タイトル
ホーム 医療情報ネットワーク レセプト審査機構・現在 レセプト審査機構 病院審査機構 高齢者ネットワーク
AND OR
ページ内検索はWinはCtrlキーとFキーを,MacはコマンドキーとFキーを同時に推す。
鳥インフルの「指定感染症」期間1年延長 厚労省 indexへ

 新型インフルエンザへの変異が懸念される鳥インフルエンザ(H5N1型)について厚生労働省は、感染症法の「指定感染症」に指定する期間を1年延長することを決めた。感染者が出れば、強制入院や就業制限などの措置をとれる。27日の専門家による審議会で了承された。
 H5N1型は昨年6月、指定感染症となった。期間は1年間で、1年間だけ延長できる。
 厚労省は、今年に入っても鳥から人への感染による死者がインドネシアなどで計14人出ている現状を踏まえ「引き続き対応が必要」と判断した。

54例目の脳死移植終了 阪大では4人に indexへ

 東京女子医大東医療センター(東京都荒川区)に入院していた40代女性が臓器移植法に基づく脳死と判定され、摘出された臓器の移植手術が27日、終了した。97年の法施行後、55例目の脳死判定で、脳死臓器移植は54例目。大阪大では心臓や肺など5臓器が4人に移植された。
 大阪大では、心臓が30代男性、肺が20代女性、膵臓(すいぞう)と片方の腎臓が40代女性、分割された肝臓が10歳未満の男児にそれぞれ移植された。もう一方の肝臓は東京大で40代男性、もう片方の腎臓は国立成育医療センター(東京都世田谷区)で10歳未満の男児に移植された。

ドクターヘリ法案、参院厚労委で可決 indexへ

 医師や看護師を乗せて救急患者を応急措置しながら運ぶ「ドクターヘリ」の全国展開をめざす特別措置法案が26日、参院厚生労働委員会で全会一致で可決された。国の補助や民間からの基金で自治体の財政負担を減らして導入をうながす内容。最新の救命機器を備えるドクターヘリは「空飛ぶ救命室」とも呼ばれ、へき地や離島の医師不足対策としても期待されている。
 法案は自民、公明両党による議員立法で、委員長が提案。参院本会議で採決後、衆院で審議し、今国会での成立をめざす。
 法案では、各都道府県の救急の拠点病院などにヘリを常駐させることを想定。都道府県ごとの医療計画に、導入時期や機体数など整備計画を盛り込むよう定める。都道府県から病院への運営費の補助は、一部を国が支出するほか、企業や団体の寄付で基金をつくって負担する。
 ドクターヘリ事業は、厚労省が01年度から補助制度を始め、現在は都道府県と折半で1病院あたり年間約1億7000万円まで補助している。しかし、搬送が増えて補助額を超えた分は自治体や医療機関の持ち出しとなるため二の足を踏む自治体も多く、千葉、静岡、岡山など10道県で計11機の導入にとどまっている。

55例目の脳死判定、東京女子医大東医療センターで indexへ

 東京女子医大東医療センター(東京都荒川区)で、入院中の40代女性が25日夜、臓器移植法に基づく脳死と判定された。26日午後から摘出が始まる予定。97年の法施行後、55例目の脳死判定で、脳死臓器移植は54例目になる。
 日本臓器移植ネットワークによると、心臓が30代男性に、両肺が10代女性に、膵臓(すいぞう)と片方の腎臓が40代女性に、分割された肝臓が10歳未満の男児にいずれも大阪大で、もう一方の肝臓が40代男性に東京大で、もう片方の腎臓が10歳未満の男児に国立成育医療センター(東京都世田谷区)でそれぞれ移植される予定。小腸は該当者がいなかった。

タミフル副作用、異常行動186人に 厚労省発表 indexへ

 厚生労働省は25日、インフルエンザ治療薬タミフルの副作用について、輸入・販売元の中外製薬(東京)からの報告が4月17日までに計1268人に上ったと発表した。このうち異常行動は186人、転落は26人だった。
 01年2月の発売開始から10代への使用が制限された今年3月20日までの副作用報告は1079人。約1カ月で189人、異常行動は58人増えた。突然死などを含む死者数は15人増え70人になったが、異常行動だけだと8人のままだった。
 3月21日以降に起きた10代の異常行動は1人。3月19日に処方されたタミフルを5日間飲み、25日に2階の窓から飛び降り、腰などの骨が折れるけがをしたという。
 報告数が1カ月間で増えたことについて同省は「タミフルへの関心が高まり、これまで報告されなかったものも掘り起こしたのではないか」とみている。

「高脂血症」あらため「脂質異常症」に 学会が新指針 indexへ

 日本動脈硬化学会は25日、心筋梗塞(こうそく)の引き金になるとされるコレステロール・中性脂肪値の異常を診断する新しい指針を公表した。総コレステロール値を診断の基準にするのはやめ、「悪玉」とされるLDLコレステロール値などで診断するのが柱。病名は「高脂血症」から「脂質異常症」に変更する。
 指針の改定は5年ぶり。従来の指針では、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪のいずれかが基準より高いか、「善玉」とされるHDLコレステロール値が基準より低い場合を総称して「高脂血症」と呼んできた。しかし、善玉コレステロール値が低い場合も「高脂血症」と呼ぶのは適当でないとして、病名を変えた。
 また、総コレステロール値は血清1デシリットルあたり220ミリグラム以上を「異常」としてきたが、これだと善玉コレステロールだけが多い人も治療対象になってしまう可能性があるため、診断基準から除いた。
 新指針では、LDLコレステロールが140ミリグラム以上、中性脂肪が150ミリグラム以上、HDLコレステロールが40ミリグラム未満の場合を「脂質異常症」と診断する。

臓器移植法改正案、今国会採決で与党合意 indexへ

 自民党の二階俊博、公明党の漆原良夫の両国会対策委員長は24日、国会内で会談し、議員提案されたままになっている2本の臓器移植法改正案について、今国会で採決することで合意した。衆院厚生労働委員会の下に、両案を集中的に審議する小委員会を設置。意見集約を図ったうえで、党議拘束を外して採決するとしている。
 ただ、隔たりが大きい両案について、与党内でも議論が尽くされたとは言えず、民主党からも突然の方針に反発が出ている。実際に採決できるかは不透明だ。
 2本の改正案は06年3月に提出されたが、実質的な審議に入れない状態が続いている。昨年12月、衆院厚生労働委員会で参考人質疑が行われたが、心臓移植を待つ患者や家族、移植医らは早期の改正を求めて要望を続けていた。こうした情勢を踏まえて、二階、漆原両氏は「人の生命にかかわる法案であり、いつまでもたなざらしにはできない」として、今国会で採決すべきだとの考えで一致した。
 現行法は臓器移植をする場合に限り、脳死を人の死と認める。臓器提供者は15歳以上とされているが、これに対する改正案は、(1)脳死を一律に人の死とし、15歳未満の臓器提供や本人の拒否がない場合の家族同意による臓器提供を認める(2)現行法の枠組みを維持し、意思表示を認める年齢を現行の15歳以上から12歳以上に引き下げる――の2案が提出されている。
 衆院厚生労働委員会はこれから社会保険庁改革関連法案の審議に入る。その先には雇用関連法案の審議も控える。このため、委員会の自民党議員からも「いくら小委員会を設けても、この日程では難しい」との声が出ているほか、民主党理事は「国論を二分する問題であり、1週間程度審議して採決するような話ではない」と反発している。

「国民病」4疾患、死亡率や治療態勢に数値目標も indexへ

 厚生労働省は、がんや脳卒中など「国民病」といわれる4疾患について、都道府県ごとに定める医療計画に、初めて死亡率や健診率など具体的な数値目標を盛り込むことを決めた。地域ごとの病気の特徴や、医療ニーズをつかみ、病状に応じて、受診すべき医療機関を明記するなど、施策に反映する狙いだ。小児救急や周産期医療など5分野についても、救急搬送に当たる人員の割合などの数値目標をあげ、病院の役割分担を明確にして連携を促す。
 厚労省は、医師確保策として、各都道府県に「地域医療対策協議会」をつくり、病院ごとの役割分担や医師を中核病院に集める「集約化・重点化」を検討するよう求めている。そのうえで、新たな医療計画についても、こうした施策と歩調を合わせることで、地域の病気の実情を反映した医療提供態勢の充実につなげたい考えだ。
 医療計画は85年の医療法改正で導入され、厚労省の指示で、それぞれの自治体が5年ごとに改定している。
 今回、初めて盛り込むのは、患者数が多く、死亡率が高い「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞(こうそく)」「糖尿病」の4疾患と、地域医療に欠かせない「救急」「災害」「へき地」「周産期」「小児救急」の5分野の治療態勢の整備など。
 例えば脳卒中の場合、厚労省によると10万人当たりの男性の死亡率では、青森(86.4人)、岩手(83.7人)、秋田(80.4人)と東北3県が上位を占める「東高西低」の傾向があり、最も低い奈良(50.4人)と30人以上の差がある。各自治体は、死亡率や基本健診の受診率などを全国平均と比べ、今後5年以内に達成すべき数値を設ける。
 また、治療態勢も「発症後、△時間以内に患者搬送できる」「施設到着後、△時間以内に専門治療を開始できる」などと具体的な数値を盛り込む予定だ。
 こうした方針を受けて、各自治体は医療関係団体や住民らの代表で、疾病ごとに「作業部会」をつくる。同時に、医療機関についても、救急患者に対応できるか、専門的なリハビリができる機器を備えているか、などの観点から評価し、病状などに応じた役割分担や連携を決める。
 医療機関の態勢をつくる際には、公的な医療機関だけでなく私立病院や開業医なども含まれるため、厚労省は、地元医師会や保健所などに調整役が期待されるとした。厚労省は6月までに医療計画を作成するための指針を、都道府県に通知。各自治体は今年度中に計画をつくり、08年度からの実施をめざす。

タミフル売上高、病院向けは半減 1〜3月の中外製薬 indexへ

 中外製薬は23日、インフルエンザ治療薬「タミフル」の1〜3月の病院向け売上高は前年同期より50億円減の49億円だったと発表した。厚生労働省は3月20日付で10代の患者の使用制限を発表したが、「タミフルを服用した患者の異常行動を取り上げた報道などを機に2月ごろから病院での処方率が下がった影響が大きい」という。
 一方、新型インフルエンザ対策として厚生労働省が購入するなど行政備蓄向けの1〜3月の売上高は54億円から189億円に急拡大。売上高全体では84億円増の238億円だった。

寄付受けた委員は不参加に 医薬品の承認審査で厚労省 indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」の輸入販売元から、厚生労働省研究班の大学教授が多額の寄付金を受け取っていた問題を受け、同省は23日、医薬品の承認審査や安全対策を審議する際、過去3年間、審議する医薬品などの製造販売業者から年500万円を超す寄付金などを受けた委員は参加できないことを当面のルールとすると決めた。受取額が年500万円以下の場合、議論に加われるが、議決には加わることができない。
 厚労省は、欧米などに設けられている指針などを参考にしたと説明。奨学寄付金や指導料、講演料などが対象になる。年内に正式ルールをまとめるという。

医療保険広告「不安あおりかねない」 厚労省が指導 indexへ

 医療保険の広告やテレビコマーシャルが消費者の不安をあおりかねないとして、厚生労働省が保険会社に対して改善指導に乗り出している。がんなどの重い病気の治療費のうち、大半は公的な健康保険でまかなえることが多いが、多額の自己負担が必要だとの誤解を与えかねないケースがあるためだ。保険会社の監督官庁でない厚労省による指導は異例のことだ。
 保険会社による保険金の不払いが多数にのぼり大きな社会問題になる中、厚労省の対応は保険会社の広告のあり方にも一石を投じそうだ。
 厚労省は2月下旬に掲載されたある外資系生命保険会社のがん保険の新聞広告について、一定額以上の医療費を支払った場合に払い戻しを受けられる「高額療養費制度」の説明が一切なかったとして経緯をただした。
 広告では、がんの平均入院日数と1日当たり診療費の一覧を載せ、医療費が合計100万円前後かかることを示唆した。その下に「実際は3割程度の自己負担になる」という注釈をつけているため、30万円ほどの負担をまかなうのに保険が必要との印象を与えていた。
 厚労省は昨年夏、健康保険の説明が足りない医療保険広告が目につくとして消費者の誤解を招くような広告をやめるよう生命保険協会と日本損害保険協会、外国損害保険協会に文書で指導。高額療養費制度について正確に説明するよう求めた。
 この制度を使えば、一般的な所得の人が、がんの手術を受けて1カ月入院をしたときの医療費が100万円かかるケースでも、入院中の食費などを除き自己負担は9万円弱ですむ。
 厚労省の指導もあり、最近の広告では、注釈などで同制度に触れる動きが広がっている。ただ、実際の自己負担額が分からないものもある。

医療版「事故調」創設へ 厚労省検討会が初会合 indexへ

 医療行為中の患者の死因などを調べる医療版「事故調査委員会」の制度創設に向け、厚生労働省の検討会(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)が20日、初会合を開いた。医療関連死の調査は現在、刑事事件や民事裁判の中で行われることがほとんどで、迅速な原因究明や再発防止のためには課題が多い。検討会は約1年かけて調査委のあり方や事故の届け出の義務化などを論議、新法の制定も視野に、早期に新制度をスタートさせたい考えだ。
 検討会のメンバーは医療団体の代表や弁護士、大学教授ら14人。03年に医療ミスで子どもを亡くした母親も加わった。法務省と警察庁からは担当者がオブザーバーとして参加した。
 新制度の創設は、医師が相次いで刑事責任を問われて危機感を強める医療界が、厚労省などに要請してきた。検討会では、調査によって医師の過失がはっきりした場合の行政処分や、医師が刑事訴追される可能性がある場合の調査結果の取り扱いなどが焦点となりそうだ。民事紛争への調査結果の活用についても話し合う。
 医療機関が届け出る事例の範囲や、「異状死」を警察に届け出ることを医師に義務づけている現行の医師法との整合性についても協議する。
 厚労省の試案では、解剖医や臨床医、弁護士らで構成する「調査・評価委員会」を地方ブロックなどの行政機関ごとに設置。解剖結果やカルテ、関係者への聞き取りなどから治療内容などを評価する。作成した報告書は医療機関や遺族に交付するほか、個人情報を除いて公表する。
 この日の検討会では、日本医師会の木下勝之委員が「(医師の)刑事処分の方向に歯止めをかけ、安心して医療に取り組める制度にしてほしい」と発言。これに対して前田座長が「制度によって医師が事故を隠せると国民に思われたらマイナス。そうした議論が出てこない形にしたい」と指摘した。患者を支援するNPO理事長の辻本好子委員も「国民が納得できる、という視点を忘れないで議論してもらいたい」と注文をつけた。

はしか流行、連休明けまで授業は休講に 創価大 indexへ

 創価大(東京都八王子市)は19日、学生と教員に、はしかの集団感染が判明したため、5月6日まで全学部と大学院、創価女子短大の授業を休講にすると発表した。国立感染症研究所感染症情報センターによると、はしかの集団感染が原因で大学が全学休講になるのは珍しい。
 同大広報部によると、発症したのは学生52人と教員1人。このうち8割にあたる43人が学生寮に住んでいた。重症者はいないという。
 大学は緊急対策委員会を開き、学内外でのクラブ活動の一時停止、履修登録の締め切りの延長などを決めた。20日からは感染歴や接種歴のない学生を対象に予防ワクチン接種を始めた。
 同センターのまとめでは、東京、埼玉など関東地方で患者が急増している。通常は乳幼児に多いが今年は10代以上にも多いのが特徴という。

ヤコブ病の手術具、減菌処理せず再使用 厚労省発表 indexへ

 厚生労働省は20日、難病のクロイツフェルト・ヤコブ病患者に使われた手術器具を、必要な減菌処理をしないまま他の患者の手術で使うなどし、7人について二次感染の疑いが否定しきれない事例があったと発表した。
 06年10月、脳神経外科手術を受けた患者が約2週間後にヤコブ病と診断された。病院では、特殊液で3〜5分煮沸するなど二次感染防止のガイドラインにそった減菌処理をしないまま、手術器具を6人の患者に再使用。病院の職員1人が器具をひじに刺しけがをした。7人には事情を説明し、定期的に診察を受けるよう指導したという。
 厚労省は20日付で関係団体や学会、自治体などに適切な消毒を周知するよう通知を出した。

病気腎の移植、厚労省認めず 指針に明記へ indexへ

 厚生労働省は19日、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長らの病気腎移植問題を受けて、今後設ける生体移植に関する国の指針に「病気腎移植は現時点で医学的に妥当性がない」などと盛り込む方針を決めた。ただし、将来の病気腎移植の可能性は閉ざさないとみられる。日本移植学会など関係4学会が先月示した見解と歩調を合わせる。23日にある専門家の委員会に提案する。
 臓器移植法による指針は脳死移植に関するものしかなく、国内で大多数を占める生体移植は、学会の倫理指針があるだけだった。
 指針案は、移植について「提供者(ドナー)の自発的な意思が最重要」としたうえで、「ドナーと移植患者の双方から文書でインフォームド・コンセント(説明に基づく同意)を得る」「ドナーが親族でない場合、倫理委員会で臓器売買でないことを確認する」ことなどを求めるという。

タミフルの安全性「重大な懸念なし」を削除 厚労省HP indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」と異常行動との因果関係を調べている厚生労働省は19日、同省のホームページ上の「インフルエンザQ&A」を改め、「現段階でタミフルの安全性に重大な懸念があるとは考えていません」としていた部分を削除した。

 異常行動などによる死亡とタミフルとの関係はQ&Aでは「否定的」としてきた。新しいQ&Aでは、関係は「不明」とし、10代への使用を制限した経緯や、今月4日に開いた調査会でも結論が出ていないことなどを説明している。また乳幼児、10代、成人、高齢者と年代別に4分類し、インフルエンザへの抵抗力の程度を掲載。すべての年代に対し「本剤の必要性を慎重に検討」することも呼びかけている。

京女子医大、医療過誤8件で示談 患者側も調査委に indexへ

 東京女子医科大学病院(東京都新宿区)は18日、同病院で95〜04年に心臓手術などを受けた後に死亡したり、重い後遺障害が残ったりした患者8人について、患者・遺族側と示談が成立したと発表した。病院の事故調査委員会に患者側も参加して原因究明を進めた点が特徴的で、医療紛争が増えるなか、民事訴訟などによらず解決を探る一つの先例となりそうだ。
 同病院では、01年に群馬県高崎市の小学6年、平柳明香さん(当時12)が心臓手術後に死亡した事故で、医師らによるカルテ改ざんが発覚。03年7月には、同病院で医療ミスの被害に遭ったと訴えるほかの患者の家族らが被害者連絡会を結成した。病院側は04年に医療事故調査検討委員会を設けていた。
 示談が成立したのは、95年1月から04年7月に心臓手術などを受けた後、死亡した患者5人と脳に重い障害が残った3人の家族ら。病院側はいずれの事例も「患者や家族への説明が不十分だった」と認めたが、カルテの記載不備など記録の管理がずさんで、原因は特定できなかったという。
 病院側は7家族に解決金を支払ったが、金額は明らかにしていない。1家族は辞退したという。
 次男(当時18)を亡くした横浜市の上西富美子さん(54)は、この日開いた記者会見で「苦渋の決断だった。病院は現場教育を徹底して、本気で再発防止に取り組んでほしい」などと話した。
 永井厚志院長は「医師の説明不足など診療態勢に不備があったことは大変申し訳ない」と謝罪した一方、「患者側も交えた医療事故の検証制度は画期的だ。医療界に広めていきたい」と述べた。
 会見に同席した平柳さんの父、利明さん(56)は「民事訴訟では患者側に事故原因の立証責任があり、負担は計り知れない。家族や外部からも人を入れて病院が事故原因を究明する仕組みは評価できる」と話した。

抗がん剤「アバスチン」承認 厚労省 indexへ

 厚生労働省は18日、結腸や直腸がん向けの抗がん剤アバスチン(一般名ベバシズマブ)の製造販売を承認した。
 アバスチンは、がん組織に栄養や酸素を運ぶ血管がつくられるのを妨げることで、がんの増殖や転移を阻害する。進行がんや再発がんに効果があるとされ、中外製薬(東京)が06年4月に承認申請していた。同社によると06年7月現在、欧米など88カ国で承認されており、国内でも患者団体などから早期承認を求める声が上がっていた。

妊婦死亡事故で、産婦人科医を不起訴処分 奈良地検 indexへ

 奈良県大和高田市の同市立病院(松村忠史院長)に入院中の妊婦が出産直後に死亡した事故で、奈良地検は18日までに、業務上過失致死容疑で書類送検された産婦人科の30代の男性医師を不起訴処分とした。「死因の子宮破裂による出血性ショックを、予見させる症状がなかった」と判断した。
 調べによると、04年10月、同病院の産婦人科に入院していた当時30代の女性が出産後、脈拍や呼吸状態、血圧が異常に高い数値を示し、子宮内の大量出血で死亡した。
 奈良県警は、医師が施した投薬が一時的に数値を下げるだけの効果しかなく、妊婦の体内に出血など異常が生じていた恐れがあったのに、漫然と放置したと判断。06年3月、書類送検に踏み切った。
 一方、地検は、医師は女性の臓器状態などを調べるために超音波検査を実施したが、子宮破裂を疑わせるような症状は映っておらず、「予見は不可能」とみなした。

関東ではしかが流行 10代前半や大人に多いのが特徴 indexへ

 東京都や埼玉県など関東地方ではしかが流行していることが、国立感染症研究所感染症情報センターがまとめた定点調査でわかった。例年より流行は早く、人の移動が活発になる連休に向けてさらに広がることが予想されるとして、同センターは緊急情報を出して注意を呼びかけている。
 3月26日からの1週間に、全国3千の小児科から報告された患者数は26人(昨年同期9人)で、うち22人が東京都と埼玉、千葉、神奈川各県だった。同期間に全国約500の病院を受診した成人の患者数は11人(同0人)で、うち8人が東京。同センターは「この地域のはしかの流行はさらに進行している可能性が高い」としている。
 同センターによると、例年、はしかの発症は乳幼児に多いが、今年の流行は10代前半や大人に多いのが特徴という。
 同センターの多屋馨子室長は「例年これからが流行のピークになる。ワクチンを受けていない人は早急に近くの医療機関に問い合わせて受けてほしい」と話している。

院内感染対策、重要度でランク付け 厚労省が統一手順書 indexへ

 医療施設の院内感染対策について、厚生労働省の研究班(分担研究者、武澤純・名古屋大教授)が、科学的根拠に基づく統一手順書を作った。各項目を重要度に応じてランク付けした。今春改正された医療法は、無床診療所や助産所などにも院内感染症対策を求めており、小規模な医療施設でも重要度に従って対応できる目安ができた。今月中に各都道府県や関係機関に配布する。
 国内外の研究論文をもとに信頼性を検証、重要度の高い順に「1」〜「3」の3段階に格付けした。
 「1」は比較対照試験などで実証されたもの。「2」は、比較対照試験ではないが、集団を対象に研究した結果、証明されていることが前提。「3」は科学的に立証されてはいないが、専門家が取り組むべき対策として意見を述べているもの。さらに「すべきである(A)」「できればする方がよい(B)」「任意でよい(C)」とも区分けした。
 接触感染予防では、「病室に入室する時に手指を消毒して手袋を装着し、退室時にふたたび消毒する」が「1A」。「病室内のカーテンは患者ごとに交換する」は「3B」。「入院中に不必要な尿量測定をしない」は「3」だが、Aランクとしている。
 また、患者の身体をふくタオルは「使用後にその日のうちに洗濯し、乾燥させる方が良い」が「3B」。これらは科学的な証明が難しいが、やった方が良いと判断した。
 今春施行の改正医療法で、医療機関に求められる安全対策に院内感染対策が明確に位置づけられ、助産所や歯科診療所を含む全医療施設が対象になった。

がん死者数20〜25%減へ」 厚労省協議会が目標 indexへ

 がん患者や医師、学識経験者らで構成する「がん対策推進協議会」が17日、東京都内で開かれ、がんによる死亡率を10年間で20〜25%減らすとの目標案を示した。目標を達成するため、喫煙率も半減させるほか、健康診断の受診率を上げることも提案した。
 協議会は厚生労働相の諮問機関。がん治療の質の向上や患者への情報提供の充実を目指し、今月施行された「がん対策基本法」に基づいて基本計画案をつくっている。
 この日の協議会では、対策を進めるために重点的に取り組む課題を話し合った。数値目標がなければ実効性に乏しいとの意見が多く、年間約32万人のがん死者の死亡率の削減目標を設定。喫煙率を下げることががん患者の減少につながるとし、04年調査で男性43%、女性12%にのぼる喫煙率を半分にするとした。
 喫煙率の目標値をめぐっては厚労省が00年と昨年、国民の健康づくりを進める「健康日本21」計画に数値目標を盛り込もうとしたが、たばこ業界や自民党などの反対で実現しなかった。
 協議会は今後、緩和ケアや在宅医療などでも目標を設け、5月中に計画案をまとめる予定。国の計画を参考に各都道府県が計画をつくるため、厚労省は国の計画を夏までに閣議決定したいとしている。

