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高血圧薬に抗アレルギー薬混入 協和発酵が自主回収 indexへ

 協和発酵工業が製造販売している高血圧の治療薬「コニール」の10錠入りのシート包装の一部に、アレルギー治療薬「アレロック」の錠剤が混入し、6691万錠分の自主回収を始めていたことが13日、明らかになった。今までに混入が見つかったのは2件で、同社は健康被害は出ていないと説明している。
 混入した恐れがあるのは、同社の宇部工場(山口県)で06年12月〜07年3月に製造し、包装された10錠入りの669万シート。10日から回収を始めた。混入したアレロックのおもな副作用は眠気という。
 同社によると、8月7日に新潟県の医院で、同月28日に福岡県の調剤薬局で混入したシートがそれぞれ一つ見つかった。宇部工場でアレロックの検査に使った容器に錠剤が付き、それをコニールの検査に持ち込んだためとみられるという。
 コニールは同社の医薬事業の主力製品で06年度の売上高は263億円。問い合わせは、同社医薬品情報センター(0120・850・150)。

大気汚染とぜんそくの関係調査へ 二十数万人を対象 indexへ

 幹線道路に近く自動車の排ガスによる大気汚染が激しい地域に暮らすことで、呼吸器疾患のリスクがどのぐらい高まるかを調べるため、環境省は今冬から二十数万人の成人を対象に大規模な疫学調査をする。同省によると、これほどの規模の調査は世界的にも例がないという。
 同省が11日発表した計画によると、関東、中京、関西の6都府県の9市区で、交通量の多い国道や高速道路など沿いに住む40〜74歳の二十数万人を対象に、10年度まで続ける。質問票で健康状態などを調べ、排ガスの指標となる、すす成分の元素状炭素(EC)や窒素酸化物(NOX)などにどれだけさらされているかを算出し、ぜんそく症状との関連を評価する。一部の人については慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)との関係も調べる。

ジェネリックの品質管理強化へ 厚労省に新機関 indexへ

 厚生労働省は後発医薬品(ジェネリック)の普及を目指して来年度から、品質管理の強化に乗り出す。特許切れの薬を別のメーカーがつくる後発薬は、安価で医療費抑制につながると期待されているが、品質への不安などからシェアが伸び悩んでいる。同省は、品質の苦情などがあった後発薬について、科学的に検証する検討会を国立医薬品食品衛生研究所(東京)に設け、医師や患者の不安解消をめざす。
 「後発医薬品品質情報検討会」は、研究所内に大学教授や製薬会社関係者ら約10人でつくる。後発薬の品質について医師や患者から苦情が寄せられたり、学会や論文で疑問が出されたりした際、その内容を科学的に検証し、回答する。必要に応じて品質試験も行う。
 また、これまで原則都道府県が行ってきた後発薬の製造工場への立ち入り検査に、来年度からは国も乗り出す。
 国内の04年度の後発薬シェア(数量ベース)は16.8%で、米国の56%、英国の49%などと比べると著しく低い。処方する医師や患者の一部に、品質への不安が残ることが背景にあるとみられる。
 同省は後発薬について「厳しい審査を経て承認しており、安全性や効果が先発薬に劣るわけではない」(審査管理課)との立場だが、苦情などを科学的に検証する仕組みができれば、医師や患者の安心につながり、普及に弾みがつくと判断した。
 政府は後発薬の数量シェアを12年度までに30%にする目標を掲げる。厚労省は目標のペースで普及すれば、医療費の国庫負担を年間約200億円削減できると試算する。

原告団、舛添厚労相に面会求め座り込み C型肝炎訴訟 indexへ

 薬害C型肝炎訴訟の全国原告団(山口美智子代表)らが10日、和解による早期解決と患者救済を求め、東京・霞が関の厚生労働省前で座り込みを始めた。舛添厚労相に対して原告団との面会と謝罪、和解協議のテーブルにつくことなどを要求し、納得のいく回答が得られるまで座り込みを続けるという。
 同訴訟では五つの地裁判決のうち4地裁で国が敗訴しており、原告らは「国の加害責任は揺るがない」と主張。原告は「1日120人の肝炎患者が亡くなっており、解決は待ったなし」などと訴えた。

「ドナー辞退禁止」文書、不適切 骨髄移植財団 indexへ

 骨髄移植の仲介をしている骨髄移植推進財団が、骨髄を提供するドナーに「最終確認後は撤回できない」と説明していることについて、世界骨髄バンク機構が、最終確認後も辞退できることを定めた国際基準に反している、と指摘していたことが分かった。財団は最終確認の際に使う文書の変更を検討している。
 同財団によると、世界骨髄バンク機構の基準は、ドナーについて「提供の辞退はいかなるときにも認められなければならない」と定めている。また、欧米の骨髄バンクでは通常、同意はいつでも撤回できるとドナーに伝えるという。
 だが財団では、事業開始直後の92年ごろから、ドナーの意思を最終確認する際、「同意書に署名捺印(なついん)したあとは撤回できない」とする文書を使ってきた。同財団は「最終合意後は移植を前提に、多量の抗がん剤の投与や放射線治療など患者の負担が大きい治療が始まる。撤回すると患者の命にかかわると考えてきた」と説明している。

救急車の出動件数523万件、史上初の減少 消防庁調べ indexへ

 06年の救急車の出動件数は約523万件で前年より約5万件少なく、史上初めて減少したことが7日、総務省消防庁のまとめでわかった。
 自治体の消防機関が救急業務を担うことが法で定められた1963年以降、出動件数は年々増え、98年からは毎年、前年比5%前後ずつの増だった。同庁は交通事故での出動が減ったり、インフルエンザが前年ほど流行しなかったりしたことが減少の理由で、高齢化の中、今後も出動は増えるとみている。

「産科救急体制の整備を」学会など厚労相に要望 indexへ

 日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は7日、奈良県や千葉県で妊婦の搬送先が見つからない問題が相次いだことを受け、舛添厚労相に面会し、産科救急医療の体制を整備するとともに、産婦人科医不足問題にも対応することなどを求めた。舛添氏は「産科医不足は最大の問題だと考えている。全力で取り組む」と答えた。
 また、産婦人科医会は都道府県支部に、地域の周産期医療のネットワークが十分に機能しているかどうか検証するための調査を行い、問題点などをあげてもらうよう求めたことを明らかにした。

夕張、救急車もピンチ 老朽化、搬送中にエンスト indexへ

 北海道夕張市の老朽化した救急車が、急病患者の搬送中に高速道路で動かなくなり、他の自治体の救急車の助けを借りて急場をしのいでいたことが分かった。夕張市の救急車は2台。いずれも札幌市などの基準では更新期を過ぎているが、財政破綻(はたん)した夕張市は自力で新車を購入できない。「夕張市民に安心を」。藤倉肇市長が6日朝、北海道庁を訪ね、「新車」の配備を陳情した。実現までは老朽車をだましだまし使っていくしかないという。
 市消防本部自前の救急車がエンストしたのは、8月15日午前7時すぎ。急患の搬送は、財政難のため、市の基幹病院だった市立総合病院(171床)から診療所(19床)に衣替えした夕張医療センターからの要請で、苫小牧市立病院に向かっていた。それが、道央自動車道の千歳インター付近で完全にエンジン停止してしまったという。
 焦った救急隊員は近くの千歳市消防救急隊に応援要請。15分ほど現場で待っただけで代替搬送してもらったため事なきを得た。
 この救急車は、96年購入で走行距離12万4000キロ余。点検した結果、エンジンの交換が必要だったが、財政事情から修理代を含め47万円の中古のエンジンにせざるを得なかったという。
 00年に購入した他の1台も、走行距離はすでに13万5000キロ。札幌市消防局の基準(購入から6年または走行距離12万キロ)なら、どちらも更新期をとうに過ぎている。
 「これでは夕張市民は安心して暮らせない。せめて1台は新しく」
 藤倉市長は道庁への陳情を前にこう話した。
 救急車の新車は約1900万円。仮に陳情が実っても、中に積む救命措置機材や消防用無線などの内装費用約1300万円は市の負担になりそうだが、財源のめどは立っていないという。

妊婦拒否、延べ16病院 救急搬送、千葉でも indexへ

 千葉市で昨年、30代の妊婦が病院への救急搬送を16回断られ、救急隊を呼んでから1時間後に病院で切迫流産と診断されていたことが5日、わかった。千葉市消防局は「救急搬送の遅れと切迫流産の因果関係は不明」としている。
 同局によると、妊婦は昨年の夜間に救急搬送された。同局が市内の病院などに受け入れを交渉したが難航。約1時間後に千葉大医学部付属病院に搬送されたが、女性は切迫流産と診断されたという。
 同局によると、同市では昨年1月から今年7月までに、妊婦か妊婦の可能性がある救急搬送患者200人以上のうち、45人が一度は病院に拒否されたことがあるといい、うち4人は5回以上受け入れを断られたという。同局は個別のケースの詳細については明らかにしていない。
 同局は、かかりつけ医がいなかったり、何らかの理由で受け入れられなかったりした場合、市立病院や当番の病院に受け入れを要求するが、断られた場合は、千葉市外の病院を含む「県救急医療システム」で受け入れ先を探すことにしている。

医療費完全無料、中学生までの大幅拡大相次ぐ 愛知県 indexへ

 愛知県内で、子どもの医療費無料化を、来年4月から中学卒業まで大幅に拡大すると表明する自治体が相次いでいる。特に財政力の高い西三河8市のうち豊田、岡崎、安城、刈谷の4市が一斉に実施する予定だ。同県内で現在実施しているのは1市2村だが、来年4月には中学卒業までの入通院医療費無料化が7市2村まで広がる見通しで、今後さらに増える可能性もある。
 岡崎市では5日午前、柴田紘一市長が9月定例市議会の一般質問で、「子育て支援策」として来年4月からの実施を答弁した。刈谷市は7月の市長選で初当選した竹中良則市長が、4日の市議会で引き上げを表明した。
 両市と豊田、安城の4市は現在、小学校入学前までの未就学児を医療費無料の対象としているが、一気に9歳分引き上げることになった。
 同県内では、すでに弥富市、飛島、豊根両村で中学卒業まで無料。大府市が今年10月から実施する。豊田、日進の両市は今年8月、来年4月からの実施を表明したばかりだ。この結果、来年4月には同県内7市2村で中学卒業までの医療費が完全に無料化される見通しだ。
 この背景には、神田知事が知事選公約で、来年度から県の助成制度を現行の4歳未満児から通院は就学前、入院は中学卒業までと大幅に拡大させる方針を打ち出したことがある。
 これまでも、財政力の豊かな自治体を中心に県の助成に上乗せした医療費無料化が実施されていたが、県の助成の大幅拡大が自治体の無料化拡大を後押しした形だ。
 特に、西三河地域を中心に、自動車関連産業の好景気で子育て世代の人口も大きく伸びている。財政余力が大きく、入院では中学卒業まで無料としている自治体もある。子どもの医療費無料化を近隣市と競ってきた経緯もあり、さらに追随の動きが出ることも予想される。
 西三河では、今年3月にいち早く表明した安城市の神谷学市長は「子育て支援は最重要課題の一つ。医療費無料は、市民の要望も強い」と話している。

医療用麻薬、違法に廃棄 愛知の4病院 indexへ

 誤って調剤した場合、行政の立ち会いの下で廃棄しなければならないモルヒネなどの医療用麻薬を、愛知県内の民間の4病院が勝手に廃棄したケースが5〜7月に計4件あったことが同県の調べで分かった。同県内ではこうした違反が昨年は1件もなく、県は短期間に立て続けに発生した点を重視。麻薬・向精神薬取締法違反に当たるとして、これらの病院に始末書の提出を求める行政処分をした。
 誤って調剤したり、汚染、期限切れなどで使えなくなったりした医療用麻薬を廃棄する際は、県などに事前に麻薬廃棄届を提出し、県の麻薬取締員や保健所職員の立ち会いで焼却などによって廃棄しなければならない。
 しかし、4病院ではモルヒネの希釈割合を間違った注射液などを勝手に処分し、事後に廃棄届を出していた。各病院とも「廃棄後に届け出ればいいと思い違いしていた」と説明したという。
 患者の病状変化などで使わなかった医療用麻薬を廃棄する場合は、病院の麻薬管理者が廃棄後、30日以内に県へ届けることになっており、これと誤ったらしい。
 県は7月中旬、県医師会や県薬剤師会など医療関係8団体などに、適切に廃棄するよう通知した。

乳がん検診率、3年後に65%目標 推進企業ネット indexへ

 ピンクリボン運動の一環として、乳がん検診の受診率の向上を進めている企業のネットワークが4日、東京都内で検討会を開いた。ワコールホールディングス、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど13社が参加し、女性社員らの乳がん検診の受診率の目標を「3年後に65%」とすることを決めた。
 05年度の乳がん検診の受診率は全国平均で17.6%。検討会に参加した企業の受診率の平均は44%で平均より高いものの、「さらに高める取り組みが必要」という意見でまとまった。
 受診率が高い企業の取り組みを参考に、行動計画も作った。今後、各社幹部の活動参加や検診費用の会社負担、啓発セミナーの開催などを盛り込み、他の企業にも参加を呼びかけていく。

ムコ多糖症の新薬、10月に承認へ 舛添厚労相が見通し indexへ

 舛添厚生労働相は2日放送の日本テレビの番組で、遺伝性の小児難病「ムコ多糖症」の新薬について、「10月初めには承認する」との見通しを示した。薬事・食品衛生審議会の答申前に、厚労相がテレビで新薬承認に言及するのは異例。
 代謝物質の「ムコ多糖」が体内にたまり、臓器障害や筋力の低下などが進行する病気で、国内患者数は数百人とみられる。病気は7型まであり、1型の治療薬は昨年10月に承認。現在は2型と6型の治療薬の審査が行われており、舛添氏は100〜150人程度の患者がいる2型の治療薬の承認見通しを示した。
 厚労省はムコ多糖症治療薬を「希少疾病用医薬品」に指定し、米国での治験データなども活用しながら優先的に審査してきた。

糖尿病は万病のもと アルツハイマー発症4.6倍 indexへ


 糖尿病やその「予備群」の人は、そうでない人よりアルツハイマー病になる危険性が4.6倍高いことが、九州大の清原裕教授(環境医学)らの研究でわかった。福岡県久山町の住民約800人を15年間、追跡して分析した。がんや脳梗塞(こうそく)、心臓病も発病しやすいという。糖尿病が、失明などの合併症に加え、様々な病気の温床になることが浮かび、その対策の重要性が改めて示された。
 九大は久山町で1961年から住民健診をして、生活習慣や体質と病気の関係を研究。死亡した場合には解剖への協力を求めている。
 清原さんらは85年時点で、神経疾患などを研究する米国立衛生研究所の研究機関の基準で認知症ではないと判断した65歳以上の826人を追跡。00年までに集めたデータの解析を進めてきた。
 15年間に188人が認知症を発症し、うち93人がアルツハイマー病だった。画像検査のほか、死亡した145人は9割以上を解剖して確定診断をした。
 同じ826人について、ブドウ糖の代謝能力である耐糖能の異常も調査。生活習慣が主な原因とされる2型糖尿病の病歴がある▽空腹時血糖が血液0.1リットルあたり115ミリグラム以上――などの人らをアルツハイマー病調査と合わせて分析した。これら糖尿病やその予備群の人は、耐糖能異常のない人に比べて4.6倍、アルツハイマー病になる危険性が高かった。
 清原さんによると、脳にたまってアルツハイマー病を引き起こすとされる物質は、インスリン分解酵素によって分解される。耐糖能異常の人はインスリンが少ない場合が多く、分解酵素も減るので、アルツハイマー病の危険性が高まるという。
 解剖などによる確定診断に基づいたアルツハイマー病研究で、これほどの規模のものは世界でも例がないという。
 また、別に40〜79歳の約2400人を88年から12年間追跡し、糖尿病とがん、脳梗塞などとの関係も調べた。その結果、糖尿病の人は、そうでない人よりがん死亡の危険性が3.1倍高く、脳梗塞も1.9倍、心筋梗塞など虚血性心疾患も2.1倍高かった。
 清原さんは「糖尿病対策がアルツハイマー病予防につながる可能性がある。国内ではここ十数年で耐糖能に異常がある人が女性で2割、男性で4割増えており、対策を急ぐ必要がある」と話す。

アルツハイマー病発症 日本人女性にリスク遺伝子 indexへ

 日本人女性でアルツハイマー病の発症リスクを大きく左右する遺伝子を新潟大などのグループが見つけ、英専門誌に30日発表した。国内の患者1526人とそうでない人1666人のDNA配列を比較した結果だ。75歳以上では女性の方が男性よりも発症率が高いという報告が内外であるが、その原因の解明につながる可能性がある。
 DNA配列には「SNP」(スニップ)と呼ばれるわずかな個人差があり、この個人差と様々な病気との関連が注目されている。
 新潟大脳研究所の桑野良三・准教授らは、すでにアルツハイマー病関連遺伝子として知られているAPOE4遺伝子の影響を除いたうえで、約1200カ所の個人差を調べ、男女で発症リスクに差がある個所を探した。
 その結果、10番染色体にあるCTNNA3という遺伝子が浮上した。この遺伝子で特有なDNA配列を持つ女性は、アルツハイマー病の発症リスクが約2.6倍に高まることがわかった。この配列は女性患者の約3割、患者でない女性の約2割が持っていた。男性ではこの配列による差はなかった。CTNNA3遺伝子の働きはまだわかっていない。
 桑野さんは「この部分の個人差とアルツハイマー病との関連は、欧米では出てこない。DNA配列の個人差と病気の関係には、アジア人特有のものも多数あると思われるので今後さらに詳しく調べたい」といっている。

60例目の脳死判定 入院中の40代男性 indexへ

 深谷赤十字病院(埼玉県深谷市)に脳血管障害で入院中の40代の男性が31日、臓器移植法に基づく脳死と判定された。1日、臓器の摘出手術が行われた。97年の法施行後、60例目の脳死判定で、脳死臓器移植としては59例目。

前立腺がん「検診勧められぬ」 厚労省が指針、学会反論 indexへ

 がん検診に関する厚生労働省の研究班が、前立腺がん検診のPSA検査について「市町村の住民検診として実施することは勧められない」とするガイドライン案をまとめた。日本泌尿器科学会(理事長=奥山明彦・大阪大教授)が31日、案を明らかにしたうえで、「検診で転移がんが減少するといった最新の動向が考慮されていない。結論は2、3年保留すべきだ」などと、反対する見解を公表した。
 前立腺がん検診は市町村の7割が実施しているとされ、検討中のところもある。ガイドラインが正式にまとまると住民検診に影響を与えそうだ。
 PSAは「前立腺特異抗原」と呼ばれる酵素。前立腺細胞が何らかの理由で崩れると血液中に出てくる。ある値以上の場合、がんなどの可能性が高くなるとして精密検査が勧められる。
 学会の説明によると、研究班は内外の論文を検索して検討。検査で前立腺がんの死亡率が減るかどうかの根拠が不十分と判断された、という。ただし、適切な説明の下で任意に受けることは否定していない。
 米国では80年代後半からPSA検査が普及し、前立腺がんと診断される人が増え、死亡率は90〜92年をピークに低下している。泌尿器科学会は「PSA検査が関与している」としている。一方で、世界的に認められた論文はなく、欧米の専門機関も意見が一致していない。
 前立腺がんによる死亡は05年に9264人で、95年の1.7倍。今後も増加が予想されている。

周産期センター「しっかり整備」と厚労相 妊婦搬送問題 indexへ

 奈良県の妊婦の救急搬送が多数の医療機関に拒まれ、死産した問題を受け、舛添厚生労働相は31日の閣議後の記者会見で「総合的な周産期の医療センターが奈良など6県で完備していないので、(整備を)しっかり進めていく」と述べた。妊婦の高度救急医療に対応できる施設として、厚労省が各都道府県に設置を求めている「総合周産期母子医療センター」の全国整備を急ぐ考えを示したものだ。
 同省によると、各都道府県に対して今年度末までにセンターを1カ所以上設置するよう求めてきたが、奈良、山形、岐阜、佐賀、宮崎、鹿児島の6県でまだ設置されていないという。奈良は来春に開設予定だった。
 また、舛添氏は「県境をまたぐ救急搬送の連絡体制など細かい問題を総ざらいする。妊婦にかかりつけ医がいなかったという報道もあり、なぜなのか究明してみたい」と話した。

妊婦搬送先探し、都市も難航 「県境越えは日常」 indexへ

 救急搬送された妊婦(38)が、多数の医療機関で相次いで受け入れを拒まれ、死産した。昨年8月にも、19病院に受け入れを拒否された妊婦が死亡している。昨年も今回も、悲劇は同じ奈良県で起きた。だが、妊婦の搬送先探しは、同県以外でも、都市部を中心に難航している。
 お産を扱う医療機関が年数カ所ずつ減っている神奈川県。同県には、八つの基幹病院が搬送の受け入れ先を探す「周産期救急医療システム」がある。05年度は依頼があった1655件中、そのまま基幹病院で受け入れたのは26.6%。県外搬送も9.5%ある。搬送先が決まるまで「1〜2時間」が20%、「2〜3時間」が8%、「3時間以上」も3%。多胎などの17件は、搬送あっせんができなかった。
 川崎市の聖マリアンナ医科大学病院は、3分の1を東京都内の病院に依頼する。産科の井槌慎一郎医師は「医師不足で3年前から当直は2人体制。搬送先探しに、医師を電話に張り付けるのは大きな負担だ」と話す。
 同県は当直医の負担を軽減するため、4月から、県救急医療中央情報センターが24時間搬送先探しを手伝う仕組みを試行中だ。
 搬送先探しが特に難しいのは都市部。05年に、総合周産期母子医療センターで母体の救急搬送を受け入れた率は、全国平均で67%だが、東京・大阪の11施設では44%。1施設あたりの搬送依頼数が多いためで、選択肢が多い分、手間と時間がかかる、という。全国周産期医療連絡協議会は今年3月、「救急搬送態勢は都道府県単位だが、県境をまたいだ搬送が日常的になっている。円滑に搬送を実施するシステムが必要」との提言を出した。
 厚生労働省の辻哲夫事務次官は30日の会見で、「大阪の病院の受け皿情報について、奈良県の主要拠点病院と連絡が取れるシステムを直ちにつくってほしい」と述べた。
 大阪府には、中核的な医療施設の空床情報をまとめた「産婦人科診療相互援助システム(OGCS)」がある。ここに奈良県を参加させるように、との要請だった。
 しかし、府は「奈良県との連携は進めていくが、OGCSの共有化は難しい」という姿勢だ。
 昨年8月の奈良・妊婦死亡問題を受け、近畿と福井、三重、徳島の2府7県は3月、「近畿ブロック周産期医療広域連携検討会」を発足させた。しかし、足並みはそろわない。府県を越えた搬送の調整拠点の選定すら難色を示す府県もあるほどだ。
 大阪府立母子保健総合医療センターの末原則幸・産科部長もOGCSの共有化に異論を唱える。「逆に奈良の態勢整備が遅れる」とみるからだ。
 現在も奈良県からの搬送は日常的だ。本来、重篤な母体・胎児の緊急治療に24時間対応するために構築されたOGCSは、相次ぐ産科の休診などでパンク状態だ。
 末原さんは「本当の重症例が受け入れられなくなる恐れがある。かかりつけ医のいない今回のケースは、まず県内で診て、搬送先を判断すべきだった」と指摘する。

