の明細書発行の普及度▽新設した「在宅療養支援診療所」の数や在宅での看取(みと)りの状況▽報酬を引き上げた小児科や産科の医療機関数や受診数??など20項目以上。

血液検査の「CRP値」高い人 大腸がんになりやすい indexへ

 細菌感染症など急性の炎症の指標で、一般的な血液検査項目にも含まれるCRP値が高い人ほど将来、大腸がんになりやすいことが、厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)の調査で分かった。CRP値で4グループに分け、最も高いグループ(血液1リットルあたり0.96ミリグラム以上)は、最も低いグループ(同0.24ミリグラム未満)に比べてリスクが1.6倍になっていたという。
 90年と93年に血液の提供を受けた全国約4万人の追跡調査で、がん予防などを研究している「多目的コホート研究」の成果の一つ。追跡期間中に大腸がんになった375人の一人ひとりに対して、性別や年齢などを合わせた健康な人2人ずつを抽出し、計1125人で違いを分析した。
 大腸がんの発生には潰瘍(かいよう)性大腸炎などの炎症が関係しているとの指摘があるため、血中の特殊なたんぱく質であるCRPの値との関連を詳しく調べた。その結果、通常の血液検査では血液1リットルあたり5ミリグラム以上で炎症反応「陽性」とされるが、それよりずっと低い値で、発症リスクの差が確認できた。
 CRP値は、炎症以外にも肥満や運動不足などでも値が高くなることがある。将来、大腸がんの早期発見などへの利用可能性も考えられている。

改正薬事法成立へ 大衆薬の販売見直し、1〜3類に分類 indexへ

 大衆薬(市販薬)を3ランクに分け、リスクの高いものは薬剤師による対面販売とすることや、違法ドラッグ(脱法ドラッグ)対策を柱とした薬事法改正案が18日、参院厚生労働委員会で与党と民主党、社民党の賛成多数で可決された。19日の参院本会議で可決された後に衆院に送られ、今国会で成立する見通し。
 大衆薬の販売制度の見直しは、60年に現在の薬事法が制定されてから初めて。法案成立後、具体的な情報提供のあり方などを調整し、早ければ07年にも実施される。
 新制度では、副作用の程度に応じて薬を1〜3類の3ランクに分類し、リスクの高いものについては情報提供や相談の体制を整える。
 胃腸薬「ガスター10」(ゼファーマ)や発毛剤「リアップ」(大正製薬)などのように医療用医薬品から大衆薬へと転用されたものは1類に分類し、処方箋(せん)をもとに調剤できる薬局に販売を限定。薬剤師によるカウンター越しの販売とし、副作用などについての情報提供を義務づける。
 解熱・鎮痛薬の「バファリンA」(ライオン)は2類、ビタミン剤などは3類。いずれも薬剤師がいなくても扱えるが、副作用などの知識についての試験に合格しなければ原則として販売を認めない。
 一方、違法ドラッグ対策では、興奮や幻覚作用など人体に危害がある成分を厚生労働大臣が指定薬物に定め、製造や輸入・販売・貯蔵を禁じ、医療関係者向けを除いて広告も禁止する。国と都道府県は指定薬物にあたる疑いがある場合は検査を命じ、立ち入り検査を実施できるようになる。

インフルエンザ「ほぼ終息」 国立感染症研が発表 indexへ

 今冬のインフルエンザの流行について、国立感染症研究所は18日、「ほぼ終息の段階に達した」と発表した。全国5000医療機関の定点調査で、4月3〜9日の1施設あたりの患者報告数が0.68人となり、流行期の目安としている1.0人を下回った。
 同研究所によると、流行のピークは1月下旬で、規模は平年並みだった。ウイルスの型別では、A香港型73.7%、Aソ連型23.5%だった。昨シーズンに大流行したB型は2.7%だった。

薬物による急性肝炎の早期診断に道 慶大教授ら指標発見 indexへ

 解熱鎮痛薬として広く使われるアセトアミノフェンの大量摂取で起こる急性肝炎の早期診断の確立につながる指標(バイオマーカー)を、慶応大の曽我朋義教授(先端生命科学研究所)と末松誠教授(医化学)らのグループが見つけた。薬物による肝炎の早期診断法はこれまでなかったといい、研究が進めばアルツハイマー病やがんなどの早期診断にも利用できそうだという。
 指標となるのは、オフタルミン酸と呼ばれる物質の血液中の濃度。研究グループは、アセトアミノフェンを大量にネズミに与え、急性肝炎が起きるとこれが急上昇することを見つけた。
 米国では毎年100人以上がアセトアミノフェン中毒で死亡している。今回の発見が人間でも確認できれば、血液検査だけで早期に診断でき、適切な治療も可能になる。
 オフタルミン酸は、体内で酸化と抗酸化のバランスが崩れる酸化ストレスによって発生する。今後、血中の濃度変化を詳しく分析することで、酸化ストレスが原因で発症するがんやアルツハイマー病、パーキンソン病や心筋梗塞(こうそく)などへの応用も期待できるという。
 小俣政男・東京大教授(消化器内科)は「ウイルス性の急性肝炎は多くの検査手法があるが、薬物によるものはほとんどないのが現状だ。今回の発見が臨床試験でも確認できれば、早期診断に期待できる。他の薬物にも応用できれば、さらに重要性は高い」と話す。

病院勤務医の労働時間、週60時間超 厚労省が実態調査 indexへ

 病院の勤務医は週60時間以上も職場にいて、このうち3分の1は会議や研修など診療以外に忙殺されている――。厚生労働省の研究機関・国立保健医療科学院による医師の勤務状況調査(中間報告)で、診療以外の仕事が過酷な勤務に拍車をかけている様子が浮かび上がった。
 昨年11〜12月、全国188施設の勤務医6650人にアンケートしたところ、常勤医が勤務先の病院に入ってから出るまでの「勤務時間」は週平均63.3時間。最長152.5時間という医師もいた。
 診療科別では、産婦人科が69.3時間で最も長く、小児科が68・4時間、外科が66.1時間、麻酔科と内科がともに63.3時間などだった。
 だが、勤務の内訳を見ると、実際に患者を診ている「外来診療」(15.3時間)と「入院診療」(24.4時間)を合わせても勤務時間全体の6割程度。残りの時間は、「自己研修」(4.4時間)、「研究」(2.7時間)、「その他(会議など)」(6.8時間)などに費やされていた。
 3年以上同じ病院に勤務している医師に、3年前と比べた負担感の違いを尋ねると、67.7%が「3年前より負担が増えた」と回答。理由には複数回答で、「会議など診療外業務」(62.3%)、「教育・指導」(49.4%)、「外来患者数の増加」(48.3%)などを挙げていた。
 厚労省は「医師の負担は診療時間の長さや患者の人数だけで判断されがちだが、実際は労働形態が複雑で多様化している。現場の医師の負担は診療以外の仕事も含めて把握し、労働状況の改善策を考えるべきだ」としている。

