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30病院に拒まれ死亡 大阪の89歳 到着まで2時間 indexへ

 大阪府富田林市で25日未明、下痢や嘔吐(おうと)など体調不良を訴えて救急搬送された同市内の女性(89)が、府内の計30病院に受け入れを拒否された末、約2時間後に搬送された病院で心肺停止状態となり、翌日夕、死亡していたことがわかった。受け入れを拒んだ病院の多くは「別の患者を処置中で対応できなかった」などと説明している。

患者の受け入れを断った病院の数
図 富田林市消防本部などによると、25日午前4時49分、女性の家族が119番通報し、8分後に救急車が自宅に到着。救急救命士が酸素投与などの処置をしながら、同消防本部の通信指令室とともに搬送先を探した。堺市や八尾市、大阪市平野区など周辺9市の市民病院や大学病院などを含む30病院に計35回受け入れを要請したが、いずれも拒否されたという。
 救急車はこの間、富田林市内の国道で待機。女性は車内でも意識があり、最終的に隣接する河内長野市の国立病院機構大阪南医療センターに受け入れが決まったが、その搬送中に体調が急変。同センターに到着した午前6時40分、心肺停止状態に陥った。その後、呼吸が再開するなど、いったん持ち直したが、翌26日夕、出血性ショックで死亡。同消防本部の説明では、女性には高血圧の持病があったが、死因との関係は不明という。
 受け入れを拒否した病院側は「集中治療室に別の重症患者がいて対応できなかった」「ベッドに余裕がなかった」などと理由を説明している。中には、「一度診察したことのある患者しか診ない」と拒否した病院もあったという。同センターも一度は「処置中」を理由に受け入れを断っていた。
 富田林市では23日にも、救急搬送された女性(67)が計14病院に受け入れを拒否されている。同消防本部の溝川秀敏次長は「医師不足と言われる中で日々、対応に苦慮している。救急隊が懸命に処置しながら亡くなったのは残念。医師会などとの連携を強化していきたい」と話している。
 亡くなった女性の家族は28日、「医療体制のあり方を変えてもらわないといけない」と語った。

グロブリンからも肝炎ウイルス 70年代製2本検出 indexへ

 はしか治療などに使われた70年代の血液製剤「免疫グロブリン製剤」から、C型肝炎ウイルスが検出されたことが分かった。薬害C型肝炎訴訟では、フィブリノゲン製剤と血液凝固第9因子製剤を投与された人を対象に救済法案がつくられることが確実になったが、肝炎感染はさらに数種類の製剤で起きた恐れが出てきた。
 長井辰男・北里大学名誉教授(法科学)が、約30年前から冷蔵保管している旧ミドリ十字(現・田辺三菱製薬)の製剤を調べた。外部の検査機関でも再確認した。
 その結果、77年製造の「人免疫グロブリン」(ガンマグロブリン)製剤2本から、いずれもC型肝炎ウイルスが検出された。また、臨床試験用の76年製の製剤「プラスミン」から、B型肝炎ウイルスが出た。
 長井さんはすでに、70〜80年代製造の抗貧血薬「ハプトグロビン」と70年代の「コリンエステラーゼ」からもB型、C型ウイルスの検出を確認している。
 旧ミドリ十字は遅くとも75年にはグロブリン製剤を発売。適応は広く、当時の使用説明書では、はしかや重症感染症、小児の気管支ぜんそく、水痘、ポリオ、帯状疱疹(ほうしん)の治療、輸血後黄疸(おうだん)の予防に使うと記載。
 また80年代半ばからは川崎病の子どもに対し、冠動脈瘤(りゅう)の予防に使用。A型肝炎治療などにも使われる。現在も同成分の製剤が複数販売され、今年度の供給量見通しは約3800キログラム。70年代半ばは1000キログラム、最も多かった80年代前半は約5000キログラム。
 C型肝炎ウイルスが見つかり、検査が導入されたのは89年以降。92年にはより精度の高い検査法となり、感染危険性はほとんどなくなった。
 グロブリン製剤などは、血液から赤血球などを除いた「血漿(けっしょう)成分」にエタノールなどを加え、遠心分離などを繰り返し、徐々に成分を取りだしてつくる「血漿分画製剤」。凝固第8因子、第9因子、フィブリノゲン、グロブリンなどの順番で抽出され、製造工程を重ねるごとに肝炎ウイルスなどは死滅するとされてきた。
 田辺三菱製薬広報室は「当社の知る限り、グロブリンによる肝炎感染の事例は過去にない。当時最新の安全対策はとっているはず。現在、厚生労働省の指示ですべての血液製剤について調査中なので、詳しいコメントは控える」としている。

公立病院 実質赤字7千億円 自治体、穴埋め重荷 indexへ

 公立病院の赤字が急拡大している。全国973の病院の06年度決算で、自治体に穴埋めしてもらった分も合わせた「実質赤字額」が、初めて7000億円を突破した。勤務医不足や診療報酬引き下げで収入が落ち込み、自治体の支援も細る。総務省は今月、「黒字の達成」を迫る公立病院改革ガイドライン(指針)を発表したが、地域医療に混乱を及ぼす恐れもある。
 「実質赤字額」は、経常収支の赤字に、自治体が病院の赤字穴埋めのために繰り入れた金額を加えて、経営の実態を示す。06年度、公立病院の経常赤字は前年度比567億円増と急拡大し、過去最悪の1997億円に。繰入金5100億円を加えた実質赤字額は7097億円に達した。
 「親方日の丸から、倒れる時代に入った」と、川崎市病院事業管理者の武弘道氏は言う。
 公立病院の建設や設備更新のために借金した場合、返済額の半分は自治体からの繰入金で賄う。国の交付税も「上乗せ」されるため、多くの自治体が「病院の名を借りた公共事業」(厚労省関係者)に走った。そうした支えが細りつつある。
 公立病院も、民間企業と同様に毎年、減価償却費を計上する。だが、実際に現金は支出されず、手持ち資金として残る。「赤字が出ても手持ち資金の範囲内なら問題ない」と自治体も病院もとらえがちだった。
 だが、三位一体改革による交付税削減、医師不足と診療報酬引き下げが重なり、手持ち資金が目減りしている。運転資金の不足を示す「不良債務」は前年度比120億円増の953億円に。
 自治体財政健全化法の成立で、08年度決算からは、病院など公営企業の不良債務が一般会計の赤字と連結され、自治体全体の財政が査定される。
 繰り入れがあれば、赤字は許されない――。総務省は、自治体にこんなハードルを設けた。しかし、小児科、救急、へき地など赤字部門をどう支えるのか。
 全国自治体病院協議会の小山田(こやまだ)恵(けい)会長は指摘する。「行政が『赤字でもやってくれ』と注文し、病院が『いくらかかる』と適正な繰り入れを求める。この対話がないと、住民が苦しむ結果になる」

リスト患者の死者57人に 1人増加 薬害肝炎 indexへ
 血液製剤フィブリノゲンでC型肝炎に感染した疑いがある患者418人のリストが放置された問題で、身元が特定された294人のうち、21日時点で57人の死亡が確認されたことが26日、製造販売元である田辺三菱製薬の調査でわかった。
 死亡者数は14日時点から1人増えた。遺族に製剤投与の事実を知らせたのは19人にとどまる。患者本人に製剤投与の事実を伝え、治療を勧めたのは120人。このうち53人は過去に治療を受けたか確認できておらず、リスト放置によって治療機会を逸した恐れがある。

肝炎検査感染 「長年の慣れ」 器具交換の指示なし indexへ
「患者5人がC型肝炎を発症していた事実が確認されました」
図
 院内感染を公表するため、茅ケ崎市役所で開かれた緊急記者会見。服部信明市長、副市長2人、さらに仙賀裕病院長ら6人が頭を下げた。
 「長年同じことをやってきて、慣れから交換しなかったようだ。徹底的に改善する」。仙賀病院長は、心臓カテーテル検査で使った後は1回ごとに捨てるはずの器具の使い回しが「慣れ」から行われてきた衝撃の事実をあっさり認めた。
 服部市長は「病院の設置者として責任を感じている。患者や家族に心よりおわびし、誠心誠意対応していく」と約束した。
 技士の「慣れ」がなぜ、見逃されたのか。
 病院側は、独自の検査マニュアルに、感染源となった血圧測定器具のトランスデューサーを毎回交換することが記されておらず、「担当者任せ」だったことを挙げた。
 器具は一個約4600円。医療保険の対象ではなく、病院側が費用を負担する仕組みという。出費を抑えるための行為ではなかったのか――そんな疑問に、病院側は「次々と検査の患者が来るので、忙しくて交換しなかったと担当者が言っている」などと答えるにとどまった。
 感染者5人は急性期の段階で対処したので、いまは肝機能が改善しているといい、今後も治療費などはすべて病院側が負担するという。
 今回の事故を受けた対策について、中村雅・循環器内科部長は「感染が起こりうるすべての経路を絶つため、使用済みの機材が新しいものと交差しないよう流れを改めたり、検査マニュアルを再整備したり、あらゆる改善策をとった」と語った。事故後の調査で、心臓カテーテル検査の件数よりもトランスデューサーの使用数が少ないことが分かったとき、中村部長は愕然(がくぜん)としたという。
 「医者としては、使い捨てになっているものと思っていた。確認しなかったことを非常に恥じている」

器具使い回し肝炎 5人感染18人疑い 茅ケ崎市立病院 indexへ
 神奈川県にある茅ケ崎市立病院の循環器内科で心臓のカテーテル検査を受けた60〜70代の男性患者5人が、C型肝炎に感染していたことがわかった。25日、病院が記者会見して明らかにした。感染は昨年12月から今年4月にかけてで、血圧変動を監視する器具「トランスデューサー」を交換せずに使い回したことが原因とみられる。メーカーの取り扱い説明書には1回ごとに廃棄するよう記載してある。使い回した理由について担当の臨床工学技士は「手術が立て込んでいて忙しかったから」と説明しているという。他に感染の疑いがある患者が18人おり、病院は検査を受けるよう要請している。
図 病院側の説明によると、5人はいずれも病状に応じた治療を受けており、肝機能は改善しているという。
 感染は今年11月、同病院の消化器内科で肝炎と診断された2人が、同じ日に心臓カテーテル検査を受けていたことから発覚。調査の結果、昨年12月の検査の際、すでにC型肝炎に感染していた患者から非感染者1人に、今年3月にも同じ感染者から別の非感染者1人に、さらに今年4月には3月に新たに感染した患者から別の非感染者3人に感染が広がったことが確認された。
 病院側は、最初に感染源となった患者がC型肝炎患者だったことを把握していたという。
 感染経路について、病院側はカテーテル検査で使われたトランスデューサーの可能性が強いとみている。出血を伴う可能性があるカテーテル検査では、患者の血圧チェックのためにトランスデューサーが使われるが、これが生理食塩水に満たされたチューブを介してカテーテルとつながっていることから、この使い回しによって肝炎感染者の血液が次々に非感染者と接したらしい。
 同病院が今年1〜10月に行ったカテーテル検査は計276件あったが、1件ごとに使われるべきトランスデューサーは170個しか使われていなかった。

 茅ケ崎市立病院は、病床数401、医師は約70人おり、循環器内科など23の診療科がある。
タミフル、10代の使用制限継続 影響なお不明 厚労省 indexへ

 インフルエンザ治療薬タミフルをめぐり、厚生労働省は25日、10代への使用を制限している措置を続けることを決めた。昨季の患者1万人を対象に、服用と飛び降りなどとの因果関係を調べていた同省研究班(班長、広田良夫・大阪市立大学教授)は、「タミフルを飲んでも異常行動全般のリスクは高まらない」とする分析を発表しながらも、「まだ結論は変わる可能性がある」として、措置解除には踏み込まなかった。
 使用制限の措置は、マンションなどからの転落事故などが相次いだことを受けて、今年3月取られた。特に、10代に異常行動が目立ち、この世代は暴れると親も抑えきれないなどとして、制限の対象となった。
 厚労省はタミフル輸入販売元・中外製薬や同省研究班に調査を指示。今季のインフルエンザシーズンまでに因果関係を改めて検証し、使用を控える措置が妥当かどうか判断するとしてきた。
 調査は、薬が脳にどう作用するかの動物実験や、服用後の睡眠時の脳波を調べる臨床試験など、四つのグループで分析してきた。しかし、関係を裏づけるデータは得られなかった。
 今回の研究班は、四つの調査で最後の報告だった。対象が1万人と大規模で、異常行動の分類も詳細なことから、特に結論が注目されていた。
 対象となったのは、06〜07年の18歳未満の患者約1万例で、タミフルを服用していたのは7181例。うち、「大声で叫ぶ」「理由もなく笑う」などの異常行動を起こしたのは10%の700例。一方、服用しなかった2477例のうち、同様の異常行動をしたのは22%の546人だった。
 数値をもとにリスクを計算すると、タミフルを飲んだ人の方が、飲まない人よりも異常行動のリスクが大幅に低かった。
 ただ、対象を10歳以上に限り、飛び降りなど死亡事故につながりかねない異常行動に絞って比較すると、飲んだ場合と飲まない場合のリスクの差ははっきりしなかった。
 全般的にみると、「リスクはむしろ低くなる」という傾向だったことに、広田教授は「あくまで予備的な分析で、結論を出せる段階ではない。さらに検討しないといけない」と説明している。
 タミフル使用制限措置について、結果の報告を受けた薬事・食品衛生審議会の安全対策調査会でも「動物のデータでは、薬の影響は少ないのではないかという印象がある」との意見も出たが、「はっきりした結論が出るまで、今の措置を続けるしかない」として少なくとも今季は制限を続けることを決めた。
 薬害タミフル脳症被害者の会代表で、05年2月、中学2年の長男がマンションから転落死した秦野竜子さん(47)は「厚労省は、因果関係の否定ありきで、都合の良いデータだけ取り上げている気がしてならない。子どもを亡くした私たちは、タミフル服用以外の原因を考えられない」と話した。
 調査会ではこのほか、治療に使われているリレンザとシンメトレルの添付文書の使用上の注意に20歳未満の患者では異常行動の恐れがあるなどと書くよう、指示することも決めた。
 けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫・小児科部長は「これからインフルエンザの流行が本格化する。10代でタミフルが使えないと、受験の時期を迎えて影響が大きくなるかもしれない」と話している。

産婦人科医、初の1万人割れ 厚労省調査 indexへ

 全国の産婦人科医の数が、06年に初めて1万人を割ったことが21日、厚生労働省の調査でわかった。医師数は長期的にはほとんどの診療科で増加傾向だが、産婦人科や外科など一部で減り続けている。地域間の格差も大きく、医師不足の背景には医師の偏在があることを改めて示している。
 調査によると、06年末時点の医師の総数は27万7927人で、04年の前回調査に比べ2.8%増。10年前に比べると15%増えた。
 診療科別では、産婦人科は9592人で10年前に比べ12%減。外科も同13%減って2万1574人だった。同じ期間に整形外科、眼科、皮膚科などは1割以上、精神科や麻酔科は2割以上増えている。
 都道府県別の人口10万人あたり医師数は、最多の京都府が272人と、最少の埼玉県(135人)の2倍以上。15〜49歳の女性10万人あたりの産婦人科・産科医数も、最多の鳥取県(60人)と最少の滋賀県(26人)で2.3倍の開きがある。

左右間違えて頭部切開 新潟大医歯学総合病院 indexへ

 新潟大医歯学総合病院(新潟市)は21日、開頭手術の際、頭部の左右を間違えて切り開き、頭蓋骨(ずがいこつ)の2カ所に穴を開ける医療事故があったと発表した。すぐに皮膚を縫い合わせ、反対側の開頭手術を行った。病院側は「誤認のために患者の容体が悪化した事実はない」としている。患者は、術前と同じ昏睡(こんすい)状態が続いているという。
 病院によると、今月の深夜、脳外科、麻酔医ら5人が、脳出血で昏睡状態となった患者の緊急手術を行った。だが、患者のCTスキャン画像の左右を見誤り、頭部の右側の皮膚を切り開いた。
 その後、頭蓋骨に直径約1センチの穴を2カ所開けた段階で骨の形の違いに気づき、すぐに縫合。切り開くべきだった左側の開頭手術に移った。
 病院側は、「夜間緊急の手術のため、医療スタッフが少なく、手術部位の術前の相互確認が不十分だった」と謝罪。しかし、「時間のロスが大きな影響を与えたとは思わない」と話している。

都から病院建設・運営受託 三菱商事 indexへ

 三菱商事は21日、東京都がPFI(民間資金による社会資本整備)方式ですすめる「がん・感染症医療センター(仮称)」の建設・運営を、三菱商事や戸田建設、東京電力などが出資する特別目的会社(SPC)が受託する契約を結んだ、と発表した。センターは都立駒込病院(文京区)を全面改修する。SPCは09年4月から26年3月までの施設の管理・運営も請け負う。

公立病院、不良債務減へ特例債 改善策提示なら indexへ

 総務省は21日、公立病院に経営改善を求める改革ガイドライン(指針)を決めた。すでに明らかになっていた指針案に、経営効率化や、隣接する他の病院との再編などを促すための財政支援策を新たに追加した。医師不足などの影響で資金繰りが急激に苦しくなっている自治体の病院事業のうち、改善策を示したところには、返済期間を延ばすため「公立病院特例債」発行を認める。経営改善を促すのと同時に、破綻(はたん)を防ぐための救済策を盛り込んだ形だ。
 特例債を設けるのは、病院の不良債務が03〜06年度に400億円以上急増したため。臨床研修必修化で医師が都市に集中し、地方の医師不足が深刻化して患者が減少。診療報酬削減も加わって経営が悪化した。これを特例債で救済することになる。ただし、返済期間を延ばすだけの当面の止血策で、その間に十分な経営改善を果たせなければ、問題先送りに終わる可能性がある。
 特例債を発行できるのは、03年度以降に不良債務が著しく増え、不良債務比率(07年度決算)が10%以上になる病院事業。指針に基づいて改革プランを策定し、単年度収支均衡への道筋を示したと認められる場合は03年度末〜07年度末に増えた不良債務の額をめどに、08年度に限って発行を認める。600億円の発行を計画している。
 特例債の返済期間はおおむね7年以内。不良債務は1年以内に返済しなければならない債務で、長期債務に振り替えれば不良債務ではなくなる。単年度の返済額も少なくなり、資金繰りに余裕が生まれる。
 不良債務は06年度は104事業で計953億円。比率が10%を上回ったのは67事業だった。
 また、複数の病院を再編したり、ネットワーク化で役割分担したりする際に必要な負担を軽減することで改革を促す措置も盛り込んだ。再編などに伴う施設・設備整備のため一般会計から出資する場合の起債を認め、返済資金に地方交付税をあてられる割合を高める。

心筋シートで機能回復の男性退院 阪大病院で会見 indexへ

 自分の太ももの筋肉細胞から作った「心筋シート」で心臓の機能を再生する手術を受けた男性患者が20日、大阪大病院を退院することになり、記者会見した。昨年2月に意識不明で救急搬送されたが、ゆっくり歩けるまでに回復。心臓移植に並ぶ再生医療に道を開く成果となった。
 大阪府の重国増雄さん(56)。妻に付き添われて会見場に現れ、「胸についていた人工心臓の機械がとれ、家に戻れるなんて夢のようだ」と小さな声ながらうれしそうに話した。
 心臓の筋肉が薄くなって血液を送り出す力が弱る拡張型心筋症だった。補助人工心臓をつけ、心臓移植を待っていたが、今年5月、心筋シートを張る1例目として手術を受け、9月に補助人工心臓を外した。退院後は、自宅で安静にする必要があるという。
 大阪大と東京女子医大の「自己筋芽細胞シート移植による再生治療」という共同臨床研究。心筋シートは、患者の太ももの筋肉細胞(約10グラム)から、傷ついた筋肉を補う力を持つ筋芽細胞などを取り出し、特殊な培養液中でつくる。直径約5センチの薄いシートを3枚ほど重ね、弱った心臓の表面に張る。
 澤芳樹教授(心臓血管外科)は「今回は筋肉細胞から心筋ができたのではない。シートから血管の増殖因子などが出たようだ。心筋の機能が回復しつつある患者の人工心臓をはずす手助けとなる再生治療となるかもしれない」と話す。年明けにも2例目の手術を行う。