兵庫医大の研修医9人が、研修期間中に別の病院でバイト indexへ

 私立兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)の臨床研修医9人が、研修期間中に別の病院でアルバイトをしていたことが分かった。04年度に始まった現行の臨床研修制度は研修医のアルバイトを禁じており、同病院は9人に厳重注意した。
 同病院によると、9人は2年間の研修期間の2年目だった05年度に兵庫県内や大阪府内などの12の医療機関で当直医などを務めていた。1回の当直で数万円を受け取っていたとみられる。なかには複数の病院を掛け持ちしていた研修医もいたという。
 新しい医師臨床研修制度では、医師は2年以上民間や公立の病院で研修を受けることが義務づけられている。期間中、研修医は臨床研修に専念するため、アルバイトは禁止されており、一定額の収入を保証するため、研修先病院に対して、国から補助金が出される。
 同病院は「アルバイト先の病院では研修医が1人で勤務する場合も想定され、医療事故につながる可能性がある。再発防止を徹底したい」としている。

「死後生殖」禁止を決定 産科婦人科学会 indexへ

 日本産科婦人科学会(日産婦)は14日、京都市内で総会を開き、死亡した夫の凍結保存精子を使って体外受精させる「死後生殖」を禁じ、学会の会告(指針)に盛り込むことを正式に決めた。凍結された精子の保存期間は「本人が生きている間」とし、死亡したら廃棄する。
 死後生殖をめぐっては、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(やひろ)院長が11日、死後生殖を過去2例実施していたと、禁止の指針が決まることへの「抗議」として公表。
 さらに、子宮のない女性に代わって実母が「孫」を代理出産する試みを実施していたことを明らかにし、不妊の夫婦の受精卵で別の女性が出産する「代理出産」を引き受けてくれるボランティアの公募も公表した。日産婦は代理出産を認めておらず、根津院長を厳重注意することを決めた。
 記者会見で日産婦倫理委員長の吉村泰典慶応大教授は「我々としては許すわけにはいかない。現在の会告を順守してもらいたい」と述べた。

「大病院、一般外来なし」 役割分担促す 厚労省方針 indexへ

 厚生労働省は13日、今後の医療政策の方向性として、大病院や専門病院は一般的な診察はせずに入院と専門的な外来に特化する一方、開業医に対しては休日・夜間の診療や患者の自宅を訪れる訪問診療を求める報告書をまとめた。病院と開業医の役割分担を明示することで、勤務医の過度な負担を軽減するとともに、在宅医療への移行をはかるのが狙いだ。今後、診療報酬の見直しなどを通じて実現を目指す。
 柳沢厚労相を本部長とする「医療構造改革推進本部」が報告書を作成。都道府県の担当者を集めた17日の会議で提示する。
 報告書では、日本の医療の問題点として、大病院、中小の病院、開業医の役割分担が明確ではない結果、「拠点となる大病院などに外来患者が集中し、勤務医に過度の負担がかかっている」と指摘。大病院は「質の高い入院治療が24時間提供されるよう、原則として入院治療と専門的な外来のみを基本とする」と明記した。
 また、中小の病院は軽い病気の入院治療や脳卒中などの回復期のリハビリテーションなどを担当することが妥当とした。
 一方、「夜間や休日などの治療に不安がある」とする患者のニーズに対応するため、開業医の果たすべき役割として(1)休日夜間急患センターに交代で参加する(2)時間外でも携帯電話で連絡がとれる(3)午前中は外来、午後は往診・訪問診療という経営モデルをつくる、などを挙げた。
 開業医はこれまで以上に広範な対応や知識が求められるため、開業医のチーム化や研修を充実させ、「看(み)取りも含め24時間体制での連絡や相談機能を果たすことのできる体制を検討する必要がある」としている。
 長期療養が必要なお年寄りについては、患者を継続的に診る「在宅主治医」の重要性に言及。患者自らが主治医を選び、医師間や病院との調整を担ってもらうことで、ケアの質を上げる。
 こうした方向性に基づいて、厚労省は地域の医療計画を策定するよう、各都道府県に要請。開業医の訪問・夜間診察の診療報酬の引き上げや、総合的な医師の養成などに取り組む考えだ。

微小粒子状物質PM2.5規制へ 排ガスなどから発生 indexへ

 ディーゼル車の排ガスなどから発生し、肺がんやぜんそくの主な原因として疑われる微小粒子状物質「PM2.5」について、環境省は13日、これを規制の対象とするため、環境基準の設定に乗り出す方針を固めた。PM2.5の規制は、東京都内のぜんそく患者らが国や自動車メーカーなどを訴えた東京大気汚染公害訴訟の和解協議のなかで原告側が強く求めており、大詰めを迎えている和解協議をさらに後押しすることになりそうだ。
 環境省は00年からPM2.5と健康被害の因果関係を調べるため、動物実験や疫学調査を続けてきた。近くPM2.5の健康への影響を評価する検討会を設置。これまでの調査結果や海外での規制の動向などを踏まえ、学識経験者らが基準設定に向けた作業に入る。
 この日午前の衆院環境委員会で、江田康幸議員(公明)への答弁のなかで環境省水・大気環境局の竹本和彦局長が「(基準設定に向け)積極的に取り組んでいきたい」と明らかにした。
 環境基本法にもとづく浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準は、大きさが10マイクロメートル以下(PM10)が対象。二酸化窒素(NO2)や二酸化硫黄(SO2などとともに設定されている。これらの規制物質は全国の測定局で汚染状況が常時観測され、大都市圏では「自動車NO2・PM法」でディーゼル車からの排出が一段と規制されている。
 2.5マイクロメートル以下のPM2.5は、毒性が強く肺の奥まで入るため、PM10よりも高い危険性が指摘されてきた。01年に参院でNO2・PM法改正案が可決された際には「できるだけ早期に環境基準を設定すること」との付帯決議があった。しかし「人体への影響がはっきりしない」として先送りされてきた。
 東京大気汚染公害訴訟の和解協議で原告側は、交差点など特に大気汚染がひどい場所への対策やPM2.5の規制などを国に要求。局地汚染対策は、今国会に提出されている自動車NO2・PM法改正案に盛り込まれた。このため、残るPM2.5の基準設定や常時観測体制の整備を「和解成立のための重要な要素」と位置づけている。
 和解協議では自動車メーカー7社も一時金(解決金)の支払いを検討するなどしており、協議は最終段階に入っている。
 〈PM2.5〉 大気中を漂う大きさ2.5マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)以下の粒子状物質。2.5〜10マイクロメートルの粒子は自然のちりやほこりなどが多いのに対し、PM2.5はディーゼル車の排ガスや工場のばい煙など人工的な物質が多く、毒性が強いとされる。気管などで止まらずに肺の奥まで達するため、肺がんやアレルギー性ぜんそくなどを引き起こすとみられている。米国は97年に環境基準を設定。欧州連合も規制に動いている。

ニチイ学館など2社も介護報酬過大請求 都が返還指導 indexへ

 介護報酬の不正請求問題で、訪問介護大手の「ニチイ学館」(東京都千代田区)と「ジャパンケアサービス」(豊島区)でも、ヘルパーが介護保険法で定めた人員通りに配置されず、介護報酬も過大に請求されていたことが都の調査で分かった。都は2社に適正な人員配置を求める改善勧告を出すとともに、過大請求分を、介護報酬を支払った市区町村に返還するよう指導した。
 都によると、2社では都内の訪問介護事業所で、ヘルパーが法定の人数を満たさなかったり、常勤の管理者がいなかったりするケースが見つかった。介護保険の対象にならないサービスで介護報酬を請求したり、介護時間を水増ししたりする過大請求も発覚。都は、自主的に不適正な請求分を計算して各自治体に返すよう指導した。ニチイはすでに約4100万円を返還。ジャパンケアサービスは返還金の試算を進めている。
 同様の問題は、すでに訪問介護最大手で人材派遣業「グッドウィル・グループ(GWG)」の「コムスン」(東京都港区)でも発覚。都によると、コムスンでは04〜05年にかけて、葛飾区や中央区など都内3カ所の事業所で、必要なヘルパーの人数が確保できていないのに、都に確保できたかのように届け出書類を提出。事業所の指定を受けた後も人員を確保できないまま事業を続け、約4300万円を不正に請求していたとされる。
 GWGの広報IR部は「今回の改善勧告を真摯(しんし)に受け止め、改善に全力を尽くします」、ニチイ学館広報室は「指摘を真摯に受け止め、深く反省するとともに、適切な事業所運営を目指していきます」とコメント。ジャパンケアサービスの担当役員は「人員不足は改善した。今後、管理を徹底します」と話した。
 都は大手3社でこうした実態が発覚したことを重視。同様の事例が業界で起こらないよう、訪問介護事業者の46社を12日に集め、再発防止に向けた説明会を開く。

タミフルのむ?のまない? 患者の判断助ける冊子作成へ indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」と転落など異常行動との関係を調べている厚生労働省は、タミフルを服用するかどうかを患者・家族自身が判断するためのリーフレットを作ることを決めた。医療機関に配り、医師が薬の効用や副作用を説明するとき、患者・家族に渡すことなどを考えている。
 同省は3月下旬から10代へのタミフル使用を制限しているが、年齢にかかわらず慎重に考えてもらう必要があると判断した。今月中にも、医師や薬剤師、関係学会や患者団体のメンバーらを委員として、作成のための検討会をつくる。
 内容は(1)インフルエンザは治療しなくても1週間ほどで治ることが多いが、乳幼児や高齢者、心臓病などの人は肺炎などを併発して悪化、死亡することもある(2)タミフルは発熱期間を1日短くする(3)予防にはインフルエンザワクチンが有効――などを想定。日本では世界の消費量の8割を占めるほどタミフルが多用されている。

公立小中高生徒の5.7%がぜんそく、アトピー5.5% indexへ

 全国の公立小中高に通う子どものうち5.7%がぜんそく、5.5%がアトピー性皮膚炎にかかっていることが、文部科学省が初めて実施したアレルギー疾患に関する全数調査で分かった。同省は「学校側の対応は十分でない」とみて、疾患や医薬品の使用状況、生活上の注意点を医師が記す「アレルギー版学校生活管理指導表」(仮称)の導入や、学校用の手引の作成を進める方針だ。
 調査は04年6月、約3万7000校に通う約1277万人を対象に実施。健康診断の結果のほか、保護者からの申し出などで学校が把握している例を集計した。
 その結果、花粉症を含むアレルギー性鼻炎が9.2%、アレルギー性結膜炎が3.5%、食物アレルギーが2.6%、食物などに対するアレルギー反応が二つ以上の臓器に現れるアナフィラキシーが0.14%だった。
 いずれも、男子が女子を上回った。ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーは年齢が上がると減っていく傾向だったが、アレルギー性鼻炎と結膜炎は中学生が最も多かった。
 いずれの疾患についても、80〜95%の学校は実態把握に取り組んでいた。しかし、具体的な対応となると、ぜんそくで「発作など緊急時の対応などについて保護者らと共通理解を図っている」58%▽アトピー性皮膚炎で「体育の授業などで配慮」46%▽「温水シャワーなどの設備を充実」15%▽アレルギー性鼻炎、結膜炎で「掃除や飼育の当番などで配慮」15%――にとどまっていた。

「医療ミスの原因に慢性的な疲労」 多くの勤務医訴える indexへ

 病院に勤める医師の96%が法定勤務時間の週40時間を超えて働いているなど、過酷な労働実態が社団法人日本病院会(東京)の「勤務医に関する意識調査」でわかった。週48時間以上は7割で、週56時間以上も4割を超えた。多くの医師が、医療ミスの原因として「慢性的な疲労」を挙げた。
 調査は全国2535病院を対象に行い、536病院の5635人から回答を得た。夜間当直をすると答えた医師は72%で、月3〜4回が41%、5回以上も17%いた。9割近くは、夜間当直の翌日も「普通勤務せざるを得ない」と答えた。
 医療ミスと勤務との関係では、7割以上が「過剰な業務のために慢性的に疲労している」、6割以上が「患者が多く1人あたりの診療時間、密度が不足がち」と答えた。医療紛争による診療への影響は、7割が「防御的、萎縮(いしゅく)医療になりがちになる」とした。
 また、へき地病院への勤務は「したくない」が40%だった一方、当直回数や休日の確保、勤務期間の条件が合うなどすれば「勤務したい」と33%が回答した。
 こうした現状を受け厚生労働省は、地域の医師確保を後押しするため、医療政策など専門知識を持つ「地域医療アドバイザー」を都道府県に派遣する方針を提案。地域の中核病院に医師を集め医師1人あたりの負担を軽くする集約化・重点化を進めるため、助言や指導をするという。

延命中止、チームで判断 国が初指針 indexへ

 終末期医療に関するガイドラインづくりを進めてきた厚生労働省の検討会(座長=樋口範雄・東大大学院教授)は9日、延命治療の開始や中止は患者本人の意思を基本とし、主治医の独断ではなく医師らのチームで判断することを柱とする指針をまとめた。国が終末期医療の指針をつくったのは初めて。ただ、「終末期」の定義や、延命治療の中止が容認されうる要件などについては「価値観が多様で難しい」として先送りされた。
 終末期医療をめぐり厚労省は87年から4回の検討会で議論を重ねてきたが、指針策定には至らなかった。今回は昨年3月に発覚した富山県射水市民病院での延命治療中止が社会問題化したことから、治療方針を決める手続きの整備を急いだ。同省は今後、国民の意識調査を行うほか、秋以降に新たな検討会を立ち上げ、終末期の定義や、人工呼吸器など生命維持装置を外しても刑事責任を問われないケースなどについて議論を始める。
 指針は、延命治療の開始や変更・中止などは「患者本人による決定を基本とすることが最も重要な原則」で、医療従事者と患者が話し合って合意した内容を文書に残すと定めた。治療中止などは、担当医のほか看護師やソーシャルワーカーなど「多専門職種」からなる医療チームが慎重に判断するとした。
 患者の意思が確認できない場合は、家族と医療チームが患者にとって最善な方法を話し合うと規定。患者と家族、医療チームが合意できない場合は、複数の専門職で組織された院内の委員会が助言し、合意形成に努めるよう求めた。
 樋口座長は指針を「終末期医療を議論していく最初の一歩」とし、「何をすれば刑事責任を問われないのかなど、医師の法的責任のあり方などはあえて論じなかった」と話した。
 延命治療の中止をめぐっては、日本救急医学会が2月に独自のガイドライン案を公表。終末期を「脳死と診断された場合」「さらに行うべき治療法がなく、数日以内に死亡が予測される場合」などと具体的に定義したうえで、人工呼吸器を外す手順などを示した。早ければ秋にも正式決定する予定だ。
 また、患者の呼吸を助けるチューブを外し、筋弛緩(しかん)剤を投与したとして医師が殺人罪に問われた川崎協同病院事件の東京高裁判決は2月、延命治療の中止について「尊厳死を許容する法律の制定かこれに代わるガイドラインの策定が必要。国を挙げて議論・検討すべきだ」と指摘していた。

心筋神経偏り、不整脈を防止 慶応大グループが発見 indexへ

 突然死の原因となる不整脈を起こさないようにしているのは、心臓の筋肉(心筋)を制御する神経の分布の偏りであることを慶応義塾大学の家田真樹・前助手、福田恵一教授(再生医学)らが突き止めた。9日発行の米専門誌ネイチャーメディシン電子版に発表する。
 心臓の拍動数は交感神経によって調節されている。交感神経は心臓の「部屋」である心室の内側よりも外側に多く分布するが、この分布の偏りがどんな意味をもつのかはわかっていなかった。
 福田さんらは、この偏りが、胎児の段階でセマフォリン3aという遺伝子が働いてできることを見つけた。セマフォリン3aには神経細胞の突起が伸びるのを抑える働きがあり、心室の内側で活躍していた。
 この遺伝子を働かなくしたマウスでは交感神経の分布に偏りが生じず、心拍が一時的に止まる異常がみられた。逆にこの遺伝子が心臓で過剰に働くようにしたマウスでは心筋につながる交感神経が全体に少なく、2割が不整脈によると考えられる突然死を起こした。交感神経の適切な分布が不整脈防止に重要なことを示唆する結果だ。
 「将来、心筋再生が可能になった時は、交感神経のことも十分考えて治療をする必要がある」と福田さんはいっている。

「献体使い手術技術の向上を」 普及求め医師ら活動 indexへ

 患者に、質が高く安全な医療を提供するため、献体を使った手術トレーニングを日本に普及させようと、医師らがNPO法人「MERI Japan」(名古屋市)を設立し、8日、初のシンポジウムを開く。名前は、「医療技術研修・研究開発施設」を意味する英語の頭文字から取った。
 日本の献体は、主に医学生の解剖実習に使われている。死体解剖保存法は、教育や研究目的の解剖を認めているが、教育の中に、外科医の技術向上のための研修が含まれるか不明確だ。「MERI Japan」は昨秋、国に、構造改革特区をつくって研修できるように提案したが、認められなかった。
 しかし、欧米では以前から外科医の手術研修や医療機器の開発に利用されている。最近は中国、韓国、タイなどでも献体を使って研修する施設ができているという。
 優れた外科医も最初から高度な技術を備えているわけではない。日本では、医師が実際の手術の場で技術を身につけているのが実情だ。そのため、未熟さから手術ミスで患者を死亡させる事故も起きている。
 医療事故を防ぐため、コンピューターによる模擬手術訓練装置が研修に使われている。またブタなどの動物での研修では、出血場面を経験できるものの、人間と臓器や骨の位置が異なる。人体でなければ学べないことも多く、海外へ研修に行く医師もいる。特に、整形外科、脳神経外科など骨を削る手技が伴う手術は、実際の人体で確かめることが重要だという。
 名古屋市内の整形外科病院長で、「MERI Japan」理事長の蜂谷裕道医師は「ご遺体を医療技術向上の研修に使えるようになれば医療ミスが減り、国民の利益につながる」と話している。
 8日午後1時から、医療技術と患者の安全に関するシンポジウムを名古屋市千種区吹上2丁目の市中小企業振興会館で開く。問い合わせは、はちや整形外科病院(052・751・8188)へ。

医師確保へ苦心の高給 自治体病院2倍の差 政投銀調べ indexへ

 自治体病院に勤める医師の給与は都道府県によって2倍の開きがあることが、日本政策投資銀行の調べでわかった。北海道や東北を中心に医師不足が深刻な地域ほど給与は高い傾向があり、自治体が「高給」で医師をつなぎとめている実態が浮きぼりになった。
 総務省がまとめた04年度の地方公営企業年鑑をもとに、同銀行が全国1000の自治体病院(都道府県立、市町村立、一部事務組合立)の経営を分析した。
 常勤医の給与(時間外、期末手当などを含む)の全国平均は、年額換算で1598万円(平均年齢42歳)。都道府県別では北海道の2301万円が最高で、最低は奈良県の1132万円だった。岩手、宮城など東北各県は軒並み高水準なのに対し、西日本は全般的に低く、神奈川や東京、大阪など大都市部も低かった。
 格差の背景には医師の偏在問題がある。給与の上位10道県はベッド100床あたりの医師数が平均9.4人。一方、下位10都府県は12.3人で、給与が高い地域は医師が少ない傾向があった。
 全国でもっとも給与が高かった病院は、北海道北部の幌延町立病院(6科36床)の4586万円。町内唯一の病院で、ただ1人の常勤医である院長が日中の勤務に加え、平日は毎晩当直についているという。同病院は「町の財政は厳しいが、地域の医療を守るためにはこの待遇もやむをえない」と説明する。
 自治体病院の医師は公務員だが、給与は他の職種から独立して条例で定められ、自治体の裁量で基本給や諸手当を引き上げられる。
 北海道内の自治体病院の求人活動をサポートしている道地域医療振興財団によると、道内の過疎地ではいまや、求人時に最高3000万円台の年収を提示する病院も珍しくないという。
 だが、過疎地の医師不足に歯止めはかからず、給与による医師確保は必ずしも功を奏しているとはいえない。たとえば三重県尾鷲市の市立尾鷲総合病院は、05年に年収5520万円で産婦人科医を雇った。しかし医師は院内に寝泊まりしながら年に数日しか休日がとれず、1年後に退職した。
 「高給作戦」は財政面からも限界がある。
 政策投資銀の調べでは、自治体の支援なしで黒字を確保した病院は全体の7%(04年度)。自治体の支援総額は約7000億円(1病院あたり7億円)、病院を運営する公営企業の借金残高の総額は、約4兆円に達する。赤字体質の要因は人件費比率の高さで、自治体からは「もうこれ以上、人件費は増やせない」という悲鳴も上がっている。

体内にチューブ忘れる 新潟大病院、70代女性の手術で indexへ

 新潟大学医歯学総合病院(畠山勝義院長)は6日、2月に新潟市内の70代の女性の肝臓を切除する手術をした際、血流を遮断するために使った長さ5センチ、太さ6ミリの天然ゴム製チューブを体内に残し、3月に再手術して取り出したと発表した。チューブは導尿などに使うネラトンカテーテルを一部切って使った。
 畠山院長は記者会見で、手術は1人ではなく、複数の男性外科医がチームで執刀したと話した。
 カテーテルは血流を遮断するため、肝臓の動脈と門脈をしばるために使った。畠山院長は「血流再開のために外したはずだが、胃の裏側にあったので見えなかったのだろう」と説明した。
 術後のエックス線写真にも写っていたが、それ以前の手術で膵管(すいかん)に長さ約5センチ、太さ3ミリのシリコーン製チューブを残していたため、これと誤認したという。
 女性は術後3日目に発熱があり、腹部CT検査をした結果、チューブの置き忘れが判明した。女性は3月中に退院し、経過は良好だという。

C型肝炎訴訟、被告企業の2社が控訴 indexへ

 薬害C型肝炎訴訟で原告側を一部勝訴させた3月の東京地裁判決を不服として、被告企業3社のうち三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)とベネシスの2社が5日、東京高裁に控訴した。国は既に控訴している。地裁判決は製薬会社について「感染リスクが高いのに警告を怠った」などとして責任を認めた。

外科医7割、当直明けに手術 病院勤務は週70時間 indexへ

 外科医の7割が当直明け手術をしており、病院勤務では平均で週70時間労働――日本外科学会が会員1276人を対象にしたアンケートから、過酷な実態が浮かび上がった。約1割が医療訴訟も経験しており、同学会は「この状態が続けば、外科学会への新規入会者は2018年にゼロになる」と予想している。
 大阪市内で開かれた関西プレスクラブの月例会で4日、同学会長の門田(もんでん)守人・大阪大学教授(消化器外科)が発表した。
 調査は去年11月、インターネット上で回答を募った。勤務時間は平均週59.5時間。病院勤務では同68.8時間。労働基準法で定める週40時間を大幅に超過していた。
 当直明けの手術参加は「いつもある」31%、「しばしば」28%、「まれに」が13%。「当直明け手術はしない」は2%しかなかった。20〜40代では、約9割が当直明けに手術をしている。
 医療訴訟の経験が「ある」は、判決と和解を合わせて10%。ほかに「示談」11%、「訴訟準備などの具体的な行動」は15%、「患者や家族とのトラブル」は38%が経験し、85%が「訴訟が治療に影響する」と答えた。
 激務の原因は、高度な治療が増える一方、外科医数が減少しているためとみられる。全身麻酔の手術は96〜05年の10年間に約4万件増え、臓器移植や腹腔(ふくくう)鏡など長時間の手術が増えたが、94〜04年で外科医は6%減った。特に新しく外科医になる人は20年前から一貫して減っている。アンケートでは志望者減少の理由に、労働時間の長さ、時間外勤務の多さ、医療事故と訴訟リスクの高さがあがった。
 門田教授は「過重労働や当直明け手術は、医療の質や安全性の観点からも問題だ。医師が訴訟に対し防衛的になれば、治療の選択肢がせばまり、患者への影響も大きい。国は医療費抑制の方針を抜本的に見直し、医師数の増加や過重労働の是正に乗り出してほしい」と話している。