顔面移植手術、中国でも成功 世界2例目 indexへ

 中国で熊に襲われて顔面の3分の2を損傷した男性(30)に、他人の顔面の一部を移植する手術が行われ、成功した。15日付の中国各紙が報じた。フランスで昨年、世界初となる顔面移植手術が実施されたが、今回の移植手術を行った病院は「より範囲が広く複雑な手術だった」と説明している。
 報道によると、男性は雲南省の山中で2年前に熊に襲われ、顔の右半分などを大きく損傷したほか、鼻と上唇を失った。
 手術は、陝西省の西安第4軍医大学西京病院で、医師10人が約14時間かけて実施。全身麻酔をした男性に、脳死と判定された男性ドナーから採取した皮膚、皮下組織、微細な筋肉、血管などを移植した。執刀した医師によると、半年後には自然な表情が出るようになるという。
 病院関係者は、今回の成功は「我が国の移植分野での画期的な進展」と位置づける一方、犯罪者の人相を変えるなど技術の悪用は決して許さない、としている。

国立大病院に「通信簿」 400項目の偏差値集計 indexへ

 全国42のすべての国立大学病院に今夏にも「通信簿」ができることになった。国立大学付属病院長会議が、各病院に診療領域別の手術件数から患者の満足度まで約400項目の報告を求め、項目ごとの順位や偏差値を各病院に随時提供する。課題の発見と医療の質向上に役立つとして実施を決め、公・私立大病院にも参加を呼びかけている。当面、一般公開しないなど課題はあるが、各地でトップを自任してきた大学病院が、優劣のはっきりする相互比較に踏み出すのは画期的だ。
 新たに作る「国立大学付属病院データベース」は医師数、看護師数、入院患者数、平均的な入院日数といった基礎的な項目から、患者・家族からの苦情件数、患者満足度、患者アンケートに基づく改善点まで多岐にわたる。
 がんの手術や各種臓器移植の件数のほか、一般手術については心臓血管外科、腹部外科など領域別に、一部領域では難易度別でも件数の報告を求める。内視鏡や心臓カテーテルによる治療件数、体外受精件数も対象だ。
 さらに、予定手術後48時間以内の再手術件数や、術後31日以内の死亡患者数、医薬品や医療用具による副作用報告件数、院内感染や医療事故の件数など、従来、各病院が報告に消極的だった項目も含まれる。
 各病院には、各項目について、他の病院名は伏せたうえで全体の中での成績を知らせる。約半年ごとをめどに通知する予定。一般には当面、各項目の全病院平均などに限って公開する見通しだ。
 同会議・運営改善問題小委員会(委員長=井口昭久・名古屋大病院長)によると、国立大病院の社会責任を果たす取り組みだという。国立大病院は毎年、予算要求などの手続きで、文部科学省や厚生労働省などに、年間4000〜5000項目ものデータを提出している。こうした業務負担の効率化にもつながるとしている。
 大学病院を含め施設間の医療技術と成績に差があることは医療界の常識だが、とりわけ大学病院は、優劣比較につながる情報公開には消極的だった。しかし、今国会で審議中の医療法改正案には、今回データベース化するような情報を一般公開させる仕組みが盛り込まれている。手術件数などの実績や専門外来の設置有無のほか、将来は医療の成績情報も公開の検討対象になる見通しで、大学病院も基盤整備を迫られていた。

小児科医、夜の診療平均13人 36時間連続も indexへ

 小児救急の拠点病院で、宿直や夜勤の小児科医が一晩に診る患者は平均で約13人にのぼることが、厚生労働省の実態調査でわかった。「宿直が月15回」「36時間働き通し」といったケースもあった。厚労省ではこうしたデータを参考に、小児救急医の待遇改善などに向けた検討を進める方針だ。
 小児救急の拠点病院では常時、小児科医が対応している。全国27カ所を対象に昨年11月、1カ月間の勤務状況を常勤医約270人にアンケートした。
 それによると、診療時間後から午後10時までの「夜間帯」に医師1人が診察した患者は平均8.1人。午後10時から翌朝6時までの「深夜帯」は平均5.2人だった。最も多いケースでは、夜間帯に26人、深夜帯で39人を、それぞれ1人の医師が診ていた。
 宿直・夜勤の回数は月平均4.5回で、最も多い医師で月15回。24時間以上連続しての勤務は平均2.4回で、最も多い人では月10回にのぼった。宿直や夜勤が明けた後も勤務を続けている医師は約7割で、最長で36時間働き続けていたケースもあった。
 一方、宿直時の診療に対し、労基法で定める割増賃金など宿直手当以外の手当を支給していた病院は半数にとどまった。
 小児救急医療では、軽い症状でも夜間や休日に駆け込んでくる急患が多い。医師不足や地域的な偏在なども過酷な労働に拍車をかけ、若手医師の小児科離れの一因になっていると指摘される。
 同省は今回の調査とは別に、約400の小児救急に携わる病院で実態調査を進めており、小児救急病院の集約化など改善策を検討するのに役立てたいとしている。

研究用の卵子提供禁止を緩和へ 文科省部会 indexへ

 人クローン胚(はい)からさまざまな生体組織になりえる胚性幹細胞(ES細胞)研究の指針づくりを進める文部科学省科学技術・学術審議会作業部会が14日開かれ、ボランティアによる卵子の無償提供について「将来は必要」と判断した。これまでの「原則禁止」を緩和した格好で、開始時期や条件については今後、検討する。
 国の総合科学技術会議(議長=小泉首相)は04年7月、クローンES細胞研究を条件つきで容認する報告書をまとめた。この中で、未婚女性などが純粋に研究のためだけに卵子を無償提供する行為について、人間の道具化や手段化につながる心配があったり、本当に自由意思なのかが問われたりするとして「原則、認めるべきでない」とした。だが、「例外を排除していない」という立場の文科省が、道を探っていた。
 研究用の卵子提供をめぐっては、韓国ソウル大チームによるクローンES細胞研究の論文捏造(ねつぞう)の過程で、半数の卵子提供者に金銭が渡っていたことが問題になり、日本の卵子提供についても関心が高まっていた。