新制度の救済、年5百〜8百人 出産事故での脳性まひ児 indexへ

 出産時の医療事故で重い脳性まひになった子どもを保険で救済する新制度の原案が18日、明らかになった。通常の妊娠・分娩(ぶんべん)で起きたときを前提とし、年間に誕生する脳性まひ児全体の2〜3割にあたる年間500〜800人が対象になるとみられる。実施主体となる厚生労働省所管の財団法人・日本医療機能評価機構が19日開く準備委員会で提示、08年度中の始動を目指す。
 原案では、給付対象を「通常の妊娠・分娩で脳性まひになった場合」とし、(1)妊娠33週以降に体重2000グラム以上で誕生(2)身体障害者等級の1〜2級に相当する脳性まひ、との基準を設けた。
 先天性の脳の異常や、出産後の感染症などで脳性まひになった場合などは、対象とならない。未熟児も原則対象外とするが、出産時の医療事故が脳性まひの原因と考えられる場合は救済する方向で同機構が個別に審査する。
 給付額は1人あたり2000万〜3000万円と見込まれ、額は年度内をめどに詰める。
 財源は病院や医院が支払う保険料。分娩ごとに約3万円と試算され、多くの医療機関では出産費用に上乗せするとみられる。このため厚生労働省は、健康保険が支給する出産育児一時金(現行基準額35万円)を、保険料相当分の額を引き上げる方向で検討している。
 また原案は新制度を「準公的」と位置づけ、「原則すべての出産を扱う医療機関が保険に加入する必要がある」としている。
 新制度は、医師の過失の有無にかかわらず、被害者を速やかに経済的に支援するのが目的。産科医不足の一因とされる出産をめぐる医療紛争を減らす狙いもある。

i助成金から運営経費 川崎市医師会、退職金や税支払い indexへ

 川崎市の「老人医療費助成制度」に関連し、市が川崎市医師会に支出している年間約1億5000万円の「協力費」が、医師会役員の退任慰労金や税金の支払い、医師会館の修理費などに充てられていたことが分かった。市と医師会との覚書では協力費の使い道を助成制度の周知や円滑な実施などと定めている。医師会は覚書の範囲外にも協力費を充てていたことを認め、今後は「透明性を高めたい」としている。
 今年10月に承認された市医師会の06年度決算報告書によると、協力費は「老人医療調整費」と「老人在宅医療調整費」に分け、計約1億5500万円を収入として計上しているが、支出は様々な費目に含まれていて判然としない。
 使い道について医師会の宮川政久会長は朝日新聞の取材に対し「(覚書に)書いてあるものは建前だ」と説明。高齢者医療をテーマにした講習会の開催などに充てる一方、役員の退任慰労金や交通費、法人税や消費税、職員給与、市医師会館の修理費などの一部にも使っていたことを明らかにした。また「市とはあうんの呼吸でやっている」とも述べた。医師会事務局は「協力費がないと会の運営は厳しい」とし、協力費が運営経費に充てられていることを明らかにした。
 現行の助成制度は67〜69歳の川崎市民を対象に83年から始まった。医療費の自己負担分を市が助成し、本来の3割から1割に軽減する。2割分の医療費は一時的に医療機関が肩代わりするため、市は1件ごとに150円の事務手数料を各医療機関に払っている。さらに年間約1億5000万円の協力費を医師会に支出していた。昨年度の事務手数料と協力費の合計は2億円。協力費の額は毎年ほぼ同じで、市によるとこの10年間で約15億3500万円が支出されたという。
 協力費に関しては市と医師会が覚書を交わしており、06年4月の阿部孝夫市長と宮川会長との覚書は、使い道として(1)各医療機関に対する助成制度の周知(2)事務手数料の振り込み口座の取りまとめ(3)制度の円滑な実施を図るうえでの必要な指導――と定めている。
 協力費は、繰越金を除いた同医師会の単年度の収入の15%ほどを占めている。市福祉医療課は「これまで支出の詳細は把握してこなかった」とし、1億5000万円という額については「市の窓口で補助金を渡すと人件費だけで2億5000万円ほどかかる。(当初の)経緯が分からないので(額が妥当かは)何とも言えない」と話している。
 同市の助成制度は現在の対象者を除いて今年度で終了する。制度発足から20年以上がたち、市は協力費について「必要性は薄れた」として削減、もしくは廃止する方向で見直しを進めている。
 協力費はほかの自治体でも支出しているところがある。兵庫県明石市では、同市医師会に支出している年2320万円の「協力金」について今年10月、同市の行政評価委員会が「有効性は認めがたく、額の算定根拠も不明確」と見直しを求めている。

iPS細胞 京大に研究センター 文科相が支援表明 indexへ

 京都大の山中伸弥教授らが人の体細胞から作った万能細胞(iPS細胞)の研究支援について、渡海文部科学相は18日の会見で、京都大にセンターを設置して臨床研究も含めた研究を促進する体制が必要との考えを示した。20日の科学技術・学術審議会のライフサイエンス委員会で専門家の意見を聞き、支援策をまとめる。
 iPS細胞は、さまざまな組織の細胞に分化する能力を持つとされる。将来的に再生医療などの臨床に生かすためには、各種の細胞への分化誘導法や安全性の確認など各分野の研究者の協力が必要とされている。
 渡海文科相は、新しいセンターについて「iPS細胞を滞りなく各分野の研究者に提供していくイメージ」と述べた。iPS細胞の大学外の提供には知的所有権の問題があるが、「いろんな課題を解決してスピーディーに研究が進む体制を作りたい」と話した。
 iPS細胞の研究は、昨年夏にマウスでの成果で京大が先行した。だが、先月21日に発表した人の細胞からの作製では、米国と同着となるなど海外の研究者が激しく追い上げており、山中教授が渡海文科相に危機感を訴えていた。渡海文科相は、今年度の予算で、これからも配分が可能な競争的な資金を利用して、支援を急ぐ考えも示した。
 山中教授は、これまで文科省以外にも、内閣府、総合科学技術会議などで、共同研究の核となるセンターの必要性を繰り返し訴えてきた。

診療報酬引き上げ、0.38%増へ 政府・与党 indexへ

 政府・与党は17日、医療機関などに支払う診療報酬の08年度改定で、薬価を除いた医師の収入に直結する「本体部分」について、0.38%引き上げる方針を決めた。薬価部分は市場価格を反映して1%程度引き下げるため、全体では02年度から4回連続のマイナス改定となる。
 この日、与党と日本医師会幹部らが都内で断続的に協議。政府は0.1%の引き上げを検討していたが、医師会が大幅な上積みを要求。与党側も次期総選挙での医師会の支持を取り付けるため、引き上げ幅の上乗せを求めていた。厚労省は医師不足対策として、産科や小児科、症状が重い急性期医療などへの報酬を手厚くする方針だ。
 診療報酬は2年に1回改定。医療費抑制のため小泉政権下の02年度、本体部分が初めて1.3%引き下げられた。04年度は据え置かれたが、06年度も1.36%引き下げられた。引き上げは00年度以来、8年ぶり。引き上げ率は過去最小となる。
 0.38%の引き上げに必要な財源は300億円程度。厚生労働省は社会保障給付の無駄を細かく見直し、捻出(ねんしゅつ)する考え。本体部分の引き上げにより、病院や診療所への医療費支払いが増え、国民が支払う保険料や窓口負担も増えることになる。

混合診療、全面解禁盛り込まず 制限通達撤回へ indexへ

 舛添厚生労働相と岸田規制改革担当相は17日、保険のきかない自由診療と、保険のきく診療を組み合わせた「混合診療」のあり方を協議し、政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)が求めていた全面解禁は、同会議が年内にまとめる第2次答申に盛り込まないことで合意した。一方、薬事法で承認されていない医療機器や医薬品を用いた医療技術は認めないとした05年の厚労省通達は、撤回することを確認した。
 混合診療をめぐっては、04年にも全面解禁を求める規制改革・民間開放推進会議(規制改革会議の前身)と厚労省が対立。例外的に混合診療を認め、医療機関と医療技術を拡大することで政治決着した。しかし、厚労省は05年、混合診療は薬事法の承認を条件とする通達を出し、規制改革会議が「混合診療の範囲を狭めた」と反発。第2次答申に「全面解禁」が盛り込まれるかどうかが焦点だった。
 厚労省は通達を撤回し、混合診療を認める新たな枠組みを来年4月までに作る考えで、規制改革会議は04年の基本合意を実効性のあるものにしたい方針。ただ、今回、全面解禁を見送ったことで厚労省側の意向にも配慮した格好となった。

異常行動137人もタミフルの影響不明 全医療機関調査 indexへ

 飛び降りなど重度の異常行動を起こしたインフルエンザ患者(30歳未満)が昨季137人いたことが16日、全医療機関を対象にした厚生労働省の初の調査で分かった。約6割は治療薬「タミフル」を服用していたが、別の薬を飲んだ患者にも異常行動がみられ、同省は「この調査だけではタミフルと異常行動の因果関係は判定できない」としている。
 06〜07年の流行期に「制止しなければ生命に影響する異常行動」が起きた事例の報告を求めた。行動別(複数回答)では「突然走り出す」(62人)や「おびえ」(30人)が多く、「飛び降り」は14人。年代別では10歳未満が約4割、10代が5割超。厚労省が10代へのタミフル使用を制限した3月21日以降も、10代の異常行動が18人報告された。
 また、今季はタミフル服用後で3人、別の治療薬リレンザ服用後で2人の異常行動が厚労省に報告された。

意外に知られていないED薬の効果持続時間 indexへ

 自分が勃起(ぼっき)不全(ED)だと思う人の半数は、ネット経由で薬を買いたい――。米製薬大手イーライリリーの日本法人が実施したネット調査で、こんな結果が出た。背景には、ED治療への根強い抵抗感があるようだ。(アサヒ・コム編集部)
 11日に東京都内であったセミナー「ED治療最前線」で、発表された。調査は「自分がEDだと思う」「EDだと疑ったことがある」と回答した成人男性1031人を対象に実施。すでに医師の治療を受けたり、薬を服用したりしている人は除いた。
 治療薬を購入する場合の入手先について、25%の人が「ネットで」と回答し、「どちらかといえばネットで」も32%を占めた。「病院で受診」は23%だった。
 ネットでの購入を希望する理由について聞いたところ、「人に知られないから」が78%と一番多く、「値段が安そう」も26%あった(複数回答可)。
 一方、ネットで購入した薬に効果があると思っている人は13%で、「わからない」と答えた人は72%だった。
 「ED治療薬はどのぐらい効果が続くと思うか」との問いには、半数が「1〜3時間」と回答した。同社が2007年9月に発売した「シアリス」は効果が36時間続くのが特徴だとしているが、「25時間以上」と答えたの人は3%しかいなかった。
 「EDに対する誤解が多いことがわかった。泌尿器科や内科、産婦人科でも相談できるので、まずは受診を」と同社。

別の製剤からも肝炎ウイルス 旧ミドリ十字製 indexへ

 薬害C型肝炎訴訟の対象となっている血液製剤「フィブリノゲン」「クリスマシン」などのほかにも、B・C型ウイルスに汚染された製剤が少なくとも2種類あることが、長井辰男・北里大学名誉教授(法科学)の調べでわかった。いずれも1970〜80年代に旧ミドリ十字(現田辺三菱製薬)がつくった製剤。厚生労働省は現在、ほかの血液製剤も感染源となっていないかを調べるよう製薬企業に指示しており、それに先んじて汚染が証明された形だ。
 調べたのは、貧血などの治療薬「ハプトグロビン」製剤3本(76、87年製造)と、サリンなど神経毒ガスの治療用試薬「コリンエステラーゼ」製剤1本(77年製造)。長井さんは当時、大阪市にある同社を訪れて研究用に提供を受け、セ氏4度で保管。薬害肝炎問題を受けて今年10月に初めて、ウイルス検査した。
 その結果、4本すべてからB型肝炎ウイルスを検出。76年製造のハプトグロビン1本からは、C型肝炎ウイルスも検出された。
 田辺三菱製薬によると、両製剤で肝炎ウイルスの混入が確認されるのは初めて。
 ハプトグロビンは薬事法の承認を受け86年6月に発売されたが、医療関係者によると、それ以前も病院や研究機関に試供品として提供され、治療に使われた可能性がある。
 コリンエステラーゼは承認は受けず市販されなかった。出回ったのは試供品のみとみられる。
 C型肝炎ウイルスは88年に発見。ミドリ十字が原料血液を検査し始めたのは90年以降とされる。
 厚労省のまとめでは、06年度のハプトグロビン出荷量は約4万本。
 厚労省は今年11月、フィブリノゲン以外の約20品目の血液製剤すべてについて、肝炎ウイルス感染者の調査をするよう製薬会社7社に指示した。
 田辺三菱製薬広報室の話 ハプトグロビンは(86年の)発売から現在まで同じ加熱処理方法をとっており、安全と信じている。(発売以前に)試供品が出回ったいきさつはよく分からない。現在、厚労省の指示ですべての血液製剤について調査中なので、個々の製剤についてのコメントは控える。

コンタクトレンズ検査、不正請求防止へ基準厳格化 indexへ

 コンタクトレンズ(CL)の購入希望者を主に検査する眼科診療所で、診療報酬の水増し請求が相次いでいることを受け、厚生労働省は12日、中央社会保険医療協議会(中医協)に、CLの検査料の報酬に格差をつける施設の基準を現行よりも厳しくするなど、不正防止のための診療報酬の改定案を示した。大筋了承され、来年4月から実施される。
 厚労省は06年度に、CLの患者が7割以上を占める診療所を「CL専門の診療所」とみなして一般の眼科と区別。支払うCL検査料を一般の診療所の約半分とする改定をした。厚労省が昨年末からCL診療所を調査した結果、CLの患者を一般の眼科患者と偽り、診療報酬を水増し請求するなど不正をしていた診療所が60カ所以上あることがわかった。
 このため、改定案ではCL専門診療所とみなす際のCL患者の割合を、現行から「3割以上」に引き下げ、病名を偽った水増し請求を実質的にできないようにした。
 また、再診の患者を「初診」と偽った水増し請求も多発しているため、現行では約3倍以上の価格差がある初診時と再診時の検査料を一本化する。

治療などの診療報酬、8年ぶり増額 0.1%増で調整 indexへ

 政府は11日、08年度予算編成の焦点となっていた診療報酬改定で、薬価改定分を除く治療などの「本体部分」を引き上げる方向で検討に入った。引き上げ幅は0.1%を軸に調整しており、8年ぶりの増額改定となる。過疎地での医師不足などが指摘されるなか、次期衆院選をにらみ、医療問題に積極的に取り組む姿勢をアピールする狙いがありそうだ。
 診療報酬は、手術や検査などの「本体部分」と、薬価などで構成。ほぼ2年ごとに見直されており、08年度は改定時期にあたる。今回増額される方向になったのは、医師の収入に直結する「本体部分」。0.1%増には、80億円程度の財源が必要になる見通しで、財務省と厚生労働省は財源をどう捻出(ねんしゅつ)するのかについて検討に入った。ただ、与党には引き上げ幅拡大を求める声もあり、必要となる財源が膨らむ可能性も消えていない。
 医療費をめぐっては、小泉政権が患者の自己負担増と保険料の引き上げ、医療機関の収入抑制の「三方一両損」が必要だと主張。02年度には診療報酬本体部分について1.3%減と初のマイナス改定に切り込んだ。04年度には据え置いたが、06年度には再び1.36%の減額改定を実施した。今回引き上げられると、00年度に1.9%増額されて以来となる。
 医療費は税金や保険料、患者負担で賄われているため、診療報酬の引き下げは全体として国民の負担減につながる。ただ、医療現場からは診療報酬の引き下げで地域の医療機関が疲弊しているとして「現在の医療崩壊の最大の原因になっている」との声が出ていた。
 診療報酬について、財務省は引き下げを求めてきた。08年度予算編成の大枠を示す概算要求基準(シーリング)で、医療費を含めた社会保障費について2200億円の抑制が決められたからだ。
 これに対し厚労省は診療報酬のもう一つの柱である薬価を市場価格に応じて1%程度引き下げることや、中小企業向けの政府管掌健康保険への国庫負担を、大企業の健康保険組合に肩代わりしてもらうことで調整。シーリングを達成できる見通しがついたと判断し、診療報酬本体を増額することにした。
 《診療報酬》 病院や診療所が提供した医療サービスに対して、医療保険制度に基づいて支払われる報酬をいう。治療内容に応じて、報酬額の基礎となる点数が細かく定められている。治療に対して支払われる本体部分と、薬などに対して払われる部分に分かれる。
 ほぼ2年ごとに行われる診療報酬改定で、総額が決められ、それに応じて点数の配分が決まる。

死亡確認は56人に、C型肝炎問題 田辺三菱製薬が調査 indexへ

 血液製剤でC型肝炎に感染した疑いがある患者418人のリストの放置問題で、身元が特定された患者282人のうち、56人の死亡が確認されたことが11日、製剤の製造販売元の田辺三菱製薬の調査でわかった。
 死亡者数は11月30日から5人増えた。医療機関を通じて、遺族に製剤投与の事実を告知したのは13人にとどまる。身元が特定できた患者のうち、99人については患者本人に告知したが、30人は転居などで連絡がとれないという。
 告知した患者で治療が確認されたのは約6割。残る4割はリストの放置の影響で適切な治療を受けられなかった可能性がある。

エーザイ、米製薬会社を4300億円で買収へ indexへ

 製薬大手のエーザイは10日、がん治療薬に強い米製薬中堅のMGIファーマ(ミネソタ州)を39億ドル(約4300億円)で買収する、と発表した。がん治療薬の研究開発や米国での販売を強化するのがねらい。エーザイは他社との開発競争に勝ち抜くため、今年4月にもがん治療薬の技術を持つ米ベンチャーを買収した。
 MGIは米ナスダック上場。がんの治療に伴う吐き気を抑える薬や、特殊な骨髄がんの治療薬を販売し、06年の売上高は380億円で、当期赤字は44億円。エーザイは12月中旬に株式公開買い付け(TOB)を始め、全株を取得する。
 MGIの強みは、人体が持っている免疫を活用してがんをねらい撃ちにする治療薬の研究開発。エーザイは、約390億円で買収した米バイオベンチャーのモルフォテックと両輪で、がん治療薬の研究開発体制を強化する。米国でアルツハイマー病の治療薬「アリセプト」が10年に特許切れして売上高が落ち込むのを、MGI買収で補うねらいもある。
 エーザイの内藤晴夫社長は10日の会見で「今後とも重点分野で製品を通じた買収を進める」と述べ、研究開発の加速のために企業買収を活用する考えを表明した。
 製薬業界では、国内大手による米企業との提携・買収が相次いでいる。武田薬品工業は06年に米ベンチャー2社と相次いで提携。アステラス製薬も米バイオベンチャーを約417億円で買収する、と発表した。

インフル治療薬 リレンザで少年が異常行動 indexへ

 インフルエンザ治療薬リレンザ(一般名ザナミビル)を服用した横浜市の少年(12)が無意識のまま歩いて外に出たり、意味不明な話をしたりする異常行動を起こしていたことが7日、わかった。診察した病院は「因果関係が否定できない」とし、国に副作用として報告することを決めた。
 病院側によると、少年は6日に医院を受診、インフルエンザと診断された。同日午後5時ごろ、処方されたリレンザなどを服用。直後から意味不明の言葉を発し、約4時間後には家族が目を離したすきに自宅外に出た。無意識のまま寝床を出て歩いたとみられる。少年は病院に運ばれ入院したが、夜中にベッド上で立ち上がり、壁をなでるなど異常行動が続いた。
 服用後の異常行動はタミフルで問題となり、国は今年3月、10代患者への投与を原則禁止した。リレンザも同じくウイルスの増殖を抑えるタイプの治療薬。タミフルの使用制限を受けて今季の供給量は昨季の6倍にあたる300万人分に増える見通し。異常行動の報告は00年の発売以来、計10件あるが、行動の詳細が明らかになるのは初めて。
 菅谷憲夫・けいゆう病院小児科部長は「異常行動はインフルエンザそのもので起きる可能性もある。薬の服用にかかわらず発症2日間は子どもから目を離さないで」と呼びかけている。

「フィブリンのり」、感染患者が初提訴 薬害肝炎訴訟 indexへ

 患者らが国と製薬会社を訴えている薬害C型肝炎訴訟で、手術で使われた「フィブリンのり」で肝炎に感染したとして、東京都と静岡県の男性2人が東京地裁に提訴していたことが分かった。フィブリンのりは、血液製剤フィブリノゲンに別の薬品を混ぜてつくり、血管や骨の接着剤として使われてきた。「のり」による感染を訴えて訴訟に加わった患者は初めて。
 東京都の70代男性は84年、静岡県の40代男性は87年、いずれも心臓手術を受けた際にフィブリンのりが使われていたことが手術記録で判明した。現在は慢性肝炎の治療を受けている。11月末に約30人が全国4地裁に起こした集団追加提訴に加わった。
 厚生労働省によると、フィブリノゲン製剤は01年までに約28万人に使われた。大量出血した産婦の止血剤として多く使われたが、手術時にのりとして使われた人も約7万9000人含まれると推定される。
 代理人の高井章光弁護士によると、のりによる感染を訴える相談は少なく、証明も難しかった。「のりは使われたという自覚が薄い場合が多く、これまで取り残されてきた問題。提訴を機に、実態調査と救済を求めていきたい」と話している。

認定医試験不正、東京医大でも6人 受験資格停止処分に indexへ

 昭和大学の内科医5人が受験資格を偽って処分された日本内科学会の認定内科医資格試験をめぐり、東京医科大医学部(東京都新宿区)の内科第4講座(東京医大病院消化器内科)の内科医6人も昨年、ほかの医師の実績を流用して受験資格に必要な診療経験を水増しし、学会の処分を受けていたことが7日、分かった。昭和大の不正と同様、学会は大学の管理責任を重視し、内科第4講座所属医師の次年度の受験資格を停止していた。
 両大の不正について学会は「一つの講座から大量の不正が出た重大なケース。講座の管理のあり方にも問題があるため、所属医師も資格停止の対象とした」としている。
 学会と東京医大によると、昨年7月中旬に認定医資格試験を実施した後、採点を担当する学会の医師が不正を発見。大学側で調査した結果、同講座の6人が、主治医として担当した入院患者の診療実績を示す「病歴要約」の症例を、別の診療科が担当した患者などの診療記録から流用していたという。うち2人は、要約に記した約20症例のうち10例以上を流用していたという。
 学会は昨年9月5日付で6医師の昨年の受験資格を取り消し、今年度から3年間の再受験も認めない処分とした。また、同大の関連病院への派遣医師も含めた同講座の医師に、今年度の受験資格を認めなかった。
 東京医大病院は昨年末、6人を厳重注意し、6人の不正な書類に署名、押印していた同講座の教授も、同大理事長が厳重注意した。また、医師ごとの診療記録を新たに作り、認定医資格試験を受験する際には、提出書類と記録を照らし合わせて不正を見抜けるよう改善したという。
 岩本俊彦病院長は「受験資格を十分理解していなかった医師もいたが、明らかに不正と知りながら流用していた医師もいた。医師個人のモラルに問題があったうえ、我々の管理責任もあり、大変申し訳ない」と話している。

16病院が受け入れ拒否 66歳男性死亡 兵庫・姫路 indexへ

 兵庫県姫路市で6日未明、肝臓に持病がある男性(66)が吐血し、救急車が搬送先の病院を探したところ、近隣の16病院が「専門の当直医がいない」「処置中」などを理由に、受け入れを拒否していたことがわかった。男性は約2時間後、約30キロ離れた同県赤穂市の病院に搬送されたが、死亡が確認された。
 姫路市消防局などによると、6日午前0時7分、同市内に住む男性の家族から「意識がぼんやりしていて、吐血もした」と119番通報があった。救急車は3分後に男性宅に到着し、救急隊員が車内から姫路市、兵庫県高砂市、同県太子町の16病院に受け入れを要請したが、拒否が続き、午前1時20分、17病院目の赤穂市民病院が応じたという。このほか、2病院では電話がつながらなかった。
 男性は搬送中の同40分、容体が急変。心肺停止状態に陥り、午前2時17分に同市民病院で死亡が確認された。同病院は死因を明らかにしていないが、男性は肝臓が悪く、3年前までほかの病院に通院していたという。
 病院側が断った理由は、「専門の当直医がいない」が5カ所、「ベッドが満床」が4カ所、「処置中」が4カ所、「処置困難」が3カ所だった。国立病院機構姫路医療センターは「症状が重篤と判断したため、内科の救急対応ができる病院へ搬送してほしい、と要請した」としている。
 姫路赤十字病院は脳外科医が当直で、「専門医がいる病院を」と回答。姫路聖マリア病院は夜間救急搬送先の輪番制で「内科・外科」の当番に当たっていたが、午前0時ごろから相次いで別の救急患者が搬送されるなど、医師7人全員が手術や救命措置にかかりきりになり、受け入れを断ったという。
 市消防局の浅見正・消防課長補佐は「救急隊員はみんな助けたいと思っていたので悔しい。全国的に医師不足が問題となる中、専門の当直医が減って受け入れを断られるケースが増えている。今回の事案を精査し、同様の事態を繰り返さないよう病院と協力する態勢を作りたい」と話した。