救急『開業医も連携を」医師不足厚労相、医師会長に要請 indexへ

 柳沢厚生労働相は4日、医師不足問題への対応をめぐり日本医師会の唐沢祥人会長と省内で会談した。柳沢氏からの異例の要請で実現した会談で、同氏は、『小児科や産科等で勤務医の負担が過重になっている」と話、開業医が参加する救急や夜間診療のネットワークを作るよう協力を要請。唐沢氏も『積極的に取り組む」と応じた。
 厚労省等によると、会談で柳沢氏は『地域の病院の連携が不十分で、医師が効率的に活用されていない。開業医にもう少しになってもらう役割があるのではないか」と指摘。開業医が役割分担して救急や夜間診療を受け持つネットワークの必要性等を強調し、地域の医師会への働きかけを求めたと言う。
 一方、唐沢氏は臨床研修を終えた若い医師に一定期間、へき地や産科・小児科等特定の診療科での勤務を促す仕組みづくりを提案した。

タミフル「異常な行動」128人 副作用の調査開始 indexへ

 厚生労働省は4日、インフルエンザ治療薬タミフルの副作用や安全性を再検討する薬事・食品衛生審議会の安全対策調査会を開いた。01年2月の発売から、10代の使用制限を決めた今年3月20日まで、輸入販売元の中外製薬(東京)から報告があった1079人の副作用を精査したところ、飛び降りや転落などの「異常な行動」は128人で起きており、未成年が8割近くを占めていた。
 厚労省は、初めて死亡以外のケースも調査し、服用との因果関係を評価した。副作用は、1800件とされてきたが、重複分を精査し、1079人と訂正した。
 今回同省は服用後に飛び降りたり、暴れたりするなど大きな事故につながるケースを「異常な行動」と分類し直した。128人を年齢別でみると、現在使用が制限されている10代が57人と多く、10歳未満も43人と目立っている。成人も28人いた。このうち死亡したのは8人で、10代5人、成人3人、10歳未満はゼロだった。
 今月4日現在、転落事例は10代で19人、成人4人の計23人が確認され、6人が亡くなっている。
 調査会では、服用していないインフルエンザ患者11人が異常な行動を示し、1人が転落死したことも報告された。インフルエンザの合併症であるインフルエンザ脳症でも異常行動は起こるため、出席者から「服用していない患者に異常な行動が起きる頻度のデータが必要」などの意見が出た。
 調査会は、タミフル服用と異常行動の因果関係について、情報不足のため判定できないとした。さらに10代への使用制限などの措置が妥当かどうかについても検討。制限する年齢を広げ、「重症患者のみに限定すべきだ」との意見も出たが、客観的なデータが不足しているとして、当面は厚労省の措置を容認した。今後、詳細な症例分析を行い、対象の見直しが必要か判断するという。
 一方、国には3月20日以降も中外製薬から185人の副作用報告があった。うち「異常行動」とされているのは67人。異常行動とは別に死亡も12人あった。

看護師の内診の禁止を明確化 厚労省が医療機関に通知 indexへ

 横浜市の堀病院で助産師資格のない看護師に「内診」をさせていた事件などを受け、厚生労働省は2日、看護師は内診を含む分娩(ぶんべん)の進行管理をできないとする通知を都道府県を通じて全国の医療機関などに出した。堀病院の事件などで産科医や助産師などの間で解釈が分かれ、現場で混乱が深まっているため、厚労省としての姿勢を示す狙い。厚労省は過去にも看護師の内診を禁じる通知を出しており、「これまでの方針に変わりはなく、看護師による内診は認められない」としている。
 この問題をめぐっては、厚労省は02年と04年、内診について「医師や助産師しかできない助産行為に当たる」「医師の指示があっても看護師はしてはならない」とする見解を都道府県への通知の中で示した。しかし、いずれも自治体の質問に答える形だった。
 今回の通知では、「医師、助産師、看護師の適切な役割分担と連携が安全なお産には重要だ」と指摘。内診を含む出産の進行管理は看護師が行えないとの見解を明確化した上で、看護師は医師や助産師の指示・監督のもとで、妊婦の様子を見るなどの「診療または助産の補助、産婦の看護」を担うとした。

大学病院も産科医不足 研究・がん治療瀬戸際 本社調査 indexへ

 子宮がんなどの治療も縮小し、研究も思うようにできない――。朝日新聞が全国80大学の産婦人科医局に実施した調査で、大学病院でも医師不足が深刻になっている実態があきらかになった。夜間の出産への対応に加え、トラブルがあればすぐに訴訟になるといった理由から敬遠傾向にある中、地域の病院に派遣していた医師を引き揚げても補えず、5年間で医師が半減した大学も多い。高度医療と人材育成、治療法の研究を担う大学病院の産婦人科が危機に直面している。
 西日本のある私立大の産婦人科医局は07年3月時点で、教授、講師、助手、大学院生の4人しかいなかった。02年度以降、新規入局者はゼロ。病院での診療は、大学院生以外の3人で分担。当直は組めず、夜間の緊急時には教授が駆けつけることもある。
 昨年の分娩(ぶんべん)数は約170件で前年の半分ほど。新生児を診る医師も昨年やめ、母子の命にかかわるような危険なお産は受け入れられない。
 大学病院の産婦人科は、お産だけでなく子宮がんや卵巣がんなどの治療でも大きな役割を果たしている。だが、この病院では5年間で手術件数が半減。進行がんなどの大きな手術は、教授の出身大学から応援をもらってしのいできた。4月に入り、ようやく医師が3人増えた。
 群馬大は、群馬県立がんセンターの婦人科に派遣している医師3人のうち2人を、4月に引き揚げる。残る1人もいずれは引き揚げる予定で、すでに1月から新規の患者は受け入れていない。
 県内で婦人科のがんに十分対応できるのは、同センターを含め数施設。中でもセンターの手術件数は年約200件で最多だ。だが峯岸敬教授によると、06年度に20人いた医師のうち6人が4月以降、医局を離れたり休んだりするため、人繰りがつかなくなったという。
 富山大の医局は03年以降、14ある関連病院のうち7病院への医師派遣をやめた。それでも体外受精などの不妊治療はできなくなった。
 札幌医大は「地域医療への貢献が大学の方針」のため、派遣している医師を引き揚げていない。他大学が医師を引き揚げた病院もカバーしており、02年に33人いた医局員はほぼ半減した。
 診療・教育・研究という大学病院の役割のうち、研究に時間をさけなくなった。02年度以前は10題を超えた学会での発表が、最近は4、5題だ。「新しい治療法の導入が遅れ、治療レベルも落ちるのではないか」と斉藤豪教授は心配する。
 〈調査の結果〉調査は全国80大学の産婦人科医局を対象に調査票を2月に送り、67大学(84%)から回答があった。1月現在、大学本体の医局にいる医師数は平均22.1人。02年の27.1人から5人減った。5年前より医局員数が増えたのは4大学だけだった。
 入局者数は、02年が3.9人、03年は3.4人だったが、臨床研修が必修化され、新人医師が2年間に様々な診療科を回るようになった04年は1.1人、05年は0.9人。研修を終えた医師が初めて入局した06年も2.7人と、必修化前の水準には戻らなかった。
 4月の新規入局予定者数は平均2.9人。「0人」が7大学、「1人」が15大学あった。

ピロリ菌で酵素誤動作、胃がん作る新たな仕組み解明 indexへ

 胃にすみ着くピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が胃がんを作る仕組みを、京都大大学院医学研究科の千葉勉教授(消化器内科)、本庶佑(ほんじょ・たすく)教授(免疫ゲノム医学)らのグループが解明、1日付の米医学誌「ネイチャー・メディシン」電子版に発表する。本来は免疫細胞にしかないはずの酵素がピロリ菌の刺激で現れ、誤動作することががんの引き金になっているという。これまで知られていなかった新たな発がんメカニズムの解明として注目される。
 ピロリ菌は胃粘膜の細胞の間に潜り込んで胃炎を起こし、さらに症状が進むと胃がんを起こす可能性が指摘されている。ピロリ菌が感染した胃粘膜の細胞では、その遺伝子の一部に突然変異が起きていることがわかっており、それが起こる仕組みが追究されていた。
 そこで本庶教授らが注目したのが、99年に自らが発見したAIDという酵素。この酵素は、細菌などの多様な外敵に対して、様々な抗体を作るようにBリンパ球という免疫細胞の遺伝子に突然変異を誘導する働きを持つ。通常はBリンパ球でしか働かないが、遺伝子操作で全身で働くようにしたネズミでは、胃がんや肺がん、リンパ腫などを起こすことを明らかにしていた。
 そのため、今回グループは、ピロリ菌に感染したネズミの胃粘膜細胞でAIDの有無を調べてみた。すると、本来ないはずのAIDがたくさん存在していることが判明。さらにその細胞では、がん抑制の作用を持つp53遺伝子など、複数の遺伝子に突然変異が起きていることを確かめた。さらにヒトの胃がん組織でもAIDがたくさん存在していることを見つけた。
 C型肝炎ウイルスに感染した肝臓のがん細胞でも同様の現象を確認しており、千葉教授は「ピロリ菌やC型肝炎ウイルスの感染で炎症が起き、それが引き金となって免疫細胞にしかないはずのAIDが作られて細胞の遺伝子に突然変異を起こし、がん化につながっていると思われる。さらに詳しい発がんメカニズムを調べ、予防や治療に役立たせたい」と話している。

「安心して産みたい」育児サークルが街頭署名 indexへ

 産科医不足に伴う分娩(ぶんべん)施設の減少を受け、全国の育児サークルなど36団体でつくる「お産といのちの全国ネット」が1日、大阪、横浜、岩手の3カ所で医師、助産師の養成数の増加や、多様な出産場所の確保を求める街頭署名に取り組んだ。
 2日以降も各地の街頭で訴えるほか、郵送でも署名を募っている。6月までに集約し、衆参両院議長あてに提出する。問い合わせは同ネットの千田(ちだ)満佐子さん=072・821・1950(午後7〜10時)へ。

医療・教育・地域格差「悪化」急増 内閣府世論調査 indexへ

 「医療・福祉」「教育」「地域格差」の三つの分野で、「悪い方向に向かっている」と考える人の割合が1年前より急増していることが、内閣府が行った「社会意識に関する世論調査」でわかった。7月に参院選を控え、格差問題が与野党の争点に浮上するなか、格差をめぐる国民の実感も強まっているようだ。
 調査は、内閣府が今年1月から2月にかけ、全国の成人男女1万人を対象に個別面接で行い、5585人が回答した。
 「現在の日本の状況について、悪い方向に向かっていると思われる分野」を、「外交」「生活環境」「交通秩序」など24の分野から複数選択で質問。回答では、06年2月の前回調査で19%だった「医療・福祉」が31.9%に増えた。昨年10月から高齢者を中心に患者の窓口負担が増えたことや、年金制度への不安が背景にあるようだ。
 また、いじめや必修科目の履修漏れが社会問題化した「教育」では、12.3ポイント増えて36.1%となった。「地域格差」は11.5ポイント増の26.5%。地域別では北海道で最も高い41.4%となり、最も低かった東海の22.1%に比べ、ほぼ倍だった。

医師の処分、ネットで検索 厚労省が4月から新システム indexへ

 厚生労働省は4月1日から、医師と歯科医師の免許の有無や行政処分などについて、インターネット上で検索できるシステムを導入する。患者自らが医師の情報を手軽に調べることができるため、無資格診療の防止など医療安全の向上に役立つと期待されている。
 医師は、厚労省が管理する「医籍」に名前や登録番号、処分歴などが登録されているが、免許の有無については、これまで医師の名前と生年月日、登録番号を厚労省に提示して照会しないと確認できなかった。
 4月1日正午から開設される新システムは、厚労省のホームページから「医師等資格確認検索」にアクセスする。医師の名前と性別、一般医師か、歯科医師かを入力して検索すると、医籍の登録年や、医業停止中かなど行政処分に関する情報が表示される。
7年03月31日

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波(まんなみ)誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植について、日本移植学会、日本泌尿器科学会、日本透析医学会、日本臨床腎移植学会の関係4学会は31日、「医学的に妥当性がない」として、全面否定する声明を発表した。大阪市内で開かれた合同会議の後の記者会見で、日本移植学会の田中紘一理事長は「将来、腎臓病治療の進歩によって、病気腎を移植に使える可能性がでてくるかもしれない。しかし、現時点では、病気腎移植は実施するべきではない」と明言。事実上、国内での病気腎移植の実施は不可能になった。
 関係学会のうち、日本腎臓学会のみは「声明の中身に異論はないが、5月に予定している理事会の決定を経たい」と、この日は声明への参加を見送った。厚生労働省は、臓器移植法の運用指針に病気腎移植の禁止規定を加えるかどうか検討をする。
 声明はまず、万波医師らによる腎臓の摘出が医学的に妥当だったかどうかを、疾患ごとに検討。良性疾患のうち、ネフローゼについては、「十分な医療を受けていたという確証が得られない」▽尿管狭窄(きょうさく)、腎動脈瘤(りゅう)などについては「腎臓を温存する治療が第一選択で、摘出が医学的選択肢になるのは例外」▽感染症などその他の障害については「抗生物質などの投与で治癒に努めるべきだ」とした。一方、がんについては「摘出、部分切除など種々の選択肢がある」とした。
 そのうえで、摘出が認められた場合であっても移植が妥当だったかどうかを吟味。がんの患者からの移植は、「再発のリスクが高まる」と否定し、動脈瘤については「破裂の危険があるから摘出したのに、動脈瘤が治療されないまま移植されている」とし、「医学的な妥当性がない」と結論づけた。
 このほか、摘出や移植について説明がなされ書面による同意が得られているか▽どのような手続きで移植患者が選ばれたか▽倫理委員会などで検討がなされたか――などについても検証したうえで、「今回の一連の病気腎移植については、移植医療として多くの問題があったと言わざるをえない」と結論づけた。

病気腎移植、低い生存率 万波移植を学会調査 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植問題で、日本移植学会の専門医が30日、市立宇和島病院で万波医師が実施した移植25件を調べた結果、生存率や、移植した腎臓が機能しているかを示す生着率が通常の腎移植と比べて低かったと発表した。
 厚生労働省で記者会見した同学会幹事の高原史郎大阪大教授によると、25件は、腎がんやネフローゼ症候群の患者らから摘出された腎臓を93〜03年に移植手術したもの。うち9人はすでに亡くなっていた。
 5年後の生存率は71.7%で、生着率は35.4%。がんの11件でみると、5年後の生存率は46.7%、生着率は21.8%だった。
 同学会によると、全国の生体腎移植の5年生存率は90.0%、92年以降のこの移植での生着率は83.4%で、25件ではそれぞれ18.3ポイント、48ポイント低く、さらにがんでは43.3ポイント、61.6ポイント低かった。
 高原教授は「極めて低い成績だ。がんが持ち込まれた可能性も否定できない」と話している。

C型肝炎訴訟「政府・与党で解決」 官房副長官が原告に indexへ

 下村博文官房副長官は30日、官邸で薬害C型肝炎訴訟の原告らと面会した。原告らによると、下村氏は「政府と与党が一体となって肝炎問題の解決に取り組む」として、政府主導で肝炎対策に本格的に動き出す方針を示した。大阪、福岡、東京地裁で続けて国が一部敗訴したことを受け、「政治的解決」を望む原告らに応える形だ。一方で、国は東京地裁判決については不服として同日、東京高裁に控訴した。
 面会した原告らによると、下村氏は「安倍首相の声と思って聞いてほしい」としたうえで、「政府としてもみなさんと痛みをできるだけ共有したい。与党と一体となって解決に向けて取り組んでいく」と話したという。
 また下村氏は、安倍首相から「訴訟とは別に、解決できることがあれば努力する」などと指示されたといい、与党にも肝炎対策を勉強・研究するよう働きかけると明言した。
 これを受け、原告団は厚生労働省で記者会見した。薬害肝炎全国原告団代表の山口美智子さん(50)は「私たちは何度もノックしましたけれども、やっと、重くて固い扉が開きました」と声を詰まらせた。鈴木利広弁護団長も「政府が訴訟を含めて、解決に向け対応すると受け取った。ゼロ回答ということはないだろう」と評価した。
 23日の東京地裁判決後、原告団は解決に向けた協議を柳沢厚労相に求め、拒否された。このため28日から夜を徹し厚労省前で抗議の座り込みをしていたが、30日、座り込みを解除した。

奨学寄附金の指針作り、首相が指示 タミフル問題で indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と異常行動との関連を調べている厚生労働省研究班の主任研究者らが、輸入販売元の中外製薬(東京)から奨学寄付金を受けていた問題で、安倍首相は30日、柳沢厚労相に、奨学寄付金に関する指針作りを指示した。
 柳沢氏はこの日の閣議後会見で、安倍首相から「ルールを決めないといけない」と指示を受けたことを明らかにした。金額や期間により寄付を制限することを検討する。薬の副作用を調査する研究班が、販売会社から寄付をもらえば調査の公正さに疑念が起きるため、金額や期間により寄付を制限することを検討する。
 また柳沢氏は、薬害C型肝炎訴訟の原告らが全面解決を求めて続けている厚労省前の座り込みについて「会うことはできないが、健康を害することを心配している」と語った。

小児科医自殺、病院の賠償認めず 東京地裁の判断割れる indexへ

 立正佼成会付属佼成病院(東京都中野区)の小児科医だった中原利郎医師(当時44)が自殺したのは当直勤務などによる過労でうつ病になったからだとして、遺族が病院側に損害賠償を求めた訴訟の判決が29日、東京地裁であった。湯川浩昭裁判長は、中原さんの業務は「うつ病を発症させるほど重いものではなかった」と指摘。自殺との因果関係を否定し、原告側の請求を棄却した。
 中原さんの自殺をめぐっては、労働訴訟を担当する同地裁の別の裁判部が14日、「過労でうつ病となり、自殺した」と認定。労災を認めなかった新宿労基署長の決定を取り消していた。勤務実態をめぐり、二つの判決で正反対の評価となった。
 当直勤務について、労働訴訟の判決は「疲労を回復できるほどの深い睡眠を確保することは困難だった」として心身への危険性を認めた。ところが今回の損害賠償訴訟の判決は「急患はそれほど多くなく、仮眠する時間はあった」として、心理的負荷は強くなかったと判断した。
 中原さんは99年8月に自殺。直前半年間の当直は多い時で月8回、平均で月6回程度だった。
 遺族側は約2億5000万円の賠償を求めていた。

病気腎移植「残す道探るべき」 広島県医師会が見解 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らが実施した「病気腎」移植について、広島県医師会(碓井静照会長)は「脳死移植が少なく、生体移植に頼らざるをえない日本の移植事情を考えると第三の移植として残す道を探るべきだ」とする見解をまとめた。腎臓内科医の高杉敬久副会長の所感として近く会報に掲載する。日本医師会は病気腎移植を「厳に慎むべきだ」との考えを示しており、県医師会の独自見解は異例。
 広島県内では、万波氏のグループの医師らが呉共済病院(呉市)で病気腎移植6件を実施。同医師会は地元医師会として見解を示す必要があるとして検討していた。
 副会長の所感では、一連の病気腎移植について「移植ルールを無視し続けたこと、成績を世に問わなかったことは残念」と指摘。しかし、日本の移植事情を踏まえ、道を閉ざすべきでないとの考えを記している。

診療報酬不正受給で保険医療機関取り消し 大阪の病院 indexへ

 大阪社会保険事務局は29日、診療報酬を不正に請求したなどとして、大阪府茨木市の聖ハンナ病院(小島重信院長、70床)の保険医療機関の指定を同日付で取り消した。同病院は03年1月から04年8月にかけて、看護補助者(ヘルパー)の人数を水増しするなどして計2119万円の診療報酬を不正に受給していたという。
 保険医療機関の指定を取り消されると、保険診療が最長5年できなくなる。保険が使えず、医療費は全額が患者の自己負担となるため、事実上、廃院に追い込まれる。
 同事務局によると、同病院は、勤務実態のない架空の看護補助者を看護職員としたり、長期病気療養中の看護補助者を常勤者などと水増しして報告。看護職員の数で入院基本料が決まる制度を悪用して、最高ランクの入院基本料を受け取り、正規の診療報酬との差額分1601万円を不正に受給した。
 また、医療安全管理委員会など実際には開いていない会議の議事録を捏造(ねつぞう)することで、委員会未設置の場合に診療報酬が減算されるのを免れ、474万円を不正に受け取るなどしていた。
 同病院をめぐっては、大阪府が04年12月、「医師が日常的に不在の時間があった」などとして、改善指導。その後、大阪社会保険事務局が04年12月から昨年12月にかけて監査をしていた。
 同病院は「病院を廃業し、閉鎖せざるを得なくなった」との張り紙を報道陣向けに掲示している。

「死亡と因果関係」と県警が判断 射水病院の呼吸器外し indexへ

 富山県の射水市民病院で00年〜05年、入院中の末期患者7人が当時の外科部長らに人工呼吸器を外され死亡した問題で、死因などについて鑑定を依頼した専門医の意見をもとに、富山県警が、一部の患者について「人工呼吸器の取り外しと死亡には因果関係がある」と判断していることがわかった。
 県警は殺人容疑で調べを進め、取り外しの経緯などに関する捜査を事実上終えた。ただ、延命治療中止に関する明確な国の規定や指針はなく、県警と警察庁との協議では「今は捜査が医療現場に立ち入るべきではないのではないか」との意見も出ており、慎重に立件の可否を検討している。
 この問題は05年10月、伊藤雅之・元外科部長(51)から人工呼吸器を外すように指示を受けた看護師が病院側に相談したことがきっかけで判明。病院の調査で00年〜05年に、50〜90歳代の男性4人、女性3人の末期患者が人工呼吸器を取り外された後、死亡したことがわかった。病院側は昨年3月、記者会見して公表した。
 県警は病院から届け出を受けた05年10月以降、伊藤医師や看護師、遺族らから事情聴取。病院から任意提出を受けたカルテなどをもとに県内外の専門医2人に鑑定を依頼、別の専門医の意見も聞き、取り外した行為が患者の死につながったかを検討してきた。
 伊藤医師は朝日新聞社の取材に、1人については別の男性医師が主治医だったとして関与を否定。残り6人はいずれも回復の見込みのない末期患者と判断し、延命治療中止について家族の同意を得ており、うち3人は本人や家族との会話から、本人の意思を確認・推定したなどと説明している。
 一方、この問題を契機に、厚生労働省による延命治療中止の指針作りが進み、日本救急医学会が具体的な手順を定めたガイドライン案をまとめるなど、終末期医療のあり方のルール作りが広がっている。

ウイルス検出しない児童、タミフル服用後に異常行動 indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」を飲み、家を飛び出そうとするなどの異常行動を起こして、東京都立八王子小児病院に運ばれた9歳の女児が、病院の検査でインフルエンザウイルスが検出されていなかったことが28日わかった。診察した久保田雅也医師は「服用が異常行動につながることを示唆する症例」としている。
 医師によると、女児は昨年3月、39度の発熱があったため、開業医にタミフルや解熱剤を処方された。親からの報告によると、女児は午後8時ごろタミフルと解熱剤を飲んで就寝。午後10時ごろ目覚めると、叫んで家の外に飛び出そうとした。家族が体を押さえ、5分ほど興奮状態は続いた。
 1時間後、救急車で小児病院に運ばれた際の女児の体温は36.8度で通常の精神状態だった。インフルエンザの迅速診断キットで検査したところ陰性で、のどの粘液と血液も採取し、別の機関に検査を依頼したがウイルスは検出されなかったという。久保田医師は「熱が下がるまでの時間が短いことから、インフルエンザではなく、他のウイルス性疾患だった可能性が高い。異常行動はタミフルの影響ではないだろうか」と話している。

医療法人が賃貸住宅、老人ホームの経営が可能に 厚労省 indexへ

 高齢者が長期入院している「療養病床」を今後5年間で現在の6割(23万床)を削減する方針を掲げている厚生労働省は28日、医療法人が病床を他の施設に転換しやすくする支援策を明らかにした。医療法人に高齢者専用賃貸住宅や有料老人ホームの経営を認めることや、病院に老人保健施設を併設する場合の設置基準を緩和することが柱。4月から順次施行する。
 自宅などに戻れずに「社会的入院」を余儀なくされているお年寄りが入る療養病床を削減した場合、行き場を失うケースの受け皿になるよう、民間企業による有料老人ホームの整備が期待されている。厚労省は高齢者の健康に精通した医療法人に経営を認めることで普及が進むと判断した。医療法人が高齢者専用賃貸住宅を経営する場合は、入居者への生活相談や見守りサービスを提供することが条件となる。

薬害訴訟の原告100人が、抗議の座り込み 厚労省前 indexへ

 薬害C型肝炎訴訟で原告側が一部勝訴した東京地裁判決を受け、原告ら約100人は28日午前、柳沢厚生労働相に対し「全面解決」に向けた協議に応じることなどを求めて、東京・霞が関の厚労省前で座り込みを始めた。大阪、福岡地裁に続いて国が「3連敗」したにもかかわらず、柳沢厚労相が原告団が求めていた面談を拒否したため。抗議の座り込みは、厚労省が原告側の要求を受け入れるまで連日続けるという。
 全国原告団代表の山口美智子さん(50)は座り込みを前に、「訴訟の勝ち負けよりも面談拒否の方がショックが大きい。体を張って抗議しなければ何も解決しない」と決意を語った。
 また、同様に国が東京地裁で「5連敗」となった原爆症認定訴訟の原告も、控訴期限の4月5日に向けて、2日から72時間の座り込みなどで抗議する予定だ。