産科医療機関に赤字補てん 医師確保対策で政府 indexへ

 政府は30日、地方の病院への医師派遣や医学部定員増などを柱とした「緊急医師確保対策」をまとめた。医師派遣に協力した病院や、地域のお産を担う病院への補助制度を来年度から新設するほか、地域医療の担い手となる医師を養成するため、全国合計で年最大285人まで大学医学部の定員増を認める。
 厚生労働、文部科学、総務など関係省庁の連絡会議で決めた。各省庁は関連予算を08年度予算の概算要求に盛り込む。
 対策の目玉は、医師不足解消に向けた病院の取り組みを後押しする補助制度だ。(1)国や都道府県が仲介する医師派遣に応じた病院(2)交代勤務など医師の過剰勤務解消に取り組む病院(3)出産などで休職した女性医師の復帰を支援する病院、などが新たに補助の対象になる。
 医師不足から分娩(ぶんべん)を取りやめる病院が相次いでいる問題を受け、産科を抱える医療機関への収入補填(ほてん)制度もつくる。地域内で代替施設がない病院が分娩を休止しないよう、分娩数の減少に伴う収入減を補助金で補う。
 大学医学部の入学定員は09年度から(公立大は08年度から)17年度まで、46都府県で毎年各5人、北海道で同15人まで定員増を認める。増加枠の学生には、都道府県が奨学金を出す代わりに、学生側は卒業後最低9年間、都道府県が指示するへき地の病院などでの勤務を約束する。定員が60人と少ない和歌山県立医科大と横浜市立大学医学部には80人への定員増を認める。
 医学部卒業後2年間の臨床研修を機に、地方の医学部卒業生が都市部の病院に流れる動きに歯止めをかけるため、都市部の病院の研修定員を減らすほか、医師派遣に協力しない病院に対しては、研修実施に伴う補助金の削減も検討する。

新薬高く、特許切れは安く 業界提案、再編の可能性 indexへ

 日本製薬団体連合会(日薬連)が、年度末の薬価改定へ向け制度の見直しを求めている。新薬に従来より高い価格を認め、特許が切れたら大幅に値下げする提案だ。研究開発費が豊富な大手には有利だが、特許切れの既存薬に依存する中堅・中小には厳しい内容で、業界再編・淘汰(とうた)が促される可能性がある。
 「製薬は日本の経済成長を支えるリーディング産業のひとつ。魅力ある市場の構築が必要だ」。日薬連の森田清会長(第一三共会長)は今月、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会でこう述べ、制度見直しを提案した。日薬連の意向が反映される可能性が高く、早ければ08年度にも、より高い値付けを新薬に認める新制度へ移行する。
 提案の背景にあるのは製薬大手の焦りだ。05年の世界の医薬市場は約67兆円。10年で2倍になったが、うち日本市場のシェアは21%から10%に縮小。日本勢は米国に次ぐ世界2位の市場を基盤にしながら、最大手の武田薬品工業でも売上高では世界17位だ。
 このところ医療費抑制で1年おきに薬価が引き下げられ、新薬の価格も抑制されている。安価で成分が同じ「後発品」の利用も拡大している。
 欧米大手は新薬開発に巨額を投じて攻勢を強める。国内製薬会社の研究開発費は武田薬品、アステラス製薬、第一三共、エーザイの大手4社で約6割を占めるが、それでも大型新薬の開発には苦戦している。森田会長は「新薬に高い薬価をつけて研究開発費の回収と再投資を速めなければ、欧米大手と渡り合えない」と危機感を募らせる。
 業界内には異論もある。人材や資金に限りがある中堅、中小は、特許切れ薬が頼りなのが実情だ。関西のある中堅製薬は新薬を数年に一つ発売してきたが、売り上げの半分は特許切れ薬で「新制度になると、中堅の経営は厳しい」と幹部。
 事情は大手の一部も同じだ。特許切れ薬の割合は塩野義製薬で約4割、小野薬品工業では約7割弱に達し、「大手上位4社以外はすべて収益が悪化する」との見方もある。ただ、大手4社の強い意向や自社の新薬に高い価格がつけられる期待もあり、見直しに強くは反対しづらい空気だ。
 みずほ証券の田中洋シニアアナリストは「新制度は、各社に新薬メーカーとして続けるかどうか締め切りを設けるようなもの。新薬を出せる規模に向けての再編機運が高まる」と予測する。

新しい病気の発生・拡散、「過去にない速さ」 WHO indexへ

 国境を越えた人の移動が加速するなかで、新しい病気も急速に世界に広がっていることが、世界保健機関(WHO)の調べで明らかになった。過去40年間に約40の新しい病原体が確認され、この5年間に1100もの伝染病の流行が起きた。WHOは伝染病発生情報やウイルス検体の共有が欠かせないとしている。
 WHOが発表した07年版の「世界保健報告」によると、67年以降、エイズやエボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザの人への感染、マールブルグ熱、ニパウイルスなど、39の病原体が見つかった。ほぼ毎年新しい病気が生まれている計算で、「過去に例のない速さ」だとしている。
 年間20億人と推定される飛行機利用者や膨大な量の物資の国際移動が病気の拡散を加速させていると報告書は分析。特に飛行機移動で潜伏期間中の感染者が本人も気づかないうちに各地に感染者を増やす。病気は数時間単位で国から国へと移動し、拡散防止は「事実上不可能」という。
 WHOが最も警戒を強めている新型インフルエンザの発生・大流行が起きると、流行を確認した時点で、全世界で国境を越える移動を全面禁止にしたとしても、感染拡大を2、3週間遅らせるだけの効果しかないとも分析している。大流行が起きた場合、過去の流行をもとに試算すると、世界人口の4分の1にあたる約15億人が感染する可能性が高いという。

国民医療費、過去最高の33兆1千億円 indexへ

 05年度の国民医療費は前年度より3.2%増の33兆1289億円で、3年連続で過去最高を更新したと、厚生労働省は24日発表した。国民所得に占める医療費の比率は9.01%で、初めて9%を突破した。国民1人あたりの医療費は25万9300円で前年度より3.1%増えた。
 診療報酬改定のない年の医療費は、高齢化などの影響で前年より2〜3%伸びるケースが多い。厚労省が今月8日に発表した06年度の概算医療費(国民医療費から全額自費診療分などを除いたもの)は、06年度のマイナス改定の影響で、前年度より0.1%増の32兆4000億だった。

女性医師の現場復帰を支援 厚労省、概算要求へ indexへ

 厚生労働省は来年度、出産などで現場を離れた女性医師の復帰を支援する病院に補助金を出す制度を新設する。医師不足が深刻な産婦人科や小児科に多い女性医師の現場復帰を促し、医師不足解消につなげる狙いだ。女性医師バンクの拡充や病院内保育所の整備などと合わせ、08年度予算の概算要求に23億円を盛り込む。これを含め、同省の医師確保対策の概算要求総額は、07年度予算(92億円)比73%増の160億円となる。
 同省によると、20代医師は、産婦人科医で3人に2人、小児科医で2人に1人が女性。出産や育児で休職した後、「最新の医学知識や医療技術についていけない」などの理由で復職できない女性医師が多いことが医師不足の一因とされる。
 このため、現場復帰を目指す女性医師の再教育研修を行う病院に研修費用を補助。復職希望の女性医師と病院の求人を結ぶ事業として日本医師会に委託している「女性医師バンク」では、勤務希望に沿った病院を探したり、電話相談に応じたりするコーディネーターを増員する。
 このほか、同省は医師確保対策として▽国や都道府県が仲介する緊急医師派遣に協力した病院への補助▽地域医療の担い手育成に積極的な臨床研修プログラムを実施する病院への補助の上乗せ▽医師の交代勤務制を導入した病院への補助、などの予算を要求する。

「培養皮膚」の製造販売を承認 再生医療、初の商業化 indexへ

 厚生労働省の医療機器・体外診断薬部会は23日、愛知県の企業が申請していた「培養皮膚」の製造販売を承認した。重症やけど患者自身の組織から作った皮膚のシートで、患部に移植して治療する。病気やけがで失った体の一部を再生させる目的でヒト細胞や組織を使った製品が国内で承認されるのは初めて。再生医療が国内でも商業化の段階に入った。
 申請していたのは、ベンチャー企業「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」(J―TEC)。9月末にも開かれる薬事・食品衛生審議会薬事分科会を経て、正式に承認される。
 培養するのは、皮膚の一番外側の「表皮」と呼ばれる部分。損傷していない皮膚組織を1平方センチほど採取して表皮細胞を分離し、マウスの細胞を加えてウシの胎児血清で培養する。約3週間で、8×10センチの表皮シートが十数枚できる。これを病院に出荷し、医師が患部に移植する。
 重症やけど患者は、全国で年間4000〜5000人ほど。やけどが大きい場合は自分や家族の皮膚などを移植することが多いが、自分の皮膚は足りなかったり、他人の皮膚だと拒絶反応が起きたりする問題がある。
 培養皮膚はこれらをクリアでき、3日〜1週間で自分の皮膚として生着するという。J―TECは皮膚の培養のほか、出荷検査、輸送までを請け負う。販売価格は現時点で1000万円ほどの見込みで、今後、公的医療保険適用の申請を行う。
 同社は99年、名古屋大の技術協力などを得て設立。培養皮膚は02年から国内2施設で臨床試験を行い、04年10月に製造販売を承認申請していた。
 再生医療は90年代後半からベンチャー企業などが製品開発に取り組んできた。しかし、脳外科手術でヒト乾燥硬膜の移植を受けた人がクロイツフェルト・ヤコブ病に感染する被害が社会問題化したことなどから、厚生省(当時)は00年に規制を強化。審査や安全性の確認に時間がかかるようになった。培養皮膚以外では現在、2製品が臨床試験の段階まで進んでいる。

糖尿病対策で中核施設、予防・治療法を研究 indexへ

 約250万人とされる糖尿病患者の増加に歯止めをかけるため、厚生労働省は来年度から、国立国際医療センター(東京都新宿区)などを糖尿病治療の中核施設と位置づけ、予防法や治療法を研究開発する方針を固めた。最新の治療情報などを発信する「情報センター」を同センター内に設置する費用などを来年度予算の概算要求に盛り込む。
 糖尿病はがん患者らが初期段階から専門医のいる病院に集まるのとは異なり、地域のかかりつけ医で治療するケースが多い。このため、重症化する前に、患者の症状に応じた適切な治療法や生活習慣の改善を促すなど、個人へのかかわりが重要な疾病とされる。
 同センターは、来年度から生活習慣病のリスクが高い人を保健師らが指導する「特定健康診査」が始まるのにあわせ、健保組合など医療保険運営団体の協力を得て患者データを収集・分析。国立の健康・栄養研究所、循環器病センター、保健医療科学院などと連携しながら、食事療法や合併症治療などについても研究。治療法や予防策、効果的な保健師らによる指導などを開発して、全国の医療機関などに情報提供して、全国どこでも質の高い治療を受けられる体制を目指す。
 医師以外の医療関係職種に、糖尿病に詳しい人材を育成するのも特徴だ。同科学院を中心に、健康対策にあたる自治体や保険運営団体の職員らに対して研修を実施。最新の知見に沿って糖尿病患者や予備群への指導にあたれるようにする。
 また、小児期からの予防法を確立するため、小児の糖尿病を専門に扱う医療機関とも連携。遺伝的要因や食事環境、睡眠状況などを調べる。
 厚労省によると、血液検査で糖尿病が強く疑われる人は約740万人おり、可能性が否定できない予備群を含めると1620万人にのぼるという。このうち、治療を受けている患者は約247万人。05年には、糖尿病が原因で約1万4000人が亡くなっている。

臨床の場で新薬開発 厚労省、研究施設整備へ indexへ

 厚生労働省は08年度から、新薬や医療機器の開発を促すため、東京や大阪などに六つある国立高度専門医療センターに、官民が協力して研究する施設を順次整備する方針を固めた。治療中の患者がいる施設に医師と企業の共同研究の場を設けることで、難病治療の新薬開発や、海外の先端医療機器の日本人向けの改良などにつなげる狙いだ。
 08年度予算概算要求の重点要望として、施設整備費15億円を盛り込む。
 国立高度専門医療センターは、循環器病、がん、成育医療、国際医療、精神・神経、長寿医療の6施設。各施設の専門分野ごとに、製薬会社や医療機器メーカー、大学医学部などが連携して新薬や医療機器の開発を促進する構想だ。08年度から3年程度かけ、複数のセンター内に臨床研究施設を建てる。
 施設には臨床研究の専用病床、ベンチャー企業などへの貸与スペース、病院と企業が共同利用できる検査・分析機器などの部屋をつくる。専用病床がある施設を官民で活用することで、医師や患者の提案をヒントにした医療機器の開発も促す。
 厚労省は新設する施設で、人の細胞から臓器などをつくる再生医療技術の開発や、大手製薬会社が手がけない難病の薬の開発、画像診断のソフト開発などの研究を期待している。製薬会社が承認前の新薬の効果を調べる治験にも活用する。
 国内の新薬・医療機器開発をめぐっては「治験や審査に時間がかかり、海外で承認済みの薬が日本で使えない」「動物実験中心の基礎研究が臨床に生かされていない」などの指摘が出ていた。このため、政府は4月、新薬開発期間の短縮や医療関連産業の技術レベルの底上げを目指し、5カ年戦略を策定している。

藤枝市立病院、保険医取り消しへ 保険を不適切に請求 indexへ

 静岡県藤枝市の藤枝市立総合病院(金丸仁院長、654床)の歯科口腔(こうくう)外科が、保険診療を認められていない治療を不適切に保険請求していたとして、厚生労働省は同病院の保険医療機関の指定を10月から取り消す方針を固めた。22日に病院に対する聴聞を行い、28日に処分を正式決定する。
 同病院は、歯の抜けた部分にチタンなどの金属を埋め込み、義歯を固定する治療法のインプラント治療は自由診療としていたが、その前処置として人工骨を埋め込んだり、骨を移植したりしてあごの骨の形を整える「顎堤(がくてい)形成術」を保険診療としていた。しかし、社会保険庁静岡社会保険事務局から昨年12月に個別指導を受け、「前処置は(保険診療の対象にならない)混合診療に当たる」との指摘を受けた。
 取り消し期間は5年の見通しだが、地域の中核病院のため、厚労省は病院から改善計画などを出させた上で、1カ月で再指定して、保険診療を再開できるようにする策を検討している。
 過去5年間で不適切な請求とされたのは2400人余、約1億2200万円。同病院は「保険請求のルールを間違えていた」と事実関係を認め、過去5年分の保険診療報酬について自主返納の手続きを進めている。
 同病院はインプラント治療に積極的に取り組んでいて、技術が高い病院という評価を得ていた。

医師の交代勤務を支援へ 導入病院に補助金 厚労省 indexへ

 厚生労働省は医師不足対策として08年度から、医師の交代勤務制を導入した病院に補助金を出す制度を新設する方針を固めた。08年度予算の概算要求に5億円を盛り込む。過剰労働が医師の病院離れの一因となっているため、当直明けに休みが取れるような勤務態勢を整えた病院を支援する。
 新たな補助制度では、日中と夜間で医師が全員入れ替わる交代勤務にしたり、当直明けの医師が必ず休める勤務体系を導入したりして、医師の労働環境改善に取り組む病院に補助する。
 ただ、医師数に比較的余裕がある病院でなければ交代勤務を導入するのは難しく、医師不足が深刻な地方の公立病院などでは、補助対象となる勤務体系を導入できるかは不透明だ。
 厚労省によると、30〜40代男性の病院勤務医の1週間の平均勤務時間は約50時間で、同年代の診療所医師より10時間近く多い。当直明けの勤務医がそのまま通常の診察などを行う勤務体系が多くの病院で常態化しており、過剰労働に耐えきれずに開業医に転身する医師が後を絶たない。
 同省では、交代勤務を導入した病院に対し、こうした補助金だけでなく、診療報酬の上乗せも今後検討する。

乳がんリスク遺伝子診断、親族と比較 日本でも開始 indexへ

 自分が遺伝的に乳がんや卵巣がんになりやすいかどうかを調べる検査が国内で受けられるようになった。国立がんセンターなどの臨床研究で、米国で普及してきた遺伝子検査の有効性が確認された。リスクが高いとわかれば検診を欠かさないなどの対策がとれる。ただ、将来の発症におびえることにもなりかねないため、精神的サポートを含めた遺伝カウンセリングが必須条件となる。
 両親や兄弟姉妹らの血縁者内で多く発症しているがんは「家族性腫瘍(しゅよう)」と呼ばれる。このうち乳がんや卵巣がんの一部には、「BRCA1」「BRCA2」という遺伝子の変異が原因で起こるものがある。
 この遺伝子を血液から採取し、変異の有無を調べる検査は米国で約10年前から一般に行われ、のべ約100万人が受けている。変異がある人は将来、5〜8割が乳がんに、1〜3割が卵巣がんになるとされている。
 この検査が日本人にも有効かどうかを調べるため、国立がんセンターほか4病院(癌研有明病院、聖路加国際病院、慶応大病院、栃木県立がんセンター)が03年から臨床研究を実施。家族性の乳がん・卵巣がんが疑われた計135人のBRCA遺伝子を調べた。
 変異があったのは36人(27%)。血縁者の乳がんの発症年齢が若い場合に変異率が高いなど結果は米国の傾向とほぼ同じで、研究の総括責任者をつとめた栃木県立がんセンターの菅野康吉医師らは、日本人にも検査は有効と判断した。
 検査を受けたい人は、まず乳がんや卵巣がんの病歴がある血縁者の情報を医療機関に提供。家族性腫瘍の疑いが強いと判断されれば受けられる。血縁者と本人のBRCA遺伝子を調べ、遺伝的な発症リスクが高いかどうか診断される。
 検査会社ファルコバイオシステムズ(京都市)が検査の特許をもつ米企業と提携し、遺伝カウンセリングの態勢がある医療機関にサービスを提供する。遺伝子検査の費用は1人38万円、血縁者は6万円。すでに関東、東北、中部地方の6医療機関が同社と契約しているという。
 検査を受けられる医療機関名などは同社(電話075・257・8541)へ。
 〈日米で遺伝カウンセリングの経験がある田村智英子・お茶の水女子大准教授の話〉 自分ががんになるリスクを知って納得する人もいれば、ショック状態になってしまう人もいるだろう。検査を受けるメリット・デメリットは人によって異なり、自分にどんな意味があるのかをよく考えて判断してほしい。国内にはがんの遺伝相談に乗れる医師やカウンセラーが少なく、検査を受ける人を支える態勢づくりも必要だ。

59例目の脳死判定 東京医大八王子医療センター indexへ

 東京医大八王子医療センター(東京都八王子市)にくも膜下出血で入院中の男性が17日、臓器移植法に基づく脳死と判定された。18日午前から臓器の摘出が始まる予定。97年の法施行後、59例目の脳死判定で、臓器移植としては58例目になる。
 日本臓器移植ネットワークによると、心臓は東京大で20代女性、肺は東北大で40代女性、膵臓(すい・ぞう)と片方の腎臓が北海道大で40代男性、もう片方の腎臓は東京女子医大で40代女性に移植される見通し。肝臓と小腸は医学的理由で断念した。

同意書得ず研究のため採血 C型肝炎患者9人から indexへ

 神戸市立医療センター西市民病院(神戸市長田区)の医師が、計9人のC型慢性肝炎患者に対し、研究のために同意書なしで必要量以上の採血をしていたことがわかった。文書での同意を定めた厚生労働省などの倫理指針に違反している。同センター中央市民病院(同市中央区)の医師が乳がん患者に対して同意書なしで臨床試験をしていたことが7月末に発覚したため、市が調査していた。市は患者や家族に謝罪し、両方のケースについて医師の処分を検討する。
 市によると、西市民病院消化器内科の医師が06年度、C型慢性肝炎患者計10人を対象に、2種類の治療薬の効果を調べる疫学研究を実施。データを得るため、治療で採血する際、複数回にわたって必要量より約3ミリリットル多く採血した。
 厚労省と文部科学省が02年に策定した「疫学研究に関する倫理指針」は、採血などの場合、原則として文書で説明し、同意書を得ることが必要としているが、10人のうち同意書がそろっていたのは1人だけだった。医師は調査に対し「患者には口頭で多く採血をすることを説明した」と話したという。
 市は7月下旬以降、中央市民病院、西市民病院、西神戸医療センター(同市西区)の3施設で、04年度以降に実施された計1103例の臨床研究について同意書の有無などを調査。厚労省などの倫理指針に反しないものの、院内規定に反して、同意書を得ずに、匿名の診療情報を統計用データとして院外に報告したケースが25症例あることも分かったという。

医療事故委の議事録開示を拒む  日本医大 indexへ

 千葉県印旛村の日本医科大学千葉北総病院(田中宣威(のりたけ)院長、600床)が、重い脳障害を負って生まれた男児(2)の出産時の処置について話しあった「事故対策委員会」の議事録の開示を母親(34)に求められながら、個人情報保護法を理由に非開示としていたことがわかった。「業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある」としている。病院の対応に、個人情報保護法の専門家からは疑問の声も出ている。
 同病院によると、05年2月、母親は陣痛促進剤を使い帝王切開で出産。男児は仮死状態で、蘇生したものの、脳障害のために今も寝たきりの状態だという。
 同病院は同年4月1日に事故対策委員会を開いたが、「医療事故はなかった」と判断。母親が今年5月、議事録の公開を求めたが、病院側は個人情報保護法を理由に開示しなかった。
 病院側は、委員会の内容を口頭で説明したうえでカルテなどの関係資料も開示しているとし、「(議事録を)公開すれば自由な議論が困難になる」と説明している。
 立山紘毅・山口大教授(憲法・情報法)は「医療情報は個人に属するという考えの下で病院には広く説明責任が求められる。第三者が検証できるような材料を提供することは工夫次第で可能だろう」と話している。

東京女子医大、心臓移植手術再開の意向 indexへ

 厚生労働省の社会保障審議会は9日、心臓手術ミスで02年に「特定機能病院」の承認を取り消した東京女子医科大学病院(東京都新宿区)について、「安全管理体制が改善された」として再承認することを決めた。同病院はこれを受け、緊急時を除き02年から自粛している心臓移植手術の再開を目指す意向を明らかにした。
 同病院では、01年の手術ミスで女児が死亡した後、カルテの改ざんも発覚した。審議会は現地調査を踏まえ、「医療記録の管理や内部監査の体制が改善された」と判断。過去の医療紛争8件の患者・遺族との間で、4月までに示談が成立したことも評価した。
 特定機能病院は、東京女子医大を加え82病院になる。高度医療の提供・開発を条件に診療報酬が優遇される。