リウマチ治療薬で79人死亡 05年3月以降 indexへ

 関節リウマチの治療薬「エンブレル」(一般名エタネルセプト)の投与後に死亡し、薬との因果関係が否定できないと製造元に判断された患者が05年3月末の国内販売開始から今年11月末までの2年8カ月で79人にのぼることがわかった。製造元のワイス(東京都品川区)が明らかにした。厚生労働省は「これまでも添付文書で副作用の注意喚起をしており、引き続き慎重な投与を呼びかけていく」と話している。
 エンブレルは体の免疫反応を抑えて関節リウマチの痛みや炎症を抑える薬で、世界70カ国以上で承認されている。既存の薬が効きにくい人に投与される。炎症作用を著しく抑制する一方で、体の防御機能が弱まり死亡例を含む重い副作用も報告されている。国内では05年1月に承認されたが、厚労省は市販後の一定期間に投与した全患者を登録して有効性と安全性を調査することを企業側に義務づけた。
 ワイスは05年3月30日から武田薬品工業と共同で国内販売を開始。07年4月の登録終了までに登録された患者は1万4369人にのぼった。このうち、死亡した人は76人。年齢は60、70代が大半を占めた。
 厚労省の薬事・食品衛生審議会医薬品第1部会の今年4月27日の審議で全例調査の登録が終了。調査に参加する医療機関だけでなく、一般の医療機関も処方できるようになった。その後に医師側の自発的な報告で副作用による死亡とされた患者が3人いた。
 死亡患者の副作用では感染症や呼吸器障害が多く見られ、間質性肺疾患が12件、肺炎が10件、敗血症7件などとなっている。
 朝日新聞の取材に対し、ワイスは「通常の人の死亡率や年齢、性別などを加味しても、投与患者の死亡率は予想の範囲内だと考えている」と話している。
 厚労省安全対策課は「死亡症例があるからといって必ずしも危険かどうかは今の段階では判断できない。医薬品はリスクがあり、今後も適切な使用を呼びかけていく」としている。
 〈関節リウマチ〉 手足などの関節に炎症が起こり、関節の骨や軟骨を破壊する進行性の病気。女性の発症が多く、国内の患者は約60万人と推定される。ウイルスや細菌などが体内に侵入したときに免疫反応で血液中に分泌される「炎症性サイトカイン」が原因物質。炎症を起こすことで体を守る働きがあり、本来は一時的に分泌されるだけだが、分泌が制御できずに炎症が進むと自分の体をむしばみ、関節リウマチを発症する。

入れ歯誤飲見逃し死なせる 容疑の医師を書類送検 京都 indexへ

 入れ歯をのどに詰まらせた患者に適切な処置をせずに死亡させたとして、京都府警は6日、京都市下京区の武田病院の男性非常勤医師(44)=同府長岡京市=を業務上過失致死の疑いで京都地検に書類送検した。
 調べでは、医師は1月27日、アクリル樹脂製の入れ歯(幅6センチ、奥行き4センチ、高さ2センチ)をのどに詰まらせて救急搬送された女性(60)をX線検査して「誤飲はない」と誤診。患部から出たうみや飲食物が肺に流れ込んだ女性を5日後に肺炎で死なせた疑い。府警は、のどをのぞき込んだりCT検査をしたりすれば防げたと結論づけた。
 武田病院の上垣昭宏事務長は「患者を救えずに申し訳なかった。遺族には誠実に対応していきたい」と話している。

B型肝炎訴訟に関する電話相談 提訴準備の弁護士ら indexへ

 集団予防接種でB型肝炎に感染したのは国の責任だとして集団提訴を準備している弁護士らが8日、全国3カ所に臨時の電話相談窓口を設ける。過去に集団予防接種を受け、輸血など注射以外の原因が考えられないB型肝炎の感染者を対象に、主に訴訟参加に関する相談を受ける。
 窓口は東京(03・5982・3251)、大阪(06・6534・0660、06・6534・0663)、札幌(011・231・1601)で、午前10時から午後4時まで。

C型肝炎患者の死亡確認51人に 田辺三菱製薬調査 indexへ

 血液製剤でC型肝炎に感染した疑いがある患者418人のリストが放置された問題で、身元が特定された患者は11月末時点で265人となり、その2割弱にあたる51人の死亡が確認されたことが4日、製造販売元である田辺三菱製薬(大阪市)の調査でわかった。
 死亡者数は11月22日時点の47人から4人増えた。医療機関を通じて遺族に血液製剤の投与事実を伝えたのは9人。11月16日時点の8人からほとんど進んでいない。
 身元を特定した265人のうち、92人に血液製剤投与の事実を伝えたが、告知時点で治療を受けていなかった可能性がある患者が4割いた。転居などで連絡が取れない患者も25人いる。

「救済、フィブリノゲン以外も」 薬害肝炎訴訟で厚労相 indexへ

 舛添厚生労働相は3日、薬害C型肝炎訴訟の和解協議をめぐり、感染源となった血液製剤について「フィブリノゲンに限定せず原告を救済したい」との意向を示した。大阪高裁での和解協議で国側は、製剤の投与時期と種類を限定して責任を認めると主張しているとされるが、舛添氏は幅広い救済に意欲を示した。
 舛添氏は記者団に対し「薬害をやった責任があり、償うべきは償う。できるだけ広く救済する」と述べ、80年にクリスマシンを投与された原告も救済対象に加えたい考えを示した。
 同訴訟は5地裁のうち4地裁で国の責任を認めたが、クリスマシンに限ると、名古屋以外の4地裁は国の責任を認めていない。国は和解協議にあたり、87年4月〜88年6月にフィブリノゲンを投与された原告に国の責任を認めた東京地裁判決などを根拠に、限定的に責任を認めているとみられる。
 舛添氏は「福田総理らとまだ詰めないといけないが、不退転の決意でやる」と述べた。

ベビーフード21万個を回収 「大腸菌群混入」と和光堂 indexへ

 大手ベビーフードメーカーの和光堂は3日、粉末状ベビーフード「手作り応援」シリーズの5品目、約21万個を自主回収すると発表した。自主検査で微量の大腸菌群が検出されたため。全国のドラッグストアやスーパーなどで売られているが、和光堂は「食べても食中毒を起こすおそれはない」と説明している。
 回収するのは、ホウレン草と小松菜の粉末を使っている商品で、品名は「ほうれん草と小松菜」「緑黄色野菜3種パック」「野菜がゆ」「白身魚と緑黄色野菜」「鶏レバーと緑黄色野菜」。
 同社の静岡工場で生産し、8月下旬以降に出荷した。大腸菌群は11月下旬の自主検査で発見。原料に含まれていたのか、製造過程で混ざったのかは、不明という。問い合わせ先は同社(0120・88・5620)。

診療報酬 リハビリに成果主義 回復期病棟で 厚労省案 indexへ

 厚生労働省は30日、脳卒中などの後遺症を改善するために集中的にリハビリテーションをする「回復期リハビリ病棟」の診療報酬について、成果主義導入の方針を中央社会保険医療協議会に提案した。患者の回復度に応じて医療機関が受け取る報酬に差をつける。リハビリの質向上と医療費削減の両立が狙い。厚労省は今後同様の方式を広げていくことを検討する。
 現行では、医療の質は、施設面積や専門職の数など外形的に判断、基準以上なら診療報酬に加算する方式。治療結果は反映されていない。
 回復期リハ病棟は、脳卒中や骨折などで後遺症が出た患者に対し、生活動作の向上や社会復帰のためにリハビリを集中して行う。改善が見込める患者が集まるため、同省は、改善度合いを測りやすいとみている。
 厚労省の案によると、病棟ごとに全入院患者の平均データをとり、一定の数値を満たした病棟には報酬を上乗せし、未達成なら現行より引き下げる。指標に(1)在宅復帰率(2)重症度の高い患者の入院率(3)退院時と入院時での日常生活機能の改善率などが検討されている。
 だが、医療機関の中には、数値を重視するあまり、回復が遅い認知症高齢者などの入院を拒むところが出る恐れもある。
 患者選別の懸念について、厚労省は「重症者を入れることを条件にすれば起きない」。今後は、療養病棟でケアの質に応じて報酬を上乗せすることも検討している。
 全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の石川誠会長は「質を高めるためには成果主義の導入は一つの手法だ。各病院がデータをごまかすことがないような仕組みをどうつくるかが成功のカギになるだろう」。
 一方、日本福祉大学の二木立教授(医療経済学)は「入院拒否の可能性を考えれば、専門職を増やした施設への加算を高くして質を担保するのが現実的」と話す。

レントゲン写真取り違え、胆のうを誤切除 天理市立病院 indexへ

 奈良県天理市の市立病院で、10月にあった同市内の直腸がんの男性患者(65)に対する手術で、正常な胆のうを切除するミスがあったことがわかった。同病院が30日発表した。胆のう腫瘍(しゅよう)の疑いがある別の男性患者のレントゲン写真をこの患者の写真と取り違えたといい、手術前の確認も怠っていたという。退院した患者に今のところ体調不良はみられないという。同病院は患者に慰謝料を支払う予定。
 病院によると、手術前、主治医がこの患者に病状を説明した後、患者のレントゲン写真と胆のう腫瘍の疑いのある別の患者の写真を同じ袋に入れてしまい、別の患者の写真に基づいて手術内容を打ち合わせたという。10月の手術中にミスに気づいたが、すでに大半を切除していたという。

「医療事故調」実現へ 警察関与、重大事のみ 与党案 indexへ

 医療事故をめぐる訴訟や刑事事件の頻発が医師不足の一因とされていることを受け、政府・与党が検討していた医療版「事故調査委員会」制度の原案が29日、明らかになった。医療界の意向を反映して「医療関係者の責任追及を目的としたものではない」と位置づけ、警察による医療死亡事故の捜査は「故意や重大な過失のある事例に限定する」と記したのが特徴だ。来年の通常国会に関連法案を提出、野党の賛成も得て成立させ、09年度中にも制度をスタートさせたい考えだ。
 原案は自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」が厚生労働省と法務省、警察庁などと協議してまとめた。これを基に厚労省が法案化する。
 原案によると、「国の組織」として「医療安全調査委員会」を設置する。同委は運営方針を決める中央委員会と、ブロックごとの地方委員会で構成。医療死亡事故の届け出は地方委が一元的に受け付け、「調査チーム」が死因や事故原因究明にあたる。チームは医師や法律家、遺族の立場を代表する人などで構成。「調査報告書」を医療機関と遺族に通知し、個人情報以外は公表して再発防止に役立てる。
 焦点だった医療事故への警察の関与については「刑事手続きは悪質な事例に限定するなど、謙抑的に対応すべきもの」と記した。地方委から警察への連絡は「明らかな過失による死亡事故等に限定する」とした。
 現在は、医療機関の説明に納得しない遺族は、民事裁判や刑事告訴を通じて死亡に至る経緯を知ろうとする例が多い。新制度により、訴訟が減ることを期待。調査報告書は、医療機関と遺族の和解や調停、示談などにも「活用できる」とした。
 新制度は「原因究明には医療の知識がある者が携わるべきだ」との医療界の声や、福島県で06年2月、手術中に患者を死亡させたとして産婦人科医が逮捕され、その是非が論議を呼んだことも踏まえ、専門家が航空機や鉄道事故の原因調査を行う「航空・鉄道事故調査委員会」をモデルに検討された。

妊婦搬送に担当医 都内8病院が受け入れを調整 indexへ

 妊婦の搬送受け入れ拒否が問題化するなか、東京都内で高度医療を担う病院に、他の医療機関と連絡を取り合い搬送先の調整を主に担当する医師が配置されることになった。都が来年度から「総合周産期母子医療センター」に指定する8民間病院を対象に、こうした医師の人件費を助成する制度を始める。患者の受け入れについて医師同士がやりとりすることで、救急隊員よりもきめ細かな対応に期待する。
 都は、8病院に搬送調整を主に担う医師を1人ずつ増やす方針だ。例えば、ある病院のNICU(新生児集中治療室)が満床でもただちに新患の受け入れを断るのではなく、その病院の医師と相談して比較的回復している新生児を別室に移し、新たな患者を受け入れさせるといった調整をする。
 総務省消防庁の調査では、都内で06年に産科や周産期の病院に救急搬送された4179件のうち、救急車が現場に到着してから病院に出発するまでに30分以上かかったのが329件あった。10回以上病院に断られたのは30件で、27回目で受け入れ先が見つかったケースもあった。

肝炎支援策に自治体反発 「薬害は国の責任」 indexへ

 厚生労働省は27日、来年度から実施するウイルス性肝炎患者の支援策について、自治体向けに説明会を開いた。7年間で約1800億円かかる費用を、国と自治体が折半することについて、自治体側から「薬害は国の責任。なぜ自治体が負担するのか」などの反論が相次いだ。
 与党は今月、月7万円程度かかるインターフェロン(IFN)治療について、患者負担の上限額を所得に応じて月1万〜5万円とし、残りを国と自治体が助成する支援策をまとめた。年間10万人が治療を受けると想定し、予算は毎年256億円。来年度から7年間実施する方針だ。
 ウイルス性肝炎は、薬害肝炎の原因とされる血液製剤のほか、輸血や注射の回し打ちなどで感染してきた。厚労省の正林督章・感染症対策企画調整官は「(国の責任が問われている)薬害肝炎訴訟と支援策は別」としたうえで、「肝炎は国内最大の感染症。IFN治療で肝硬変や肝がんを防ぐのが目的だ」と述べ、自治体に理解を求めた。
 自治体側からは「薬害で肝炎になった人は国と製薬会社で見るべきだ」(兵庫県)、「厳しい財政状況なのに、対策が性急すぎる」(長崎県)などの反論が出た。
 また、厚労省が15日に設置した薬害肝炎に関する電話相談窓口には、26日までに4408件の相談が寄せられた。「過去に出産や手術をしたが大丈夫か」など感染を心配する相談と、治療費助成や検査に関する相談が多数を占めた。

C型肝炎患者、死亡47人確認 厚労省、告知状況調査へ indexへ

 血液製剤フィブリノゲンでC型肝炎に感染した疑いがある患者リストが5年間放置されていた問題で、舛添厚生労働相は27日、リストの患者418人の告知状況や病状の変遷を調査するための検討会を近く立ち上げる考えを明らかにした。治療の機会を逸した患者の状況などを明らかにする。また、製剤の製造販売元である田辺三菱製薬は、リストのうち、死亡が確認された患者は38人から47人に増えたと発表した。
 418人の症例を追跡調査するには、製剤を投与した医師だけでなく、肝炎治療にあたった医師らの協力も必要になるため、厚労省が直接調査に乗り出すことにした。
 厚労省によると、12月上旬にも、製剤を投与した医療機関を通じて患者に調査票を発送。患者には、肝炎治療の主治医に記入を求め、厚労省に郵送してもらう。患者が亡くなっている場合は遺族に調査票を送り、死因を調べるという。
 一方、田辺三菱製薬によると、418人のうち身元を特定できた患者は22日現在で250人。うち82人に製剤投与の事実を告知した。

新医療保険料、都道府県格差2倍 75歳以上対象 indexへ

 75歳以上のお年寄りを対象に来年4月から始まる後期高齢者医療制度で、都道府県ごとの1人あたりの保険料の平均額は、最も高い神奈川の年額9万2750円に対し、最も低い青森が4万6374円と、約2倍の格差があることが26日、厚生労働省の調査で明らかになった。全国平均の1人当たりの保険料は年額で7万2000円、月額は6000円程度だった。
 保険料の設定は、所得水準や地域の1人当たりの老人医療費を反映させる仕組み。このため、大都市圏や老人医療費の高い地域が上位に来ることになった。
 都道府県別にみると、最高の神奈川に次ぎ、東京が9万1800円、大阪8万8066円と、平均を大きく上回った。一方、最低の青森に次ぎ低かったのが、岩手4万7733円、山形4万9000円など。
 格差が開いた理由は、地域ごとに高齢者の所得水準に大きな開きがあることに加え、1人当たりの医療費についても、最高の福岡と、全体的に水準の低い東北各県や長野では最大1.5倍の差があることが影響した。
 地域の所得格差を除き、平均的な額の厚生年金を受給している単身世帯(年額201万円)で比較すると、保険料の高い順では(1)福岡(2)高知(3)香川など。低額なのは(1)長野(2)岩手(3)静岡――となっており、最高と最低で1.4倍の開きがあった。
 新制度では、後期高齢者の医療費について1割を高齢者の自己負担とし、残りの9割を保険から給付する。このうち、5割は税金でまかない、4割は現役世代の保険料から拠出、残り1割を高齢者自身が保険料として負担する。運営主体も、現在高齢者の大半が加入する国民健康保険を担う市町村から都道府県単位の「広域連合」にする。
 現在の国民健康保険では、市町村ごとに保険料水準に約5倍の格差があるうえ、今回、徴収対象が世帯単位から個人単位に変更されるため、従来と比べて、個人の保険料負担の増減は一概には言えない。厚労省では、全体の平均の負担は現在とほぼ同水準とみている。
 75歳以上のお年寄り約1300万人のうち、会社員の子供の扶養家族で保険料を支払う必要のなかった高齢者が200万人いる。この人たちは新たに保険料負担が生じることになる。
 ただ、与党はこの人たちの保険料徴収を半年先送りし、次の半年は9割減額する方針を決めている。今回の集計ではこうした減免措置は考慮しておらず、初年度の実際の平均保険料は試算よりも低くなる見通しだ。

「勤務医負担、軽減を」 診療報酬改定、基本方針決まる indexへ

 社会保障審議会医療保険部会(厚生労働相の諮問機関)は26日、厚労省が示した08年度診療報酬改定の基本方針案を了承した。医師不足の原因とされる病院勤務医の過剰な負担を軽減することが「緊急の課題だ」と位置づけ、産科や小児科など病院医療への報酬を手厚くする方針とした。患者にわかりやすく、質の高い医療を提供するために、診療窓口で発行する医療費明細書のあり方などを検討し、がん医療や脳卒中対策、自殺対策を推進することなども盛り込んだ。
 基本方針は近く、同じく厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)に示され、改定内容について具体的な議論を進める指針となる。
 厚労省は08年度の概算要求基準(シーリング)で、社会保障費の2200億円抑制を求められており、診療報酬の大幅な引き上げは極めて困難な情勢。厚労省は病院への報酬を手厚くするための財源を工面するために、開業医の初診・再診料を引き下げることを検討中。だが、引き下げに強く反発する日本医師会などに配慮し、この日の方針案には明示しなかった。
 勤務医の負担軽減策としてほかに、夜間に開業する診療所への報酬を手厚くすることで病院の救急医療をある程度肩代わりしてもらうことや、急性期の入院治療に重点を置き、外来診療を減らす大病院への評価を高くすることも盛り込んだ。
 医療費を抑制するために入院治療費の包括払い(DPC)の対象病院を拡大し、後発医薬品(ジェネリック)を普及促進する。脳卒中後の身体機能回復のためのリハビリテーションの質を上げるため、診療報酬に成果主義を導入する。
 個別の重点課題では、がん医療の放射線療法や化学療法、緩和ケアを充実させること、内科などを受診した患者でもうつ病の可能性がある場合には精神科医に紹介する仕組みを作り自殺者の減少につなげることなどに、取り組むとした。

医師不足対策、研究会発足へ 厚労省 indexへ

 舛添厚生労働相は26日、医師不足解消や地域の医療格差是正に向け、医療政策の長期ビジョンをつくるための研究会を近く立ち上げる意向を表明した。医師のへき地勤務を義務化することの是非、外国人医師が日本で診療できるようにするための規制緩和、混合診療解禁の是非などを議論するという。
 同日開いた全国知事会との意見交換会で、医師不足対策の要望などが相次いだのを受け、舛添氏が明らかにした。
 知事側からは、医学部定員増の恒久化▽医師の負担軽減のための看護師の業務拡大▽全人的な診察ができる地域医療の担い手育成――などの要望が相次いだ。
 これに対し、舛添氏は「(医療政策を)継続的にやってきていないツケが出ている」と話し、医療分野の規制緩和のあり方を中心に有識者による研究会で議論していく考えを示した。

炎感染 細菌に「足」 大阪市立大教授が発見 indexへ

 肺炎を引き起こす細菌、マイコプラズマの一種に、クラゲのような形をしたたんぱく質の集まりが一つ存在することを大阪市立大大学院理学研究科の宮田真人教授らが見つけた。このたんぱく質構造は、体内に入ったマイコプラズマが感染のため、肺細胞に素早く移動する能力とかかわりがあるとみられ、構造の解明が治療法開発につながると期待される。今週の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。
 実験に使ったマイコプラズマは魚のえらに炎症を起こす。細菌は長さ1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)弱のひょうたんのような形をしている。
 マイコプラズマの細胞膜を薬品で溶かし、電子顕微鏡で見たところ、中に直径約250ナノメートル(ナノは10億分の1)の楕円(だえん)形の頭の下に長さ約600ナノメートルの足が20本ほどついたクラゲのような形のたんぱく質を見つけた。
 マイコプラズマの移動には、細菌の外側に約400本ある長さ約50ナノメートルのたんぱく質が足となって動く必要がある。この足に異常があって移動しないマイコプラズマではクラゲ構造も見られないという。

BSEの国内感染源「代用乳」有力 肉骨粉説の見解覆す indexへ

 国内で発生した牛海綿状脳症(BSE)の感染源は、子牛が飲む代用乳の原料のオランダ産油脂が有力とする調査結果を、吉川泰弘・東京大教授(獣医学)らの研究グループがまとめた。国内で感染牛7頭が確認され、農林水産省は03年9月に英国産輸入牛で製造した肉骨粉やイタリアから輸入した肉骨粉の可能性を指摘し、代用乳には否定的な見解を示していたが、今回の研究成果は、それを覆すものだ。
 国内では、これまで33頭の感染牛が確認されている。代用乳に使う油脂は02年から輸入も含めて規制され、今は感染源になる恐れはないという。
 食品安全委員会プリオン専門調査会の座長を務める吉川教授によると、感染牛のうち13頭は95年12月から96年8月の短期間に生まれ、北海道と関東に集中していた。95年暮れにオランダから輸入された油脂で作った代用乳が13頭すべての体内に入った可能性が強いという。一方で英国やイタリア産牛の肉骨粉は、その販路をたどると13頭の牛がいずれも口にする可能性がなかった。
 吉川教授は、代用乳による感染牛がこれ以外におり、01年の全頭検査実施前に死んだため、見逃されて肉骨粉や代用乳用の油脂になったとみている。99年から約2年間に北海道で生まれた牛16頭が感染したのも、この飼料が原因と推定できるという。
 ただ、これだけ多くの牛が感染するには、数十頭の感染牛の油脂が代用乳に使われる必要があるが、オランダでの現地調査でも病原体が混入した確かな証拠が見あたらなかったという。
 吉川教授は「状況証拠はクロだが、油脂が相当高濃度に病原体に汚染されるなどの条件が必要だ。現状のデータでは、分からないことが多い」としている。