医療改革審議、与党大量欠席で一時中断 自民からも批判 indexへ

 医療制度改革法案を審議している衆院厚生労働委員会が14日、与党委員らの欠席で定足数に満たなくなり、審議が中断する一幕があった。同委は民主党が対案として提出した「がん対策基本法案」の審議を求める野党が12日の委員会を欠席し、この日、正常化したばかり。与党内からも「猛省を」との批判が出た。
 衆院厚労委は与党31人(自民28、公明3)、野党14人(民主11、共産・社民・国民新党各1)の45人。午前9時過ぎから審議が始まった後、委員が1人、2人と退出し始めた。
 民主党のトップバッターの菊田真紀子議員が質問していた正午ごろには、与党の欠席は20人近くに。野党側にも数人の欠席があり、定足数(過半数の23人)を割り込んだため、菊田氏は質問をやめ、委員会は約10分間中断。結局、残りの質問を午後に回して昼の休憩に入った。
 審議は午後に再開されたが、野党側筆頭理事の山井和則議員(民主)は「我々の対案を審議させてくれない上、民主党が質問している時にいないなんて」と憤慨。同日午後の自民党代議士会では、江渡聡徳(あきのり)・議運理事が「このようなばかげたことは二度と起こしてはならない。委員の先生方の猛省を促す」と異例の注意をした。

H5N1型鳥インフルエンザ、指定感染症に 厚労省 indexへ

 新型インフルエンザへの変異が懸念されている鳥インフルエンザ(H5N1型)について、厚生労働省は14日、感染症法の「指定感染症」に指定し、感染者の強制入院や就業制限などの措置がとれるようにすることを決めた。検疫法の「検疫感染症」にも指定し、感染の疑いがある海外からの入国者らに対しても健康診断などを義務づける。
 厚労省は当初、新型インフルエンザ対策の行動計画で、人から人への小規模感染が確認された時点での指定を考えていた。しかし、鳥から人への感染による死者が、今年に入ってアジアから中近東にも拡大していることなどから前倒しした。
 感染者に対する具体的な措置の内容は、14日の厚生科学審議会感染症分科会で議論。そのうえで政令で指定する。
 感染症法は、感染力や致死率などに応じて危険度が高い順に感染症を1〜5類に分類し、患者らへの措置を定めている。H5N1型は4類に分類されていて強制入院などはできないが、指定感染症に指定されると、1年の期限付きで1〜3類の規定が準用できる。必要に応じ、指定の1年延長も可能だ。
 分科会に示された厚労省案では、「2類感染症」の規定を準用。H5N1型ウイルスが検出された人を対象に、健康診断の勧告や強制入院、就業の制限などができる。一方で、感染者が見つかった建物への立ち入り禁止や交通制限などより強い措置については、「人から人への感染はまだ例外的」(担当者)として、盛り込まなかった。
 指定感染症への指定は、03年7月の新型肺炎SARS以来、2例目。

凍結精子で夫の死後妊娠、認知見直しか 最高裁で弁論へ indexへ

 西日本に住む40代の女性が夫の死後、凍結保存していた精子による体外受精で男児を出産したとして、男児を夫の子として認知するよう求めた訴訟について、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は14日、認知訴訟で被告となる検察側の上告を受理し、7月7日に弁論を開くと決め、関係者に通知した。死亡した男性の子と認知した高松高裁の判決が見直される公算だ。
 同様の死後認知をめぐる訴訟は高裁レベルで判断が分かれている。ほかにも上告されているが、最高裁が弁論期日を指定するのは初めて。最高裁の初判断は、生殖補助医療を巡る議論に大きな影響を与えそうだ。
 高裁判決などによると、出産した女性の夫が98年、無精子症になる恐れがある放射線治療に備えて医療機関で精子を冷凍保存し、99年に病死した。女性は夫の精子で体外受精を試み、01年に男児を出産。出生届を出したが、夫の死後300日以上たって生まれており、夫婦間の子どもと認められないとして受理されなかった。このため、02年6月に提訴した。
 民法は、親の死から3年以内であれば、死後の認知を求める訴えを起こせると定めている。だが、親が生きていた間の妊娠を前提としており、医療技術の進歩による精子凍結保存という事態は想定していない。

医療改革法案審議、野党「欠席」で開始 衆院厚労委 indexへ

 高齢者の負担増などを柱とする医療制度改革法案が12日、衆院厚生労働委員会で実質審議入りした。民主党が対案として提出した「がん対策基本法案」の扱いなどを巡って与野党が対立、同党や社民党、国民新党などが出席を拒否し、委員会開会が2時間近く遅れ、野党欠席のまま審議がスタート。後半国会の重要法案の一つである医療改革法案は冒頭から与野党がぶつかる、波乱含みの審議入りとなった。
 「がん対策基本法案」は民主党が政府案への対案として4日に提出した3法案の一つ。これに対し、与党側もがん対策については検討しているとして、与党案がまとまった段階で民主案と一緒に審議するとの考えを示し、がん対策を除く2法案だけ政府案と一緒に審議することになった。
 これについて、民主党は11日の同委理事懇談会で「がん対策は最も重要な対立点で、いつ議論できるのか分からないのでは審議に応じられない」と主張。法案提出の時期を明示するよう求めたが与党側と折り合いがつかず、結局は岸田文雄委員長が職権で12日の同委開催を決定した。

重い筋無力症、メカニズム解明 愛媛大教授ら indexへ

 全身の筋力が衰える難病の重症筋無力症のうち、症状が重く薬も効きにくい患者の発症メカニズムを、愛媛大医学部と東京都老人総合研究所のグループが突きとめた。米医学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版に発表した。診断法や治療薬の開発の糸口となりそうだ。
 重症筋無力症は、まぶたが垂れ下がったり、疲れやすくなったりし、重症化すると呼吸筋がマヒすることもある。厚生労働省から特定疾患に指定されており、患者は全国で約1万4000人。
 病原体を攻撃し、体を守る役割の抗体が、自分の組織を破壊する自己免疫反応が原因。大部分は、神経から指令を受ける筋肉細胞の受容体が、抗体の攻撃を受けていることがわかっているが、重症化しやすい約1割の発症過程は不明だった。
 愛媛大の重本和宏・助教授(予防医学)らは重症患者の体内から見つかった別の抗体に着目。筋肉細胞の受容体の活動を助ける膜たんぱく質を攻撃する性質があることがわかった。この抗体をもつウサギを人為的に作り出したところ、重度の筋力低下が現れ、人の発症の引き金にもなることが裏付けられた。