東京女子医大、特定機能病院の再承認を申請 indexへ

 心臓手術ミス事件を受けて02年に「特定機能病院」の承認取り消し処分を受けた東京女子医科大学病院(東京都新宿区)が、厚生労働省に再承認を申請していたことが分かった。同省は9日の社会保障審議会で再承認するかどうかを決める。
 同病院は01年、心臓手術ミスで当時12歳の女児が死亡し、その後カルテの改ざんなども発覚したことから、承認が取り消された。同病院は「不正防止や医療安全の体制が整った」(広報室)として再承認を申請した。特定機能病院は、高度医療の提供・開発を条件に診療報酬などが優遇される。

大学病院の医療事故に公表指針 被害程度で方法定める indexへ

 80の国公私立大学でつくる全国医学部長病院長会議(会長=大橋俊夫信州大学医学部長)は8日、大学病院で起きた医療事故の公表に関する指針を発表した。05年3月に国立大学付属病院長会議がまとめたものとほぼ同じ内容の公表指針が全大学病院に適用される。実施は、学内手続きが済んでいない1大学を除き9月1日から。
 指針は、医療従事者や病院の過失の有無、被害の程度によって公表方法を定めた。過失が認められる事故で患者が死亡したり重い障害が残ったりしたケースは、発生後速やかに公表するとともに、原因を調査し概要と改善策を病院のホームページ(HP)に掲載する。過失の有無は、病院内の調査委員会などの意見を踏まえ病院長が判断する。
 公表に当たっては、患者側は匿名にするとともに、病院のHPで公表する場合は原則的に患者本人、家族・遺族から同意を得る。

産科・救急の診療報酬上げ検討 医師不足対策に重点 indexへ

 医療の公定価格である診療報酬の08年度改定で、厚生労働相の諮問機関の中央社会保険医療協議会(中医協)が検討する主要項目が7日、明らかになった。医師不足に対応し、地域医療を充実させるため、産科、小児科、救急医療や、中小の病院への診療報酬を手厚くする。また勤務医の過剰労働の緩和をめざし、開業医の夜間診療や往診の報酬を引き上げ、負担を肩代わりしてもらうことなどを柱としている。
 検討項目は8日にある中医協で厚労省が示し、改定に向けた本格的な議論が始まる。前回06年度は過去最大の3.16%の下げ幅となったが、厚労省は「今回は治療本体部分の引き下げは困難」としており、医師不足対策への重点配分で医療の質低下を防ぎたい考えだ。
 検討案によると、「一定の地域や産科・小児科などで必要な医師が確保できず、医療の提供に支障がでている」とし、地域医療の確保・充実に「特に配慮を行う」と明記。こうした診療科への報酬を手厚くするとともに、医師不足の原因と指摘される勤務医の過剰な負担の軽減を目指す。
 具体的には、病院での夜間診療を地域の開業医が交代で担うことや、医師を補佐する職員がカルテの管理などの事務作業を代行することを診療報酬で評価する案が有力視されている。
 また、地域の中小病院の経営が悪化し、撤退が相次いでいる現状も重視。これらの病院が、発病直後の急性期の入院治療から在宅での療養に移行する際の橋渡し的な役割を担うことや、在宅患者の病状が悪化した時に短期間の入院を受け入れることなども診療報酬で考慮していく。中小病院を医療ネットワークの中核に位置づけ、地域医療の充実を図る。
 開業医の初診・再診料を引き下げる一方で、時間外や訪問診療の報酬を、これまでより高くすることも検討。開業医に救急医療や在宅療養を積極的に担ってもらい、その分、勤務医の負担を軽減するのがねらいだ。

O157で3歳女児死亡 大阪の保育施設、5人感染 indexへ

 大阪市は6日、同市北区の無認可保育所に入所している10カ月から5歳までの乳幼児計5人が病原性大腸菌O(オー)157に集団感染し、うち3歳の女児が死亡した、と発表した。ほかの2人は腹痛や下痢の症状を訴え、現在も市内の病院に入院中。発症していない2人も自宅静養しているという。5人は保育所で調理された共通の給食を食べた可能性があるが、市は「感染源が外部だった疑いも捨て切れない」として、感染経路を調べている。
 女児らが通っていたのは、保育サービス会社「タスク・フォース」(本社・同市西区)が経営するポポラー大阪天六園(北区本庄東1丁目)。昨年7月に開所し、今は0〜7歳までの計31人が通園している。
 市によると、女児は7月29日に下痢の症状が出て激しい腹痛を訴え、その日のうちに入院。脳障害を起こすなどして6日午前、多臓器不全で死亡した。1日に市内の病院から「3歳の女児がO157に感染して入院している」との届け出が市にあったという。
 さらに、11カ月の女児が7月27日に発症して8月2日に入院し、1歳の男児も8月4日に発症、入院したが、ともに快方に向かっているという。ほかの園児や5人の職員には今のところ、症状は出ていないとみられる。市保健所は同園が保存していた7月21〜28日の給食を検査機関で分析し、集団食中毒の可能性を調べる一方、ほかの感染源についても調査を進める。
 市は昨年8月、同園に立ち入り調査を実施した。その際、厚生労働省の基準で、保育士や看護師など有資格者を職員として2人以上配置する必要があるのに、全員が無資格者だったことから書面で改善を指導。さらに、年2回以上実施する必要のある健康診断の計画が策定されておらず、口頭で指導していた。

中外製薬、白血病治療薬を回収 禁止の原料を使用 indexへ

 中外製薬は3日、急性白血病の治療薬「ベサノイド」のカプセルに、政府が原則として使用を禁じているカナダ産牛を原料にしたゼラチンが使われていたため、今年1〜6月に出荷した1998瓶(100カプセル入り)の回収を始めたと発表した。患者への供給不足の心配はないという。
 厚労省はカナダで牛海綿状脳症(BSE)が発生したため、同国産の牛を原料に使うことを原則禁止している。中外製薬はベサノイドをスイスの親会社から輸入しているが、親会社がカナダ産牛由来のゼラチンを使ったカプセルを誤って輸出したという。

3つの先天性心疾患、新生児の難手術成功 静岡の病院 indexへ

 重度の先天性心疾患が重なり、従来は助けられないと考えられた新生児の手術に、静岡市の静岡県立こども病院(吉田隆実院長)が成功した。同様の症状の子どもの救命例は、これまで世界的にもなかったという。
 手術を受けたのは、浜松市の会社員内山和幸さん(47)の長女美幸(みゆき)ちゃん(生後2カ月)。心臓から大動脈にほとんど血液が流れない「大動脈弁閉鎖」に加え、右心室と右心房の間の弁が機能しない、心臓の左右の心室の位置が逆にある、という合併症を伴っていた。
 執刀した副院長の坂本喜三郎・循環器センター長によると、大動脈弁閉鎖は難手術が必要な先天性心疾患で、重い合併症が重なると治療をあきらめる例がほとんどだったという。今回の手術は生後6日目に行われ、約9時間40分かけて血流を回復させる複数の手術を同時に実施した。
 1日に退院した美幸ちゃんを抱いた内山さんは「たくさんの奇跡が重なった感じ。(心疾患があっても)あきらめなければ十分に助かる」と笑顔で話していた。

心臓移植認定取り消しの埼玉医大、再申請認められず indexへ

 埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)が4月に心臓移植の認定を取り消された問題で、9医学会でつくる「心臓移植関連学会協議会」は31日、同大の新しい移植チームに実績がないことなどを理由に「再認定できない」と同大に通知した。同大で移植を待っていた患者約20人は近く全員が転院する見通し。
 同大は、心臓移植を実施する心臓病センターを4月に新設した同大国際医療センター(同県日高市)に移転。その届けを協議会に出していなかったとして認定を取り消された。5月に再申請したが、過去に心臓移植3例を行った移植チームのメンバーの大半が変わっていることなどから、協議会は「継続性に問題がある」と判断したという。

脳波記録見つからず 金沢大が厚労省に報告 indexへ

 金沢大学病院(金沢市宝町)が昨年5月に脳死判定した50代の男性患者の脳波記録を紛失した問題で、同大は31日、「脳波記録は見つからなかった」とする調査報告書をまとめ、厚生労働省に提出した。同大は「紛失は管理の問題で、脳死判定自体は適正だった」と結論づけたが、臓器移植法に基づく脳死判定は当面自粛する方針。
 脳死判定を適正とする根拠について、同大は残っていた予備的脳波測定時の電子データ(約18分間)と、1回目の脳死判定時の脳波記録1ページ分(約10秒間)や、医師の証言から判断したという。厚労省は「報告内容を見る限り悪質性はない」とし、再発防止などを求める行政指導を検討している。
 脳波記録の紛失は今年4月、同省が脳死判定を検証する準備段階で発覚。97年の臓器移植法施行以来、検証に必要な記録の紛失は初めてだった。

四つの心疾患手術に成功 全国初、7カ月女児に indexへ

 長野県立こども病院(安曇野市)は27日、「総動脈幹症」など重い四つの先天性心疾患のある生後7カ月の女児の手術に成功した、と発表した。執刀した原田順和・心臓血管外科部長によれば、単独の疾患の手術例は少なくないが、四つを合併したケースの成功は全国初という。
 女児の疾患は、血液が全身を循環せず肺動脈に流れ込む「総動脈幹症」▽弁が機能しない「総動脈幹弁狭窄(きょうさく)」▽肺静脈が心臓ではなく肝臓につながっている「総肺静脈還流異常」▽心室が一つしかない「右室低形成」。女児は昨年末の出生時に重症のチアノーゼがあり、同病院に入院していた。
 生後まもなくと同3カ月、同6カ月の3回にわたる手術で人工弁の移植や肺静脈と心房をつなげる措置などをした結果、女児は血液の循環がほぼ正常になった。近日中に退院できるという。
 2歳くらいになり体力が向上した段階で、チアノーゼの完治のために下半身の大静脈を肺動脈につなげる手術をする。

腹部にガーゼ置き忘れ、120万円賠償 豊川市民病院 indexへ

 愛知県豊川市の豊川市民病院は、95年に行った手術で女性の腹部にガーゼ1枚を置き忘れるミスがあり、損害賠償として120万円を支払うことで女性と合意したと27日明らかにした。
 同病院によると、女性は同県豊橋市在住の30代。95年5月に同病院で胆管の手術を受けたが、その際にガーゼを置き忘れていた。昨年9月に豊橋市内の別の病院で検査を受けた際、ガーゼが見つかり、手術で取り除いた。置き忘れによる健康への影響はなかったという。
 女性は昨年末に裁判所に調停を申し立て、今年初めから病院側と話し合いを続けていた。

乳がん患者48人に無断で臨床試験 神戸市立病院 indexへ

 神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)の医師2人が、少なくとも48人の乳がん患者に対し、同意書を得ずに抗がん剤を使った臨床試験をしていたことが分かった。厚生労働省が策定した倫理指針に違反しており、同市は「適正な手続きを怠っていた」として、医師を処分する方針だ。
 同市病院経営管理部によると、同意書なしに臨床試験をしていたのは、同病院の外科の医長と元医長(昨年7月退職)。2人は04年2月から、乳がんの手術前に抗がん剤を投与する「術前化学療法」で、4種類の抗がん剤を標準的な方法とは異なる順序で患者に投与する臨床試験を始めた。
 院内の部長会で承認された実施計画書には、試験目的であることや、予想される不利益などについて書かれた説明文書を患者に渡して説明した上で、同意を文書で得ることが規定されていた。厚生労働省が03年に施行した「臨床研究に関する倫理指針」でも、被験者に危険性などについて十分説明した上で、文書で同意を得なければならないとしている。
 ところが、医長は05年10月までに臨床試験を実施した計30人の患者の誰からも同意書を取っていなかった。元医長は同時期に19人の患者に試験を実施したが、同意書は1人から取得しただけだった。
 医長は同管理部の調査に対し「臨床研究であることは患者に説明していたが、時間が足りず、手続きを省略してしまった」と弁明しているという。元医長は朝日新聞の取材に対し「最初は同意書を取ったが、その後は手続きが抜けてしまった。非常に反省すべきだと思っている」と話した。
 この臨床試験には同市立医療センター西市民病院(神戸市長田区)の医師2人も参加し、計3人の患者に試験を実施していたが、この2人は全員から同意書を取っていた。
 医長は院内調査に対し、「試験は05年10月で終了し、その後の患者には同意書は必要ない」とも主張、同月以降に同様の治療をした患者も被験者に繰り入れた結果を、今年6月の日本乳癌(がん)学会などに発表しており、同意書なしの臨床試験例がさらに増える可能性もある。
 神戸市保健福祉局の宮田克行・病院経営管理部長は「本来取るべき適正な手続きを怠っていた。真摯(しんし)におわびするとともに再発防止の機能を高めていきたい」としており、今後、医長を処分する方針。

レセプトや健診結果、医療費抑制に活用 厚労省検討 indexへ

 患者の病名や治療内容が記載された診療報酬明細書(レセプト)や健診結果をもとに、厚生労働省は08年度から、患者一人ひとりの個人情報を集計・分析し、医療費の抑制や診療報酬の改定などに活用する方向で検討に入った。電子化されたレセプト情報を分析し、地域ごとの医療費の傾向や体質によってかかりやすい病気などを把握し、効率的な医療を行う指標とする。ただ、健康情報を含めた詳細な個人情報が本人同意がないまま利用、保存されることに反発も予想される。
 25日から始まる専門家会議で議論し、今年末までに具体的な方針をまとめる。
 レセプトは、医療機関が医療費を健康保険組合などに請求する時に提出する書類。患者が保険で受けたすべての検査や治療が記されている。
 レセプト情報の活用は、電子データで管理されたレセプトをもとに地域別、年齢別、疾病別の医療費データをまとめ、どの病気をどれだけ減らせば医療費が削減できるのかなどを分析。国と各都道府県が08年度から始める医療費適正化計画に反映させる。2年に1度ある診療報酬改定のための実態調査も、個別の治療行為ごとのコストをより的確に把握できるという。
 また、レセプト情報だけでなく08年度から40〜74歳の全国民を対象に実施される「特定健康診査」の結果の集計・分析も想定。腹囲、血中脂質、血圧、血糖値などのデータを元にメタボリック症候群とその予備軍を抽出し、喫煙や飲酒、運動の頻度などの生活習慣についても調べる。
 こうした個人の健診結果と、その人が受けた治療行為を示すレセプトを突き合わせ、長期的な追跡調査を行うことで、体質や生活習慣の違いが、糖尿病や脳血管疾患などの生活習慣病にどれだけ影響し、医療費の伸びにつながっているのかなど、詳細な疫学的研究を行うことも検討する。
 また、民間の研究機関などにもレセプトや健診の情報を提供し、調査や分析に役立ててもらうことについても議論する。

難病患者の血清と尿 無断で専門学校に提供 旭川医大 indexへ

 旭川医科大病院(旭川市、松野丈夫病院長)は24日、患者の血清と尿を本人の承諾を得ずに、臨床検査技師養成の私立専門学校(同市)に提供していたと発表した。学生の実習用だったという。同病院は「金銭の授受はなかったが、就業規則違反に当たる」として、教授ら男女4人を文書の厳重注意処分などにした。
 同日夜の会見で明らかにした。同病院によると血清と尿は、難病指定され、抗体の数値が高い「自己免疫疾患」の患者の検査後のもの。8年ほど前から専門学校側の「抗体数値を実習に使いたい」という要請に応じていた。年間延べ約80人分を提供していたという。

タミフル服用後、異常行動死の男子高生の遺族が提訴へ indexへ

 04年にインフルエンザ治療薬「タミフル」の服用後、異常行動を起こして死亡した男子高校生(当時17)の遺族が、厚生労働省所管の独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(東京都)を相手取り、因果関係を認められずに精神的苦痛を受けたとして、慰謝料100万円の支払いを求める民事訴訟を、岐阜地裁高山支部に近く起こすことが24日わかった。原告側によると、タミフルと異常行動の因果関係をめぐる訴訟は初めて。
 訴えを起こすのは、岐阜県に住む男性(49)。男性の長男は04年2月、自宅でタミフルを服用して約3時間半後に突然、家を飛び出し、近くの国道でトラックにはねられて死亡した。
 男性は05年2月、「タミフルの副作用の疑いがある」として、同機構に給付金支給を申請した。しかし、同機構が06年7月、「異常行動は他のインフルエンザ治療薬による」と認定し支給決定を出したため、男性は給付金を受け取らず、不服申し立てをしていた。
 男性は「異常行動がタミフルによるものではないとの理由が不明確で納得がいかない。裁判で白黒をつけ、他の遺族の救済にもつながれば」と話している。
 厚労省は、01年から今年5月末までの間、タミフルの服用後に飛び降りるなどの異常行動をとった人が211人に達したことを明らかにしている。同省薬事・食品衛生審議会の安全対策調査会は、今秋までに服用と異常行動の因果関係について結論をまとめる方針。

肝炎検査の委託、東京と福岡のみ 自治体、負担増嫌う indexへ

 国内に300万人以上いるとされるウイルス性肝炎患者の早期発見をめざし、厚生労働省が今年度始めた肝炎検査の委託事業が、東京と福岡の2都県でしか実施されていないことがわかった。一般の医療機関に委託する検査費を国と都道府県が折半する仕組みだが、新たな負担増などを嫌って見送る自治体が相次いでいる。このままだと今年度計上された12億円の予算のうち、3億円弱しか使われない計算だ。
 厚労省は02年度から、40歳以上を対象に市町村が行う住民健診などでの肝炎検査に補助を導入。さらに保健所でも肝炎検査を受けられるようにし、昨年4月からは年齢制限も撤廃した。
 保健所の検査費用は半分を国が負担。多くの都道府県は残りの半分を補助し、受診者負担をゼロにしているが、受診者は年間3500人前後にとどまっている。
 そこで厚労省は受診率の大幅アップを狙い、医療機関への検査の委託事業を導入。60万人の受診を見込み、保健所検査への補助金の4倍にあたる12億円を計上した。
 だが今年度中に事業を実施するのは東京と福岡だけ。ほかに9府県が検討しているが、実施の見通しは立っていない。保健所の検査費用は2000〜3000円だが、医療機関だと初診料などを含め4000〜5000円かかるため、都道府県の負担が増えることなどが大きな理由だ。
 大阪府は「保健所の検査にも補助を出せず、利用者負担を無料化できていないのに、新たな助成は難しい」という。「保健所で検査を受ける人があふれているならわかるが、保健所で間に合っている」(青森県)などと、委託事業の必要性を疑問視する声もある。
 一方、いち早く導入した東京都は「受診者の利便性が高まるし、早期発見は医療費の抑制にもつながる」と期待を寄せる。今年度の予算は約2億6000万円。10月から実施予定の福岡県は1900万円を計上している。

キリンファーマとテルモ、業務資本提携 indexへ

 キリンホールディングス(HD)の医薬子会社キリンファーマと、医療機器大手のテルモは19日、業務資本提携すると発表した。両社は04年から、医療製品の共同開発をしてきたが、連携を今後、さらに強化することにした。
 キリンファーマはテルモ株を、テルモはキリンHD株を、それぞれ年内に取得する。株式の取得額はともに約100億円。また、テルモが持つ、薬を体内の特定の部位に届ける技術を、キリン側の技術と組み合わせて、薬の共同開発などを進める。

自治体病院の74%、赤字予想 診療報酬下げなど影響 indexへ

 自治体病院の74.4%が06年度決算で経常赤字になる見通しであることが、全国自治体病院協議会の調査でわかった。前年同期の63.4%から大幅に増え、年末に確定する決算では、赤字の割合が過去最大だった73年度の70.4%を超える可能性が高いという。06年4月の診療報酬引き下げに加え、医師不足に伴う患者離れが経営悪化に拍車をかけている実態がうかがえる。
 調査対象は都道府県立や市町村立など954病院で、503病院(52.7%)から回答を得た。
 回答した病院全体では、総収益が前年度決算比1.7%減となり、総費用はほぼ横ばいだったため、収支が悪化。80病院が前年度の黒字から赤字に転落する一方、赤字から黒字になるのは20病院にとどまった。

日本脳炎、接種中断が4年以上に 新ワクチン開発が難航 indexへ

 副作用の影響で、05年から事実上中断されている日本脳炎の定期予防接種の再開が、新型ワクチン開発の遅れから、大幅にずれ込むことが分かった。再開は09年以降になる見通しという。当初1年程度とみられた中断期間が4年以上に延びることになり、専門家からは感染者の増加を心配する声も出始めている。旧型ワクチンはすでに製造体制がなく在庫量も限られており、厚生労働省は対応に苦慮している。
 日本脳炎はウイルスをもつブタの血を吸った蚊に刺されて感染する。60年代には年間2000人以上発症したこともあり、76年に予防接種法に基づく定期予防接種が始まった。中断前の標準的な接種は、3歳で2回、4歳1回、9歳1回、14歳1回だった。
 厚労省は05年5月、山梨県内の中学生が副作用で寝たきりになったとして、「接種の積極的な勧奨をしない」との勧告を出した。このため、ほとんどの自治体は、学校での集団接種や保護者への案内をやめた。副作用が出にくいとされる新型ワクチンの開発を見込んだ措置で、同省は1年程度で定期接種を再開できる見通しを示していた。
 ところが、メーカー2社が開発している新型ワクチンは、いずれも臨床試験で皮膚がはれるなどの副作用が多く出た。うち1社が再試験を始めたのは今年1月。すべての試験が終わりデータがそろうのは来年で、同省の承認を得るのに順調でも半年程度かかるとみられる。生産はそれからだ。もう1社の再試験はさらに遅れている。
 92年以降の発症者は年10人以下だが、ブタの感染は減らず、九州・四国を中心とする12県の感染率は8割を超している。
 定期接種の中断が4年になると、09年には6歳以下の大半は免疫をもたないことになる。昨年9月には熊本県内で3歳児が発症。15年ぶりに5歳以下の発症が確認された。これを受けて同省は今年5月、旧ワクチンの接種希望者への情報提供や、医療機関などの在庫を調べて不足地域に融通することなどを求める通知を都道府県に出した。
 旧型ワクチンは現在、12歳以下の定期接種対象者が希望すれば、多くの自治体で無料で打てる。ただ、旧型の原液の在庫は数百万回分と限りがあり、接種を呼びかけるなどの対策は打ち出しにくいのが現状だ。
 昨年は希望者向けに22万回分が出荷されたが、勧告前は年に四百数十万回分が使用されていた。同省結核感染症課は「当面は未接種の幼児がなるべく蚊に刺されないようにするなど情報提供に力を入れる」と話す。
 国立感染症研究所の倉根一郎・ウイルス第1部長は「子どもは成長すると活動範囲が広がるので、感染した蚊に刺される機会は格段に増える。これまでの感染率や発症率から考えると、数十人の子どもの患者が出てもおかしくない。特に西日本で接種を受けたことのない子は、旧型ワクチンを打つのが望ましい」としている。