タミフル投与、睡眠試験で「因果関係なし」 厚労省 indexへ

 インフルエンザ治療薬タミフルと異常行動の因果関係を調べている厚生労働省の作業グループは21日、タミフル服用後の睡眠時の脳波の変化などを調べたところ、「現時点ではタミフルとの因果関係は認められない」とする臨床試験の中間報告を公表した。
 飛び降りなどの異常行動が、寝起きの状態で多く起きていることから、タミフル輸入販売元の中外製薬に対して睡眠試験の実施を指示。20代前半の健康な男性11人にタミフルを投与したところ、睡眠時の異常行動は見られず、タミフル服用の有無と脳波の変化の関係も見られなかったという。試験は30人になるまで続ける予定。
 また、同省に寄せられたタミフル服用後の異常行動の報告件数は、01年の発売から今年9月末までで282人に達した。5月末時点の集計では211人だった。

死亡確認、38人に 薬害肝炎 患者418人リスト indexへ

 血液製剤フィブリノゲンでC型肝炎に感染した疑いがある患者リストが放置されていた問題で、リストの患者418人のうち38人の死亡が確認されたことが20日、製剤の製造販売元である田辺三菱製薬(大阪市)の調べで分かった。リストが5年間放置されたことで治療の機会を逸した患者が含まれている可能性があるが、同社は「厚生労働省から具体的な指示がない」として、38人の死因調査などをまだ行っていない。
 同社が16日時点での調査状況を厚労省に報告した。418人のうち242人をほぼ特定。このうち73人に対し、医療機関から本人に製剤投与の事実を告知し、受診を勧めた。73人のうち治療中または治療済みと確認できたのは36人。
 これまで11人としていた死亡者数は38人に増えた。医療機関から遺族に投与事実を通知したのは8人。同社は「遺族に通知するかどうかは医療機関の判断に任せている」とした。転居などで連絡がつかない患者も24人いるという。
 同社は今月13日に患者への告知状況などを厚労省に報告した際、死亡者数などを伝えなかったため、舛添厚労相は16日、遺族に告知するとともに、死亡が確認された患者の死亡時期や死因、治療の有無などを調べるよう、同社に指示する考えを示していた。

水俣病救済でチッソを批判 与党PT案拒否で環境相 indexへ

 水俣病の未認定患者の救済問題で、与党のプロジェクトチーム(PT)が示した一時金給付などの救済策に対し、原因企業のチッソが現状では受け入れられないと表明したことについて、鴨下環境相は20日の閣議後会見で「チッソが変わることが必要ではないか。協力してもらうのが当然だ」と批判した。
 チッソの姿勢について鴨下氏は「絶対に柔軟なことがないかといえばそうじゃないのではないか」と指摘。「最終的に我々が働きかける時期が近々にあるだろうと思う」と、国が救済策のとりまとめに乗り出す考えを示した。
 チッソが望んでいる分社化については「(補償問題などの)責任が明確でなくなる懸念があり、私は理解できない」と話した。

チッソ、水俣病新救済策の受け入れを拒否 indexへ

 水俣病未認定患者の救済問題で、原因企業のチッソの後藤舜吉会長は19日、東京都内で記者会見し、与党のプロジェクトチーム(PT)が示した一時金給付など新たな救済策について「株主などに支払い根拠を説明できない」と述べ、現状では受け入れられないとする姿勢を正式に表明した。PT側は説得を続ける構えで、なお折衝が続きそうだ。
 後藤会長は、チッソが95年の政治決着の際に総額317億円を負担したことを取り上げ、「全面・最終解決で、あれ以上考えられない」と説明。二つの被害者団体が新救済策を受け入れず、国やチッソなどを相手取った損害賠償請求訴訟を続ける方針を示していることから、「今後も同じ問題が再燃しない保証はない」と受け入れに難色を示した。
 さらに「(負担が)いくらになるかわからず、現状の収益力では対応が困難」とし、「会社は株主、従業員、金融機関、取引先の協力で成り立っているが、支払い根拠を明確に説明できない。ここが一番大事」と強調した。
 ただ、与党PTとの関係では「これでおしまいで一切お話ししないとは申し上げていない」とした。液晶・電子部品などの事業部門の分社化を「ぜひ実現したい」とし、「いい会社を上場すれば巨額のお金が入り、(未認定患者をめぐる)今度の紛争解決でも、支払い能力上の問題は先に進む」と分社化への支援が救済策に応じる一つの条件になりうることを示唆した。
 与党PTの救済策では、対象者1人につき一時金150万円、療養手当月額1万円などを支給する。汚染者負担の原則で、100億円超とみられる一時金はチッソがまず負担した上で国などがチッソを支援する形をとる。

「飛び込み出産」急増 たらい回しの一因、背景に経済苦 indexへ

 妊婦健診を一度も受けず、生まれそうになってから病院に駆け込む「飛び込み出産」が増えている。今夏、奈良など各地で妊婦の搬送受け入れ拒否が発覚したが、病院側が断った理由の一つは「未受診」だった。医師からは「妊婦としての自覚をもって」と悲鳴が上がる。一方で、未受診には分娩(ぶんべん)できる施設の集約化や格差拡大による経済苦なども背景にある。
 「出血が止まらない。たぶん妊娠している」
 仙台市立病院(若林区)に9月上旬の日曜日、30代女性が飛び込んできた。
 健診を受けたことがなく、妊娠何週目かも分からない。診察したところ切迫早産で、胎児の体重は2千グラムをわずかに上回る程度と思われた。
 「緊急帝王切開が必要。出産後にすぐに新生児集中治療室(NICU)もいる」と判断されたが、医師がほかの処置中だったため、別の病院に搬送した。赤ちゃんは無事に生まれたが、「もし受け入れ先がなかったらどうなっていたか」と同病院の産婦人科部長は振り返る。
 神奈川県産科婦人科医会が、周産期救急搬送システムの八つの基幹病院を調べたところ、03年に20件だった飛び込み出産は、07年1〜4月に35件。通年では100件を超える見込みだ。
 妊婦の救急搬送の受け入れ拒否の原因として、医師やNICU不足のほかに、「未受診」があるといわれる。未受診に特徴的なのは、リスクの高さと出産費用の未払い問題だ。
 日本医科大多摩永山病院の中井章人教授が、97年1月〜今年5月に同病院で飛び込み出産をした妊婦41人を分析したところ、子が死亡したのは4例。周産期(妊娠22週〜生後1週間)の死亡率は、通常の約15倍だった。
 未受診だった理由で最も多かったのは、「経済的な理由」で12人。41人のうち11人は出産費用を病院に支払わなかった。
 搬送受け入れ拒否問題を受け、奈良県立医大が緊急調査をしたところ、同大学病院への飛び込み出産は98〜06年に50件。妊婦・新生児ともに異常は多く、妊婦の胎盤早期剥離(はくり)は2人で通常の10倍、呼吸障害など治療が必要な新生児は19人と通常の約20倍だった。小林浩教授(産婦人科)は「未受診だとリスクが非常に高い。妊婦さんも家族もそのことをよく知って、必ず健診を受けてほしい」と話す。
 ただ、未受診の背景にあるのは経済苦だ。生活保護の出産扶助を利用した人は、97年は全国で839人だったが、06年は1396人に増えた。
 健診費用は1回5千円〜1万円程度。厚生労働省によると、健診は14回程度が望ましく、最低5回は必要とする。だが自治体の公費助成は平均2.8回にとどまる。
 茨城県立医療大学の加納尚美教授(助産学)は「国は妊娠・出産に関し最低必要な医療内容と費用を算出し、その部分は公費で手当てしてほしい」と話す。

フィブリノゲン製剤以外も告知へ 厚労省が方針 indexへ

 厚生労働省は16日、フィブリノゲン以外の血液製剤約20品目についても、肝炎ウイルス感染の疑いのある患者らのリストを製薬会社7社に作成させ、本人が特定できれば医療機関を通じて告知するよう指示する方針を決めた。また、感染リスクの高かった「クリスマシン」など第8、第9因子製剤については納入先の医療機関名を再調査し、月内にも公表する。
 対象は、血漿(けっしょう)分画製剤すべて。80年代までエイズウイルス感染の原因になり注目された血友病治療薬の第8、第9因子製剤を含む。両製剤は、新生児の止血などにも使われ、C型肝炎の感染源にもなったとされる。
 厚労省は7社に対し、過去に医療機関から寄せられた副作用の報告書を調べ、感染疑いがある症例をリスト化するよう指示。医療機関を通じて告知し、検査や受診を勧めるよう求める。
 第8、第9因子製剤について、厚労省は01年、非加熱の両製剤を納入した約800医療機関名を公表ずみ。今回は80年代後半から使われている加熱処理済みの製剤も含めて再調査し、インターネットで再公表する。

リタリン乱発の東京クリニック捜索 医師法違反容疑で indexへ

 依存性の強い向精神薬「リタリン」を医師免許のない従業員に大量に処方させていた疑いが強まったとして、警視庁は16日午前、医師法違反(無資格医業)容疑で、東京都新宿区歌舞伎町1丁目の診療所「東京クリニック」と関係先の家宅捜索を始めた。同クリニックは、処方を巡る苦情が行政機関に殺到するなど、リタリン乱用問題の象徴的な医療機関。警視庁は、前院長で実質経営者とみられる男性医師(37)が違法行為を主導した疑いが強いとみて全容解明を進める。
 生活環境課などの調べでは、男性医師は8月下旬、患者7人に対しリタリンなど薬の処方や問診などの医療行為を医師免許のない事務職員にさせた疑い。男性医師は9月中旬に院長を退いた。
 男性医師は02年10月、港区西麻布にクリニックを開設。テレビ番組に頻繁に出演するなどして評判を集め、04年3月に歌舞伎町に移転した。ネット上の掲示板では数年前から「リタリンを大量にくれる」との書き込みが多数寄せられていた。
 リタリンを不適正に処方しているとの情報を受け、都と新宿区が9月中旬、クリニックを立ち入り調査。警視庁も内偵捜査していた。
 男性医師は06年12月、クリニック待合室で、女性患者から診察結果の説明を求められたことに立腹し、壁に頭をたたきつけるなどしてけがを負わせ、付き添いの夫にもけがをさせたとして傷害容疑で逮捕された。今年3月に懲役2年執行猶予3年の判決が確定し、9月下旬、2年間の業務停止処分を厚生労働省から受けた。
 このため、院長が別の医師に変わったが、男性医師が引き続き実質的に経営しているとされ、院長交代後もリタリンの不適正処方が続いていたとみられる。

薬害肝炎、死亡11人の遺族へ告知を指導 厚労相表明 indexへ

 血液製剤フィブリノゲンでC型肝炎に感染した疑いがある「418人リスト」の11人が死亡していた問題で、舛添厚生労働相は16日、製造販売元の田辺三菱製薬に対し、投与の事実を遺族に知らせるよう指導する考えを明らかにした。舛添氏は「個々の家族の状況やプライバシーなどを総合的に判断し、問題なければやる」と話した。
 舛添氏は遺族への告知について「生きている人を救うことが前提で予想していなかった」と話したが、今後は死因や治療の有無なども調べるよう指示するという。
 また、舛添氏は、新生児向けの止血剤などに使われた第8、第9因子の血液製剤についても、フィブリノゲンの納入医療機関と同じく、厚労省のホームページや新聞などで公表するという。

リタリン大量処方の診療所、医師法違反容疑で捜索 indexへ

 依存性の強い向精神薬「リタリン」を医師免許のない従業員に大量に処方させていた疑いが強まったとして、警視庁は16日午前、医師法違反(無資格医業)容疑で、東京都新宿区歌舞伎町1丁目の診療所「東京クリニック」と関係先の家宅捜索を始めた。同クリニックは、処方を巡る苦情が行政機関に殺到するなど、リタリン乱用問題の象徴的な医療機関。警視庁は、前院長で実質経営者とみられる男性医師(37)が違法行為を主導した疑いが強いとみて全容解明を進める。
 生活環境課などの調べでは、男性医師はリタリンなど薬の処方や患者への問診などの医療行為を医師免許のない看護師や事務職員にさせた疑い。男性医師は9月中旬に院長を退いている。
 リタリンを不適正に処方しているとの情報を受け、都と新宿区が9月中旬、クリニックを立ち入り調査。警視庁も内偵捜査していた。
 リタリンの処方をめぐっては、江戸川区の診療所「京成江戸川クリニック」(廃院)の元院長(67)が10月末、同法違反容疑で全国で初めて逮捕されている。

混合診療「全面解禁を」 規制改革会議、重点項目に indexへ

 政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)は15日、保険の利かない自由診療と保険診療を組み合わせた「混合診療」の全面解禁を、12月にまとめる第2次答申の重点項目に盛り込む方針を発表した。混合診療は現在一部が例外的に認められているが、厚生労働省は全面解禁には反対しており、年末にかけて議論になりそうだ。
 同会議の松井道夫主査(松井証券社長)はこの日の記者会見で、厚労省が混合診療を原則として禁止していることについて「患者の選択権の話に官が介入するのはおかしい」と批判した。
 松井氏はまた、東京地裁で今月7日に「混合診療の禁止に法的根拠はない」との判決が出たことをあげ、「国が控訴した場合、最重要課題として全面解禁に向けて論争する」とも述べた。
 同会議は15日、地裁で勝訴した原告男性らから聞き取りをした。今後は厚労省との公開討論会や医師らへのヒアリングを予定している。
 混合診療の解禁をめぐっては、規制改革会議の前身の規制改革・民間開放推進会議と厚労省が04年に対立。全面解禁は見送られ、例外的に混合診療を認める医療機関と医療技術を拡大することになった。その後、薬事法の認可要件が新たに加わり、同会議側は「規制改革の効果が限定的になっている」と主張する。
 一方、厚労省は「安全性が確保できていない医療の誘いに患者が乗りやすくなる危険性がある。必要な医療は保険制度の下でしっかり提供していく」(医療課)として、全面解禁には反対する姿勢を崩していない。

医療機関の8割、労働法違反 ずさんな労務管理浮き彫り indexへ

 厚生労働省が06年に立ち入り検査した病院など1575医療機関のうち、81.5%の1283カ所で、不正な長時間労働やサービス残業などの労働法違反があったとして文書指導していたことが14日、わかった。指導した割合を示す指導率は前年より4ポイント悪化。全業種平均の67.4%を大きく上回っており、医療現場のずさんな労務管理が浮き彫りになった。
 違反の内訳は、違法な長時間労働をさせていた労働基準法違反が802件で最多。指導率も前年より1.7ポイント悪化し、50.9%に上った。
 このほか、残業代の不払いが559件、就業規則の不整備が482件、必要な労働条件を明示しない違反が334件あった。いずれも指導率が前年より上昇している。

混合診療、厚労省が規制通達 政府の拡大方針に逆行 indexへ

 保険の利かない自由診療と保険診療を組み合わせた「混合診療」について、厚生労働省が例外的に対象としてきた101の医療技術のうち18を今後は認めないとする通達を出していたことが分かった。通達は政府が04年12月に混合診療を認める医療機関と医療技術の範囲を拡大する決定をした約半年後に出されており、政府の規制改革会議は「決定に逆行する」と反発している。
 厚労省の通達は05年6月、保険局医療課長名で出された「先進医療に係る届出等の取扱いについて」。薬事法で承認されていない医療機器や医薬品を用いた医療技術については混合診療を認めない方針を各医療機関に伝えた。
 その後、06年10月に高度先進医療が先進医療に統合された結果、それまで高度先進医療として薬事法未承認ながら混合診療が認められていた乳がんの転移検査や内視鏡を使った甲状腺がん手術法など18技術が対象外となった。18技術は05年度で約450件の実施例がある。
 厚労省は08年3月末までの経過措置期間内に、対象となる機器や医薬品を薬事法で承認できるかどうか検討中。承認されなければ、08年4月以降は正式に対象外となり、規制改革の結果123まで増えた対象医療技術が減ることになる。
 厚労省によると、薬事法を根拠とした新たな規制は、04年の決定に従い、混合診療の対象範囲拡大の基準を決める際に浮上したという。同省医療課は「対象となる医療機関が増えるのだから、対象となる医療技術はより慎重に選定すべきだ」と説明する。ただ、規制改革会議の関係者は「混合診療の対象を広げようという政府決定後に新たな規制を持ち出して、対象を狭める行政に疑問を感じる」と話している。

輸血でC型肝炎感染の疑い 日赤の検査すり抜け? indexへ

 日本赤十字社は14日、50代の女性が輸血でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染した疑いがあることを明らかにした。ウイルスが微量で、輸血前の検査をすり抜けた恐れが高い。輸血によるC型肝炎感染が疑われる事例は昨年2月以来。
 同日開いた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の血液事業部会に報告された。女性は「再生不良性貧血」で、今年6月から9月にかけ計54本の輸血を受け、8月と10月の検査でHCV陽性の反応が出た。8月には一時的に肝機能が低下し、急性肝炎の症状が出たという。
 日赤が再度、献血者54人の保存血液を検査したところ、1人の血液でHCVの陽性反応が出た。感染直後などウイルスが微量の時に献血していれば、わずかに検査をすり抜ける恐れがある。日赤は04年に検査精度を高めたが、その後も2回、感染疑い事例があった。

薬害肝炎、すでに11人死亡 田辺三菱が追跡調査 indexへ

 血液製剤フィブリノゲンでC型肝炎に感染した疑いがある患者リストが放置されていた問題で、製造販売元である田辺三菱製薬(大阪市)がリストの418人を追跡調査したところ、11人がすでに死亡していたことが14日、わかった。また、医療機関を通じて血液製剤の投与事実を告知した患者50人のうち、治療を確認できたのは半数にとどまり、25人は今回の告知まで治療の機会を与えられなかった可能性があることも判明した。
 同社によると、追跡調査で222人の患者を特定できたものの、11人は死亡が確認されたほか、19人は転居などで連絡がつかないという。
 一方、告知した50人のうち「治療中」は15人、「治療済み」は10人だった。残る25人については治療記録が確認できず、今回初めて投与事実を知らされた可能性がある。
 舛添厚生労働相は14日朝、記者団に「医者が当時どういう診断をしたのか、全体像をつかむ必要がある」と話し、省内の調査チームを通じて投与時の医師の製剤についての認識や患者への説明内容を検証する考えを示した。
 リストの418人について、同社は当時血液製剤を投与し、現在も開業している223医療機関を通じて調査している。特定できた222人への告知を進めていく中で、初めて告知を受ける患者は今後増える可能性があるが、死亡については「それほど増えないのではないか」とみている。

全盲患者を公園に置き去り 退院拒まれ、堺の病院職員 indexへ

 堺市北区の新金岡豊川総合病院(豊川元邦院長)で今年9月、職員が糖尿病で入院していた全盲の男性患者(63)を連れ出し、大阪市西成区の公園に置き去りにしていたことが13日、分かった。男性は直後に救急隊に保護され無事だった。同病院は「職員が独断でやったが、とんでもない行為で大変申し訳ない」と謝罪している。大阪府警西成署は、保護責任者遺棄の疑いで同病院を家宅捜索してカルテなどを押収し、病院関係者から事情を聴いている。
 同署の調べによると、9月21日午後1時ごろ、同病院の30〜40代の事務職員4人が、男性患者を病院から車で連れ出した。大阪市住吉区に住む男性の前妻に引き取りを求めたが断られ、西成区内の公園で男性を降ろして置き去りにした疑い。
 職員の1人が午後2時23分ごろに匿名で「60代の男性が倒れている。目が見えないようだ」と119番通報。職員たちは救急車が近づくのを確認して公園を立ち去ったという。男性は同区内の病院に搬送され、現在は市内の別の病院に入院している。
 新金岡豊川総合病院などの説明によると、男性は約7年前から糖尿病の治療のため入院し、病気の影響で両目を失明した。病院側は入院治療の必要はないと判断して再三退院するよう説得。障害者施設を紹介したが、応じなかったという。
 職員の1人は西成署の調べに対し、「病院に連れて帰っても同じことの繰り返しになると思った。公園の近くに病院があったので、ここなら何とかなると思った」などと話しているという。
 堺市は10月30日、病院管理者が職員の監督義務を怠ったのは医療法違反にあたるとして院長に行政指導するとともに、改善報告の提出を求めた。

患者222人特定、50人に告知 薬害肝炎で田辺三菱 indexへ

 血液製剤フィブリノゲンで薬害C型肝炎に感染した疑いのある患者418人のリストが放置されていた問題で、血液製剤の製造販売元である田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)が418人のうち222人を特定し、50人に血液製剤を投与した事実を告知したと、厚生労働省は13日発表した。一方で、特定しながら死亡や住所が分からないなどで告知できない患者が少なくとも30人おり、国と製薬会社の対応の遅れで告知の機会を逸した患者も少なくないとみられる。
 同社によると、418人に血液製剤を投与したのは243医療機関。開院が確認された223医療機関を通じ、カルテの照合などをしたところ、同社が実名を把握していた197人のうち118人、イニシャルで把握していた170人のうち89人、名前の記載がなかった51人のうち15人を特定できたという。特定した222人のうち44人は医療機関で治療中か治療済みという。
 50人に対しては、今月9日までに医療機関を通じて血液製剤投与の事実を伝え、受診を勧めた。
 一方、「検査や治療費用負担が明確にならないと調査は難しい」などの理由で、同社の調査への協力に慎重な医療機関も5カ所あるという。
 同社は02年に患者リストを厚労省に提出したが、患者本人には知らせないまま5年間放置していた。

医療法人の特養設置 認める方針撤回 厚労省 indexへ

 厚生労働省は12日、特別養護老人ホーム(特養)の設立を医療法人にも認める方針を撤回することを決めた。慢性疾患を抱えるお年寄りが長期入院する療養病床の削減に伴い、医療法人による特養設置を受け皿のひとつと考えていたが、社会福祉法人などの関係団体の反対が強く、断念することになった。
 12日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で撤回方針が示された。こうした措置を盛り込んだ老人福祉法改正案の来年の通常国会への提出も見送る。
 現在、特養を設置できるのは、自治体や社会福祉法人などに限定されているが、厚労省は今年6月、医療法人による設置解禁を打ち出した。同省は12年度末までに、36万床ある療養病床を15万床超にまで削減し、介護施設に転換する計画を進めており、医療法人の特養を転換先のひとつと位置づけていた。
 だが、社会福祉法人などが「社会福祉事業の根幹にかかわり、十分な協議なしに決定するのは問題」と反発していた。
 同省は医療法人が社会福祉法人を設立して特養を運営する現行で認められている手続きを迅速化し、対応したいとしている。

