体外受精で受精せず、ふつうは捨ててしまう卵子(非受精卵)を再利用し、クローン胚(はい)性幹細胞(ES細胞)をつくることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)のチームがマウスで成功した。移植用の臓器などになりうるヒトES細胞をつくるためには女性から卵子の提供を受けなければならないが、入手が難しい。この方法がヒトに応用できれば、再生医療研究のすそ野が広がる。19日付の米科学誌カレント・バイオロジーに発表した。
ES細胞は、人体のさまざまな組織になりうる「万能細胞」。患者本人の体細胞の核を抜き取って、卵子に移植し、クローンES細胞をつくることができれば、移植しても拒絶反応が起きない臓器や組織ができる可能性がある。
理研の若山照彦チームリーダーらは、マウスの卵子で体外受精を試み、受精しなかった432個に、別のマウスの体細胞の核を移植した。特殊な薬剤を使って約1カ月培養したところ、27株のクローンES細胞ができた。新鮮な卵子を使った場合とほぼ同等の成功率で、できたES細胞の分化能力は同じだった。
このクローン胚をマウスの卵管内に移植したが、クローンマウスまではできなかった。
チームの若山清香研究員は「卵子を捨てるのはもったいないという発想がきっかけ。使えないと思われていた卵子を基礎研究に利用できれば、再生医学応用への可能性が高まる」と話す。
中辻憲夫・京都大教授は「女性からの提供を比較的受けやすく、利用の可能性を示した点で意義がある。ただ、英の研究でヒトでうまくいかなかったという報告もあり、今後の積み重ねが必要になる」と話している。
暖冬・少雪で花粉、はや本番 東日本も21日から増加か |
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花粉の飛散が本格的に始まる。20日は西日本、21日は東日本が3月下旬の陽気となり、一気に街を覆いそうだ。全国的にいつもの年より1〜2週間早い。暖冬・少雪が、スギ林からの飛散を早めているという。
東京都の最新の「週間花粉予報」によると、20日は東京都心、多摩地区とも「やや多い」ものの、21日はともに「多い」になり、22日の多摩地区は「非常に多い」とされる。関東地方は21〜22日にかけて、最高気温が15度を超え、ぽかぽか陽気となるためだ。
「15度」は、花粉の飛散が増える目安の気温とされている。1日に1平方センチメートル当たりに30個以上の花粉が捕らえられると「多い」部類に入り、目のかゆみや鼻水の症状を訴える人が一気に増えるとされる。西日本は20日の最高気温が各地で15度を超えると予想されている。
花粉予測を出している都によると、今年の花粉の飛散開始は1月31日。85年に調査を始めてから最も早かった。都は飛散のピークは3月中旬で、昨年と同程度の飛散量と予測している。
全国的にも飛散は早い。環境省の花粉観測システムによると、各地で2月上旬から飛散が始まっている。NPO花粉情報協会事務局長の佐橋紀男・東邦大学薬学部客員教授(花粉学)は、「新潟や富山県などでも2月13日に確認されるなどいつもの年より1〜2週間早め。北陸などでは少雪のためにスギ林に雪がなく、飛散を早めている」という。
環境省によると、昨年の日照不足から、スギの雄花の生産量は少なく、この春の花粉の飛散は地域によって平年並みから平年の20%と少なくみている。佐橋教授は「2年前の大量飛散で花粉症になった人は急増しており、飛散が少なめといっても症状が出る人は多い」とみる。
今年は早めに飛散が始まる分、終わるのも早く、関東では、スギの飛散は3月下旬には下火になり、ヒノキの飛散も4月中には終わるとみている。
佐橋教授は「気温が高い日には特に注意し、マスクをするなどしてできるだけ花粉を吸い込まないことが重要。家に入るときは服の花粉を落とし、持ち込まない。都心ではアスファルトに落ちた花粉が再飛散するので、風が強い日は注意が必要」としている。
東大病院で二重の医療事故 10代の重症心臓疾患患者に |
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東京大学医学部付属病院は20日、入院中の10代男性の重症心臓疾患の患者がベッドから転落し、補助人工心臓に血液を送る管が抜け、翌日の再植え込み手術後にも人工呼吸器の作動が遅れる二重の医療事故があったと発表した。患者は意識不明の重体。同病院では、家族に謝罪するとともに、調査委員会を設置し、原因究明と再発防止策の検討を始めた。
同病院によると、この患者は1月に重症心臓疾患で集中治療室に入院。今月1日、ベッドから転落する10分前から鎮静のための点滴を始め、5分後に看護師が様子を見て問いかけた時は落ち着いていたという。その5分後に隣のブースで別の患者を処置していた看護師がドスンという音を聞いて駆けつけたところ、患者は床に落ち、植え込み手術を受けていた補助人工心臓の管が抜け、3リットル以上出血したという。
発見後、当直医師が気管挿管や心臓マッサージなどの救命措置をするとともに、補助人工心臓の管挿入部での止血などを行った。
患者は、転落で管が抜けたことで一時、瞳孔が広がり、対光反射が消えた。脳に障害を受けたが、治療で改善傾向にあるという。
ベッドには床ずれ防止のためにエアマットを敷いていたため、ふとんの高さが手すりとほぼ同じ位置まで上がり、転落防止の役割をなさなかった。同病院は「我々の予想を超えて患者が動いた」と説明する。
さらに、この事故で翌日に補助人工心臓の再植え込み手術をした後、集中治療室で人工呼吸器を接続し、電源を入れて呼吸数などの設定をしたものの、待機モードのまま作動させず、3〜4分の間、低酸素状態になったという。
同病院は「管理ミスだった。患者と家族におわび申し上げる。今後このようなことのないよう再発防止に努める」としている。
勤務医の5割「職場辞めたい」 医労連が千人調査 |
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病院の勤務医の9割が医師不足を感じ、5割が職場を辞めたいと考えている――。日本医療労働組合連合会(医労連)が19日発表した約1000人の勤務医を対象にした調査で、過酷な勤務と人手不足で疲弊する勤務医の実態が改めて浮き彫りになった。
昨年11月から今年1月、医労連加盟の医療機関や自治体病院など全国150施設の勤務医1036人から、前月の労働状況などを聞いた。
1人あたりの労働時間は1日平均10.5時間で4割以上が12時間以上。宿直勤務は平均2.9回だったが、4回以上がほぼ4分の1に上り、大半は宿直前後も通常勤務に就く32時間労働だった。
休んだ日数の平均は3.3日で、1日も休めない医師は4分の1を超えた。連続で勤務した日数は最長で平均19.5日間だった。健康状態に「不安」「病気がち」と感じているのは半数近く。翌日や休日後も疲れが抜けない「慢性疲労」を訴えたのはほぼ6割だった。
過酷な勤務状況から、「職場を辞めたい」と考えた勤務医は、「まれに」(20.8%)を除いても52.9%に達し、働き盛りの30〜40代では約6割に上った。「医師不足」を感じている勤務医は全体の90.0%だった。
対策として、「賃金・労働条件の改善」が最も多く、「診療科の体制充実」「看護師などの充実で医療体制のレベルアップ」「医療事故防止対策の充実」などが続いた。
病気腎移植「認めよ」 万波医師ら支援に6万人署名 |
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宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠泌尿器科部長らを支援し、病気腎移植への理解を求める市民グループ「移植への理解を求める会」が19日、厚生労働相に約6万1200人分の署名を添えた要望書を提出し、病気腎移植を治療の選択肢の一つとして認めることを求めた。
この問題を巡っては、日本移植学会など関係5学会が、がんやネフローゼ症候群などの患者からの腎臓移植は、「再発」の危険が高まるなどとして原則禁止とする方針を打ち出すことを決めている。
求める会はこの方針に「患者の意見に耳を貸さずに初めから病気腎移植にふたをしようという考え」と反発。病気腎移植によって多くの患者が救われていると強調し、要望書では万波氏らの医療活動に制限をしないこと、病気腎移植を生体腎移植などに次ぐ第三の道と認めることなどを要求している。
終末期の延命治療を中止する手順について、日本救急医学会の特別委員会(委員長・有賀徹昭和大教授)がまとめたガイドライン案が19日、同学会の社員総会に提案された。反対意見は出なかったが、「国民や他学会の意見も幅広く集めてはどうか」との声が相次いだため、案を学会のホームページに半年ほど掲載して意見を募り、決定は10月の学会総会まで先送りすることにした。
ガイドライン案は昨年末に学会幹部(評議員)に送付され、これまで反対意見もなかったことから、ほぼ原案通り了承される見通しだった。しかしこの日の社員総会では、「国民の意見をもっと聴くべきだ」という意見や「ガイドラインの目的として、刑事罰を受けないためとはっきりと盛り込んではどうか」などの意見が出たという。
同学会は今月中にガイドライン案をホームページに掲載する予定。ここに集まった意見も検討して、10月に大阪で開かれる学会総会に改めて提案する方針だという。
8年前のガーゼ置き忘れ 大垣市民病院が550万円賠償 |
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岐阜県の大垣市民病院は19日、99年4月に同病院で帝王切開で出産した現在30代の女性の体内にガーゼ1枚を置き忘れ、これがもとで昨年、子宮筋腫と誤診し、子宮と左右の卵巣を摘出していた、と発表した。市はミスを認め、女性側に損害賠償として550万円を支払うことで合意した。
病院によると、女性は子宮筋腫が体質的にできやすく、96年ごろからたびたび同病院で診察を受けていた。昨年、左卵巣の嚢腫(のうしゅ)が次第に大きくなり、子宮筋腫も認められた。このため7月に開腹手術をし、女性の希望で左右の卵巣とともに子宮を全摘出した。
ところが手術後、病院側が子宮筋腫と診断したのは、体内に残っていたガーゼに体の一部が癒着したもので、ガーゼは99年の帝王切開の際、取り忘れたものと分かった。
病院側は「結果的に子宮と右の卵巣は摘出する必要がなかった」としている。
同病院は00年以降、X線に映るワイヤ入りガーゼを使用し、手術後、取り出し忘れがないか確認しているという。
「カラオケポリープ」急増 熱唱+はやりの高音、要注意 |
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カラオケの歌い過ぎで声帯の粘膜が腫れたりする「カラオケポリープ」と呼ばれる症状を訴える人が増えている。最近の流行歌は高音域の曲が多く、無理な発声をすることも影響しているようだ。喫煙や飲酒しながら「熱唱」すると症状を悪化させ、摘出手術が必要なケースもある。空気が乾燥する季節。医師会などが注意を呼び掛けている。
大阪府医師会理事の後藤和彦医師によれば、声帯はV字形になっており、擦れ合って音を出す。歌うと日常会話より振動回数が増すため、歌い続けると声帯に負担がかかり、内出血を起こして声帯の粘膜が腫れる「ポリープ」や粘膜が硬くなる「結節」ができる。これがカラオケポリープの症状だ。
酒や喫煙しながら歌うと、内出血や粘膜の荒れがひどくなる。初期症状は声のかすれ程度なので、風邪と勘違いする人もいるという。
兵庫県明石市の県立成人病センターではこの数年、毎月数人が訪れる。かぜの症状など悪条件が重なったケースもあり、働き盛りの30〜50代に多いのが特徴だ。頭頸(とうけい)部外科の岩江信法科長は「仕事のつき合いで飲酒や喫煙しながら歌う人がかかりやすい」と話す。
カラオケポリープは正式な医学的病名ではない。名付け親の国際医療福祉大学東京ボイスセンターの福田宏之所長は「20年前に名づけた当時、患者はカラオケで接待する営業マンくらいだったが、カラオケの普及で主婦や学生などにまで患者層が広がった」と話す。声をよく使う保育士や教師、僧侶などもかかりやすいという。
音声障害などが専門の大阪市淀川区の大阪回生病院耳鼻咽喉(じびいんこう)科大阪ボイスセンターには、カラオケポリープ患者ら毎月約20人が来院する。昨年の手術件数は170件で、3年前の約2倍に急増。昨年12月だけで「忘年会で歌い過ぎた」などカラオケが原因の新規の患者が5人いた。年齢層は20〜50代まで幅広い。
同病院では、路上ライブなどで歌う若い人たちにポリープや結節患者が増えているのも特徴だ。通行人に聴こえるように大きな声で歌ったり、汚れて乾いた外気を吸ったりしたことが原因とみられるという。
コブクロやゆず、川嶋あい……。路上ライブ出身の人気歌手は高音の曲が多く、それをまねる傾向にあるという。
望月隆一部長は「最近の流行歌は、昔の歌謡曲とは違い、高音域の曲が増えたことも影響していると思う。高音では声帯が前後に引っ張られ、低音より激しく振動するので、歌い続けるとかなりの負担」と言う。
大阪府医師会は昨年末、ホームページで注意を呼び掛けた。後藤理事は「声のかすれが続くようなら診察を受けてほしい。喉頭(こうとう)がんなど別の病気の早期発見にもつながる。歌は自分の音域にあった歌を」とアドバイスしている。
病院選び、ネットで比較 都道府県HPに詳細情報 |
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患者が病院や診療所を選ぶ目安となる医療機関の情報が、新年度以降、各都道府県のホームページなどで公開されるようになる。内容は、診療科目などの基本情報から病気ごとの手術件数、差額ベッド代などの費用まで幅広く、各医療機関を比べられるようになる見通しだ。医療の「質」を基準に医療機関を自ら選ぼうとする患者が増えているためで、厚生労働省が公開する項目を検討している。一方で同省は、医療機関が看板などで独自に行う広告では、禁止する広告の範囲を広げる方針だ。
これまで、インターネットなどでどんな情報を公開するかは医療機関の判断に任されてきたため、情報量や公開方法には差があった。このため4月に施行される改正医療法は、都道府県にホームページなどで「医療情報」を公開することを義務づけた。
情報の公開対象は病院、診療所、歯科診療所、助産所で、公開内容はそれぞれ数十項目にわたる見通し。病院の場合、診療時間などのほか、学会などが認定する専門医の配置数、患者数、入院の平均在院日数、差額ベッド代などだ。胃がんや肺がん、心臓病など決められた疾患について、医療機関が扱った手術や検査の件数なども示す。
死亡率や再入院率などは、重症患者を受け入れているかなどによって差ができるため、現段階では客観的に評価できないとして公開は見送る。代わりに、その医療機関が死亡率などを分析しているか、患者にその結果を情報提供できるかを公開対象とした。
医療機関が誤った情報を報告した場合は、都道府県が報告内容の是正を命じることができる。
また、厚労省は、医療機関が看板などで出す広告についても、患者への情報提供を充実させる目的で規制を緩和する。現在は「病床数」「入院設備の有無」など具体的に定められているが、今後は医療機関の裁量の幅を広げる。
一方で、禁止広告の範囲は広げ、現在の「虚偽」「比較」「誇大」に加えて(1)公序良俗に反する内容(2)客観的な事実と証明できない表現、なども規制する。例えば、「絶対安全な手術」という文句は医学上ありえない虚偽広告、患者の体験談は客観的な事実と証明できない表現とみなされる。同省はガイドラインで具体例を示す方針だ。
大動脈瘤内にセンサー装着、破裂の予兆監視 新システム |
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子どもの指先にのるほどのワイヤレスセンサーを血管に入れ、突然死を招く腹部大動脈瘤(りゅう)破裂や心不全発作の「予兆」を監視する――。そんなシステムを、東京慈恵会医科大の大木隆生教授(血管外科)らが開発した。大動脈瘤は治療しても、こぶに血液が漏れて破裂する心配が消えない。こぶの中に入れたセンサーで漏れによる血圧変化をとらえ、予防につなげる。いったん装着すれば、自宅で毎日、簡単に検査できるという。
腹部大動脈瘤の治療は、欧米では筒状の器具(ステント)を血管のこぶに通し、こぶへの血流を遮って破裂を防ぐ方法が普及している。日本でも昨夏承認され、今後広がるとみられる。ただ、ステントがずれるなどして血液がこぶに漏れる恐れがあり、患者は通院してコンピューター断層撮影(CT)で定期検査を受けなければならない。
ワイヤレスセンサーは長さ15ミリ、幅3ミリ、厚さ1ミリ。コイルをつけた2枚の合成樹脂製の板が血圧に応じてひずむ仕組みで、微妙な血圧の変化を感知する。動脈瘤の中に装着し、体外からラジオ波をあてると誘導電流が起き、ひずみ具合がわかる。米国で承認された。
動脈瘤の治療時に、先端にセンサーをつけたカテーテル(細い管)を血管に通して目的の場所に装着するので、体への負担は少なく、装着後は自宅で検査できる。感知した血圧データは、パソコンからインターネットを通じて病院内の管理センターに自動送信される。
大木さんは米アルバート・アインシュタイン医大教授を兼ねていて、05年、米国など4カ国の患者76人に臨床試験を実施。検出精度は9割以上だった。心不全も、心臓近くの血管にセンサーを付ければ兆しがつかめると考えられ、現在、臨床試験が行われている。
病気腎移植は原則禁止、5学会が方針 「万波式」を否定 |
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宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植について、日本移植学会など関係5学会は、「原則禁止」の方針を打ち出すことを決めた。がんとネフローゼ症候群の患者からの移植は、免疫抑制下で「再発」の危険が高まるなどとして「絶対禁止」とし、それ以外についても例外的なケースを除いて禁止する方向で合意した。3月末の合同会議で、指針としての公表も検討する。個別症例ごとの検証結果は、同病院などに設けられた調査委員会と厚生労働省の調査班が、この方針に沿ってまとめる見通しだ。
同病院と同市立宇和島病院、呉共済病院(広島県呉市)の3病院でこれまでに実施された病気腎移植は計42件。臓器提供者(ドナー)の病名の内訳は、がん(腎がん、尿管がん)16件▽ネフローゼ症候群8件▽動脈瘤(りゅう)6件▽尿管狭窄(きょうさく)4件▽その他(良性腫瘍(しゅよう)や腎臓結石など)8件で、がんとネフローゼで半数以上を占めている。
5学会は病気腎を移植した場合の患者への影響などを医学的に検討。その結果、移植後の免疫抑制剤投与によって、移植患者の体内でがんが「再発」したり転移したりすると、急速に進行する恐れがあるとの見解でほぼ一致した。万波医師の執刀で94年ごろ、尿管がんだった患者の腎臓を移植された男性がその後、肺がんや肝臓がんを患って死亡。移植との因果関係は立証されていないものの、こうした実例の存在が重要視された。
また、たんぱく尿が出るネフローゼ症候群については、内科的な治療法が発達していて、外科的な摘出の必要がないと判断した。
脳死や心停止後の臓器移植の場合、がんや感染症の患者からの臓器提供は、厚労省の局長通知で禁じられているが、治療目的で摘出した腎臓を別の患者に移植する病気腎移植のようなケースを想定したルールはない。このため、がんの腎移植は外科医らでつくる日本泌尿器科学会が、ネフローゼについては内科医らも加入する日本腎臓学会が、それぞれ近く理事会を開き、腎移植の禁止を機関決定する見通し。
関係学会の幹部によると、通常の腎移植の現場でも、提供された腎臓に動脈瘤などの病気が見つかることがまれにあり、その場合は病気の部分に治療を施したうえで移植される。ただ、こうしたケースはあくまで例外的で、移植を前提とした「万波移植」については、否定の方針を明確に示すことにした。方針に反しても罰則はないが、日本での移植医療が困難になる。
万波医師は18日、朝日新聞の取材に対し、「日本の医療界が禁止するのなら、病気腎移植をやめるしかない。ただ、支援してくれた患者らのことを思うと、医者としては今後も頑張らないといけない」と話した。
細胞から歯が再生 東京理科大のグループ、マウスで成功 |
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マウスの胎児から歯のもとになる細胞を取り出して培養し、おとなの歯を再生させることに、東京理科大の辻孝・助教授(再生医工学)らの研究グループが成功した。作製の成功率は100%で、歯の中に血管や神経などもできていた。臓器を人工的に再生させる技術につながると期待される。18日付の米科学誌ネイチャーメソッズ電子版で発表する。
胎児期にはさまざまな臓器や組織が、上皮細胞と間葉細胞という2種の細胞の相互作用でつくられる。辻さんらはこれに着目。マウス胎児のあごの歯胚(はい)から取り出した両細胞を酵素でばらばらにし、どちらも高密度の細胞塊にしたうえで、区分けしてコラーゲンのゲルに入れると、培養に成功することを突き止めた。
さらに、この細胞塊を50匹のマウスの腎皮膜下に注射。14日後に、すべてで歯の形成を確認できた。歯の再生研究は他にもあるが、作製率は20〜25%にとどまっていた。
また、生体内で育てた歯や、生体の外で人工培養を続けた細胞塊を、おとなのマウスの歯を抜いた跡に移植すると、歯が高い頻度で生着した。この歯の内部には血管や神経のほか、クッションなどの役割を果たす歯根膜も再生できていた。
グループは今回、同様の手法で毛の再生にも成功した。今後、肝臓や腎臓などの臓器づくりも目指すという。
血1滴・30分で遺伝子を診断 理研チームが手法開発 |
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一滴の血液があれば30分で遺伝子レベルの微妙な個人差を診断する手法の開発に、理化学研究所の林崎良英プロジェクトディレクターらの研究グループが成功した。18日付の米科学誌ネイチャーメソッズ電子版に掲載される。横浜市立大と共同で、肺がん用抗がん剤イレッサ(一般名=ゲフィチニブ)の効果を予測する診断キットも開発しており、3月から臨床研究を始める。