主治医が患者を総合評価 75歳以上の診療報酬体系で indexへ

 厚生労働省は75歳以上の後期高齢者について、主治医が年に1回程度、心身の状態を総合的に評価する新たな仕組みを設ける方針を固めた。この評価をすると診療報酬を得られるようにする。年2回程度の定期的な検査結果と併せ、評価内容を本人や家族、看護師、ケアマネジャーと共有することで、効果的なケアを行う狙いだ。
 08年4月にスタートする後期高齢者向け医療制度では、高齢者向けの独自の診療報酬体系をつくることが決まっている。「患者の心身を総合的に診ることができる医師」を公的に主治医として認定し、在宅ケアや終末期ケアでも中心的な役割を担うことが柱となる。
 患者の心身についての評価はその一環。主治医が日常の診察から受ける印象に加え、「自分1人でトイレに行けますか」などさまざまな質問をして、日常生活の能力や意欲、情緒などを判定する。
 継続的に患者を診ている医師の評価を周囲の人々が共有することで、治療方針についての合意を得やすくなり、患者のニーズに合ったケアが可能になるとみている。
 厚労省はこのほか、薬の重複投与や副作用のリスクを避けるため、75歳以上の4割以上の人が持っている「お薬手帳」に複数の医療機関で処方されている薬や注射の内容をすべて記録するようにする。

人工歯根の手術受け、70歳女性死亡 東京 indexへ

 東京都中央区内の歯科医院で5月、インプラント(人工歯根)を埋めるための手術を受けていた都内の会社役員の女性(70)の具合が急変し、翌日死亡していたことがわかった。中央署は、手術をしていた経営者の60代の男性歯科医から事情を聴くなどして、業務上過失致死容疑にあたらないか調べている。
 調べでは、女性は5月22日午後3時ごろ、麻酔を打たれたうえで手術を受けていた際、急に具合が悪くなった。歯科医院が119番通報し、同区内の病院に運ばれたが、同23日午前9時20分ごろ死亡。病院が同署に通報した。

すべての睡眠薬で、「夢遊症状」の恐れ 厚労省が指摘 indexへ

 睡眠薬を飲んで眠った後に、本人の記憶がないまま車を運転したり徘徊(はいかい)したりする「夢遊症状」が出る恐れがあるとして、厚生労働省は12日までに、国内で医師が処方するすべての睡眠薬について、使用上の注意を改め、注意喚起を強めるよう製薬会社に指示した。
 対象はマイスリー(一般名・酒石酸ゾルピデム)、ハルシオン(トリアゾラム)、アモバン(ゾピクロン)など19品目。
 米食品医薬品局(FDA)は3月、「寝ぼけた状態で車を運転したり、電話をかけたりする恐れがある」と睡眠薬13品目について警告を出した。これを受けて、厚労省も国内の睡眠薬について、製薬会社からの副作用報告を精査。同様に副作用の恐れがあるとして、添付文書に「睡眠途中に一時起床する可能性がある時は服用させない」「異常が認められたら投与を中止する」などの注意を書き加えるよう求めた。
 国内シェア14%のマイスリーを製造販売するアステラス製薬によると、00年12月の販売開始から今年5月までに副作用が疑われる「夢遊症状」として18件、「もうろう」として8件を同省に報告した。「本人の記憶がないまま食事や徘徊をした例があった」という。

順大医学部で集団赤痢、24人が症状 実習中に感染か indexへ

 順天堂大学(東京都文京区)は12日、同大医学部3年生が赤痢に集団感染し、男子学生5人から赤痢菌が検出されたと発表した。同大や文京区によると、99人の3年生全員を調査したところ、5人を含む計24人で発熱や下痢などの症状があった。このうち7人が入院中だが、いずれも症状は軽いという。
 3年生は3日から6日にかけて、細菌学の実習で赤痢菌の分離培養などをしていた。実習中の感染と考えられるという。

「肝炎センター」設置へ 治療情報、各地に提供 厚労省 indexへ

 厚生労働省は、肝炎の診断や治療法を研究開発する中核施設となる予定の国立国際医療センター(東京都新宿区)に、最新情報を収集・発信する「肝炎情報センター(仮称)」を設置する方針を固めた。各都道府県の肝炎拠点病院が行う研修に協力するほか、各地の医療機関に最新の治療情報などを提供し、全国どこでも質の高い治療を受けられる体制をつくる狙い。来年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。
 同省は今年度予算で約75億円の肝炎対策費を計上。4月には各都道府県に対し、原則1カ所ずつ「肝疾患診療連携拠点病院(仮称)」を設置し、地域の病院や開業医と連携して治療にあたるよう求める通知を出した。中核施設にはこれらの拠点病院を指導・助言する役割が期待されている。来年度に整備する予定だ。
 情報センターは、その中心的な施設となる見通し。全国の病院や開業医にもインターネットを通じて最新の治療法や治療薬について情報発信する。
 厚労省の推計では、国内の肝炎ウイルス感染者は、B型が110万〜140万人、C型が150万〜190万人。肝炎は放置すると慢性化して肝硬変や肝がんに進行する恐れがあり、早期の発見と治療が重要とされる。

歯科医の麻酔研修で死亡 指導医は不在 三井記念病院 indexへ

 東京都千代田区の三井記念病院で、歯科医が研修で外科手術の麻酔をした際、指導医が監視しない時間があるなど厚生労働省の指針に反していた問題で、患者が死亡した症例があることが東京都の調べで分かった。
 都や同病院によると、06年10月、腎臓病の男性(72)が研修中の歯科医から全身麻酔を受けた直後に心停止となり、2カ月後に死亡した。麻酔の際、指導医は手術室にいなかった。病院側は手術後、患者の家族に対して「医師が麻酔をした」と虚偽説明をしていたことも分かった。
 また同年11月には同じ歯科医が麻酔をした女性(73)が2日後に心肺停止となり、植物状態が続いている。同病院は「指導医が不在だった可能性が高い」としている。
 同病院は03年から日大歯学部の歯科医らを受け入れ、週1回、麻酔研修を実施していた。指導医は、同病院に非常勤で勤める日大歯学部教授(麻酔科専門医)だった。
 都は原因究明を指導し、同病院は「2例に関して第三者を入れて検証する」としている。

生体肝腎同時移植の4歳女児死亡 手術後1カ月 indexへ

 胆管と腎臓に重い障害を持つ4歳の女児に、父親の肝臓と腎臓を同時に移植する国内初の手術を5月に実施した国立成育医療センター(東京都世田谷区、松井陽院長)は11日、この女児が6月28日に死亡していたことを公表した。原因については「術後の合併症」としているが、詳しい経緯は「家族の希望」を理由に発表していない。父親の経過は良好で今月5日に退院したという。
 1人の提供者(ドナー)からの肝臓と腎臓の生体同時移植は、海外では複数の報告があるが、国内では初。手術は5月18日に行われ、同センターが翌日開いた記者会見では、「順調なら2カ月後に退院できる見通し」としていた。

ごっくん、カプセル型内視鏡 indexへ

 薬のようなカプセルを飲んで小腸の中を撮影するカプセル型内視鏡を、岐阜県笠松町の松波総合病院(山北宜由院長)が導入した。検査が難しく「暗黒の臓器」と呼ばれていた小腸を、簡単に検査できる。村井敏博副院長は「これまで見られなかった小腸の画像を見られるようになり、確定診断に役立つ」と期待を寄せる。
薬のようにのみ込むカプセル型内視鏡
カプセル型内視鏡で撮影された小腸の画像を説明する村井敏博副院長
 同病院によると、カプセル型内視鏡は、大学病院などでの臨床試験は行われてきたが、臨床の現場で導入されるのは日本で初めて。6月19日の導入後、すでに20代の女性に使用して小腸の病変の撮影に成功している。
 カプセルは長さ26ミリ、直径11ミリ、重さ3.45グラム、先端にカメラが内蔵されている。飲んでから自然に排出されるまで約8時間かけ5万5000枚を撮影。カプセルから送信された画像データを、体につけたセンサーを通じ携帯型記憶装置に受信する。患者は検査をしながら日常生活を送ることができる。カプセルは、専用キットで回収し医療廃棄物として処理する。
 小腸は長く曲がりくねっていて、口や肛門(こうもん)から遠いことや腸壁を傷つけることなどから、従来のファイバースコープの内視鏡での検査はほとんどできなかった。しかし、カプセル型を使えば、患者は苦しい思いもせず、病変などの画像を見て確定診断ができる。使い捨てのため、感染リスクも低い。
 カプセル型は、ミサイルのアイデアから生まれた。イスラエルの軍事研究者が消化器内科医に出会い、雑談の中からミサイルのように先端のカメラから画像を送るという発想が生まれたという。
 4月に厚生労働省が輸入販売を認可。開発したイスラエルのギブン・イメージング社の日本法人が輸入し、医薬品卸のスズケン(本社・名古屋市東区)が5月から販売を開始した。価格は、カプセル10個入りが100万円、携帯型記憶装置一式が140万円、実際にデータを取り込んで医師が画像を見る専用のコンピューター一式が503万円(すべて税抜き)。スズケンは07年度の売り上げを15億円と見込む。
 検査はまだ公的医療保険適用外だが、同病院は保険適用まで、希望者に13万8000円(税込み)で検査を実施する。早ければ07年中に保険適用される可能性もあるという。
昭和大藤が丘病院、診療報酬を過大請求 5億円返還へ indexへ

 横浜市青葉区の昭和大藤が丘病院(与芝真彰院長、667床)が診療報酬を過大に請求したとして神奈川社会保険事務局から差額分を返還するよう指導を受けていたことが5日、分かった。病院側は「計算ミスだった」として指導を全面的に認め、総額5億1000万円を返還する方針だ。
 神奈川社会保険事務局によると、藤が丘病院は昨年8月1日、1日の平均入院患者数が実際は495人にもかかわらず実態より少ない427人と届け、患者7人に看護師1人という「7対1基準」を得た。この基準に基づいて診療報酬を請求した結果、一般病棟の患者1人あたり1日の入院基本料は1万5550円となり、それ以前の10対1の場合に比べて2860円分多く受け取っていたという。
 社会保険事務局は今年6月20日、「届け出に誤りがある」として差額分を返還するよう口頭で指導。病院は、この指摘を認め、今月2日に届け出を出し直した。
 病院によると、以前は直近1年間の入院患者数をもとに1日の平均入院患者数を計算していたが、06年8月の届け出の際には誤って直近1カ月の数字で計算してしまったという。今年4月からは看護師を増員したため7対1基準を満たしているという。

「胃がんの診断されず死亡」 名古屋の開業医に賠償命令 indexへ

 名古屋市天白区の診療所「サクラクリニック」で受診後、02年に胃がんで死亡した同区の男性(当時51)の遺族2人が、「胃がんの確定診断を怠り、治療が遅れた」などとして、同クリニックの男性開業医(45)を相手取り、慰謝料など8993万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が4日、名古屋地裁であった。永野圧彦裁判長は「精密検査を受けるよう指導すべき義務を怠った」として、開業医側に4131万円の支払いを命じた。
 判決によると、男性は胃の不快感などを訴え、01年1月に同クリニックで受診した。開業医は上部消化管造影検査をしたが、内視鏡検査などによる確定診断をせず、胃潰瘍(かいよう)の可能性が高いと判断。男性は約8カ月後、別の診療所で胃がんと診断され、02年4月に死亡した。
 開業医側は「造影検査でがんと診断することが非常に困難なケースで、過失はない。仮に手術しても、明らかな予後の改善はなかった」と反論していた。

「慢性疲労症候群」診断しやすく 特徴的10症状基準に indexへ

 原因不明の激しい疲労が半年以上も続き、通常の日常生活が送れなくなる「慢性疲労症候群(CFS)」の新しい診断指針を、日本疲労学会の委員会(委員長=倉恒弘彦・関西福祉科学大教授)がまとめた。30日、東京で始まった学会総会で発表した。
 新指針では、リウマチや慢性感染症など8種類の病態でないことを確認した上で、「体を動かした後、24時間以上疲労が続く」「思考や集中力の低下」など特徴的な症状を10項目に絞り、うち5項目以上を満たすことを診断基準にした。5項目未満の患者は新たに設けた「特発性慢性疲労(ICF)」と診断する。
 92年に旧厚生省研究班が作った現在の診断基準は本人の自覚症状が中心で、臨床現場で混乱が起きることがあった。最新の研究成果とも合わなくなっていた。CFS患者は10万人当たり約300人、潜在患者はその10倍との推計がある。診断がつかないまま病院を渡り歩いたり、職場で「なまけ病」とそしられたりする患者も多く、同学会は新指針でこうした問題が減るとみている。

インフルエンザワクチン 過去最多640万本余る 廃棄へ indexへ

 インフルエンザワクチンの使用量が06年度、10年ぶりに減少に転じ、過去最多の約640万本のワクチンが余ったことが、厚生労働省の調べでわかった。暖冬などで例年より流行が遅く、接種した人が予測より少なかったためとみられる。
 ワクチンは、厚労省が翌シーズンに流行するインフルエンザの型や必要量を予想し、それをもとに民間メーカーが製造する。厚労省は06年度のワクチン使用量を2200万本前後と予測し、メーカーは2518万本を製造した。これに対し、実際の使用量は1877万本にとどまった。未使用分はすべて廃棄される。
 06年度のワクチン使用量は05年度より55万本少なく、医療機関への調査から推定した全国民の接種率は27.9%だった。また、ワクチンの余った量がこれまで最も多かったのは04年度の431万本だった。
 同省は07年度について、使用量を2000万本前後と予想し、2350万本の製造を見込む。

国内未承認薬、使用拡大容認へ 重病で代替治療ない場合 indexへ

 厚生労働省は29日、重病で代替治療がない患者への特例措置として、国内で承認されていない薬の使用を認める制度を新設する方針を決めた。治療目的での個人輸入は現在も容認しているが、製薬会社を経由した輸入も認める方向。実現には数年かかる見通しで、患者の負担軽減策も検討する。 
 今後、「コンパッショネートユース(人道的使用)制度」を設けて未承認薬の限定的な使用を制度化している欧米の例を参考に、対象とする薬の範囲や費用負担のあり方などを詰める。
 厚労省によると、新制度の対象には(1)国内で治験中か治験済み(2)欧米で治験中か治験済み(3)欧米で承認済み――の薬を想定。国内承認が遅れている抗がん剤や、採算が合わずに治験が止まっている難病の薬などが対象になるとみられる。
 対象薬となれば、製薬会社による未承認薬の輸入が解禁される。輸入などの費用は原則患者負担となるが、薬剤費以外の医療費を保険適用とすることなども検討していく。
 製薬会社や医師には副作用の報告を求めるものの、公的な副作用被害救済制度の対象にはならない見込みだ。

抗うつ剤「パキシル」服用後の自殺・未遂増 厚労省調べ indexへ

 抗うつ剤「パキシル」(一般名・塩酸パロキセチン水和物)の副作用の疑いのある自殺や自殺未遂の報告が増えていることがわかった。06年度は自殺・自殺未遂の報告が計39件あり、前年度の計13件から大幅に増えた。パキシルは国内の抗うつ薬全体の約4分の1を占めており、厚生労働省と製造販売元のグラクソ・スミスクラインは服用後の患者の様子を注意深く観察するよう求めている。
 厚労省と独立行政法人・医薬品医療機器総合機構によると、パキシルの副作用の疑いがあるとして報告された自殺の件数は04年度は1件だったが、05年度11件、06年度15件と増加。未遂となった「自殺企図」も04年度2件、05年度2件、06年度24件と増えた。
 米食品医薬品局(FDA)は昨年、服用者に自殺を試みる行動が増える傾向があると警告。同社は厚労省の指導を受け、昨年6月、国内向けの薬の使用上の注意に「投与中に自殺行動のリスクが高くなる可能性が報告されており、患者を注意深く観察すること」との文言を加えた。

習慣流産の夫婦、受精卵診断で妊娠 北九州の医院 indexへ

 北九州市のセントマザー産婦人科医院で、体外受精させた受精卵のうち異常のないものだけを母親に戻す「受精卵診断」を受けた習慣流産の夫婦が妊娠し、胎児の染色体に異常がないことが確認された。日本産科婦人科学会(日産婦)の手続きに従った習慣流産の受精卵診断で、出産の可能性が高くなった初のケースという。
 8月の日本受精着床学会で発表される予定だ。
 田中温院長によると、受精卵診断を受けたのは東京都内に住む30代前半の夫婦。いずれかの染色体の一部が別の場所に入れ替わるなどし、遺伝情報に異常が生じる「転座」のため、これまで2回流産を経験している。
 日産婦は昨年4月の総会で、流産を2回繰り返し、転座が原因であることが確実な夫婦について、医療機関からの実施申請を個別審査したうえで、受精卵診断を認めることを正式決定した。
 この夫婦の申請は昨年12月、日産婦の倫理委員会で承認された。遺伝子に異常のない受精卵を戻した1回目で妊娠。妊娠しても胎児に染色体異常があれば、流産の可能性は高いとされるため、妊娠12週に入った5月、胎児の染色体を調べる出生前診断を実施したが、異常はなかった。順調に育っており、年内に出産予定という。
 習慣流産の受精卵診断をめぐっては、これまで五つの医療機関から18例が日産婦から承認されている。朝日新聞が、セントマザー産婦人科医院以外の4施設に聞いたところ、ここまで進んでいる例はなかった。
 習慣流産は厳密には3回以上流産を繰り返すケースを指し、頻度はすべての妊娠の0.5〜3%、うち転座によるものは3〜5%とされる。ただ、受精卵診断をしなくても自然に妊娠、出産する例はあり、「成功率は自然妊娠と大きく変わらない」との指摘もある。
 田中院長は「習慣流産に苦しむ人は少なくない。今後、治療の選択肢に、受精卵診断が信頼をもった形で定着していくうえで、今回の夫婦の成功例は大きな意義がある」と話した。

ワクチン原料の品質保証期限切れ判明 阪大微生物研 indexへ

 ワクチンメーカーの財団法人・阪大微生物病研究会(理事長、東雍(ひがし・やすし)・大阪大名誉教授)が製造し、3月から53万人分出荷していた、はしかと風疹の混合ワクチンで、ワクチン製造のために利用したウシの血清の品質保証期限が切れていたことがわかった。厚生労働省は、安全上の問題はないとの立場だが、医薬品の信頼を確保するため、製造工程の透明性を高めるべきだと指摘する専門家もいる。
 このワクチンは、04年に観音寺研究所(香川県観音寺市)で製造した。ワクチンのもとになるウイルスを増殖させる細胞を培養するために使うオーストラリア産のウシの血清の品質保証期限が02年に切れていたが、そのまま使い、ワクチンの国家検定にパスしていた。
 阪大微研によると、牛海綿状脳症(BSE)問題でウシの血清が入手しづらくなり、米国の血清メーカーに品質保証期限の根拠などを問い合わせたが、回答はなかったという。「凍結保存しておいた血清の品質をそのつど確認した。品質保証期限には科学的な根拠があるとは考えていない」と説明しているが、その後、国民の誤解を招きかねないとして昨年末ごろから使用をやめている。
 医薬品の安全管理に詳しい東京医科歯科大歯学部付属病院の土屋文人薬剤部長は「ワクチンに残るものではないので、製品の安全性や効果に不安を持つ必要はない。しかし、製造工程の疑問点は国民に明らかにされる必要があり、厚労省は製造者に注意を促すべきだ」と話している。

中国製歯磨き粉62万本回収 ジエチレングリコール検出 indexへ

 中国製の歯磨き粉から毒性物質ジエチレングリコールが相次いで検出された問題で、東京都は27日、新たに別の製品からも検出され、輸入販売業者が自主回収を始めたと発表した。
 回収されるのは輸入販売会社「創信」(東京都新宿区)が06年9月から07年6月に輸入、販売した「トゥインクルハミガキ」「子供用歯みがき粉イチゴ味」。全国のビジネスホテルや旅館など業務用に約62万本が出荷されたという。

医師不足6病院に7人派遣へ 政府の緊急派遣第1陣 indexへ

 厚生労働省は26日、医師が不足している北海道、和歌山県、大分県などの6病院に近く医師7人を緊急派遣すると発表した。政府・与党が5月末に決めた「緊急医師確保対策」の一環で、国がプールした医師の地方派遣の第1陣となる。
 厚労省は今月中旬、「休診した診療科がある」「代替の医療機関がない」などの条件を示して医師の派遣希望を募っていた。派遣する医師については、全国ネットワークを持つ病院や都市部の大病院に協力を依頼。日本赤十字社、済生会、国立病院機構、全国社会保険協会連合会、日本医科大が応じた。定年退職した医師も公募した。
 派遣期間は7、8月から3〜6カ月程度。派遣先は次の通り。
 北海道社会事業協会岩内病院(内科)▽岩手県立大船渡病院(循環器科)▽岩手県立宮古病院(循環器科、2人)▽栃木県・大田原赤十字病院(内科)▽和歌山県・新宮市立医療センター(産婦人科)▽大分県・竹田医師会病院(救急)

出産で後遺症 医師らに1億3800万円支払い命じる indexへ

 出産方法の選択を誤ったために男児が脳性まひになったとして、横浜市青葉区の両親と男児が、東京都町田市の町田市民病院の男性医師と、病院を経営する同市に約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、横浜地裁であった。三代川俊一郎裁判長は、医師の過失を認め、2被告に約1億3800万円の支払いを命じた。
 判決によると、03年6月7日午後5時40分ごろ、医師は吸引分娩(ぶんべん)を試みたが効果がなく、同6時半ごろに帝王切開を行った。男児は仮死状態で生まれ、新生児低酸素性虚血性脳症で脳性まひになった。判決で三代川裁判長は「午後5時半ごろ帝王切開を選択していれば、障害は回避できた」とした。
 同病院は「判決文を読んでいないのでコメントできない」とした。

病気腎移植6件、手続き不適切 広島・呉共済病院が報告 indexへ

 広島県呉市の呉共済病院で91〜01年に実施された6件の病気腎移植について、同病院の調査委員会は25日、報告書をまとめ、いずれの移植も同病院の倫理委員会に報告されておらず、手続きの面で不適切だったと指摘した。91〜99年に実施された病気腎の摘出については、5件から6件に修正したうえで、「やむを得なかった」「不適切との断定は避けるべきだ」などとしておおむね容認した。
 手術はいずれも光畑直喜医師(59)が実施した。調査委は、当時、明確な法令や移植に関する倫理規範がなかったものの、「実験的・研究的医療であったことは否定し得ない」と結論づけた。ただ、医学面での適否については「まだ十分な症例報告がないため危険性の程度は不明で、今後の研究課題」などとして判断を留保した。