タミフル服用後の飛び降り、新たに2人判明 計29人に indexへ

 厚生労働省は11日、インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用後、高所などから飛び降りた異常行動が新たに2人判明したと明らかにした。飛び降り事例の報告は計29人で10代が8割を占める。厚労省は、異常行動とタミフルの因果関係の調査を進めており、12月中旬までに結論を出す。
 同日の薬事・食品衛生審議会の安全対策調査会で報告された。飛び降りたのは10歳未満と10代の男子。いずれも昨年で、けがはなかったという。
 同省は今年3月、異常行動の続発を受けて10代のタミフル使用自粛を呼びかける緊急安全性情報を出し、インフルエンザ患者1万人余の症例調査などを進めている。今季のインフルエンザが出始めていることから、調査会では「医療現場は戸惑っている」と調査の遅れを指摘する意見が出た。

骨髄バンク ドナー3688人分欠落 90人に可能性 indexへ

 日本赤十字社などは、骨髄バンクのドナー(提供者)のデータ管理ミスで、今年10月までの約11カ月間、ドナー3688人分のデータが骨髄移植を待つ患者と適合させるシステムから消えていたと、9日発表した。ミスがなければ90人の患者に適合していた可能性があったという。
 骨髄移植推進財団によると、この90人のうち68人は管理ミスのあった11カ月間に、患者登録が取り消された。内訳は死亡46人、容態悪化9人、治療方針変更7人など。適合から移植まで最短でも70日程度かかる事情があるなか、多くの患者の登録が2カ月以内に取り消されたことや、他にも該当ドナーがいたことから、財団は「影響は少なかった」とみている。
 現在も患者登録されている22人のうち、13人はドナーが見つかったが、いずれも移植には至っていない。さらに、他の6人は欠落していたドナーらと移植に向けた準備を進めるという。
 日赤によると、ミスがあったのは、学業や海外出張などでドナー登録を保留した人を解除するデータベース。保留の期限になると自動的に解除されるシステムだったが、処理の上限は1日約800件の設定だった。昨年11月末以降、バンクの登録者増でデータ処理が追いつかず、解除すべきだった約1万人のうち3688人分が保留のままだった。10月16日、業者がシステムを点検して欠落を発見した。
 日赤中央血液研究所の田所憲治所長は会見で「移植を待つ患者の皆様やドナーの方に多大なご迷惑をおかけした。深くおわびする」と謝罪した。

混合診療、「禁止」は法的根拠なし 東京地裁判決 indexへ

 患者に公的保険が適用される保険診療と、保険が適用されない自由診療を併せて受ける「混合診療」を原則禁じた国の政策が合法かどうかが争われた訴訟の判決で、東京地裁(定塚誠裁判長)は7日、「混合診療の禁止に法的根拠はない」との判断を示した。国は患者が混合診療を受けた場合、「一体化した医療行為」とみて保険適用分の診療費も自己負担としているが、地裁は保険適用分は給付を受ける権利があるとした。
 混合診療については「医師と患者に治療の選択を任せるべきだ」との意見と、「安全を保証できない治療まで行われる」などの反対論がある。そもそも国の禁止措置に法的根拠がないとする判断は、こうした議論の前提を揺るがすことになり波紋を広げそうだ。
 訴えていたのは、神奈川県藤沢市の清郷伸人さん(60)。がん治療のため、保険が適用されるインターフェロン療法に加え、適用外の療法を受診。全額負担を求められることから、国の政策は健康保険法に違反すると主張し、インターフェロン分は受給の権利があることの確認を求めた。
 判決は同法の規定について「個別の診療行為ごとに給付対象かどうか判断する仕組みを採用している」と判断。「国が複数の行為を一体とみて、混合診療を受けると給付対象分も給付が受けられないと解釈する根拠は見いだし難い」と述べた。
 国側は、高度な先進医療などで混合診療を例外的に認める制度で給付対象が限定されていることから、それ以外は給付対象にならないとも主張した。判決は、制度上の給付対象が「給付に値する組み合わせを全体的、網羅的に見て拾い上げたものではない」として国の主張の正当性を否定。保険診療分については給付を受ける権利が清郷さんにあると結論づけた。
 厚生労働省保険局長の談話 極めて厳しい判決だ。今後の対応は関係機関と協議の上、速やかに決定したい。

薬害肝炎、初の和解勧告 骨子案を12月提示 大阪高裁 indexへ

 出産時の止血用で血液製剤を投与された後にC型肝炎になった患者らが、国と製薬会社に賠償を求めている「薬害C型肝炎訴訟」のうち、大阪訴訟の控訴審第7回口頭弁論が7日午後、大阪高裁で開かれ、横田勝年裁判長が原告、被告双方に和解を勧告した。一連の集団訴訟で初めて。福田首相が「政府の責任」に言及し、舛添厚労相も今月中に和解を成立させたい意向を示しており、提訴から5年をへて全面解決へ一歩を踏み出した。
 横田裁判長は和解勧告の理由について、国と製薬会社が和解の意向を示したことに触れ、「和解成立の可能性があると判断した」と述べた。さらに、和解方針にあたる所見の提示は「時期尚早」として、和解骨子案を12月7日ごろまでに示したい考えを明らかにした。
 高裁は9月14日の前回弁論で、和解による早期解決を提案し、少しでもまとまる可能性があれば和解勧告する方針を示した。先月15日、原告が国側の「法的責任と謝罪」などを求めて和解案を提出し、国も和解に前向きな意見を伝えた。被告企業の田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)と子会社ベネシスも同31日に和解協議に応じると回答したため、高裁は和解勧告の方針を固めていた。
 原告側が高裁に示している非公開の和解案には、謝罪のほかに全原告への補償、原告以外の患者も含めた恒久対策が全国の原告弁護団の総意で盛り込まれているとみられる。しかし、国の過失責任をめぐっては大阪、福岡、東京、名古屋の4地裁判決で認定時期が分かれ、仙台地裁判決は国の責任を認めなかった。国は時期を限定して法的責任を認める意向を大阪高裁に伝えたとされ、投与時期が異なる原告全員の補償には難色を示す可能性もある。
 一連の集団訴訟は02年10月以降、原告が5地裁に相次ぎ提訴。現在、患者171人が5高裁・4地裁で裁判を続けている。大阪訴訟の控訴審では、20〜50代の男女13人が国と製薬2社に総額7億5900万円の損害賠償を求めている。
 福田首相は先月末、「政府に責任がないとはいえない」と語り、舛添厚労相に和解協議への対応を指示。舛添氏も「謝罪すべきは謝罪し、補償すべきは補償する」と述べ、今月中の和解成立をめざす考えを示していた。

新たに原告11人特定 薬害肝炎問題「418人リスト」 indexへ

 厚生労働省と製薬会社が血液製剤フィブリノゲンの投与後にC型肝炎になった患者を把握しながら放置していた問題で、国と被告企業の田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)側は感染患者「418人リスト」の中から全国の薬害C型肝炎訴訟の原告11人を特定し、5日付で通知した。原告弁護団が6日、明らかにした。国・企業側は11人のうち1人への投与事実を裁判で否認してきた。原告らは「なぜもっと早く知らせなかったのか」と憤りを新たにしている。
 これまで国と企業側は、リスト発覚の引き金になった大阪訴訟の「原告16番」の40代女性をリスト該当者と認めていた。新たに特定された原告11人の内訳は東京6人、福岡2人、大阪、名古屋、仙台各1人。
 名古屋訴訟原告の40代女性について国と企業側は、カルテが残っていないことを理由に裁判で投与事実を争ってきた。女性は86年11月、出産時にフィブリノゲンを投与されて感染。担当医師が投与を記憶していて証明書を作成してくれたため裁判に参加できたという。
 女性は「感染で苦しむ私たちに対し、とても不誠実。もっと早くリストを公表していれば、早く治療でき、症状を重くする人も少なかった。時間を返して欲しい」とのコメントを出した。
 特定された1人で九州訴訟原告の出田妙子さん(49)について企業側は、87年7月に感染情報を入手していたという。6日夕に厚生労働省で会見した出田さんは「20年間も事実が隠されていた。情報を放置されたことは、感染と同じくらい傷ついています」と怒りをあらわにした。
 大阪訴訟弁護団事務局長の山西美明弁護士は大阪市内で会見、「国は原告以外についても追跡調査を実施するべきだ」と話した。
 また厚労省は特定を受け、名古屋訴訟原告の女性について裁判上でも投与の事実を認める方向で準備を始めた。

肝炎検査を無料化 09年3月まで限定 厚労相方針 indexへ

 舛添厚生労働相は6日の閣議後の会見で、ウイルス性肝炎の検査を期間限定で完全無料化する考えを明らかにした。現在、一部の自治体を除いて保健所で検査を受けると無料だが、医療機関での検査は大半の自治体で有料だ。ウイルス性肝炎は自覚症状のない感染者が300万人程度いるとされており、検査による感染の早期発見を促す狙いとみられる。
 舛添氏によると、今年度の補正予算に計上できれば来年初めにも検査を無料化し、09年3月末までの時限措置にするという。「25億円ぐらいかかる」との試算も示したが、予算措置については「財務省や総務省と相談したい」と述べた。
 厚労省は06年度から、保健所の検査は年齢を問わず無料化したが、医療機関での検査も無料化しているのは東京都や福岡県など一部自治体だけ。
 一方、政府・与党はウイルス性肝炎の「インターフェロン治療」の助成を来年度から始める方針。舛添氏は「無料化は検診を早める効果があり、インターフェロンなどの対処につなげられる」と強調した。

中外製薬、タミフル供給計画を半減 600万人分に indexへ

 中外製薬は5日、インフルエンザ治療薬「タミフル」のこの冬の供給計画を昨シーズンの半分の600万人分にしたと発表した。厚生労働省が10歳代の患者への投与を控えるよう警告したため、それ以外の年齢層でも処方が減っている。ただ、インフルエンザの流行で不足しないように追加の供給体制も検討する方針だ。
 タミフルはインフルエンザ患者の約9割に処方されているといわれる。02年冬にインフルエンザが流行した際、タミフルが不足した。このため、04年冬から毎シーズン、1200万人分の供給体制を続けてきた。
 今回、半分にしたのは、厚労省の警告で投与を控えている10歳代の患者がインフルエンザ患者全体の約2割を占めるほか、全体でも処方が減っているため。

開業医の診察料分減額 夜間は増やす 厚労省検討 indexへ

 厚生労働省は2日、開業医の診療報酬について、夜間診察を手厚くする一方で、その財源捻出(ねんしゅつ)のために初診・再診料を引き下げる方向で検討に入った。夜間の救急医療で開業医が一定の役割を担うよう促すことで、病院勤務医が診る救急患者数を減らし、負担軽減するのが狙い。ただ、日本医師会は反発しており、調整は難航しそうだ。
 08年度の診療報酬改定について議論する中央社会保険医療協議会(中医協)に提案した。
 病院の勤務医の過酷な労働条件が、医師の病院離れや地方病院での医師不足の原因との指摘があり、08年度改定でも勤務医の負担軽減は主要な課題の一つだ。
 厚労省の調べでは、午後6時以降に開業している診療所が多い地域では、救急医療で病院が受け入れる患者の数が比較的少ない。このため、夜間開業の報酬を手厚くすることで夜間対応の診療所の数が増えれば、その分、病院の勤務医の負担も軽減されると厚労省はみている。
 ただ、社会保障費の抑制傾向の中で新たな財源確保は難しいことから、開業医の初診・再診料を引き下げることで、財源に充てるとした。
 来年4月にスタートする75歳以上の後期高齢者向け医療では、再診料を引き下げ、その分を、患者を総合的、継続的に診る「主治医」への報酬などに充てる考えを示した。

鳥インフル、強制入院可能に 厚労省が感染症法改正へ indexへ

 新型インフルエンザへの変異が懸念される鳥インフルエンザ(H5N1型)について、厚生労働省は2日、感染症法を改正して「2類感染症」に規定する方針を決めた。感染者が出た場合、強制入院や就業制限など拡大防止策がとれる法的位置づけとなる。次期通常国会に提案する。
 H5N1型は国内では人への感染例がないため、通常は強制入院などの措置はとれない。同省は昨年6月から政令で2類に準じた扱いとしたが、来年6月に失効する予定だった。H5N1型は世界的に鳥から人への感染例が増えており、致死率も高い。

7千医療機関公表 まずネットから 肝炎問題で厚労省 indexへ

 舛添厚生労働相は2日、横浜市内のパーティーで、薬害C型肝炎訴訟について「謝罪すべきは謝罪し、補償すべきは補償する」と述べた上で、11月中に和解を成立させたいとの意向を示した。「国の責任を述べた福田首相の命に従えない役人はただちに辞表を出してほしい」とも話した。
 同訴訟では、7日にも大阪高裁で和解勧告が出る見通し。原告側は国が責任を認めて謝罪し、全員に賠償金を支払うよう求めている。福田首相は「政府に責任がないわけではない」と発言したが、政府内には原告の主張に沿った和解に難色を示す声も根強い。
 こうした事情を踏まえ、舛添氏は「いろんなところに抵抗勢力がいる」と語気を強めた。
 一方、血液製剤が納入された約7000の医療機関名を新聞などで再公表するとしていた方針について舛添氏は、2日の衆院厚生労働委員会で、新聞広告の掲載には競争入札が必要で2カ月かかることを理由に「やらないとはいっていないが、できることからやる」とトーンダウン。インターネットですでに公開している医療機関名の活用を優先させる考えを示した。

高裁、和解勧告の方針 薬害肝炎 田辺三菱、応じる意向 indexへ

 血液製剤を投与された後にC型肝炎になった患者が国と製薬会社に損害賠償を求めている薬害C型肝炎集団訴訟の大阪訴訟控訴審で、大阪高裁(横田勝年裁判長)は和解勧告を出す方針を固め、7日の口頭弁論で表明する見通しだ。被告企業の田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)と子会社ベネシスから10月31日に和解協議に応じる意向が伝えられ、すでに和解の意思を示していた国と原告患者側の足並みがそろったのを受け、和解成立の可能性が強まったと判断したとみられる。
 国と製薬会社の責任や謝罪、賠償額など具体的な内容を決める和解協議に向け、高裁が国側の責任などに踏み込んだ「所見」を示すかが注目される。大阪高裁で和解協議が進めば、他の4高裁・4地裁で係争中の裁判も同調するとみられ、02年の集団提訴から5年をへて全面解決へ動き出す可能性が高まった。
 大阪高裁の横田裁判長は9月14日の口頭弁論で、当事者双方に和解による早期解決を提案。少しでもまとまる可能性があれば和解勧告する方針を示した。これを受けて10月15日、原告は和解案を提出し、国も和解に前向きな意見を伝えていた。田辺三菱側は合併で発足後間もないことを理由に態度を保留していたが、同31日に「和解についての基本的な考え方を伝えた」(同社広報部)という。

姉の凍結卵巣組織、がん治療で機能を失った妹に移植 indexへ

 がんの治療で卵巣の機能を失った妹に、凍結した姉の卵巣組織を移植する手術が、米ミズーリ州で29日(日本時間同日深夜)、日米のグループによって行われた。成功すれば、一卵性ではない姉妹間では初のケースになるといい、新しい不妊治療などに道を開く可能性がある。
 凍結していた卵巣組織を解かす作業を加藤レディスクリニック(東京都)の香川則子研究員が、組織の移植を現地のシャーマン・シルバー博士らが担当し、手術は無事終わった。
 提供を受けたのは、悪性リンパ腫だった30歳の米国人女性で、骨髄移植に伴う放射線治療などで卵巣機能を失った。提供者は1歳年上の姉で、骨髄も提供した。
 姉は今年2月、二つある卵巣のうち一つを妹に提供したが、つないだ血管を血液がうまく流れなかった。このとき取り出した卵巣の表面の一部を凍結保存し、今回、移植した。卵巣組織は凍結保存は難しいものの移植は比較的やさしく、体にくっつけば3〜6年の間、生殖機能の復活が期待できるという。子どもが生まれると、遺伝的には姉の子となる。
 がんの治療後も出産の可能性を残す目的で、日本では卵子の凍結が試みられている。ただ、技術が難しく、採取できる卵子の数も限られるため、国内では慶応大や岡山大などが、がん患者の卵巣凍結を計画中だ。
 卵巣が機能を失ってホルモン環境が変わると、動脈硬化や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などのリスクが上がるとされる。米国では、健康な女性が卵巣組織をあらかじめ凍結保存し、閉経が迫るころに自身に戻して閉経を先延ばしする「卵巣バンク」の手法としても注目されている。

C型肝炎 危険性認識「90年以降」 産婦人科医会 indexへ

 血液製剤フィブリノゲンなどによるC型肝炎感染問題について厚生労働省は02年、日本産婦人科医会から「80年代まで、C型肝炎はやがておさまる程度の肝炎と考えられていた」と報告を受けていたことがわかった。投与者の多い80年代に、産科医らがC型肝炎を肝がんなどに進行する危険な病気と認識していなかった恐れを強く示すものだが、同省は感染が疑われる418人のリストを製薬会社から得た後も、患者らに改めて告知していなかった。その理由を「医師が説明したはず」としてきた同省見解の根拠が、揺らぎかねない問題となりそうだ。
 厚労省は02年、国と製薬会社の法的責任を問う声が強まったことを受けて調査。製剤の効能や副作用について医師の認識を調べるため、同医会などに意見を求めた。当時は、C型肝炎ウイルスに感染すると肝硬変や肝がんに進行する可能性が明らかになっていた。
 同医会は同6月に提出した文書で、「80年代までは一過性の肝障害と考えられていた」と説明。C型肝炎ウイルスが特定され、検査が始まった後の「90年以降」に危険性を認識したとした。
 フィブリノゲンが使われたのは主に80年代まで。02年7月に製薬会社から提出されたリストで投与時期が判明している368人でみると、89年までの投与が9割。出産時の出血で止血剤として使われた例が多く、産婦人科医の間に認識がなければ、患者にも知らせなかった可能性が高い。
 厚労省の調査チームはリスト提出を受けた翌月、80年代に投与された人に病気の深刻さを改めて通知するなどの対応をとらないまま、解散。リストは今年10月まで5年間、放置された。
 02年当時に同省医薬局長だった宮島彰・医薬品医療機器総合機構理事長は、今月22日の取材に対し「患者には医師から副作用情報が伝えられ、必要な治療を受けていたと認識していた」と患者に連絡する意識はなかったと話した。
 一方、薬害C型肝炎訴訟の原告団の多くは「医師から正しい説明を受けていない」と証言。大阪弁護団の山西美明事務局長は「救えた患者がいたはずだ」と批判する。

総合周産期母子医療センターの6割が新生児搬送断る経験 indexへ

 リスクが高い新生児と妊婦に24時間態勢で対応する各地の「総合周産期母子医療センター」を対象に厚生労働省が実施した実態調査で、回答施設のうち6割が、05年度中に地域の病院などから新生児の搬送を受けられなかった経験のあることがわかった。新生児集中治療室(NICU)の不足が、理由の9割を占めた。
 奈良県で30代の妊婦が19病院から搬送を断られた末に死亡した問題などを受け、厚労省が今年1月に実施。当時、39都道府県に58施設あった総合周産期母子医療センターから回答があった。
 新生児の搬送依頼については41施設が回答。うち61%にあたる25施設が搬送を断ったことがあるとした。その理由(複数回答)は「NICU満床」が90%と最も多く、「(他の患者への処置などにより)診察可能な医師不在」が10%など。
 母親の搬送については42施設が回答。うち74%にあたる31施設が拒否したことがあるといい、理由(同)は「NICU満床」が88%、「母体・胎児集中治療室(MFICU)満床」48%、「診察可能な医師の不在」16%だった。
 NICU利用率は53施設が回答し、9割の49施設が「80%超」。うち6施設は「100%超」で、大半の施設が常にNICU不足に陥っていた。

再発の仕組みを解明 成人の急性骨髄性白血病 理研など indexへ

 大人の急性骨髄性白血病の再発は、急激に増殖する白血病細胞そのものではなく、白血病細胞のもとになる白血病幹細胞がカギを握っているらしいことが、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター(横浜市)と九州大病院、虎の門病院などの共同研究でわかった。新たな治療戦略を立てるのに役立ちそうだ。米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジーに発表した。
 急性骨髄性白血病は成人10万人に約3人が発症し、白血病の中では発症率が高く根治が難しい。
 研究チームは、ヒトの白血病を再現するマウスを作り、白血病細胞と白血病幹細胞について、抗がん剤の効き目や発症能力などを調べた。
 その結果、白血病細胞は増殖能力が高いが抗がん剤がよく効いた。一方、幹細胞は増え方はゆっくりだが抗がん剤はあまり効かなかった。このため、抗がん剤で治療をしても、幹細胞が残って再発の原因になっていることが考えられた。
 幹細胞に抗がん剤が効かないのは、これまでの抗がん剤が増殖能力が高い細胞を標的にしていることが裏目に出ているためらしい。
 理研の石川文彦ユニットリーダーは「再発防止では急激に増える白血病細胞をたたくとともに、増殖速度が正常細胞に近い白血病幹細胞もたたく必要がある。それができる分子標的薬の開発につなげたい」としている。

更新遅れ利用進まず 救急時の病院検索システム indexへ

 救急時の患者や妊婦をどの医療機関が受け入れられるか、随時検索できる都道府県の医療情報システムが、情報更新の遅れなどで各地で十分に機能していないことが、総務省行政評価局の調べでわかった。妊婦の救急搬送が遅くなったケースが06年に全国で1000件超あったことが総務省消防庁の調べでわかったが、システムの情報が実際の受け入れ状況を反映していないこともその一因になっているとみられる。
 このシステムは、病院や関係機関をネットワークで結び、病院が空床状況などを随時入力。消防機関は救急搬送時に閲覧し、受け入れ先を探す。広く一般の救急患者を対象とした「救急医療情報システム」と、妊婦と新生児を対象にした「周産期医療情報システム」があり、ともに厚生労働省が補助金を出して都道府県が運用している。
 総務省は05年12月〜今年9月、救急、周産期両システムの運営や関連事業についてそれぞれ8、14都道府県を抽出して調査。北海道と宮城県で更新遅れが見つかった。
 宮城県は医療機関に1日2回、救急システムへの入力を求めているが、同省が聞き取った3医療機関のうち2機関は「あまり入力していない」と回答。「入力用の端末が1台しかなく、設置してある部屋まで出向いて入力するのが面倒」などと理由を挙げた。うち1機関は05年7月からの半年間、入力作業をしていなかった。
 消防機関側も、調査した7消防本部すべてが「ほとんど利用していない」と答えた。同県は周産期システムも、空床情報が閲覧できる医療機関が仙台市周辺の9カ所にとどまっていた。
 北海道の周産期システムでは、道が救急時の受け入れ先として定めている計35機関に少なくとも毎日、入力を求めている。だが、産科について入力した日数は、02年度は全機関の平均で3日に1日、04年度は4日に1日の割合になっていた。
 総務省は9月、厚労省に改善を勧告。北海道は、現在約10ある入力項目の簡素化などを検討している。宮城県はすでにこれまで電話網でつないでいた救急システムをインターネット利用に転換するなどの改善を進めており、担当者は「周産期システムについてもさらに参加を呼びかけたい」と話す。
 8月末に奈良県で起きた妊婦の搬送遅れでは、11医療機関のうち10機関が救急システムで「受け入れ不可」だったことなどから県外に搬送することになった。更新が1日2回で、周産期システムには消防機関が参加していなかったことから、県は「さらに即時性や両システムの連携が必要」と見直しを進めている。