DNAの配列にはわずかな個人差(SNP)がある。最近の研究で、薬の効き方や副作用、病気のかかりやすさに関係していることがわかりつつある。SNPを診断する従来の方法は、DNAを精製、増幅させて、特定のSNPを検出するのに1時間半〜数日かかっていた。
林崎さんらは、増幅能力の高い酵素を見つけるなどして、こうした作業を大幅に短縮した。増幅時の間違いを防ぐ工夫も加え、精度を高めることもできた。診断装置の小型化もしやすいという。
診断時間が30分と短くなったことで、手術中に個人差によるがんの特性を分析し、対応を検討することも可能になる。
肝炎感染者から腎移植か 万波医師、「手術前は陰性」 |
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「病気腎」の移植を重ねていた宇和島徳洲会病院の万波誠医師(66)が、前勤務先の同市立宇和島病院で、B型肝炎ウイルスに感染した可能性のある患者の腎臓を別の患者に移植していたことがわかった。17日に大阪市内であった日本移植学会など関連5学会の合同会議で報告された。
市立宇和島病院や万波医師によると、00年12月中旬、ネフローゼ症候群を患っていた女性(01年死亡)から両方の腎臓を摘出し、別の患者2人にそれぞれ移植した。2人のうち1人は死亡しているが、B型肝炎にかかっていたかどうかは不明。生存しているもう1人は感染していないという。
当時、女性の感染の有無を調べたウイルス検査では、感染性が高いHBe抗原は検出されなかったが、感染していることを示すHBs抗原が見つかった。市川幹郎院長は「他人への感染率は少ないという検査結果だった。ただ、検査の時期については覚えていない」と説明している。
万波医師は朝日新聞の取材に、「内科医から女性は手術前のウイルス検査で陰性だったと聞いていた。手術後、陽性が出たと知ったが、陽性の患者の腎臓を移植に使うことはあり得ない」と話した。
新型インフルエンザや生物テロなどの感染症対策を強化するため、厚生労働省は、患者の発生時に直ちに対応する地域の指定医療機関の整備に本腰を入れ始めた。高度な設備や専門医の配置が必要な「第1種指定医療機関」は、99年の感染症法施行で各都道府県に設置を義務づけたが、設けたのは22都府県のみ。厚労省は総務省と調整したうえで今春にも、指定候補の国立大学病院などに都道府県が財政支援しやすい仕組みを整えることで整備を促す方針だ。
指定医療機関は「特定」「1種」「2種」に分類される。厚労省は、未知の感染症に対応する「特定」を東京と大阪、千葉(成田)に整備した。しかし「1種」の指定は遅れ、昨年11月時点で山形、千葉、東京、愛知、大阪、福岡など22都府県の25施設(47床)。指定がない北海道、栃木、京都など25道府県の大半は指定のめども立っていない。
1種には、ウイルスを外部に漏らさない「陰圧病室」の設置や、感染症の治療経験がある医師の常勤など厳しい条件が課される。医療機関は、高価な設備を整えた病室を常に空けておかなければならず、都道府県が頼んでも同意しない病院が少なくない。基準をクリアできるのは、地方では国立大の付属病院などに限られているのが現状だ。
ところが、国の機関に対しては、地方財政再建促進特別措置法(地再法)で都道府県は原則、財政支援できない。自治体から国に資金が還流するのを防ぐためだ。厚労省は、これが1種指定が進まない原因と判断。地再法の適用について総務省と協議を進め、今春にも感染症の指定医療機関に限り、自治体が国の機関に財政支援できるよう見直すことを目指している。
一方、2種の医療機関の整備は順調だ。全国約370の医療圏に1カ所ずつの整備を義務づけたが、すでに314施設(1645床)が指定済み。さらに4月の改正感染症法の施行で、結核患者を受け入れてきた医療機関のうち約300施設が2種と同等に格付けされるため、大幅に増える見込みだ。
厚労省は都道府県に対し「医療機関の整備に続き、近隣県と協力する体制も整えてほしい」とも呼びかけている。
転落死の中2、タミフル服用か インフルエンザで 愛知 |
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愛知県蒲郡市のマンションから転落死したとみられる中学2年生の女子生徒(14)が、死亡した16日に市内の病院でインフルエンザと診断され、治療薬タミフルを服用したとみられることが、蒲郡署の調べで分かった。
調べでは、生徒はこの日、「インフルエンザかもしれない」などと中学に届けて欠席し、市内の病院でインフルエンザと診断された。その際、タミフルを含む複数の薬を処方された。自宅にあったタミフルには服用した形跡があったという。
タミフルは、インフルエンザ治療薬として日本では00年に承認され、01年2月から販売されている。服用後、異常言動で死亡した例などが報告されているが、厚生労働省の研究班の調査では「タミフルの服用と異常言動の関連性は認められない」としている。
一方、両親は調べに対し、生徒がインフルエンザと診断されたことで、「(19日から予定されていた)期末試験を欠席しなければならないと心配している様子だった」などと話しているという。
同署は、これらの状況が転落に結びついた可能性もあるとみて調べている。
高額な費用と時間がかかる不妊治療を受ける社員とその配偶者に対し、キヤノンが通算で最大100万円の補助や、治療期間をすべて休暇にできる制度を4月に導入する。不妊治療支援制度が電機業界で広がるのには、手厚い福利厚生で優秀な社員を囲い込む狙いがありそうだ。
キヤノンは、保険の適用外となる体外受精や顕微授精、人工授精を受ける社員とその配偶者を対象に、100万円を上限に治療費の半額分を負担する。女性社員には治療に必要なだけ休暇も認め、妊娠が確認できた時点で出産休暇に入れるようにする。NECも年20万円を上限に通算5年間で最大100万円の補助を10月にも始める。
厚生労働省によると、不妊治療を受けている人は02年度推計で約46万人で、1人あたりの治療費は年200万円前後と高額だ。電機連合は昨春闘で不妊治療休暇・休職制度の新設を統一要求に掲げ、労使合意が相次ぐ。
松下電器産業は昨年4月、治療を理由に最長1年休業できる制度を導入。シャープも独自に最大500万円の低利融資制度を新設した。ただ、女性を中心に「職場に知られる」との懸念は根強い。治療は連日の通院となり、長期間かかることも珍しくないからだ。
これに対し、NECは「補助だと上司の承認がいらず、よりプライバシーに配慮できる」と説明する。
米国で最もエイズウイルス(HIV)感染率の高い市の一つニューヨークは、名前をつけただけで土産物になる同市の知名度を生かした“最新兵器"を14日、導入した。市公認で名前も冠する「NYCコンドーム」。年間1800万個以上を無料で希望者に配布する計画だ。
ニューヨークの地下鉄路線マークのようなデザインを施したパッケージ入り。市保健精神衛生局は「行動を自制し、性交渉の相手を減らすことが性感染症のリスクを減らす。それでも性的に活発な人たちにとって、コンドーム使用は健康を保つかぎだ」としている。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国の主な都市部の人口あたりのHIV感染率で、ニューヨーク周辺は05年、マイアミ、ボルティモア、メンフィスなどと並んで最も高い水準にあった。
延命治療、意思不明なら医師が判断 救急医学会が指針案 |
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救急医療の現場で延命治療を中止する手順についてのガイドライン案を、日本救急医学会の「救急医療における終末期医療のあり方に関する特別委員会」(委員長・有賀徹昭和大教授)がまとめた。患者の人工呼吸器を取り外す手続きなどを示すもので、これまで個別の病院や医師の判断で治療を中止し、刑事責任を問われることもあった医療現場にとって、初の指針となる。「家族が治療中止を判断できない場合は医療チームが判断できる」とするなど踏み込んだ内容なだけに、論議も呼びそうだ。
同学会には、全国の救命救急センターや集中治療室などで働く救急医ら約1万人が加入。ガイドライン案は、19日に東京都内で開かれる学会社員総会にかけ、ほぼ提案通り可決される見通しだ。
終末期医療をめぐっては、日本医師会が昨年2月にまとめた報告書で、積極的な延命治療を中止する「尊厳死」を容認。しかし判断基準などは示されず、秋田赤十字病院(秋田市)など個々の病院の独自の指針があるだけだった。救急医学会は、不意の事故や急病の場合は患者・家族の意思が確認できないケースが多いことから、救急現場で使える全国的な指針が必要だと判断した。
ガイドライン案は、終末期を「妥当な医療の継続にもかかわらず、死が間近に迫っている状態」と定義。妥当な基準で脳死と診断された場合や、積極的に救命をしても数日以内での死亡が予測される場合、などをあげた。主治医を含む複数の医師、看護師らによるチームで判断する。
そのうえで、家族に救命の見込みがないことを説明。リビングウイル(生前に意思表示した書面)などで患者本人の意思を確認できるか、家族が本人の意思を代弁できる場合は、その意向に従う。引き続き積極的な対応を希望していれば治療を維持するが、それ以外なら治療中止を認める。
また、「家族の意思が明らかでない場合や家族が判断できない場合」として、家族の納得を前提に、医療チームが治療中止を決めることができるとした。チームで判断できない場合は、医療機関の倫理委員会で検討することを求めている。
治療中止の方法は、人工呼吸器など生命維持装置の取り外し、薬剤投与の中止など。「積極的安楽死」とみられる薬物の過量投与や筋弛緩(しかん)剤の投与の行為はしない。また、チームの方針決定や治療過程などの経緯を可能な限り詳細に記録に残すことを求めている。
ガイドラインには、治療を中止した医師が患者を死亡させたとして刑事責任を問われることを防ぐ狙いもある。有賀委員長は「ガイドラインに沿った行為なら、仮に医師が刑事訴追を受けたとしても、学会として間違った行為ではないと主張していく」としている。
パーキンソン病、ブレーキ役たんぱく質解明 京大チーム |
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手足のふるえなど体の動きが不自由になる難病、パーキンソン病の原因物質が脳内にたまるのを抑えるたんぱく質を、京都大先端領域融合医学研究機構の木下専(まこと)助教授、猪原匡史(いはら・まさふみ)特別研究員らのグループが明らかにした。15日付の米専門誌「ニューロン」電子版に発表する。根本的な治療薬開発につながる成果と注目される。
パーキンソン病は全国に10万人以上の患者がいるとされる難病。中脳の黒質と呼ばれる部分にある神経細胞に悪玉たんぱく質がたまり、その毒性が細胞を殺し、神経伝達物質ドーパミンの分泌が減って起こる。
木下助教授らはこれまでに神経細胞内では悪玉たんぱく質とともにSept4というたんぱく質も凝集することを確認、このたんぱく質の役割を調べていた。
その結果、米国でつくられたパーキンソン病症状を起こすネズミで、Sept4をつくれないように遺伝子操作すると、症状は3カ月ほど速く悪化することが判明。Sept4が、悪玉たんぱく質の蓄積のブレーキ役になっていることがわかった。Sept4は、ドーパミンをつくるシステムを安定化させる役割もあり、善玉たんぱく質ともいえる。
木下さんは「パーキンソン病では、Sept4が欠乏している例も見られ、悪化に拍車をかけているらしい。研究を進めて治療に結びつけたい」と話している。
医療費支払いに不安、低所得層の8割超 NPO調査 |
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自分や家族が深刻な病気にかかった時に医療費が払えないという不安を感じている人が、低所得層では8割以上にのぼることが、NPO法人・日本医療政策機構(代表理事・黒川清内閣特別顧問)の調査でわかった。低所得層の4割は、過去1年間に具合が悪いのに費用がかかるからと医療機関に行かなかったことがあった。医療にも経済力によって大きな格差が生じていることが浮き彫りになった。
調査は1月、全国の20歳以上の男女4千人を対象に実施。回答した1318人を低所得層(年間世帯収入300万円未満など)、中間層(同300万〜799万円など)、高所得層(800万円以上など)に分けて分析した。
将来、医療費を払えない不安を抱える人は、高所得層の36%に対し、中間層で74%、低所得層では84%にのぼった。
受診を控えた人の割合も、高所得層16%に対し、中間層25%、低所得層は40%もいた。低所得層の26%は医師に勧められた検査や治療などを受けなかった。
現在の医療制度に満足している割合は、高所得層57%、中間層31%、低所得層21%だった。
同機構は「所得によって医療に対する意識に大きな格差があることがわかった。医療政策を考えるうえで重要な要素になる」と分析している。
麻酔医、鎮痛剤盗んだ容疑で逮捕 国立循環器病センター |
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国立循環器病センター(大阪府吹田市)で1月、麻薬指定されている鎮痛剤「フェンタニル」30本が麻酔科の金庫からなくなった事件で、吹田署は15日、同科の医師福田稔容疑者(36)を盗みの疑いで逮捕した。福田容疑者は「疲れているときや寝付きが悪いときに自分で使った」と容疑を認めているといい、自宅から空容器30本が押収された。以前にも薬を盗んだことをほのめかしており、余罪を調べる。
調べでは、福田容疑者は1月15日から29日の間に、麻酔科の金庫からフェンタニル30本(1本2cc)を盗んだ疑い。ほかの医師が書いた処方箋(せん)を、薬の使用量が多くなるよう書き直し、在庫数と一致させていたという。筆跡から同容疑者が浮上し、事情を聴いたところ容疑を認めた。
同センターなどによると、同容疑者は麻酔医になって8年目。昨年6月から同センターに勤務し、これまでに週約5件、計約150〜200件の麻酔施術をしたという。14日夜の当直まで業務に就いていた。
同センターは15日夜、記者会見し、瀬上清貴運営局長が「誠に残念で遺憾。二度と起こらないようにしたい」と陳謝。同僚らの話として「(福田容疑者の)勤務状態に特に異状は感じられず、関与した手術でも不審点は見つかっていない」と述べた。
金庫をあけるには鍵と暗証番号が必要だが、日中は鍵をかけておらず、暗証番号を知っている麻酔医なら常時開けられたという。同センターは再発防止策として、常時施錠し、開ける際は複数人が立ち会うよう改めた。
NECが不妊治療費の補助制度導入へ 上限年20万円 |
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NEC労使は14日、社員とその配偶者が不妊治療を受ける際、年間20万円を上限に治療費を補助する新制度を10月にも導入することで合意した。少子化対策として、治療費への一部融資制度や治療のための休暇制度を設けた企業はあるが、治療費の補助まで踏み込むのは極めて異例だ。
NECの新制度は、社員とその配偶者が保険の適用対象外の体外受精や顕微授精を受ける場合に利用できる。昨年4月に社員本人が最大20日間の不妊治療休暇をとれる制度を設けていたが、この対象を配偶者にも広げ、資金面でも治療を支える。資金の管理母体などは労使で協議する。先進的な取り組みで、有能な社員を囲い込む狙いもあるとみられる。
NECは、国の助成制度の仕組みに準じての導入を検討。利用者は年20件程度を見込む。当初は全社員約2万2000人と配偶者が補助の対象だが、将来的にはグループ会社にも制度の範囲を広げる見通しだ。
不妊治療にかかる医療費は一般的に年間200万円前後と高額。このため、厚生労働省は04年度から夫婦合算で年収650万円未満の世帯に対し、年10万円を上限に助成を始めた。07年度には所得制限を夫婦合算で730万円未満に緩和し、年20万円まで上限は引き上げられるが、経済的負担はなお重い。
介護保険で「個別・短時間型」リハビリ 厚労省導入へ |
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昨年の診療報酬改定で医療機関でのリハビリテーションが原則として最長180日に制限され、リハビリを受けられない人が出ている問題で、厚生労働省はその受け皿として、介護保険を使ってリハビリだけを集中して行う新たな「個別・短時間型」サービスを始める方針を固めた。制限後、厚労省は受け皿に想定していた介護保険との連携がうまくいっていないと認めていたが、実際に介護保険制度を見直すのは初めて。3月中にモデル事業をつくり、09年度の介護報酬改定で導入を目指す。
脳卒中などの病気や事故からの回復には、医療保険と介護保険のリハビリがある。同省は医療費抑制のため昨年、医療保険のリハビリを、発病直後は手厚くする一方で、期間を原則最長180日に制限。それ以降は介護保険による「通所リハビリ」の利用を求めていた。
しかし、医療のリハビリが専門家によって個々人の体調にあわせて実施されるのに対して、現行の通所リハビリは、一時預かりの役割が大きい。ほとんどが半日コース。集団体操やレクリエーションをリハビリの代わりにする施設も少なくない。そのため、医療保険の上限後もリハビリを必要とする人の受け皿にならない問題点が指摘されていた。
厚労省が新たなモデルとして想定しているのは、この通所リハビリの個別・短時間型。
現在の通所リハビリの設置基準が、「利用者20人に対し専従2人」「サービス時間のうち理学療法士や作業療法士など専門職がつく必要があるのは5分の1以上」と緩いのを、個別対応のリハビリもできるように、全サービス時間を通して専門職をつける。
また、仕事をしながらリハビリに通えるように、利用時間は2時間程度、自力で通える人には送迎義務を外す――などを検討している。
同省は、通所リハビリの個別・短時間型の研究費として約1000万円(今年度分)の予算をつけた。委託先の日本リハビリテーション病院・施設協会は、3月末までにモデル事業の内容を策定。新年度から利用者1000人規模で効果や問題点を調査する。効果が確認されれば、09年度の次期介護報酬改定に盛り込み、個別・短時間型を通所リハビリの新たな核として位置づける方針だ。
課題も残る。理学療法士らリハビリ専門家は大半が病院勤務。新サービスを受け皿として整備するためには、現在の理学療法士数の4倍以上必要という試算もある。新サービス開始までの2年間をどうするかも問題だ。
同協会常務理事の斉藤正身医師は「医療でのリハビリ制限を受け、もっと個別性の高いリハビリができるようにするためには何が必要なのかをまず探りたい」としている。
病院向け公的融資、削減へ 福祉医療機構が5年かけ2割 |
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病院や福祉施設に公的な融資を行っている独立行政法人「福祉医療機構」は、現在約4000億円の年間融資額を2008年度から段階的に減らし、12年度までに2割削減する方針を固めた。機構は医療・福祉分野の融資では国内最大手だが、政府が掲げる「官から民へ」の路線に沿って業務を縮小する。今後、病院への融資は、救急医療など公共性の高い医療を担う病院に限られることになり、多くの病院の資金調達計画に影響が出る可能性がある。
機構は07年度中につくる中期計画(08〜12年度)に2割削減の数値目標を盛り込む。
計画では、500床以上の大病院について08年度以降、救急医療や小児・産科、がん治療などの分野で、病院が、地域の医療ネットワークに組み込まれている場合などに融資を限定する。都道府県が策定する医療計画に基づいて判断し、一般の病棟建て替えや医療機器の購入には融資しない。
また、中小病院や福祉施設に対しても公共性が認められる融資を優先し、民間金融機関と共同で融資している場合は機構の融資比率を引き下げる。また、機構が行っていた開業医の後継者探しの支援事業を07年度末で廃止するなど、業務のスリム化も進める。
国内の医療・福祉分野への融資残高総額は約10兆円で、機構が約3分の1を占める。05年度は医療機関向けに1852億円、福祉施設向けに2174億円が融資された。
機構の融資は、政府の信用力で調達する財政投融資が原資になっている。民間金融機関には太刀打ちできない長期・低利の融資ができるため、「民業圧迫」との批判もくすぶっていた。
小泉前首相は「小さな政府」を掲げ、郵政民営化や政府系金融機関の統廃合を決めた。その流れで政府は05年末、福祉医療機構や日本学生支援機構などの独立行政法人の公的融資についても縮小の方針を決定。これを受け、福祉医療機構を所管する厚生労働省が昨年末、融資規模の縮小を柱とした機構の見直し案を打ち出していた。
入院患者2人からノロウイルス、院内感染か 秋田・大館 |
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秋田県大館市の市立総合病院は10日、入院患者2人の検体からノロウイルスが検出されたと発表した。腹痛などを訴えた患者は計10人おり、院内感染の疑いがあるとして病棟を一部閉鎖した。
同病院によると、今月7日ごろ、6階の病室に入院していた71歳男性と61歳男性が下痢などを訴え、10日にノロウイルスが検出された。隣の病室にいて、8日に退院した84歳女性が下痢などを訴えており、最近、6階で同じ症状を訴える患者が続出していたという。
ビタトロン社の埋め込み型ペースメーカー、不具合で回収 |
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オランダ・ビタトロン社製の埋め込み型ペースメーカー「ビタトロンC60DR」と「ビタトロンT60DR」が動かなくなる不具合があり、同社の日本法人「日本ビタトロン」は9日、両機種の計827台の自主回収を始めた。
同社によると、うち524台はすでに体内に埋め込まれており、医療機関で体外から信号を送り、プログラムを修正する必要がある。両機種は、脈が遅くなる心臓病の患者が使用。海外では利用者が失神やめまいを起こす事故が起きているという。問い合わせは同社(03・6430・7310)まで。
開業助産所、3割ピンチ 嘱託医義務化に確保厳しく |