都内HIV感染、過去最多の453人 06年 indexへ

 東京都は27日、06年に都内で検査を受け、新たにエイズウイルス(HIV)への感染や、エイズ発症が明らかになった人の数が過去最高の453人に達したと発表した。前年より36人増。全体の約9割に当たる402人が日本人男性だった。
 都によると、推定される感染経路は、同性間の性的接触が326人で約7割を占めた。異性間の性的接触は75人で前年より減った。

ワクチン優先投与、30職種 新インフルで厚労省指針 indexへ

 新型インフルエンザ対策で厚生労働省の専門家会議は26日、発生から大流行まで想定した対策ガイドライン(指針)をまとめた。数に限りがあるワクチンを優先投与する対象者として医師や警察官のほか、自衛隊員や国会議員、危機管理に携わる公務員など約30職種を具体的に例示したほか、不安を抱える住民らの相談を電話で受ける「発熱相談センター」の設置を盛り込んだ。
 発生初期の対応では、抗インフルエンザ薬「タミフル」の家族や周辺住民への予防投与を柱に据えた。タミフルについては、服用と異常行動の関連性が問題となり、厚労省が10代への使用を制限するなどしているが、同会議は「新型は致死率が高いことも予想される」と方針を変更しないと確認。一方で、早急に因果関係を解明するよう厚労省に求めた。
 また、ウイルスの「地域封じ込め」は、日本では地理的条件や人口密度などから実施は困難との考えから、選択肢の一つにとどめた。
 指針は、厚労省が原案を公表して国民に意見を募集。一般市民や医師会、経団連などから寄せられた約3000件の意見を反映してまとめた。
 ワクチンは、医師や看護師、医薬品製造販売業者など「医療従事者」と、社会生活に必要な「社会機能維持者」に優先的に投与する。
 具体的には(1)治安維持(消防士や警察官、海上保安官など)(2)ライフライン関係(電気、水道、ガス、石油、食料販売業など)(3)国や自治体の危機管理に携わる(国会議員、地方議員、自治体首長、国家・地方公務員など)(4)生活維持のための情報提供に携わる(報道機関、通信事業など)(5)輸送(鉄道、旅客・運送、航空運輸、水運業など)。各職種の人数などは今後、都道府県が調査した結果などをもとに詰めていく。
 発熱相談センターは、不安に駆られた住民が医療機関に殺到し、感染が広がるのを防ぐため、都道府県が保健所などに設置する。感染が疑わしい場合、病院や公共施設に設置され、軽症と重症とを見極める「発熱外来」で受診させる。
 また、各家庭には2週間分の備蓄を要請。食糧や医薬品、日用品など約40品目を例示した。
 厚労省は3月中に指針を都道府県などに通知するほか、一般向けにもホームページで紹介する。

万波移植の臓器提出6例「すべてに疑問」 厚労省調査班 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植問題で、岡山、広島両県の5病院で弟の廉介医師(61)が執刀した6件の摘出手術を検証していた厚生労働省の調査班(班長=相川厚・東邦大教授)は26日、厚労省で会見し、「すべてにおいて適応がない、または疑問がある」とする調査報告を発表した。
 臓器を摘出したのは、岡山の川崎医大川崎、岡山協立、備前市立吉永、北川の4病院と、広島の三原赤十字病院。
 2例の尿管がんのうち、1例は摘出自体は必要だったが、がんの治療ではなく移植を優先した手術法で問題があったと指摘。もう1例の尿管がんは肺に転移があり、患者に負担をかけるだけの手術だったと判断した。また、腎動脈瘤(りゅう)と血管筋脂肪腫の2例では、摘出の際に血管を移植しやすいように長めに切除するなど、患者に危険を与えたとした。相川班長は「いずれの例も移植ありきで手術が進められていたと言わざるを得ない」と話した。

40〜74歳対象に「特定健診」 厚労省 indexへ

 40歳から74歳の全国民を対象に、08年4月から実施される特定健康診査(特定健診)に関する厚生労働省の最終案がわかった。健診結果によってメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)など生活習慣病のリスクが高いグループとその予備群を抽出。リスクの程度に応じ3段階に分けて保健師や管理栄養士が指導し、脳卒中や糖尿病の予防を目指す。
 26日の特定健診に関する検討会で公表する。特定健診は生活習慣病予防と医療費抑制をめざし、06年の医療制度改革に盛り込まれた。健康保険組合や国民健康保険などすべての保険者に健診実施を義務づけ、健診から漏れがちだった自営業者や専業主婦も対象とする。
 健診では、男性で腹囲85センチ以上、女性で90センチ以上の人をメタボリック症候群の候補とする。さらに血糖値、血中脂質、血圧などのうち(1)二つ以上で問題ありとされた人はメタボリック症候群=「積極的支援レベル」(2)一つで問題ありの人は予備群=「動機づけ支援レベル」(3)問題なしの人は「情報提供レベル」に分類する。腹囲が基準未満でも、体重を身長(メートル)の2乗で割ったBMI(体格指数)が25以上なら生活習慣病のハイリスク群とされ、(1)〜(3)に振り分けられる。
 (1)の人には、保健師や管理栄養士が食事のとり方や運動などの計画を作成。3カ月間は面接や電話、メールで実行状況を確認し、励ます。半年後に身体や生活習慣が改善されたかどうかを確認する。(2)の人には計画作成と半年後の評価のみとし、(3)は文書で注意を促すにとどめる。
 特定健診と指導の費用は原則として保険者が負担するが、保険者が本人に請求することもできる。厚労省は40〜74歳で約2000万人とされるメタボリック症候群と予備群を、12年度末までに10%、15年度末までに25%減らす目標を立てている。

タミフル「精神・神経症状」280件 厚労省に報告 indexへ

 厚生労働省が服用と異常行動との関連性を調べているインフルエンザ治療薬「タミフル」について、01年2月の発売以降に報告があった約1800件の副作用のうち、異常行動につながる心配のある「精神・神経症状」(意識障害や異常行動、幻覚、妄想など)が少なくとも約280件あったことが24日、朝日新聞の調べでわかった。10歳未満の子どもの例も20件以上報告されていた。
 医薬品の副作用報告は、医師の判断に基づき医療機関から製薬会社に寄せられ、その後、会社から国に届く。同省は年に3、4回開く、薬事・食品衛生審議会の医薬品等安全対策部会で、最新の副作用事例をまとめた資料を配布し、死亡例など重大とみられる事例について分析をしている。
 最近10回の部会にはかられた副作用報告(03年7月〜06年12月分)を集計したところ、「精神・神経症状」にあたる副作用が約280件あった。内訳は、意識レベルの低下や失神などの「意識障害」が63件、転落などの「異常行動」が46件、幻覚などを起こす「せんもう」が31件など。「自殺未遂」2件や「落ち着きのなさ」7件なども含まれていた。
 このほか、突然死6件、骨折4件、脳挫傷1件などがあった。骨折や脳挫傷は、転落や転倒などの異常行動が原因だった可能性もある。
 同省がこれまで公表している飛び降り・転落などの異常行動は10代の16件と、成人の7件の計23件にとどまっている。
 同省は04年5月、10代の少女が服用後に窓から飛び降りようとし、家族が防ぐという事例などがあったとして、タミフルの添付文書の重大な副作用項目に「精神・神経症状」を加えるよう、輸入販売元の中外製薬に改訂を指示していた。
 ただ、このケースの後も副作用について、死亡例以外は深く掘り下げていなかった。厚労省は「医薬品全体の副作用報告は1日平均200件もあるため、死亡例を中心に分析してきた。今回の問題を受けて、約1800件のすべてを再調査する」としている。

分娩取りやめ、105病院 本社全国調査 indexへ

 慢性的な産科医不足の中、この1年間にお産の取り扱いを休止したり、休止する方針を決めたりした病院が全国で105カ所に上ることが、朝日新聞の全国調査でわかった。分娩(ぶんべん)を扱っている病院の約8%にあたり、過酷な勤務状況などから、勤務医の産科離れがさらに進んでいる実態が鮮明になった。深刻な事態を受けて、医学生・研修医の優遇策や離職した女性医師の復帰支援を打ち出す自治体も急増している。
 全都道府県の担当者に分娩の休止病院や医師確保策を尋ねるアンケートを送付。回答を基に電話取材して集計した。
 06年4月以降、お産の取り扱いをやめたのは77病院で、3月末で休止するのは22病院。ほかに6病院が新年度中に分娩をやめる。05年12月時点でお産を扱っていた1273病院(日本産科婦人科学会調べ)の8.2%がさらに減ることになる。
 内訳は自治体立が45カ所で最も多く、民間27、日本赤十字、労災など公的病院25、国立病院機構7、大学付属1の順。都道府県別では北海道の9カ所が最多で、神奈川・兵庫の7カ所、千葉の6カ所、福島・新潟・山梨の5カ所と続く。
 主な休止理由としては、人手不足に陥った大学の医局による引き揚げ▽開業や定年で退職した医師の後任が不在▽医師1人で分娩を扱うリスクの回避などが目立った。
 「産科危機」が広がる中、厚生労働省は、医師の負担軽減のため、近隣病院の産科医を1カ所に集める「集約化」計画を年度内に策定するよう都道府県に求めている。だが、医師の退職が相次ぐほか、産科がなくなる地域の反発もあり、大半の自治体で具体的な計画づくりが進んでいない。「必要なし」「不可能」と結論づけた県もある。
 その一方で、当面の医師確保策に知恵を絞る自治体が増加。15府県が新年度予算で、医学生や研修医に学費などを貸しつけ、地元で一定期間勤務すれば返済を免除する修学資金貸付事業や奨学金制度を新設・拡充しており、同様の制度は計33府県に広がる。うち19府県が産科や小児科など医師不足に悩む診療科に制度の対象を限定したり、金額を上乗せしたりする。
 産科や小児科に多いとされる女性医師に狙いを絞り、子育てなどで離職した医師向けの職場復帰研修を開催したり、短時間労働を促進する制度を導入した病院に補助金を出したりする施策も19府県で新年度から開始され、計26府県に増える。助産師が病院で正常産を扱う「院内助産院」のモデル事業や、妊産婦の相談に乗る助産師外来の開設など、助産師の活用策についても、9県が4月から始める見通しだ。
 さらに、近隣に出産できる病院がなくなった妊婦や家族向けの待機宿泊施設の運営事業(青森県)▽産科医の負担軽減のために事務を補助する「医療クラーク」の雇用助成事業(静岡県)▽医師不足が深刻な県立病院の勤務医の手当増額(三重県)▽2年以上公立病院に勤めた医師の海外研修費負担(兵庫県)、などの独自策を講じる例も増えている。

救急業務の「トリアージ」検討会報告書まとまる 消防庁 indexへ

 救急車の現場到着時間が遅くなっていることへの対策を検討してきた総務省消防庁は23日、患者の緊急度や重症度に応じて優先順位をつける「トリアージ制度」の導入に向けて課題を整理し、報告書をまとめた。昨年4市でモデル的に行ったトリアージの結果も公表。問題点が山積することから新年度も引き続き、作業部会で検討する。
 この日開かれた「救急業務のトリアージに関する検討会」の最終報告書では、(1)実際には重症なのに、119番通報では「軽い」と判断され搬送や治療が遅れないよう、対策を取る(2)緊急度に応じ、救急隊の種類を区別する(3)通報を受ける指令員の訓練をする――など今後の課題をまとめた。
 また、昨年11月に札幌、仙台、横浜、京都の4市でモデル的に実施したトリアージの結果を公表。通報では「重症でない」と判断されたが、実際には重症だった例は31件あった。通報時の情報として「立てない」「まひ」「75歳以上」という人が多く、こうした点を重視すれば、31件中21件は「重症」に分類されるという。
 逆に「重症」と判断された5371件中、実際に「重症」だったのは335件。残りはそれよりも軽く、電話では重めに判断されていた。

寄付金受けた横田教授ら、タミフル研究班から除外へ indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と異常行動との関連性を調べている厚生労働省研究班の主任研究者、横田俊平・横浜市立大教授らが、タミフルの輸入販売元の中外製薬から奨学寄付金を受けていた問題で、柳沢厚労相は23日の衆院厚労委員会で「寄付をもらっている先生は除外し、いささかも公正性が疑われない体制を構築して見直しにあたらせたい」と述べ、横田教授らを研究班から外す考えを示した。
 社民党の阿部知子氏が「中外製薬から寄付を受けている方が、過去の異常行動を見直すのでは信頼できない」と指摘したのに答えた。
 厚労省医薬食品局は寄付金の受け取りについて調べており「確認されれば外れてもらうことになるだろう」と説明。同様の寄付金を受けている他の研究班については「どういう調査内容で寄付額はいくらかなど、ケース・バイ・ケースで判断する」と話した。
 横田教授は「厚労省から話を伺っていないので、現段階でのコメントは控えさせていただきます」との談話を出した。
 横田教授は今月13日、同大の小児科が01年度から6年間で計1000万円の奨学寄付金を同社から受けていたと発表したうえで「寄付金が研究に影響を与えたことはない」と述べた。研究班員の森島恒雄・岡山大教授の小児科も同社から計600万円の寄付を受けており、「中立の立場を貫いているので利益誘導などはない」とのコメントを出していた。
 横田教授の研究班は05年度、小児患者約2800人を調査し、服用の有無で異常行動の発生率を比べたが、統計学的な差はなかった。ただ異常行動が目立つ10代の症例が少なかったため、06年度は約1万人を調査して夏ごろ結果を出す予定。

民主、タミフル問題で厚労省の対応の遅れを追及の構え indexへ

 民主党など野党は、厚生労働省がインフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と異常行動の因果関係を見直すことについて厚労省の対応の遅れを追及する構えだ。タミフルの輸入販売元の中外製薬に厚労省の課長が天下っていた点についても批判を強めている。
 民主党の鳩山由紀夫幹事長は23日の記者会見で「しっかりとした対策が打てなかった。業界と厚労省との間の甘い関係が対応を遅らせ、人の命まで奪ってしまったとすれば、この責任は逃れられない」と批判した。
 同党の森裕子氏は同日の参院本会議で元厚労省職員の天下りについて「関連企業への天下りは厳に慎むべきだ」と指摘。柳沢厚労相は「現行法では特段違法ではない。この人物の関係をうんぬんすることは現段階では適当ではない」とする一方、「疑われることであれば、厳正に対処する」と答えた。
 社民党の福島党首は同日の会見で「タミフルに伴う異常行動は薬害だ。もっと的確に対応していれば、後の死亡例を防げた」。共産党の市田忠義書記局長も「厚労省の役人がタミフルの輸入販売元に就職している関係にもメスを入れるべきだ」と語った。

無資格看護師に内診 愛知の産婦人科診療所に行政指導 indexへ

 愛知県豊橋市の産婦人科の診療所が分娩(ぶんべん)の時に子宮口の開き具合などを指で確認する内診行為を資格のない看護師らにさせた(無資格内診)として起訴猶予処分となった事件を受け、同市が実施した緊急調査で、市内の別の1診療所も過去に無資格内診をしていたことが分かった。同市保健所は、厚生労働省通知に基づき医師か助産師のみが内診行為をすることを徹底するようこの診療所に対し行政指導した。
 緊急立ち入り調査は同市保健所が昨年12月末から2月1日まで市内の8診療所に対して実施。市内の産婦人科の診療所院長が1月中旬に、昨年まで助産師の不在時、看護師に内診行為をさせていたと保健所に対して申し出た。

タミフルと「突然死」、因果関係調査へ 柳沢厚労相 indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と異常行動の問題について、柳沢厚生労働相は23日の衆議院厚生労働委員会で、服用後の「突然死」についても因果関係を再調査する方針を示した。同省はこれまで、転落死や突然死などの死亡例はすべて調べてきたが、因果関係は「否定的」などと見解を示していた。
 服用後の「突然死」は、患者の家族らが同省に調査を要望していた。
 また、柳沢氏は同日の閣議後会見で、服用と異常行動との因果関係を見直すことについて「なすべきことを手順を踏んでやってきた」と話し、対応に遅れはなかったとの認識を示した。

05年の結核死者、世界で160万人 WHO報告 indexへ

 世界保健機関(WHO)は22日、結核に関する年次報告書を発表した。報告書は、2005年の結核による死者が約160万人で、1日当たり4400人に上ったと推計した。新規の結核発生件数は推定で約880万件だった。
 報告書は、「結核の罹患(りかん)率と致死率は過去数年間に世界的に低下してきた」と分析し、これまで進めてきた対策が一定の成果を上げつつあると評価した。

エーザイ、米バイオベンチャーを買収へ 約390億円で indexへ

 エーザイは22日、米バイオベンチャーのモルフォテック(ペンシルベニア州)を約390億円で買収する、と発表した。バイオ医薬品の研究開発を強化する狙い。世界の製薬業界では近年、高い治療効果が期待できるバイオ医薬品の研究開発が活発化している。
 モルフォテックは、たんぱく質でつくられ免疫の働きを利用する抗体医薬の独自技術と、抗がん剤などの新薬候補を保有する。エーザイは抗体医薬事業に参入するとともに、抗がん剤の新薬候補の充実をめざす。

タミフルと異常行動の関係、「否定的」を撤回 厚労省 indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」を服用した患者に異常行動が相次いでいる問題で、厚生労働省は22日、服用との因果関係に否定的だった、これまでの見解を撤回した。死亡例以外にも多数、飛び降りたり転落したりする異常行動が明らかになったうえ、こうしたケースの内容を調べず、判断材料にもしていなかったことを重視した。今後、すべての転落事例などを調査して、新たに判断し直すという。
 見解の撤回は、辻哲夫事務次官が記者会見で述べた。同省は近く、タミフルの副作用を評価するため、これまで死亡例しか諮っていなかった薬事・食品衛生審議会で、01年2月の発売以降に報告されている約1800件の副作用報告を議論してもらう。因果関係を「否定的」としていた死亡例も再評価する。
 タミフル服用と異常行動の関連性について、同省は10代への使用を原則制限する方針を示した21日の記者会見の際も、「否定的」との見解は崩さなかった。死亡例の調査と、同省の研究班が昨年度に約2800人を対象に行った統計結果を根拠に判断してきた。
 同日の会見で公表した2件の飛び降り事故を受けて、初めて調査したところ、死亡例以外にも、飛び降り・転落の事故が多数あることを知ったという。服用との因果関係について、辻次官は「今後、検討する中で、判断が変わる可能性がある」と述べた。詳しい分析をしなかったことには、医薬食品局の黒川達夫審議官は「副作用の情報は膨大なので、死亡例に重点を置いて調査していた」と説明している。

タミフル服用後の飛び降り・転落の報告は15件 厚労省 indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」の使用制限問題で、10代の患者が服用後、マンションなどから飛び降りたり転落したりする異常行動が04年度以降、厚生労働省に計15件報告されていたことが21日わかった。9件については今回、初めて明らかにした。同省はこれまで死亡例の4件だけを詳しく調査してきたが、今後、残る11件も服用との関連を詳しく調べる。
 同省は2月28日、愛知県蒲郡市、仙台市で転落死が相次いだことを受け、インフルエンザを発症した未成年者から、少なくとも2日間、目を離さないことなどの注意喚起をしている。同省は飛び降り・転落事故について、死亡例と、使用制限のきっかけになった2件の計6件しか公表していなかったが、「注意喚起前の事故だったため」と説明している。死亡例以外の発生場所も発表していない。15件の内訳は14件が男性、1件が女性だった。
 タミフル服用後の異常行動では04年2月、17歳の男性が道路に飛び出し、トラックにひかれ亡くなった事故もある。
 一方、厚労省は、服用と異常行動の因果関係については否定的だ。同省の研究班(主任研究者、横田俊平・横浜市立大教授)は昨冬、患者約2800人を対象に調査を実施。患者の9割が服用していたが、異常行動の発生頻度は、飲んでいなかった患者が10.6%、服用者が11.9%で、統計学的な差はなかったことを根拠にしている。ただ、患者の8割が10歳未満だったこともあり、研究班はさらに1万人規模の調査を進めている。
 タミフルは01年2月から日本で販売され、中外製薬(本社・東京)が、スイスの製薬会社ロシュから輸入している。

製造元が、タミフルと異常行動の因果関係を否定する声明 indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」の製造元である製薬大手ロシュ(本社スイス・バーゼル)は20日、「タミフル服用と神経精神症状との間の立証された因果関係はない」とする声明を発表した。
 声明は、臨床研究の結果から小児インフルエンザでタミフル治療をした患者と治療を施さなかった患者の異常行動発生率に大きな差はないと主張。米国の健康保険記録ではタミフルを服用した患者の異常行動の発生率の方が低かったとしている。
 日本の異常行動発生率が米国に比べて高いことは認めているが、「タミフルは世界4500万人の患者に利用され、症状緩和の効果が証明されている」と強調している。

不眠の悩み解消か 睡眠改善薬、新商品が相次ぎ登場 indexへ

 ストレスなどによる不眠症状を緩和する睡眠改善薬市場に今春、新商品が相次いで登場する。5人に1人が不眠の悩みを抱えるといわれ、とくに春先は入社や異動などでストレスがたまりがちな時期。大衆薬市場が伸び悩むなか、各社はヒットした先行品「ドリエル」(エスエス製薬)に続こうと力を入れている。
 処方箋(せん)なしで購入できる睡眠改善薬は海外の実績は長いが、国内ではエスエス製薬が03年4月に発売した「ドリエル」が初めて。新規の薬剤として、06年3月末まで3年間の市販後調査が義務づけられ、その間、他社は参入できなかった。
 ドリエルの売り上げは初年度から好調で、05年度は27億5200万円。今年3月にソフトカプセルタイプの「ドリエルEX」を発売した。初年度の販売目標は10億円だ。
 新規参入では、グラクソ・スミスクラインが3月、「ナイトール」を日本市場に投入。世界15カ国以上で承認され、英国の睡眠改善薬市場でのシェアは8割以上。「不眠症状の発生率は女性が男性より若干高い」(三隅能子シニアブランドマネージャー)とし、ターゲットを25〜34歳の仕事をもつ女性に設定。CMには、女優の川原亜矢子さんをモデルに起用する。
 さらに、大正製薬は2月から一部で先行販売中の「neoday」を3月下旬に発売予定。資生堂子会社の資生堂薬品も4月参入し、プライベートブランド(PB)商品も登場するとみられる。
 参入ラッシュは、大衆薬市場の縮小傾向が背景にある。大衆薬の市場規模(店頭ベース)は01年の約1兆2500億円に対し、05年は約1兆1600億円とみられる。

タミフル服用後の異常行動は成人にも7件報告、3件死亡 indexへ

 厚生労働省は21日、タミフル服用後に異常行動が起きたとみられるケースが成人にも7件の異常行動の報告があると明らかにした。26〜74歳で、うち3件は死亡しているが、自殺とみられるケースもある。06年2月に74歳が転落し足の骨を折った例や、07年2月に32歳男性が2階から飛び降りて足を骨折した例がある。

救急対応のセンターの設置を提言 日本産科婦人科学会 indexへ

 日本産科婦人科学会は21日、医師不足対策と安全な「お産」についての最終報告書案をまとめた。24時間救急対応できる「地域産婦人科センター」の設置を提言。相次ぐ医療訴訟が産婦人科医不足を招いているとして、医療紛争解決制度が早期に必要だとした。
 同学会の医療提供体制検討委員会が05年から、医師不足対策について議論してきた結論で、4月の学会総会で提出する。今後、国や自治体に要望する。
 報告案は、人口30万〜100万人程度を一つの産科医療圏と設定。各医療圏ごとに、ハイリスク分娩(ぶんべん)など24時間対応できる「地域産婦人科センター」を設置するほか、圏内の診療所や助産所、中小病院などが連携し、30分以内に緊急な帝王切開に対応できる体制も整備するとした。
 医療事故の事実関係などを明らかにする「原因究明機構」の設置や、医師の責任にかかわらず患者に補償する「無過失救済制度」の整備も求めている。