C型肝炎、7000病院で再調査へ 田辺三菱製薬 indexへ

 田辺三菱製薬は、血液製剤フィブリノゲンを納めた全国約7000の医療機関に対し、C型肝炎ウイルスに感染した事例がないかなどの再調査を、週明けにも始めることを明らかにした。国や同社の前身の三菱ウェルファーマが、感染可能性のある患者を把握しながら告知していなかったことが問題になっているが、再調査で発症例などが増える可能性もある。
 C型肝炎ウイルスに汚染されたフィブリノゲンが納入された可能性のある医療機関は、80年以降だけでも6916にのぼる。約28万人の患者に投与され、約1万人が感染したと見られる。これら全機関の医師らを対象に、同社の医薬情報担当者らが、投与時期や、投与後の容体などを聞き取りし、新たな感染の有無を調べる。
 同社が02年に調査した時点では、418人の肝炎発症例が見つかり、厚生労働省に報告したものの、放置されていた。厚労省は約28万人全員を追跡調査する方針で、22日に葉山夏樹社長が舛添厚労相と面会した際、協力を約束した。

薬害肝炎 「実名資料知っていた」厚労省の複数職員 indexへ

 血液製剤による薬害肝炎問題で、厚生労働省は26日、同省の地下倉庫で19日夜に見つかったとされる肝炎患者の実名入り資料について、省内に存在していたことを複数の職員が以前から知っていたことを明らかにした。同省医薬食品局の中沢一隆総務課長が、民主党の「肝炎総合対策推進本部」(本部長・菅直人代表代行)の会合で説明した。
 舛添厚労相は16日の参院予算委員会で、患者本人に告知してこなかった国の責任を問われ、「国は個人名を特定できる情報を持っていない」と答弁。それを聞いた同省職員が「記憶と違う」と資料の存在を思い出し、19日に地下倉庫に入って探し出した。大臣答弁を書いたのは薬害肝炎訴訟を担当する別の職員で、資料の存在を知らなかったという。
 中沢氏は「情報の共有と伝達が行われなかった全くの初歩的ミス」と弁明。資料の存在を知っていた職員は「何人かいた」と説明したが、職員の特定、その職員がなぜ知っていたかについては「今後の調査に任せる」と明らかにしなかった。
 菅氏は「防衛省の給油量を取り違えた問題と全く同じ。知っている人はたくさんいるのに、あえて聞かずに責任逃れしている」と指摘。31日の衆院厚生労働委員会で、02年に製薬会社から資料を受け取った当時の担当職員らの責任を追及する方針だ。

病院収支が大幅悪化 収入1割減、赤字幅倍以上に indexへ

 厚生労働省は26日、病院や診療所の経営状況を示す医療経済実態調査の速報値を中央社会保健医療協議会(中医協)に示した。2年前の前回調査と比較して、個人経営の診療所は収支がやや改善する一方で、病院は収入が1割以上減り赤字幅は倍以上に膨らんでいるという結果だ。
 過去最大の下げ幅となった06年度の診療報酬改定が響いているのは確実で、病院の勤務医不足対策を重視する方針を打ち出している次期診療報酬改定の議論にも影響を与えそうだ。
 調査は今年6月、1687の病院と2541の診療所を対象とし、それぞれ約6割、約半数から回答を得た。
 国立、公立、私立を合わせた全病院の1施設当たりの収支をみると、1カ月の収入は2億3690万円で、前回よりも2890万円の減。支出も2190万円少なくなったが、赤字額は前回の617万円から1315万円に増えた。支出の内訳を見ると、給与費が前回よりも5.3%の減となっており、人件費を切りつめて経営を少しでも改善しようとしていることがうかがえる。
 病院の経営悪化が勤務医の労働条件を一層厳しくし、勤務医をやめて開業医となる医師を増やしているとの指摘がある。年末に大枠が決まる次期08年度の改定でこれ以上病院向けの診療報酬を引き下げると、病状の重い患者を担う急性期医療の現場が崩壊しかねないとの見方が医療現場や厚労省内では強い。
 一方、個人の一般診療所は、診療報酬のマイナス改定にかかわらず収入は2.2%増の月額670万円で、医師の収入となる黒字額も233万円と2.2%増えた。
 診療科別にみると、前回改定で重点的に診療報酬を手厚くした産婦人科の黒字幅は204万円と前回より4割以上増えたが、同じく重視したはずの小児科は175万円と3割以上減っている。

5患者の延命治療中止 千葉の救急センター、家族は同意 indexへ

 千葉県救急医療センター(千葉市美浜区)が、昨年秋から今年春にかけて、回復の見込みがなくなった救急患者5人に、家族の要望などで人工呼吸器を外すなど延命治療を中止していたことが26日わかった。
 センターが、終末期治療の実態を調査するため、昨年から今年にかけて死亡した患者のカルテなどを改めて調べたところ、脳卒中などで救急搬送された後、脳死状態と判定されるなど回復の見込みがなくなった患者計5人に、心臓停止の前に、人工呼吸器や人工心肺による延命治療が中止されていた。いずれも治療の中止は、家族の同意もあり、院内の指針に基づいて複数の医師らがチームで判断したという。
 救急現場での終末期医療をめぐっては今月15日、日本救急医学会が、患者本人の意思が明らかでなく、家族が判断できない場合、主治医を含む医療チームで判断するなど、延命治療を中止する際の手順を示したガイドライン(指針)を発表している。今回のケースは、センターの医療チームで判断し、カルテに記録するなど指針内容の範囲内で行われているとみられる。
 延命治療の中止をめぐっては昨年、富山県の射水市民病院で、末期がんの入院患者7人が、主治医の判断で人工呼吸器を外されていたことがわかり、富山県警が事情聴取を行った。家族の要望で延命治療を中止しても、医師が刑事責任を問われかねないケースがあることから、学会が指針作りに乗り出していた。

妊婦搬送遅れ1千件超 病院探し難航などで 消防庁 indexへ

 妊婦の救急搬送時、受け入れ先の病院探しが難航するなどし、救急車が現場を出発するまで30分以上かかり搬送が遅くなったケースが06年、全国で1000件を超えていることが総務省消防庁の調べでわかった。受け入れ拒否も年々増加する傾向で、妊婦の救急医療の危機が浮き彫りになった。
 奈良県の妊婦が8月末、11病院に受け入れを拒まれて死産した問題を受け、都道府県を通じて全国の消防本部に緊急実態調査した。
 救急車は現場に到着後、受け入れ先の病院が決まってから出発する。消防庁は出発まで30分以内を目標にしている。
 しかし、06年に産科や周産期の病院に救急搬送された計約3万9000人の搬送状況を調べたところ、出発まで30分以上かかったのが1012件。応急処置が長引いた場合もあるが、主には病院探しが難航したことが一因と消防庁はみている。首都圏や近畿が多く、うち奈良県のケースと同程度の90分以上は10都道府県で計21件あった。
 3回以上の受け入れ拒否は30都道府県で667件。うち10回以上は東京(30件)、千葉(6件)、大阪(4件)など7都道府県で計45件あった。
 どれくらいの割合で3回以上拒否されるかを調べたところ、04年0.9%、05年1.3%、06年1.9%と増加。拒否の理由は「人手や設備がなく処置困難」(26.6%)、「手術中」(17.2%)、「専門医が不在」(11.7%)などだった。
 厚生労働省の担当者は「妊婦は通常の救急医で対応しきれない場合が多く、特にかかりつけ医のいない場合は受け入れ先が見つかりにくい。実態をさらに調べたうえで、専門医の確保など改善策を検討していきたい」と話している。

病床利用率、70%下回れば削減も 公立病院改革 indexへ


 赤字経営の多い公立病院の経営改善を促すため、総務省が自治体に求める改革のガイドライン(指針)案がわかった。08年度中に改革プランを策定し、3年以内に黒字化を達成するよう求め、特に病床利用率が過去3年間連続で70%未満の病院には病床数削減や診療所(病床数20床未満)への転換など抜本的見直しを求める。病院経営に具体的な数値目標を示し、自治体財政の悪化に歯止めをかけるのが狙いだ。過疎地医療を担う地方の公立病院も病床利用率が低迷していれば、早期の経営改善を迫られる。

05年度の公立病院の病床利用率
全体の平均 80.5%(民間病院87.3%)
500床以上 86.1%
400床以上500床未満 82.2%
300床以上400床未満 80.7%
200床以上300床未満 75.6%
100床以上200床未満 76.2%
50床以上100床未満 72.5%
50床未満 67.9%

 7月に総務省が発足させた有識者による公立病院改革懇談会が来週中にもこの指針案を了承した後、同省が全国の自治体に通知する。
 指針案では、自治体は08年度中に公立病院改革プランを策定し、経営効率化は3年以内、病院の再編・ネットワーク化や経営形態の見直しは5年以内に実現するよう求める。経営効率化の指標には、経常収支比率▽医療サービスの提供による医業収支比率▽職員給与費や材料費の比率▽病床利用率、などを採用する。
 経営効率化では、一般会計からの繰り入れにより病院会計に財政支援をした後、経常黒字を達成できる水準をめどとするよう求める。同一地域に民間病院がある場合は、民間病院並みの効率性を達成する、としている。
 赤字経営でも特に厳しいケースとして「おおむね過去3年間連続して病床利用率が70%未満となった病院」を挙げ、自治体の改革プランで病床数削減や診療所化など抜本的な見直しを行うよう求めた。
 このほかに経営の透明度を高めるため、病院の財政状況を示す病院会計準則に従い、貸借対照表など民間と比較可能な財務情報を開示するよう要請。人事・予算の権限などを経営責任者に一本化し、経営感覚に富んだ人材の登用や施設整備費の抑制も求めている。
 病院の再編・ネットワーク化については、経営主体の統合をはかるべきだと指摘。経営形態の見直しでは、民間への譲渡や、民間企業に管理を委託する指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化などを選択肢とすべきだとしている。

薬害肝炎、全員調査へ 厚労相が治療負担の方針 indexへ

 舛添厚生労働相は24日、C型肝炎の原因となる血液製剤フィブリノゲンを投与された約28万人全員について追跡調査をして実態を把握し、検査や治療を呼びかける方針を明らかにした。その費用は「責任ある人たちが払うのは当然」と述べ、国と製薬会社が責任に応じて負担するとの考えを示した。薬害C型肝炎訴訟については、年内の和解に向けた決意を強く示した。
 同日開かれた衆院厚生労働委員会で、民主党の菅直人代表代行らの質問に答えた。
 菅氏は、厚労省が02年に旧三菱ウェルファーマ(現田辺三菱製薬)から血液製剤フィブリノゲン投与後の肝炎発症例418人分の報告を受けながら放置した問題を追及。418人の実態調査と告知を求め、さらに同薬を投与された約28万人全員(感染者は推計約1万人)を追跡して知らせるべきで、治療費は国と製薬会社が負担すべきだとした。
 舛添氏は「そういう形で実行したい」と調査や告知について答弁。委員会後、報道陣に費用負担には治療費も含むのかを問われ、「基本的にはそうだ」と述べた。
 薬害肝炎訴訟について舛添氏は「福田総理とも詰めて、きちんとした決断を政府全体で下す。極めて短期間に大きな決断を下せるよう全力を挙げる」と述べ、和解による全面解決を目指す決意を示した。責任や謝罪を含む和解を検討すべきだとの質問に対しては、「その決意で全力を挙げる」と応じた。
 厚労省の対応を検証する特別調査チームには外部の有識者を入れることも表明した。
 血液製剤を投与された人を追跡するには、患者情報を最も多く持つ医療機関の協力が不可欠。舛添氏は、報告命令の対象に医師らを含むよう薬事法改正を検討する考えも明らかにした。ただ、当時5年間だったカルテ保存期間を超えた事例が圧倒的とみられ、7000の医療機関の多くに資料がない恐れがある。
 一方、菅氏らは薬害肝炎をめぐる厚労省の対応をただすため、集中審議を要求するとともに、当時の医薬局長だった宮島彰・医薬品医療機器総合機構理事長らの参考人招致を求めた。

タミフルと異常行動、因果関係見られず 厚労省 indexへ

 インフルエンザ治療薬タミフルと服用後の異常行動の因果関係を調べるため、厚生労働省が設けた専門家による作業グループは24日、これまでに実施した動物実験など7種類の試験結果を公表し、「医学的に明確な因果関係は証明できなかった」とした。ただ最終的な結論は、さらに別の実験をしたうえで、今冬のインフルエンザシーズンまでに出すとしている。
 実験は、タミフル輸入販売元の中外製薬が実施。薬の効能以外の作用を脳に及ぼすかや、脳内にタミフルが大量に蓄積されないかなどをマウスなどで調べたが、いずれも異常行動につながるほどの影響は見られなかったという。

肝炎訴訟原告「治療機会奪われた」 薬害肝炎告知なし indexへ

 早く告知をしていたら、失わなくてもすんだ命があったはず――。血液製剤でC型肝炎に感染した患者のリストを持ちながら、本人に検査や治療を呼びかけてこなかった厚生労働省と製薬会社の姿勢に、薬害C型肝炎訴訟の原告は22日、怒りの声を上げた。一方の厚労省は今なお、個人情報の保護を理由に患者に関する情報開示をためらっている。
 「早期治療の機会を奪われたことは残念で仕方がありません」
 厚労省と製薬会社が持っていた、感染が疑われる「418人リスト」の1人とわかった大阪訴訟原告の40代女性はこの日、代理人を通じてこう語った。症状が悪化、先月半ばから肝硬変で入院中だ。
 86年の出産時、東海地方の産婦人科医院で、止血剤として旧ミドリ十字の血液製剤「フィブリノゲン」を投与され、急性肝炎を発症した。だが、弁護団によると、肝硬変や肝がんに進行する恐れについて、医師は何も言わなかった。女性は「峠を越えれば治る」と思っていたという。
 報道などで疑いを持ち、弁護団に相談したのは04年。製薬会社からは何の連絡もなかった。国は「証拠がない」と、投与事実すら認めてこなかった。
 「418人リスト」はフィブリノゲン投与後に急性肝炎などを発症した事例の一覧。厚労省が02年、ミドリ十字の事業を引き継いだ旧三菱ウェルファーマ(現田辺三菱製薬)から提出を受けて公表した。発症日や症状などだけで患者の個人情報はなかったが、女性は「102A」とされた症例が、自分と酷似していることに気づいて同社に情報開示を請求。同社側は先月、女性が「102A」だったと認めた。
 製薬会社が患者の個人情報を把握している事実が明らかになり、今回の問題の引き金になった。
 東京訴訟原告の浅倉美津子さん(56)は88年にフィブリノゲンを投与された。当時、医師からは「原因不明の肝炎」と言われ、血液製剤を使ったことも告げられなかった。弁護団に相談する02年まで「病気は自分のせい」と思い続けてきた。
 同社側はフィブリノゲンによるC型肝炎感染者を約1万人と推定するが、投与を証明する手がかりを得て原告になったのは170人余にとどまる。
 全国原告団の山口美智子代表(51)は22日の会見で訴えた。「今も感染を知らない人がたくさんいる。厚労省は事実にふたをしたかったのではないか。不作為どころか、悪意としか思えない」

送電線の磁界、国が規制へ WHO示した基準で 経産省 indexへ

 送電線のような電力設備の周りに生じる磁界の強さを、国が初めて規制することになった。経産相諮問機関の作業部会で23日、世界保健機関(WHO)の規制値の採用が了承された。年明けにも省令を改正する。
 WHOは6月、磁界が健康に悪影響を及ぼすのを避けるための規制値案を示した。総合資源エネルギー調査会・電力安全小委員会で議論し、WHO案の採用が決まった。既存施設は、電気事業者の過去の対策で規制値を満たしているという。
 一方、低周波の磁界を長く浴びると小児白血病になりやすい、との報告が国内外にある。WHOが「発がん性の証拠は不十分」としたのを受け、経産省も今回、長期的な影響を避けるための規制は見送る方針だ。
 ただ、幼稚園のように子どものいる施設の近くに電力設備を新設する場合、自主的に鉄塔を高くするなどして磁界の影響を抑えるよう電気事業者に求めていく。

新たにVRE保菌者4人判明 愛知・西尾市民病院 indexへ

 愛知県の西尾市民病院で、入院患者らがバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に感染していた問題で、新たに4人の保菌者がいることが明らかになった。この結果、発症者2人、保菌者は計39人になった。同病院は、保菌者が増え続けていることから、国立感染症研究所(東京都)の所長らを23日に招き、院内感染対策の検討会議を開く。
 新たな保菌者は、同病院が今月1日から本格的に始めた退院時の検査で見つかった。76〜95歳の女性4人で、3人は退院を取りやめ、1人は事実を伝えて了解した老人保健施設が受け入れた。同病院には、新たな3人を含めて7人の保菌者(18日現在)がおり、他の患者とは別の病室に入院している。
 同研究所には、すでに院内感染の経過やその後の対策などの詳細なデータを送っており、同病院は、入院患者や医療スタッフを対象にしたVRE検査の拡大などを含めて指導を仰ぐ。

厚労省「製薬会社が患者把握」と前から認識 薬害肝炎 indexへ

 旧三菱ウェルファーマ(現田辺三菱製薬)が、血液製剤でC型肝炎に感染した可能性がある患者を把握しながら本人に知らせていなかった問題で、厚生労働省は18日、同社が患者の個人情報を把握している可能性を02年時点で認識していた、と明らかにした。厚労省は同社に対し、患者の情報や投与した医療機関名の報告を求めておらず、舛添厚労相は「当時の対応は不十分だった」と認めている。
 同日の民主党の会合で厚労省幹部が明らかにした。
 同社は厚労省の命令を受けて、02年に血液製剤フィブリノゲンを投与した後に肝炎を発症した例を調べ、投与時期などを記した418人のリストを厚労省に報告したが、個人情報や医療機関名は明かさなかった。厚労省も追加報告を求めたり、患者への告知を指示したりする、などの対応を取らなかった。
 しかし、同省によると、同社が医療機関から副作用情報を収集した際の書類には「住所」「氏名」欄があり、個人情報を把握している可能性が高いと、当時の厚労省も認識していたという。
 薬害C型肝炎訴訟の原告には、投与の事実を告知されないまま肝硬変に進行した女性もいる。
 元厚相の菅直人・民主党代表代行は会合で「薬害エイズと同じで、隠していたのではないか」と厚労省を強く批判した。

リタリン、うつ病の効能削除 厚労省 indexへ

 厚生労働省は17日、薬物依存が問題になっている向精神薬「リタリン」について、うつ病に対する効能を削除することを決めた。効能を睡眠障害の「ナルコレプシー」に限定。来年1月にも、処方できる医師や薬局を登録制にするなど厳しい流通規制を始め、医師の安易な処方に歯止めをかける。
 製造販売元のノバルティスファーマが同日、うつ病の効能削除を申請し、同省の薬事・食品衛生審議会の部会で承認された。ただ、「末期がん患者のうつ症状改善にはリタリンが必要」とする意見を受け、医師の管理下で行う治験に限って末期がん患者に処方できる方法を残した。
 同社は専門医や医療機関のリストを作成。薬局は処方する時にリストの確認を求める。
 また部会は、リタリンと同じ成分を含む「コンサータ」を、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬として発売を認めた。リタリンと同様の厳しい流通規制をする。

後発医薬品の処方、医師許可なく銘柄変更 厚労省が提案 indexへ

 価格の安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進をめぐる問題で、厚生労働省は17日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、医師が処方箋(しょほうせん)で指定した銘柄の後発医薬品の在庫が薬局にない場合、薬剤師の判断で医師の許可なく同じ有効成分の別の後発品への変更を認めることなどを柱とする案を提案した。診療側の委員は「医師が処方する薬を決める権利を侵害しかねない」と反発しており、調整は難航しそうだ。
 後発品の中には、流通量の少ない銘柄がある。厚労省の提案は、医師がこうした銘柄を指定しても、薬局が対応しきれなかったり、在庫のある特定の薬局に患者を事実上誘導することになったりすることを考慮したもの。「薬剤師が説明責任を果たし、患者が同意した場合」に限って、別銘柄への変更を認めるとしている。
 政府は後発品の数量シェアを12年度までに現行の倍の30%にする目標を掲げている。厚労省は、目標のペースで普及すれば医療費の国庫負担を年間約200億円削減できると試算している。

子宮頸がん治療で初指針 日米でずれも 婦人科腫瘍学会 indexへ

 日本婦人科腫瘍(しゅよう)学会は16日、子宮頸(けい)がんの標準的な治療を示す初のガイドライン(指針)を発表した。学会の委員会(委員長、宇田川康博・藤田保健衛生大教授)ががんの進行期別に、最も妥当と考えられる治療法を示した。ただ、米国で子宮を切らずに放射線療法と化学療法の併用が標準とされる時期も、同学会指針は子宮全体と周辺を手術で取る「広汎(こうはん)子宮全摘出術」を推奨して、放射線療法と化学療法の併用も「考慮される」とし、日米で標準治療が食い違う形になった。 
 宇田川教授は「日本は手術、米国は放射線を中心に治療が進歩してきた。日本の治療になじんだ指針でなければならず、米国の指針を踏襲するだけでは意味がない」と話した。
 子宮がんは、子宮頸がんと、子宮体がんに分けられる。子宮頸がんで亡くなる人は国内で年約2500人だが、最近、若い女性の罹患(りかん)率が高くなっている。