東大病院が、120人分の個人情報記載の入院台帳を紛失 indexへ

 東京大学医学部付属病院は21日、入院患者120人分の個人情報が記載されていた入院台帳1冊が紛失したと発表した。台帳には、今年1月から今月10日までに入院した患者の氏名、生年月日、住所のほか、確定診断名や手術日なども記載されていた。病院では調査委員会を設置、該当する患者に連絡をとり、説明と謝罪をしている。
 台帳は入院棟のスタッフステーション内に保管されていたが、医師が11日、保管場所にないことに気づき、病院に報告した。

東京医大が診療報酬を不適正請求 都など返還を指導 indexへ

 厚生労働省と東京社会保険事務局、東京都は19日までに、東京医科大学病院(岩本俊彦院長)で不適正な診療報酬請求があったとして、報酬の自主返還と診療、事務の改善を指導した。昨年5〜6月に受診した患者の診療報酬明細書(レセプト)などを調べた結果、診断根拠がない病名が記載されているなどのケースが見つかった。病院は05年11月〜06年10月の不適正な報酬の返還額を調べ、7月末までに東京社保事務局に報告する。
 厚労省などが定期的に実施する「特定共同指導」で明らかになった。指導は、健康保険法などに基づき、東京都の場合、毎年少なくとも1病院ずつ、診療内容や報酬請求が適正かどうかを調べている。
 その結果、診断根拠がなく、投薬や検査目的でつけられた病名(レセプト病名)や、カルテに長期間、病名に「疑い」や「急性」がついたままのケースが多数あった。このほか、差額ベッド代も、患者の同意書にある同意日より前から徴収した例などもあった。土田明彦・副院長は「意図的に不正をしたということはない。指摘の多くがカルテの記載漏れで、仕事量が増大する半面、医師や職員は減ってカルテの管理に手が回らない実情もあった」としている。

タミフルでの異常行動、211人に 厚労省まとめ indexへ

 厚生労働省は16日、インフルエンザ治療薬タミフルを飲んだ後、飛び降りなどの異常行動を起こした人が01年の発売から今年5月末までの累計で211人に達したことを明らかにした。4月17日までの前回の集計後、新たに26人の異常行動の報告があった。服用後の死亡は、20代男性の突然死など2人が新たに判明、累計で71人になった。
 同日開いた薬事・食品衛生審議会の安全対策調査会に報告された。20代男性が04年、タミフル服用後に自宅マンション6階から飛び降り、現在身体障害者になっている事例も新たに判明した。この男性は、精神疾患の薬などタミフル以外に12種類の薬を飲んでいたという。
 副作用が疑われる事例の報告総数は1377人。そのうち異常行動を伴う死亡は8人で、4月以降増えていない。

医師数の基準、満たす病院83% 地域間になお格差 indexへ

 厚生労働省は15日、全国の病院で05年度、医療法が定める医師数の基準を満たした割合は83.8%だった、との調査結果を発表した。前年度の83.5%からほぼ横ばいだが、地域間格差が大きく、北海道・東北地方などで依然として深刻な医師不足が続いていることがうかがえる。
 全病院の95%にあたる8518病院に都道府県が立ち入り検査し、医師や看護師らの配置状況を調べた。患者数に応じた医師数の基準に適合していたのは7135病院。
 地域別の適合率は、北海道・東北が63.5%で最も低く、最高の94.4%だった近畿と約30ポイントの開きがあった。次いで北陸・甲信越(78・8%)、四国(81.9%)、中国(83%)、九州(86.8%)の順に低かった。
 一方、近畿、関東(89%)、東海(88.2%)では、それぞれ約4分の1の病院が基準の1.5倍以上の医師を抱えており、大都市部の病院に医師が集中している実態が数字で裏付けられた。
 看護師数の基準を満たした病院は99.3%、薬剤師は90.7%だった。

元東洋大教授ら3人逮捕 調剤報酬詐欺の疑い indexへ

 東京都豊島区の漢方薬局「健命堂」社長の森田喜代重被告(56)=詐欺罪などで起訴=が調剤報酬をだまし取ったとされる事件で、警視庁は13日、東洋大学元教授で弁護士の林田学容疑者(51)=世田谷区松原2丁目=ら3人を詐欺の疑いで逮捕した。同庁は、林田元教授が、実質的に経営するコンサルティング会社「日米総研」(渋谷区)を通じ、森田被告らに不正な助言をしたとみて調べを進める。
 ほかに逮捕したのは、日米総研元社員の三俣(みつまた)晴一郎(50)=東京都町田市三輪緑山2丁目=、同社員の藤井剛(つよし)(38)=世田谷区桜丘1丁目=の両容疑者。
 生活環境課の調べでは、林田容疑者は実質的に経営する「神宮前クリニック」の診療報酬と、健命堂の調剤報酬をだまし取ることを計画。05年7月から06年5月にかけ、37人分の架空の診療報酬を請求し、計約92万円を詐取した疑い。また、架空の患者に調剤したと偽り、健命堂の調剤報酬計約328万円を詐取した疑い。

医療機関の倒産急増 診療報酬引き下げで収入減 indexへ

 医療機関の倒産が急増している。信用調査会社の帝国データバンクのまとめによると、法的整理による倒産件数は今年1〜5月で全国で28件に上り、01年以降で最悪のペース。06年度の診療報酬引き下げによる収入減が大きな要因で、同社は「小規模の医療機関を中心に年後半はさらに増えそうだ」とみている。

グラフ医療機関の倒産件数の推移
 帝国データが全国の医療機関(病院、診療所、歯科医院)による民事再生法や破産手続きの申請など法的整理件数を調べたところ、02〜06年はほぼ横ばいだったが、今年は例年の倍近いペースで増加。01年以降で最も多かった04年(32件)を超える勢いだ。
 今年の28件のうち、民事再生法が8件、破産が20件。負債額5億円未満が15件と約半数を占める一方、30億円以上の倒産件数(5件)は過去6年間の合計件数にすでに並んだ。事業規模の大きい医療機関は民事再生法、診療所や歯科医院など規模の小さいところは破産を選択する傾向が強くなっているという。
 主な倒産原因については、診療報酬の減少による「販売不振」が7件、「設備投資の失敗」が8件と多く、「放漫経営」が3件だった。

O157に170人感染、3人重症 武蔵野女子学院 indexへ

 東京都は6日、学校法人「武蔵野女子学院」(西東京市)の敷地内にある学生食堂で5月に集団食中毒が発生し、腸管出血性大腸菌(O157)の感染者が170人にのぼったと発表した。うち3人は、急性腎不全を起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発し、重症だという。
 都福祉保健局によると、食堂を利用した中学生、高校生、系列の武蔵野大の学生ら計36人が5月18〜26日の間に下痢や腹痛などの症状を訴え、9人が入院した。同居家族が発症し、二次感染を疑う例も2件あったが、今月1日以降は、新たな患者の報告はないという。
 都は、学食を営業していた給食会社「東京学校用品」(本社・調布市)を営業禁止処分にしている。菌の経路は特定できていない。

香川大・百日ぜき、異例の成人集団感染 indexへ

 香川大学で、しつこいせきなどの症状を訴える学生や職員が相次ぎ、休講などの対応を取った問題で5日、学生らからとった検体から百日ぜき菌の遺伝子が見つかり、日本で例のない成人百日ぜきの大規模集団感染だったことが分かった。検体を調べた国立感染症研究所は「地域に、気づかないまま感染が広がっている可能性がある」といい、重症化しやすい乳児は、できるだけ早い機会に予防接種を受けるよう呼びかけている。
 香川大では4月以降、しつこいせきなど、百日ぜきに似た症状を起こす学生や職員が続発。同大によると、4日までに計216人が症状を訴えた。百日ぜきかどうか調べるため、5月28日以降に症状を訴えてきた学生19人分ののどの粘液を感染研に送って検査を依頼。12人分から百日ぜき菌の遺伝子が見つかった。
 感染研細菌2部の荒川宜親部長は「香川大の流行が本当に百日ぜきか、半信半疑だったので、菌が高率に見つかって、実は驚いた。成人の百日ぜき集団感染は、聞いたことがない。なぜ香川大で起きたのか謎だ」と話す。

「ライブ手術」で患者が死亡 愛知で昨年9月 indexへ

 医師の研修を目的としたライブ(実演)手術で昨年9月、患者の死亡する事故があったことがわかった。関連する日本心臓血管外科学会(高本真一理事長)は調査委員会(委員長=八木原俊克・国立循環器病センター副院長)を設け、残された映像などの調査を実施した。同学会は委員会の報告をもとに、ライブ手術の指針を作る予定だ。
 事故が起きたのは愛知県内の病院。心臓から出た太い血管にこぶのある胸腹部大動脈瘤(りゅう)患者について、他病院の心臓血管専門医がこぶの破裂を防ぐための手術を執刀する様子が、兵庫県内の別会場の医師らにライブ中継された。
 ところが、その最中にこぶが破裂。中継をやめて緊急処置が施されたが患者は2日後に亡くなった。ライブ手術を主催した研究会の世話人から学会に調査依頼があり、委員会が発足した。
 病院がカルテ提出などを断ったため、調査委は映像など限られた資料から判断した。その結果、中継を見ていた医師たちから手術法への異論が出て、執刀医は反論しながら手術していたことがわかった。また、全国平均で死亡率19%の手術なのに、執刀医とは別の医師が「5%」と患者に説明していた。
 調査委は、死亡率の高い疾患を選んだことなど企画・運営に「ショー的な要素」が否定できず、手術中にライブ会場から自由に質問・議論できる形式は、執刀医の集中力を損なった可能性が否定できないとした。また死亡率などの説明に関するインフォームド・コンセント(十分な説明と同意)には「問題がある」とし、患者の安全確保対策や、指針の必要性を提言している。
 病院側は朝日新聞に「難手術だからライブの意義がある。プロだから、見られていても実力は出せる。医療ミスではなく起こりうる合併症と考えており、ご遺族には納得していただいた。委員会の調査については、何百万円かの調査費を負担するよう求められたので断った」と答えた。
 東京都千代田区の三井記念病院で、歯科医師が研修で外科手術の麻酔をした際、研修指導医が監視していない時間があるなど、厚生労働省の指針に反していたことが、東京都の調べで分かった。都は同病院に研修の中止を指導した。
 都などによると、同病院は03年から都内の大学の歯科医を受け入れ、週1回、麻酔研修を実施。麻酔後に指導医が手術室を離れたり、患者が手術室に入ってから歯科医が麻酔をかけることを告げたりしていた。都は1日、立ち入り検査をし、患者の安全が確保されていないと判断した。都は今後、都内の病院に、歯科医の麻酔研修の実態調査をする。
 同病院は「指針のゆるい解釈をしてしまった。今後は歯科医師による麻酔研修は行わない」としている。

タミフルと睡眠との関連解明へ 副作用調査で厚労省部会 indexへ

 インフルエンザ治療薬タミフルの副作用を臨床面から調査する厚生労働省の作業部会は4日、異常行動や突然死とタミフル服用の関係を解明するための調査・試験項目をまとめた。寝起きに異常行動が多いことなどから、タミフルを飲んで眠っている時の脳波などを調べる。突然死したケースについては、過去の心臓病歴などを追跡調査する。
 作業部会が異常行動の症例を調べたところ(1)眠りから目覚めた直後に多い(2)本人がほとんど記憶していない、といった、寝ぼけた状態で異常行動を起こす睡眠障害の一種と似た傾向がみられた。そこで、睡眠時の脳への薬の作用を調べる必要があると判断。20代前半の健康な男性十数人にタミフルと偽薬を飲んでもらい、睡眠時の脳波などを調べるよう輸入販売元の中外製薬に指示した。
 タミフル服用後の突然死はこれまで12件が厚労省に報告されている。突然死の疑いがあるケースも含め、本人や家族の心臓病歴、心電図の記録などを可能な限り調べて詳しい因果関係を探る。

イレッサ副作用死、706人に 厚労省が答弁書 indexへ

 厚生労働省は1日、肺がん用の抗がん剤イレッサ(一般名ゲフィチニブ)の副作用の疑いがある症例報告が今年3月までに計1797件あり、うち706人が死亡していたことを、小池晃参院議員(共産)の質問主意書に対する答弁書で明らかにした。

コンタクトレンズ消毒・保存液、60万本を自主回収 indexへ

 コンタクトレンズ輸入販売業「エイエムオー・ジャパン」(東京都港区)は1日、米国製の消毒・保存液「コンプリートアミノモイスト」約60万本を自主回収すると発表した。米疾病対策センター(CDC)が、重い角膜障害を引き起こす「アカントアメーバ角膜炎」の患者に同製品の使用者が多いと公表したため。国内の被害報告はないという。
 同社によると、この消毒・保存液は06年5月から14種類、約270万本が出荷された。まだ在庫などとして残ると推測される約60万本が回収対象になる。
 CDCは5月25日、05年以降にこの角膜炎を発症した患者46人を調べたところ21人が同製品を使っていたと発表。因果関係は調査中だが、米の親会社は同日、自主回収を始めた。この角膜炎は不潔なコンタクトレンズなどがもとで発症する場合が多く、まれに失明することもあるという。

はしかワクチン、1歳児用「確保を」 厚労省呼びかけ indexへ

 厚生労働省は30日、はしか(麻疹)ワクチンの在庫が急減している事態を受け、1歳児が受ける定期予防接種用のワクチン量を確保するよう呼びかける通知を各都道府県に出した。
 国は予防接種法に基づき、1歳時と小学校入学前の2回、はしか・風疹の混合ワクチンを公費負担で接種するよう求めている。しかし、今回の大流行で在庫が減っており、医療機関によっては1歳児が一時的に定期接種を受けられなくなる恐れが出てきた。このため厚労省は、定期接種の必要量を算出し、今後数カ月間分のワクチンを確保するよう求めた。
 29日時点のワクチン在庫は約9万本(うち混合ワクチン6万本)だが、混合ワクチンは6月にかけて約50万本の追加供給が見込まれるという。

昨秋スタートの国立病院間の医師派遣、半年で打ち切りに indexへ

 国立病院でも深刻化する医師不足に対処しようと、全国146病院を管轄する独立行政法人・国立病院機構が「緊急医師派遣制度」を昨秋導入したものの、半年で中止に追い込まれていたことがわかった。一方、31日に医師確保対策を決める政府・与党は、「即効性のある対策」として、国立病院の医師らを地方の病院に派遣する制度を打ち出す。同機構は「国立病院間でも難しかったことなのに」と困惑している。
 同機構は昨年9月、都市部などの国立病院から地方の国立病院に医師を派遣する制度を導入した。東北などの病院で、医療法で定められる標準医師数に届かずに、病院収入となる診療報酬をカットされかねない恐れが出てきたためだ。
 派遣元となったのは、東京医療センター(東京都)など29病院。派遣医師に1万円の日当を上乗せするなどした。
 だが病院側からは、「医師が担当する患者のケアが途切れる」「チーム医療が維持できなくなる」などと断るケースが続出。それでも、応じた病院から、米沢(山形県)、釜石(岩手県)、八戸(青森県)の3国立病院に派遣された。
 医師数は延べ108人に上った。派遣期間が数日〜2週間と短期にとどまったためだ。それでも派遣元からは「継続困難」との訴えが相次いだ。同機構は、今年3月末に制度自体を打ち切らざるをえなかった。
 政府・与党が描く確保対策は、都道府県の拠点病院が地域の自治体病院などに医師を派遣しても足りない場合に、国立病院機構などがプールした医師らを数カ月〜1年間派遣する。国立病院の医師らを登録して派遣医師をプールする計画。さらに定年退職して間もない医師らも公募して登録してもらう。
 さらに医師への動機付けとして、派遣終了後のポスト確保や留学・研修といった「特典」も検討している。自民党幹部は、6月中にも最初の医師派遣をさせたい考えを示しているが、機構は「国立病院同士の調整すら難しい」としており、必要な医師数を集められるかは不透明だ。

医師不足対策、政府・与党が合意 緊急派遣する仕組みも indexへ

 自民党の中川昭一、公明党の斉藤鉄夫両政調会長は30日、首相官邸に安倍首相を訪ね、国レベルの緊急医師派遣システムの構築を柱とする与党の緊急医師確保対策を報告した。31日の医師確保対策政府・与党協議会で正式にまとめる。
 対策は「国民が地域医療が改善された」と実感できることをめざして策定。ただちに着手する予定なのは、医師不足地域に国から緊急派遣する仕組みづくり。病院勤務医の負担を減らすため、事務作業などを手伝う人員を増やす。関連して、比較的軽いけがや病気で救急まで含めて対応する「総合医」のあり方についても検討することとした。
 女性医師が出産や育児で一度職場を離れても復職しやすいように、女性医師バンクを充実させる。また、専門医をめざす過程で、地域医療や医師派遣にかかわるような仕組みも作る。長期的な対策では、大学医学部定員の「地域枠」を拡大、奨学金制度も活用しながら医師不足地域で医療に従事する医師育成を図ることも盛り込んだ。

初のがん基本対策 柱は死者数2割減、生活の質向上 indexへ

 4月のがん対策基本法施行を受け、患者や医師、識者らでつくる「がん対策推進協議会」は30日、今後のがん治療のあり方を示す国の初めての基本計画案をまとめた。「75歳未満のがん死亡率を10年以内に20%減らす」「患者・家族の苦痛を軽減して生活の質を上げる」を目標の2本柱に、全国どこでも一定水準の治療を受けられることをめざす。実現すると、がん治療はどう変わるのか――
 ■がん難民を解消
 厚生労働省は、がん治療の拠点になる病院を「がん診療連携拠点病院」に指定している。現在は全国に286施設。これを3年以内に360以上に増やす。
 各拠点病院には、患者・家族の相談に無料で応じる「相談支援センター」を3年以内に設置。最新の治療情報を提供する国立がんセンターの「がん対策情報センター」で研修を受けた専門相談員を置く。薬の副作用や最適な治療法などについての助言もする。
 納得できる治療が受けられず、病院を転々とする「がん難民」を解消する狙いだ。
 ■広がる治療の幅
 日本は外科手術の技術は高い一方で、放射線療法や抗がん剤による化学療法では専門医が不足し、希望しても受けられない患者も多かった。
 今後は5年以内にすべての拠点病院で外科、放射線、化学療法ができる態勢をとり、特定機能病院にはそれぞれの治療法を専門に担う部門をつくる。5大がん(肺、胃、肝臓、大腸、乳がん)については、入院から退院後の通院までの治療全体を、地域の医療機関が連携して担うようにする。
 ■緩和ケアを推進
 モルヒネなどの医療用麻薬でがんの痛みを和らげる緩和ケア。がん治療にあたる医師は、その基本知識を10年以内に研修などで学ぶ。拠点病院には専門医や看護師らによるケアチームが置かれる。自宅などで療養したい患者のために、訪問看護師を増やして24時間訪問できる態勢も整える。
 このほか、定期的ながん検診を普及させるため、現在は20%前後にとどまっている乳がん、大腸がんなどの検診受診率を5年以内に50%以上にする目標も設定した。
 基本計画案は6月に閣議決定される。都道府県はこれをもとに、地域の事情に合わせた基本計画を年度内につくる。

臓器求めアジアへ ドナー「二つあるものはひとつ売る」 indexへ

 臓器を買う人、売る人。日本国内でドナー(提供者)が少ないため、臓器を求めてアジアへ渡る移植患者が増えている。特にフィリピンでは非血縁者の生体移植が7割を占めており、ドナーの多くは「謝礼」を目的とする貧困層だ。臓器売買は倫理や安全の面だけでなく、世界的な臓器不足と貧困問題を念頭に取り組むべきだとの声が高まっている。
 マニラ市の貧困地区バセコ。約4万5000人の住民のうち約3000人が臓器提供者と言われる。
 「手術後、謝礼として11万5000ペソ(30万円)もらった」と話す男性(32)は03年、日本人の男性に腎臓を提供した。
 自転車で客を運ぶ仕事の収入は、多いときで1日120ペソ(約310円)程度。子供を抱え、まとまったカネが欲しかった。腎臓摘出は怖かったが、周囲の「経験者」たちから話を聞き、酒を飲み過ぎないなど注意すれば大丈夫、と自分に言い聞かせた。
 だが、「謝礼」は1年足らずで生活費に消えた。「腎臓が1個なくなっただけで何も変わらない。本当に困ったら、次は目を売る。二つあるものは、ひとつでも何とかなるだろう」
 バセコに住み、腎臓提供者を病院に紹介する仲介者(38)は「希望者は多い」と話す。別の仲介者を通じて病院から連絡があれば、血液型など条件に合う候補者を数人紹介する。移植できれば、1万ペソ(約2万6000円)程度の手数料を得る。
 フィリピンには、臓器提供者が「謝礼」の名目で金銭を受け取る制度がある。売買とはみなされないが、その手続きは不透明で、「謝礼」を搾取する悪質な仲介者も生む。そこで保健省は昨年、制度の整備と拡充に乗り出した。病院や団体が個別にやっている臓器提供の手続きを統一化、透明化するのが狙いだ。
 さらに、「外国人患者」に対して手術代のほかに臓器提供者への支援金約6000ドル(約73万円)と、別のフィリピン人患者の移植費用の負担を求める案が浮上した。だが、「政府が臓器売買を認めるのか」「自国民の臓器を利用するのか」といった批判が出ている。
 海運関係の会社に勤める東京都内の男性会社員(55)は05年8月、フィリピンで臓器売買による腎移植を受けた。
 その8年前、国内で母親から生体移植を受けたが、腎機能が低下し、再移植を希望していた。1回目のときに、主治医に「海外で移植できないか」と相談した。「中国は、患者のケアがずさん。フィリピンも国立病院が臓器売買をするようなところだ。中国より技術はいいが、私は薦めない」と言われた。
 日本で移植を待っていても時間がかかるため、今回はフィリピン行きを決めていた。ブローカーは介さず、現地の知人を通じて受け入れ病院を見つけた。主治医が「臓器売買をやっている」といった国立病院だった。
 ドナーは34歳の男性だった。経過は順調で2週間で退院。退院時、検査結果も渡された。帰国後、日本の主治医は検査結果を見て、術後の管理もよく、大きくて良好な臓器に驚いたという。
 渡航費を除く費用は8万ドル(当時約900万円)で、7万ドルを病院に、残る1万ドルをドナー紹介の仲介業者に払った。
 業者の事務所は病院内にあった。会社員が聞いた話では、ドナーは、事務所に「腎臓をあげたい」と申し出る。ドナーに払われたのは、1万ドルのうち、日本円で50万円ほどだとみている。「50万円といえば、貧民層だと一生かけても手にできない額だ」。自らの移植に罪悪感はあるものの、「人を殺したわけではない。ドナーのためになってほしい」と話した。
 日本臓器移植ネットワークによると、脳死や心停止後に腎臓移植を待つ登録患者は約1万1800人。うち6割は待機期間が5年を超える。日本移植学会のまとめによると、05年の生体腎移植は834件。脳死や心停止後の移植は少なく、生体移植の2割程度だ。
 国内での移植が進まないため、増えてきたのがアジアでの渡航移植だ。
 日本の厚生労働省研究班(班長、小林英司・自治医大教授)が昨年まとめた実態調査では、腎移植手術を受けて国内の病院に外来通院する患者8297人のうち、少なくとも198人が海外で移植をしていた。中国がほぼ半数を占め、次にフィリピンが多かった。
 フィリピンでは複数の病院で腎移植手術が行われており、05年は630件あった。その約7割が非血縁者からの生体移植。提供側の理由はほとんどが経済的事情で、「謝礼」が目当てだ。
 27日、福岡市であったシンポジウムで、フィリピン国立腎臓・移植研究所のエンリケ・オナ所長は、「金銭授受を禁止しても、取引が地下に潜るだけだ」と語った。むしろ現実を認めて制度を透明化する方が提供者を搾取から守ると主張した。
 日本には97年施行の臓器移植法があり、臓器の売買を禁じている。同法には日本人が国外で同様の行為をしても適用されると明記されているが、例えば警察がフィリピンで売買を立件できるかどうかは未知数だ。