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年間約1万人、全国のお産の1%を担う開業助産所が存亡の危機に立っている。4月施行の改正医療法で、産婦人科の嘱託医を持つことが義務づけられたのに、日本産婦人科医会が産科医不足などを理由に、厳しい条件の契約書モデル案を示したためだ。NPO法人の緊急アンケートでは、嘱託医確保が「困難・不可能」が3割にのぼる。
嘱託医確保の猶予期間は施行から1年。来年4月までに嘱託医が決まらない助産所は、廃業せざるを得ない。
「産む場所の選択肢を奪わないで下さい」
9日、助産師や産婦たちでつくるNPO法人「お産サポートJAPAN」が、厚生労働省で会見を開いた。同時に発表した全国の分娩(ぶんべん)を扱う開業助産所330全施設対象のアンケート結果によると、「嘱託医が確保できる」は38%。「不確実だが見込みがある」30%、「困難」21%、「不可能」が7%だった。
出産時の異常で、助産所から病院・診療所に搬送されるのは約1割。同NPO代表で助産師の矢島床子さんは「安全性確保には医療のバックアップは必要。でも、助産師が自力で嘱託医を探すのは難しい」と話す。
一方、日本産婦人科医会は、助産師は独立開業より院内助産所の形を取るべきだとする。昨年末には「嘱託医契約書モデル案」を発表した。「助産所は嘱託医に委嘱料を支払う」「妊婦を転送したケースについては、助産所が訴訟費用などを補償する」「助産所は十分な資力を確保しなければならない」など、厳しい内容だ。産科医不足の上、転送を受けた病院が訴訟の対象となる例が相次いでいる事情がある。
神谷直樹常務理事は「助産所の分娩は安心かもしれないが、安全面で問題がある。一歩進んだ分娩環境の提供を目指すため、あえて厳しいモデルを示した」と話す。
日本助産師会は「モデル案は助産師の開業権を事実上、侵害する」として、厚労省に「嘱託医と、救急搬送先となる連携医療機関を同じ病院(医師)が兼務できるようにしてほしい」と要望した。同省看護課も「後方支援機関として嘱託医を残すべきだと主張し、確保に協力すると言ったのは産科医会だ。安全なお産のために積極的に嘱託医を引き受けてほしい」と話している。
介護予防、薬局で情報集め お年寄りに質問 青森県 |
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青森県は、近い将来介護が必要になりそうな「介護予備軍」のお年寄りの情報を薬局で集めて活用する仕組みをスタートさせた。今年度から始まった政府の介護予防事業では、事業の対象となるお年寄りの把握が難しく、サービス提供が進まない問題が生じている。青森県は、薬局ではお年寄りとやり取りする機会があり、情報を集められることに着目した。厚生労働省によると、このような取り組みは全国でも珍しいという。
青森県薬剤師会の協力で1月から始めた仕組みでは、医療機関を受診後、薬をもらうために調剤薬局を訪れたお年寄りに、本人の同意を得て薬剤師らが質問する。質問項目は「バスや電車で1人で外出していますか」「日用品の買い物をしていますか」など。
その結果をもとに、薬局が高齢者の資料を市町村に提供する。健康診断を受けていない人には受診も勧める。参加しているのは、県内の調剤薬局約500カ所のうち約250カ所。
青森県は、人口10万人あたりの医師数が04年で164人と全国で4番目に少ない。病院や診療所は医師不足で忙しいが、薬局でなら、介護が必要になる可能性が大きい「特定高齢者」の把握が期待できると県はみている。
介護予防事業は、要介護状態になるのを防ぐため、介護が必要になりそうなお年寄りを対象に、市町村が運動教室などを開くもの。厚労省老人保健課の担当者は「特定高齢者把握に向けた都道府県段階のこうした取り組みは他に例がないと思う」と話している。
医療用麻薬、在宅で使いやすいよう規制を緩和 厚労省 |
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がんなどの痛みを和らげる医療用麻薬を、在宅でも使いやすくするため、厚生労働省は国の麻薬管理マニュアルを初めて改訂した。患者本人が手元で薬を管理できるようにするなど、規制を大幅に緩和した。がん対策基本法が施行される4月を前に、自宅で行える緩和医療を受けやすくし、患者の生活の質を高めるのが狙いだ。
モルヒネなどの麻薬は乱用防止のため、麻薬取締法で管理の仕方が厳しく制限されている。一方で、適切に使えば、意識を残したまま、痛みだけを取り除くことができ、医療用麻薬の需要が高まっていた。
このため、厚労省研究班が89年度、医療従事者向けに使用の注意点をまとめたマニュアルを作成。調剤や患者への受け渡し、管理、廃棄などの仕方をまとめた。ただ、薬は薬局やナースステーションで管理し、受け取りは患者本人か家族に限っていた。
しかし、胃で少しずつ溶ける飲み薬や、張り薬などが発売されたことなどから在宅使用が広がり、国内の使用量はこの15年間で約10倍になった。また、「在宅患者が増えた今、マニュアルの医療用麻薬の基準は厳しすぎる」という声が在宅ケアの現場などから出ていたことなどから、厚労省は、専門家による検討会を設置。マニュアルを昨年末に改訂した。
改訂後、患者自身が自宅で薬を保管できるようになった。患者が希望すれば看護師やホームヘルパー、ボランティアなどが薬を取りに行き、患者に届けられるほか、処方箋(しょほうせん)をファクスで送り、調剤を始めてもらえる。薬局などから患者が遠くにいる場合、書留便で送ることもできる。
厚労省は「緩和医療を適切に行う」と明記する、がん対策基本法の施行に合わせ、07年度中に医療従事者向けの講習会を開き、使用実態の調査なども行い、さらに適正使用を促す方針だ。
在宅ケアに携わってきた「ホームケアクリニック川越」(東京都墨田区)の川越厚院長は「独居や老人世帯の患者が増える中、ヘルパーなどに薬を届けてもらえるようになったのは画期的だ。夜に突然痛みを感じても薬剤師を起こすほどではないと我慢してきた患者が、自分の判断で使えるようになったという点でも意義は大きい」と話した。
日本弁護士連合会は7日、第三者の女性による「代理出産」や、提供者が死亡した後に凍結保存しておいた精子や卵子、胚(はい)を利用する「死後懐胎」の禁止などを盛り込んだ「生殖医療法」を早急に制定するよう求める提言を発表した。日弁連は00年にも生殖補助医療に関する法整備を求める提言をまとめたが、医療技術の進歩にルール作りが追いつかず、混乱がさらに広がっている現状をふまえ、00年提言に補充する内容とした。
厚生労働省のエイズ動向委員会は7日、06年の1年間で新たに報告されたエイズウイルス(HIV)の感染者数(速報値)が、前年より82人増えて過去最多の914人だったと発表した。発症した状態で新たに見つかったエイズ患者も前年より23人増え、390人で過去最多を記録した。
感染者を年齢別に見ると、30代が372人で全体の40%と最も多く、20代(27%)、40代(17%)と続く。感染経路では、同性間の性的接触が63%、異性間の性的接触が24%を占めた。
患者を癒やす「ヒーリング・アート」 病院に広がる |
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入院や通院する患者の不安を和らげ、気持ちを癒やすため、病院の待合室や廊下に絵画などの美術品を展示する「ヒーリングアート」が広まっている。展示には有名作家の作品が使われる例もあり、患者からは「落ち着く」と好評だ。一方、都内の病院では絵画が盗まれる事件が起きるなど、病院管理上の新たな課題となるケースもある。
東京都港区の北里研究所病院の建物から1月上旬、文化功労者で洋画家の鈴木信太郎氏の作品2点が無くなっているのに職員が気づき、警視庁高輪署に被害届を出した。
同病院は99年の新棟設立時からヒーリングアートを取り入れ、現在は鈴木氏の作品を含め約350点の絵画が院内を彩る。
絵は壁から離れるとブザーが鳴る仕組みになっていたが、持ち去られた時には誰も気づかなかったという。
ヒーリングアートを研究している、女子美術大学大学院の山野雅之教授(ヒーリング造形)は「新設される病院を中心に、患者の精神的な環境作りを考えるところが増えている」と指摘する。
00年に開院した兵庫県姫路市の広畑センチュリー病院でも、MRIの検査室の天井には、患者の目線にあわせるように青空と雲が描かれている。検査中の緊張をほぐすねらいだ。
病院の白っぽい内装は、患者にとっては病気への恐れと相まって「冷たい」「暗い」と、不安な気持ちに陥りやすいが、絵画などを効果的に配置することで温かい、明るい雰囲気が演出できるという。
山野教授の研究室でもこれまで、日赤医療センター(東京都渋谷区)など、首都圏の約30の病院で、学生の絵画を展示。夏休みに入院している小児病棟の子どもたちのために期間限定で動物の絵を張り巡らせるなど、場所や季節にあわせて趣向を凝らしている。
ヒーリングアートの効果が認知されつつある一方で、展示作品を盗難やいたずら、損壊から守るためのセキュリティー強化が必要となる。
前述の広畑センチュリー病院では、人の出入りを制限できない受付周辺の絵画は、時間外になるとさりげなく取り外している。防犯上やむを得ないという。
ある都内の病院勤務者は「物々しく警備すれば『癒やし』には逆効果。目立たないけど、効果のある管理方法を工夫するしかない」と話す。
体外受精児、出産から小6まで長期追跡調査へ 厚労省 |
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厚生労働省は、体外受精による不妊治療で生まれた子どもの健康状態を把握するため、誕生から小学6年生までを長期的に追跡する調査を新年度から始める。約2000人が対象で、治療技術の標準化や安全性の確保に役立てる。また、母親を対象に、妊娠した人の数、採卵回数あたりの妊娠率と出産率なども全国的に調べる。
調査対象となるのは、厚労省が不妊治療に対して補助をする「特定不妊治療費助成事業」の適用を受けた母親とその子ども。この事業は、04年度に始まり、05年度までに受給した約4万3600人のなかから抽出する。
子どもへの調査は、発育状況などに注目する。体外受精は、出産率を上げるため、複数の受精卵を子宮に戻すケースが多く、双子や三つ子などの多胎妊娠になりやすい。子ども1人の単胎妊娠と比べて、早産や死産の発生率が高く、未熟児が多いとも指摘されている。だが、こうした問題は、不妊治療と出産を扱う医療機関が異なることが多く、これまで調べられてこなかった。
厚労省は、調査チームを公募して、体外受精で生まれた子どもの成育状況や精神面への影響を調べる。
母親については、これまで、受給者数と受給額のデータしかないため、妊娠者数、妊娠率、低出生体重児の数など約10項目を調べ、実績や成果を把握することにした。
また、これまでは、都道府県が日本産科婦人科学会の登録医療機関のなかからこの助成事業の指定機関を決めていたが、不妊治療の水準にはばらつきがあった。厚労省は今後、一定の水準を確保するため、独自の指定要件を定め、これに満たない場合は指定機関として認めないことにした。
障害者1600人が福祉サービス利用中止 負担増響く |
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福祉サービスに自己負担を求める障害者自立支援法による影響で、全国で約1600人が施設サービスの利用を中止し、4000人余りが利用回数を減らしたことが、厚生労働省の調査で分かった。昨年4月から10月までについて負担増を理由に利用を減らしたケースを同省が初めて全国調査した。政府は利用抑制が障害者の生活に与える影響を分析したうえで、負担軽減策を進める方針だ。
昨年4月に施行された障害者自立支援法は、福祉サービスを原則として「1割負担」にした。
厚労省によると、入所サービスと通所サービスについては都道府県を通じて施設に照会し、全都道府県の約22万人の利用者の状況について回答を得た。
それによると、約13万5000人の入所サービス利用者のうち598人(利用者の0.44%)が、約8万6000人の通所サービス利用者では1027人(同1.19%)が、負担増を理由に利用をやめていた。通所サービスの利用回数を減らしたのは、4114人(同4.75%)に上った。
また、ホームヘルプなどの在宅サービスについては、30府県から約22万5000人の利用者の状況について回答を得た。このうち849人(利用者の0.38%)がサービス利用を中止し、2099人(同0.93%)が利用回数を抑制していた。
調査結果について、厚労省は「『利用抑制』は、利用者負担の影響が出ていることが数値として示されたのではないか。サービスの必要な人が受けられないことがないように、フォローするよう指導している」としている。
政府は07年度から2年間で240億円の自己負担軽減策を計上する方針で、自己負担の上限額引き下げなどを盛り込んでいる。
重症心身障害者の73人分データ紛失 埼玉の国立病院 |
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国立病院機構東埼玉病院(埼玉県蓮田市)が、重症心身障害者の入所記録73人分のデータが入った電子媒体(USBメモリースティック)を紛失していたことがわかった。データには患者の病名や氏名が含まれており、同病院は6日までに患者と家族に謝罪文を送った。
病院事務部によると、紛失したのは長期入所と短期入所の患者計73人分の個人情報。病名のほか、入所、退所の時期や生年月日、住所、電話番号などが含まれていたという。
同障害者病棟の看護師長が担当病棟の様子を把握するため、患者の情報をメモリースティックに保存していた。1月29日午後、看護師長がスティックをナースステーションの共有パソコンに差し込んだまま席を外し、約1時間後に戻るとなくなっていたという。
同病院は同機構関東信越ブロック事務所に報告するとともに、患者の家族に経過説明と謝罪の文書を郵送した。現在のところ、情報が悪用されたとの報告はないという。川井充副院長は「個人情報の紛失はあってはならないこと。患者と家族にご迷惑をおかけした。現在は管理を徹底させている」と話している。
また、スティックを紛失した看護師長は、1月上旬ごろにも、保健所に届け出るため看護師の氏名や住所、免許の登録番号などを記した書類約20人分を紛失。書類は作成し直して、提出したという。
手術後のがん再発、ワクチンで防げ 大学病院など |
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全国13の大学病院やがん専門病院などが、がんを攻撃する免疫細胞を活性化させる「がんワクチン」の臨床研究ネットワークを作った。一部で患者への接種も始まった。対象とするがんは膵臓(すいぞう)や食道、肝臓、胃、肺、膀胱(ぼうこう)など多岐にわたる。安全性を確かめた後、手術後の再発を予防する目的で接種。数年後の実用化をめざす。がんワクチンはこれまでいくつかの大学病院で個別に臨床研究されてきたが、これほど規模が大きく、組織だった研究は初めて。
参加するのは岩手医大(研究対象は膀胱がん)、神奈川県立がんセンター(肺、胃がん)、近畿大(大腸、食道、腎臓がん)、九州大(大腸がんなど)など。
東大医科学研究所ヒトゲノム解析センター(中村祐輔センター長)が開発した約10種のワクチンを使う。同センターは、人の遺伝情報をつぶさに調べ、正常細胞のもとではほとんど働かないのに、がん細胞の中だと活発に働く遺伝子を特定。それらを基にワクチンを作り、がんに対する免疫細胞を活性化させるかどうかを実験で検証した。
臨床研究は、まず人での安全性を調べる第1段階から始める。標準的治療が効かず、ほかに有効な治療法がないと判断された患者に参加への協力を求める。
山梨大の河野浩二・助教授(第1外科)は、食道がんを対象に3種類のワクチンを同時に用いる。第1段階は5人の患者に使う予定で、すでに2人に接種した。以前、別のワクチンを試みたが、免疫反応を思うように高めることができなかったという河野さんは「免疫反応の活性化を図るワクチンは本来、術後の再発予防などに向いている。今回は期待したい」と話す。
和歌山県立医大の山上裕機教授(第2外科)は、膵臓がんと食道がんを対象にワクチンの段階的な増量などを計画。膵臓がん2人、食道がん3人に接種した。「たとえがんが縮小しなくても、大きくなるのを抑えて生活の質が向上し、生存期間が延びれば」と言う。
がんワクチンの臨床研究はこれまで末期患者が対象で、免疫細胞を活性化させるのが難しい場合が少なくなかった。今回は手術後の再発予防が最終目的で、患者は手術を受けたとはいえ比較的体力のある人が対象。免疫反応を導きやすいという。
生活習慣病の予防などを目的に厚生労働省が08年度から導入する新しい健康診断(新健診)で、検尿が今の必須項目から選択項目に「格下げ」されることになりそうだ。厚労省側は「費用対効果でみると、全員に検査をすることが有効とはいえない」と説明しているが、検尿に含まれる尿たんぱく検査が選択になることに腎臓病の専門家から異論が続出。日本腎臓学会は「腎臓病の発見が遅れ、透析患者の増加を招きかねない」と反論している。
健診は現在、企業や市町村、健康保険組合などが別々の法律に基づき実施しているが、主婦や自営業者らへの実施は義務づけられていない。新健診は、40歳以上のすべての人を対象に、国民健康保険や健康保険組合などの保険者に実施を義務づけるもので、08年4月の導入が決まっている。
厚労省は昨夏に暫定案を公表、今春までに検査項目を確定したい考えだ。しかし、案で検尿が「医師の判断で、選択的に実施する項目」になった。検尿には尿たんぱく検査のほか、潜血と糖を調べる検査があるが、いずれも選択になる。
厚労省生活習慣病対策室は「新健診は、本当に有効な項目だけに絞り込む必要がある。尿たんぱく検査が、腎不全や透析導入の予防に効果があるとの証拠はなく、必ずしも全員に行うことは有効ではない」と説明する。
これに対し、日本腎臓学会(理事長、菱田明・浜松医科大教授)は昨秋、尿たんぱく検査を必須項目に加える要望書を厚労省に提出。「腎臓病克服はもちろん、生活習慣病予防の徹底という点からも禍根を残す。検尿システムを破棄することは日本の医療の後退と言わざるを得ない」とし、折衝を続けている。
日本腎臓学会によると、国内に約25万人いる透析患者の約4割を占める「慢性糸球体(しきゅうたい)腎炎」は、尿たんぱく検査がきっかけで見つかるケースが多い。慢性糸球体腎炎の約半数を占める「IgA(アイ・ジー・エー)腎症」の約7割は、尿たんぱくの異常で見つかったとの報告もある。菱田理事長は「治療法の進歩で、腎炎は早期に見つければ進行を抑えられる。尿たんぱく検査がなくなると発見が遅れ、慢性腎炎や透析患者が増える心配がある」と話す。
尿たんぱく検査の有効性に関し、厚労省研究班の報告(04年度)があるが、「証拠は見つからなかった」としながらも、「結論は一定していない」としている。米国には、一般住民を対象に、毎年尿たんぱく検査を行う必要はないとの報告もある。
血液製剤「フィブリノゲン」などを投与され、C型肝炎ウイルスに感染した患者が国と製薬会社に損害賠償を求めた薬害C型肝炎集団訴訟で、新たに20〜60代の計33人(女性28人、男性5人)が5日、計19億8000万円の賠償を求めて大阪、東京、名古屋、福岡4地裁に提訴した。この追加提訴により、原告総数は5地裁・2高裁で計160人、賠償請求総額は約98億2000万円になった。
追加提訴の内訳は大阪と福岡両地裁が各11人、東京地裁7人、名古屋地裁4人。訴訟をめぐっては、大阪、福岡両地裁が昨年、国と製薬会社の責任を認める判決を言い渡し、原告、被告双方が控訴している。東京地裁が3月23日、名古屋地裁が7月31日に一部の原告に対する判決をそれぞれ言い渡す予定。
原告側弁護団は提訴後、国が被告となった原爆症認定訴訟、トンネルじん肺訴訟、中国残留孤児訴訟の各原告・弁護団と合同で3月5日に東京都内で開く集会「厚生労働省よ更生せよ!〜放置される被害者たち〜」への参加を呼びかけた。集会の問い合わせは野間法律事務所(03・5363・6707)へ。
乳がん「見落とし」40代3割 厚労省研究班が追跡調査 |
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マンモグラフィー(乳房X線撮影)を視触診と併用する乳がん検診を受けても、40代では3割近くが乳がんを見落とされている可能性があることが、厚生労働省研究班(主任研究者=大内憲明・東北大教授)の研究でわかった。乳腺密度が濃い40代は、マンモグラフィーに腫瘍(しゅよう)が映りにくい可能性が以前から指摘されていた。それが裏付けられた形で、研究班は、超音波(エコー)を併用する検診の研究が必要だと指摘している。
89〜00年に宮城県でマンモグラフィー併用検診を受けた延べ約11万2000人について、検診後の経過を追跡調査した。宮城は「地域がん登録」の実施県で、がんになった住民の治療や予後の情報が、県に集積されている。
研究班は、検診で「陰性」とされたのに、その後、次の検診を受けるまでに乳がんが見つかった人を「見落とされた可能性がある人」と判断。検診で乳がんを発見できた人と合わせ、「乳がんがある人を、がんと正しく診断できた割合」(感度)を算出した。
その結果、40代の感度は71%で、3割近くが見落とされていた可能性があったことがわかった。50代の感度は86%、60代は87%だった。
日本では、乳がんにかかる人は40代が最も多い。だが40代は乳腺密度が濃く、マンモグラフィーに腫瘍が映りにくいといわれている。一方、エコー検査は乳腺の濃さに影響されにくく、20〜40代の乳がん発見に効果が高いと期待されている。
エコー検査は乳がんが疑われる人の診断などに使われており、一部には乳がん検診にエコーを採り入れている自治体もある。
大内教授は「40代の女性の乳がん死亡率を減らすには、エコーを使った検診が有効といえる。また、検診の有効性を高めるには全国的なデータが欠かせず、全国的に標準化されたがん登録制度が必要だ」と話している。
妊産婦の死亡率、都道府県で格差5倍超 厚労省調査 |