リウマチなどの新薬、英で臨床試験に参加の2人重体 indexへ

 英国でリウマチや白血病などの新薬の臨床試験(治験)に参加した健康な男性6人が多臓器不全などを発症、うち2人が一時重体となった。原因が特定できず、英政府は専門家による国際的な調査委員会を設けた。ボランティアに支えられている治験の根幹を揺るがす事故で、日本の厚生労働省も関心を持ち情報を集めている。英科学誌ネイチャーは12日、インターネットで緊急報告した。
 事故は先月13日、ロンドン北西部にあるノースウィック・パーク病院で、治験請負会社が独テゲネロ社の新薬(TGN1412)の安全性を確かめる第1相試験として、初めて人に使った際に起きた。参加した男性8人のうち、比較のため偽薬を使った2人を除く6人全員が、注射直後から激しい頭痛や吐き気などを訴え、集中治療室に移された。6人とも4月上旬までに危機的な状況は脱した。
 この薬は抗体医薬という新しいタイプの薬で、免疫機能の調節を狙う。サルでの実験では問題は起きていなかった。
 英政府はこの治験の承認を一時取り消し、調査チームを派遣。中間報告では製造や調剤、投薬でのミスは認められず、サルでは起きない免疫反応が起きた可能性があると推測している。
 厚労省によると、国内でこの薬の治験は予定されていないが、「近年にない大きな治験事故なので情報を集めている」(審査管理課)と言う。

喫煙者の心筋梗塞は3倍 厚労省研究班の調査 indexへ

 たばこを吸う人は吸わない人に比べて、3倍ほど心筋梗塞(こうそく)になりやすい――。4万人規模の追跡調査によるこんな結果を厚生労働省の研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)がまとめた。禁煙すると2年以内に病気のリスクが下がっており、禁煙の効果は大きいという。
 磯博康・大阪大教授(公衆衛生学)らがまとめた。岩手、秋田、長野、沖縄の4県の40〜59歳の住民約4万人を11年間追跡調査した。この間、男性174人、女性43人が心筋梗塞を発症していた。たばこを吸う人が心筋梗塞になるリスクは吸わない人に比べて、男性で3.6倍、女性で2.9倍だった。
 男性で、喫煙本数別に分析すると、1日に1〜14本で3.2倍、15〜34本で3.6倍、35本以上で4.4倍と増えていた。禁煙後の年数と、心筋梗塞と狭心症を合わせた虚血性心疾患のリスクをみると、2年以内でも急激に低下していた。女性は発症者数が少なく、本数別など詳しい分析はできなかった。
 喫煙で血液が固まりやすくなることは、動物実験でわかっている。磯さんらは、喫煙が動脈硬化を促進し、心筋梗塞を起こしやすくしているとみている。

ボシュロムのコンタクト洗浄液、角膜炎の恐れ FDA indexへ

 米食品医薬品局(FDA)は10日、同国のコンタクトレンズメーカー、ボシュ・アンド・ロム(ボシュロム)が製造販売しているコンタクトレンズ洗浄液「レニュー(ReNu)」の使用で、フザリウム菌による角膜炎に感染する恐れがあるとして、使用に際しては洗浄方法など説明書の指示をよく守るよう消費者に呼び掛ける警告を発表した。
 これを受け同社は、レニュー各種製品のうち「モイスチャーロック」について、米国内での出荷を自主的に一時停止すると発表した。レニュー各種製品は日本でも販売されている。(時事)

がん患者の相談窓口を一元化へ 厚労省、まず静岡から indexへ

 「主治医と別の医師に治療法を聞きたい」「通院する時、子どもを預かってもらう施設は」――。厚生労働省は、がん患者らの治療方法や生活に関する様々な問い合わせを、地元の役所で一括して受け付ける仕組みづくりの検討を始める。自治体に問い合わせても各課を「たらい回し」にされ、明確な答えが得られにくい実態を反省。07年秋に、同省研究班が静岡県内の全自治体でスタート。その結果を踏まえ、全国の自治体での展開を検討する。
 がんは日本人の死因のトップを占め、3人に1人が死亡している。患者の増加にともない、雑誌や書籍、ネットなどで治療方法や医療機関の情報は増えてきたが、治療方法を始め、生活全般の悩みに幅広く答えられる仕組みはほとんどなかった。
 このため、厚労省研究班(班長=山口建・静岡県立静岡がんセンター総長)は、がん患者約8000人を対象にアンケートを実施。04年3月に、そこで得られた患者の悩みや知りたいことを分析し公表。患者会の意見も聞いて患者側のニーズを整理した。
 禁煙や食事指導といった予防を始め、がんの検診、セカンドオピニオンを受け付ける病院などの紹介、治療方法、社会復帰までの対応、在宅での緩和ケアなどに大きく区分し、それぞれに多い質問を約60に分類した。
 これをもとに、自治体用に「よくある質問と答え」をまとめた冊子を今後つくり、さらにデータベース化する作業も進めている。
 静岡県で実施するモデル事業では、県内の全42市町の役場を対象に、一括して相談を受け付ける「ワンストップ窓口」を実施した場合、市町レベルで対応できるものと、県、国、民間病院に頼るものを調査。それぞれの市町で、約60の質問について答えられる連絡先をリストアップする。
 身近な役所に、こうした窓口が整備されれば、質問の「たらい回し」がなくなり、患者が求める情報を得やすくなるほか、自治体側も医療サービスの実態が分かり、足りないサービスを把握できる。
 厚労省はこの事業をもとに、足りない質問と回答やがん患者の悩みをよりていねいに分析したうえで、各都道府県に、静岡のノウハウを説明し、全国の自治体にサービスを広げていきたい考えだ。
 研究班長の山口さんは「これまで自治体は『患者のことは病院にお任せ』という姿勢だったが、身近な役所の方が患者は問い合わせしやすい」と話している。