15歳以上のはしかが過去最多 国立感染症研調査 indexへ

 大学生や高校生を中心にはしかが流行するなか、15歳以上の患者数が5月14日〜20日の1週間で過去最多を記録したことが29日、国立感染症研究所感染症情報センターの調査速報で分かった。
 この期間に、全国約450医療機関を受診した15歳以上のはしか患者は68人。1週間の報告数としては、99年の調査開始以来、最も多かった01年5月の54人を上回った。
 今年1月からの累積患者数は286人で、同時期で比べると01年の368人に次いで多い。15〜29歳が8割を占める。都道府県別では東京116人、神奈川28人、宮城25人、埼玉21人、長野10人、北海道9人の順。
 一方、約3000医療機関の小児科から報告された同じ1週間の15歳未満の患者数は210人。1月からの累積数は907人で、3年ぶりに1000人を超える見込み。例年だと全体の6割を占める0〜4歳の割合は39.0%で、10〜14歳が33.4%と高いという。
 同センターの安井良則主任研究官は「例年5月中に流行のピークを迎えることが多いが、関東以外に広く拡大する傾向がみられ、引き続き注意が必要だ」と話している。

「エイズ検査受けて」とタレントが会見 indexへ

 エイズウイルス(HIV)検査普及週間(6月1〜7日)を前に、ラジオDJの山本シュウさんやお笑い芸人トリオの安田大サーカスらが28日、厚生労働省で記者会見し、HIV検査を受けるよう呼びかけた。
 期間中、一部の保健所で夜間・休日の検査や1時間で結果が出る迅速検査などを実施する。詳しくはエイズ予防情報ネット(http://api-net.jfap.or.jp)。

はしかの検査試薬、在庫がほぼゼロに 月内に追加供給へ indexへ

 はしかの抗体の有無を調べる検査試薬の在庫がほぼゼロになっていることが、28日、厚生労働省の調べで分かった。検査を受ける人が激増したためで、大手臨床検査会社も25日ごろから相次いで医療機関からの検査依頼の受け付けを一時中止している。ただ同省によると、31日までに約8万人分、6月に入ってからも毎週最大10万人分のペースで追加供給が見込まれ、品切れ状態は徐々に解消に向かうという。
 同省が、はしかの抗体検査の大半を占める「EIA法」の試薬製造販売会社3社に24日現在の在庫を確認したところ、同日までの1カ月間で約16万人分を出荷、在庫はゼロになっていた。
 一方、はしかワクチンの在庫(風疹との混合ワクチンを含む)は25日現在で約18万本。自治体などの一斉購入で一時約13万本まで減っていたが、混合ワクチンの追加供給が約7万本あり、やや回復した。

心筋梗塞や脳卒中、メタボじゃなくてもご用心 indexへ

 高血圧や高血糖といった生活習慣病の危険要因を同時に抱えると、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中を起こす危険が高まるが、その程度は、太っているよりもやせている人の方が高くなりやすいことが、厚生労働省研究班(主任研究者=上島弘嗣・滋賀医科大教授)の調査でわかった。来年度から、生活習慣病予防のための特定健康診査(特定健診)が始まるが、その柱となる「メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)」の診断基準が、やせた人たちのリスクを見逃してしまう可能性を示したものだ。
 同症候群は心筋梗塞や脳卒中など循環器病とかかわりが深い。危険要因として、肥満、高血圧、高血糖、高中性脂肪、低HDLコレステロールが挙げられ、欧米では基本的に、うち三つ以上の値が一定値を超えると、「あなたはメタボ」などと診断される。
 日本の診断基準では特に肥満が重視されており、ウエストサイズが一定以上であることが必須条件。例えば血糖値がかなり高くても、太っていなければ同症候群には該当しないことになる。
 ところが上島教授らの調査で、この診断基準では、そんな人たちのリスクを見落とす可能性があることがわかった。
 上島教授は、90年に全国の保健所で健診を受けた男女約7200人を約10年間追跡し、死亡原因などを調べた。
 肥満の指標となるBMI(体格指数)が25以上の太った人が循環器病で死亡するリスクは、肥満でなくほかの危険要因もない人と比べると、危険要因が肥満以外に二つの場合は1.5倍。三つ以上だと2.4倍だった。
 一方、BMIが25未満の人で同じ比較をすると、それぞれ2倍、2.8倍となり、肥満傾向の人よりも高かった。
 やせた人でも、体質的に高血糖や高血圧などを起こしやすい人がおり、そういう人は太っている人よりむしろリスクが高まりやすいらしい。
 調査をまとめた滋賀医科大の門田文(あや)医師は「日本の基準にあてはまらない人にも高リスクの人がいることに、注意を払うべきだ」としている。
 同症候群については、肥満でなくても糖尿病などを通して循環器病になる人が少なくないことから、日本公衆衛生学会が個々の危険要因を軽視しないよう厚生労働省に意見書を出している。

医師確保担当の副市長が辞表 男鹿市立病院の兼職問題 indexへ

 秋田県男鹿市立の「男鹿みなと市民病院」が採用した非常勤医が兼職の禁止されている国家公務員だった問題で、佐藤文衛副市長は27日、辞表を提出し受理された。佐藤副市長は医師の確保の担当で、「ずさんな契約を結んだ責任を取った」という。
 市は3月、佐藤副市長の知人のつてで「医療コンサルタント」を名乗る男性から紹介された医師と雇用契約を結んだ。その後、市議会からの指摘を受けて調べたところ、国家公務員である防衛省医官とわかり、契約を解除した。医師が診療したのは4日間だけだった。
 市はこの「コンサルタント」に成功報酬など計700万円近くを支払っていた。

慢性腎臓病に初のガイドライン 日本腎臓学会 indexへ

 日本腎臓学会が「慢性腎臓病」(CKD)の診療ガイドラインを初めて作成した。慢性腎臓病は、腎臓の異常を早めに見つけるために提案された新しい病気の概念。同学会の試算では、国内では成人の19%がこれにあたり、今後健診などを通して普及を図るという。
 腎臓病の多くは自覚症状がないまま進行するため、腎不全になるまで悪化して透析を受ける患者が増えている。しかし、早めに気づいて治療すれば、治したり、進行を遅らせたりすることが可能になってきた。
 慢性腎臓病の概念は02年に米国腎臓財団が提案した。国内では昨年、同学会が、血液中のクレアチニンという物質の検査値で腎臓の働きを推測し、「濾過(ろ・か)能力が正常の60%未満」なら尿たんぱくなどに異常がなくても慢性腎臓病と診断、受診を勧める試みを始めた。
 ガイドラインでは慢性腎臓病の人に対し、食事の塩分を減らすなどし、通常の高血圧の判断基準よりさらに低めに血圧を管理することを求める。さらに、濾過能力が50%を切ると病気が急速に進むため、専門医の受診などを勧めている。

国立病院の医師「バイト収入」、3カ月で933万円 indexへ

 国立病院の医師の一人が昨年、給与以外に3カ月間で計933万円の「アルバイト収入」を得ていたことがわかった。大半が講演料や原稿料で、利害関係の審査が必要となる製薬会社からの報酬も多かった。厚生労働省は「本業に支障はない」と問題視していないが、国家公務員倫理法を所管する菅総務相が「非常識」との認識を示すなど、政府内でも見解が割れている。
 小宮山泰子衆院議員(民主)が25日の衆院決算行政監視委員会で明らかにした。
 国家公務員が、本業以外の活動で報酬を得る場合、同法や倫理規定に基づき省庁に報告しなければならない。厚労省への報告書を小宮山氏が調べたところ、この医師は昨年10月2日〜12月28日に70回にわたって講演料や原稿料など計932万8583円の収入を得ていた。1回当たり3万〜59万2300円。1日4回の講演をこなしたこともあり、小宮山氏は「本業がおろそかになっていたのではないか」と指摘した。
 厚労省側は答弁で「特定の医療分野でトップクラスの専門家で、多くの講演依頼があったため」と説明。「いずれも勤務時間外で業務に支障はなかった」と述べた。
 これに対し、菅総務相は答弁で「非常識で理解に苦しむ」と述べたほか、下村博文官房副長官も「極めて異例な金額のアルバイト。いかがなものか」と話した。

医師不足対策 医学部定員増も提案 国公立大に地域枠 indexへ

 政府・与党が検討している緊急の医師不足対策の全容が25日、明らかになった。国レベルの緊急医師派遣という短期的対策から、大学医学部の定員増や推薦入学枠の拡充などで医師の養成増を図る中長期的対策まで6項目。勤務医の過重労働の解消や、女性医師が働きやすい環境づくりも目指す。6月上旬に最終案をまとめ、政府の「骨太の方針」や与党の参院選公約に盛り込む。
 中長期的対策では、医師の養成増を打ち出した。国公立大学の医学部に臨時の定員増を認め、地元高校生を優先的に推薦入学させる「地域枠」も拡充。医師の少ない都道府県で、医師の養成数自体を増やしていく。医学部を卒業後も一定期間、地元で勤務することを約束した学生には奨学金を支給する方針だ。
 当面の対策としては、「国レベルで緊急の医師派遣体制を整備する」とした。都道府県からの要請に応じ、国立病院を管轄する国立病院機構や全国ネットワークを持つ病院から、数カ月〜1年程度、各地の自治体病院などに医師を派遣する。定年退職して間もない医師に呼びかけるなどして医師を確保する。
 また、勤務医の過重労働を緩和するために交代勤務制など働きやすい職場環境を整備。医師、看護師、助産師の役割分担を見直し、医療事務員の配置を支援する。女性医師が出産や育児を機に離職するのを防ぐため、病院内に保育所を整備し、復職のための研修なども行うとしている。
 このほか、研修医が都市部の病院に集中しすぎないように定員も見直す方針。出産に伴う医療事故の補償制度や、医療中に死亡した患者の死因調査制度も早期に実現し、医師の訴訟リスクなども軽減を目指すという。

40代の乳がん検診 エコー検有効性を検証 厚労省 indexへ

 乳腺の密度が濃いためマンモグラフィー(乳房X線撮影)では腫瘍(しゅよう)が見つかりにくい40代を対象に、厚生労働省は今年度から、超音波(エコー)検診が有効かどうか検証を始める。2010年度までに、エコーとマンモグラフィーを併用した検診を6万人に受診してもらい、マンモグラフィーのみの受診者と比較。進行乳がん患者の割合などを比べる。将来的には、乳がん死亡率の3割減を目標とする。
 エコー検診の有効性をこれだけ大規模に調べた例は世界にもない。東北大の大内憲明教授が研究リーダーを務め、宮城や茨城、岡山など全国の10検診団体が研究に参加。エコー検診の精度を保つために医師や検査技師らの研修を重ね、夏以降本格的にスタートさせる。
 各検診団体は約12万人を対象に、半数はエコー検診とマンモグラフィーを「併用」、残りはマンモグラフィーだけを実施。今年度と来年度の受診者は、それぞれ2年後に再び同様の条件で検診を受けてもらう。進行乳がん患者数の割合や、乳がんがある人をがんと正しく診断できた割合(感度)などを比較する。
 乳がんは年約4万人が新たに患者となり年代別では40代が最も多い。国は04年度から、40歳以上は2年に1回、マンモグラフィー検診を受けるよう検診制度を改めた。だが厚労省研究班の調査では、マンモグラフィー検診でも、40代では3割近くが見落とされている可能性が明らかになった。乳腺が発達していて映りにくいのが原因だ。
 マンモグラフィー検診の先進地・宮城県の地域がん登録をもとにした推計では、現在の40代の感度71%を86%に上げることができれば、進行がん患者の比率は30%から15%、死亡率は約2割減るという。感度を93%に上げることができれば、進行がん患者の比率を8%、死亡率も約3割減らせるという。
 エコー検診は一部の自治体で導入されているが、科学的根拠は明らかではない。4年間の研究では死亡率の減少はわからないため、研究終了後も追跡調査する必要がある。

「医療費抑制は限界」予防重視へ転換図る 厚労白書案 indexへ

 07年の「厚生労働白書」の骨子案が23日、明らかになった。「医療構造改革」をテーマに掲げ、少子高齢化の進展に伴い、ベッド数の抑制や患者の自己負担の引き上げなど従来の医療費抑制策は限界に達していると指摘。生活習慣病対策など「予防重視」に政策を転換し、予防から終末期に至るまでの総合的なビジョンを作成し、医療費適正化を目指す。
 白書は今夏までにまとめ、公表する。骨子案では、現状の問題点として(1)地域や診療科ごとの医師の偏在に伴い、急性期医療が弱体化(2)医療に関する情報不足(3)時間外や夜間、休日診療の不足(4)健康状態を総合的に診察する医師の不足――を挙げた。
 医療構造改革の目指す方向として、入院から在宅まで切れ目のない医療の提供や、開業医に時間外診療を求めるなど医療機関の役割分担の推進、個人の健康情報のIT化などが必要としている。
 1人あたりの医療費で1.5〜2倍、生活習慣病の受診率で2倍近くに達するなど都道府県間で生じている「医療格差」の要因についても、都道府県をいくつかのグループに分けて本格的に分析。各地域が特性に合った有効な対策を打ち出す必要性があるとした。

臓器提供の記録紛失 金沢大付属病院で indexへ

 金沢大学医学部付属病院(金沢市宝町)が、昨年5月に脳死判定した50代の男性患者の脳波記録を紛失していたことがわかった。脳波記録は臓器移植法で病院に5年間の保存が義務づけられている。この脳死判定と臓器移植についての厚生労働省の検証で判明。同省は「検証のために必要な資料」として探すように指示するとともに、同法違反の疑いがあるとみて調べている。
 同大学の広報戦略室は「重大な事態だと受け止め、調査委員会を設置し、資料を探索している。脳死判定は正規の手続きにもとづき、厳正な判断のもと行われた」と話している。

慶応大の医学部長が陳謝 臨床研究の補助金重複受給で indexへ

 慶応大学の池田康夫医学部長を中心とする研究グループが薬の新たな効能を調べる臨床研究で、厚生労働省の科学研究費補助金と財団法人の助成金を重複受給するなどしていた問題で、池田氏は23日、厚生労働省で記者会見して事実関係を認め、「研究の倫理指針に反していたことや、大学の社会的責任にかんがみ、深くおわび申し上げる」と陳謝した。
 重複受給は厚労省の公募要項に違反しており、研究グループは日本ワックスマン財団(東京)からの助成金などについても臨床研究の被験者に伝えず、「研究の資金源」を被験者に説明するよう求めた同省の「臨床研究に関する倫理指針」に違反していた。
 重複受給について池田氏は「財団からの助成は重複受給に当たらないと解釈していたが、厚労省の見解と違っていた」と説明。倫理指針違反には「被験者保護と情報公開が重要であり、資金源の明記を怠っていたのは遺憾だ。指摘されてただちに訂正した」と述べた。
 一方、池田氏は「厚労省の補助金には制限があり、大規模な臨床試験にはどうしても他の資金が必要だった」などと述べ、研究を進めるためにやむを得なかったとの考えを示した。
 今回の問題では、助成していた財団に、効能を調べている薬の製造販売会社であるバイエル薬品(大阪市)が寄付をしていた事実もわかっている。被験者に資金源を明らかにすべきだったのではないかとの質問に対し、池田氏は「その通りだと思う。同意書に書くべきだった」と述べた。

慶大医学部長、研究費を二重受給 国が補助金打ち切り indexへ

 慶応大学の池田康夫医学部長を中心とする研究グループが薬の新たな効能を調べる臨床研究で、厚生労働省の公募要項に違反し、同省の科学研究費補助金(科研費)のほかに、財団法人から約4億3000万円の助成金を受け取っていたことが22日、朝日新聞の調べでわかった。助成金について同省は「臨床研究に関する倫理指針」で、被験者に説明するよう求めているが、これも怠っていた。研究グループは今年度も科研費の継続を申請したが、同省は「二つの違反行為は重い」として、今年度の支給を取りやめた。
 研究グループも違反を認め、06年度分の科研費の未使用分約460万円を自主返納する。
 臨床研究は04年度に始まり、慶応大のほか、東大、筑波大、自治医大の教授らも参加している。脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞の再発予防効果がある「アスピリン」に、未発症の人にも予防効果があるかどうかを確かめるのが狙い。
 高血圧症、高脂血症、糖尿病のいずれかの疾患がある60〜85歳の1万5000人を、薬を「飲む人」と「飲まない人」に分け追跡する。被験者の登録は05年3月に始まり、これまでに約1万3000人が参加した。研究に04年度から3年間で、1億5835万円の科研費が支給されている。
 科研費の公募要項で、厚労省は同じ課題で他省庁や公益法人から研究費を受け取ることを禁じている。しかし、研究グループは、文部科学省所管の財団法人「日本ワックスマン財団」(東京都新宿区)にも助成金を10年度まで申請し、04、05年度に計4億3225万円を受けていた。
 財団は1957年に設立され、製薬会社や個人から寄付された資金を研究者に助成している。慶応大医学部の敷地内にあり、建物も同大が所有している。池田氏は05年12月から財団の評議員を務めている。
 臨床研究には、アスピリンを製造販売するバイエル薬品(大阪市)が薬を無償提供。同社は研究グループが財団の助成を受けた04、05年度、財団側に多額の寄付をしていた。池田氏は寄付について「同社の担当者が(研究の重要事項を検討する)運営委員会に出席していた。私たちが財団に研究助成を申請したと知り、同社の判断で決めたと思う」と話している。
 同社広報部は「財団へは04年度以前から寄付しており、特定の研究に使ってほしいという趣旨ではない」としている。一方、財団は「同社からの寄付は右肩上がりで増えているが、額は言えない」と話した。
 また、厚労省は被験者の人権を守るため、03年7月、「臨床研究に関する倫理指針」を定めた。その中で「研究の資金源」を計画書に記載し、被験者にも説明するよう求めている。研究者の個人的な利益のために研究の公正性が疑われる「利益相反」について、倫理委員会や被験者に判断してもらうためだ。
 しかし、研究グループは助成金を計画書に記載せず、被験者にも説明していなかった。朝日新聞の指摘を受け、被験者向けの同意説明文書を改め、被験者に助成金と薬の無償提供について説明を始めた。
 研究グループは科研費を継続受給できなくても研究は続けるという。
 池田氏は、財団の助成金は参加してくれる患者に提供した血圧計の購入費など被験者を集めるために使用したと説明したうえで、「重複禁止の対象に公益法人が含まれるという認識がなかった。被験者に資金源を説明することまで頭が回らなかった」と説明している。
 池田氏の専門は血液内科。厚労省の薬事・食品衛生審議会委員のほか、新薬の臨床試験(治験)を促進する「治験のあり方に関する検討会」の座長を務めている。
 〈キーワード:薬の臨床研究〉 市販薬に効能を追加する場合、薬事法に基づく治験が必要となる。治験は実施計画を厚生労働大臣に届け、副作用の報告義務がある。監査も必要で人件費がかさみ、国内では1症例当たり300万円を超すという調査もある。
 これに対し、研究者主導の臨床研究は法的規制がなく、費用も大幅に少ない。厚労省は99年に、国内の公的研究などで信頼性を確認できるデータがあれば効能・効果や用法・用量の拡大を認めるルールを導入した。
 今回の臨床研究は、アスピリンの新たな効能を確かめるためで、もし、結果が効能の拡大に結びつけば、服用者が増え、製薬会社に利益をもたらす可能性がある。

呼吸器外し患者死亡、医師を書類送検 和歌山県立医大 indexへ

 和歌山県立医大付属病院紀北分院(和歌山県かつらぎ町)で、脳死状態に陥った女性患者(当時88)の人工呼吸器を外して死亡させたとして、同県警が今年1月、50代の男性医師を殺人容疑で和歌山地検に書類送検していたことがわかった。病院側は女性の家族が延命治療の中止を希望したとして、「犯罪性があるとは考えていない」としている。
 病院側によると、女性は06年2月27日、脳出血で同分院に救急搬送され、脳血腫を除去する手術を受けたが、出血が止まらず、28日午前4時前に呼吸が停止。主治医の男性医師が人工呼吸器を装着したが、同日午後5時ごろ、脳死状態と判断された。
 約3時間後、家族から「最期のお別れができたので、これ以上は忍びない。延命措置はしないでほしい」と医師に依頼があった。一度は断ったが、再度要望を受けたため、個人の判断で「自発呼吸ができるかテストする」として呼吸器を外し、間もなく女性は死亡したという。
 院内に医師の行為を問題視する意見が出たため、同医大は同年3月に調査委員会を設置。医師の行為は違法ではないとの結論を出したが、当時、富山県の射水(いみず)市民病院の患者7人が人工呼吸器を外されて死亡し、社会的な問題となっていたため、「医療現場だけで判断できない。司法の判断を仰ぎたい」として同月28日、県警に届け出た。県警は「呼吸器を外したことで死期が早まった」として、書類送検したという。
 紀北分院の飯塚忠史・分院長代行は22日の記者会見で、「延命措置を打ち切ったのは家族の希望によるもので、犯罪性や過誤があるとは思っていない」と述べた。
 人工呼吸器の取り外しをめぐっては、北海道立羽幌(はぼろ)病院で無呼吸状態になった患者の呼吸器を外して死亡させたとして、女性医師が05年5月に殺人容疑で書類送検され、嫌疑不十分で不起訴となった。射水市民病院のケースでは、富山県警が呼吸器取り外しと死亡との間に因果関係があるとみて捜査している。