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妊娠や分娩(ぶんべん)がもとで妊産婦が死亡する確率に、都道府県によって顕著な差があることが、厚生労働省の研究班の調べでわかった。過去10年間の平均をとったところ、最も低い広島が出生10万件あたり1.84人だったのに対し、最も高い京都は10.70人。一方、胎児や新生児の死亡率を同じ10年間の平均値で見ると、西日本は低くて東日本で高い東西格差が浮かび上がった。研究班は地域格差の原因を分析し、3月をめどに報告をまとめる。
毎年、全国で60人前後の女性が妊娠や出産が原因で死亡している。都道府県ごとに見ると、自治体によっては死亡数がゼロの年もあり、これまで指標として重要視されてこなかった。研究班は今回、国の人口動態調査を基に95〜04年の10年間の平均を割り出した。
妊産婦死亡率の全国平均は出生10万件あたり6.39人。低い広島と最高の京都では、5倍以上の差が生じた。京都は04年だけで妊婦6人が死亡したことが影響した。死亡率が低いのは、広島のほか、愛媛、鳥取、岡山、徳島と中・四国地方が集まる。高い地域には埼玉、千葉、茨城、東京など、関東周辺が目立つ。
一方、妊娠22週以降の胎児の死産と、出産から7日未満の新生児死亡を合わせた「周産期死亡率」についての平均値は、最低の広島は出産千件あたり5.01人、最高の山梨は7.23人で、約1.4倍の開きがあった。中・四国地方をはじめとする西日本が低いのに比べ、関東や東北など東日本が高い。
鹿児島のように周産期死亡率は低いのに、妊産婦死亡率が高い地域もある。逆に、青森や群馬などは周産期死亡率が高いのに、妊産婦死亡率の低さが目立つ。
こうした地域差には、医師数や搬送システムの整備状況、地理的条件など複数の要素が影響しているとみられるが、研究班は、都道府県の担当者や難しいお産を扱う全国の総合周産期母子医療センターにアンケートを実施するなど原因究明を進めている。
主任研究者の池田智明・国立循環器病センター周産期診療部長は「妊産婦死亡の格差の原因や、地域差があるのかどうかについて、各地域の事情を踏まえて分析し、妊産婦死亡率の低下につなげたい」と話す。
三菱ケミカルホールディングス(HD)傘下の三菱ウェルファーマ(本社・大阪市、非上場)と田辺製薬(同、東証1部上場)は2日、10月1日付で合併することで基本合意した、と発表した。新会社の名称は「田辺三菱製薬」で、社長には田辺の葉山夏樹社長が就任する。合併後の従業員数は約1万人で、新会社の売り上げ規模は4078億円(06年3月期)になり、国内6位の製薬会社が誕生する。
基本合意によると、田辺を存続会社とし、三菱ウェルを吸収合併して上場を続ける。本社所在地は田辺の現本社。副社長には、三菱ウェルの小峰健嗣社長が就く。三菱ケミHDが合併後の新会社に出資して過半数の株式を保有する。新会社は三菱ケミHDの連結子会社となる。
価格を安く抑えた後発医薬品(ジェネリック医薬品)事業にも本格参入し、大衆薬を含めた「総合医薬品メーカー」を目指す構想だ。
ES細胞研究で国際学会が指針 倫理問題で3分類 |
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様々な組織や臓器になり得る万能細胞として、再生医療への期待が高い胚(はい)性幹細胞(ES細胞)について、国際幹細胞学会が研究実施上の国際指針を作った。各国での適切な規制実施や国際共同研究の円滑化につなげるのが目的で、欧米や中国、日本など14カ国の研究者や生命倫理学者らが検討に参加した。1日付の米科学誌サイエンス(電子版)に掲載される。
指針は、生命倫理上の問題の大きさなどに応じて、対象となる研究を三つに分類した。
問題が比較的少ないES細胞の利用研究など第1類は、医学生命科学での通常の審査監督手続きでよいとした。第2類のES細胞の新規作製計画は、受精卵などの提供や破壊を含むため、法学や生命倫理などの有識者による厳格審査を求める。第3類は人のES細胞やクローン胚を人や動物の胎内に移植することなどで、当面禁止とした。
また、卵子提供について、提供に誘うような多額の謝礼は否定したが、実費の支払いなどは各国の判断に任せるとした。
ES細胞は、数日培養した受精卵から細胞の塊を取り出して作る。これを基に、患者に必要な組織や細胞を作ることができれば、再生医療の切り札になる可能性がある。
ES細胞研究の規制は国によって様々。米国は政府資金の拠出は禁じているが、統一的な制限はない。受精卵を「生命の始まり」と位置づける傾向が強いドイツやフランスはヒト胚研究を禁じ、韓国は法で認めている。日本も政府は認めている。今後規制を検討する国では、国際指針が参考にされそうだ。
検討に参加した中辻憲夫・京都大再生医科学研究所長は「日本の指針はES細胞の利用計画にまで厳しい手続きを求めている。過剰規制であり、研究の遅れを招いている」と指摘している。
肝炎の診断・治療で中核研究施設、都道府県拠点と連携 |
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300万人以上の感染者がいるとされるB型、C型肝炎対策として、厚生労働省は、診断や治療法を研究開発する国の中核施設を設ける方針を固めた。現在のところ、国立国際医療センター(東京都新宿区)が有力候補だ。厚労省は先行するがん対策と同様、この中核施設と各都道府県の拠点病院などとの連携で、全国どこでも患者が質の高い肝炎治療を受けられる体制づくりを目指す。
肝炎は放置すると慢性化し、肝硬変や肝がんに進行する恐れがある。厚労省は肝炎対策として07年度予算に前年の約1.4倍にあたる約75億円を計上する。検診などの拡充を図るほか、各都道府県に原則1カ所ずつ「肝疾患診療連携拠点病院(仮称)」を指定。地域の病院や開業医と連携する。
国立国際医療センターは、国内に6カ所ある国立高度専門医療センターの一つ。エイズをはじめ国際的な研究や調査が必要な感染症対策を担う施設として93年に設立。
厚労省は、中核施設に国内外で効果を上げている診断や治療法の情報収集などを担わせ、治療のガイドラインに反映させたい考えだ。今後、具体的な時期や運営体制、肝炎の専門医確保などの詳細を詰め、08年度以降のスタートを目指す。
一方、がん対策で厚労省は、国立がんセンター(東京都中央区)を国の中核施設と位置づけ、拠点病院に指定した地域の病院(1月現在286カ所)と連携する体制づくりを進めている。このため肝炎の患者団体などは、同様の施策の必要性を訴えていた。
厚労省の推計では、国内の肝炎ウイルス感染者は、B型が110万〜140万人、C型が150万〜190万人。早期の発見と治療が重要とされる。
肝炎は自覚症状がなく検診を受けないケースも多いため厚労省は来年度に向けて都道府県用のガイドラインを作成。市町村検診などで精密検査が必要とされた人に対し、医師や保健師が検査を受けるように指導することなどを求めている。
イレッサ、優位と言えず 輸入元が効果を臨床比較 |
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副作用死を多く出した肺がん用の抗がん剤イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市)は1日、別の抗がん剤タキソテール(一般名ドセタキセル)と比べ、イレッサの延命効果がすぐれているとはいえない、との調査結果を厚生労働省に報告した。同省は「タキソテールに優先してイレッサを使う根拠は一般的にはない」と同社から医薬関係者に情報提供するように求めた。
イレッサの02年の承認時に、有効性と安全性を確かめる市販後の臨床試験が義務づけられていた。このため03年9月〜06年1月、全国50施設の肺がん患者490人を対象に調査が行われた。
イレッサとタキソテールを使ったそれぞれのグループを比べると、治療開始後1年の生存率はタキソテールが54%で、イレッサは48%だった。
イレッサについては「喫煙歴のない東洋人の女性で腺がんの患者には特に効果が高い」との報告もあり、同省は今後、患者の性や治療歴などによる効果の差について、詳しい調査を求める。
間質性肺炎などイレッサの副作用報告は06年9月までに1708件あり、うち676人が亡くなっている。
宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植問題で、万波医師の前勤務先、同市立宇和島病院の調査委員会は1日、新たに11件の病気腎移植が判明した、と発表した。これまでの調査で14件を確認していたが、さらに調査を進めた結果、2度移植を受けた3人を含む患者22人に対し、93〜03年に計25件が実施されていた。徳洲会病院での実施例と合わせ、万波医師による病気腎移植は判明分だけで36件になった。
11件のうち、臓器提供者(ドナー)ががんに侵されていたケースが6件あった。腎がんと尿管がんが各3件で、ほかは尿管狭窄(きょうさく)、血管筋脂肪腫、骨盤部後腹膜慢性炎症、腎膿瘍(のうよう)、骨盤腎が各1件。移植を受けた22人中5人がすでに死亡しており、うち4人について移植と死亡の因果関係はなかったが、移植後に肝がんになった1人は十分に確認できないとしている。万波医師はこれまで、市立宇和島病院時代の病気腎移植について「10〜15件実施した」と説明していた。
調査委員会は病気腎移植の可否について、17日に大阪市内で開かれる日本移植学会など4学会の合同会議の結論を待って判断し、年度内をめどに報告書をまとめる方針。
堀前院長と看護師ら11人を起訴猶予 無資格助産事件 |
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年間約3000人が出産する堀病院(横浜市)の無資格助産事件で、横浜地検は1日、保健師助産師看護師法違反(助産行為の制限)の疑いで書類送検されていた堀健一前院長(79)と看護師ら計11人を起訴猶予とした。
同病院では03年12月〜06年5月、看護師らが妊婦17人に対して子宮口の開き具合などを調べる内診をしたとして同法違反の疑いがもたれていた。
起訴猶予とした理由について、地検は(1)看護師らの内診は助産師の偏在など構造的な問題であり、前院長らを罰することが相当であるとは考えられない(2)母体や胎児・新生児に具体的危険性があったとまでは証拠上認められない(3)堀病院では現在、看護師らによる内診が行われていない(4)堀前院長は社会的制裁を受け、責任をとって院長職を退き、医師資格も返上するとしている――などと説明した。さらに、看護師らは、基本的には堀前院長の指示で、やむなく内診をしており、関与は従属的と判断した。
看護師による内診行為について、厚生労働省は違法としているが、日本産婦人科医会などは「医師の指示があれば助産行為にあたらない」などと主張していた。
患者の体内に18年前のガーゼ 新潟市民病院で医療事故 |
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新潟市民病院(同市紫竹山)は31日、市内に住む60歳代の男性患者の体内から、18年前の手術で使った止血用ガーゼが見つかる医療事故があったと発表した。男性は鼻づまりや嗅覚(きゅうかく)障害が続いていたという。一方、生後4カ月の女児に、誤って10倍の量の気管支拡張剤を与えていたことも判明。病院側は関係者に謝罪を済ませ、男性には慰謝料を払う方針だ。
病院側の説明によると、鼻づまりや後頭部の痛みなどを訴えていた男性は89年、左鼻を手術し、ポリープを切り取った。
しかし、93年ごろから左鼻の奥が圧迫され、後頭部が常に重いなどの症状が現れた。その後は鼻づまりもひどくなり、嗅覚もなくなった。04年からは別の病院で治療を受けたが、症状は改善しなかった。
昨年12月下旬の朝、男性が鼻をかんだところ、左鼻から2枚のガーゼが固まって出てきた。ガーゼは長さ15センチ、幅3センチで、18年前の手術で用いた止血用ガーゼの可能性が高いという。
その後、症状が回復した男性の指摘で、病院側は「ガーゼと症状の因果関係はある」と判断し、男性の経過を今後も定期的に診ながら、慰謝料を支払うという。
一方、市内に住む生後4カ月の女児は1月25日、薬を1袋飲んだ。約6時間にわたって興奮状態が続いたが、後遺症などの心配はないという。
担当の主治医は、処方箋(せん)に薬の成分量を正しく記していた。だが、コンピューターに入力する際、医事課の職員が換算を誤って、10倍の量の気管支拡張剤を与えていたという。
無資格助産事件、院長ら不起訴へ 横浜地検、影響考慮か |
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年間約3000人が出産する堀病院(横浜市)の無資格助産事件で、横浜地検は31日までに、保健師助産師看護師法違反(助産行為の制限)の疑いで書類送検された堀健一院長(79)を不起訴処分(起訴猶予)とする方針を固めた模様だ。起訴して刑事責任を問えば、産科医や助産師の不足が深刻なお産の現場に与える影響が大きいことや、また堀院長が地検側に院長職を辞する考えを伝えたことなどを踏まえ、総合的に判断したとみられる。
書類送検されていたのは、堀院長のほか看護師、准看護師ら10人。神奈川県警が昨年8月、同法違反容疑で病院を家宅捜索し、看護師らが妊婦17人に対して子宮口の開き具合をみる内診行為をしたとして同法違反の疑いが持たれていた。看護師らも不起訴処分とするとみられている。
同法第30条は「助産師でないものは助産をしてはならない」と定めているが、どのような行為が「助産」に当たるのかは明記していない。厚生労働省は02年11月、都道府県への通知の中で、内診が医師や助産師しかできない助産行為に含まれると定義。さらに04年9月の通知では、医師の指示があっても看護師は内診をしてはならないとの見解を示していた。
これに対し、事件後、日本産婦人科医会などは「医師の指示があれば、看護師の内診は助産行為にあたらない」と主張。「看護師による内診を認めなければ、お産が立ちゆかなくなり、お産難民があふれる」と一連の捜査に反発していた。
地検は産科医団体への事情聴取を重ね、処分内容を判断するにあたってお産の現場の厳しい現状を重視したとみられる。
さらに、地検の事情聴取などに対し、「内診は助産行為ではない」などと犯意を否認していた堀院長が、今年になって引退の意向を検察側に伝えたという。地検側も職を辞することを重く受けとめ、嫌疑はあっても訴追しない起訴猶予の判断をしたとみられている。
これまでの無資格助産をめぐる検察の判断では、准看護師に内診をさせたとして千葉県茂原市の産婦人科院長が04年2月、同法違反で千葉地検に略式起訴され、罰金50万円の略式命令を受けた。だが、同法違反で書類送検された愛知県豊橋市内の産科医らに対し、名古屋地検豊橋支部は06年11月、「犯意が希薄なうえ、内診行為そのものによる健康被害の危険性が認められない」と起訴猶予とした。
鳥インフルエンザからの変異が懸念される新型インフルエンザ対策で、厚生労働省は31日、人から人への感染が発生、大流行するケースまでを想定した対策のガイドライン原案について、国民に意見を募る「パブリックコメント」を始めた。数量が限られるワクチンをだれに優先的に接種するかなど、行政や専門家の判断で決められない「人の生命に直接かかわる問題」で国民の生の声を聞きたい、としている。
今月19日に厚労省専門家会議が示した原案は、感染拡大を防ぐ早期対応や交通制限などによる「地域封じ込め」など13分野に及ぶ。
ワクチンについては、医師や看護師ら医療従事者に加えて、社会生活に最低限必要な「社会機能維持者」に優先接種するとした。一方で職種については「電気・ガス・水道・食料供給・通信・交通・警察等」と7分野を示すにとどめた。パブリックコメントでは、社会機能を維持する職業とは何か、また、死者を最小限に抑える目的で医学的にリスクの高い人に優先接種するか、国の将来を重視して子どもに優先接種するか、などについて尋ねている。
厚労省は国民の意見を参考に、今年度内に専門家会議で正式なガイドラインをまとめる方針だ。
原案は、電子政府の総合窓口(http://www.e―gov.go.jp)から閲覧できる。意見は3月1日までに電子メールかFAX、郵送で厚生労働省結核感染症課へ。問い合わせは同課(03・5253・1111)へ。
がん患者の卵巣を保存 慶応大、治療後戻す研究承認 |
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慶応大医学部の倫理委員会が、がん治療による副作用で不妊になるのを防ぐため、事前に卵巣組織の一部を凍結保存し、治療後、体内に戻す臨床研究を承認したことが30日わかった。白血病や乳がんなど幅広いがんを対象にしたもので、日本産科婦人科学会の倫理委員会で承認が得られ次第、治療をスタートさせる。
がん治療で使う抗がん剤や放射線は、卵巣や精巣機能にダメージを与える。不妊を防ぐため、事前に精子や卵子、受精卵を凍結保存する治療は、これまでも国内で実施されてきた。ただ、卵子の場合、採卵に時間がかかり、がん治療を始めるのが遅くなるうえ、一度に採れる卵子の数も限られる。卵巣組織の凍結はすぐ行え、数千個分の卵子を保存できるという長所がある。
慶応大の倫理委員会が研究を承認したのは昨年7月。申請した産婦人科の久慈直昭講師によると、対象となるのは、卵巣の手術が、がん治療に影響を与えないと主治医が判断した患者で、未婚女性も対象となる。自費診療扱いで、患者の負担は30万〜50万円ほどになる。
卵巣は親指の先ほどの大きさで、左右に二つある。体への負担が少ない腹腔(ふくくう)鏡手術などで表面を切り取り、零下196度の液体窒素で凍結する。がん治療の後、患者が妊娠を希望した時点で、体内に残る卵巣や腹部の周辺に再び戻す。うまく元の卵巣にくっつけば、自然排卵での妊娠も可能という。
ただ、治療法は確立しているとは言えず、卵巣を凍結保存しておいた女性から子どもが生まれた例は、04年に世界で初めてベルギーで報告されて以降、数例しかない。しかも、生まれた子どもが凍結保存していた卵子によるのか、残っていた卵巣の卵子によるのか、分かっていない。凍結卵巣組織にがん細胞が残っていた場合、がんを再移植してしまう可能性もある。
久慈さんは「白血病などは若い女性にも多く、本当に恩恵があると判断した患者を対象に、慎重に研究を進めたい」と話している。
国内では、岡山大が05年9月、卵巣凍結のみ倫理委員会の承認を受けた。体内に戻す際は再び、倫理委員会に諮る。聖路加国際病院(東京)も現在、倫理委員会に申請中だ。
今冬のインフルエンザの全国的な流行が始まったことが30日、国立感染症研究所感染症情報センターのまとめでわかった。昨冬に比べると5週遅い始まりで、過去10年間では2番目に遅いという。
今月15日からの1週間に全国約5000の医療機関から報告された患者数が、1施設あたり1.1人となり、流行開始の目安となる1.0人を今冬初めて上回った。
ウイルスの型は、A香港型とB型が9割近い。地域的な偏りはなく、全国で広範囲に患者数が増えつつあるという。
同センターの安井良則主任研究官は「過去のケースでは、1月に流行が始まると2月中旬から3月にかけてピークを迎える。人込みに出るのを控え、手洗いやマスクを心がけてほしい」と話している。
鳥取市の小中学校で多数の児童と生徒、教職員が嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴えている問題で、発症者が17校の計775人にのぼることが29日、鳥取市教委の調べでわかった。このうち6人が入院している。県は同日午前、17校すべてに給食を提供している鳥取市第2学校給食センターを立ち入り調査し、同日から5日間の業務停止命令を出した。
同センターでは今月10日に調理員の1人が下痢や嘔吐を訴え、17日にノロウイルスの陽性反応が出た。別の調理員も21、27日に同様の症状が出ているという。28日の参観日に市内の小学校で児童27人が欠席し、8人が早退したことから市教委が全校に欠席者などを確認していた。17校は29日、給食を中止し、午前中で授業を打ち切った。
17校では同じ給食センターからの給食を食べていることから給食が原因とみて、保存食の調査や同センターの職員らへの検便などを進めている。
鳥取で347人が嘔吐・下痢訴える 感染性胃腸炎か |
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鳥取市の小中学校計17校で児童と生徒、教職員計347人が嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴えていると、同市教委が28日発表した。17校はいずれも市第2学校給食センターから給食の提供を受けている。市教委は学校給食が原因の感染性胃腸炎の可能性もあるとみて、29日は17校の給食を中止。鳥取県は同日朝から同センターの立ち入り調査を実施する。
市教委によると、症状を訴えているのは生徒・児童が302人(17校全体の5.9%)、教職員45人(同10%)。いずれも症状は軽いという。1人は入院しているが、現在は快方に向かっているという。
28日午前、市内の小学校(児童151人、教職員16人)の校長から「学校参観で児童27人と教員1人が休み、児童8人と教員1人が早退した」と連絡があったため、市教委が調査した。市教委は26日の給食が原因の可能性が高いとみている。
同センターでは調理員の1人が今月10日に下痢や嘔吐を訴え、ノロウイルスの検査で陽性反応が出た。また別の調理員2人も21日と27日に同様の症状が出たという。
気管支に栄養チューブ挿入、80代女性死亡 東徳島病院 |
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徳島県板野町の国立病院機構東徳島病院(大木崇院長)は27日、胃の中に入れる流動食のチューブを誤って気管支に挿入された入院中の80代女性が死亡した、と発表した。同病院から届け出を受けた板野署は、病院スタッフらから事情を聴くとともに、司法解剖して死因を調べる。
病院側の説明では、女性は昨年11月、肺炎で入院。今月14日に看護師が経管栄養チューブを胃に挿入する際、誤って気管支に入れたという。同16日、発熱や血圧の低下などが見られ、エックス線検査をしてミスが判明した。その後、容体はいったん安定したが、27日早朝に心肺停止したとしている。
大木院長は死因との因果関係は不明としたうえで、「大変申し訳なく思う。マニュアルの改訂・徹底など再発防止に努めるとともに、遺族には誠意を持って対応したい」と話した。