お産ガイドライン作成へ 産婦人科学会 訴訟対策も視野 indexへ

 日本産科婦人科学会は、「お産」に関する診療のガイドラインを08年までに作ることを決めた。標準的な治療法の普及が目的だが、お産をめぐる医療事故が相次ぐ中で「訴訟対策」もにらんだ内容とする。開業医が中心の日本産婦人科医会と共同で、現場の意見も聞きながら約1年かけてまとめる。
 21日に開かれる同学会の医療提供体制検討委員会で発表する。原案は同学会と産婦人科医会の会員計24人からなる委員会が作成中。「妊娠初期に必要な検査」「帝王切開経験者の2度目の出産法」など、選択肢が複数あるような64項目について、Q&A方式で解説しつつ推奨度を示す。
 07年度中に原案を学会のホームページに掲載し、3〜6カ月間の試行後、08年に正式版を発行する予定だ。
 作成の目的の一つは訴訟対策。最高裁のまとめでは、04年度の産婦人科医1千人あたりの医療事故訴訟件数は11.8件。外科の9.8件、内科の3.7件などと比べ圧倒的に多く、これが産婦人科医不足に拍車をかけていると指摘されている。
 学会によると、産婦人科で医療事故が起きると、警察からガイドラインの有無についての問い合わせを受けることが多かったという。昨年2月に福島県立大野病院の帝王切開手術ミスで医師が逮捕されて以降は、会員の間でもガイドラインを求める声が高まっていた。
 学会は「裁判に使われる場合を想定し、ガイドラインの文言は一語一句吟味する。ガイドライン通りの治療を行っていれば、訴えられる医師も減るはずだ」としている。

事故相次ぎ、一転「禁止」 現場混乱も タミフル制限 indexへ

 インフルエンザ治療薬としてもてはやされている「タミフル」が、10代の患者への使用を制限されることになった。薬と異常行動との因果関係に否定的な姿勢をとっていた厚生労働省が、服用後の転落事故が新たに2件報告されたことを受け、21日未明、記者会見で発表した。インフルエンザの流行さなかの緊急措置に、医療現場や家庭での混乱が予想される。
 厚労省と中外製薬による記者会見は、厚労省の記者クラブで21日午前0時10分ごろ始まった。
 当初は午前0時開始予定で約30人の記者が続々と集まったが、緊急の会見で準備に手間取ったためか、開始時間が遅れ、初めは資料だけが配られた。厚労省からは医薬担当の黒川達夫審議官ら3人、中外製薬からも上野幹夫副社長ら2人が同席した。
 まず黒川審議官が緊急安全性情報の内容などを険しい表情で説明。記者から「これまでの注意喚起が足りなかったから、また起きたのではないか」などの質問が相次ぐと、黒川審議官はタミフルの服用と異常行動との因果関係は「否定的」との考えを改めて示したうえで、「10代以上は、親が保護することが難しい場合もあるので、改めて注意喚起した」などと話した。
 神奈川県のけいゆう病院の菅谷憲夫小児科部長の話 本来なら10代だけがタミフルを使わないというのはおかしい。個々の転落事故の事情は不明だが、やむを得ずということだろう。インフルエンザにかかった10代の場合、重症患者や基礎疾患のある患者には使う必要が出てくる場合があるかもしれない。ただ心配なら、別のインフルエンザ治療薬のリレンザを使う手もある。

治療薬「タミフル」、10代の服用制限 厚労省指示 indexへ

 厚生労働省は21日未明、インフルエンザ治療薬「タミフル」服用後、自宅の2階から転落する事故が新たに2件発生したとして、輸入販売元の「中外製薬」(本社・東京)に対し、添付文書の警告欄に「10歳以上の未成年の患者に、原則として使用を差し控えること」を書き加え、医療関係者に緊急安全性情報を出して注意喚起するよう指示したと発表した。事実上、10歳代の使用をほぼ制限する措置となる。
 厚労省は21日午前零時から、同省で緊急の記者会見を開いた。中外製薬幹部も同席した。
 説明によると、2件の異常行動は20日、同省に報告された。12歳の男児が2月7日、37・8度の発熱があり、医療機関でインフルエンザB型と診断された。昼と夜にタミフルを飲み、8日午前2時ごろ、素足で外に出て、近くの駐車場へ走り出した。父親が家に入れたが、2階の窓から飛び降り、右ひざを骨折した。入院後、独り言や、突然笑い出すなどの症状がみられたという。
 別の12歳の男児は3月18日に発熱。19日、インフルエンザB型と診断され、2度タミフルを服用、同午後11時半ごろ、家で就寝したが、約30分後に突然2階に駆け上がり、母親に連れ戻された。その後もう一度2階に上がり、家族が追いかけたが間に合わず、ベランダから飛び降りた。右足のかかとを骨折した。
 いずれも、命には別条がないものの、本人に飛び降りた時のはっきりした記憶はないという。
 同省は使用制限のほかに、自宅にいる際には「少なくとも2日間、保護者は未成年者が1人にならない配慮することについて患者・家族に説明する」とも加える。
 医師ら向けの緊急安全性情報の配布を厚労省が指示するのは04年3月以来。中外製薬の上野幹夫副社長は「指導にもとづき速やかに実行したい。今週中にはタミフルの納入先に周知徹底したい」と話した。

補聴器業者から収賄容疑 横浜市立病院医師を書類送検 indexへ

 補聴器の販売業者から紹介料を受け取っていたとして、神奈川県警は19日、横浜市立市民病院の耳鼻咽喉(じびいんこう)科診療担当部長の医師(48)を収賄容疑で、横浜市西区の補聴器販売会社の社長(77)と社員1人を贈賄容疑で、それぞれ横浜地検に書類送検した。
 捜査2課の調べでは、部長は05年3月〜06年11月、病院に出入りしていた販売会社の社長らから、患者が補聴器を購入した見返りの紹介料として、4回にわたって現金計約40万円を受け取った疑い。科の懇談会の費用や備品購入費に充てていたという。

中堅女性産婦人科医、半数がお産の現場去る 学会調査 indexへ

 キャリア10年超の中堅の女性産婦人科医の半数がお産の現場から離れている――。産婦人科医不足が問題になる中、日本産科婦人科学会の調査で19日、女性医師の現場離れが進んでいる実態が明らかになった。特に子どもがいる医師にその傾向が強い。若い産婦人科医は半分以上が女性。長時間労働など働く環境が改善されないと、第一線で働き続けることは難しく、お産の担い手不足がさらに深刻化することが予想される。
 調査は昨年12月〜今年2月、全国の大学病院の産婦人科105施設を対象に実施、87施設から回答があった。
 各施設に所属する医師の勤務先が、お産を扱う施設か、不妊治療などその他の婦人科診療のみを行う施設かを、経験年数ごとにみると、女性の場合、5年目までは82%がお産を扱う施設だったが、6〜10年は61%、11〜15年だと52%に下がった。男性はいずれの経験年数でも80%以上。
 子どもの有無でみると、子どもがいない女性医師がお産を扱っている割合は4分の3だが、子どもがいると半数を割り、子育てがお産の現場から離れる要因となっていることがわかった。
 産婦人科医は若い世代ほど女性の割合が高く、同学会の会員のうち、30歳未満で7割、30〜39歳も5割を占める。調査を担当した東京都立府中病院の桑江千鶴子医師は「この状況が続けば産婦人科医療は持たなくなる。子育ての環境整備、働き方の見直しなどの対策を、社会全体で考えていかなければならない」と指摘している。

タミフル突然死「副作用認定を」 遺族ら厚労省に訴え indexへ

 タミフル服用後に亡くなった子の親らでつくる「薬害タミフル脳症被害者の会」などが19日、厚生労働省を訪ね、問題化している異常行動だけでなく、服用後の「突然死」もタミフルの副作用と認めるよう訴えた。
 会によると05年2月、栃木県足利市の2歳男児はタミフル服用後にわめき暴れて昼寝を約3時間したら冷たくなっており、亡くなった。同月、京都市の自営業男性(39)は服用の約3時間後眠ったまま死亡した。
 インフルエンザ患者については、タミフル服用の有無にかかわらずインフルエンザ脳症の初期症状などで異常行動がみられることや、脳症の悪化で亡くなる例も報告されている。だが一緒に会見したNPO法人医薬ビジランスセンターの浜六郎理事長は「タミフルには脳の働きを抑制する働きがあり、冷静な判断ができなくなる場合とじっとしてしまう場合がある」として、この2例はタミフルの副作用と指摘。浜氏の調査では、タミフル服用後の「突然死」は38人にのぼるという。
 遺族は、独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」の救済制度に基づき、副作用と認めるよう申し立てたがいずれも認められなかった。この日は厚労省で再審査の意見陳述があった。

アラーム鳴らず、心室細動見逃す 名大病院で医療事故 indexへ

 名古屋大学付属病院(井口昭久院長)は19日、心臓病の手術を受けた70代の入院患者が、心臓がけいれんする重い不整脈「心室細動」を起こしたのに監視モニターのアラーム音が鳴らずに発見が遅れ、昏睡(こんすい)状態に陥る医療事故があったと発表した。同病院は外部委員でつくる調査委員会を立ち上げ、原因究明と再発防止策を検討するという。
 同病院によると、患者は心臓弁膜症が悪化して別の病院から名大病院に搬送され2月下旬、弁を置換する手術を受けた。集中治療室で治療を受けていた3月初旬、心室細動を起こしたが、患者の脈や血圧、心電図などを監視するモニターのアラーム音が鳴らず、約8分間にわたって異常を見落としていた。
 看護師が心電図モニターを見て異常を発見。医師が電気ショックを与えて、心臓マッサージをするなどしたが、患者は今も意識を回復しておらず、昏睡状態が続いているという。
 同病院は「機器の問題なのか、人的関与が原因かは分からない。モニターの記録を分析したい」としている。同病院は患者の家族に状況を説明し、謝罪した。井口院長は「患者様やご家族、関係者の皆様に、深くおわび申し上げます」と話した。

がんの痛み、薬剤師も管理 専門家育成に「学会」結成へ indexへ

 がんの痛みを管理できる薬剤師を育てます――。欧米に比べて遅れているとされる痛みの緩和ケアに薬剤師も積極的にかかわろうと、「日本緩和医療薬学会」が結成されることになった。モルヒネなど医療用麻薬の効果的な使い方の普及に、「薬の専門家」として一役買いたい考えだ。将来的には専門薬剤師の認定制度をつくることも検討している。
 緩和ケアは、患者の生活の質(QOL)を高める手段として積極的に導入する医療機関が増えており、02年度の診療報酬改定では、専門の医師や看護師らによる「緩和ケアチーム」に報酬が加算された。このチームに薬剤師を加える医療機関も増えてきている。
 さらに厚生労働省は今後、在宅医療を広げていく方針で、自宅で療養するがん患者らの間でも緩和ケアのニーズは高まると予想される。このため保険薬局の薬剤師も、緩和ケアについて理解を深め、往診する医師や看護師らと連携する必要性が高まっている。
 がんを専門とする薬剤師としては、日本病院薬剤師会が今年度から認定試験を始めた「がん専門薬剤師」制度がある。しかし、抗がん剤を専門とする薬剤師の育成が大きな目的のため、新たに発足する緩和医療薬学会は、モルヒネなどによる緩和ケアに特化した専門薬剤師の育成を目指す。
 24日に東京都内で設立総会を開く予定。呼びかけから3週間で、すでに全国から500人近くの薬剤師から申し込みがあったという。今後、セミナーなどを通じて緩和ケアへの理解を広げるとともに、会員を対象に研修会などを重ねていく。
 世話人代表を務める鈴木勉・星薬科大学教授(薬品毒性学)は「病院と保険薬局の薬剤師、薬学研究者の連携強化を図り、緩和医療における薬物療法の推進と充実を図りたい」と話している。

がん広げる「案内人」は免疫細胞 京大グループ発見 indexへ

 がん細胞がまわりにじわじわと広がっていく「浸潤」現象を起こすカギとなるのは、「未分化骨髄球」という免疫系の細胞であることを、京都大大学院の武藤(たけとう)誠教授(遺伝薬理学)と湊長博教授(免疫学)らのグループが見つけ、18日付の米科学誌「ネイチャー・ジェネティクス」電子版に発表する。がんを攻撃する「味方」と思われていた免疫系の細胞が、がんと協力する「敵」だったことになり、がん治療の考え方を変えかねない発見といえそうだ。
 武藤教授らは遺伝子操作で大腸がんを起こすネズミを開発し、観察する中で、がん細胞を包むようにくっついている細胞群に気が付いた。
 調べると、骨髄にだけあるとされていた「未分化骨髄球」という未熟な免疫系細胞だった。この細胞群はたんぱく質分解酵素を作り、がん細胞の固まりを包んでいる膜を溶かし、がん細胞が外へ広がっていきやすくしていることがわかった。
 さらに大腸がんの細胞表面に免疫系細胞を呼び寄せる働きを持つたんぱく質があることを発見。これを認識してくっつくCCR1というたんぱく質を未分化骨髄球が持っていることもわかった。
 大腸がんを起こすネズミに、このCCR1ができなくなるようにさらに遺伝子操作すると、がん細胞のまわりに未分化骨髄球は集まらず、浸潤の程度も低くなった。
 湊教授は「免疫系細胞ががんの周辺に集まることは知られていたが、それはがんを攻撃するためと考えられていた。しかし、実は、がん細胞に呼び寄せられ、がん細胞がまわりに広がっていく浸潤現象の『水先案内人』のような役割をしていた」と話す。

病気腎移植、25件中23件不適切 宇和島病院調査委 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植問題で、万波医師が前勤務先の同市立宇和島病院で実施した移植25件の是非を検討してきた同病院の調査委員会は18日、尿管狭窄(きょうさく)の患者から腎臓を摘出、移植した2件を除く23件について、医学的に不適切だったとする結論をまとめた。判明分だけで42件に上る病気腎移植の約6割を検証した調査委の判断は、ほかの病院や関係学会、厚生労働省の今後の対応に大きな影響を及ぼしそうだ。
 調査委はこの日、市立宇和島病院で下部組織の専門委員会との合同会議を開き、同病院で病気の腎臓が摘出された20件と、他病院から持ち込まれたケースを含む移植手術25件を対象に、症例ごとの適否を検討した。
 腎がん(5件)では、病変部が小さくても患者が望んでいたなどとして、摘出は容認できるとしたものの、「再発」や転移の可能性があり、移植には使うべきではないと判断した。尿管がん(5件)についても再発の可能性が高く、移植すべきではないと認定した。
 ネフローゼ症候群(6件)については「内科的治療を続けるべきだった」と指摘。腎動脈瘤(りゅう)や腎膿瘍(のうよう)など7件も腎臓を保存する治療法が可能だったなどとして、いずれも不適切と結論づけた。
 一方、尿管狭窄の2件は「狭くなった部分を広げる治療などが望ましく、否定的に考えるべきだ」としたうえで、患者の希望や年齢、症状などを考慮すれば摘出は否定できず、感染症がないと確認されれば移植が容認できるケースもある、と判断した。
 この結果、調査委は摘出20件中10件について、「容認できない」と断定。移植25件のうち23件を「不適切」と結論づけた。
 宇和島徳洲会病院の調査委は今月3日、移植11件について、「患者の個人的事情などを考慮すると否定できない」との見解をまとめ、大半の委員が「医学的に問題が多い」と結論づけた下部組織の専門委員会からの報告と両論併記することを決めている。ほかに6件の移植を実施した呉共済病院(広島県呉市)などの調査委や、摘出のみの病院を対象にした厚労省の調査班も近く最終結論を出す予定。

ワクチン開発に、産官学が連携へ 厚労省が推進委設置 indexへ

 新型インフルエンザ対策などで新たなワクチンの需要が世界的に高まる中、厚生労働省は、国内メーカーの研究開発や承認申請を後押しするための指針作りや、産官学の連携に乗り出す。海外で承認されている有効なワクチンが国内でも使用できるような環境づくりが狙いで、近く、専門家らによる推進委員会を立ち上げる。
 感染症を予防するワクチンは健康な人に使われるため、一般の薬より効果や安全性の評価が厳しい。接種率の高い乳幼児が少子化で減り市場拡大が期待できないことや、患者数が予測しづらいこともあり、国内メーカーは開発に二の足を踏みがち。国内のワクチン製造は中小メーカーが担っている事情もある。
 そこで厚労省は、メーカーと医療機関、研究者の代表らによる推進委をつくり、患者ニーズや人材育成などについて産官学で情報交換を深める。メーカーが国の研究施設を活用できるよう協議も進めるという。
 国内での承認審査に必要な症例数や、市販後調査での安全性評価などについての指針作りにも取り組み、承認例が少ないため考え方が確立していない現状の改善を目指したいとしている。
 国内でここ10年間で承認された新たなタイプのワクチンは、細菌性髄膜炎を予防する乳児向けのHibワクチンのみ。一方、米国では10品目ほどが承認されていて、鼻に噴霧して粘膜に抗体をつくるインフルエンザワクチンや、A型もB型も予防できる肝炎ワクチンなどは、日本でも早期承認が望まれている。
 ワクチンに詳しい神谷斉・国立病院機構三重病院名誉院長は「世界基準よりも厳しい日本のワクチン製造基準の改定や、研究者を育成できる企業体制の確立が必要。任意接種のワクチンの定期接種化を進めることも求められる」と話している。

動脈瘤肥大を抑える物質 阪大、ネズミで効果確認 indexへ

 腹部や胸部の大動脈がこぶのように膨らむ大動脈瘤(りゅう)は、破裂すると突然死する恐れが高い。その大動脈瘤が大きくなるのをとどめる物質を、大阪大の三宅隆医師や森下竜一教授(ともに遺伝子治療学)らが開発し、ネズミで効果を確認した。小さいままにできれば破裂の恐れが低くなる。脳動脈瘤などへの応用も考えられ、森下さんは「患者の不安が和らぐ。安全性を確かめ臨床応用につなげたい」という。
 動脈瘤は、加齢や動脈硬化に伴って、炎症が起きたり組織が壊れたりして血管の壁がもろくなった動脈が、血圧の影響で膨らんで起きる。
 炎症や組織の破壊は、それぞれ誘因物質が知られている。森下さんらは誘因物質を直接壊したりするのではなく、誘因物質が働きかける核酸とよく似た「おとり核酸」を合成し、動脈瘤の近くに入れる戦略をとった。誘因物質の大半が「おとり」に引っかかって、炎症や組織の破壊が進まなくなると考えた。
 腹部大動脈瘤を発症させたネズミで実験したところ、「おとり核酸」を大動脈近くの腹腔(ふくくう)内に注入した場合のこぶの断面積は、1週間後で平均3平方ミリ(注入しなかったネズミでは5平方ミリ)、2週間後で6平方ミリ(同13平方ミリ)と膨らみ具合が抑えられ、4週間後も維持された。
 近年、健康診断で直径3センチ前後の小さな腹部大動脈瘤が見つかるケースが増えている。治療に危険を伴うこともあり、破裂の恐れが高まる5〜6センチになるまで待ってから手術やステントという器具で治療することが多い。その間、患者は不安と隣り合わせになる。
 胸部大動脈瘤や脳動脈瘤などへの応用をにらみ、静脈内に注入できるよう「おとり核酸」の微小粒子化に取り組んでいるほか、薄膜状や寒天状にして細い管(カテーテル)で患部に入れることも検討している。
 成果は17日、神戸市で開催中の日本循環器学会で発表される。

イソフラボン、一部の前立腺がん低リスクに 厚労省調査 indexへ

 みそ汁や豆腐などの大豆製品から「大豆イソフラボン」をよく摂取する人は、ほかの臓器に広がらない限局性の前立腺がんにかかるリスクが低くなるとの調査結果を、厚生労働省の研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)がまとめた。
 秋田、長野、大阪、高知、沖縄など全国10地域に住む45〜74歳の男性約4万3000人に95、98年時点で食習慣を聞き、04年まで追跡調査した。
 対象者を、みそ汁や大豆製品、イソフラボンの摂取量に応じて、それぞれ4グループに分け、前立腺がんにかかるリスクを比較した。サプリメントによる大豆イソフラボンの摂取は考慮していない。
 その結果、61歳以上で限局がんにかかるリスクは、豆腐やみそ汁などの大豆製品の摂取量が最も多いグループ(1日107グラム以上)が、最も少ないグループ(1日47グラム以下)の半分だった。みそ汁単独でも、最も多いグループ(1日2杯以上)は、最も少ないグループ(1日1杯未満)に比べて35%低かった。
 進行性の前立腺がんや、前立腺がん全体でみた場合の予防効果は確認できなかった。

カテーテル用の針金に不具合、896本を自主回収 indexへ

 医療品輸入販売会社「イーヴィースリー」が販売した米国製のカテーテル用の針金「MTIハイドロフィリック ガイドワイヤー」に不具合が見つかり、同社は16日から国内の医療機関140施設に納入した896本の自主回収を始めた。カテーテルを脳の血管内に通す際に使う針金で、皮膜がはがれて血管をふさぐ恐れがあるという。
 同社によると、手術中にワイヤを食塩水に浸した際、皮膜がはがれたケースが国内で2件あった。健康被害は報告されていないという。

新たに5人の死亡判明 埼玉医大の多剤耐性緑膿菌感染 indexへ

 抗生物質が効きにくいとされる多剤耐性緑膿(りょくのう)菌に多くの入院患者が感染した埼玉県毛呂山町の埼玉医科大病院で15日、調査委員会が開かれ、04年1月から06年10月までに、感染患者5人が死亡していたことが新たに報告された。これまでの判明分を加えると、感染が死因につながったとはいえない事例も含め死亡した患者は11人になった。
 新たに判明した5人のうち、04年に死亡した70代の男性患者について調査委員会は「感染と死因に因果関係がある」と断定。残る4人については「因果関係を否定できない」とした。

抗生物質効かない緑膿菌、中核病院の8割で確認 indexへ

 大学病院など地域の中核的な医療機関の8割で、抗生物質の効かない多剤耐性緑膿菌(りょくのうきん)(MDRP)に感染した入院患者が確認されていることが15日、厚生労働省研究班(主任研究者=荒川宜親・国立感染症研究所細菌第二部長)の初の全国調査でわかった。MDRPはここ数年、院内感染で死者の出るケースが相次いでおり、全国的な広がりをみせている実態が裏づけられた。
 MDRPは、国内では90年代後半から報告されるようになり、04年以降は、大阪大や京都大、長崎大、埼玉医科大などの病院で、死者の出る院内感染が起きている。
 研究班は、全国の中核的な医療機関538施設にアンケートを実施。回答のあった339施設(63.0%)を分析し、15日、厚労省の院内感染対策中央会議に報告した。
 03年1月〜06年6月の3年半に、1人以上の入院患者からMDRPが見つかったのは291施設(85.8%)。多くは患者の尿やたんから見つかった。地域的な偏りはなく、研究班は「菌が各地で新興し始めていることが明らかになった」としている。
 MDRPが見つかった医療機関の90%では、感染者数は年平均2.8〜4.6人(1千病床あたり)だった。しかし残り10%の医療機関では年平均20人(同)を超えており、中には150人に達する施設もあった。
 また、339施設で見つかった感染者数は、03年の月平均103人から04年は140人、05年164人、06年148人と増える傾向にあった。
 MDRPは、手洗い場やトイレなどの水回りに多く、手などを介して広がり傷口などから体内に入る。内視鏡などの医療器具が感染源になったケースもある。研究班は、継続して多くの感染者が見つかった11施設を訪れて衛生管理を改善した結果、感染者数は減りつつあるという。
 国立感染症研究所の荒川部長は「全国的に広がってはいるものの、全般的に感染者数は低いレベルにあるといえる。ただ、一部に感染者数が多い病院があることがわかったので、スタッフを派遣するなどして対策の強化を支援していきたい」と話している。

「PS3」で難病プロジェクトに参加を SCE呼びかけ indexへ

 ゲーム機「プレイステーション(PS)3」を難病の原因究明に役立てませんか――。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は15日、体内のたんぱく質の合成過程を解析するプロジェクトに、PS3の利用者がネットを通じて参加できるようにすると発表した。PS3が搭載する高性能の中央演算処理装置(CPU)「セル」の能力をアピールする狙いもある。
 プロジェクトは米スタンフォード大が00年に始めた「Folding@home」。たんぱく質が折り畳まれ、合成される過程は複雑で解析に膨大な計算が必要だ。そこで複数のコンピューターのCPUをネットでつなぎ、処理を分担する「分散コンピューティング」と呼ばれる手法を利用。成果は専用サイト(http://folding.stanford.edu/japanese/)で公開されており、パーキンソン病、アルツハイマー病、がんなどの治療法の開発への貢献が期待されている。
 希望者はPS3のネットサービスから、3月末までに公開される専用ソフトを、参加に同意のうえで無料ダウンロード。遊ばない時に電源を切らずにおけば、ネットを通じセルが自動で利用される仕組み。SCEによると、セルは現在標準的なCPUの約10倍の処理能力があり、「研究速度を飛躍的に向上させられる」(広報)という。