C型肝炎感染者、肝機能「正常」でも要治療 数万人該当 indexへ

 国内で200万人ともいわれるC型肝炎ウイルス(HCV)感染者のうち、肝機能検査が「正常」とされた人でも、実際は慢性肝炎が進行し、治療が必要なケースがあることが分かった。厚生労働省の肝炎治療標準化の研究班(班長=熊田博光・虎の門病院副院長)が、対応する治療指針をまとめた。新たに治療が必要になる感染者は、少なくとも数万人に上ると同研究班はみている。
 C型肝炎は、ウイルス感染がわかっても肝機能の代表的な検査値のALT(GPTともいう)が「正常」だと、一般的に治療はしない。ALTは、肝細胞が傷ついた時に血液中に放出される酵素。
 ところが、これまで「正常」の基準が医療現場ごとに違っていた。研究班員の岡上(おかのうえ)武・京都府立医大教授が全国72大学病院を調べたところ、ALTの「正常値」は、血液1リットル中25IU(国際単位)以下から50IU以下までと2倍の開きがあった。
 さらに、調査対象の58%に当たる42病院が採用している基準(40〜50IU以下)では、問題がないとみられる40IU以下の感染者580人を調べた。すると、血小板が15万未満の場合に、肝臓の組織を取る詳しい検査(肝生検)などを行うと、45%がすでに治療が必要なほど悪化していた。
 新たな指針は、ALTと血小板数の数値を組み合わせ、治療の必要性を判断する。血小板は、慢性肝炎の進行で少なくなる。例えば、ALTが31〜40IUで血小板数15万未満の場合、患者の年齢やウイルス型、薬の副作用などを考慮して、抗ウイルス治療を選択するよう勧めている。リスクのある肝生検をしない医療機関でも対応できるのが、指針の特徴だ。
 02年度から国の方針でHCV検査が40歳以上を対象に始まったが、「正常」とされる感染者は推定40万〜50万人。こうした人々を対象とした明確な治療指針がなかった。

公立病院の治療代未払い急増 低所得者の増加など影響 indexへ

 都道府県と政令指定都市が運営する全国248の公立病院で、患者から支払われていない治療代(未収金)が昨年3月末で1病院あたり約3300万円に上っていることが、朝日新聞社の調査で分かった。過去3年間で1病院あたり1000万円も増え、1億円を超える病院もあった。自治体の多くが低所得者の増加と医療費の自己負担引き上げが原因と回答。03年度のサラリーマン本人の負担増など、国の医療制度改革も未収金急増に追い打ちをかけた格好だ。病院経営の圧迫要因にもなりかねず、各自治体とも対策に苦慮している。
 計62自治体に質問票を郵送し、1年以上未払いの治療代などを尋ねた。61自治体が回答した。
 この結果、未収金の総額は昨年3月末で80億7686万円。1病院あたりでは、02年3月末に2250万円だったが、03年2650万円、04年2941万円、05年3256万円になっていた。
 病床数や開設診療科などによって病院ごとのばらつきはあるが、自治体ごとに1病院平均をみると、沖縄県(病院数7)は1億3093万円、仙台市(同1)は1億7862万円、札幌市(同1)は1億3860万円。一方、北海道(同9)は839万円、福岡県(同5)は770万円、熊本県(同1)は98万円だった。
 未収になりやすいケースとしては、高額の手術や入院、救急患者、出産時の入院などが挙がった。「国民健康保険料の滞納で保険証を交付されず、保険適用分も含めて、いったん全額を払わなければならない人の未払いも目立つ」と答える自治体もあった。
 未収金発生の原因(選択式、複数回答)では、「低所得者の増加」が74%で最多。具体的には「生活保護には至らないが、生活が困窮している患者」(埼玉県)、「年金生活者、多重債務者、無保険者、失業中の人」(鳥取県)などだった。貯金ゼロや生活保護世帯の急増が背景にあるとみられる。
 次いで「医療費の自己負担増」が64%。高齢者の1割負担徹底(02年10月)▽サラリーマン本人負担の2割から3割への引き上げ(03年4月)▽高額な医療費の負担上限を上げた高額療養費制度の改定(01〜03年)といった政策との関連を各自治体とも指摘。「02、03年ごろの負担割合引き上げから顕著」(福井県)、「負担増に伴って増加傾向」(横浜市)などとする見方が多かった。
 「患者のモラル低下」は31%。治療後、連絡がとれなくなる例もあった。
 未収金が経営に及ぼす影響(選択式)については、41自治体が「(経営難の)要因の一つ」と回答。簡裁を通じた督促や訴訟などの法的措置をとる自治体も出てきていた。同時に聞いた「病院経営での累積赤字」の総額は8011億円に上っていた。

患者144人の個人情報入りのパソコン盗難 虎の門病院 indexへ

 虎の門病院(東京都港区虎ノ門・山口徹院長)は7日、20代の医師が退院した患者144人分の氏名や病歴などの個人情報が入ったパソコンを盗まれたと発表した。
 この医師は3月末、同病院を退職。同月末から今月6日にかけて、都内の自宅を留守にしていた間に空き巣被害に遭い、パソコン2台を盗まれたという。パソコンには、この医師が同病院で担当した患者の治療歴が保管されていたという。パソコンにはパスワードは設定されているが、データの暗号化などはされていないという。
 同病院では、昨年4月の個人情報保護法施行後、患者の個人情報を持ち出す場合は、氏名などを匿名化した上で、病院に届け出ることを義務づけていた。この医師は届け出を怠っていたという。
 記者会見で、山口院長は「患者やご家族に迷惑をかけて申し訳ない」と陳謝したが、紛失した医師の性別や担当部局などについては「(紛失した医師)本人の了解を得られない」などとして、一切公表しなかった。
 同病院では、今年1月にも、外科の医師が患者580人分の個人情報が入ったUSBメモリーを紛失している。