「カモが犯人」説浮上 糞から鳥インフルのウイルス |
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宮崎県の清武町と日向市東郷町で鳥インフルエンザに感染した鶏が大量死した問題で、清武町でみつかった「H5N1型」とほぼ同じ遺伝子のウイルスが韓国で今月、渡り鳥のマガモの糞(ふん)から検出されていたことが、わかった。感染経路の解明を進める農林水産省も関心を寄せている。専門家の間では「犯人」として渡り鳥、なかでもカモ類を挙げる声が出てきた。
韓国西海岸側の天安(チョナン)市など4都市では、昨年11月からこれまでに、鳥インフルエンザが5回発生した。同国農林省によると、ウイルスの遺伝子はすべて清武町と同じ中国・青海湖タイプ。しかも、同市内で採取されたマガモの糞から、同じ青海湖タイプのウイルスが検出された。
渡り鳥の飛来ルートとしては、シベリアや中国東北部から朝鮮半島の西海岸沿いを南下し、九州にいたるコースが知られる。農水省の感染経路究明チームのメンバーでもある金井裕・日本野鳥の会主任研究員によると、マガモもこのルートで11〜12月にかけて日本に飛来するとされる。
韓国農林省によると、天安市で鳥インフルエンザに感染した鶏の大量死が発生し、マガモの糞からウイルスが検出されたのは今月19日。だが、この糞は昨年12月下旬に採取されていたという。
糞の採取と飛来の時期が重なることなどから、金井主任研究員は「カモ類を感染源として有力視する見方は多い」という。
感染経路究明チームの座長を務める伊藤寿啓・鳥取大教授(獣医ウイルス学)によると、感染源には(1)野鳥が運んできた(2)人の靴などに付いて運ばれた(3)物に付いて持ち込まれた、などが考えられるという。
だが、「渡り鳥犯人説」は当初からあった。清武町のウイルスは、中国西部の青海湖で05年に確認されたものと遺伝子が近いうえ、「ウイルスは鳥の体内では増殖しても、人や物に付着した場合は弱まるはず」(伊藤教授)だからだ。
ただ、どうして養鶏場にウイルスが入り込んだのかは謎のまま残っている。鶏舎は金網と防鳥カーテンで外部から遮断されていたからだ。
大槻公一・京都産業大教授は「養鶏場への人の出入りや関係者による消毒の徹底ぶりなど、さらに詳しく調べる必要がある」と話す。
お産の現場、パンク寸前 医師不足に「過失」起訴も影響 |
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出産前後の治療を担う周産期医療の現場が厳しさを増している。医師不足に加え、昨春、福島県立大野病院の医師が業務上過失致死罪で起訴された事件も影を落とす。事件後「リスクを避けたい」という医師や妊婦の心理が大病院への分娩(ぶんべん)集中を招き、医療機関の連携がうまくいかなくなった地域もある。厚生労働省は特定の病院に医師を集める「集約化」で事態の打開を図ろうとする一方、宮崎県は独自のネットワークづくりで成果を上げている。
■大病院に分娩集中
福島県立医大病院(福島市)に昨秋、産婦人科医が3人いる県南部の総合病院から「初産で前置胎盤」という妊婦が送られてきた。胎盤が子宮の出口を覆う前置胎盤は大量出血の可能性がある。
医大病院は、出産リスクの高い妊婦の受け入れや高度な新生児医療を行う県内唯一の「総合周産期母子医療センター」に指定されている。検査の結果、リスクはほとんどないと思われた。
しかし、いくら説明しても「医大でお願いします」。妊婦側も、お産に「不安のかたまり」となっていた。結局、医大病院で出産したという。
総合病院や妊婦の不安の背景には、県立大野病院で起きた事件がある。子宮にくっついて離れない癒着胎盤を無理にはがしたため、妊婦を失血死させたとして医師が刑事責任を問われた事件だ。26日、初公判がある。
福島市内の開業医の一人は「常に事件のことが頭の隅にある」。事件後、県内の開業医や総合病院はわずかでも妊婦にリスクがあると、医大病院に送るようになった。「リスク回避」の動きは他県でも広がっている。
厚労省は96年から、周産期を支える医療体制の整備を都道府県に求めてきた。(1)「総合周産期母子医療センター」を原則1カ所以上つくる(2)比較的高度な医療ができる「地域周産期母子医療センター」を、総合センターのほかに数カ所、整備するというものだ。
総合センターは、24時間体制で産科担当の医師が複数勤務する母体・胎児集中治療管理室(MFICU)を「6床以上」置くことなどが要件となっており、39都道府県に62施設ある。
総合センターがない奈良県の町立病院で昨夏、出産中の妊婦が意識不明となった。奈良、大阪の計19の病院に受け入れを断られ、約6時間後、国立循環器病センター(大阪府吹田市)に到着。脳内出血と分かり緊急手術で男児を出産したが、母親は8日後に死亡した。
同県では、妊娠中に異常が起きた時の受け入れ先として県立奈良病院(奈良市)と県立医大病院(橿原市)が指定されている。だが、両病院を合わせても新生児集中治療管理室(NICU)は30床、MFICUは4床しかなく、満床状態が続く。このため患者の県外搬送は常態化していた。
奈良県が頼りにしてきた大阪府も周産期医療システムが揺らいでいる。
全国に先駆けて、空きベッド状況などをパソコンで検索できる「産婦人科診療相互援助システム」をつくり、搬送の迅速化に努めてきたが、最近は1件目の電話で搬送先が見つかるケースは半数にとどまるという。府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長は「地域の中核病院で産科の閉鎖や分娩制限が起き、センターに正常分娩や、さほどリスクが高くない出産まで集中した。搬送依頼を受けた当直医が緊急手術などの一方で病院探しをするほどだ」と話す。
厚労省は05年暮れ、医師不足対策として産科の集約化を今年3月までに検討するよう都道府県に通知を出した。日本産科婦人科学会で医師不足問題を担当する海野信也・北里大教授は「診療機能の集約化より先に患者の集中が起きた。総合センターでさえ、医師は月平均7回も当直している。分娩料を早急に引き上げ、少しでも労働条件の良い施設を増やしてほしい」と話した。
■厚労省 医師足りず「集約化」、宮崎県は「地域分散型」で成果
一方で、総合センターの空白自治体の一つである宮崎県は「一極集中型」でなく、「地域分散型」のシステムを作り、成果を上げている。
県北から県央の宮崎市まで車で2時間程度かかる。そのため、地域の開業医(1次施設)のほかに、北部、中央、南部、西部にある六つの総合病院を地域の基幹病院(2次施設)と位置づけ、県立宮崎病院(宮崎市)と宮崎大病院(清武町)を3次施設とするネットワークを整えた。患者の搬送は開業医などの1次施設から2次施設まで約30分、2次施設から3次施設まで、ほぼ1時間でいけるようにした。
01年から5年間の同県内の分娩数は約5万3000件。同期間の母体の救急搬送は192人。うち3次施設に送られたのは29人で、多くは2次施設で対応できている。
かつて宮崎県は周産期死亡率(妊娠22週から出産後7日未満の胎児と赤ちゃんの死亡率)が全国一悪かった。94年の死亡率が出生数1000件当たり7.5とワースト1だった。その直前から、地域性を考えた連携システムと、新生児医療も担える産科医の養成に力を入れた結果、04年の死亡率は3.1(全国平均5.0)と最低になった。
搬送より医師が出向いたほうが早いと判断すれば2次施設の医師が開業医のもとへ支援に行く。2次施設にハイリスク分娩が集中した場合、開業医が病院を手伝うという態勢も整う。また、2次、3次施設の産科医らが年2回集まり、母親や赤ちゃんの全死亡例を検証する検討会を開催。教訓は再発防止のためにすべての分娩施設に伝えられている。
システムづくりの中心となった池ノ上克・宮崎大教授は「周産期医療の体制整備は地域の実情に応じてやっていくしかない」と話した。
福島県立大野病院で04年に女性(当時29)が帝王切開手術中に死亡した事件で、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われた、産科医加藤克彦被告(39)の初公判が26日、福島地裁(大澤廣裁判長)で開かれた。加藤被告は「胎盤の剥離(はくり)を続けたことは適切な処置だった」などと述べ、起訴事実を否認した。
加藤被告は「自分を信頼してくれた患者を亡くしたことは非常に残念で、心からご冥福をお祈りします。ただ、切迫した状況で、冷静にできる限りのことをやったことをご理解いただきたい」と述べた。
検察側は冒頭陳述で「直ちに剥離を中止し、子宮摘出に移る注意義務を怠った」と主張。また、病院側に癒着胎盤をはがす手術を行うような体制や設備が整っていなかったと指摘した。
起訴状によると、加藤医師は04年12月、子宮に癒着した胎盤を手術用ハサミではぎ取って女性を失血死させ、さらに、女性の死に異状があると認識しながら、24時間以内に警察に届け出なかったとされる。
医療行為の過失を問われて医師が逮捕・起訴されたことで、全国の医師が抗議声明を発表するなど、公判は医療界の注目を集めている。
公判前整理手続きが昨年7月から計6回実施され、同地裁は、胎盤癒着を認識した時点で胎盤をはぎ取るのをやめるべきだったかどうかを最大の争点として認定した。
宮崎県日向市の鶏大量死、鳥インフルと確認 H5亜型 |
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宮崎県日向市東郷町の養鶏場で鶏が大量死した問題で、農林水産省と県は25日、H5亜型の鳥インフルエンザウイルスの感染を確認したと発表した。大量死は同日までに3169羽に上った。県は26日から、この養鶏場の残り約5万羽の殺処分に着手し、隣に近接する別経営の養鶏場の5万羽の処分も検討する。半径10キロ圏内にある計21養鶏場で飼われている約51万羽の鶏や卵は、25日午後7時から移動を禁止した。県内の感染確認は、これで2カ所目。
県によると、今回感染が確認された養鶏場は、佐藤ブロイラー農場(佐藤欣一社長)。
県は同日朝、死んだ鶏からウイルスを分離し、動物衛生研究所(茨城県つくば市)の鑑定で鳥インフルエンザウイルスと確認された。詳しいウイルスの型の判明には数日かかる見込みだが、農林水産省と県は強毒性の可能性が高いとみている。
県は、鶏の死骸は養鶏場近くの山林に埋める方針。殺処分と埋却作業には4日以上かかるとみられる。また、県は26日、県職員100人に加え、日向市と畜産関係団体の応援も得て計150人態勢で殺処分を始める。
鶏などが移動制限される半径10キロ圏内には日向市と美郷町、都農町、木城町に西都市の5市町が含まれるが、対象となる養鶏場は日向市と美郷町にある。
県内では13日、現場から約60キロ南の清武町の谷口孵卵(ふらん)場でも鳥インフルエンザ感染が確認された。後に強毒性のH5N1型と判明。半径10キロ圏内では鶏などの移動が禁止されたが、県は25日、鶏卵の移動制限を解除した。圏内の11養鶏場のうち3養鶏場が対象だ。
佐藤ブロイラー農場では、25日に新たに1850羽が死んでいるのが見つかった。
治療費を支払わない患者が増えて病院の「未収金」が膨らんでいる問題で、厚生労働省は24日、解決に向けて、医療関係団体や保険者を入れた検討会を設ける方針を固めた。厚労省は未収金について「医療機関と患者の問題」との立場だったが、全国の6割以上の病院が加入する四病院団体協議会(四病協)が、国民健康保険などの保険者に返還訴訟も辞さない構えを見せているため、放置できないと判断した。
四病協によると、加盟する3272病院の94%が未収金を抱え、04年度までの3年間に把握できたのは約426億円。患者の負担増などが影響している一方、支払い能力があるのに治療費を何度も踏み倒す患者もおり、モラル低下も原因とみている。
厚労省は検討会に、四病協や日本医師会などの医療関係団体のほか、国民健康保険の保険者である市町村や企業の健康保険組合、学識経験者などに参加を求める方針だ。そのうえで例えば、悪質な未払い患者が会社員であれば加入する健康保険組合に医療機関が連絡する仕組みをつくるなど、問題解決に向けた具体的な方策を検討するという。
厚労省の「仲裁」について、四病協の山崎学・日本精神科病院協会副会長は「問題が解決に向かい始めたのはよかった」と評価する一方、並行して保険者への返還請求の準備も進める考えを示した。
未収金問題をめぐり、四病協は未払い患者が加入する医療保険の保険者に肩代わりを求め、応じない場合は訴訟に踏み切る方針を固めるとともに、国に対して解決策を求めていた。
国内初のチクングニヤ熱、スリランカ在住の女性 厚労省 |
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厚生労働省は24日、スリランカ在住の30代日本人女性が蚊を介してうつるチクングニヤ熱に感染し発症したと発表した。一時帰国中に医療機関を受診し、国立感染症研究所が確定診断した。日本でチクングニヤ熱の感染が確認されたのは初めて。
チクングニヤ熱は人から人に感染しない上、感染しても死亡率が0.1%程度と低く、同省結核感染症課は「感染が広がる恐れはない」と話している。(時事)
国内業者が卵子バンク 日本人ドナーから韓国で採卵 |
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不妊に悩む夫婦らに、第三者の日本人女性の卵子を販売する「卵子バンク」を、東京などを拠点に精子バンクを運営する業者が始めた。日本の業者による、日本人女性の卵子バンクは初めて。提供者(ドナー)の卵子を韓国で採り出し、夫の精子と体外受精させて妻の子宮に移す。ドナーには報酬が支払われる。業者によると、20〜33歳の8人の女性が登録しているという。これまでに数件の問い合わせはあったが、契約したケースはないとしている。
日本には、生殖医療に関する法律はない。しかし、第三者への卵子提供について、日本産科婦人科学会は指針で認めておらず、厚生労働省審議会も03年にまとめた生殖医療に関する報告書で、営利目的の精子や卵子提供を禁止している。事実上、国内で医師の協力は見込めない。
03年に韓国の業者が卵子バンクの営業所を日本に開いたことがある。しかし、韓国で精子、卵子の売買を禁止する生命倫理法が施行された05年1月の直前に撤退した。
このほか、連邦法に取り決めがなく、カリフォルニア州など生殖医療ビジネスが盛んな米国の業者へ仲介する日本の業者もある。
卵子バンク事業を始めたのは「エクセレンス」。もともと輸入代行業をしていた佐々木祐司代表が個人で運営し、96年から有償で精子のあっせんもしている。ドナーはホームページで募集。ドナーと、卵子購入を希望する夫婦が面会した後、一緒に韓国へ行き、ソウル近辺の病院で採卵する。夫の精子と体外受精し、妻の子宮に移植する。帰国後、妊娠してもしなくても報酬100万円を払う。韓国では、両国で生殖ビジネスの経験がある女性が、病院紹介や通訳を務めるという。
ドナーは、身長や体重、学歴などを申告し、写真を提出。要望があれば、体のスリーサイズも教える。ドナーと、生まれた子どもの間には、一切の権利義務関係はないことを、双方の契約書で確認する。夫婦側の負担は、ドナーへの報酬のほか、契約金180万円、病院での費用約30万円などを含め、400万円近くになる。米国の場合、500万〜600万円という。
生命倫理法について、佐々木代表は「契約や金銭のやりとりは日本で行われるので、法律上、問題ない。日本人の卵子がいいという顧客の要望にも応えられる」と主張している。
HIV検査結果「陽性」を「陰性」と誤通知 仙台 |
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仙台市は23日、宮城野保健所(同市宮城野区)でエイズウイルス(HIV)抗体検査を受けた男性に対し、「陽性」の検査結果を「陰性」と通知するミスがあったと発表した。検査は匿名で、市は男性の住所や氏名などを把握していないため、全国の保健所にも協力を依頼し、本人からの連絡を呼び掛けている。
市保健医療課によると、宮城野保健所は昨年12月7日、男性のHIV抗体検査を実施。数日後、民間の検査機関から検査報告書が送付されたが、50代の女性職員が誤って決裁簿に「陰性」のゴム印を押し、そのまま本人への通知書に転記されたという。男性は自称30代で、結果が手渡されたのは同月15日。(時事)
宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植問題で、万波医師の前勤務先の同市立宇和島病院で尿管がんだった患者の腎臓を移植された男性が腎臓がんになり、さらに肺がんを患って死亡していたことがわかった。がん発症の原因は不明だが、移植された腎臓にがん細胞が潜んでいて発症した可能性もあり、同病院は事実関係を調べたうえで、病気腎移植の妥当性を判断する調査委員会に報告する方針。
万波医師の説明などによると、94年ごろ、腎臓と膀胱(ぼうこう)をつなぐ尿管の下部にがんができた患者の腎臓が摘出され、40代の男性に移植された。移植後は、2カ月おきに腎臓の細胞を取って再発の有無を調べる検査を続けたところ、約2年後、腎臓の中心部で尿管とつながる「腎盂(じんう)」にがん細胞が見つかったという。
万波医師は「がんが再発する可能性がある」と手術前に男性に説明。がんが見つかった際も男性に告知したうえで腎臓の摘出を勧めたが、「透析治療に戻りたくない」と拒否されたため、がん細胞を切除する手術を行ったという。だが、男性はその約2年後、肺がんを発症して死亡した。
専門医によると、腎臓がんの場合、10年以上たってから他の臓器に転移するケースもあり、肺への転移が最も多いとされる。同病院幹部は「今回のケースは把握していない。資料が残っているかどうか早急に確認したい」と話した。
万波医師は朝日新聞の取材に、「臓器提供者の腎臓にあったがん細胞が増殖したのか、新たにがんを発症したのかはわからない」と説明。移植患者ががんに侵された例があったことを公表しなかった点については、「再発したとは思っていなかった。肺がんについても内科医と検討した結果、腎臓がんの転移ではなく、新しくできたがんと診断した」と話した。
未婚のがん患者、卵子凍結を承認 日産婦小委員会 |
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日本産科婦人科学会(日産婦)の小委員会は22日、がん治療を受ける未婚女性の卵子を凍結保存し、将来の体外受精に備える臨床研究の実施を承認した。日産婦の会告(指針)では、夫婦の体外受精を念頭に既婚の女性がん患者の卵子凍結を認めているが、未婚女性についてのルールはない。
研究計画は、不妊治療施設でつくる「A―PART日本支部」(支部長=宇津宮隆史セント・ルカ産婦人科院長)が申請。このうち北海道、関東、九州などの9施設で実施する。対象は白血病や悪性リンパ腫など血液のがんと診断された15歳以上の未婚女性。
宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)などで行われた病気腎移植問題で、日本移植学会など腎臓病治療に関連する4学会は、2月中に合同会議を開き、同病院の万波誠・泌尿器科部長(66)らの移植が医学的に妥当だったかどうか、最終的な結論をまとめる。厚生労働省がつくった調査班の相川厚班長(東邦大医学部教授)が21日、岡山市内であった調査班の会合の後、明らかにした。
合同会議は、宇和島徳洲会病院など4病院に設置された調査委員会と、それらの病院に摘出した腎臓を送った病院を対象とした調査班の調べがすべて終わった後に開く。調査結果を踏まえて最終結論を出す。調査班の報告書は今月中にもまとまる見通し。
夕張市立病院、33人の透析中止へ 重い市外治療交通費 |
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財政再建団体に移行する北海道夕張市の市立総合病院で人工透析を受けていた患者計33人に対し、市は21日、4月以降は透析治療しないことを通告した。患者は他市町村の病院へ通わなければならないが、交通費への支援はなく、突然の通告に患者らから不安と不満の声が出た。
財政再建に伴い、市立病院は4月から公設民営の診療所体制になり、規模を大幅に縮小する。医師不足もあり、透析治療ができなくなるという。
透析治療をしている医療機関は周辺の4市町にあるが、市外への通院を余儀なくされる患者への交通費の補助は「財政再建下では無理」という。
21日に市が開いた患者らへの説明会では、男性患者の一人が「10日も透析を受けなきゃ死ぬんだ。あんたたちは生きてるが、我々は生かされてるんだ」と、突然の通告に怒りをぶつけた。出席した後藤健二市長は「国と道に支援を求めていきたい」と答えるにとどまった。
一番近いのは隣の栗山町の病院だが、車で40分ほどかかる。透析を受けて6年になる山崎ヨシ子さん(69)は、これまでは心臓病を患う夫(69)に車を運転してもらい、市立病院に週3回通っていた。栗山町の病院に通うことを考えているが、冬の峠は雪深くて運転できそうにないという。
臓器提供希望4割強、カードは1割未満 内閣府世論調査 |
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脳死判定後に臓器提供をしたいと思っている人は4割強で過去最高になったが、提供の意思を示す「意思表示カード」などを持っている人は1割にも満たないことが内閣府の「臓器移植に関する世論調査」でわかった。臓器移植に関する情報を「十分に受けていない」と回答した人が8割を超えており、制度の周知不足が浮き彫りになった。
調査は、全国の成人3000人を対象に昨年11月に実施、1727人(57.6%)から回答を得た。98年から2年ごとに行っており、今回は5回目。
臓器移植に対する本人の意思を聞くと、「提供したい」と答えた人は41.6%で、前回調査(04年)より6.2ポイント増え、初めて4割を超えた。逆に「提供したくない」とした人は27.5%(前回比5.3ポイント減)だった。
臓器移植法に基づく脳死判定には本人の意思を表示した書面が必要とされるが、意思表示カードやシールなどを持っている人は7.9%で前回より2.6ポイント減少。持っていない理由としては「入手方法がわからなかった」が26.5%(前回比11.5ポイント増)で最も多かった。