06年のエイズ感染者・患者、過去最高 40代の比率増 indexへ

 06年に国内でエイズウイルス(HIV)の感染がわかったのは952人、エイズ患者は406人といずれも過去最高だったことが22日、厚生労働省エイズ動向委員会(委員長、岩本愛吉・東大医科研教授)のまとめでわかった。前年比16%増の11万6550人が保健所などで検査を受けたためとみられる。感染者・患者の累計は1万2394人となった。
 感染者は20〜30代が7割を切る一方、40代の比率が上がった。厚労省は「夜間や休日に検査するところが増え、これまで検査を受けなかった人が足を運んだのではないか」と分析している。

タミフル問題でシンポ 異常行動、繰り返す事例も報告 indexへ

 インフルエンザ治療薬タミフルの服用後の異常行動について、厚生労働省研究班が昨秋まとめた調査結果をめぐる専門家のシンポジウムが20日、東京大学で開かれた。このなかで、3日連続でタミフルを服用し、そのたびに異常行動を繰り返した女児の報告があった。
 水口雅・東京大教授によると、異常行動を繰り返したのは6歳女児で、内服1〜2時間後に「2時間しゃべり続けた」「ドアに向かって話しかけた」などの行動がみられた。前年の服用時には副作用はなかった。
 このほか、浜六郎・医薬ビジランスセンター代表が「初回服用後に異常行動が高率に出る」と主張したが、研究班の一員で副作用について解析した藤田利治・統計数理研究所教授は「(異常行動は)タミフルだけの現象ではない」と語った。

国内初の生体肝腎同時移植を実施 国立成育医療センター indexへ

 国立成育医療センター(東京都世田谷区)は19日、生まれつき胆管と腎臓に重い病気を持つ4歳の女子に30代の父親の肝臓と腎臓を同時に移植する手術を実施したと発表した。センターによると、1人の提供者(ドナー)からの肝臓と腎臓の生体同時移植は、海外で複数の報告があるが、国内では初めて。今回は女子と父親の血液型が異なっており、こうしたケースは世界で例がないという。
 会見したセンターの松井陽(あきら)病院長らの説明では、手術は18日午前から同日深夜まで約14時間かけて行われ、父親の肝臓の一部と右の腎臓が移植された。女子の経過は良好で、順調なら2カ月後に退院できる見通し。父親は「早く子どもに会うために歩きたい」と話しているという。
 女子は、腎臓内に水のたまった袋(嚢胞(のうほう))がたくさんできる「多発性嚢胞腎」という病気で生後7カ月で左の腎臓を、9カ月に右の腎臓を摘出して、透析を受けていた。また、先天性の肝内胆管拡張症による胆管炎が原因とみられる敗血症を繰り返し起こし、入院生活を続けていた。
 1人のドナーから複数の臓器を同時に摘出すれば、ドナーに大きな負担がかかる。ドナーになれるのが父親しかおらず、センターの倫理委員会などで審議した結果、「手術に十分に耐えられる」と判断したという。松井院長は「小児の場合、現状では脳死提供者からの移植が望めない以上、生体ドナーに頼らざるを得ない。今後、同様の手術が増える可能性がある」と話している。

研修医、拠点病院に集約 修了後へき地に 政府与党検討 indexへ

 政府・与党は18日、医師の不足や地域間の偏在を解消するため、大学卒業後の研修医の受け入れ先を地域の拠点病院に限定し、拠点病院にへき地への若手医師派遣を義務づける方向で検討に入った。従来、医師を割り振る役割を担ってきた大学医学部が、04年度の新しい臨床研修制度の導入をきっかけに機能しなくなってきたため、地域医療の中心になる拠点病院に代替させる狙いだ。
 政府・与党は同日、医師不足対策のための協議会を発足。100人程度の医師を国立病院機構などにプールし不足地域に緊急派遣する対策とともに、拠点病院からの派遣策について具体的な検討を進め、6月の骨太方針に盛り込む方針だ。
 これまで新卒医師の7割以上は大学医学部の医局に在籍して研修を受け、強い人事権を持つ教授と地元病院などとの話し合いで決められた医療機関に派遣されることが多かった。
 だが、新臨床研修制度の導入で原則として医師が自分で研修先を決められるようになり、実践的な技術を学べる一般病院を選ぶ医師が急増。都市部の病院に研修医が集中する一方、地方では定員割れの病院が続出し、へき地に医師を派遣するゆとりがなくなった。
 政府・与党は、現在年1万1300人分ある研修医の定員総枠を、研修医の総数8600人程度に削減することを検討。都市部を中心に定員枠を大幅に削減することで、地方への研修医の流入を促進するとともに、受け入れ先を地域の拠点病院に限定する。
 そのうえで、拠点病院に対して、研修の終わった若手医師を医師不足が深刻な地域に派遣することを義務づける。勤務を終えた医師には拠点病院でのポストを約束することで、若手医師の理解を得たい考えだ。都道府県が条例などで拠点病院に医師派遣を義務づけられるようにし、医師の供給を確実にすることを目指す。
 このほか、長期的な対策として、一定規模以上の医療機関の院長(管理者)になる条件にへき地勤務の経験を盛り込むことや、都道府県が地元出身の医学部生に出す奨学金に国が財政支援する案も浮上。卒業後、地域医療に10年程度携われば、奨学金の返済を免除することなども検討する。

国のがん対策原案、10年間で死亡率2割減が目標 indexへ

 4月施行のがん対策基本法を受けて、厚生労働省は18日、患者や医師、識者らで作る厚労相の諮問機関「がん対策推進協議会」に国の基本計画の原案を提案した。75歳未満のがんによる死亡率を今後10年間で20%減らす目標を盛り込む一方で、喫煙率の削減については数値目標を見送った。
 原案は、▽予防対策と早期発見▽全国どこでもがんの専門医療を受けられるようにする▽研究の推進などが柱。全国のがん拠点病院で5年以内に放射線療法・外来化学療法を可能にすることや、在宅での緩和ケアの推進などが盛り込まれた。
 数値目標は死亡率のほか、5年以内に乳がんや大腸がんなどのがん検診の受診率を50%以上にするとした。現在の受診率は、がんの種類によって13.5〜27.6%。
 一方、喫煙率については、4月の協議会では「半減」でいったんは合意したが、原案は「受動喫煙防止、広告規制、普及啓発など各種の方策を適切に行う」との表現にとどまった。厚労省は00年と昨年、国民の健康づくりの計画「健康日本21」に喫煙率の数値目標を盛り込もうとしたが、たばこ業界や自民党などの反対で断念している。
 喫煙率について、同省がん対策推進室は「数値を盛り込めばいいというものではない。たばこ対策を幅広くとらえ、打ち出していくことが重要だ」と説明している。
 厚労省は今月中に基本計画案をまとめ、6月中の閣議決定を目指す。この基本計画をもとに、各都道府県は年度内に計画を作る。

はしかワクチン、在庫45万本 「適正な使用」呼びかけ indexへ

 関東地方を中心に流行中のはしか(麻疹)のワクチン接種に関する問い合わせが相次いでいることから、厚生労働省は18日、ワクチンの在庫状況を各都道府県に周知し、適正な使用を呼びかける通知を出した。16日時点ではしか・風疹の混合ワクチンを含め約45万本。厚労省は「在庫切れの心配は当面ない」としているが、未接種ではしかにかかった経験がない人にワクチンが行き渡るよう「流行していない地域や接種経験者はなるべく控えてほしい」と呼びかけている。
 はしか単独ワクチンの在庫は11万本で、追加の供給は9月ごろになる見通し。一方、混合ワクチンは在庫が34万本あり、今後も毎月十数万本の出荷が予定されている。混合ワクチンの価格は1本6000円程度で単独ワクチンの約2倍だが、混合と単独を併用していけば当面在庫が底をつく心配はないという。
 国立感染症研究所が18日公表した感染症週報によると、今回の流行で集団感染が目立つ15歳以上の今年のはしか患者は6日時点で計155人で、昨年の年間患者数の約4倍。東京都内では、都や区の呼びかけでワクチン未接種の子どもに緊急に予防接種する動きが広がっている。

医師不足解消へ政府・与党協議会が初会合 indexへ

 医師の地域偏在や診療科による不足を解消するため、医師確保対策に関する政府・与党協議会の初会合が18日朝、首相官邸で開かれた。関係閣僚や自民、公明両党の幹部、政策担当者らで構成。6月上旬に具体策をまとめ、政府の「骨太の方針」に反映させて予算化への道筋をつける。
 会議では、医師不足が著しい産科などの診療報酬引き上げや、病院勤務医の労働環境改善を求める意見が出されたほか、医療紛争を訴訟外で解決するシステム充実の必要性などが指摘された。
 与党は予算確保の裏付けも得た上でマニフェスト(政権公約)に盛り込み、夏の参院選の目玉施策として訴える考えだ。

「看護師やめたい」44% 国立大病院職員組合が調査 indexへ

 国立大学病院の看護師の44%が「仕事を辞めたい」と思っている――。全国大学高専教職員組合は17日、国立大病院看護師の勤務実態についてのアンケート結果を発表した。看護師不足が叫ばれる中、体制が整っているとされる大病院でも厳しい環境であることがうかがえる。
 全国25の国立大学病院看護師(約1万4000人)を対象に昨年10月、実施。5410人から回答を得た。過去半年に退職を「いつも」「しばしば」考えた人は計44%。一方で「考えたことがない」のは11%にとどまった。
 勤務状況では、1日3交代の勤務で、勤務と勤務の間隔が8時間しかない「日勤―深夜勤」が月3〜4回あると答えたのは36%。有給休暇を年11日以上取得できたのは、00年調査の22%から13%に低下。月40時間以上残業している看護師の割合も13%から16%に増えた。
 また、「十分な看護ができていない」と51%が考えていた。その理由として「仕事が過密」などを挙げる人が多かった。

うつ病などで労災認定、1.6倍と急増 過労自殺も最多 indexへ

 仕事上のストレスによるうつ病などで精神障害になり、06年度に労災認定を受けた人が、前年度の1.6倍の205人に急増し、過去最多になったことが16日、厚生労働省のまとめで分かった。そのうち「過労自殺」は同1.6倍の66人(うち1人は未遂)で、やはり過去最多。脳・心臓疾患による労災の認定件数も過去最多だった。厚労省は、長時間労働や成果主義の浸透などが主な原因とみており、景気回復の足元で労働者の健康がむしばまれている実態が浮き彫りになった。
 精神障害で労災が認められた人は、うつ病関連が106人、神経症やストレス関連障害などが99人。職種別ではシステムエンジニアや医療従事者などの専門技術職が60人で最も多い。年齢別では、働き盛りで負担の集中しやすい30歳代が前年度の39人から2倍以上の83人に急増、全体の4割を占める突出ぶりだ。
 請求件数も増加し続け、前年度より24.8%多い819件だった。
 過労による脳出血や心筋梗塞(こうそく)などで労災認定された人は2年連続で増加し、前年度に比べ7.6%増の355人だった。過労死は10人減の147人。請求件数は最多で同7.9%増の938件だった。
 認定された人の内訳はくも膜下出血など脳の疾患が225人、狭心症などの心臓の疾患が130人。全体の9割にあたる323人が「長期間の過重業務」を理由に認定された。

患者情報414人分を紛失 名古屋大付属病院 indexへ

 名古屋大学医学部付属病院(名古屋市昭和区)は16日、同病院の医師が、同病院など2病院の患者計414人分の氏名やレントゲンの所見、血液検査の数値などが記録された電子媒体(USBフラッシュメモリー)を紛失したと発表した。
 同病院によると、紛失したのは名古屋大学医学部付属病院が215人分。公立陶生病院(愛知県瀬戸市)分が199人分。医師が4月27日にUSBメモリーをバッグに入れて持ち帰り、28日に出勤した際にバッグの中にないことに気付き、10日に病院に報告して発覚した。16日に昭和署に紛失届を出した。医師は昨年9月まで公立陶生病院に勤務し、現在は名古屋大学医学部付属病院に勤めている。

診療科を半分近くに再編 医師不足解消の思惑も 厚労省 indexへ

 厚生労働省は、医療機関が名乗ることができる診療科を、現在の38科から20科程度に再編する方針を固めた。細分化して患者にわかりにくくなっている診療科を廃止する一方で、幅広い病気を診断できる医師に公的資格を与え、その医師がいる医療機関には「総合科」(仮称)を名乗ることを認めることなどが柱だ。患者が医療機関を選びやすくするほか、医療機関ごとに初期診療と専門医療の役割分担を明確にし、医師不足の一因とされる大病院への患者集中を緩和する狙いもある。
 厚労省は今月21日、医道審議会に診療科名について検討する専門部会を立ち上げ、再編案を決めていく。08年度からの変更を目指す。診療科の見直しは96年以来。
 現在、医療機関が名乗れる診療科は医科33、歯科4のほか、一定の臨床経験を要件に国が許可する麻酔科がある。学会の要望などで細分化が進んだが、患者からは「花粉症だが耳鼻科とアレルギー科のどちらを受診するか迷う」「神経科と神経内科の違いが分かりにくい」などの声があった。
 見直しは、各学会による専門医の認定制度を調整している日本専門医認定制機構が定める18の基本診療科をもとにする。内科、外科、小児科など20科程度に絞る方針だ。アレルギー科、神経内科など19科の廃止や、「救急科」など4科の新設を検討する。「内科(呼吸器)」といった得意分野の併記は認める。
 現在は1人の医師がいくつでも診療科を名乗れるが、あまりに幅広すぎると批判があり、医師が1人の診療所では名乗れる診療科を2科までに制限する方向だ。
 見直しの目玉は「総合科」の新設。患者が最初にかかる初期診療で高い能力を持つ医師に、麻酔科のように国が公的資格を与え、その医師がいる医療機関に「総合科」を名乗ることを認める。体調の悪い人がどの診療科に行ったらいいか迷う場合、まず総合科にかかるようになれば軽症患者がいきなり大病院に行くことが減り、大病院の混雑解消や、多忙のあまり医師が大病院を辞める医師不足の改善につながると厚労省は期待する。
 総合科を名乗れる具体的な要件は専門部会で議論する。へき地での一定期間の診療経験などが要件の一つとなる可能性もありそうだ。
 一方で、専門志向が強い医師界で総合科をいかに浸透させるか、初期診察の能力の高さをどう判定するのか、など課題は多い。日本医師会は「厚労省の構想は初期診療を総合科医に限定するもので、患者が医療機関を選ぶ自由を阻害する可能性がある」と反対の姿勢。厚労省は、総合科を診療報酬で優遇することなども検討していくことになりそうだ。

「はしかに注意」異例の注意喚起 厚労省 indexへ

 はしかが東京の大学などで流行している事態を受けて、厚生労働省が、各都道府県に注意喚起を促す通知を出した。はしかの流行でこうした通知を出すのは初めてとみられる。大流行した01年の同時期より報告数は少ないものの、10〜20代の集団発生が相次ぐ今回の流行を重くみた。
 通知は、4月の創価大(東京都八王子市)に続き、上智大(同千代田区)ではしかが集団発生し、全学部と大学院が休講すると発表された今月11日付。厚労省結核感染症課は「今後、全国での流行と感染者の増加が懸念される」として、発生患者の情報収集や医師会との情報共有などの対応をとるよう都道府県に求めている。

後発医薬品の普及率倍増 厚労省、効率化目標示す indexへ

 政府の経済財政諮問会議が15日あり、柳沢厚生労働相は「医療・介護サービスの質向上・効率化プログラム」を提出した。価格の安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)の普及率を04年度の16.8%から30%以上にし、入院時の1日あたり診療報酬が定額となる病院を06年度の360施設から1000施設に増やすことなどが柱。内容は07年の骨太方針に反映される。
 プログラムは(1)生活習慣病や介護予防など予防の重視(2)平均在院日数の短縮や在宅医療・介護の推進(3)診療・介護報酬の見直しなどからなる。
 後発医薬品の普及策では、情報提供や安定供給について後発品メーカーへの指導を徹底、処方せんの様式も後発品が選ばれやすくなるように変更することも検討する。
 また、診療報酬の定額払いは、すでに導入している360病院のほか、準備中の病院が371あり、目標達成は十分可能としている。対象が1000病院になれば、急性期の治療を担う一般病床の約4割が定額払いとなる。

京大病院心臓血管外科、5カ月ぶり手術再開 indexへ

 京都大医学部付属病院(内山卓院長)は15日、昨年末から手術を差し止めていた心臓血管外科の手術を、京大出身の外部医師の立ち会いのもと、10日に5カ月ぶりに再開したと発表した。しかし、昨年5月から続いている肺移植の自粛方針は当面解除しないという。
 昨年3月に同病院で脳死肺移植を受けた患者が死亡し、外科手術をめぐる安全性の問題が表面化。同病院は、心臓血管外科の診療科長だった米田正始(こめだ・まさし)教授の姿勢や考え方が安全性を損ねているとし、4月1日付で米田教授を診療科長から更迭した。これに対し、米田教授は「手術できる地位を侵害され、教授としての信用が低下する」などとして診療科長の地位確認などを求め、京大と内山院長を相手取り京都地裁に提訴し、係争中だ。

医療費「5年で5千億円削減」 諮問会議、試算提示へ indexへ

 経済財政諮問会議の民間議員が厚生労働省に示す医療費の削減案が明らかになった。後発医薬品(ジェネリック医薬品)を今の2倍に普及させると、5年間に5000億円の医療費が削減できるとしている。
 民間議員は15日の同会議で社会保障について提言し、医療コストの削減に伴う財政効果を試算として示す。それによると、後発品の普及率を現在の16.8%(04年度)から30%に拡大すると医療費の削減額は5000億円、ドイツ並みの40%にすると8800億円の削減が可能だとしている。また、公立病院の運営で、収入に占める人件費の割合を現在の54.5%(05年度)から、民間病院並みの52.1%に引き下げると、5年で1400億円の医療費削減効果があるとしている。
 政府は昨年の骨太方針で国と地方の社会保障費を5年で1.6兆円削減する方針を決定。現在、厚労省が具体的な削減策を検討している。15日は柳沢厚労相も後発医薬品の倍増目標などを盛り込んだ医療・介護分野の効率化計画を示すが、削減額は明示しない方針だ。

タミフル以外でも異常行動 インフル薬で計16件 indexへ

 厚生労働省は14日、タミフル以外のインフルエンザ治療薬であるザナミビル(商品名リレンザ)とアマンタジン(同シンメトレル)についても、服用後に異常行動が計16件起きていたことを明らかにした。このうちシンメトレルでは服用後の2人の死亡が報告された。厚労省は異常行動の頻度がタミフルに比べて高いかどうか不明としており、今後調査を進める。
 タミフルと異常行動の関連を臨床面から調査する厚労省の作業部会(座長・鴨下重彦国立国際医療センター名誉総長)の初会合で報告された。
 シンメトレルでは、インフルエンザ治療の効能が認められた98年から現在までに67例の副作用報告があり、うち異常行動は6例あった。服用した10代男性が自殺した例もあったが、この男性はタミフルも処方されていた。また、90代女性がベッドから降りようとするなどの異常行動の後に死亡した。
 リレンザでは00年の販売開始から現在までに40例の副作用報告があり、10例が異常行動だった。うち8例が10代。飛び降りや転落はなかったが、「突然大声で叫び、2階の窓から出ようとした」「親の制止を振り切って走り出した」などの報告があった。
 また、作業部会は、タミフル服用後の異常行動が睡眠障害時の異常行動と似通っている症例が多いことに着目。今後、タミフルを飲んだ場合と飲まない場合の睡眠時の脳波の違いなどを調べる臨床試験を行うよう輸入販売元の中外製薬に指示することを決めた。

研修医の4割、「過労死ライン」を超す時間外労働 indexへ

 病院で働く研修医や非常勤医の時間外労働は月平均73時間にのぼり、「過労死ライン」とされる月80時間を超す医師も4割以上いる――。病院勤務医の労働実態について、日本医療労働組合連合会がこんな調査結果をまとめた。

 昨年11月〜今年3月、アンケート形式で前月の勤務について聞いた。回答したのは33都道府県の約180病院に勤める常勤医1124人(推定平均年齢42歳)、研修医130人(同27歳)、非常勤医91人(同32歳)。
 時間外労働は、常勤医の月平均60.4時間に対し、研修医73.3時間、非常勤医73.2時間。月80時間を超す時間外労働も研修医の40.5%、非常勤医の48.5%にみられた。
 一方、研修医で時間外手当を請求しているのは16.2%に過ぎなかった。「宿直は月4回以上」「当直明け後も勤務」とした研修医も、それぞれ7割を超えた。
 04年に始まった臨床研修制度では、新卒医師が自分で研修先を決められるようになり、研修に専念するため一定額の収入を保証、アルバイト診療を禁じるなど、待遇改善が期待されている。
 医労連は「新研修制度になっても、過酷な勤務は変わっていない」としている。

性転換手術、中核病院が中止 埼玉医大、担当医定年で indexへ

 心と体の性が一致しないことで苦しむ性同一性障害(GID)の治療の中核を担ってきた埼玉医科大学が5月から性転換手術(性別適合手術)の実施を中止したことが明らかになった。形成外科の教授の退職で手術の態勢がとれなくなったという。この手術は患者が戸籍上の性別を変える場合に必要とされる。GIDはようやく社会的に認知されてきたが、約1万人といわれる患者の治療の最終手段が断たれる懸念が出ている。
 埼玉医大は98年、国内で初めて公的に性別適合手術を実施。形成外科教授だった原科(はらしな)孝雄医師によると、現在までに延べ357人が手術を受けた。6割は乳房切除術だが、技術的に難しく、国内では前例がなかった男性器形成手術を21例実施している。
 山内俊雄学長によると、3月に定年を迎えた原科医師が4月末で退職し、執刀医らによるチーム医療態勢がとれなくなった。手術には熟練した医師が複数必要で、スタッフに経験を積ませてきたが、中心メンバーが体調を崩すなど継承できなかったという。
 形成外科は5月から10月までに手術予定だった60人弱に手紙などでキャンセルを伝えた。山内学長は「大学として性同一性障害の治療を続ける方針は変わっておらず、なるべく早く再開したい」と話す。
 GID治療は精神科、婦人科、泌尿器科など各科にまたがる。心の性と異なる性器を傷つけるなど深刻なケースもあるが、最終段階にあたる性別適合手術の受け皿は広がっていない。3年前から患者は家裁に申し立てて戸籍の性別を変更することが可能になったが、性別適合手術を受けていることなどが条件になっている。
 埼玉医大以外にも岡山大、関西医大などで実施されたが、件数は限られる。特に女性から男性にする場合には高度な技術と経験が必要で、病院挙げての態勢が必要なためだ。「形成医の間で理解が浸透しておらず、やろうという医師はまれなのが現実」と原科医師は話す。一般病院で治療を続けられないか探っているが、手術のリスク、医療保険の対象外なことなどでためらう病院が多いという。
 渡航して手術する人もいるが、安全性や手術後の継続的な治療の面で懸念がある。
 埼玉医大ですでに手術を受けた敦賀ひろきさん(39)は「あえて公に認められたプロセスで治療を進めてきた患者の立場を考えてほしい」と言う。手術後も機能的な問題が残り、再手術が必要な人も少なくないと指摘している。