臓器提供の意思、夏から携帯やパソコンでも手続き indexへ

 脳死や心停止になった際、臓器移植のための臓器提供を望むかどうかの意思の登録手続きが、今夏から、携帯電話やパソコンからもできるようになる。従来通り有効となるには意思表示カードなどの書面に署名が必要だが、ネットを使うことで幅広く希望者を集められるうえ、家族の要望を受けて検索し提供意思の確認を早くできるメリットもある。
 新システムでは、登録希望者がパソコンや携帯電話から、社団法人「日本臓器移植ネットワーク」のサイトにアクセスし、名前や生年月日、住所、メールアドレスなど必要事項を入力し、脳死下と心停止下での臓器提供に同意するか、どの臓器を提供するかを選ぶ。逆に、提供したくない意思も登録でき、変更もできるようにする。
 ただし、臓器移植法では本人の「書面」による意思表示が必要とされているため、登録後、ネットワークから郵送される意思表示カードに署名するか、登録画面を印刷した書面に署名して初めて有効になる。
 これまで、臓器提供の意思確認は、コンビニエンスストア、郵便局などで配られているカードによって行われており、持っていることを家族に伝えていなかったり、記載不備で提供意思が生かされなかったりするなどの問題もあった。
 今後、ネットを使って登録すれば、カードの有無が分からなくても、家族の要望があれば検索し、意思を確認することができる。
 内閣府の04年調査では、カード所持率は10.5%。厚労省によると、臓器提供意思のネット登録は、英国やオーストラリアなどで導入されている。

別の家族も「依頼」 射水市民病院、呼吸器外し indexへ

 富山県射水市の射水市民病院で患者7人が、人工呼吸器を外された後に死亡していた問題で、03年に死亡した60歳代男性の家族が5日、朝日新聞の取材に応じた。この家族は、内科医から回復の見込みがないことを告げられ、実際に呼吸器を外したのは外科医だった、と話した。別の患者の家族の証言と同様、家族から病院側に人工呼吸器を外すことを依頼した、としている。
 家族の証言は、05年春に死亡した50歳代女性の家族に続き2例目。女性の場合は、脳外科医から回復の見込みがないことの説明を受け、外科部長に取り外しを頼んでいた。ともに7人のうちの2人とみられ、家族は県警の任意の事情聴取にも応じたという。
 60歳代男性の家族によると、男性は03年初めに持病の糖尿病が悪化して同病院に入院。その時の検査で胃がんが見つかり、2月にがんの摘出手術をした。その後容体が急変し、人工呼吸器を装着したという。
 3月に入ると意識がない状態が続き、糖尿病の治療を担当した内科医から「回復するのは難しい」との説明を受けた。家族は駆けつけた親族らと相談、病院側に「これ以上見るに忍びない。もうおしまいにしてください」と人工呼吸器を外すよう依頼し、その後「がんの手術をした外科の先生」らが人工呼吸器を外した、としている。

小児科医の復職支援、労働条件ネット提供 indexへ

 「託児所を利用できます」「急に休んでも、ほかの医師がカバーしてくれます」。医師不足が深刻な小児科で、休職中の医師に、求人希望の医療機関がきめ細かい労働条件をインターネットで提供する「小児科医バンク」制度を、日本小児科学会が計画している。特に、出産や子育てなどで辞めた女性医師の復職を促し、過酷な小児科医の労働環境を改善する狙いだ。今月内にまずは大阪で試験的に始める。
 同学会の昨年の調査では、病院に勤務する小児科医のうち女性の占める割合は27%で、ほかの診療科に比べても高い。20代では43%、30代では32%だが、出産や育児をきっかけにやめる人が多い。一方、小児科医は夜間の急病患者の診察などで時間外診療が増え、過酷な労働環境が指摘されており、医師の確保が大きな課題となっている。
 「大阪小児科医バンク」では、小児科医を求める医療機関が、仕事の内容や必要資格・経験といった基本的な条件だけでなく、託児所や保育所を利用できるか▽勤務時間の調整や急な変更ができるか▽超過勤務や当直、急な呼び出しはあるか▽急に休んだ時、ほかの医師によるカバーがあるか――など、きめ細かい労働条件を掲載する。休職中の小児科医はこれを見て、医療機関に直接連絡して雇用契約を結ぶ。バンク自体は個々の契約については関与しない。
 同学会の藤村正哲理事は「女性医師の休職・離職は、小児科医の労働力確保で大きな課題だが、これまで対策が十分ではなかった。将来的には、小児科医バンクを全国に広げたい」と話す。

射水市民病院 家族が「呼吸器外して」と外科部長に依頼 indexへ

 富山県射水市の射水市民病院で患者7人の人工呼吸器が外され死亡したとされる問題で、05年春に死亡した50歳代の女性の家族が4日、朝日新聞社の取材に応じた。脳外科医から回復の見込みがないことを告げられた後、外科部長に人工呼吸器を外すことを家族から依頼したという。7人のうちの1人とみられ、県警の任意の事情聴取にも応じたという。
 家族によると、女性は約3年前に胃がんで同病院に入院し、手術を受けた後は自宅で療養。家族はこの時、女性から「自分がもしがんの末期なら延命治療をしないでくれ」「チューブにつながれたままで生きていたくない」などと言われていたという。
 女性は約1年前、インフルエンザがきっかけで再入院し、容体が急変して人工呼吸器を装着した。その後意識が戻らず、家族らは別室で脳外科医から「回復の見込みはありません」などと説明を受けたという。
 家族らは病室に戻り、主治医だった外科部長に「外してください」と依頼。外科部長が人工呼吸器のスイッチを切り、看護師が挿管されたチューブを抜いた。病院側から外すことを促す発言があったかどうかは記憶にないという。
 同病院が、外科部長の人工呼吸器取り外しの手順に問題があったとしている点について、家族は「ああいう状態では十分なやりとりだった」「入院した時やまだ元気な時に、書類などがあればこのようなトラブルにならなかったのではないか」と話している。

人工呼吸器外しの射水市民病院 終末期医療委員会を設置 indexへ

 富山県射水市の射水市民病院の外科部長らが末期患者7人から人工呼吸器を外し死亡させたとされる問題で、同病院は4日、終末期医療委員会を設置することを決めた。個々の患者の終末期の治療方針を判断するほか、延命治療中止の手続きなど終末期医療の指針を策定するかどうかを検討する。
 同病院では終末期医療に関する院内基準はなく、各医師が判断していた。昨年10月中旬に外科部長が末期患者から人工呼吸器を外そうとしたことが明らかになったため、常設機関として倫理委員会を設置した。その下部組織として終末期医療委員会を置く。患者の人工呼吸器の着脱なども判断する見通し。メンバーは医師、看護師ら14人。同病院に勤務する職員で構成する。