15歳に達しない子どもからは臓器提供ができないことについては「できるようにすべきだ」と回答した人が前回より7.3ポイント増え68%に上った。
はしか死亡、全世界で6割減 WHOなど99年〜05年 |
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途上国では幼児の大きな死亡原因の一つになっているはしかについて、世界保健機関(WHO)などは19日、集団予防接種などの集中的な取り組みで99年から05年までの間にはしかによる死亡を6割減らすことに成功した、と発表した。
WHOによると、世界のはしかによる死者数は99年の約87万人から05年は約35万人(ともに推計値)にまで減った。9割が5歳未満の子ども。アフリカ地域で死者を75%減らすことができたのが大きく影響したという。
はしかは効果的な予防方法が確立されているにもかかわらず、アフリカを中心に多くの子どもの命を奪ってきた。WHO、米疾病対策センター(CDC)、国連児童基金(UNICEF)などは01年に「はしかイニシアチブ」を開始。途上国政府や先進国の援助機関と連携し、乳児健診時のワクチン接種の徹底や集団接種キャンペーンを展開してきた。これまでに3億6000万人の子どもが予防接種を受けた。
同イニシアチブは10年までに、はしかによる死亡を00年水準より9割減らすという目標を定めている。WHOのマーガレット・チャン事務局長は「目標を上回るペースで死者を減らせている。保健衛生の歴史的な勝利だ」と自信を見せる。ただ、目標達成には国際社会の継続的な支援が必要だ。
ワクチン接種、医師らを優先 新型インフル対策で指針案 |
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鳥インフルエンザからの変異が懸念される新型インフルエンザに備え、厚生労働省の専門家会議は19日、人から人への感染が発生、大流行に至る過程(フェーズ4〜6)を想定した対策のガイドライン原案を示した。ワクチンの優先接種の対象として、医療従事者のほか電気、ガス、水道、警察などの7職種を提示。具体的な対象者の範囲や人数には踏み込まなかった。発生後72時間以内に交通制限や臨時休校などの「地域封じ込め」を行うことも検討するが、厚労省は「実施は困難」とみている。
厚労省は専門家会議で原案を議論したのち国民の意見を聞き、今年度中に正式なガイドラインをまとめる考えだ。
厚労省によると、新型インフルエンザが大流行した場合、国内では4人に1人が感染し、1300万〜2500万人が医療機関を受診。死者は17万〜64万人に上ると推計されている。ガイドラインは、政府が05年11月にまとめた行動計画について実務的な対応を示すもの。人から人への感染がない段階(フェーズ3まで)のガイドラインは、すでに策定されている。
新型インフルエンザのウイルス株から製造し、有効性が高いとされる「パンデミック(大流行)ワクチン」は、完成までに1年以上かかる。それまでの対策として、国内のワクチンメーカー4社が、東南アジアで流行している鳥インフルエンザのウイルス株から「プレパンデミックワクチン」を製造中。2月までに1000万人分を作る。
ガイドライン原案では、国外で人から人への感染が確認された段階でこのワクチン接種を始める。医師や看護師、保健所職員などの医療従事者に加え、社会生活に最低限必要な「社会機能維持者」に優先的に接種する。職種は「電気・ガス・水道・食料供給・通信・交通・警察等」とだけ記載。今後より具体的に対象範囲を決める。
パンデミックワクチンは、医療従事者と社会機能維持者に続き、優先的に接種するグループを▽呼吸器疾患などの医学的ハイリスク者▽成人▽小児▽高齢者に分類。例えば、成人に重症者が多く、死者を最小限にすることを重視した場合、優先順位を(1)医学的ハイリスク者(2)成人(3)小児(4)高齢者とした。高齢者に重症者が多い場合や「国の将来を守ることを重視」という観点からの順位も示し、さらに検討する。
医療体制では、都道府県が病院内の敷地や公共施設に「発熱外来」を設置する。ベッドが満床になるなど医療機関での対応が難しくなった段階で軽症者と重症者を見極め、重症者は公共施設などに収容、軽症者は自宅で静養してもらう。
感染拡大を防ぐ初期対応では、感染者の家族や接触者に抗ウイルス薬「タミフル」を予防投与する。
京大病院、心臓手術を差し止め 院長「安全策確立まで」 |
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京都大医学部付属病院が、昨年末から心臓血管外科の新規手術を差し止めていたことがわかった。同病院では昨年3月に脳死肺移植を受けた患者が手術中の酸素不足から同10月に脳障害で死亡。手術を主導した呼吸器外科は肺移植を自粛しているが、内山卓病院長が、手術にかかわった心臓血管外科に対しても安全策が確立するまで心臓・血管の手術全般の自粛を指示した。
同病院によると昨年12月26日、内山病院長が心臓血管外科の米田正始教授に対し、「肺移植の手術失敗についての調査から、心臓外科の体制自体に問題がある」として新たな手術の自粛を口頭で指示した。心臓外科の過去の手術についても検討が必要で「安全性が確認できるまでの手術自粛」を伝えたという。
脳死肺移植を受けた患者は、手術中、心臓血管外科もかかわった人工心肺を使った血液循環の失敗から血液中の酸素が不足。血圧低下も重なり、意識を回復しないまま死亡した。
19日に会見した同病院の一山智副病院長は「肺移植以降、立て直しのために何が問題か検討してきた。その結果、最も改善すべき点が多いのが心臓血管外科との結論になった。他科や看護師らとのコミュニケーションについて改善を求めた」と話した。
病気腎、移植後に高たんぱく尿 万波医師手術の3患者 |
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宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)による病気腎移植問題で、尿から高たんぱくが出る「ネフローゼ症候群」の患者から摘出した腎臓を移植された6人のうち、3人から手術後に高たんぱく尿が出ていたことがわかった。いずれも万波医師が以前勤めていた市立宇和島病院で行われた移植で、調査した同病院の専門委員会は、移植患者がネフローゼ症候群になった可能性があるとみている。
専門委は18日開いた初会合で、患者のカルテやエックス線写真などを調べ、当時の手術スタッフらから聞き取り調査した。その結果、ネフローゼ症候群の症状とされる高たんぱく尿が3人から確認され、長いケースで術後約1カ月間、症状が続いていた。その後の経過についても調べる。
万波医師は、朝日新聞の取材に「ネフローゼ症候群になる可能性は十分説明した。3人とも社会生活が送れている」と話した。
体外受精児、65人に1人 一般女性の正解11% |
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不妊体験者らでつくるNPO法人「Fine」(東京都)が、体験者と一般の女性に行った意識調査で、不妊治療の実態や、生まれる子の65人に1人が体外受精という現状に、一般の理解があまり進んでいないことが浮かび上がった。調査結果は20日のNPO法人「日本不妊予防協会」の設立総会で報告される。
調査は昨年10月、インターネット上で実施。同法人の会員を中心とした不妊体験女性と一般女性のそれぞれ約100人ずつに、基本的な知識など20問を選択式で聞いた。
日本ではカップルの10組に1組が不妊治療をしているとされる。この割合を聞いた設問では、体験者は76%が正解だった。しかし、一般の正解は49%で、「20組に1組」が15%、「50組に1組」も6%あった。
また、国内で体外受精で生まれた子は、日本産科婦人科学会の03年度調査では「65人に1人」。体験者の正答率42%に対し、一般は11%と低く、「290人に1人」と最も少ない割合を選んだ人が34%、「210人に1人」も27%だった。
一般の女性には、人工授精と体外受精の違いを理解していなかったり、「20代後半」とされる女性の生殖能力の低下開始年齢を、実際より高い「30代後半」と考えていたりする人も多かった。
Fine代表の松本亜樹子さんは「不妊について体験者と一般の意識を比較する調査はこれまでなかったと思う。一般の人は不妊などについて正しい情報に接する機会が少ない。誤った知識のまま、生殖能力を過信することで『不妊予備軍』が増えたり、治療を特別視して偏見につながったりする心配もある。正しい知識の普及に努めたい」と話す。調査結果は近くホームページ(http://j-fine.jp/)にも掲載する予定。
生活不活発病、豪雪も契機 富山の調査 2割発症 |
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豪雪災害を機に、元気だった高齢者の約2割が歩けなくなるなどの「生活不活発病」になり、うち約3割が数カ月たっても回復していない――。そんな実態が、富山県南砺市で実施された厚生労働省研究班の調査で分かった。「見えない被災」といわれる生活不活発病は、新潟県中越地震(04年)の際に多発し、注目された。高齢化社会の災害被害として新たな対策が求められている。19日に名古屋市で始まる日本集団災害医学会で発表される。
生活不活発病は、災害による生活環境の変化をきっかけに、それまで自立した生活をしていた高齢者が介助を必要とする状態になることをいう。雪で外出しにくくなったり、避難所に閉じこもったりして、体を動かす機会が減ることが原因とみられる。
国立長寿医療センター研究所(愛知県大府市)の大川弥生・生活機能賦活(ふかつ)研究部長らが、05年末から06年初めにかけて豪雪災害に見舞われた南砺市で、要介護認定を受けていない65歳以上の3080人に聞き取り調査した。回答した2955人のうち、約2割にあたる568人が「病気やけがをしていないのに、大雪の前に比べて歩行が難しくなった」と答えた。うち159人は、発症から数カ月たっても以前の状態に戻っていなかった。
生活不活発病は放っておくと回復が難しい。大川部長は「自治体が災害マニュアルなどに対策を明記する必要がある」と指摘する。予防には、こまめに体を動かす▽家庭や地域で役割を持つ▽必要以上の手伝いや介助を受けない――の3点が大切という。
国内の製薬会社で売上高9位の三菱ウェルファーマと同11位の田辺製薬が今秋にも合併する方向で最終調整していることが18日、明らかになった。事業規模の拡大で、新薬の研究開発を強化し、薬価引き下げや安価な後発医薬品の追い上げに備える。両社の売上高(06年3月期連結)を合計すると4077億円で、国内6位となる。
三菱ウェル、田辺の両社は18日、「事業規模の拡大と経営基盤の強化を目的として、合併の可能性について協議・検討を進めている」との談話を出した。
東証1部上場の田辺が存続会社となり、非上場の三菱ウェルを吸収合併する形になるとみられる。三菱ウェルの持ち株会社である三菱ケミカルホールディングスが新会社に50%超出資する見通しだが、社長には田辺の葉山夏樹社長が就任する方向で調整が進んでいる。
両社とも売上高の約9割を国内市場に依存している。しかし、政府は公的医療保険制度の維持のため、薬価の引き下げや、後発医薬品の普及などを柱とする医療費の抑制に動いており、国内市場の成長は鈍化している。一方で、一つの新薬を開発するのにも数百億円単位の費用が必要で、両社は研究開発や海外展開の強化が急務となっていた。
田辺は01年秋、大正製薬との経営統合を発表したものの、2カ月半後に撤回。新たな合併相手を探していた。同じく01年秋に三菱東京製薬とウェルファイドが合併して誕生した三菱ウェルは、05年10月に持ち株会社三菱ケミカルの傘下に入り、上場廃止となった。買収に備える一方、合併を模索していた。
国内の医薬品業界では、05年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してアステラス製薬が誕生したほか、三共と第一製薬が同年9月に統合し、第一三共になった。また、同年10月には大日本製薬と住友製薬が合併するなど再編が相次いでいる。
スペイン風邪」免疫異常で重症化 人工ウイルスで実験 |
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世界で大流行した「スペイン風邪」と呼ばれるインフルエンザのウイルスが、ウイルスに対抗する免疫機能の異常を引き起こす強い病原性によってサルを死なせてしまうことを、河岡義裕・東京大医科学研究所教授を中心とする日米カナダの研究グループが実験で示した。18日付の英科学誌ネイチャーで発表する。
1918年から数年間猛威をふるったスペイン風邪は、全世界で4000万人の死者を出したとも言われている。その後、残されていた当時の標本などからウイルスの遺伝子配列がわかり、同じウイルスを人工的に作り出せるようになった。グループは、人工ウイルスを生物学的にヒトに近いカニクイザルに感染させ、症状を調べた。
ヒトやサルはウイルスに感染すると、その活動を阻止しようとする免疫機能が体内で働く。ウイルスの増殖を阻止するため、インターフェロンというたんぱく質を分泌することなどが知られる。
ところが、この人工ウイルスに感染させたサルの場合、インターフェロンの分泌が抑えられるなどの異常が現れた。その結果、体内でウイルスが増え続けて肺炎や肺水腫を起こし、死に至ることがわかった。インフルエンザウイルスが、マウスなどに重い症状を起こすことは実験で確かめられていたが、サルの仲間で重症化の仕組みが確認できたのは初めてだ。
現在、アジアを中心に問題となっている鳥インフルエンザウイルスがヒトに重い症状を起こすのも、同様の仕組みで説明できる可能性がある。河岡教授は「さらに研究を進めることで、鳥インフルエンザや新型インフルエンザの治療に役立てたい」と話している。
新型インフルエンザ、入院先策定は10県のみ 本社調査 |
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世界的に警戒されている「新型インフルエンザ」対策で、大流行時に入院患者を受け入れる病院リストを作っているのは10県にとどまっていることが、朝日新聞の都道府県調査で分かった。政府の行動計画は、現段階で病院リストの策定を都道府県に求めている。大流行時の医療従事者の確保策などを考えている自治体もまだ一部で、取り組みにも差がある。一方、政府には検疫強化や入国制限などを求める声が圧倒的に多く、国による「封じ込め」への期待の高さがうかがえる。
政府は、対策の骨格となる行動計画を05年11月に、都道府県も06年1月までに策定した。その後1年たち、実施主体となる都道府県の具体策づくりがどれだけ進んだか、大流行時の対応を中心に昨年12月から今月15日までアンケートした。
政府の行動計画は、大流行時に国内で1日当たり最大10万1000人の入院患者が出ると想定。各都道府県が人口比に応じて受け入れ態勢を整えるよう求めている。だが、病院リストを策定していると答えたのは茨城、静岡、奈良、福岡など10県。それらの県も、患者への風評を心配する医療機関の要望で、リストは公表していない。
大流行時は通常の医療機関だけでは対応できず、臨時の外来窓口などを設けることも想定される。その場合の医師や看護師などの確保策を「決めている」と答えたのは群馬、静岡、岡山、高知など12県。ただ、確保策の具体的な内容は「すべての医療機関で対応」「在宅医が対応」というところもあった。
一方で、「決めていない」と答えた自治体の中にも、中学校の学区や公民館などの単位ごとに「発熱外来」を設ける準備を進めている東京都や広島県のような自治体がある。
医療従事者や、警察、消防、行政関係者などの「社会機能維持者」が業務に従事できない可能性も考慮して計画を策定しているのは、18都府県だった。
一方、具体的な対策をつくるうえでの障害(複数回答)では、「政府の財政支援が明確でない」(22道府県)、「政府の行動計画で都道府県、市区町村の役割分担が明確でない」(21府県)という回答が多かった。政府に求める施策(自由回答)では、海外から感染者が入るのを防ぐ「検疫強化」(21都府県)や「入国制限」(16県)に回答が集中した。
調査結果について、厚生労働省の滝本浩司・感染症情報管理室長は「大流行の発生時にパニックにならないよう、自治体は地元医師会や病院と協議するなど独自に対策作りを進めてほしい。国も詳細なガイドラインを作成中で、それを示して都道府県の取り組みを促したい」と話している。
診療報酬上乗せ、病院限定 看護師争奪を沈静化へ |
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全国の病院間で激化している看護師の争奪競争を沈静化するため、厚生労働省は17日、原因となった看護師の配置が手厚い病院への診療報酬の上乗せ基準を見直す方針を固めた。具体的には、上乗せを認める病院を、救急時の医療や手術の前後など、看護の必要度の高い治療を行う施設に限定する。上乗せ基準は、医療の質の向上などを目的に06年4月の診療報酬改定で導入したばかりだが、次回08年の改定で変更される見通しだ。
この日の中央社会保険医療協議会(中医協)で診療報酬の上乗せ基準見直しを厚労相に「建議」することを決定。これを受け厚労省も見直しに着手することにした。中医協が建議するのは95年11月以来12年ぶり。
06年4月の診療報酬改定では、看護職員1人が受け持つ入院患者数で決まる入院基本料を変更。従来の患者15人、13人、10人の区分に加え「7人」を新設し、手厚く看護師を配置した病院は割り増しの報酬を得られるようになった。急性期患者へのケアを手厚くし、入院日数を短縮する狙いだったが、手厚い看護が必要な入院患者の少ない医療機関も含め、全国で収入増を目指して看護師を増員する動きが活発化した。
看護師は待遇がいい都市部の大病院に集中する傾向がある。このため、地方の中小病院などでは本来必要な看護師数を確保できなくなり、地域格差が広がる可能性も指摘されている。
この日の中医協では、一部の病院が看護の必要性よりも経営上の理由から看護師の数を増やそうとしていることが競争の激化を招いているとの認識で一致。看護の必要度が高い施設に限って上乗せを認めるよう求めることにした。基準変更には事前の実態調査などが必要なため07年度中の改定は不可能で、08年4月の実施を目指す。
65歳女性が手術後に死亡、業務上過失致死の疑いで捜査 |
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東京都渋谷区千駄ケ谷の「東京勤労者医療会・代々木病院」(松永伸一院長)で、15日に胆のう摘出の腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた町田市の無職女性(65)が手術後に容体が急変し、翌日死亡していたことが17日わかった。病院側の届けを受けた警視庁は業務上過失致死の疑いで調べている。
同病院や原宿署によると、副院長の男性医師(44)が15日午後2時10分ごろから腹腔鏡手術をした。過って総胆管を切断したことなどから、開腹手術に切り替え、午後5時50分ごろに終了した。だが、手術後に出血が増え容体が悪化したため、医師は16日午前1時半から再手術をしたが、約3時間後に死亡した。
17日に会見した松永院長らは「出血は手術にともなうものだった」とし、再手術についても早い対応が必要だったとミスを認めた。
医療費過払い通知漏れは1万件、総額1億円 社保庁調査 |
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社会保険庁が医療費を払い過ぎた患者に対する通知を怠っていた問題で、同庁は17日、03年度からの3年間で計9914件の通知漏れがあったと発表した。山口、佐賀を除く45都道府県の社会保険事務局で見つかり、総額は少なくとも1億円にのぼる。同庁は漏れていた患者に対し、18日から順次、おわびと過払い通知を本人が勤める会社に送付。患者は、医療機関に通知を持参し医療費の返還を請求することができる。
通知漏れがあったのは、社保庁が運営し中小企業の従業員が加入する政府管掌保険(1916万人)と船員保険(6万人)。外部から指摘を受け昨年から調べていた。通知漏れ件数が最も多かったのは、通知した事実がないのに本庁に「通知した」と虚偽報告していた神奈川で1541件。ほかに虚偽報告していたのは愛知(750件)、埼玉(749件)、鳥取(151件)、山形(115件)の各県。通知漏れ自体は法令違反に当たらないが、同庁は虚偽報告をしていたことを重く見て、この5県の関係職員を近く処分する方針。
また多くの社保事務局では、過払いを通知する対象者を、患者の自己負担が一定額を超えた場合に超過分が返還される高額療養費・医療費制度の利用者に限定していた。厚生労働省は、過払い分が1カ月で1万円を超えた患者に通知するように指導しており、この基準で改めて調べたところ、大阪(1128件)、北海道(757件)、東京(692件)などでも通知漏れが見つかった。
市町村が運営する国民健康保険でも、04年度の調査で約4割の自治体が通知を実施していなかった。大企業の社員らが入る健康保険組合でも通知漏れが起きているため、厚労省は通知を徹底するように呼びかけている。
看護師不足、より深刻に 来年需要、7万人増 日医試算 |
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全国の病院間で看護師の獲得競争が激化している問題で、日本医師会は16日、全国の病院へのアンケート結果をもとに、08年4月に必要になる看護師の数は06年10月よりも約7万人多い88万1000人になるとの試算結果をまとめた。現状通り年3万人ペースで看護師が増えても、深刻な看護師不足に陥る可能性があるとしている。看護師は待遇がいい都市部の大病院に集中する傾向があるため、日医は、このままでは地域の中小病院との看護師配置の格差が深刻化しかねないと指摘している。
17日の中央社会保険医療協議会(中医協)で報告する。看護師を手厚く配置した病院に診療報酬を上乗せする昨年4月の診療報酬改定が影響し、需要が膨らんだとみられ、中医協でも改定の再見直しを求める声が高まりそうだ。