謝礼受け取り、フィリピンで日本人10人に腎臓提供 indexへ

 生体腎移植を目的としたフィリピンでの腎臓提供をめぐり、岡山大大学院の粟屋剛教授(生命倫理)らがマニラ近郊のスラム街で実施した聞き取り調査で、謝礼を受け取って腎臓を提供したドナー72人のうち10人が、移植手術を受けた患者(レシピエント)は日本人だと回答したことがわかった。日本人が払った謝礼の平均は、全体の平均より高かったという。調査結果は27日に九州大であるシンポジウムで報告される。
 調査は今月5、6日、フィリピン大の研究者と協力して実施。スラム街の4カ所でドナーに集まってもらい、手術跡を確認のうえ、回答用紙に記入してもらった。72人のうち、外国人に提供したのは29人で、相手は日本人が最も多く、次いで中国人9人、アラブ系3人だった。
 日本人への提供例で最も古いのは86年で、90年代に6例、00年代に3例あった。日本人からの謝礼の平均額は10万1000ペソ(約25万3000円)で、全体の平均7万5000ペソ(約18万8000円)を上回り、最高は92年の16万ペソ(約40万円)だった。
 日本の臓器移植法(97年施行)では臓器売買は禁止され、海外で日本人が売買にかかわるのも違法のおそれがある。粟屋教授は「日本人が予想より多かった」と話し、サンプル数500人以上を目標にさらに調査を進めるという。
 フィリピンではレシピエントがドナーに謝礼を払う仕組みがあり、同国の保健省の一部でこれをさらに拡充しようという案が浮上、政府が臓器売買を促すことになるのではないか、という懸念や批判が出ている。

臍帯血158人分、保存タンク故障で使えず 都のバンク indexへ

 東京都赤十字血液センター臍帯血(さいたいけつ)バンク(東京都江東区)は11日、凍結保存していた臍帯血158人分が、保存タンク故障のため移植に使用できなくなったと発表した。同バンクは同日、提供者におわびの手紙を発送した。
 同バンクによると、2日午後、職員が当日採取した臍帯血を保存しようと液体窒素のタンクを開けたところ、常温になっていることに気づいた。通常は温度がマイナス160度より高くなれば警報が鳴るなど、不具合を感知する仕組みだが、故障していたという。
 158人分の臍帯血は昨年11月〜今年4月、都内で採取された。移植を前提とした検査と登録はまだだったため、移植患者に直接の影響はなかった。同バンクは、ほかにも登録済みの約2800人分の臍帯血を保存しているが、タンクが違うため被害はなかった。

受精卵診断、医師除名は有効 法整備も促す 東京地裁 indexへ

 遺伝性の病気などを妊娠前に調べる受精卵診断(着床前診断)を日本産科婦人科学会(日産婦)が自主規制しているのは違法だとして、神戸市の産婦人科医らが規制の無効確認などを求めた訴訟で、東京地裁は10日、無効確認の訴えを却下するなど原告側の主張をすべて退ける判決を言い渡した。中村也寸志裁判長は「規制が公序良俗に反するとまでは言えない」と理由を述べる一方で、立法による速やかな対応が必要との見解を示した。
 訴えていたのは、大谷産婦人科(神戸市)の大谷徹郎院長と患者ら。大谷医師は男女産み分けなどのために診断を実施。学会は大谷医師が会告に違反したとして除名処分にした。
 中村裁判長は、現状について「立法が社会情勢の変化に対応して迅速に行われないため、学会の規制が法律に代わる機能の一端を果たさざるをえない状況だ」と指摘。規制が公序良俗に反する場合に限って無効になるとしたうえで、会員から広く意見を聴取して規制が決定された経緯などに照らし、「医学的な妥当性には検討の余地はあるとしても、公序良俗に反するとまでは言えない」とした。除名処分についても有効と判断した。
 その一方で「遺伝病のない子を持ちたいという親の切実な希望、障害者の意見など多角的な検討が必要だ」と言及。学会による規制が理想とはいえないとして、何らかの法整備を促した。

医師の全国派遣を検討 政府・与党、偏在解消へ新制度 indexへ

 政府・与党は医師不足解消に向け、医師を不足地域に派遣するシステムを構築する方針を固めた。与党内では臨床研修後の若手医師や定年後の勤務医らを全国に配置する案が浮上。政府・与党の対策会議を立ち上げ、6月中にも取りまとめる政府の「骨太の方針」に盛り込む。自民、公明両党は7月の参院選のマニフェスト(政権公約)の目玉に据える考えで、地方重視をアピールする選挙対策の狙いもありそうだ。
 地域の医師確保策は都道府県が設置する「地域医療対策協議会」で進めているが、地方によって医師数に差があり、全国的なバランスを考えた対策が急務となっている。与党が検討している医師派遣システムは、国立病院機構の中に派遣機構を新設して医師をプールし、1年程度の期限つきで派遣する構想だ。
 必修の臨床研修(2年間)終了後の後期臨床研修に進んだ医師や、定年を迎えた勤務医らから希望者を募る方針。人材確保のために、派遣期間終了後に希望の専門研修に進める制度づくりも検討している。
 自民、公明両党は先月下旬、個別に会議を設けてこうした具体策の検討に着手。ただ、「専門的な知見を要する」(二階俊博・自民党国対委員長)との判断から、9日の与党幹部の協議で厚生労働省や文部科学省など政府側も交えることを決めた。塩崎官房長官も同日の記者会見で「大事なのは国民がどこに住んでいても安心して医者にかかれる状態に保てること。与党とはよく協議をしたい」と強調した。
 一方、与党案の実効性は未知数のため、公明党の北側一雄幹事長は9日の記者会見で「必要であれば次の国会等で法案提出も考えたい」と述べ、法整備も視野に入れていることも明らかにした。
 与党が対策に本腰を入れ始めたのは「統一地方選で地方を回った幹部が全国的な問題と初めて認識した」(自民党厚生労働族議員)ためで、選挙向けの色合いが強い。民主党の松本剛明政調会長は9日の会見で「医師不足に取り組まれることは大急ぎでやっていただきたい課題だが、選挙まで2カ月を切った時期に協議会を作ってポーズだけで終わらせようとしているのであれば許されない」と語った。

パーキンソン病で遺伝子治療 国内初 自治医科大病院 indexへ

 自治医科大病院(栃木県下野市)の中野今治(いまはる)教授らのグループが7日、パーキンソン病の50代の男性患者に対し、国内初となる遺伝子治療を実施した。
 パーキンソン病は脳内の神経伝達物質ドーパミンが不足して起きる。脳内でドーパミンに変換される薬があるが、病気が進むとドーパミン合成に関係する酵素が少なくなり、効果が落ちてくる。
 そこでグループは、この酵素の遺伝子を特殊なウイルスに組み込み、手術で脳の神経細胞に注入する遺伝子治療を計画。昨年10月に厚生労働省に臨床研究の実施が承認された。震えや歩行障害などの症状を緩和させたり、薬の副作用を減らせる可能性があるという。

研修医、無資格で診療 献血の448人に問診も indexへ

 福島県国見町の公立藤田総合病院(庄司光男院長)が、国家試験に合格していながら医師免許申請をしていなかった男性研修医に、1年近く無資格で医療行為をさせていたことが7日分かった。医師法違反にあたるうえ、病院は、研修協力施設に指定されていない県赤十字血液センター(福島市)に、男性や他の研修医を派遣し、献血希望者の問診をさせていた。
 同病院や日本赤十字社などによると、男性は東北地方の大学医学部出身で、06年の医師国家試験に合格。同年4月から、藤田総合病院で研修医として勤務した。
 医師法では、国家試験合格後、厚生労働大臣に免許申請し、審査を通ると医籍登録され、医療行為ができる。ところが男性は申請しないまま研修を続けていた。今年3月、福島県立医大病院で研修する際、免許証の提出がなかったため、受け入れを拒否されたことから、あわてて申請し、無資格が発覚した。
 藤田総合病院は、男性が、医籍登録され次第、証明書を提示するよう伝えた。その後、20回近く、免許証などの提出を求めたが、男性は「まだ届いていない」「実家にある」などと説明していたという。病院は問題発覚後、厚生労働省に、補助金申請を取り下げるとともに、男性に給与と賞与の半額約200万円の返却を求めている。
 また、同病院は、研修先として厚労省に届け出ていない県赤十字血液センターに、男性を06年6月から9カ月間で計15回派遣。献血バスの検診医として、延べ448人を問診していた。
 臨床研修が必修化された04年度以降、研修で決められた医療機関以外で患者を診ることができない。男性の行為は禁止されているアルバイトにあたり、庄司院長は「認識不足だった」と話した。
 また、薬事法や血液法は、医師が問診したうえ、献血者の血液に問題がないか検査しないと、医薬品の原料として使えない。日本赤十字社(東京)によると、448人の献血者のうち390人分が検査を通って製品に回った。輸血用血液392本が病院に供給され、大半が使われたとみられる。血液センター所長が全員の問診票を点検し、日赤も製品に回った献血者の検体を高感度検査で再度調べた。これまでのところ、問題はないが、輸血を受けた患者の健康状態も調べるという。
 男性は今年3月、雇用契約を解除された。病院側に、「最初に、実家に置いてあると、うそをついてしまった。ばれるのが怖かった」などと説明しているという。

救急救命士が医療事故 気管チューブを食道に indexへ

 名古屋市は7日、救急隊が心肺停止状態の患者を搬送する際、救急救命士の男性(37)が人工的に呼吸させるため気管に入れるチューブを過って食道に入れる事故を起こした、と発表した。患者は搬送先の病院で死亡が確認されたが、事故との因果関係は「調査中」としている。救急救命士による気管チューブを使った医療行為は04年7月から認められたが、総務省消防庁は「こうした事例は聞いたことがない」としている。
 市消防局によると、死亡したのは同市瑞穂区の女性(68)。1日午前0時すぎ、家族から「息ができず苦しんでいる」と119番通報を受け、瑞穂消防署の救急隊が駆けつけたが、数分後に心肺停止状態に陥った。隊員3人のうち救急救命士の資格を持つ1人が、医師に携帯電話で指示を受けながら、女性に気管チューブを挿入するなどして蘇生を図ったが、搬送先の同市立大学病院で午前1時15分、心筋梗塞(こうそく)による死亡が確認された。医師が気管チューブを取り外す際、過って挿入していたことがわかったという。この救急救命士が気管チューブの挿入を行うのは2回目だった。女性は心筋梗塞の持病があったという。
 市は近く、医師や弁護士らによる第三者機関を設け、原因究明と再発防止を検討する。女性の家族には葬儀を終えた3日午後2時ごろ、医療事故について説明。遺体の解剖は行われていないという。

状況に応じた音楽を奏でるピアノ 名古屋市立大病院に indexへ

 7日にオープンした名古屋市立大病院の新外来診療棟(瑞穂区)のアトリウムに、患者数や季節など周りの情報を取り込んで最適なメロディーを生み出す「サウンドセル」を搭載した自動演奏ピアノが設置された。患者や病院を訪れた人たちへの癒やし効果が期待されている。
 サウンドセルは、東京都の作曲家・佐野芳彦さんが考案した楽曲生成システム。音の単位を表すセルを積み木のように組み合わせることで、自在に音楽を作り出せる。
 今回の装置は、午前7時から午後10時までの1時間ごとの患者数や時間帯など刻々と変化するデータと、二十四節気のイメージで佐野さんが作曲したセルを組み合わせて約30秒の音楽をコンピューターで作り出した後、ピアノで自動演奏する。計9216種類の音楽を1年間を通して時報として奏でる。
 この日の午後2時に流れた音楽は、落ち着いた中にも軽快さを感じさせるメロディー。患者数が少なく昼の時間帯で「立夏」に近い日というデータから生まれた。
 佐野さんは「病院なので心が和むような音楽を奏でるようにした。時間ごとに変化する“一期一会"の音楽を楽しんでもらいたい」。
 山田和雄副病院長は「今後は、空気の汚れや患者数の多い科、重症度などの情報も活用し、その時の状況に応じた音楽を流したい」と話している。

医療満足度、病気で差 認知症や乳がんは低く indexへ

 認知症の患者やその家族の医療への満足度は、ぜんそく患者の半分――。過疎地や産科・小児科の医師不足など「医療格差」が問題となるなか、疾患によっても医療や医薬品に対する患者らの満足度に大きな開きがあることが、医薬産業政策研究所と明治大学の合同調査でわかった。満足度が低かった認知症や乳がんの患者らは、「医師との対話不足」や「待ち時間の長さ」など医療提供態勢への不満を強く訴えている。
 調査は06年3〜5月、患者の満足度の高い医療について探るため、ぜんそく、リウマチ、腎臓病(人工透析患者)、認知症、乳がんの5疾患について、患者会の会員約1000人を対象に実施した。有効回答率は54.5%。認知症は患者の家族に回答を依頼した。
 受けている医療全般について「満足」と答えた割合は、ぜんそくが64.2%で最も高く、認知症が34.0%で最も低かった。
 どのような点が満足度に影響するかでは、認知症の患者・家族の場合、「医療機関の情報開示」や「医師との対話」を不満とした割合が他の疾患より高かった。その理由について同研究所が患者会に聞き取り調査をしたところ、「介護や生活に関する悩みを医師に相談しにくい」「アルツハイマー治療薬の種類が少なく、治験に関する情報提供が乏しい」といった不満が強かったという。
 乳がん患者は、「最先端の医療技術が提供されていない」といった医療技術への不満のほか、「診療時の自己負担額」「医薬品の価格」を不満とする割合も高く、抗がん剤を使う治療費が家計を圧迫している実態もうかがえる。
 一方、ぜんそく、腎臓病、リウマチでは「医師の治療技術」や「医薬品の効き目」に対する満足度が高く、治療による症状の改善がはっきりしている疾患ほど満足度が高くなる傾向が裏付けられた。

厚生年金病院存続へ 社保病院も 整理機構が運営 indexへ

厚生年金病院 年金財政を改善させるため、10年度までに廃止または売却するとしていた全国10カ所の厚生年金病院について、厚生労働省はすべて存続させる方針を固めた。53の社会保険病院も一部を廃止する以外は残す考えだ。医師不足や病院の統廃合が進むなか、地域医療をいっそう空洞化させると判断した。いずれも独立行政法人に移管したうえで運営しながら、将来的には地域ブロックごとに売却する案も浮上している。
 今後与党と調整し、連休明けから始まる社会保険庁分割・解体法案の国会審議で方針を示す。
 厚生年金病院や厚生年金会館など、社保庁が年金の積立金で整備した256の年金福祉施設は、「年金保険料の無駄遣い」との批判を受け04年3月、独立行政法人の「年金・健康保険福祉施設整理機構」を通じて廃止して処分するか、施設ごと売却することで与党が合意。06年度までに、66施設を民間に売却している。
 ただ厚生年金病院はレクリエーション施設とは性格が違うことから、与党合意で「地域医療に重要な病院は、医療態勢が維持できるよう十分考慮する」とされ、05年度に整理合理化計画を策定するはずだった。だが、社保庁改革の遅れや地元からの存続要望を受け、具体的な存廃の計画はいまだに策定されていない。
 社保庁は、分割・解体される予定の10年1月より前に、年金病院を整理機構に現物出資し運営も同機構に委ねる。そのために、10年度に解散する予定だった同機構をそれ以降も存続させるよう関連法を改正する方針だ。
 一方、中小企業向けの政府管掌健康保険の保険料で建てた社会保険病院も整理機構に移管する。ただし収益の改善が見込めず、地域のニーズも低い10カ所前後の病院は、移管後に廃止して跡地を売却し、収益を政管健保の財源に充てる。
 05年度決算では、厚生年金病院は10カ所のうち9カ所、社会保険病院は53カ所のうち51カ所が黒字だが、国有施設で固定資産税を払っておらず、減価償却費も計上されていない。厚労省は民営化すればかなりの病院が赤字になり、個別に売却すれば買い手がつかず廃止になるところが出て、地域医療に支障が出ると判断。このため移管後、病院をいくつかのグループにまとめ、一括売却する案が出ている。
 自民党内には経営状態のいい厚生年金病院の売却を先行させ、社会保険病院については個別売却を検討すべきだとの意見もある。

心臓移植ストップ 埼玉医大、手続き不備 indexへ

 国内で7カ所しか認められていない心臓移植の実施施設である埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)が、4月に心臓病センターを移転した際に必要な手続きをしなかったとして認定を取り消されていたことがわかった。日本循環器学会など9学会でつくる協議会の決定で、厚生労働省も了承している。再認定には数カ月かかる見込みで、同病院は入院して移植を待っている患者約20人に転院などの説明を始めた。
 日本臓器移植ネットワークによると、心臓移植を希望する患者は現在、国内に98人いる。心臓移植ができる国内7施設のうち関東には埼玉医大を含め3施設あるが、東京女子医大は心臓手術での医療ミスなどを受けて02年8月から自粛しているため、当面は東大病院だけとなる。
 脳死移植の移植施設は、移植チームや設備などが水準を満たしているかどうか審査され、認定されている。心臓移植については、「心臓移植関連学会協議会」(代表、今泉勉・久留米大教授)が、移植医の手術実績や検査設備の保有状況など約40項目を審査する。
 埼玉医大によると、大学病院本体にあった心臓病センターは4月に開院した同大国際医療センター(同県日高市)内に移転した。移植チームの大半が変わらないことなどから、新たな手続きをしなくても移植はできると判断したという。
 ところが同大が同協議会に問い合わせたのを受けて、協議会は4月15日に緊急会議を招集。「新施設が心臓移植にふさわしいかどうかは改めて審査する必要がある」(今泉代表)と確認した。そのうえで同大に(1)新施設には移植施設の資格がない(2)新施設の認定審査の結果が出るまで移植希望患者の新規登録をしない(3)待機患者は東大病院や他の希望施設に移す、などを求める方針を決め、4月20日に通知した。
 埼玉医大は02年10月に心臓移植の実施施設に認定された。これまでに全国で実施された心臓移植計43例のうち3例がここで行われている。同大国際医療センターの松谷雅生病院長は「移転しても移植できる環境が整っていると判断してしまった。待機患者になるべく影響が出ないよう(再認定の)申請を急ぎたい」と話している。

脳内メカニズム解明 写真見て「痛い」 群馬大院教授ら indexへ

 肉体的な痛みを連想させる写真を見ると、実際には痛くなくても脳は「痛い」と感じる――。群馬大学大学院医学系研究科の斎藤繁教授らが、人が痛みを感じるときに特徴的な脳の活動を発見し、米国の脳科学専門誌に発表した。味覚など他の感覚と比べて、痛みには感情の動きが大きく関与しているためらしい。
 男子学生10人に、注射針が刺さった腕の写真を5秒間見せ、「痛み」を想像してもらった。この時、機能的MRI(fMRI)と呼ばれる装置で脳の活動を調べると、10人全員で、本当に痛みがあったときに興奮する側頭葉の一部などが興奮していた。この部分は情動をつかさどっているとされる。
 一方、花畑や湖の「平和的」な風景写真を見せた場合は、視覚野しか反応がなかった。
 傷が治った後でも痛みを訴え続けたり、心理的に強いショックを受けて「心が痛い」と訴えたりする患者がいる。しかし検査で異常が見つからず、痛み止めの薬なども効かないため、治療が難しい場合が少なくない。
 共同研究者の一人、自然科学研究機構・生理学研究所(愛知県)の柿木隆介教授らは痛みには感情の動きが深く関与している可能性を考えており、「今回の結果は、『心の痛み』に対する治療に役立つのではないか」としている。

腎臓移植でB型肝炎感染、患者死亡 宇和島病院最終報告 indexへ

 病気腎移植問題で宇和島徳洲会病院の万波誠医師(66)が、前勤務先の愛媛県宇和島市の市立宇和島病院で、B型肝炎ウイルスをもつ患者の腎臓を別の患者に移植した結果、この患者がウイルスに感染して肝障害などを起こして死亡していたことがわかった。病気腎の摘出17件、移植25件を実施していた同病院の調査委員会が29日の最終報告で発表。この中で、病気腎移植については、25件とも不適切だったと全面否定の結論を出した。

友人・姉妹間の卵子提供へ 不妊治療団体倫理委が容認 indexへ

 友人や姉妹から提供された卵子と夫の精子を体外受精させて妻の子宮に戻す治療を、全国の不妊クリニックでつくる「日本生殖補助医療標準化機関」(JISART)の倫理委員会が認める答申を出していたことが28日わかった。西日本にある2医療機関が申請しているが、厚生労働省審議会の報告書が示した「提供者の匿名性」の条件は満たしていない。実施されれば、一定の手続きを踏んだうえで行う国内初のケースとなる。
 第三者からの卵子提供をめぐっては、諏訪マタニティークリニック(長野県)の根津八紘(やひろ)院長が98年、妹からの卵子提供による体外受精と出産を公表した。この件や代理出産の公表をきっかけに、厚労省審議会の生殖補助医療部会が法制化を前提に検討を始め、03年、卵子提供者は匿名とし、姉妹間は認めないとの報告書をまとめた。日本産科婦人科学会の倫理審議会も同年、匿名の場合に限り提供を認めると答申した。
 JISARTは、不妊治療に積極的なクリニックの代表が4年前に設立。現在、20施設が参加し、国内の体外受精の半数近くを実施している。倫理委員会は生命倫理の専門家や弁護士らで構成され、委員長は龍谷大法科大学院の金城清子教授。2例の実施は3月下旬に答申され、6月の理事会をへて正式に認められる。患者はいずれも卵子を提供されなければ妊娠できないという。
 厚労省の報告書が匿名を条件としたのは、例えば姉妹間の提供だと、子どもの「遺伝上の親」が近くにいて親子関係が複雑化する▽周囲から「なぜ卵子を提供してあげないのか」などと圧力を受ける――などの可能性が指摘されたためだ。
 JISARTの倫理委員会の答申は匿名性の条件に反するが、「現段階では匿名の第三者から卵子の提供を受けることは難しい」として了承されたという。
 JISARTの理事の一人は「(法制化を)『もう待てない』との思いだが、生殖医療のあり方を検討している日本学術会議の結論が出る前に既成事実を作りたい思いもある」と話している。

病院給食で42人食中毒 ノロウイルスが原因 東京 indexへ

 東京都は28日、八王子市の精神科病院「駒木野病院」(原常勝院長)の入院患者が嘔吐(おうと)や下痢、発熱の症状を訴え、保健所が調査した結果、ノロウイルスが原因の食中毒と断定したと発表した。発症者は患者42人で、いずれも「シダックスフードサービス」(本社調布市)直営の院内の給食施設で調理された食事を取っていた。八王子市はこの給食施設を7日間の営業停止処分とする。(時事)