遺伝情報保護へ協議会 DNA保管の企業・団体 indexへ

 DNAを使った親子鑑定や、災害に備えた身元確認用のDNA保管などに携わる約30の企業・団体が集まり4日午後、東京で「個人遺伝情報取扱協議会」を発足させる。バイオ技術の進歩でDNAを活用したビジネスが本格化しようとしている一方、遺伝情報の保護が万全かが課題になっている。経済産業省は昨年4月、事業者向けの個人遺伝情報保護ガイドラインを施行しており、協議会ではガイドラインに従った厳格な運用を図る。
 経産省ガイドラインはDNA鑑定などの個人遺伝情報を扱う事業者に対し、(1)十分な説明をして同意を得る(2)利用目的を特定し目的外使用を原則禁止(3)DNAなどの試料は個人名が分からないように匿名化して保管する、などを求めている。
 しかし、DNAを扱う企業にはベンチャー的な中小企業も多く、経産省としても業界の実態を十分には把握できていない状況だ。協議会では関連する企業に参加を呼びかけ、研修会を開くなどして、ガイドラインの徹底や技術の向上を目指す。
 協議会の設立世話人でDNA親子鑑定などに携わる日本ジェノミクス(本社・東京)の松尾啓介社長は「遺伝情報の流出などがあると国民の信頼を失う。業界としてきちんとした対応を取らなければならない」と語る。
 現実には、DNAを利用した事業は広がっている。協議会に加わる愛知県歯科医師会は04年11月から一般市民向けのDNA保管事業を始め、3月末までに847人分を保管した。大災害や事故の犠牲者になって身元が分からなくなった場合、保管したDNAを使って個人を識別するのが主な目的。歯科医が器具で口の中の粘膜細胞をぬぐってDNAを採取する。採取・保管の費用は1人1万500円。経産省ガイドラインに従い、DNA試料を番号で管理するなどの対応をしている。
 このほか、遺伝子の型の違いを健康管理に利用する動きもあり、今後、参入する企業が増えてくると予想されている。

65歳以上の介護保険料、自治体格差広がる 2.5倍 indexへ

 この4月に改定された65歳以上が納める介護保険料(月額)の格差は、近畿2府4県の各自治体間で最大2.5倍となり、前回改定時の2.2倍から拡大したことが、朝日新聞社のまとめで分かった。金額では最大3542円の差。要介護者数の多少に加え、サービスの充実度の違いが反映されたためで、低額の自治体でも単純には喜べない結果だ。
 00年度にスタートした介護保険制度。保険料は、家事などの生活支援、特別養護老人ホームへの入所など、サービス利用量の予測などに応じて自治体が3年ごとに見直すことになっており、利用量が多いと見込まれる市町村ほど高くなる傾向。スタート時の全国平均は2911円だったが、03年度の改定時は3293円、06年度は4090円と増えている。
 近畿では、約200の市町村や広域連合がそれぞれ見直した。最も高くなったのは和歌山県白浜町の5842円。町には特養や介護療養型医療施設などが6カ所ある。さらに新しい特養ができる予定で、この利用増も見込んだ改定となった。在宅より単価の高い施設サービスの利用者が多いことが、大幅な引き上げにつながったという。
 同町民生課は「近隣と比べて施設は充実しているが、サービスを利用していない高齢者への負担を考えると……」と複雑だ。
 最も低いのは奈良県の上北山村と山添村の2300円。上北山村保健福祉課は「村は『陸の孤島』で、大病院などがない。民間業者が入りにくく、選択できるサービスの種類が少ない」と説明する。サービス利用者も少なく、65歳以上の高齢者約280人のうち、約40人にとどまる。
 大阪市は1200円増の4780円とした。00年国勢調査では、高齢者がいる世帯のうち、一人暮らしか、高齢者夫婦のみの世帯が計61%(全国平均46%)。その分、家族介護に頼れず、状態が軽度でもサービスを求める人が多いのが一因という。
 神戸市は36%アップの4694円。保険料は低所得者に配慮し、所得に応じた徴収額を国が標準とする6段階より細かい9段階にした。
 合併した市町村には、旧自治体間で異なる保険料を設定したところもある。5市町村が合併した和歌山県田辺市もその一つ。最も高い旧大塔村は5592円で、一番低い旧本宮町の4475円と1000円以上の開きがある。
 旧大塔村は04年度、高齢者1人当たりのサービス支給額が月2万5890円と県平均より約5000円高かった。人口規模が小さく、わずかな利用者増でも支給額に大きく跳ね返った。同自治体内での差について市は「保険料が急激に変わらないよう配慮した経過措置」としている。

産婦人科医が不在、分娩できず 島根・隠岐諸島 indexへ

 島根・隠岐諸島にある唯一の総合病院、隠岐病院(島根県隠岐の島町)で16日以降、常勤の産婦人科医がいなくなり、隠岐地域での分娩(ぶんべん)が事実上できなくなる。県による病院への医師の派遣期限が15日で切れ、後任のめどが立っていないためだ。このままでは85キロ離れた対岸の松江市内などで出産するしかなく、妊婦や島民の間に「経済的にも精神的にも負担」との不安が広がっている。
 同病院は、県と隠岐諸島の4町村でつくる隠岐広域連合が運営。約2万4000人が住む隠岐地域でただ1カ所、分娩対応ができ、年間百数十件の出産に対処している。
 病院勤務の産婦人科医は従来、島根医大(現・島根大医学部)から派遣されてきたが、派遣できる医師が不足するなどして04年に途切れた。地元に助産師はいるが、原則として医師の指導の下で活動しており、単独での分娩には携わらないという。
 このため、県は04年10月から県立中央病院(同県出雲市)の勤務医を今年3月末までの期限付きで派遣。広域連合はこの間、医師探しに奔走し、昨夏になって関西の医師から赴任の内諾を得たが、家族の病気で急きょ、着任できなくなったという。
 広域連合は医師の派遣延長について県に要請したが、「中央病院でも産婦人科医が不足しており、これ以上延ばせば県東部にも影響が出かねない」(県医師確保対策室)との理由で15日までの延長にとどまった。今後は週に1回程度、中央病院の医師が定期検診に来島するが、分娩にはあたらない方針。
 隠岐諸島と松江市を結ぶ高速船は1日1往復、フェリーが1日2往復のみの運航。出雲空港行きの飛行機も1日1便しかない。広域連合は「出産間際になって船や飛行機で島外に出るのは危険」として当面の間、出産業務を中止することを決め、4日、隠岐病院で出産を予定していた妊婦58人を対象に説明会を開いた。今後も引き続き医師の確保に努める。
 8月に出産予定の20代の女性は説明会後、「島外での滞在費など経済的な負担だけでなく、留守の間、家族に負担をかける。陣痛が始まっても駆けつけてもらえない」と不安を訴えた。
 厚生労働省医政局指導課の担当者は「今回の事態は残念でならない。医療現場を離れた医師の再就業を支援するなど、医師不足解消への施策を進めていく」と話す。