調査は3185病院を対象に実施し、全国の病院の約4分の1に当たる2091病院が回答。各病院の現在の看護師の配置と将来の増員予定を尋ね、それを元に将来必要な看護師数を試算した。
それによると、診療報酬が最も手厚くなる「入院患者7人に対して看護師1人」の基準を満たすのは、06年度は300床以上の病院の16.3%だったが、07年度には38.8%に増え、08年度は54.6%に達する。
この結果、病院で必要な看護師数は06年10月末の81万2000人から08年4月には6万9000人増の88万1000人に達する。看護師数は99〜04年は、年平均約3万人の増だが、病院勤務の看護師に限れば年間約1万人しか増えていない。この傾向をあてはめると、08年4月には現在よりも2万〜5万人程度、看護師の需給関係が悪化する計算だ。
日医は准看護師の養成増などを提案しているが、中医協内では「看護の必要度の低い病院まで看護師を集めていることが問題」として、診療報酬の上乗せは急性期医療を中心とする病院に限るべきだ、との声も強い。
骨髄移植ドナーの貧血見逃す 患者「前処置」の6日前 |
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骨髄移植推進財団は16日、1月下旬に予定していた骨髄移植の骨髄提供者(ドナー)が血液検査の基準値を満たさず、手術ができないにもかかわらず、移植準備を進めていたと発表した。手術は中止され、財団はこの患者について、待機期間が短くなる「緊急コーディネート」で対応し、3月上旬に移植できるように調整している。
財団によると、ドナーは30歳代の男性で、50歳代の白血病の患者への移植に備え、先月、医療機関で血液による貧血検査をした。男性の血液中のヘモグロビン値は100ccあたり12.9グラムで、財団が移植不適格と定める13グラム未満だった。しかし、担当医は骨髄の採取量を減らせば移植できると勘違いし、採取量の変更を財団地区事務局に連絡。財団側も見逃したという。
今月5日、医療機関が提出した採取計画書で不適格と判明。財団は、12日の再検査で確認し、採取を中止。ドナーや患者に謝罪したという。
骨髄移植の患者は、移植前に造血幹細胞を、大量の放射線照射などで完全に壊す「前処置」をしなければならない。前処置をすると、自分で血液がつくれず、移植は中止できない。今回、中止が決まったのは前処置の6日前だった。財団の伊藤雅治副理事長は「患者やご家族の方に多大な精神的負担を与え、ドナーの方にもご迷惑をおかけしたことを深くおわびします」と話した。
財団によると、緊急コーディネートの実施は今回で8例目。00年7月にも同様に貧血を見逃して移植準備が進み、判明した時には患者に一部の前処置がなされていた例があった。03年8月以降、ミスに伴う緊急コーディネートが3件あったが公表しておらず、財団で経緯を調べている。
がんによる摘出などで子宮のない女性に、別の女性の子宮を移植する手術を米ニューヨークの病院が計画していることがわかった。AP通信が16日、報じた。過去の子宮移植は、00年にサウジアラビアで試みられた1例しかないという。
AP通信などによると、腎臓などほかの臓器移植と同様に、亡くなったドナー(提供者)の子宮を、子宮のない女性に移植。出産後は、免疫抑制剤を生涯飲み続けなくてすむように、すぐ摘出する。計画しているのはニューヨーク・ダウンタウン病院のチーム。すでに同病院の倫理委員会は条件付きで計画を承認しているという。
子宮を失っても子どもを望む女性には、代理出産に替わる方法となりうる。ただ、関係者のなかでも慎重な意見があり、外部の専門家も「さらに研究が必要。今が最善の時とは言えない」と懸念を示している。
東京都内のぜんそく患者らが国と都、自動車メーカー7社などに損害賠償などを求めた東京大気汚染公害訴訟で、都は独自にまとめた医療費助成制度の実現に向け、週内にもすべての自動車メーカーと直接交渉する方針を固めた。トヨタ自動車などメーカー側は協議に応じる意向を東京高裁に伝えている。都は直接交渉で負担割合など条件面での合意づくりを急ぎ、消極的な国にも協議への参加を促す考えで、和解に向けて大きく動き出したことになる。
都によると、トヨタや、協議に最も消極的だった日産自動車も含めたメーカー7社はいずれも協議に応じる考えを同高裁に伝えたという。同高裁は都に、メーカーと直接交渉するよう要請しており、都は週内にもすべてのメーカーと交渉する方針で調整を急いでいる。交渉方法が、各社個別か、全社一斉かは決まっていない。また、高裁での和解交渉の中では、メーカー側に一時金を求めることも話し合われている。
都が同高裁に示した新たな助成制度案は、訴訟の原告に限らず、都内に住むすべてのぜんそく患者が対象。費用は国と都が3分の1ずつ、首都高速道路公団(現・首都高速道路)とメーカーが6分の1ずつ負担する仕組み。
環境省の田村義雄事務次官は15日の記者会見で「(制度に参加しないという)国としての考えは従来通り」と述べ、大気汚染とぜんそくの因果関係が証明されていないとして、国として協議に応じる考えがないことを改めて強調した。
この訴訟の一審判決は、国と都に賠償を命じたが、メーカーの責任は認めなかった。このため、都は「責任がないとされたメーカーと協議を進めることで、国が協議に応じざるを得ない環境づくりを急ぎたい」としている。
ノロウイルス、流行のピーク越す 国立感染症研究所 |
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今冬のノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の流行が全国的にピークを越えたことが15日、国立感染症研究所のまとめでわかった。全国約3000の小児科医療機関の定点調査で、1施設あたりの患者数が、昨年9月以降、初めて減少した。
感染研感染症情報センターによると、12月18日からの1週間で1施設あたりの感染性胃腸炎の患者数は16.4人となり、前週の22.8人から3割減った。西日本では収まりつつあるが、東日本では流行が続いている地域があるという。
今冬の流行では、1施設あたり患者数が11月下旬から4週連続で過去最多を更新。81年の調査開始以来、最大規模の流行だった。
同センターの安井良則主任研究官は「今冬の流行の峠は越えたと考えられる。ただ、小さな流行は3月ごろまで続くので引き続き注意してほしい」と話している。
アルツハイマー病に関与の遺伝子を特定 千葉大など |
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65歳以上で発症するタイプのアルツハイマー病に関係する遺伝子の一つをカナダ・トロント大、イタリア・トリノ大、千葉大などの国際研究チームが特定し、14日付米医学誌ネイチャージェネティクス電子版に発表した。この遺伝子の型によって、発症しやすさに差があるという。治療法の開発などにつながると期待される。
アルツハイマー病患者の脳には「ベータアミロイド」というたんぱく質が蓄積することが知られており、チームはSORL1と呼ばれる遺伝子が正常に働くと、このたんぱくの蓄積を抑えることを実験で確認した。
さらに欧米に住む人を中心とする約6000人から集めたDNAサンプルを調べたところ、SORL1に個人差(型)がある場所があり、アルツハイマー病のかかりやすさに統計的に意味のある差があることがわかった。チームは、ほかの遺伝子6個についても調べたが、関連はみられなかった。
65歳以上で発症するアルツハイマー病は日本人にも多い。関連する遺伝子は93年に報告されたアポリポたんぱくEと呼ばれる遺伝子が有名だ。
HIV感染者、東南アジアに160万人 ベトナムで増 |
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移植のため、死後に腎臓を提供した人が、昨年110人となった。95年の日本臓器移植ネットワーク設立以降、100人を超えたのは初めてで、過去最多となった。移植コーディネーターや医師らの地道な活動に加え、「臓器提供は、権利の一つ」という新しい考えから、家族への説明の場で、患者本人の意思をくみ取ろうとする取り組みが浸透しつつある。臓器売買事件や病気腎移植の発覚で、不透明な印象を持たれがちな腎臓移植だが、理解は徐々に広まっているようだ。
●説明で権利・意思尊重
昨年の腎臓提供者110人のうち、8人が臓器移植法に基づく脳死からの提供、残りは心停止後だった。計197人に移植された。愛媛県宇和島市の病院で明らかになった臓器売買事件や病気腎移植が報じられた10月以降も29人いる。約1万2千人の腎移植希望者に比べると、ほんの一部だが、ネットワークが95年に希望者登録を始めてから、脳死、心停止後の移植とも最も多かった。
福岡県の提供者は、愛知県の11人に次ぎ、全国で2番目に多い9人。
秋、脳卒中で脳死状態になった女性患者が県内の病院に運ばれた。回復の見込みがなくなり、医師が「手を尽くしましたが治療できることはなくなりました。ただ、臓器提供という選択肢は残っています」と話した。家族は、移植コーディネーターからの詳しい説明を望んだ。
間もなく、コーディネーターの岩田誠司さんが病院に到着。病室とは別の静かな部屋で、家族と向き合った。女性は臓器提供意思表示カードを持っておらず、脳死での移植はできない。岩田さんが「カードがない場合でも心停止後に腎臓と眼球、膵臓(すいぞう)の提供ができます」と説明すると、腎臓提供を申し出たという。
岩田さんは「どのような思いだったのでしょうか」と、家族に尋ねた。「昨夜、(臓器売買事件の)ニュースをみて移植の話をしたばかりでした。本人が機会があれば、協力したいと言っていました」という答えが返ってきた。
患者の家族に、移植の話をどう切り出せばいいのか。福岡県は一昨年、パンフレットをつくった。県内の主な救急病院や脳神経外科の医師や看護師に、家族へ渡してもらうように頼んでいる。岩田さんは「パンフレットを地方自治体がつくってくれたことの意義が大きい。かつての『提供すれば誰かの命を救うことになる』という説明ではなく、臓器提供を権利ととらえ、患者さんの意思を尊重するためだと考えている」。
A3判のパンフレットには「患者様やご家族の意思、権利を守るため、移植医療についてのお考えを確認させていただいております」とあり、家族が説明を希望すれば、コーディネーターに連絡が入る。この2年間に同県内で提供者となった16人のうち12人は、こうした情報を受けて提供を申し出た。パンフレット方式は宮崎県などでも始まっている。
●救急医の協力も好影響
実はネットワーク発足前の90年代前半まで、死後の腎臓提供者は年100人を超えていた。150人程度の提供があった時もある。当時、各地の移植医が地元の救急病院と連絡を取り合って地域ごとのネットワークをつくり、提供があると、移植医の患者に回すという暗黙のルールがあった。
その一方で、95年に臓器移植法成立を前提として、日本腎臓移植ネットワーク(現、日本臓器移植ネットワーク)ができた。公平性を保つため、全国一律の登録システムができたことで、逆に、提供者数は減り始める。
ある移植関係者は「家族の同意を取る手続きが厳密で、脳死の診断にも慎重さが求められるようになり、提供者が出にくくなった。救急医の協力を得るのが難しくなり、移植医も提供者を探そうとする動機がなくなった」と話す。宇和島徳洲会病院の万波誠医師が独自のネットワークをつくり、病気腎などの生体移植を行っていた背景に、こうした提供者数減少があったとの指摘もある。
救急医療の現場で、臓器移植の情報提供に悩む医師は少なくない。
「救急という役割と相反する移植を結びつけたくない」
「悲しむ家族に追い打ちをかけるようなことはしたくない」
だが、移植に救急医の協力は欠かせず、理解も深まりつつある。
昨年6人の提供者があった北海道。04年以降、道の提供者20人のうち13人にかかわっている救急医がいる。
札幌市立札幌病院救命救急センターの鹿野恒医師は、04年から臨床的に脳死と診断され医学的に移植可能な患者の家族には必ず臓器提供の説明をしている。「救急医は残された家族の気持ちや今後何を望むかをくみ取る必要がある。臓器提供の希望があっても申し出ることができない家族もいる」と話している。
脳死と診断された後、「長くて1カ月、通常1〜2週間で亡くなります。皆さんとこれからの終末期医療を考えましょう」。患者の意思や意思表示カードを持っているかを確認していない場合、「臓器を提供することもでき、移植コーディネーターの説明を聞くことができる」と加える。決して言わないのは「臓器が不足している」などの移植の現状だ。
鹿野さんは札幌医大病院に勤務していた時を含め13人の家族に同意してもらった。うち11人は説明がきっかけで申し出たケースという。
提供者が100人を超えたことに、日本臓器移植ネットワークの菊地耕三理事は「提供病院への情報提供や社会への普及啓発といった効果がようやく表れてきた」と話している
HIV感染者、東南アジアに160万人 ベトナムで増加 |
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国連合同エイズ計画(UNAID)は13日、ASEAN首脳会議で、東南アジアのエイズについて報告した。ASEANはアジアの中でもHIV感染率が高く、感染者数は約160万人。
報告によると、ベトナムで感染者が急増しており、05年で約26万人。00年の約2倍で、毎年4万人が新たに感染しているという。違法薬物の注射針の使い回しや売買春による感染が多い。
58万人の感染者がいるタイでは増加は抑えられているというが、最近の感染者の3分の1が主に配偶者から感染した既婚女性。これまで感染のリスクが小さいと考えられていたグループだ。22歳以下の若年層の感染率が上がっている。
36万人の感染が推定されるミャンマーの状況も懸念される。大人の感染率が1.3%で域内全体(0.5%)を上回る。15歳から24歳の若者の感染率は2.2%と高い。
医療現場の人手不足を解消するためにつくられた、医師や看護師の「人材バンク」が各地で苦戦している。職場を離れた後、再就職を希望する医師や看護師に、条件が合う病院などを紹介する機関。大阪の医師バンクは再就職の実績が年間ゼロの時もあり、看護職員では就業率2割と低迷している。今月下旬には、医師不足対策の切り札として女性専用の医師バンクが立ち上がる。眠っている女性の力を掘り起こす作戦は、成功するのか。
「医師バンク」は90年代以降、日本医師会が各都道府県の医師会などに開設を呼びかけてきたが、多くの医師会が「予算と人手のなさ」を理由に二の足を踏んでいる。05年の調査では、開設されたのは宮城や岡山など19どまり。
その19の医師バンクの04年度の実績も、求人は632人あったのに、登録者は145人だけ。再就職できたのは68人と半分以下で、女性は2割しかいなかった。大阪のバンクは、ここ3年間0〜3人しか雇用に結びついていない。
バンク側は「登録するのは高齢や体調不良の医師が多い」などと説明している。
日本医師会の今村聡・常任理事は「医師バンクには、登録者の伸び悩みや周知徹底の難しさなど課題は多い。医師確保策としては十分に機能していない」と打ち明ける。
看護師や助産師などのバンクは、いっそう深刻だ。資格を持ちながら職場を離れている「潜在看護職員」は全国に推定55万人。日本看護協会の看護職員バンクには昨年度約8万人が登録したが、就業率は20%だった。
協会は昨年10月、登録者を増やすため、復職時期や労働条件の意識調査を行ったが、実際に発掘できた人材は約2000人にとどまり、目標の3万人を大幅に下回った。
看護職員は医師と違って国などへの登録義務がないため、現場を離れた人を把握するのが難しい面もある。
再就職には、ブランクそのものが大きな障害となるとの指摘は多い。医療現場には日々、最新の知識や技術が導入され、仕事から離れた期間が長いほど腕や感覚が鈍り、医療機関側も採用をためらってしまうからだ。
しかし、医師不足は深刻。政府は昨年10月、産科医など医師不足対策として「女性医師バンク」の創設を目玉に掲げた。厚生労働省は今年度と新年度で2億1600万円を予算計上。東京と福岡の医師会に事務局を置き、1月下旬から登録を受け付ける。
しかし、女性医師の再教育機関を設立した東京女子医大の川上順子教授は「復帰した医師は、技術や知識もさることながら、現場のスピードに慣れるのに苦労する。人材バンクは、再教育の場を整えないと絵に描いた餅になる」と話している。
〈キーワード:女性医師〉 厚生労働省によると、医師国家試験の合格者に女性が占める割合は増加傾向で、05年は33.7%。04年調査では、医師全体の16.5%が女性で、小児科は31.2%、産婦人科は21.7%と割合が高い。一方、医療現場は長時間労働や当直、深夜の呼び出しが多く、女性医師は出産や育児と両立ができず、働き盛りで一線を退く例が少なくないといわれる。
岡山刑務所でノロウイルス集団感染 入所者ら205人 |
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岡山市の岡山刑務所(約1050人収容)で昨年末以降、入所者195人と職員10人が、ノロウイルスが原因とみられる下痢、吐き気などの症状を訴え、現在も2人が治療を受けていることがわかった。いずれも症状は軽いという。
同刑務所によると、昨年12月12日から年明けにかけて、20〜80代の男性入所者らが相次いで下痢などの症状を訴えた。検便の結果、入所者のうち計19人からノロウイルスが検出された。
同刑務所では発症後、岡山市保健所の指導を受け、施設内のドアノブや食卓、トイレの消毒を実施。発症した入所者を隔離し、衣類なども消毒したという。
感染経路は不明だが、山崎昌二総務部長は「入所者の食事を出す前に毎回、検食している職員は発症していない。人を介しての感染ではないか」と話している。
赤痢菌が人体に感染するとき、腸の細胞をだますたんぱく質を作り出して侵入していることがわかった。笹川千尋・東京大医科学研究所教授らのグループが英科学誌ネイチャー・セル・バイオロジー電子版に論文を発表した。新しい治療薬やワクチンの開発につながる成果という。
一般に細胞は「RhoG」と呼ばれるたんぱく質を利用して、外部の菌や物質を取り込む働きを持つ。しかし、腸の表面にある細胞ではこの働きが抑えられ、大腸菌などが体内に入り込むのを防いでいる。このため、赤痢菌などが、どのようにして腸から体内に入るのかは、これまでよくわかっていなかった。
笹川さんらは、赤痢菌がRhoGに性質がよく似た「IpgB1」というたんぱく質を作ることに注目。IpgB1を使って腸の細胞をだまし、自らを取り込むようにし向けていることを確かめた。
IpgB1に似た物質は、病原性大腸菌O(オー)157やサルモネラ菌などでも見つかっており、同じような働きをしていることが予想される。この働きを妨げる物質を開発すれば、新薬として幅広く使える可能性がある。
ノロウイルス、米でも猛威 老人ホームや刑務所で |
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日本と同様に米国でもノロウイルスが猛威をみせている。各地の報道によると、1月に入ってもミシガン州、ワシントン州、カリフォルニア州の老人ホームで集団感染が発生。カリフォルニア州の刑務所では受刑者約500人が集団感染し、一時新たな受刑者や訪問者、職員の立ち入りを禁止する措置をとった。
米国では昨年、カリブ海を航行する超豪華客船で相次いでノロウイルスの集団感染が起きた。Coxニュースサービスによると、37の客船で計4480人が集団感染した。ミシガン州からの報道によると、同州だけで06年に143の集団感染があり、前年の4倍以上に跳ね上がった。ミズーリ大学ではアメリカンフットボールの選手約50人が12月に集団感染したとUSAトゥデー紙は伝えている。
米疾病対策センター(CDC)は、米国で2300万人が毎年感染すると推計している。
夫と妻がともにエイズウイルス(HIV)に感染しながら、子を持ちたいと考えている2組の夫婦を対象に、東京都杉並区の荻窪病院(杉山武院長)は9日、精液からHIVを除去した上で、人工授精または体外受精を実施することを倫理委員会で認めた。夫婦とも感染者への実施は、世界でも初めてという。すでに夫の精子機能検査は終えており、患者への説明を終え次第、実施する。
主治医の花房秀次・血液科部長によると、1組は関東地方に住む30代の夫婦で、いずれも20年以上前、血液製剤により感染した。夫は増殖能力の強いウイルスが増えており、性交渉をすれば、妻はこのウイルスに重ねて感染し、免疫力が落ちる恐れがあるという。
もう1組は東海地方に住む20代の夫婦で、夫は血液製剤による感染後、HIVが薬剤耐性をもつようになった。妻は夫から感染しており、重感染を防ぐため、体外受精が必要と判断した。
花房部長らは00年、精液からHIVを除去する技術を開発。これまでに夫が感染者である55組の夫婦に人工授精や体外受精を実施し、37人の子どもが生まれ、5組が妊娠している。母子への感染例はないという。
エイズは精液や血液などを通じて感染する。今回のケースでは、妻の一人はウイルス量が微量で、胎盤などを通じて母子間で感染するのを防ぐための事前の抗ウイルス薬治療は必要ないという。もう一人はすでにこの治療を始めている。出産はいずれも帝王切開で対応する。
花房部長は「HIV患者の寿命は延びており、子どもを持つといった生活の質(QOL)の向上を求めている。HIV感染者が別のHIVに感染すると、免疫力が急激に悪化することが報告されており、より安全に妊娠・出産できる医療を提供したい」と話している。
新たな薬の承認に必要な臨床試験(治験)を促すため、厚生労働省は07年度、治験を重点的に行う中核・拠点施設を全国に40カ所設けることを決めた。公募による選定を今月中にも始める。約17億5000万円をかけ、スタッフの育成と情報の集約化で、効率的で迅速な治験ができる態勢をつくる計画。欧米で使われている薬が日本ではなかなか承認されない「ドラッグ・ラグ」を解消したり、新薬の開発を進めたりするのが狙いで、患者団体も注目している。
新薬の製造・販売や、海外の薬を国内で販売する場合、製薬会社はまず病院で治験を実施する。その後、治験で得た薬の効果や副作用のデータを示して国の審査を受け、厚労相の承認を得る必要がある。