病気腎の摘出「全症例で不要」 外部専門委の報告公表 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植問題で、同病院で実施された11件について医学的に検討してきた外部の専門委員5人の報告書が15日、報道陣に公表された。「全症例で摘出の必要なし」「積極的治療をしない摘出は医師の裁量権の逸脱」などと、いずれも厳しい内容となっている。病気腎移植の医学的評価の詳細が明らかにされたのは今回初めて。
 同病院の調査委員会はこれらの報告書の内容を踏まえて病気腎移植の是非を検討したが、患者の立場に立った臨床の視点から、「否定できない」とする見解を今月3日にまとめている。今回、公平を期すために報告書の公表に踏み切った。また、同病院は摘出手術6件についての調査委の結論として「適切だった」が3件、「容認できる」が3件あったと発表していたが、「適切」1件、「容認」3件、「判断保留」2件に訂正した。
 公開されたのは、5人の専門委員がそれぞれの専門分野の移植学、泌尿器科学、腎臓内科学、病理学(2人連名)の立場から調査結果をまとめた4通の報告書。
 移植医からの報告書は、摘出手術の際、生体腎移植の手術に特有の薬剤が使われていたことなどに触れて、「本来の治療に関心がないのが明らか」と指摘し、手術そのものが移植を前提としていた可能性を示唆。「まさに密室内移植」「科学的裏付けのない病気腎移植」とも批判した。
 泌尿器科医の報告書は、血管筋脂肪腫について「再発の可能性があり、摘出が妥当と判断したとの手術記録があるが、そのような腎を移植するのは危険」と指弾。さらに「完全に治す治療法を探った記載が全くなく、当初から移植目的だった」などとし、11件について腎臓摘出の必要なし、と結論づけた。
 腎臓内科の専門医は、1人のネフローゼ症候群患者から両方の腎臓を摘出した症例を詳細に解説。薬剤への抵抗性など必要不可欠な検査が行われなかった点を挙げ、「腎臓を両方摘出して末期腎不全患者とすることは常識的な治療範囲を逸脱している」とした。
 病理医は、患者から切り取った病変部など残っていた標本を調査。腎がん2件について「4センチ以下の小さながんで、部分切除でも全摘同様の治療効果が期待される」とした。

若い医師「へき地勤務義務化を」 日医諮問委が提案 indexへ

 日本医師会(日医)の諮問委員会は15日、医師確保の対応策として、臨床研修を終えた若い医師にへき地などでの勤務の義務化を提案する中間報告書をまとめた。今後、役員会などで合意すれば具体案をまとめ、日医が厚生労働省に提言する。
 報告書には、研修終了後の一定期間内に、へき地や医師不足地域での勤務の義務化を考慮すると盛り込まれている。産科・小児科など、医師が不足する診療科への勤務も想定されているという。
 厚労省は昨年度、医師確保対策として、へき地などへの勤務を開業の条件にする案を審議会にはかったが、日医などから「やる気がない人が行っても根本的な解決にはならない」「強権的」などの反対が出て実現しなかった。
 だが今回、諮問委員会は、義務化まで踏み込まなければ医師偏在は解決しないとの危機感の高まりを受け、報告書をまとめたという。

小児科医自殺、過労が原因の労災と認定 東京地裁 indexへ

 東京都内の民間病院の小児科に勤めていた中原利郎医師(当時44)がうつ病にかかり99年に自殺したのは、過労やストレスが原因だとして、妻が労災を認めるよう訴えた訴訟の判決が14日、東京地裁であった。佐村浩之裁判長は、小児科医が全国的に不足していた中、中原さんが当直医の確保に悩み、自らも多いときは月8回にも及ぶ宿直で睡眠不足に陥ったと認定。自殺は過労が原因の労災と認め、遺族に補償給付金を支給しないとした新宿労働基準監督署長の決定を取り消した。
 過労死弁護団全国連絡会議によると、小児科医の過労死はこれまで2件が労基署段階で認められたが、自殺した医師の認定例はなかった。医師の自殺を労災と認めた判決としても、全国で2例目という。原告側代理人の川人博弁護士は「判決は小児科医の深刻な労働条件に警告を発した。政府や病院関係者は事態を改善すべきだ」と話している。
 佐村裁判長は、小児科の当直では睡眠が深くなる深夜に子どもを診察することが多く、十分な睡眠は困難だと指摘。「社会通念に照らし、心身に対する負荷となる危険性のある業務と評価せざるを得ない」と述べた。
 判決によると、中原医師が勤めていた立正佼成会付属佼成病院(東京都中野区)の小児科では、医師の転職や育児による退職が相次いだ。中原医師が部長代行に就いた99年2月以降は少ない時で常勤医3人、非常勤1人にまで落ち込んだ。同年3月の勤務状況は、当直8回、休日出勤6回、24時間以上の連続勤務が7回。休みは2日だけだった。
 新宿労基署は、うつ病を発症した同年6月までの半年間の時間外労働は月平均約50時間で、「当直中は仮眠や休養も可能」であり、実際に働いた時間はさらに下回るとして、発症の原因は中原さん個人の「脆弱(ぜいじゃく)性」だと主張していた。

リハビリ制限見直し、中医協が了承 indexへ

 脳卒中などのリハビリテーションの医療保険適用が原則180日までに制限されている問題で、中央社会保険医療協議会(中医協)は14日、厚生労働省が示した見直し案を承認した。これにより、日数制限の対象外となる疾患が心臓病などにも広がると共に、制限日数に達した後、介護保険で機能維持のリハビリを十分に受けられない患者は、医療保険で受けられるようになる。4月から実施される。
 中医協の土田武史会長は承認にあたり、「制度改正前に介護保険のリハビリの状況が分かっていれば、このような事態は避けられた」として、厚労省の医療保険と介護保険の担当者間の連携が不十分だった「縦割り行政」を批判した。

大腸がん死亡率、検診で7割低下 13年追跡調査 indexへ

 大腸がん検診を受けた人は、受けなかった人より大腸がんによる死亡率が約70%も低かったとの調査結果を、厚生労働省の研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)がまとめ、14日発表した。
 岩手、秋田、長野、沖縄の4県に住む40〜59歳の男女約4万人を対象に、90年時点で過去1年間に大腸がん検診の「便潜血検査」を受けたかどうかを聞き、03年まで13年間追跡調査した。
 大腸がんになっていたのは597人で、うち132人が大腸がんで亡くなっていた。その死亡率は、検診を受けていない人を1とした場合、受けていた人は0.28にとどまり、72%低かった。
 大腸がん以外の死亡率でみても、大腸がん検診を受けていた人は未受診者より30%低かった。検診を受ける人は健康志向が強い影響とみられるが、大腸がんの死亡率の低下の度合いは、これを大きく上回った。
 国立がんセンターの井上真奈美・予防疫学研究室長は「検診で死亡率も下がることが分かったが、あくまでがんを早く見つける手段。運動や禁煙を心がけ、お酒や肉の取りすぎを控えて、大腸がんにならないようにして」と話している。

タミフル研究班教授に寄付金1千万円、岡山大教授にも indexへ

 横田俊平・横浜市立大学教授は13日、同大小児科の講座が01年度から6年間で、インフルエンザ治療薬「タミフル」の輸入販売元の中外製薬(東京)から計1千万円の奨学寄付金を受けていたと発表した。横田教授は、タミフルの服用と異常行動の関連性を調べている厚生労働省研究班の主任研究者。また同社が03、04、06年度、同研究班員の森島恒雄・岡山大学教授の小児科教室にも同大学を通じ計600万円を寄付していたこともわかった。
 横田教授は、週刊誌や新聞などで、タミフル服用と異常行動の因果関係について「発生頻度は服用の有無で大きな差はない」との結果を出した研究班の結果と、寄付金とを関連づける報道があったため、厚労省で会見。同教授と横浜市立大の説明では、小児科は同期間に計4860万円の寄付金を受け、うち1千万円が中外製薬からだった。
 横田教授は「研究には他の大学や施設もかかわっており、中立性や透明性は確保されている」と話した。
 一方、森島教授は「小児科教室として毎年十数社から奨学寄付金を受けており、すべて大学に報告し、許可を得ている。副作用調査で中立な立場を貫いているので、利益誘導などはない」とする談話を出した。

タミフル研究班の教授に寄付金 「研究に影響ない」 indexへ

 横田俊平・横浜市立大学教授は13日、同大小児科の講座が01年度から6年間で、中外製薬から計1000万円の奨学寄付金を受けていたと発表した。横田教授は、インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と異常行動の関連性を調べている厚生労働省研究班の主任研究者を務めている。中外製薬はタミフルの輸入販売元だが、記者会見で「寄付金が研究に影響を与えたことはない」と述べた。
 横田教授は、週刊誌や新聞などで、タミフル服用と異常行動の因果関係について、「発生頻度は服用の有無で大きな差はない」との結果を出した研究班の結果と、寄付金とを関連づける報道があったため、会見した。
 厚労省で会見した横田教授と同大の説明では、小児科は同期間に計4860万円の寄付金を受けた。うち1千万円が中外製薬からだった。横田教授は「調査のデータは、全国の医師から集められ、統計処理は国立の研究所で行われている。研究には他の大学や施設もかかわっており、中立性や透明性は確保されている」と話した。厚労省は「横田教授から話を聞くなどし、研究の信頼性について評価する」としている。

後発薬の製造販売差し止め命じる 東京地裁 indexへ

 医療用医薬品「セフジニル」をめぐり、後発品の製造承認を国から受けた大洋薬品工業(名古屋市)が、開発したアステラス製薬(東京都)の特許権を侵害しているかどうかが争われた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。高部真規子裁判長は、アステラスが保有する成分結晶の形についての特許を大洋が侵害していると認定。製造販売の中止と製品の廃棄を命じた。大洋は控訴する方針。
 セフジニルは炎症を引き起こす細菌の働きを抑える。アステラスが「セフゾンカプセル」の名称で91年から販売し、年間売上高180億円。成分の特許が03年に切れ、大洋が05年に後発品「セフロジールカプセル」を売り出した。アステラスがもつ成分結晶の形の特許は08年8月まで権利が存続している。

リハビリ日数制限、心筋梗塞・肺気腫など除外へ 厚労省 indexへ

 脳卒中や事故後のリハビリテーションの医療保険適用が原則180日までに制限され、必要なリハビリを受けられない患者が出ている問題で、厚生労働省は12日、心筋梗塞(こうそく)や狭心症、肺気腫など、日数制限の上限に達した後もリハビリを続けられる病気の範囲を広げて制度を見直すと共に、財政面でのバランスをとるため、リハビリの診療報酬を一部引き下げる方針を固めた。14日の中央社会保険医療協議会(中医協)に提案し、4月からの実施を目指す。
 リハビリの日数制限は、脳卒中などが発症した直後の急性期や回復期に集中的なリハビリができるようにする一方、効果が見込めないまま続けられるリハビリを抑制するため、昨年4月の診療報酬改定で導入された。医療リハビリの終了後は、介護保険のリハビリに移行するはずだった。
 しかし、12日の中医協に報告された実態調査では、一部の疾患で1割以上の患者が「改善の見込みがある」と診断されたのにリハビリを打ち切られるなど、制度の不備が明らかになった。
 これを受けて厚労省は(1)急性冠症候群(心筋梗塞など)、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫など)を新たに日数制限の対象から外す(2)日数制限の対象となる病気でも、改善の見込みがあって医師が特に必要と認めた場合は医療リハビリが継続できる(3)介護保険の対象とならない40歳未満の患者や、介護保険で適当な受け皿が見つからない人は、医療で維持期のリハビリが続けられる(4)回復が見込めない進行性の神経・筋肉疾患(筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症=ALSなど)も医療リハビリを継続する、などの見直しを行う。
 厚労省は、これらの改正で大半の患者を救済できるとみるが、リハビリの費用が膨らむのは確実。医療費の総枠は現状維持が求められるため、医療機関に支払われるリハビリの診療報酬を、日数の上限に達する1カ月ほど前から引き下げることも中医協に提案する。

「年間4千時間労働、うつで解雇」賠償求め会社を提訴へ indexへ

 年間4000時間を超える長時間労働でうつ状態となり解雇されたとして、総合建設コンサルタント「建設技術研究所」(本社・東京)の元男性社員(30)が、損害賠償や未払い賃金など約1300万円の支払いなどを求める訴訟を大阪地裁に近く起こす。長時間労働させたこと自体を違法行為として賠償を求める方針で、企業責任を問う手法としては珍しい。
 長時間労働を巡るこれまでの裁判では、うつの後遺症などを理由に賠償請求する事例が多かった。元社員の代理人の岩城穣弁護士は「後遺症がなくなっても、本人が受けた精神的苦痛は大きい。長時間労働をさせた会社の責任そのものを追及する」としている。
 準備中の訴状などによると、元社員は01年4月から建設技研の大阪本社(大阪市中央区)に勤務。土木工事の計画作りなどを担当していたが、02年の1年間で、会社側の資料でも3565時間勤務させられたことが確認できたという。残業が月250時間を超えることもあった。元社員は「実際には、法定労働時間の倍の4000時間を超える勤務を強いられた」と主張している。
 02年12月ごろから体調を崩し、03年4月からは自宅療養と復職を繰り返すようになった。その後、適正な支援も受けられず、05年12月に解雇されたという。個人加入した地域労組を通じて復職を求めてきたが、会社側は応じなかった。
 建設技研は元社員の主張を認めておらず、「誠実に事実を明らかにしていきたい」としている。

京大病院で心臓手術ストップ3カ月 収拾のめど立たず indexへ

 京都大医学部付属病院(内山卓院長)で、心臓手術ができない異例の事態が約3カ月続いている。昨春の手術ミスをきっかけに、心臓血管外科と他の診療科との内輪もめが表面化。心臓血管外科を取り仕切る教授が欧米仕込みの手術スタイルを持ち込み、協調を重視する日本のスタイルと合わなかったことが原因といわれる。有名国立大病院で起こった内紛。収拾のめどは立っていない。
 同病院は8日夜、運営方針を決める病院協議会を開いた。記者会見した内山院長は、心臓血管外科に安全管理体制で問題があるとし、(1)他科に比べて手術中のガーゼなどの紛失や患者体内への異物の残存が目立つ(2)再手術の頻度が高い(3)他科や看護部とのコミュニケーション不足がある――などを指摘。安全性が確保されていないとして、手術再開は決められなかった。
 手術ミスは昨年3月下旬、京大病院で実施された5例目の脳死肺移植で起こった。肺の移植を受けた30代の女性は手術後、意識不明となり、10月に死亡した。
 病院の調査委員会がまとめた報告書によると、手術中、人工心肺を使った血液循環がうまくいかず、血液中の酸素が不足。脳に十分な酸素供給ができなくなった可能性があるという。手術を主導した呼吸器外科と心臓血管外科や麻酔科との事前の打ち合わせがなく、患者の身体管理の責任が不明確になり、異変を見逃したと指摘している。
 同病院は昨年5月、手術を担当した3科の連携に問題があったとして、肺移植手術を自粛。その後の調査で12月末、心臓血管外科に安全管理上の問題があり「最も改善すべき科」とし、心臓手術も中止した。
 今月6日、手術に加わった同科の診療科長米田正始(こめだ・まさし)教授(52)は「科長を辞めることが手術再開のために必要」と通告されたとし、大学を相手に地位保全を求める仮処分を京都地裁に申請した。一方、米田教授の手術を受けた患者の家族らは同日、2501人の署名を添えて、病院に手術の早期再開を求める嘆願書を提出するなど、混迷が深まっていた。
 米田教授は81年に京都大医学部を卒業。医局を飛び出し、カナダ、米国、オーストラリアの大学病院などで手術の修業を積んだ。腕を買われて98年、京大教授に招かれた。国内外で年間200件近い手術を執刀する著名な心臓外科医だ。
 しかし、関係者によると、大手術は1日1件という慣行を破って米田教授が1日2件行うなど、手術部や手術後の患者管理をする集中治療室の看護師ら、麻酔科などにも不満が広がっていた。
 米田教授は、朝日新聞の取材に対し、他科の医師らとのコミュニケーション不足を認めたうえで、「患者のために最善を尽くして手術に取り組んできた。安全が確保できないとか、患者の立場に立っていないと批判されることには耐えられない」と話した。

精神障害者の退院支援施設、4月から導入 厚労省 indexへ

 厚生労働省は、精神科病院に長期入院している患者の社会復帰策として、医療機関が病棟を改装して生活訓練を行う「退院支援施設」へ転用できる制度を、4月から実施する。昨年10月の実施予定を障害者団体の強い反対で見送っていたが、新施設側に地域の支援団体などと十分な連携をとることを条件に、新制度を導入することにした。しかし、障害者団体は9日、記者会見し「受け入れ態勢がない地域は多く、長期入院が続く」と反対姿勢を強めている。
 厚労省は、全国の精神科病院に入院する32万人のうち、地域で生活する場がなく入院を余儀なくされている約7万人を12年度までに退院させる計画だ。しかし、グループホームなど地域での受け皿づくりが住民の反対などで進まず、「病院から地域への橋渡しをする施設が必要」として、退院支援施設をつくることにした。
 この施設では、患者が入所し、2〜3年かけて生活能力を高めたり、職業訓練を受けたりして、地域での自立を目指す。ただ、引き続き医師の監督下に置かれ、施設と精神科病院との間で入退院を繰り返し、地域移行が進まないことが懸念されている。
 この日会見した精神障害者の支援グループ「こらーるたいとう」の加藤真規子代表は「病院に補助金を出して施設をつくるより、公営住宅への優先入居やグループホームの建設など地域の態勢整備にもっと力を入れるべきだ」と批判した。

1万本の輸血血液、不良の疑い 白血球除去できず indexへ

 日本赤十字社が今年1月、輸血による副作用を減らすために導入した白血球除去の処理に不備があり、基準値以上の白血球が残った可能性がある血液製剤1万910本(約4.3トン)が作られていたことがわかった。医療機器メーカー「テルモ」(本社・東京)がつくったフィルターに小さな穴があいていたため。病院などに出荷されたのは3194本。出荷を見合わせた7716本のうち、846本は廃棄された。
 献血した人の白血球が輸血用血液に含まれていると、発熱などの副作用が起きることがある。輸血のたびにフィルターをつけて白血球を除去することが推奨されていた。日赤は今年1月中旬、白血球除去フィルターを組み込んだ採血バッグを使い、すべての血液の濾過(ろか)を始めた。
 この新たな対策を始めた1月16日から1週間の間に16のバッグのフィルター内の壁に小さな穴があいていることがわかり、同様に作られた製剤の出荷を見合わせた。
 病院などに納入された製剤について日赤は、注意を呼びかけた。発熱などの副作用報告は5件あったが、因果関係は不明という。

米食品医薬員局がCM放映中止要請 武田薬品の米子会社 indexへ

 米食品医薬品局(FDA)はこのほど、武田薬品工業の米子会社が05年9月から販売している不眠症治療薬「ロゼレム」の米国内でのテレビCMに不適切な表現があるとして、放映中止を要請した。子供への安全性が確認されていないのに、安全な印象を与えているとされたという。
 問題になったのは、米国内で流された10秒間のCM。子供などの映像とともに商品を紹介しているなどと指摘された。本来はFDAの了解を得た75秒のCMだったが、別の映像素材で、しかも短縮された形で放映されていたらしい。
 武田は「どのような経緯で起きたか分からず、調査を始めた」としており、詳細が分かった時点で対応を検討する。

「医療事故調」の報告公表 医療機関に還元 厚労省試案 indexへ

 医療中の死亡事故の原因究明を行う医療版「事故調査委員会」設置に向けた厚生労働省の試案が8日、明らかになった。臨床医や弁護士らで構成する調査・評価委員会(仮称)を国か都道府県に設置。聞き取り調査を実施し、臨床経過などを評価したうえで作成する調査報告書は公表する。調査結果を医療機関に還元することで、再発防止を図る狙いだ。4月にも立ち上げる有識者検討会で、医師法改正を含めた制度設計を進める。
 試案では、医療機関に対して死亡事故の届け出の義務化を検討。届け出を受けた調査・評価委員会が、解剖やカルテ調査、関係者の聞き取りなどによって死因を調べ、臨床経過や診療行為などを評価する。作成した調査報告書は、医療機関と遺族に渡すとともに、個人情報は伏せて公表する方針だ。
 報告書で医療機関側の過失責任が指摘された場合には、国が速やかに行政処分を下す仕組みを設けるとともに、報告書を民事訴訟や刑事訴訟に活用する仕組みも検討する。
 このほか、遺族からの申し出を受けて調査を実施することや一定規模以上の死亡事故以外も調査対象とすることなども検討対象とする。
 この試案は9日、自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」(座長・大村秀章内閣府副大臣)と社会保障制度調査会医療委員会の合同会議に示される。

発売50年の薬にC型肝炎効能追加 三菱ウェルファーマ indexへ

 三菱ウェルファーマは8日、発売50年になる主力製品の肝機能改善薬「ウルソ」について、厚生労働省からC型肝炎への効能追加の承認を取得したと発表した。
 ウルソは、漢方薬「熊胆(ゆうたん)」の有効成分「ウルソデオキシコール酸」が起源で、旧東京田辺製薬(現三菱ウェルファーマ)が改良開発した。57年の発売以来、肝臓や胆のうなどの消化器疾患に対して世界約30カ国で使われている。
 C型肝炎の患者・感染者は全国に約200万人いるとみられ、肝硬変や肝がんへのリスクが高い。ウルソに、C型慢性肝炎から肝硬変や肝がんへの移行を抑制する働きがあることが分かり、専門医からも効能追加の期待が大きかった。

タミフル、予防投与用に300万人分備蓄 閣議決定 indexへ

 新型インフルエンザの予防のため、政府は6日の閣議で、今年度中に抗ウイルス薬・タミフルを新たに300万人分備蓄することを決めた。新型ウイルスに対応するワクチン製造や検疫の体制も強化し、今年度一般会計予算の予備費から計73億円を充てる。
 タミフルについては、服用したとみられる子供の異常行動が相次いでいるが、柳沢厚生労働相は閣議後会見で「科学的な知見による安全性に問題がないとの見解で備蓄を進める」と述べた。
 政府は2日、タミフルの予防投与など初期対応に重点を置いて行動計画を改訂。厚労省が、医師や看護師、周辺住民らに必要な当面の備蓄量を300万人分と算定した。タミフルは治療薬としても、国と都道府県で合計2100万人分を、07年度中に確保することが義務づけられている。
 予備費は、ウイルスの変異に備えたワクチンの供給体制の確保や、検疫所で着る感染症防護服の購入などにもあてる。

医師の行政処分に「戒告」新設 新年度から厚労省 indexへ

 厚生労働省は新年度から、医師や歯科医師に対する行政処分を厳しく見直し、従来の「免許取り消し」と期限を区切った「医業停止」に加え、過失の小さい医療ミスなどに適用する「戒告」を新たに設ける。行政処分はこれまで、一定の刑事責任を問われていることなどが前提だった。今後は処分対象者を広げる一方で、処分を受けた医師がミスを繰り返さないように再教育を義務づける。
 医師の行政処分は、厚労相の諮問機関「医道審議会」で決まるが、長年、罰金以上の刑事罰が確定した場合などが対象となっていた。同審議会は02年12月、民事訴訟で明白な過失が認められた場合も処分対象に追加。しかし、軽度の医療ミスを繰り返す「リピーター医師」などが処分されるケースは少なかった。
 厚労省は、医師法と歯科医師法を改正。刑事事件に至らない医療ミスは、これまで医師の経歴に残らない行政指導で対応してきたが、今後は医業停止にはならないものの、戒告の対象とする見込みだ。医業停止期間はこれまでの最長5年から3年に短縮し、それを超えるケースはすべて免許取り消しとするなど、全体として厳しく対応する。
 また、処分には調査が必要なため、行政の権限も強化。医師に対する事情聴取やカルテの閲覧、医療機関への立ち入り調査などを強制的にできるようにするほか、調査を拒む医師には50万円以下の罰金を科す。全国8カ所の厚生局・支局に、医師免許を持つ調査専門の職員も配置する予定だ。
 一方で、厚労省は処分を受けた医師に再教育の研修を義務づける。医師のあるべき姿や医療制度などについて学ぶ「倫理研修」、ミスを犯した医療行為について医療機関で再学習する「技術研修」などを想定。なぜミスしたかを本人に考えさせて研修計画を提出させることも検討している。
 厚労省は4月からホームページ上で医師の名前、性別、医籍が登録された年月日を公表するのに合わせて、行政処分の内容も掲載する。研修期間が終われば処分歴は削除される。