70〜74歳医療費負担増 与党PT案「凍結1年」 indexへ

 高齢者の医療費負担増の凍結を検討している与党プロジェクトチーム(PT)の素案が16日明らかになった。70〜74歳のお年寄りが治療を受けたときの窓口負担の1割から2割への引き上げは「08年4月から09年3月までの1年間凍結する」と明記。こうした措置に伴う財源は年末の予算編成過程で検討するとしているが、税収見込みなどを踏まえ、今年度補正予算で対応する方針だ。
 17日に開かれるPTの会合で提示する。素案では、今回の負担増凍結について「(08年度から)高齢者医療制度を円滑施行するため、高齢者の置かれている状況に配慮し、激変緩和を図りつつ進めるべきだ」と位置づけた。
 窓口負担増の凍結により、患者負担は1割のまま据え置かれ、本来の2割との差額である1割分を国が負担、残り8割は保険給付でまかなう。
 また、75歳以上の一部からの新たな保険料徴収の凍結については、素案の段階では凍結期間を明記していない。来年4月から6カ月先送りする案が有力だが、PT内で最終調整する。

家族の臓器提供に賛成7割 本社世論調査 indexへ

 脳死下での臓器提供の手続きを定めた臓器移植法が施行されてから16日で10年になったのを機に、朝日新聞社は13、14の両日、全国世論調査(電話)を実施した。家族が意思表示カードなどで提供意思を示して脳死になった場合、提供に賛成するとした人は71%、反対が17%だった。現在の法律では認められていない15歳未満からの臓器提供については、46%が年齢引き下げを支持した。
 99年3月の調査(面接方式)では、同様の条件で家族が脳死になった場合の臓器提供に賛成は61%で、今回はそれより増えた。20、30代では賛成が8割を超すなど若い世代ほど高い傾向にある。
 現行法では脳死下の臓器提供には、本人の意思表示と家族の承諾の両方が必要。だが同法に基づく臓器提供が10年間で62件にとどまっていることから、家族の承諾だけで臓器提供できるようにする改正案が提出されている。調査で提供に本人の意思確認が必要かどうかを尋ねると「必要」は48%で、「家族の承諾だけでよい」の40%を上回った。
 15歳未満の子からの提供を「認めるべきだ」としたのは46%で、「認めるべきではない」の35%を上回った。「認めるべきだ」とした人のうち、下限年齢を「12歳まで」としたのは22%。「年齢制限をなくし乳幼児にも認める」としたのは66%だった。
 脳死を人の死と考える人は47%。99年5月調査では52%でほぼ横ばい。今回、心臓停止に限るべきだとした人は34%(前回30%)だった。

肝炎患者への告知要請へ 製薬会社に厚労省 薬害肝炎で indexへ

 薬害C型肝炎問題で、厚生労働省は16日、汚染の疑いがある血液製剤を投与された患者本人に、投与の事実を知らせるよう製薬会社に求める方針を決めた。厚労省は、製薬会社から投与後に肝炎を発症した患者リストの報告を02年に受けながら、これまで患者の特定や告知を指示していなかった。
 同日の参院予算委員会で、舛添厚労相は過去の厚労省の対応を「十分な努力をしていない」としたうえで、「企業に(患者を特定する)リストを出しなさい、ということが可能ならば要請したい」と述べた。
 旧三菱ウェルファーマ(現田辺三菱製薬)は02年、止血剤フィブリノゲンを投与した後に肝炎を発症した418人分のリストを厚労省に報告した。しかし患者を特定できる情報は明らかにせず、本人への告知もしなかった。
 ところが、同社は今年9月、薬害C型肝炎訴訟の原告の1人がリストの1人と一致することを認めた。原告団は「企業は418人全員についても特定できているはず。早期に告知されれば適切な治療を受けられた」として、16日、患者の実態調査と投与事実の告知を厚労省に要請した。

救急延命、中止に指針 本人意思不明なら医療チーム判断 indexへ

 日本救急医学会は15日、救急医療の現場で延命治療を中止する手順を示した初のガイドライン(指針)を決めた。治療しても数日以内に死亡が予測される時、本人の意思が明らかでなく、家族が判断できない場合、主治医を含む「医療チーム」で延命治療を中止できるとしている。終末期医療をめぐるあり方には、日本医師会が「尊厳死」を容認する報告をしているほか、今春、厚生労働省の検討会が指針をまとめた。しかし、終末期の定義や人工呼吸器を外す手続きを具体的に定めた指針は学会レベルとして初めてとなる。
 学会は、2月に公表した指針案について、会員や国民から意見を募り、寄せられた207件の意見や提言をもとに一部を修正し、この日、大阪市であった評議員会で賛成多数で承認された。
 救急の現場では、本人や家族の意思確認ができずに延命治療が続けられるケースがある。しかし、医師の判断で人工呼吸器を外した結果、刑事責任を問われることがあり、「ルールづくりが必要」という声が上がっていた。国も指針づくりに乗り出し、延命治療の中止をチームで判断することを求めた。ただ、患者の意思を基本とし、終末期の定義や中止容認の条件などは先送りした。
 学会の指針では、終末期を「突然発症した重篤な疾病や不慮の事故などに対して適切な医療の継続にもかかわらず死が間近に迫っている状態」とし、具体的には、脳死と診断されたり、人工呼吸器などに生命の維持を依存し、移植などの代替手段がなかったりするなど四つの状態を挙げた。
 一方、末期がんなど慢性疾患で入院している患者は対象に含まない。
 終末期と判断した後は、家族らが(1)治療を希望(2)延命措置中止を受け入れる(3)意思が不明確、あるいは判断できない(4)本人の意思が不明で、身元不詳などの理由で家族らと接触できないに分け、(1)以外は、人工呼吸器の取り外しや薬剤をやめる際の手続きを定めた。(4)の場合も、医療チームで治療中止を判断。チームで結論が出なければ院内の倫理委員会で検討するとした。
 指針作成にあたり、刑法学者らからも意見を聞いた。学会特別委員会委員長の有賀徹・昭和大教授は「延命治療を中止した際、司法の介入を招く事態も起きている。だが、ガイドラインに沿って判断すれば、法的にとがめられるはずがないと考えている」と話した。

医師の派遣緩和へ 都道府県の承認条件に indexへ

 厚生労働省は15日、医師の派遣規制を大幅に緩和し、都道府県が医師不足対策に必要と認めた病院への派遣を解禁する方針を決めた。医療関連の労働者派遣は原則禁止で、現在は他の病院に一時的に赴任する場合でも一度退職してから再就職する必要がある。規制緩和後は、公的な仲介があれば派遣を認め、医師不足の病院に赴任しやすい環境をつくる。同日の労働政策審議会の部会で了承された。年内にも実施する。
 労働者派遣制度は、建設、警備、港湾運送、医療関連の4業務で派遣を禁じている。医療関連は「派遣労働者を受けるとチーム医療に支障をきたす」との理由だ。
 しかし、医師不足が深刻なため、昨年4月、へき地の医療機関への派遣や、医師の産休や育休を埋める派遣を解禁した。だが、地方都市の拠点病院などでも医師不足に悩んでおり、さらに規制を緩和することにした。
 規制緩和後は、医師派遣の可否は、医療関係者や自治体首長らでつくる各都道府県の医療対策協議会が判断する。厚労省が6月に始めた緊急医師派遣システムにより、国の仲介で医師が赴任する場合も、都道府県の承認を得て派遣の形で赴任することが可能になる。ただし派遣元は医療機関に限定し、人材派遣会社の参入は認めない方針だ。
 医師は、派遣元の病院職員の身分のまま別の病院に赴任できるようになる。大病院の複数の医師が輪番を組み、中小病院で短期間ずつ診療にあたるといった柔軟な派遣方法が容易になる。
 これまでは大学医学部が医師派遣機能を担ってきたが、大学病院が医師不足になり、地域の病院から医師を引き揚げる動きが相次いでいる。厚労省は来年度から、国や都道府県の仲介で派遣に応じた病院に補助金も出す方針で、医師派遣の仲介機能を都道府県が担えるよう、制度と補助金の両面で誘導していく。

コンビニ向け整腸薬販売へ 小林製薬 indexへ

 小林製薬は24日から、おなかの張りを改善する整腸薬「ガスピタンα」を全国のコンビニエンスストアで販売する。口の中でなめて溶かすタイプで、中に含まれる消泡剤が胃や腸内のガスだまりをつぶす。04年の規制緩和で、比較的副作用の少ない医薬品は、薬剤師のいないコンビニでも販売できるようになったため、従来、薬剤師がいる薬局向けに販売していた同様の整腸薬を、成分量を少なくするなど改良してコンビニ向けにした。税込み価格は525円(12包入り)。

東洋新薬の「トクホ」取得100件に indexへ

 健康食品メーカーの東洋新薬(福岡市)は15日、特定保健用食品(トクホ)として、整腸効果が期待できる「エブリファイバー」などあらたに5商品の表示許可を厚生労働省から取得し、取得総数が100件に達したと発表した。トクホの許可商品数は710品。同社の取得数は全国最多という。

東十条病院運営法人 都が立ち入り検査 診療中止問題で indexへ

 医師の確保が難しくなったとして東京都北区の総合病院「東十条病院」(馬場操院長、350床)が10月末に診療を中止する問題で、都は15日、病院を運営する医療法人社団「りんご会」に医療法に基づく立ち入り検査に入った。中止決定の経過が不明確なため実態調査をするという。
 同病院には内科や産婦人科、小児科などの診療科がある。医師確保が困難になった背景として、多くの常勤医を派遣してきた日大から医師の引き揚げを打診された、と説明していた。

薬効かない結核、年間100人推計 厚労省が研究班 indexへ

 既存の治療薬がほとんど効かない「超多剤耐性」(XDR)の結核患者が、05年に国内で結核を発症した約2万8000人のうち約100人いたという推計が、財団法人・結核予防会結核研究所(東京都清瀬市)の調査結果から判明した。この患者は長期入院して治療しても感染性がなくならないことが多く、いつまで入院させるか議論がある。厚生労働省は長期入院患者らの実態調査を行い、感染拡大防止と人権配慮を踏まえた対策を検討するため、研究班を立ち上げた。

結核患者数の推移
グラフ
 XDRは致死率が高い結核。症状は通常の結核と同じで、菌を培養検査しないと判別できず、患者数の把握が難しい。
 通常の結核は、4種類の薬を半年ほど飲めば大半が治る。だが途中で服薬をやめるなど治療に失敗すると、複数の治療薬が効かなくなる多剤耐性(MDR)が発生。ほかの薬による治療が必要になり、治癒に2年はかかる。これらの服薬なども効かないのがXDRだ。
 多剤耐性の発生経緯は(1)治療失敗のほか、(2)以前に結核を発症して治療を受けたが肺に残っていた菌が再発時に耐性を持った(3)他の患者から感染――とみられる。
 同研究所は8月、90年代以降の全国調査と05年の新規患者数(約2万8000人)から、MDRの発症率を初めて算出。(1)が71人、(2)が132人、(3)が113人で、計316人と推計した。
 また同研究所を中心とする結核療法研究協議会が06年にまとめた調査では、02年に全国から採取した3122人分の菌のうちMDRが55、XDRがその3割を占める17だった。この3割をMDRの推計患者数316人にあてはめると、XDRは約100人とみられる。
 厚労省は9月に一般の結核患者の入退院基準を見直しており、厳密な検査で感染性が高いとわかれば、入院勧告や就業制限をする。だが、この基準をXDR患者らに適用すると、いつまでも退院させられない事態となる。このため厚労省は、新たな基準が必要と判断。医師や法律家らによる研究班を設置した。
 研究班長の加藤誠也・同研究所副所長は「治る見込みもなくいつまでも入院させるのは人権上問題がある。『自宅隔離』の措置も検討したい。それでも、医師の指示を守らず感染が広がったらどうするか。国民意識などを幅広い見地から考えたい」と話す。

自衛隊病院、診療報酬6千万円徴収漏れ 検査院指摘 indexへ

 防衛省が運営し、一般患者も受診できる5カ所の自衛隊病院で、診療報酬を少なく請求していたことが会計検査院の調べで分かった。看護師数が充実しているにもかかわらず「有事の際は数を確保できなくなる」として実際より少ない看護師数で診療報酬を計算していたという。請求漏れは06年度で計6100万円に上る。防衛省は今月から実態に即して診療報酬を請求しており、一般患者は「値上げ」となった。
 自衛隊病院は全国に16あり、隊員は無料で診察を受けることができ、一般患者にも有償で開放している。現在は自衛隊中央病院(東京都世田谷区)や自衛隊横須賀病院(神奈川県横須賀市)など5病院で診察を受けることができる。
 06年度の診療報酬改定では、入院基本料を定める看護師の配置基準が変わり、最も報酬が高かった「10対1(患者10人に看護師1人)」に「7対1」が加わった。厚生労働省によると、10対1の場合の入院基本料は1日1万2690円、7対1は1万5550円で、病院はより高い報酬を患者と公的医療保険の保険者(運営団体)に請求できるようになった。
 自衛隊病院は7対1の請求が可能だったが、「有事の際、7対1を維持できるか不明」として、従来の10対1や13対1の基準で診療報酬を請求していたという。

会計検査院の指摘放置 5国立大病院 給食の随意契約 indexへ

 五つの国立大学付属病院が、99年度の会計検査院の決算検査で見直しを求められていた患者への給食業務での随意契約を、現在も続けていることが11日、わかった。5病院はいずれも、今後一般競争入札などに切り替えるとしている。
 5病院は東京医科歯科、千葉、東京、岡山、広島の各大学病院。いずれも随意契約の相手は各病院内に事務所がある財団法人で、大学職員のOBが役員を務めているケースもあった。
 中でも悪質だったのが東京医科歯科大。同大は給食のほか、財団法人にベッドメークや白衣の洗濯などの業務を委託している。しかし、この財団法人は、給食以外の業務でマージンを取り、実際の業務は別会社に再委託していた。

研修医に月20万円支給 旭川医大 地方病院勤務が条件 indexへ

 深刻化する地方の医師不足対策として、国立の旭川医大(北海道旭川市)は来年4月から、同大の研修医のうち希望者に「研修資金」として月額20万円を支給する。11日発表した。支給を受けたのと同じ期間、大学側が指定する道内の地方病院に勤務することが条件だ。原資には、道内のパチンコチェーン・太陽グループの寄付金1億円をあてる。同大によると、医師不足対策で民間が国立大学法人に寄付をするのは初めてという。
 吉田晃敏学長によると、対象は医学部卒業後に2年間の研修を受ける初期研修医で、年間20人。実施期間は2年間の予定だが、本人の希望に応じて短縮することもできる。
 初期研修医の給与は国が月額30万円程度と定めている。同大はこれに支給金20万円を加えて好待遇にすることで、過疎地医療に携わる呼び水にしたい考えだ。同大の1年目の初期研修医は10人と今春の卒業生の1割にとどまっており、数を増やしたいという思惑もある。

周産期救急医療 産婦人科医会支部の4割「十分でない」 indexへ

 日本産婦人科医会(寺尾俊彦会長)が、周産期救急医療の現状について、47都道府県の支部にアンケートしたところ、4割の19支部から「受け入れ態勢が十分ではない」と回答があったことが分かった。「十分に行われている」と答えたのは28支部で、産科医不足などが問題の背景にあるとし、国に対策を求めている。
 受け入れが不十分になる理由(複数回答)では、産科医不足(14支部)、ハイリスクな新生児を受け入れる「NICU」の不足(13支部)などの回答が目立った。
 妊婦を搬送する際、病院間の連携のあり方などを定めた「搬送システム」が整備されていると答えたのは44支部。しかし、システムが「十分に機能している」としたのは24支部にとどまり、18支部は「機能しているが十分ではない」と回答。2支部は「機能していない」と答えた。
 ただ、システムが機能していなくても「受け入れについては十分に行われている」と回答した支部もあった。「拠点となる病院が1カ所しかないような地域では、そこが受け入れるより選択肢はない」としている。
 アンケートは、奈良で妊婦の受け入れ先が決まらず、死産した問題が起きたことを受け、9月に実施された。

胎児・小児世代の水俣病患者、損害賠償求め提訴 熊本 indexへ

 水俣病未認定患者でつくる「水俣病被害者互助会」(約150人)の会員9人が11日、国と熊本県、原因企業のチッソを相手に総額2億2800万円の損害賠償を求める訴えを熊本地裁に起こした。原告は熊本、鹿児島両県に住む47〜59歳の男女で、劇症患者が多発した汚染の濃厚な時期に胎児、小児期を送った「次の世代」が中心。これまでわずかな重症患者しか認定されていない胎児性、小児性の症状を問い直し、水俣病拡大の深刻さを訴える。
 水俣病を巡っては、国、熊本県の責任を認めた04年10月の関西訴訟最高裁判決後、認定申請者が5600人を超え、うち50代以下が半数を占める。同会は与党プロジェクトチームの政治決着路線を「患者切り捨て」と批判、司法認定により、同世代の被害者救済に道を開きたいとしている。
 訴状などによると、国の認定基準では、手足の先の感覚障害に運動失調などの症状の組み合わせが必要。だが最高裁判決は、家族に認定患者がいれば手足の先の感覚障害だけで被害を認めた。
 一方、原告は複数の調査をもとに「不知火海の魚介類を多食して手足の先の感覚障害があれば、水俣病の確率は9割以上」とする疫学研究の結果から、「最高裁判決の家族内認定要件は必要ない」と主張。原告全員に手足の先や全身性の感覚障害があるとして、この感覚障害だけで賠償を認めるよう求めている。
 胎児性、小児性水俣病は成人と症状が異なるとされ、医学上の病像は定まっていない。ただ、原告は成長後も汚染魚を多く食べ続け、メチル水銀の影響を受けたことなどから、成人の症状をもとに水俣病と認められるとしている。
 また、「魚介類の摂取を禁じていれば被害拡大は防げた」として、最高裁判決が退けた食品衛生法に基づく行政責任についても主張する。
 原告のうち8人は、認定患者の最低補償額と同額の1600万円を慰謝料として請求。全身の機能障害がある47歳の男性1人は、逸失利益も考慮して1億円の支払いを求めている。
 最高裁判決後の水俣病をめぐる提訴は5件目。

はしかワクチン2回目接種率、8割 流行抑制水準満たず indexへ

 昨年6月から始まったはしかワクチンの2回接種で、06年度の2回目の接種率は8割で、流行を抑えるのに必要とされる95%を下回っていたことが、国立感染症研究所感染症情報センター(東京都)の全国調査でわかった。95%以上を達成した自治体は14.4%。国は12年までに流行がほとんどない「排除」を達成することを目標とするが、接種率向上に本腰を入れなければ、更に時間がかかる可能性がある。
 はしかワクチンは昨年度から、定期接種に風疹との混合ワクチン(MRワクチン)が導入され、免疫を確実に付けるため接種回数が1回から、1歳児と小学校入学前1年間の計2回になった。
 同センターは全国1828市区町村を対象に、昨年6月から今年3月末までの接種者数や、07年度の小学校入学予定者数などを調査。1512市区町村が回答した。
 その結果、2回目の接種率は79.9%で、昨年10月調査の29.4%より大幅に改善されたが、95%には達しなかった。
 都道府県別で最高は福井県の91.4%で、最も低かったのは山梨県の66.5%。接種率95%以上の市区町村は216(有効回答の14.4%)で、50%以下も15あった。対象者への通知方法は郵便や広報紙だが、自治体で異なり、接種率に影響した可能性がある。
 対象年齢を超えると費用が個人負担になる。入学後も定期接種を受けられる経過措置がある自治体は162(同10.9%)にとどまる。今年の大流行を受け、来年度から5年間、中高校生に追加で定期接種をするが、昨年度受けなかった子どもは対象にならない。
 同センターの多屋馨子第三室長は「今のままでは接種は不十分。来年小学校に入学する子は体調を崩しやすい冬になる前に接種を受けてほしい」と話している。

日赤血液事業赤字148億円 過去3年検査費増え indexへ

 日本赤十字社の血液事業で巨額の赤字が続いたため、約146億円あった剰余金が07年3月末で底をついたことがわかった。血液製剤をつくる際のウイルス検査にかかる費用の増加に加え、事業の効率化が進んでいないことが主な要因だ。日赤は全国の検査施設を減らすなど経営体質改善に取り組んでいるが、「赤字があと5年も続くと、事業が立ちゆかなくなる」と危機感を募らせている。
 日赤は国内で唯一、献血事業を実施できる機関。年間500万人から献血を受け、輸血用の血液製剤を製造販売している。血液事業は、病院など他事業と切り離された独立採算で、年間の予算規模は約1400億円。
 血液製剤の公定価格が引き上げられた90年度以降、事業は黒字で、03年度末に約146億円の剰余金があった。ところが04年度は単年度で50億円の赤字。05年度が67億円、06年度も31億円と、3年間で計148億円の赤字となり、剰余金はゼロになった。今年度も40億〜50億円程度の赤字となる見通しだ。
 要因は検査費用の増加と供給量の減少で、いずれも構造的な問題だ。
 血液の検査体制は80年代以降、輸血によるエイズや肝炎などの感染を防ぐため強化されてきた。しかし、03年度に肝炎ウイルスやエイズウイルス(HIV)がすり抜けた感染例が発覚し、当時の坂口厚生労働相は一層の安全対策強化を指示。日赤は検査精度を2・5倍に上げるなどした。そのため、毎年数十億円単位の追加費用が発生した。
 経費を考慮し、血液製剤の公定価格は06年度に引き上げられた。日赤の収入は約60億円伸びたにもかかわらず、赤字は解消できなかった。
図 一方の供給量はピーク時の96年から1割以上減り、収入は落ち込んだ。薬害エイズ問題などを受けて、日赤や厚生労働省が血液製剤をなるべく使用しないように呼びかけてきたためだ。
 日赤は今年度から、職員の退職金などにあてる資金を取り崩して事業を維持。施設のリストラも進め、47都道府県に1カ所以上あった採血、検査、製造の各施設のうち、検査施設を来夏までに10カ所に、製造施設も50カ所から20カ所程度に減らす方針だ。
 ただ日赤は当面の経費削減効果を年数億円としか見込んでおらず、赤字解消にほど遠い。日赤は「ここ数年の資金繰りは対応できるが、近い将来、新たな検査の導入や設備投資ができなくなる恐れがある」としている。