しかし、日本では治験に対応する態勢が十分ではない医療機関が多いうえ、コストも高く、治験後の承認審査にも時間がかかっている。他国で承認された新薬が自国で承認されるまでの平均期間も、米国約500日、フランス約900日なのに対し、日本は約1400日。欧米では有効性が立証され、広く使われているにもかかわらず、日本では未承認の抗がん剤なども少なくない。患者らが個人輸入の形で高額な薬を買い求めている現状もある。
このため、がん細胞だけに作用する新しいタイプの抗がん剤など、海外で承認され、患者や関係学会の要望が強い一部については、厚労省が治験開始を製薬会社に要請するケースも出ている。
厚労省はすでに審査期間を現状の約2年から半減させようと態勢を整備している。これに加え、前段となる治験もスムーズに進める環境を整えるため、初めて医療機関を支援することにした。中核施設は10カ所で、各1億円を補助し、患者の同意などを取るコーディネーターや、データ管理をする専門職を雇う経費にあてる。情報を共有化するためのIT化も進める。拠点病院は30カ所で、補助額は1施設2500万円。
地域ごとにいくつ施設を選ぶかなどは、公募状況をみて今後詰める。どのような治験の態勢を整えるか、具体的な中身は各施設に決めてもらう。
中核・拠点病院の対象施設について、同省は「症例が多く集まり、かつ、がんや小児疾患など特定領域についての専門性や技能を持つ施設が望ましい」としている。
〈日本がん患者団体協議会の山崎文昭理事長の話〉 日本で治験が遅れているのは、治験に参加したい人はいるのに、募集しても集まらないという「ミスマッチ」と、医師が忙しすぎて、通常業務以外にデータ集計などを行えないという「人的不足」が背景にある。こうした問題点の解消につながる今回の厚労省の施策は歓迎できる。1〜2年後にどれだけ効果があったのかを評価し、効果が確認できたら、さらに重点的な病院を増やしてほしい。
ネズミの心臓の筋肉細胞(心筋細胞)をネズミの太ももで培養、厚さが従来の10倍で実物並みの約1ミリある心筋組織に育てることに、東京女子医大先端生命医科学研究所の清水達也講師と岡野光夫教授のチームが成功した。清水さんらに協力している大阪大のチームが、患者自身の筋肉で作ったシートを心臓に張って心筋再生を図る臨床研究を始めるが、清水さんらのネズミの研究は、これまで難しかった毛細血管の再生ができ、分厚くて拍動する心筋そのものを作製できたのが特徴だ。
清水さんらのチームは動物の細胞を培養液中で育て、シート状にする技術を90年代に開発、さまざまな組織の再生に取り組んできた。だが、なかなか血管が育たず、0.1ミリ以上の厚さにできなかった。
今回は、毛細血管をつくることを優先。ネズミの心筋細胞から作った1センチ角のシート(3層、厚さ0.1ミリ)を、ネズミの太ももの血管の上に乗せた。すると、1日でシートに毛細血管が入り込んだので、翌日、次のシートを重ねた。この操作を毎日繰り返し、1センチ角で毛細血管を備えた30層、厚さ1ミリの組織にすることができた。
このシートは全体が規則正しく拍動する心筋の特徴も維持されていた。細胞シートの中に血管のもとになる細胞を混ぜると、毛細血管ができやすくなることもわかった。
心臓病患者から健全な心筋細胞を採取し、厚さ1センチ、3〜5センチ角の心筋組織に育てることができれば、悪くなった心筋と置き換えるなど再生医療への応用が考えられる。
今回の技術は、肝臓や腎臓などほかの組織の再生でも使える可能性がある。今後、大型動物で実験を重ね、効果や安全性を確かめていく方針だ。
大阪大の澤芳樹教授(心臓血管・呼吸器外科)らのチームは、太ももの筋肉の細胞から作ったシートで拡張型心筋症患者の心臓を補強する計画。こちらのシートでは拍動や毛細血管の再生までは確認されていないが、澤教授は「心臓組織を体外で分厚くすることができれば、応用の道が開かれる。心臓移植の代替にも、なるかも知れない」と期待している。
老人ホームで2人死亡、ノロウイルスか 埼玉・川越 |
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埼玉県川越市下小坂の特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」(児島康夫施設長)の入所者と職員計57人が、昨年12月末から吐き気や下痢など感染性胃腸炎の症状を訴え、このうち、いずれも93歳の女性入所者2人が死亡したと、川越市保健所が8日発表した。同保健所は、症状からノロウイルスが原因とみて調べている。
同保健所によると、昨年12月26日、入所者の1人が嘔吐(おうと)し、今月8日までに入所者49人、職員8人に吐き気や下痢の症状が広がった。7日夜、翌8日早朝に相次いで2人が肺炎で死亡した。感染者は、入所者4人、職員1人を除いて回復したという。
倫理委が延命治療中止容認の結論 岐阜県立多治見病院 |
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岐阜県多治見市の県立多治見病院(舟橋啓臣院長)の倫理委員会が昨年10月、病院の終末期医療のマニュアルに沿って80代男性の延命治療中止を容認していたことが分かった。最終的に院長が認めず、男性は治療を受けながら死亡したが、延命治療中止を巡っては国や学会などに明確な指針がなく、病院の倫理委段階での容認も珍しいという。
病院によると、男性は昨年10月、食べ物をのどに詰まらせて、心肺停止の状態で救急車で運ばれた。救命救急センターの治療で心拍が再開したものの、人工呼吸器を付け、強心剤投与が続けられ、回復の見込みがないと診断された。
男性は96年7月14日付で「重病になり、将来、再起(の可能性が)ないとすれば延命処置をしないでほしい」とする文書を家族に託しており、入院2日目に家族が延命治療の中止を申し出た。
病院はマニュアルに従って、副院長を委員長とする倫理委員会(外部委員2人を含む13人で構成)を開催。この男性の治療に関係していない医師2人の「回復の見込みがない」とする診断と、文書は本人の直筆か、書いた後で意思の変化はないかなどを確認したうえで、昨年9月に作った病院の終末期医療のマニュアルに沿い、人工呼吸器を外すことなどを容認した。
しかし、倫理委の報告を受けた舟橋院長は「国などの指針が明確でなく、時期尚早」と判断。昨年3月、富山県の射水市民病院で人工呼吸器を外して問題化した例もあり、「現段階では、医師だけが責任を問われかねない」として治療中止を認めなかった。
男性は入院3日目に、人工呼吸器などの治療を受けたまま、「蘇生後心不全、蘇生後脳症」で死亡したという。
男性の治療にかかわった同病院の間渕則文・救命救急センター長は、延命治療の中止について「現場の医師は日常的に判断を迫られている。法整備やマニュアルがないと、医師1人が悪者にされた射水病院のようなことが今後起きる」と話している。
脳梗塞が起きやすい遺伝子型解明 九大などのグループ |
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脳梗塞(こうそく)が起きやすい人の体質を九州大と東大医科学研究所などのグループが、遺伝子レベルで解明した。ある遺伝子タイプを持っている人は、そうでない人より脳梗塞の発症率は2.8倍高かった。このタイプの人は生活習慣により注意するなど健康指導の目安になりそうだ。8日付の米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(電子版)に発表される。
研究グループは、清原裕・九大教授(環境医学)や久保充明・理化学研究所チームリーダーら。
酒に強い人と弱い人がいるように、人の体質の個人差は遺伝暗号のわずかな差(SNP)で決まっている。
久保さんらは、脳梗塞患者と健康な人それぞれ1126人の協力を得て、その差を調べた。その結果、「PRKCH」という遺伝子上での差がかぎだと判明した。この遺伝子の役割ははっきりわかっていないが、情報伝達などの働きがあるとみられている。
日本人に多い小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)について分析すると、あるタイプは、そうでない場合の1.66倍、危険性が高かった。さらに長年、住民の疫学調査をしている福岡県久山町にあてはめ、88年からの14年間で脳梗塞が起きた67人で調べると、このタイプの人はそうでない人より発症率が2.8倍高かった。
将来この遺伝子上の差を調べるのはさほど困難ではないという。久保さんは「このタイプを持っている人は最高血圧を130に、といったように、きめ細かな生活指導ができるように研究を重ねたい」と話す。
医師への道にも社会人コース 都が4年制大学院検討 |
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大学の医学部以外の卒業生や社会人にも医師への道を――。新たな医師養成をめざす専門職大学院「メディカルスクール」の設置に向けて、東京都が07年度にも検討を始める。研究や学問よりも診療や治療の実践に比重を置き、現行より2年短い4年で医師国家試験が受けられる「バイパス」をつくる試みだ。医師法などの改正が必要になるが、都は「質の高い医師の確保は急務。医師養成のあり方に一石を投じたい」としている。
都の構想は、弁護士や検事を養成する法科大学院(ロースクール)や、公認会計士のための会計大学院などの医療版だ。モデルは臨床中心の米国のメディカルスクール。専門家の間には「別の分野を学び、いったん社会に出てから改めて医師を志す人には高い目的意識があり、患者としっかり向き合える」と指摘する声がある。
都は07年度にも外部の専門家を交えた検討会をつくり、カリキュラムや教員の確保など具体的な内容を詰めていく。都立の首都大学東京や他の大学、病院への設置を想定し、臨床教育のために都立病院の医療現場を提供することを考えている。
その前提として、医師法の改正を国に働きかける考えだ。現行では、海外の医学校の卒業生を除き、大学の医学部で規定のカリキュラムを最短6年間学ばなければ医師国家試験が受けられない。都内で先行実施ができるよう、国に構造改革特区を申請する方法も探る。
医師数は、全国的にも都市部への集中や診療科によっての偏在が進んでいる。都内でも04年までの8年間で全体数は増えたが、小児科医と産婦人科医は8%強減った。都内の総合病院のある医師は「長時間勤務や医療訴訟などに直面し、働き盛りの病院勤務医が辞めていく」と嘆く。
医療技術が高度化する中、医療訴訟の件数はここ10年間で倍増した。医師の説明責任への患者の意識も高まっている。
メディカルスクールをめぐる議論では、文部科学相の諮問機関の中央教育審議会が大学院のあり方を検討する中で議題にあげたが、医療界の慎重論を受けて結論は出ていない。都知事本局は「都が具体的な検討に入ることで、医師養成システムを考え直す機運を高めたい。目的意識の高い医師が増えれば、特定の診療科医の減少や全国的な医師の偏在解消にもつながる」と話している。
〈メディカルスクール〉 米国やカナダなどで設置されている医学教育機関。都が参考にする米国型は、一般の大学卒業生や社会人を対象にした4年制の大学院で、診療チームのメンバーとして現場体験するなど実践を重視。教養と社会性を備えた質の高い臨床医養成をめざす。日本では05年の中央教育審議会の報告書で「中期的な課題」と位置づけられたが、慎重論が出て検討は先送りされた。
「高次脳機能障害」支援事業、拠点設置は16都道府県 |
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交通事故や脳卒中などで脳が傷つき、記憶力や注意力が低下する「高次脳機能障害」の人への国の支援事業について、全国への普及に偏りがあることが朝日新聞の調べで分かった。厚生労働省は、医療相談などをする支援拠点機関を各都道府県に置く事業を昨年10月に始めたが、実際に設置されたのは、まだ16都道府県にとどまっている。
厚労省の推定では、高次脳機能障害の人は全国に約30万人いる。後遺症が正しく理解されず、リハビリや職業訓練を十分に受けられない人も少なくない。
このため厚労省は、各都道府県に対し、拠点機関を設けて(1)専門家による相談、リハビリ(2)自治体や専門家が連携する地域支援ネットワークの充実(3)自治体職員らの研修、などの支援普及事業を行うよう求めている。
朝日新聞が昨年12月、各都道府県に問い合わせたところ、すでに拠点機関を置いたのは16都道府県。このうち長野、静岡の2県は県単独事業で設置済み。未設置のうち2県は06年度中に設置予定で、12府県は、07年度設置を目指して予算要求をしている。残り17県は、08年度以降になる見通しだ。
設置が遅れる理由は、「適切に診断できる医師がどれだけいるかも、つかめていない」(栃木県)などと、専門家不在を指摘する声が多い。「施設ができても、医療機関と福祉機関をつなぐネットワークがないと機能しない」(鳥取県)との声もある。
NPO法人「日本脳外傷友の会」の東川悦子会長は「診断基準が全国の医療機関に周知されず、診断書もきちんと書いてもらえない。患者・家族会のない自治体では全くの手付かずだ。行政担当者を含めて支援普及事業を徹底してもらいたい」と話している。
【高次脳機能障害の支援拠点機関の設置状況】
■設置済み…北海道、宮城、埼玉、千葉、東京、神奈川、岐阜、愛知、三重、滋賀、大阪、岡山、広島、福岡
■設置済み(県単独事業)…長野、静岡
■設置予定(06年度内)…富山、山口
近年、統合失調症との関連がわかってきた遺伝子は、神経回路づくりを左右しているらしいことを、名古屋大の貝淵弘三教授(神経情報薬理学)や田谷真一郎助手らのグループが突き止めた。この遺伝子の働きが低下すると神経回路の形成に支障が出ていた。統合失調症の新薬開発に役立つ成果で、3日付の米国の神経科学会誌に発表した。
人口の約1%が発病するとされる統合失調症には遺伝的要因と環境要因の両方が関係している。近年、英国の患者研究などでDISC1という遺伝子との関連が有力視されるようになったが、なぜ病気に影響するのか、はっきりしなかった。
グループがネズミの神経細胞を使ってDISC1の働きを調べると、神経が伸びるのに必要なたんぱく質を「積み荷」として運ぶのに関与していることがわかった。
神経細胞から伸びた細長い神経線維の中では、必要なたんぱく質は微小管の「レール」の上を走るキネシン1という「列車」に積まれて先端まで運ばれている。この際に積み荷と列車とを結びつける物質が、DISC1遺伝子によって作られていた。
この遺伝子の働きが低下すると、必要な積み荷が神経線維の先端まで運ばれず、神経回路形成が阻害された。貝淵教授は「注目されているDISC1の機能がわかったことで、今までと違う効き方の新薬開発につながる」と言っている。
医薬品会社の日本イーライリリー(神戸市)は4日、アスベスト(石綿)が原因で引き起こされるがんの一種、悪性胸膜中皮腫向けの薬「ペメトレキセド(商品名アリムタ)」の製造販売が、同日付で厚生労働省から承認されたと発表した。
悪性胸膜中皮腫は進行が進んでから診断されるために治療が難しく、有効な治療法がなかった。同社によると、治験では、アリムタと抗がん剤のシスプラチンを併用すると、シスプラチンの単独療法に比べ生存期間が約3カ月延びた。薬価基準が決まり次第、発売するという。
「良薬口に甘し」 秋田の料理人、子ども向けにシロップ |
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秋田市の料理人が作った黒蜜シロップが、薬を拒む白血病などの子どもたちを救っている。「薬の苦みが甘みの中に溶けて飲みやすい」と評判を呼び、昨年秋から大手医薬品卸会社も販売を始めた。
料理人は、日本料理店「たかむら」店主の高村宏樹さん(35)。3年前に常連客と交わした会話がシロップ作りのきっかけだ。
「苦い薬を飲んでもらうにはどうしたらいいだろう」。子どもに風邪薬を飲ませる母親の苦労話をしていた薬剤師の小松田瑞穂さん(41)が言った。総合病院小児科診療部長の渡辺新さん(52)からは、抗がん剤など苦いとされる薬を拒んで病状が悪化する白血病の子どもがいる、と聞いた。
高村さんは22歳の時、臓器に肉芽腫ができる難病「サルコイドーシス」と診断された。複数の薬を飲み続けた経験から、その苦痛が理解できた。
試行錯誤が始まった。自家製の黒蜜を薬に添えるシロップとして使えないか。原料は水とショ糖だけだから、薬効が失われることはない。ほどよい甘みを残しながら、薬の苦みを消すには。
営業後の深夜、材料の配分や煮詰める時間などを変え、抗炎症剤や抗感染症薬などの薬と一緒に試飲。3カ月後、ようやく試作品が完成した。
04年春、渡辺さんは担当する急性白血病の2歳の女児に与えた。これまでは食べたものと一緒に薬を吐き出していた。シロップに薬を溶かしパンに塗ると、女児は「おいしい」と笑顔を見せた。退院した女児の母親から受け取った手紙には「おかげで薬が飲めるようになり、病気を克服できました」とあった。
渡辺さんは、学会や白血病児を持つ親の会などでシロップを紹介。全国の病院や薬局から問い合わせが相次ぐ。
高村さんは「料理人としてのこだわりで子どもたちを救うことに貢献できてうれしい」と話す。
問い合わせは販売元の「トゥー・ワン・コア」(018・866・0887)へ。
てんかん薬、パーキンソン病にも効果 日本人医師ら研究 |
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てんかんの治療薬「ゾニサミド」が、運動機能が低下する難病・パーキンソン病にも効果があることが、村田美穂・国立精神・神経センター武蔵病院神経内科長らの研究でわかった。これまでのパーキンソン病の治療薬とは異なった効き方をすることから、新しい治療法につながる可能性があるという。2日付の米神経学会誌で発表した。
パーキンソン病は、手が震えたり、体が硬くなって歩けなくなったりする難病。国内で約14万人の患者がいるとされる。はっきりした原因は不明だが、脳内の神経細胞が死んでしまうため、運動や記憶に関連するドーパミンという脳内物質の分泌量が減り、運動機能の低下につながるらしい。
村田さんたちは、てんかん発作を起こすパーキンソン病患者がゾニサミドを飲むと、てんかんだけでなくパーキンソン病の症状も改善することを発見。347人のパーキンソン病患者に、てんかんの治療で使う量よりも少ない量のゾニサミドを12週間飲み続けてもらった。その結果、パーキンソン病の診断基準で運動機能が30%以上改善した人が3〜4割に上った。
パーキンソン病の治療は現在、ドーパミンのもとになる物質を脳内に直接投与する方法が中心。ゾニサミドを使うと、ドーパミンの産生を促すとみられる。村田さんは「これまで、あまり効果がなかった人にも、効果的な治療法につながる可能性がある」としている。
心臓病治療に「心筋シート」 阪大などが臨床研究へ |
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重い心臓病の治療で、患者自身の筋肉の細胞から「心筋シート」を作り心臓に張って心筋再生を図るという、世界でも例のない臨床研究を、大阪大や東京女子医大のグループが実施する。対象には、補助人工心臓を着けて心臓移植を待っている患者6人を予定。重い副作用がなく人工心臓を外せるようになるなど安全性と効果が確認できれば、より多くの患者に広げるという。
大阪大病院未来医療センター長の澤芳樹教授(心臓血管・呼吸器外科学)らが計画。医学部の倫理委員会と、同センターの審査評価委員会の承認をすでに得ている。
対象は、拡張型心筋症の70歳以下の患者。同症は心筋が弱って薄く伸び、心臓内の空間が広がって血液がうまく送り出せなくなる。重症になると心臓移植しか治療法はなく、患者は補助人工心臓を着けながらドナーからの提供を待つ。
具体的には、まず患者の太ももから5〜10グラムの筋肉を摘出。筋芽細胞という、筋肉が損傷を受けた時に分裂、分化して損傷を補う細胞を探し出す。その細胞を特殊な培養液で24時間培養して増やし、直径3〜4センチ、厚さ50マイクロメートルのシートを10枚ほど作る。これを3枚重ねにして、左心室の表面に張る。
イヌなどの動物を使った実験では、心筋が再生され、心臓のポンプ機能が回復することが確認されている。
筋芽細胞を培養し、そのまま心筋内に注入する臨床研究は、欧米ですでに実施され、大阪大も取り組んでいる。一定の効果も報告されているが、欧米では注入した細胞の一部しか機能しないうえ、重い不整脈などの副作用も指摘されている。
澤教授は「シートは、弱った心臓を覆うように張れるので効果も広く期待できる。シートを作る技術も確立している。慎重に研究を進めて結果を分析し、ほかの心臓病にも広げたい」と話す。
女性の心筋梗塞、喫煙で危険性8倍 熊本大など調査 |
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日本人女性が心筋梗塞(こうそく)になる危険要因のトップは喫煙で、たばこを吸う人は吸わない人より8倍も危険性が増すことが、熊本大などの研究グループによる調査で明らかになった。男性でもたばこを吸う人の方が危険性が4倍高く、喫煙は高血圧に次ぐ要因だった。
02年に急性心筋梗塞を初めて発症した全国の患者1925人(平均67.7歳、男性1353人、女性572人)と、年齢と性別の割合を患者に合わせた健康な2279人のデータを解析。高血圧や喫煙などの危険要因が、それぞれ単独でどのくらい大きいかを調べた。
男性では、高血圧の人はそうではない人と比べて4.80倍発症し、続いて喫煙が4.00倍、糖尿病が2.90倍。女性では喫煙が8.22倍で、糖尿病が6.12倍、高血圧が5.04倍だった。
喫煙リスクが女性の方が男性より高い理由について、河野宏明・同大助教授は「はっきりしないが、体質的なものに加え、女性の方が体が小さく影響が大きいのかもしれない」という。
欧米では、喫煙と、高コレステロール血症などの脂質代謝異常が2大危険要因とされる。今回の研究では、高コレステロール血症は、日本人男性で1.52倍と他の要因に比べて低く、女性では1.10倍だが統計上の明確な差は出なかった。
河野さんは「日本では、特にお年寄りは低カロリー・低脂肪の食事をとるなど、欧米の生活様式との違いが出たのではないか。ただ、子どもを含めた若い世代は欧米化しており、今後重要な危険要因になるだろう」と指摘している。 |