石綿専門医の執念、肺がんへの労災不認定覆す 新潟 indexへ

 アスベスト(石綿)が原因とみられる肺がんの男性に対し、新潟労働基準監督署が認定しなかった労災を、労基署を管轄する新潟労働局が認めていたことが分かった。石綿疾病にくわしい医師の再検査で、石綿暴露の医学的証拠の一つである石綿小体が男性の肺から見つかり、判断が覆った。代表的な石綿疾病である中皮腫の2倍いるとされる石綿肺がんだが、労災認定者は少ない。今回の逆転認定は、調査を尽くさない労災認定行政への警鐘となりそうだ。
 労働局が労基署の不支給決定を取り消し、労災認定されたのは新潟市内の元造船技術者(72)。
 06年12月27日付の労働局の決定書などによると、男性は84年9月までの23年間、耐熱や断熱用に石綿製品が使われている造船所内で新造船や修理を担当した。退職後の05年に県立病院で肺がんと診断されたため、同年10月に労災の療養補償給付を労基署に請求した。
 しかし、労基署の審査では、暴露の医学的な証拠であり労災認定の要件の胸膜プラーク・石綿小体・石綿繊維のいずれも、CTなどの画像フィルムや肺組織の病理学的所見から見つけることができず、労基署は06年4月に不支給決定をした。
 男性は、被害者支援団体・新潟県安全衛生センターの協力で、ひらの亀戸ひまわり診療所(東京都)の名取雄司医師に再検査を依頼。光学顕微鏡を使って調べたところ、男性の乾燥肺から1グラムあたり401本の石綿小体を検出。仕事で石綿を扱ったり石綿工場の近くに住んだりしたことのない一般の人の35〜44本より11倍も高いことが判明した。男性は、労働局への審査請求に名取医師の意見書を出し、逆転につなげた。
 国際的な基準では石綿肺がんは、胸膜や腹膜にできるがんである中皮腫の2倍いるとされる。しかし、労災認定をみると、06年度上半期で中皮腫は請求者の9割にあたる512人が認定されたのに対し、石綿肺がんは認定は328人で請求者の約6割だ。背景には、被害者にきちんと聞き取りをせず、喫煙が原因の肺がんと区別ができていないことなどが指摘されている。
 関西労働者安全センターの片岡明彦・事務局次長の話 肺がんに関しては検査を尽くさずに労基署の安易な不支給決定がまかり通っているのが現状だ。これまで不支給とされた事例の見直しとやり直しが必要だ。

肝炎にベリーグッド ブルーベリーの葉 宮崎大チーム indexへ

 ブルーベリーの一種「ラビットアイブルーベリー」の葉に、C型肝炎ウイルスや脂肪肝などに対する抑制効果があることがわかったと、宮崎大の河南洋医学部長ら産官学連携の研究チームが発表した。すでに6件の特許を申請。効率的な栽培方法もほぼ確立し、商品化や医薬品開発に向けた研究を進めている。
 チームによると、試験管内の実験で、ラビットアイブルーベリーの葉の抽出物にC型肝炎ウイルスの増殖を抑える効果を確認した。抽出物の成分は分析中だが、濃度が1ミリリットル当たり1マイクログラム(マイクロは100万分の1)程度なら、健康な細胞に悪影響を及ぼさないこともわかった。
 脂肪肝のラット(ネズミ)に葉を食べさせたところ、肝臓中の中性脂肪やコレステロールが低下し、血圧の降下作用や肝がんの発症を抑える効果もあった。
 通常は3メートル間隔で植えるラビットアイブルーベリーの苗木を20〜30センチ間隔に密集させるなど、効率的に大量栽培する方法を確立。茶などの製品化に向けた加工技術も開発した。
 この種は国内でほとんど生産されていないが、紫外線が多く温暖な宮崎県は栽培適地とわかり、商品化に向けた栽培も始まった。河南部長は「医農の連携による成果として極めて独創的だ」と成果を強調。宮崎大やチームに加わった宮崎県産業支援財団などは、ブルーベリーの葉の成分の抽出方法や新規用途などについて特許を出願している。
 チームには宮崎、鹿児島両大学の医学・農学の研究者や宮崎県の焼酎メーカー雲海酒造などの企業が参加し、04年1月から研究を始めた。科学技術振興機構から5年間で約13億円の支援を受けている。

心不全のからくり解明 がん抑制遺伝子、「悪役」に indexへ

 心臓がうまく働かない心不全では、がん抑制遺伝子として知られるp53遺伝子が「悪役」となっているらしいことを、千葉大の小室一成教授(循環病態医科学)らがマウスの実験で明らかにした。高血圧などのストレスで心筋細胞が大きくなって栄養を賄う血管が新たにできる状態を、p53が「異常」と感じて血管作りを阻害。結果として、心筋細胞が満足に働けなくなるという。英科学誌ネイチャー(電子版)に5日発表される。
 高血圧や弁膜症などで心筋細胞が大きくなり、心臓全体が肥大することがある。一部に心筋梗塞(こうそく)が起きた際も心臓の他の部分が肥大する。ストレスに耐えたり、梗塞した部分の働きを補ったりするためだが、なぜか働きが弱まり、送り出す血液量が減ることが多い。これが心不全で、息切れなどの症状が出て、重くなると死亡する。
 小室さんらはマウスの大動脈を軽く縛り、血液が十分に送れない状態にして、心臓肥大を人為的に起こした。心臓の働きは当初維持されたが、14日後に肥大が止まるとともに機能が落ち始めた。
 詳しく調べると、縛った直後から、肥大した心筋細胞に不足した血液を補うため、新たな血管ができていたが、2週間ほどたつと、p53が増え始め、血管もできなくなることが分かった。
 p53が働かないようにしたマウスで同じ実験をしたところ、4週間後も肥大は止まらず、機能も維持された。
 p53は細胞内の他の遺伝子に異常が生じると修復を促し、修復できない場合はその細胞を自殺に追いやることで他への影響を防ぐなど「守護神」のように働いている。

薬液投与ミスで、死期早めた可能性も 大分大学付属病院 indexへ

 大分大学医学部付属病院(大分県由布市)は3日、心不全で入院していた70代の男性患者に血圧を一定に維持する薬液を過量投与し、死期を早めた可能性があると発表した。患者は2日夜に死亡し、医療ミスの疑いもあったため、同病院は3日、大分県警に届けた。
 同病院によると、患者は昨秋から入院。心不全が悪化した1日昼から薬液投与を受けた。2日午後8時45分に点滴の流量を調節するポンプの異常を知らせるアラームが鳴ったため医師らが駆けつけたが、すでに心肺停止状態で、同9時半に死亡した。
 点滴用のボトルが空になっていたことから、同病院は短時間に大量の薬液が患者の体内に入り、死期を早めた可能性があるとみている。患者に投与していた薬液は、大量に投与すると不整脈などを起こし、死に至ることがあるという。

病気腎移植を「否定できない」と見解 徳洲会病院調査委 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波(まんなみ)誠・泌尿器科部長(66)らが実施した「病気腎」移植の是非を検討していた同病院の調査委員会は3日、「患者の個人的事情などを考慮すると、完全に否定することはできない」とする見解をまとめた。外部の専門医らでつくる下部組織の専門委員会では、「医学的に問題がある」との意見が大勢を占めており、判断が分かれた形となった。
 大阪市内での会合後、記者会見した同病院の貞島(さだしま)博通院長らによると、この日の委員会では、同病院で実施された11件の病気腎移植の医学的妥当性を調べてきた専門委員から「不適切な移植だった」とする意見が出たことを受け、万波医師から意見聴取した。万波医師は「患者と向き合っており、教科書を見て治療しているのではない」などと、患者本位の医療行為を強調したという。
 調査委は、病院に倫理委員会が設置されておらず、書面でのインフォームド・コンセント(説明と同意)もなされていなかった点について、「病院と万波医師に問題があった」と指摘する一方、現在は手続きの面で体制が整ったと評価。一部メンバーからは、がんに侵された腎臓の移植について「医師一人の判断で行うのはおかしい」などの反対意見もあったが、「臓器提供者(ドナー)不足や透析患者の負担を考慮すれば、患者の選択権を奪うことはできない」との見解を示した。
 さらに、11件のうち同病院で腎臓が摘出された6件についても検討。患者に複数の治療法が説明されていたことなどを理由に、3件について「摘出は適切だった」、残る3件も「容認できる」と判断した。
 ただ、病院側としては、現在中止している病気腎移植を再開する予定はなく、「原則禁止」の方向性を打ち出している関係学会のガイドラインがまとまれば、それを尊重するとしている。最終的な結論は5月以降に持ち越される見込みだが、専門委員との意思統一は困難とみられる。
 病気腎移植は同病院での11件を含め、これまでに42件が表面化している。同調査委は、万波医師が執刀した患者らによる臓器売買事件が昨年10月に発覚したことを受けて設置されたが、調査の過程で病気腎移植が表面化。専門委を設けて検討を進めていた。

75歳以上に「かかりつけ医」 厚労省、新制度を検討 indexへ

 厚生労働省は2日、75歳以上の高齢者向けに、公的な「かかりつけ医」制度を08年をめどに創設する方向で検討に入った。特定の開業医が患者の心身の状態を普段から把握し、外来診療から在宅ケア、みとりまで対応する。患者が信頼できる医者をもつことで、入院から在宅治療への高齢者医療の転換を促し、医療費を抑制する狙いもある。患者への協力を求めると共に、かかりつけ医に支払う診療報酬を手厚くして普及をはかる考えだ。
 06年の医療改革で、75歳以上の後期高齢者を対象とした新しい保険制度を08年に創設することが決まっている。厚労省は今秋までに独自の診療報酬体系の骨格をつくる予定で、すでに方針を固めている外来の「定額制」とともに、かかりつけ医の導入をその柱とする。
 かかりつけ医の条件は(1)高齢者が抱える複数の疾患を総合的に診断・治療し、必要なときには心のケアも行える(2)介護保険のケアマネジャーらとも連携をとり、患者の生活に合わせた在宅療養のアドバイスができる(3)積極的な訪問診療を行う(4)痛みを緩和するケアなど末期医療に対応できる、など。
 厚労省は、こうした条件を満たす医師を公的に認定。患者の合意を得たうえで「かかりつけ医」として扱い、診療報酬体系上、それ以外の医師に比べて優遇する。
 かかりつけ医の認定については、麻酔科医のように厚労省が認定する資格とする、学会や日本医師会が認めた資格を法律上でも効力を持つものとする、などの選択肢があり今後検討を進める。
 かかりつけ医を持つかどうかは高齢者本人の意思に任せるが、できる限り利用を勧める。かかりつけ医がいる場合でも、病院など他の医療機関も直接受診できるようにする方針だ。
 また、24時間往診や短期入院、終末期の緩和ケアなど、かかりつけ医だけでは対応しきれない場合の支援態勢も整え、在宅を基本とした長期療養の体制整備も進める。
 日本医師会は今年1月に発表した指針で、「住民の住み慣れた地域での在宅療養」を支えるため「かかりつけ医機能の充実」を提言。だが、開業医でも専門分野ごとに細分化が進んでおり、患者の心身を総合的に診断できる医師は少ないのが実情だ。
 このため、かかりつけ医に必要な緩和ケアなどの技能を身につけられるよう、開業医に対する研修制度も充実させる。

病気腎の摘出時に検査せず 万波氏、移植11件で判明 indexへ

 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で万波誠・泌尿器科部長(66)が実施した11件の「病気腎」移植をめぐり、摘出手術中に摘出の是非や移植の適合性を診断する病理検査が一切行われていなかったことが、外部の専門医らでつくる同病院の専門委員会の調査でわかった。移植しようとする腎臓に病気が見つかった場合は通常、実施されており、専門委員らは「科学的妥当性に欠けた医療行為」と指摘。11件すべてが不適切と認定した。
 万波医師らが同病院を含む3病院で実施した計42件の病気腎移植のうち、同病院で摘出と移植を同時に行った6件と、ほかの病院で摘出された腎臓を同病院で移植した5件を合わせた計11件について、外部の専門医と徳洲会の医師計7人の専門委員が患者のカルテや、細胞を採取して調べた病理標本を分析した。
 各委員が上部組織の調査委員会に提出した報告書によると、11件すべてについて、摘出手術の際に病変部分の一部を切り取って病理医が検査する「術中生検」が実施されていなかった。術中生検を義務づけた取り決めなどはないが、がんを切除する場合はどの程度の部位を切ればいいか正確にわかるし、移植可能かどうかを最終的に判断できる。専門委員の一人は「臓器提供者の治療も移植患者のケアも考慮していないことを象徴する不作為」とみる。
 さらに、ネフローゼ症候群の患者の腎臓を二つとも摘出して移植したケースでは、患者がどういうタイプのネフローゼかを事前の検査で確かめないまま摘出していたことが、専門医の調査でわかった。この患者については万波医師とは別の医師が摘出手術の前に、東京の医大に腎臓の一部を検査用に送っていたことが判明。その病院に病理標本が残っていたことから、今回調べた結果、内科的治療を優先するタイプのネフローゼだったと診断されたという。
 別の専門委員は「専門委でこのネフローゼ患者について聞かれた万波医師は、全く別のタイプの病名を答えていた。病理検査も内科的治療もせずに患者の腎臓を二つとも摘出したことで、人工透析を必要とする腎不全患者を新たにつくってしまった」と批判する。
 一方、徳洲会病院側はこれまで「医学的評価だけでは病気腎移植の妥当性は判断できない」「摘出した患者も移植した患者も経過が良好」と主張。独自のリポートも作成している。調査委員会は3日の会合で万波医師から直接、意見聴取し、最終判断を示す方針。

平均寿命 男性は78.56歳、女性は85.52歳 indexへ

 厚生労働省は、日本人の平均寿命や年齢ごとの死亡率をまとめた05年の完全生命表を公表した。平均寿命は男性が78.56歳、女性は85.52歳で、前回00年の完全生命表よりもそれぞれ0.84歳、0.92歳延び、過去最高を更新した。
 完全生命表は国勢調査をもとに作成される。平均寿命は、厚労省が把握している主要国・地域の中では女性は世界一、男性は4位となっている。

メタボ症候群と予備軍、6年後に1割減 厚労省が目標 indexへ

 厚生労働省は、40歳から74歳で約2000万人いると見積もっているメタボリック症候群の人とその予備軍を、08年度から実施する新しい健康診断(新健診)と保健指導で12年度末までに10%、15年度末までに25%減らすという目標をまとめた。糖尿病や脳卒中など生活習慣病の患者を減らすとともに、医療費の伸びを抑えるのが狙い。
 2月28日に開かれた新健診に関する検討会で示した。現在は40〜74歳で6割程度とみられる健康診断の受診率を12年度末には70%に引き上げ、健診で「問題あり」とされた人の45%が保健師や管理栄養士から食事や運動について指導を受けることで、目標を達成するとしている。
 新健診では、企業や市町村が行っている健診を健康保険組合や国民健康保険などを運営するすべての保険者に義務づけ、健診の対象から漏れがちだった自営業者や専業主婦も対象とする。
 現在、新健診の検査項目や実施方法の検討が進められており、07年度予算案ではデータ管理システム開発費などで約60億円が計上されている。40歳以上の国民すべてをカバーする健診体制をどうつくるかなど課題は多く、医療経済の専門家からは健診が医療費の抑制に結びつくかどうかを疑問視する声も出ている。

心臓血管外科系ICU医師一斉退職へ 循環器病センター indexへ

 国内で実施される心臓移植の半数を手がけている国立循環器病センター(大阪府吹田市)で、心臓血管外科の集中治療科(ICU)に勤務する専属医師7人のうち5人が、今月末で一斉退職することが分かった。患者との意思疎通が困難なうえ、外科医との連携も難しく、医師を疲弊させたとの見方もある。同センターは今後、外科医を勤務に組み込むなど態勢を変更し、患者の受け入れに影響が出ないようにするという。
 同センターによると、昨春、40代の医長から「幅広い診療のできる施設に移りたい」などと辞職の申し出があり、慰留していた。しかし意思は固く、指導を受ける40代と30代の4人も相次いで辞職を申し出た。5人とも別々の医療機関に移るという。
 同センターは心臓や血管、脳など循環器病治療では国内を代表する施設。心臓血管外科のICUは20床あり、手術後の重症患者を年間1100人以上受け入れ、24時間態勢で管理している。
 ほとんどの病院は、執刀した外科医が集中治療にも携わるシステムになっているが、同センターはICUの専属医師を特化し、養成に力を入れている。八木原俊克副院長は「高度な知識と技術が必要だが、一定の空間の中で閉塞(へい・そく)感が漂う側面もある。激務だし精神面の負担は確かに大きい」と説明する。
 循環器病センターで研修医時代を過ごした心臓外科医は「ICUで苦労するということは、『外科医の手術の不手際を手当てしている』ともいえ、典型的な『縁の下の力持ち』だ」と振り返る。日本集中治療医学会の平沢博之理事長は「学会として重大な関心をもっている。どういう事情があったのか、できるだけ早く把握していきたい」と話している。

「親の被爆、影響見られぬ」 生活習慣病、2世を調査 indexへ

 広島、長崎の被爆者を親にもつ被爆2世を対象にした、初の大規模健康調査を00年から続けてきた日米共同運営の研究機関「放射線影響研究所」(広島・長崎両市、放影研)は28日、糖尿病や高血圧など6種類の生活習慣病について、親の被爆によってリスクが高まる証拠は現段階で見られないとする結果を発表した。ただ、断定には追跡調査が必要としている。2世への放射線の遺伝的影響は過去の調査でも確認されていない。
 放影研は前身のABCC(原爆傷害調査委員会)が47年に設立されて以来、原爆の放射線が人体に与える影響を調べてきた。2世の多くが生活習慣病にかかりやすい世代になったことなどから、発症要因に遺伝的要素がある糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、心筋梗塞(しんきんこうそく)、狭心症、脳卒中を今回調査した。
 対象者は両親またはどちらかの親が5ミリグレイ以上の被曝(ひばく)線量を浴びた広島、長崎に居住する被爆2世の1万559人。5ミリグレイは爆心地から約3キロの遮る物がない場所で浴びる放射線に匹敵する。
 このうち6種類いずれかの所見が見つかったのは5662人。比較対象として両親とも被爆者でない1392人も一緒に調査したところ、生活習慣病にかかるリスクは双方でほとんど差異がなかった。

子供のインフルエンザ異常行動で注意喚起 転落死続発で indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」をのんだ中学生が相次いでマンションから転落死した事態を受けて、厚生労働省は28日、インフルエンザにかかった子供を「2日間は1人にしない」ことなどを保護者に説明するよう求める通知を医療関係者らに出した。タミフルと異常行動の因果関係については否定的だが、服用に関係なくインフルエンザ患者が脳炎・脳症のため異常行動を起こすこともあるため、「事故を防ぐために考えられる措置をとった」としている。こうした注意喚起は異例。
 通知は、タミフルについて「現段階で安全性に重大な懸念があるとは考えていない」とし、タミフル販売前にもインフルエンザ患者が異常行動を起こしたとの報告があると指摘している。
 そのうえで万が一の事故の予防のため、小児・未成年者がインフルエンザで自宅療養する際は、タミフル服用の有無にかかわらず(1)異常行動が出る恐れがあること(2)2日間は患者が1人にならないよう配慮すること、を家族らに説明するよう医師らに求めている。
 タミフルは01年2月の国内発売以来、のべ約3500万人が使用した。昨年までに服用後の死亡が報告されたのは54人で、転落などの異常行動で亡くなったのは3人。愛知県蒲郡市と仙台市の中学生を含めると5人となる。5人の死亡時の年齢は12〜17歳。 通知の内容は厚労省のホームページで見ることが出来る。

医師・歯科医師、過去最多の66人を処分 厚労省 indexへ

 厚生労働省は28日、医道審議会医道分科会の答申を受け、刑事事件で有罪が確定するなどした医師45人と歯科医師21人の計66人の行政処分を発表した。処分件数は過去最多で、免許取り消しは4人、残りの62人は1カ月から4年の業務停止。3月14日に発効する。
 医療行為に関連した処分は、01年に自殺を防ぐため、患者の口にティッシュペーパーを詰めるなどして窒息死させた宝喜クリニック(東京都杉並区)の宝喜正身医師=業務停止1年=ら11人。
 主な処分は次の通り。

▽おがさわらクリニック(東京都板橋区)小笠原晋也医師=殺人【免許取り消し】
▽安田メンタルクリニック(愛知県豊田市)安田好博医師=強制わいせつ、準強制わいせつ【免許取り消し】
▽都立墨東病院(東京都墨田区)田辺貞雄医師=準強制わいせつ【免許取り消し】
▽北海道大学病院(札幌市)菅正之医師=準強姦(ごうかん)【免許取り消し】
▽岩本歯科医院(堺市)岩本勝四郎歯科医師=歯科医師法違反、詐欺【業務停止4年】
▽さいす歯科医院(さいたま市)斉須高英歯科医師=覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反【業務停止3年】
▽小山医院(大阪市)小山武俊医師=麻薬及び向精神薬取締法違反【業務停止3年】
▽優歯科クリニック(東京都小平市)松本孝夫歯科医師=恐喝、覚せい剤取締法違反【業務停止3年】
▽東京医科大八王子医療センター(東京都八王子市)松岡瑞医師=覚せい剤取締法違反【業務停止2年】
▽さくら歯科クリニック(沖縄県浦添市)田熊啓弘歯科医師=逮捕監禁、未成年者略取【業務停止2年】

テルモの補助人工心臓、欧州で販売承認 国内に先駆け indexへ

 テルモ(東京都渋谷区)グループの開発した補助人工心臓「デュラハート」が26日付で、欧州での販売承認を得たことが分かった。製造と臨床試験を担当してきた米子会社テルモハート(ミシガン州)が27日、明らかにした。国産技術だが、承認に時間がかかる日本に先駆け、海外で使われるようになる。
 患者の腹腔(ふくくう)内に埋め込むデュラハートの本体は、赤松映明・京都大名誉教授らが考案した「磁気浮上型遠心ポンプ」で、磁石の間に浮かせた羽根車を回して血液を押し出す。体外の電池で動き、弱った心臓の働きを補う。軸受けも人工弁もないため、血液が固まりにくく、耐久性に優れており、心臓移植までの「つなぎ」ではない、長期使用できる新しい人工心臓としても期待されている。
 テルモは実用化を急ぐため、承認の遅い日本を避け、欧州からのスタートを選んだ。04年1月からドイツ、オーストリア、フランスの計4病院で臨床試験を始め、33人に埋め込んだ。6カ月以上装着した患者は12人で、うち4人は1年を超えた。13人は心臓移植を受けたが、移植を断ってそのまま装着を続ける患者もいる。人工心臓そのものが原因と見られる死亡はなかった。
 ドイツで承認を得たことでEU(欧州連合)各国で販売できる。米国、日本でも申請準備を進める。

産婦人科医に無罪判決 出産直後の死亡事故で名古屋地裁 indexへ

 名古屋市港区の産婦人科医院で00年、出産直後の主婦(当時31)が死亡した事故で、医療ミスがあったとして業務上過失致死の罪に問われた医師桑山知之被告(48)の判決公判が27日、名古屋地裁であり、伊藤新一郎裁判長は無罪(求刑罰金50万円)を言い渡した。
 判決によると、主婦は00年8月31日午前、同医院に入院。男児を出産した直後に大量に出血し、同日夜に出血性ショックで死亡した。
 公判では、子宮の出口にある子宮頸管(けいかん)が裂けていたのが原因で出血性ショックに陥ったのかどうか▽施設や人員が整った大病院への搬送を怠ったと言えるか――が主な争点だった。
 検察側は「子宮頸管裂傷を見落としたうえ、早期に転院させる決断をしなかった過失がある」と主張。弁護側は「子宮頸管裂傷は存在せず、検察側が指摘する時点で転院させても救命できなかった」と反論していた。
 事故をめぐっては、遺族が冷凍保存していた遺体を愛知県警が司法解剖し、桑山被告を01年11月に書類送検。桑山被告は03年8月、名古屋簡裁で罰金50万円の略式命令を受けたが、無罪を主張して正式裁判を求めた。
 遺族は、桑山被告らに損害賠償を求める民事訴訟を起こし、名古屋地裁は昨年9月、約7700万円の支払いを命じた。民事の判決は、子宮頸管裂傷の存在を認めず、転院が遅れた点について責任を認めた。桑山被告は判決を不服として控訴している。