薬副作用、被害者の3割「仕事やめた」 医薬品機構調査 indexへ

 医薬品の副作用によって健康被害を受けた人の3割近くが仕事を辞めていることが、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」の初めての患者実態調査でわかった。就労や介護など、患者本人だけでなく家族にも重い負担がのしかかっている実態が浮かび上がった。
 調査は、医薬品副作用被害救済制度にもとづき、医療費や障害年金などを受給している人を対象に昨年8月〜11月に実施。744人から回答を得た。
 健康被害に遭った年齢は、最も多いのが50代で18.8%、次いで60代(17.6%)、30代(15.1%)、40代(12.4%)の順で、30〜50代が半数近くを占めた。健康被害の内容は、皮膚障害(37.5%)、視力障害(25.5%)、薬物性肝障害(23.3%)などが上位を占めた。
 健康被害の影響(複数回答)では、「収入が減った」が30.5%でもっとも多く、以下、「仕事を辞めた」(27.7%)、「欠勤するようになった」(22%)の順。家族への影響では、患者の介護などを理由に収入の減少や欠勤を挙げる人がいずれも2割を超えた。
 世帯全体の収入への影響は、「減った」と答えた人が6割を占め、「8割以上減った」と答えた人も7.4%いた。「減らなかった」と答えた人は25.7%だった。
 現在も治療行為を受けている人は全体の41%で治療を終えた人は36.3%だった。過去1年間に入院、通院した人が支払った月平均費用は、交通費が約6000円、医療費の自己負担約1万2000円、保険外治療費約6000円などで、月ごとの出費は約3万6000円に上った。

ニコチン、やはり肺がん増殖に関与? 治療薬の働き阻害 indexへ

 たばこに含まれるニコチンは肺がん治療に使われる抗がん剤の働きを妨げることを、米南フロリダ大の研究チームががん細胞の実験で明らかにした。ニコチン自体は発がん性がないとされるが、がんの増殖に関与しているらしい。米科学アカデミー紀要(電子版)に3日発表される。
 研究チームは、肺がんの細胞にニコチンを加えたときの抗がん剤の効き目を、日本でも認可されている3種類の肺がん用抗がん剤(ゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセル)で調べた。その結果、ニコチンがあると、抗がん剤で死ぬがん細胞の数が明らかに減ることが分かった。
 喫煙者の血中に含まれるような少量のニコチン量でも、これらの薬効を下げるとみられ、禁煙中でもニコチンパッチやニコチンガムを使うと、薬がうまく効かない恐れがある。
 研究チームによると、ニコチンが加わると細胞内の2種類の遺伝子が活発に働くようになり、抗がん剤の作用を妨げると考えられる。これらの遺伝子の働きを抑制することで、ニコチンの作用も抑えられたという。

放射線治療の副作用、血液から予測 放医研がシステム indexへ

 がん患者の放射線治療で、副作用が出るかどうかを患者の血液から予測・判定できるシステムを、放射線医学総合研究所(千葉市)が開発した。約2000人の患者の分析で、わずかな遺伝的特徴の違いが、副作用の指標として使えることが分かったという。今後5年程度で精度を高め、臨床現場で使えるよう、研究を進める計画だ。
 放射線治療は現在、がん患者の25%程度が受けている。手術や化学療法に比べ、体への負担は小さいが、正常な組織も損傷を受ける危険がある。がんの種類によっては皮膚の壊死(えし)や下痢、失禁などの副作用が出やすい。
 放医研の今井高志さんらは、北海道大、東京医科歯科大、九州大など全国30施設の協力を得て、患者の遺伝子の塩基配列のわずかな違いと、副作用の有無や程度との関連を分析した。
 その結果、乳がん、子宮けいがん、前立腺がんでは、57タイプの塩基配列の違いが、副作用を判定する指標として使える可能性が高いと分かった。分析結果は約3時間で出る。将来、副作用の起きやすさを正確に予測できるようになれば、患者によって放射線の照射方法や線量を変え、副作用を軽減できると期待される。
 ただ、今のところ副作用の指標に使えるがんは3種類に限られ、予測精度の検証も今後の課題だという。今井さんは「個人の違いに応じた医療の実現に一歩前進した。さらに副作用の情報を増やし、臨床現場で使えるものにしたい」という。

心臓手術に「祈り」の効果なし? 米で1800人研究 indexへ

 最古の医療とも言われる「祈り」は、病気治癒に効果があるのか。患者を知らない人に祈ってもらって心臓手術の結果への影響を調べる研究が、米国で手術を受けた約1800人を対象に実施された。研究に資金提供したジョン・テンプルトン財団(本部ペンシルベニア州)は「今回の厳格な研究では、効果は確認されなかった」とする声明を発表した。
 同種の研究としては6回目で、過去の研究からは第三者の祈りが治癒に効果を与える可能性が指摘されていたという。
 調査は6カ所の医療機関で心臓の冠状動脈バイパス手術を受けた1800人の患者を三つのグループに分けた。自分のために他人が祈ってくれていることを知っていて実際に祈りが行われたグループ、祈っていることは知らないものの祈りは行われたグループ、そして祈りは行われずにそのことを知らないグループ。
 AP通信によると、祈りは患者とは関係ないボランティアが「手術が成功して早く回復し、合併症が起きない」よう祈ったという。手術の成功については、祈りの効果はみられなかった。逆に、祈りが行われていることを知っていた患者の59%が30日以内に合併症を起こしたのに対し、知らなかった患者は52%と、祈りの「マイナス効果」がみられた。
 祈りが行われていることを知ることが、「祈らなくてはならないほど重症なのか」とかえって不安をかき立てた可能性などが指摘されている。