医療版の「事故調」 厚労省が検討 indexへ

医療事故  医療行為中の死亡事故について、厚生労働省は今春、警察以外の専門機関が原因を究明する制度の創設に向けて本格的に検討を始める。航空機と鉄道の事故を専門に調べる「事故調査委員会」の医療版を想定、制度のあり方を論議する検討会を立ち上げる。医師らが刑事責任を問われる事例が相次ぎ、動揺する現場の要望などを受けたもので、再発防止を重視する仕組みだ。厚労省は医師法改正も視野に入れ、すべての医療関連死を専門機関が調査する仕組みも検討、法務省や警察庁とも協議を始めた。
 警察庁によると医療事故の届け出は近年急増。遺族ら被害者側からも含めて03年以降、全国で200件を超え、05年の立件数は91件にのぼる。
 医師法21条は、死体に「異状」があると認めた場合、24時間以内に警察に届け出ることを医師に義務づけている。事件としての捜査が優先されるため、再発防止などにつながらないとして、医療界などから専門機関による原因究明を求める声が高まっていた。
 厚労省はまず専門機関のあり方や運営主体などについて論点を整理、3月中に素案を作る。専門機関による調査の公正性確保には公的機関の関与が不可欠として、運営主体には自治体や公益法人を想定。メンバー構成や調査権限を詰めている。
 そのうえで新年度早々には、制度のあり方を論議する検討会を発足。検討会は医療関係者や患者団体代表、法律家、法務省、警察庁関係者らで構成する方針だ。医療紛争を裁判以外で解決する制度導入の是非も併せて検討してもらうという。 また医師法21条には異状死の詳細な定義は示されておらず、各医療機関が独自に判断しているのが実情だ。このため厚労省は、異状死の定義など医師法21条のあり方や解釈についても法務省や警察庁と協議。異状死の届け先を警察以外にするなどの医師法改正も検討しているが、法務省などは、どんな専門機関ができるかわからない段階での論議には慎重な姿勢とみられる。
 調査対象となる死亡事故は「全国各地で相当多数に上る」と厚労省はみており、予算確保に加えて、調査する専門家らを恒常的にどう確保するかなども課題だ。
 厚労省は新制度について、「患者や遺族にとっても、事実を検証し、公正な情報を得ることができるため、医療の透明性が高まる」としている。

若年認知症「ピック病」で万引き 厚労省が調査 indexへ

ピック病 「ピック病」と呼ばれる認知症になった公務員らが、症状の一つである万引きをして社会的地位を失うケースが相次いでいる。脳の前頭葉の萎縮(いしゅく)で感情の抑制を失って事件を起こしてしまうためで、犯行時の記憶がないのが特徴だ。しかし、正確に病気を診断できる医療機関は少なく、厚生労働省の若年認知症の研究班も、初めてピック病の実態調査に乗り出した。専門医は「まじめに仕事をしていた働き盛りの人が万引きをして『なぜ』ということがあれば、ぜひ専門の医療機関を受診してほしい」と話している。
 脳の前頭葉と側頭葉の血流低下と萎縮で起きる認知症は「前頭側頭型」といわれ、うち8割が「ピック病」とされる。
 アルツハイマー病のような記憶障害が、初期はあまりみられないものの、時に、周囲の状況を気遣わない行動や万引きが症状として出る人もいる。ただ、本人は善悪の判断がつかず、厚労省の若年認知症の研究班メンバーの宮永和夫・群馬県こころの健康センター所長によると、欧米でも万引きなどの軽犯罪がピック病の症状の一つとして報告されているという。
 宮永医師が診断したケースでは、万引きの疑いで逮捕され、懲戒免職となった神奈川県茅ケ崎市の元文化推進課長、中村成信さん(57)がいる。
 中村さんは、昨年2月、自宅近くのスーパーマーケットでチョコレートとカップめんなど計7点(計3300円相当)を盗んだとして逮捕された。しかし、釈放後、話のつじつまが合わないなど家族が「おかしい」と気づき、大学病院を受診。「認知症の疑い」の診断が出た。このため、4月末、市の公平委員会に処分取り消しを求める不服申し立てをした。
 昨年末には、別の病院で脳の血流検査を受け、前頭葉と両側の側頭葉に明らかな血流低下がみられたため、「ピック病」の可能性が高いとされた。前頭葉の機能を調べる心理検査の結果なども合わせ、宮永医師がピック病の「軽度と中等度の間」で、発症は「04年1月以前と考えられる」と診断した。
 このほかに、会計事務所に勤める東京都内の50歳代の男性も、近所の文具店でボールペンや消しゴムなどを万引きする症状が出た。ひと月もしないうちに、同じものを盗んだ。しかし、本人に盗んだ意識はなく、外出時に家族が付き添ってトラブルを防いでいる。
 また、奈良県内の50歳代の放射線技師の男性は「仕事が難しい」と勤務先の病院を休職した。散歩帰りに近所の家の畑から、野菜を毎日のように持ち帰るようになり、苦情が来た。入院先でピック病と分かり、職場を辞めている。
 宮永医師は「万引き後に、ピック病と診断される人は少なくない」と指摘。「病気が原因でやった行為なのに、社会的な名誉を失い、その後の人生が大きく変わってしまうのは非常に残念だ」と話している。
 〈若年認知症〉 若年期(18〜39歳)と初老期(40〜64歳)に発症した認知症の総称で、アルツハイマー型のほか、脳血管性、前頭側頭型などがある。「ピック病」は、1898年、精神医学者アーノルド・ピックが初めて症例を報告したことから名づけられた。ただ、画像診断技術の向上などで、正しく診断できるようになってきたのはこの10年。うつ病や統合失調症と誤診されているケースも多い。
 若年認知症の患者数の調査は、旧厚生省の研究班が96年に推計した2万5千〜3万7千人があるだけで、現在、ピック病を含め、10年ぶりの実態調査が進められている。

53例目の脳死判定 札幌医 indexへ

 札幌医大病院(札幌市)で入院中の20代の女性が25日、臓器移植法に基づく脳死と判定され、臓器が摘出された。97年の法施行後、53例目の脳死判定で、脳死臓器移植としては52例目。
 日本臓器移植ネットワークによると、心臓が国立循環器病センター(大阪府吹田市)で40代女性、右肺が大阪大で40代女性、左肺が岡山大で40代女性、肝臓が東京大で30代女性、膵臓(すいぞう)と左の腎臓が九州大で30代男性、右の腎臓が市立札幌病院で50代男性、小腸が東北大で20代男性にそれぞれ移植される予定だ。

体外受精や代理出産の是非、厚労省が意識調査へ indexへ

 体外受精や代理出産に関する意識を探るため、厚生労働省は国民や産婦人科医ら計8400人を対象にした調査を実施する。タレントの向井亜紀さんの米国での代理出産をめぐる裁判などをきっかけに生殖補助医療への関心が高まっていることから、今後の議論に役立てるのが狙いだ。体外受精などで生まれた子どもの心身の健康調査に関する研究と合わせ、不妊治療の実態や意識の把握に本格的に乗り出す。
 意識調査は、無作為に抽出した一般の国民5000人、不妊治療を受けている患者2000人、産婦人科と小児科の医師1400人が対象。3月末までに結果をまとめる。
 国民と患者には、体外受精や代理出産など不妊治療の技術に関する知識や、子どもを望んでいるのに恵まれない場合、自らこうした技術を利用するか、社会的に認めるべきかどうかといった意識を聞く。昨秋、長野県の50代後半の女性が「孫」を代理出産していたことが明らかになったケースも踏まえ、代理出産を認めるなら、姉妹か、母か、第三者も含めてよいのかなども尋ねる。
 医師に対しては、どんな不妊治療をしているのかなど、現状と意識を調べる。米国やフランスなど海外の法整備や判例も現地調査する。
 一方、生殖補助医療で生まれた子どもの心身への影響については、国内に十分なデータがない。このため新年度から、公募に応じた研究チームが、誕生から小学6年生まで2000人以上を追跡する調査研究を行う。この研究では、対象者の選定や保護者からの同意取り付けの方法、調査項目、データの管理・分析方法などを検討する。

出生前診断の新しい指針案を公表 日本産科婦人科学会 indexへ

 胎児の染色体や遺伝子の異常を妊娠前期に調べる「出生前診断」や、受精卵の段階で調べる「受精卵診断」などについて、日本産科婦人科学会は24日、新しい指針(会告)案を示した。医療の進歩に伴い、検査技術や精度は年々上がっているが、事前に検査内容についての十分な説明がなかったり、不必要な検査が行われたりしている実情もあり、学会として一定の見解を示した。
 約20年前に定められた先天異常の胎児診断に関する会告を更新した。今後、学会員の意見をふまえたうえで、4月の総会で正式決定する。
 会告案では、出生前親子鑑定は裁判所の要請など法的措置の場合を除き行わない▽受精卵診断はまだ研究段階にあり、倫理的側面からも慎重に取り扱う必要がある▽ダウン症などの診断に使われる母体血清マーカーも慎重に取り扱う――ことなどを新たに盛り込んだ。

移植学会幹部らが「万波移植」を批判 臨時理事会を開催 indexへ

 日本移植学会(田中紘一理事長)は24日、東京都内で臨時理事会を開き、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(66)らによる「病気腎」移植について、3月末に予定されている関係5学会の合同会議で統一見解をまとめることを確認した。5学会はすでに病気腎移植を原則禁止する方針を固めており、同学会副理事長の大島伸一・国立長寿医療センター総長は「医療水準から大きく逸脱している」と厳しく批判した。
 臨時理事会後の会見で、田中理事長は「倫理委員会が設置されていないなど、(移植を実施した)病院の態勢などに多くの不備があった」と指摘。「移植学会単独ではなく、5学会で一緒に結論を出し、今後の方針を明確に打ち出す」とも述べ、どういうケースが例外として許されるかなどを「指針」の形でまとめることを示唆した。
 腎移植が専門の大島副理事長は「がんの腎臓を移植するような万波医師らの行為は、科学に基づいた現在の医療水準から著しく外れている」と断言。「なぜそのような医療行為を行ったのか、カルテに記載したり、インフォームド・コンセント(説明と同意)を文書の形で残したりといった倫理面でも水準を満たしていない」と述べた。
 万波医師を擁護する動きに対しては、「医療水準から外れたことを容認するようなら、医学会の存在価値などない。感情的な同情論と医学的な評価は、全く別次元の問題だ」との見解を示した。

統合失調症に関係する遺伝子発見 理研など indexへ

 ざっと100人に1人が患う統合失調症の発症に、中枢神経系に多い酵素「カルシニューリン」の遺伝子が関係するとみられることを、理化学研究所(理研)と米マサチューセッツ工科大(MIT)の共同研究グループが明らかにした。新たな治療薬の開発につながる可能性がある。米科学アカデミー紀要電子版に成果が掲載された。
 カルシニューリンは、神経伝達物質であるドーパミンとグルタミン酸の働きを調整する機能がある。カルシニューリンをつくったり、働きを調節したりする遺伝子に異常のあるマウスは、統合失調症に似た行動異常を示すことが知られている。グループは関連する14個の遺伝子について、日本人の統合失調症患者への影響度合いを遺伝解析の手法を使って調べた。
 その結果、14個のうち特定の4個の遺伝子に異常があると発症確率が高まることが分かった。一つは、白人系米国人やアフリカ系米国人で統合失調症との関係が示されていたが、残る三つが発症に関与することが明らかになったのは初めてという。
 幻覚や妄想などを主な症状とする統合失調症の治療薬は、ドーパミンの働きを妨げるものがほとんどだが、効きにくい患者もいる。理研脳科学総合研究センターの吉川武男チームリーダーは「カルシニューリンを標的にした治療薬ができれば、より多くの患者に効果が期待できる」と話す。

出産時の医療事故の救済 来年度中の制度導入めざす indexへ

 出産に伴う医療事故の被害者を救済する「無過失補償制度」の創設をめざす準備委員会(委員長・近藤純五郎弁護士)の初会合が23日、東京都内で開かれた。医療関係者や法律家ら約20人が参加。今後、補償対象の範囲や再発防止につなげる仕組みづくりなどについて議論を進め、07年度中の制度創設をめざすことを確認した。
 同制度は、出産時の医療事故で産科医の過失が認められなくても、脳性まひの障害を負った被害者に補償金が支払われる「保険」。制度化をめざす自民党の検討会が昨年11月、医療機関が負担する保険料を財源とするなどの制度の枠組み案を提示。これに基づき、日本医療機能評価機構(東京)に設置された準備委員会で、制度を運営する組織の体制などを決めることになった。
 初会合では、今後、補償対象となる脳性まひ児の発生率調査を実施するほか、運営組織に再発防止策を検討する「事故分析委員会(仮称)」を設置することなどが提案された。4月以降、委員会の下にワーキングチームを設け、患者や産科医にも意見を聞きながら、制度の詳細を議論していくという。

気腫疽菌、人へ初感染 千葉で58歳男性が死亡 indexへ

 千葉県内で昨年2月、男性(58)が「気腫疽(きしゅそ)菌」と呼ばれる破傷風菌の仲間に感染し、死亡していたことが22日、国立感染症研究所(東京都新宿区)などの調べでわかった。人への感染は世界で例がないという。
 研究所などによると、男性は土木作業中に右胸にけがをし、肋骨(ろっこつ)にひびが入った。翌日、自宅で心肺停止状態になり、同県船橋市立医療センターに運ばれたが、その日のうちに亡くなった。患者から細菌が検出されたものの、病院で特定できなかったため、研究所が詳しく分析したところ、「気腫疽菌」に感染していると分かった。感染経路は不明だが、けがをした胸から菌が侵入した可能性があるという。
 気腫疽菌は、土壌で生息し、牛や羊などの家畜に感染すると筋肉が壊死(えし)し、致死率が高い。国立感染症研究所の荒川宜親・細菌第二部長は「通常の検査ではほかの菌と区別しにくいため、国内でも実態を調べる必要がある」と話している。

「がんに効く」と未承認薬販売、容疑の産婦人科医を逮捕 indexへ

 「がんに効く」などとうたい、未承認の薬を売ったとして、新潟県警生活保安課と長岡署は22日、同県長岡市川崎町、産婦人科医で健康食品販売会社社長の勝見喜也容疑者(67)を、薬事法違反(未承認医薬品の広告、医薬品の無許可販売)の疑いで逮捕した。一部容疑を否認しているという。
 調べでは、勝見容疑者は06年7月、キノコの一種のハナビラタケが原料の錠剤型の健康食品に厚生労働相の承認を受けずに「NK―7」「アンデスの花」などと名付け、同県内で市販されている月刊情報誌上で、「認知症や癌(がん)の心配もなく毎日を気楽に過ごせる」などと効能をうたった。また、無許可で同県など1都2県に住む3人に、1人あたり60錠2万円、計6万円で販売した疑い。
 錠剤は東京都内の健康食品販売会社から1錠44〜80円で購入。昨年4月〜今年1月に、25都府県の35〜75歳の男女148人に販売、計約1600万円の売り上げがあったという。
 同容疑者は産婦人科医院を開業する傍ら、05年8月に健康食品会社「有限会社フェニックス」を設立。雑誌や全国で販売される健康雑誌の付録冊子、口コミなどを通じて客を勧誘していた。電話をしてきたがん患者らの症状を聞き、「1カ月間はお試し期間で60錠2万円、正式契約すると1カ月12万6千円」などと説明して販売したという。

赤ちゃんポスト、厚労省が「適法」 熊本の病院申請分 indexへ

 熊本市の慈恵病院(蓮田晶一院長)が、保護者が育てられない新生児を預かる「赤ちゃんポスト」の設置を市に申請している問題で、厚生労働省は22日、市に対し「医療法や児童福祉法などに違反しない」として設置を認める見解を示した。ただし、今回は安全に配慮した病院からの申請であることを考慮した判断で、「赤ちゃんポストすべてにあてはまる方針を示したものではない」と強調。設置病院は、新生児の安全や福祉に責任を持つべきだとの考えを示した。
 慈恵病院は昨年12月、ポスト設置に伴う施設の変更許可を医療法に基づいて熊本市に申請していた。しかし、直接の許可者となる市は同法だけでなく、「保護責任者遺棄などの刑法や児童福祉法に触れるかどうかの観点からも検討が必要」として厚労省や法務省などと協議を続けていた。
 この日、厚労省を訪れた熊本市の幸山政史市長に対し、同省家庭福祉課などは、新生児の遺棄を助長する可能性があることに懸念を示しながらも、ポスト設置許可に法律上は問題ないとの見解を説明した。
 そのうえで、市が許可する場合、病院に(1)ポスト近くに児童相談所や保健センターへの相談を促す掲示をする(2)赤ちゃんを預かったら必ず児童相談所へ通告する(3)安全や健康への配慮を徹底する(4)親が希望した時は、赤ちゃんを返せる仕組みを整える、ことを指導するよう要望した。
 さらに厚労省の辻哲夫・事務次官は同日の定例会見で、「赤ちゃんの遺棄はあってはならないが、遺棄されて死亡するという事件が現実にある。今回は十分な配慮がなされてポストがつくられれば、認めないという理由はない」と述べた。
 一方、同省との話し合いを終えた幸山市長は「厚労省の考え方と大きな違いはない」と述べつつも、同省の見解を改めて文書で回答するよう要望したと説明。ポストを許可するかどうかについては「病院側に説明を求めている事項もあり、それらの回答が出そろった段階で総合的に判断する。できるだけ早く結論を出したい」と述べた。

タミフル処方調査の徹底指示 中2転落死で厚労省 indexへ

 愛知県蒲郡市でインフルエンザ治療薬タミフルを服用したとみられる中学2年の女子生徒(14)が、マンションから転落死した事故を受け、厚生労働省は22日までに、販売元の中外製薬に、服用後の情報を徹底して集めるよう指示した。
 事故は今月16日あった。これまでもタミフルの服用者が異常行動などで死亡した例が報告されているものの、薬との因果関係が認められた例はない。ただ、報告例があることから、タミフルの添付文書に重大な副作用として、精神・神経症状の項目に「異常行動、幻覚、妄想」などが記載されている。
 この問題を巡り、薬害タミフル脳症被害者の会などが23日、厚労相に要望書を提出する。

病院選び、ネットで比較 都道府県HPに詳細情報 indexへ

 患者が病院や診療所を選ぶ目安となる医療機関の情報が、新年度以降、各都道府県のホームページなどで公開されるようになる。内容は、診療科目などの基本情報から病気ごとの手術件数、差額ベッド代などの費用まで幅広く、各医療機関を比べられるようになる見通しだ。医療の「質」を基準に医療機関を自ら選ぼうとする患者が増えているためで、厚生労働省が公開する項目を検討している。一方で同省は、医療機関が看板などで独自に行う広告では、禁止する広告の範囲を広げる方針だ。
 これまで、インターネットなどでどんな情報を公開するかは医療機関の判断に任されてきたため、情報量や公開方法には差があった。このため4月に施行される改正医療法は、都道府県にホームページなどで「医療情報」を公開することを義務づけた。
 情報の公開対象は病院、診療所、歯科診療所、助産所で、公開内容はそれぞれ数十項目にわたる見通し。病院の場合、診療時間などのほか、学会などが認定する専門医の配置数、患者数、入院の平均在院日数、差額ベッド代などだ。胃がんや肺がん、心臓病など決められた疾患について、医療機関が扱った手術や検査の件数なども示す。
 死亡率や再入院率などは、重症患者を受け入れているかなどによって差ができるため、現段階では客観的に評価できないとして公開は見送る。代わりに、その医療機関が死亡率などを分析しているか、患者にその結果を情報提供できるかを公開対象とした。
 医療機関が誤った情報を報告した場合は、都道府県が報告内容の是正を命じることができる。
 また、厚労省は、医療機関が看板などで出す広告についても、患者への情報提供を充実させる目的で規制を緩和する。現在は「病床数」「入院設備の有無」など具体的に定められているが、今後は医療機関の裁量の幅を広げる。
 一方で、禁止広告の範囲は広げ、現在の「虚偽」「比較」「誇大」に加えて(1)公序良俗に反する内容(2)客観的な事実と証明できない表現、なども規制する。例えば、「絶対安全な手術」という文句は医学上ありえない虚偽広告、患者の体験談は客観的な事実と証明できない表現とみなされる。同省はガイドラインで具体例を示す方針だ。

40〜64歳の介護保険料は平均4.0%増 07年度 indexへ

 40〜64歳の一人当たりの介護保険料が、07年度は前年度比4.0%増の平均4万9476円になるとの試算を、厚生労働省がまとめた。加入する医療保険や収入によって個人差はあるが、保険料負担が労使折半となる会社員の健康保険組合の場合、本人負担分は月額で平均2062円となり、初めて2000円を超える。
 介護保険制度が始まった00年の介護保険料は、年額2万4901円(確定値)だった。年々高くなっているが伸び率は鈍化しており、同省介護保険課は「制度が定着し、給付が適正化されつつある」とみている。

検尿、新健診でも必須項目に 厚労省が方針転換 indexへ

 08年4月から導入される新しい健康診断(新健診)で、尿たんぱく検査などの検尿が必須項目からはずされていた問題で、厚生労働省は19日、検尿を従来通り、必須項目とすることを決めた。必須項目から除いたことに、日本腎臓学会などから「腎臓病の発見が遅れ、透析患者の増加を招きかねない」と反発が強く、厚労省側が一転、譲歩した形だ。
 この日あった新健診の「在り方に関する検討会」で、厚労省が尿たんぱく検査と尿糖検査を必須項目に盛り込むなどした修正案を提出、了承された。
 新健診は、生活習慣病の予防などを目的に、40歳以上を対象に実施する。尿たんぱく検査は、現行の老人保健法に基づく健診や労働安全衛生法による職場健診などで必須項目になっている。
 しかし、昨夏公表された新健診の暫定案で、「腎不全や透析予防に効果があるという証拠がない」(厚労省生活習慣病対策室)などの理由で、「医師の判断で選択的に実施する項目」に格下げされていた。日本腎臓学会理事長の菱田明・浜松医科大教授は「要望を受け入れてもらったと考えており、大変ありがたい」と話している。

妊婦は歯が命? 福岡市が検診、出産支援 指定市3例目 indexへ

 「一子産むと一歯失う」とも言われることが多い妊婦の歯の検診を、福岡市が4月から始める。少子化対策の一環で、歯科医の診断を妊娠中に1回、自己負担500円で受けられる。近年は歯周病と早産の因果関係も指摘されており、妊娠や出産を控えた女性の不安を減らす助けになりそうだ。
 一般的に妊娠時は歯の疾患にかかりやすいとされる。厚生労働省の歯科疾患実態調査(05年)によると、1人あたりの虫歯の平均本数は15〜19歳で男性4.9本、女性3.8本。25〜29歳で男性8.8本、女性9.6本と逆転し、さらに上の年代でも女性の方が2本程度多い。
 かつては、出産でカルシウムを子どもに取られて歯を悪くすると言われた。だが、疑問の多い俗説のようだ。
 厚労省などによると、つわりの影響で歯磨きがしづらくなる、食事の回数が増えるなどの理由で、虫歯になる危険が高まる。ホルモンのバランスが変わり、歯周病を招く細菌が口内で増えやすくなるのも一因という。
 さらに、歯周病の炎症に関係するサイトカインという物質の増加が子宮筋の収縮を促して早産を招く、という学説が最近注目されている。研究を手がけた北海道医療大の古市保志教授は「歯周病は全身の健康状態に様々な影響を及ぼす。妊娠中は毎日の歯磨きだけでなく、診察も受けてほしい」と話す。
 福岡市は4月から、母子健康手帳に歯科の受診券をつける予定で、妊婦の約15%にあたる年1800人の受診を見込む。予算額は243万円。自己負担500円で任意の歯科医院で虫歯や歯周病の診断、衛生指導を1回受けられる。
 市によると、政令指定市では名古屋、広島に次いで3番目の試み。91年から無料実施している名古屋市では年6300人ほどが受診しているという。

乳がんリスク、出産未経験なら2倍 初潮・肥満も関係 indexへ

 乳がんと生理、体格などとの関連を調べていた厚生労働省の研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)は21日、「初潮が早い」「背が高い」女性ほど、がんのリスクが大きいという分析結果を発表した。「出産経験のない」女性にも乳がんが多く、こうした傾向は、欧米の研究とも一致した結果という。
 対象としたのは、全国10府県の40〜69歳の女性5万5000人。研究班は90年と93年に、対象者の体格や出産経験などを聞き、約10年間にわたって追跡調査した。
 その結果、閉経前の女性では、初潮を迎えた年齢が「14歳未満」のグループは、「16歳以上」に比べ乳がんのリスクが4倍だった。閉経した年齢でみると、「54歳以上」が「48歳未満」の2倍だった。研究班によると、女性ホルモンの分泌が影響している可能性があるという。
 また、出産経験のない人は、ある人に比べてリスクが1.9倍だった。子どもが多いほど、がんになっている女性が少なかった。
 身長でみると、「160センチ以上」が「148センチ以下」に比べ、閉経前で1.5倍、閉経後で2.4倍だった。栄養状態などが関係しているとみられる。閉経後の女性では、体格指数(BMI)が高く太っているほどがんが多かった。
 がんセンターの岩崎基・ゲノム予防研究室長は「自分で意識して避けられるリスクは肥満。ほかの要因は自分で管理できないので、定期的に乳がん検診を受け、早期に発見してほしい。今後は個人ごとにリスクを判断できるシステムづくりを考えたい」と話している。