高度・急性期治療に特化した病院、厚労省が創設方針 indexへ

 厚生労働省は6日、脳梗塞(こうそく)や心臓病など治療の難度が高く緊急性を求められる治療に対応するため、「高度・急性期総合病院制度(仮称)」を08年度に創設する方針を固めた。勤務医不足が深刻化するなかで、こうした病院に医師や医療設備を重点的に配置し、急性期医療を充実させる。これらの病院が外来に頼らないでも経営が成り立つよう08年度診療報酬改定で報酬点数を加算する。
 厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会に近く提案し、導入に向けた本格的な議論を始める。
 高度・急性期総合病院は人口約50万人につき1カ所程度とする。現在全国の病院に90万床ある一般病床のうち、30万〜40万床を高度・急性期総合病院向けにあてたい考えだ。さまざまな診療科を持ち、地域医療の拠点になっている国公立の総合病院や民間の大病院が移行するよう促す。
 現在、こうした大病院は、症状の軽い外来患者も多数受け入れ、勤務医の過剰労働の一因になっているうえに、急性期の入院医療に十分な対応ができない問題が起きている。一方、これら以外の一般急性期病院も、難度が高く人手のかかる治療を行うケースが多く、結果として医師の配置が分散化することにつながっている。
 そのため、高度・急性期総合病院は、一般外来の受け入れを絞り、専門的な外来と入院治療に特化。そのほかの一般急性期病院は、比較的簡単な手術や在宅患者の短期入院、高度・急性期の治療を終えた患者が退院するまでの受け皿とし、役割分担を進める。
 高度・急性期総合病院では難しい症例に取り組むことが多くなるとみられるため、勤務する医師の質の向上が期待される。一方、難病を抱える患者が治療を受けるために従来より遠くに足を運ぶことを迫られるケースも出てきそうだ。
 診療報酬改定では、医師や看護師を手厚く配置し、入院患者の比率を一定以上に高めた拠点病院を、高度・急性期病院と認定し、一般病院よりも報酬を優遇する方針だ。

高齢者医療費の負担増、75歳以上の徴収は6カ月凍結へ indexへ

 政府・与党は来年4月に予定されている高齢者の医療費負担増の凍結問題で、75歳以上の一部からの新たな保険料徴収は6カ月、70〜74歳の窓口負担の1割から2割への引き上げは1年間、それぞれ凍結する方向で調整に入った。この凍結で必要になる税負担額は約1500億円程度になる見込みで、今年度補正予算での計上を検討する。
 負担増凍結を検討している自民、公明両党の与党プロジェクトチームで最終調整し、今月中に結論を出す予定だ。
 与党内では、先の参院選大敗を受け、負担増の凍結論が浮上。福田政権発足に伴う自公の連立政権合意で負担増凍結の検討が盛り込まれた。
 新たな保険料徴収の対象になっていたのは、会社員をしている子供や配偶者の被扶養者で、これまで自ら保険料を支払う必要のなかった75歳以上の高齢者200万人。凍結期間は、保険料徴収を半年間先送りした7年前の介護保険制度導入時を参考に、6カ月間の凍結が有力視されている。厚生労働省の試算によると、必要財源は200億円。与党内の調整で9カ月に延びる可能性もある。
 また、70〜74歳の窓口負担の引き上げの1年間の凍結に伴う必要財源は1100億〜1300億円程度。
 これらの凍結は健康保険法などの関連法の改正では行わない。「高齢者の負担増を激変緩和するための予算措置」と位置づけ、08年度の当初予算ではなく、今年度の補正予算で対応する。

がんワクチン「効果あり」 34人中22人、安定か改善 indexへ

 進行した膵臓(すいぞう)がんや食道がんなどを対象にしたがんワクチンの臨床研究で、患者34人のうち22人に病状の悪化を防ぐ効果が確認されていることがわかった。横浜市で5日まで開かれている日本癌(がん)学会総会で、東大医科学研究所ヒトゲノム解析センターの中村祐輔教授が発表した。目立った副作用は出ていないという。新薬として開発を進める方針だ。
 がんワクチンは、がん細胞に狙いを絞って免疫反応を高め、がんをやっつけようという手法。中村教授らが、正常細胞ではほとんど働かないのに、それぞれのがん細胞で特徴的に活発に働いている遺伝子を特定。その中から強い免疫反応を導くものを選び出し、複数のワクチンを作った。
 膵臓、食道のほか、肺、肝臓、膀胱(ぼうこう)、大腸の各がんを対象に、岩手医大や福島県立医大、山梨大、和歌山県立医大、九州大などが昨秋から順次、臨床研究を始めた。
 今はワクチン自体に毒性がないかどうかを確認している段階で、標準的な治療法がないと判断された患者らに説明し、同意を得て研究に参加してもらっている。
 9月末までに投与した患者は67人おり、このうち、計画通り投与し、3カ月以上過ぎた34人について分析した。がんが縮小したと評価された人は膵臓、膀胱、大腸の各がんだった5人。がんが大きくならずに安定していた人が17人で、計22人で効果があったと判断した。
 がんに対する免疫反応が高まっていることも確認され、特に比較的若い人で顕著だった。また、投与の結果、半年以上、病状が安定している患者がいた一方、効果のみられないケースもあった。
 グループが、がんワクチンに期待するのは、手術後の再発予防。実用化にはさらに研究を重ねる必要があるが、新薬の承認申請を目指し、臨床試験(治験)を担当する厚生労働省の関連組織と相談に入りたい考えだ。

がん生存率、専門病院ごとに初公表 患者の要望に応え indexへ

公表されたがん5年生存率
図
 国公立のがん専門病院などでつくる「全国がん(成人病)センター協議会」(全がん協、30病院)は4日、一部の加盟施設の胃がん、肺がん、乳がん、大腸がんの「5年生存率」を公表した。がん治療の中核施設でつくる全がん協が、施設名を明らかにして生存率を公表するのは初めて。施設ごとの治療成績の開示を求める患者の要望に応えるとともに、各施設に「差」の要因分析を促し、全国で同じ水準の治療を受けられるようにする目的がある。
 30施設の診療内容を、厚生労働省研究班が解析。99年中に初めて入院治療を受けたがん患者について、その5年後の生存率を算定した。
 データの精度を高くするため、各部位別に100人以上治療した▽治療した全患者のうち9割以上を、5年後まで追跡できた▽6割以上でがん進行度を判定できた――などの基準を満たした施設について生存率を算定。このうち、公表に同意した施設の名前を明らかにした。年齢、性別による影響は計算で除いた。
 この結果、生存率を算定できた施設数は、胃がん18、肺がん15、乳がん11、大腸がん12。それぞれ、5〜3施設が公表に応じなかった。
 胃がんでは、最も高かった国立がんセンター中央病院(84.1%)と、最低の匿名施設(45.5%)には38.6ポイントの差があった。偏りを避けるために外科症例のみ解析した施設を除くと、次に最高と最低の差が大きかったのは肺がんの30.8ポイント。大腸がん23.8ポイント、乳がん20.6ポイントだった。
 ただ、胃がんで中央病院では、がんが最も早期の「1期」の患者が70%を占め、最も進行した「4期」との比が12.3。逆に最低だった匿名病院は、その比が1.2で、重症患者の割合が高い。研究班は「数字をそのまま医療の質が高いととらえず、治療について医師と話す際の資料にしてほしい」という。
 全国286の「がん診療連携拠点病院」でも昨春から、国が示した統一手順で患者を追跡する仕組みが始まっている。14年ごろには、全がん協と同様の基準で5年生存率を算定できるという。
 公表データは、全がん協のホームページの「全がん協加盟施設の生存率協同調査」から、見ることができる。

前立腺がん、遺伝子治療 北里大が開始 indexへ

 北里大病院(神奈川県相模原市)の馬場志郎教授(泌尿器科学)らは4日、前立腺がんの遺伝子治療を始めた。手術後に再発する可能性が高いとみられる患者を対象に、がん細胞の増殖を抑えて再発を防ぐ目的。臨床研究の位置づけで、今後約2年間で最大25人に実施する予定だ。
 前立腺がんの遺伝子治療は01年以降に岡山大と神戸大で実施されているが、手術と組み合わせて根治を目指した前立腺がん遺伝子治療は、北里大が初めて。
 馬場教授によると、事前の検査で5年以内に35%以上の確率で再発するとされた患者が対象。

肺がん発見率9割 血液検査で精度3倍 東大医科研 indexへ

 血液検査で肺がんを高精度で見つける新たな腫瘍(しゅよう)マーカーの組みあわせを、東大医科学研究所ヒトゲノム解析センターの醍醐弥太郎・准教授らが開発した。発見率は約9割で、いま診療で主に使われている3種類に比べて1.5〜3倍高いという。また、手術後の経過を予測する組織検査の組み合わせも考案しており、肺がんの早期発見や術後の治療法選択に役立ちそうだ。横浜市で開かれている日本癌学会総会で5日、発表する。
 肺がんで死亡する人は年に5万人を超え、がんによる死亡で最も多い。早期発見が難しく、発見時にはすでに悪化していて手術不可能な例の多いことが一因という。
 醍醐准教授らのグループは、肺がん細胞で特異的に作られるたんぱく質で、血中に分泌されているものを複数見つけた。このうち二つと、肺がんの指標として従前からあるCEAというマーカーを加えた三つの組み合わせで、肺がん患者と健康な人の血清を対象に検出精度を確かめた。
 その結果、肺がんの8割余りを占める非小細胞肺がんの場合、89.1%の感度で検出できることが分かった。小細胞肺がんの場合も、別の三つのマーカーの組み合わせによる血液検査で87.5%の検出率だった。
 さらにグループは、肺がんは同じ早期で手術をしても、経過に差があることに着目。術後5年以上追跡している約400人の患者の肺がん組織を分析し、特定のたんぱく質三つがいくつ検出されるかで、「5年後の生存率が8割程度」と経過の良い場合から、「生存率2割程度」と悪い場合まで4段階で判別できる方法を開発した。経過が予測できれば、抗がん剤などの治療方法や開始時期の選択に役立つ。

「動かせて痛みなし」新麻酔薬の可能性 米大など発表 indexへ

 手術した部分をすぐに動かせて、痛みは感じない――そんな新しいタイプの麻酔薬の開発につながる局所麻酔の方法を、米ハーバード大などのグループが見つけた。4日付英科学誌ネイチャーに発表する。
 現在の局所麻酔は痛みを感じる神経だけでなく、運動神経などすべての神経の働きを抑えてしまう。体を動かしたり温度を感じたりできないのが難点だった。
 グループは、痛みを感じる神経細胞の多くに、唐辛子の主成分「カプサイシン」を受け止めるたんぱく質があることに注目。このたんぱく質にカプサイシンがくっつくと、細胞膜に穴をあけたような構造になる。グループは、この穴を通して細胞に入り込み、神経細胞の興奮を抑えることができる分子を見つけた。
 ラットの足に、カプサイシンとこの分子を注射すると、痛みを感じなくなったが、運動神経は正常で足を動かし続けることができた。
 生理学研究所の富永真琴教授は「臨床応用は今後の課題だが、まったく新しい選択的な局所麻酔薬をつくる可能性を開く成果だ」と話している。

ADHD治療薬、初の承認へ リタリンと同成分 indexへ

 小児の発達障害である注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬としては国内で初めて「コンサータ」が承認される見通しになった。3日開いた厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で薬効や安全性が確認された。ただ、薬物依存が問題になっている向精神薬「リタリン」と同成分のため、厚労省は製薬会社に対し、処方できる医師を限定するなど厳しい流通管理を求める方針だ。
 今月中に同審議会の部会を開き、製造販売元のヤンセンファーマ社(東京都千代田区)に求める具体的な条件を定め、正式に承認を決める。
 原案では、処方できる医師を「ADHDを正確に診断できる専門医」に限定するため、関連学会に所属▽診断講習を受けた――などの基準でリストをつくる。調剤薬局にも処方した医師や医療機関が登録されているか確認を求める。
 同薬は、リタリンと同じ塩酸メチルフェニデートが薬効成分。世界で広くADHD治療薬として使用される。国内では従前、同成分のリタリンが未承認のままADHD治療に使われてきた。だが乱用問題を受け、リタリンを処方できる医師は睡眠障害「ナルコレプシー」の専門医らに限られる方針となっている。
 依存症を懸念する声もあるが、同社によると即効性のあるリタリンに比べ、急に血中に溶け出さないよう乱用防止の工夫をしているという。
 適用は中学生ぐらいまでの子どもに限る。承認後、来年2月ごろに発売される見込み。

経口用のブドウ糖、水道水に溶かして患者に注射 下関 indexへ

 山口県下関市の社会保険下関厚生病院(沖田極病院長)で、糖尿病で入院中の50代の女性患者に、看護師が経口用のブドウ糖粉末を水道水で溶かして注射するミスがあったことが3日、分かった。同病院によると、容体に影響はなかったという。感染症を起こす恐れもあり同病院は「あり得ないミスだった」として家族に謝罪した。
 病院の説明では、担当の女性看護師(21)が9月10日、低血糖状態になった患者に、水道水十数ミリリットルでブドウ糖粉末を溶かして注射した。本来はブドウ糖粉末を口から摂取してもらうか注射用のブドウ糖液を注射することになっている。
 約1時間後、同僚の看護師が注射用のブドウ糖液の数が合わないことに気づきミスが発覚した。
 病院側は看護師に事情を聴いたが、詳しい説明をしないまま同月末に退職した。患者は現在も入院している。

薬剤師ら書類送検 尼崎病院・調剤ミス indexへ

 兵庫県立尼崎病院(同県尼崎市)で03年10月、調剤ミスのため本来の10倍の濃度の強心剤を服用させられた生後5カ月の男児が死亡した事故で、尼崎東署は3日、同病院薬剤部で調剤を担当した女性薬剤師(37)と調剤の点検役だった女性薬剤師(55)の2人を業務上過失致死容疑で神戸地検尼崎支部に書類送検した。
 尼崎東署によると、男児は先天性心疾患のため03年8月に同病院で手術を受け、同年10月5日に退院した。その後、病院で処方された飲み薬を服用したところ病状が悪化し、同月14日に心不全で死亡した。調べでは、退院時に調剤をした薬剤師は1万倍に薄めた強心剤を使うべきなのに、1000倍に薄めた強心剤で調剤し、点検役の薬剤師は誤りを見落として死亡させた疑い。

リタリン、処方の医師・機関限定 厚労省方針 indexへ

 覚せい作用のある向精神薬「リタリン」で薬物依存が起きている問題で、厚生労働省と製造販売元のノバルティスファーマ社(東京都港区)は2日、リタリンを処方できる医師や医療機関を限定するなど流通を規制する方針を固めた。薬物依存者が求めるまま、過剰処方している医師の存在が相次いで発覚したため、医療用麻薬並みの厳しい管理をする。
 厚労省によると、副作用が重い一部の抗がん剤や医療用麻薬は処方できる医師を制限しているが、向精神薬の処方を制限する措置は初めて。今月中に薬事・食品衛生審議会の部会を開き、具体策を協議する。
 原案では、同社が医師、薬剤師、弁護士ら外部有識者による委員会をつくり、処方を認める医師や医療機関、調剤薬局のリストをつくる。睡眠障害「ナルコレプシー」を正確に診断できる専門医らを登録する見通しで、具体的な登録基準は今後詰める。現在は、どの医師でも処方が可能だが、措置後は医師数でみると全国数百人規模に限られるとみられる。
 さらに調剤薬局でも、患者に薬を渡す前に処方箋(せん)を出した医師や医療機関が登録されているかを確認。されていない場合は調剤を拒否し、同社に連絡するよう求める。
 厚労省は、同社が薬の流通を適切に管理しているかどうかを監視し、管理できないと判断すれば、リタリンの承認取り消しも検討する。
 今回の問題を受けて同社は、うつ病に対するリタリンの効能効果を取り下げる方針を示している。だが取り下げが認められても、保険外診療であれば医師の裁量で処方できるため、処方自体を規制する厳しい対応が必要と判断した。
 リタリンの06年の販売実績は3370万錠。東京都は9月、リタリンを過剰処方した疑いで東京クリニック(新宿区)など複数の診療所を立ち入り検査。また、薬物依存の末に自殺した患者の遺族らは、過剰処方した医師の処分や実態調査を求める要望書を厚労省に提出している。

助産所の3分の1、提携病院を確保できず NPO調査 indexへ

 全国の助産所の3分の1が、出産時の異常に備えて妊婦を搬送する病院を確保できていないことが2日、NPO法人「お産サポートJAPAN」(矢島床子代表)の調査でわかった。来年3月までに確保できなければ、出産を扱えなくなる。産科医不足などを理由に、提携を断られている事例が相次いでいるという。
 今年4月の医療法改正で、助産所開業の要件として、異常時に対応できる嘱託医と、産科・小児科がある嘱託病院の確保が義務づけられた。
 同法人が9月時点で全国90助産所を調査したところ、嘱託病院を「確保できていない」は34%で、このうち半数は「来春までの確保に向けて交渉中」と回答。「自分の病院の患者で手いっぱい」などと断る病院が多いという。
 同法人は「このままでは来春以降のお産の予約を断らざるをえない助産所が出る」として、医療法の再改正を求めている。

拠点病院、高い生存率 がん治療 3府県で調査 indexへ

 がん治療で中核的な役割を果たす現在の「がん診療連携拠点病院」で治療を受けた患者の5年後の生存率が、自治体全体での生存率に比べて大幅に上回っていることが分かった。大阪、山形、福井の3府県を対象にした調査で、がんの部位や進行度によって10ポイント以上差があるケースもあった。
 3日から横浜市で開かれる日本癌(がん)学会学術総会で、大阪府立成人病センター調査部の津熊(つくま)秀明部長らが発表する。
 津熊部長らは3府県のがん登録を集計し、06年の制度変更で拠点病院とされた病院で94〜98年にがんと診断され、治療を受けた患者の5年後の相対生存率(一般の人の生存率と比べた割合)と、各府県のがん患者全体の相対生存率を比較した。がん登録は住民のがん罹患(り・かん)や死亡を網羅的に集計したもので、実施していない自治体もある。このため、今回は精度が高く集計可能な三つの自治体で調べた。
 大阪府の場合、胃がんで拠点(11病院)の相対生存率が63.4%、府全体で50.1%。大腸がんで70.1%と58.0%、肺がんで30.0%と15.6%などの結果だった。がんの進行度別に比べると、患部が限局した初期の肺がんでは拠点73.6%、府全体55.3%と、18.3ポイントの差が出た。
 山形、福井県でも部位ごとに2〜7ポイント程度の差があった。
 厚生労働省は、全国どこでも質の高いがん医療を受けられるように拠点病院の整備を進めており、全国で286病院が指定されている。津熊部長は「病院ごとの得意分野もある。今後のがん医療では、病院同士が患者を紹介したり、連携したりして役割分担することが重要だ」と話した。

病院の実力、指標作り 循環器病センター indexへ

 病院の実力を正しくはかるために、国立循環器病センターは、約30の国立病院機構の病院に呼びかけ、心筋梗塞(こうそく)や脳卒中の患者を対象にした新しい評価システムづくりを始める。手術の成功率や患者の死亡率では、重症患者が集まる病院ほど表面的な成績が下がる矛盾があった。約2年かけて重症度や治療内容など必要なデータを分析し、客観的な判断ができるように指標を絞り込む。
 同センターと各病院をインターネットで結んだ患者登録システムをつくり、治療成績に影響する指標を探し出す。登録する項目は、患者の年齢や既往症、重症度を示す検査データ、投薬やカテーテル治療の有無、治療開始までの時間など約100項目にのぼる。10年3月までに治療を受ける心筋梗塞患者2000〜3000人、脳卒中患者4000〜5000人を対象にする。

検体取り違え、誤って肺切除 愛知県がんセンター indexへ

 名古屋市千種区の愛知県がんセンター中央病院で05年5月、市内の50代の男性患者を、別の肺がん患者と誤り、肺の一部を摘出していたことがわかった。事前検査の結果をデータ入力する際、別の患者のデータを入力し、診断を取り違えていたのが原因だった。
 29日に県庁で記者会見した病院などの説明によると、男性は市内の別の病院の紹介を受け、05年1月に愛知県がんセンター中央病院に検査入院。肺がんの疑いがあるとされた。同年4月、肺組織の検査をした結果、肺がんと診断され、同年5月に右肺3分の1と周辺のリンパ節を切除する手術を受けた。
 手術後、病院が切除した肺の組織などを検査したところ、肺がんではなく肺結核だった。手術前の検査の際、男性の肺組織の検体に付けたバーコードを読み取らず、同じトレイにあった別の患者の検査依頼書に付けたバーコードを読み取っていたため、取り違えた。
 会見した加藤知行院長は「あってはならないミスで、深くおわび申し上げる。発生直後に県民へ公表すべきだが、患者らから公表を差し控えてほしいとの要望があったため、公表を控えた。しかし、患者が外部に情報提供したので、事情を患者へ確認したところ、一般的な公表について承諾された」としている。
 病院側と男性は現在、愛知県弁護士会あっせん・仲裁センターで、手術費や入院費、慰謝料を含めた示談交渉をしている。病院側によると、男性は呼吸困難などの症状を主張しているという。

医師確保できず「全科休診」 東京・北区の総合病院 indexへ

 東京都北区の総合病院で、都の災害拠点病院でもある「東十条病院」(馬場操院長、350床)は、医師確保が難しくなったとして、救急患者や新規患者の受け入れを中止したことがわかった。10月末には全科の診療をやめる。
 東十条病院は医療法人社団りんご会が91年に開業。内科、産婦人科、小児科など、15の診療科があり、急性期医療の提供を掲げている。開業時から日大との関係が深く、在籍中の常勤医師29人中27人が日大からの派遣。今年6月以後、日大の各医局から、9月までに計7人、10月までにさらに3人の医師の引き揚げを打診されていたという。
 病院側は「医師を募集したが、欠員分の確保が難しく運営が困難だ」として、9月27日に「10月31日をもちまして全科休診」とする張り紙を掲示。新患の受け付けをやめ、通院患者も他の医療機関への紹介のための診察にとどめている。入院患者61人の転院先も確保中だ。
 日大医学部庶務課は「医局で派遣人数の調整はあると思うが、組織的に一斉に引き揚げているわけではない。閉院状態になると知らされたのは数日前だった」と話す。
 病院側から相談を受けた都は28日、医療安全課職員を同病院に派遣し、事情を聴いた。病院側の対応について不適切な状況はないと判断しているという。

医師処分、最多の77人 リタリン問題の医師も indexへ

 厚生労働省は27日、医道審議会の答申を受け、刑事事件で有罪が確定するなどした医師58人と歯科医師19人の計77人への行政処分を発表した。処分件数は過去最多。免許取り消しは6人で、61人が1カ月〜3年間の業務停止。医療行為に関連した処分は9人。今年度設けた戒告は10人だった。処分を受けた医師には、再教育研修も新たに義務づけた。10月15日に発効する。
 東京クリニック(東京都新宿区)の伊沢純医師=業務停止2年=は、女性患者の頭を壁にたたきつけてけがを負わせたとして傷害罪などが確定している。伊沢医師が院長だった同クリニックには今月、東京都などが、薬物依存の恐れがある向精神薬「リタリン」を不適正に処方した疑いで立ち入り検査に入った。
主な処分は次の通り。(呼称略)
【免許取り消し】
▽奥羽大付属病院(福島県郡山市)後藤英介=強制わいせつ致傷、暴行
▽都南病院(盛岡市)浜崎高行=準強制わいせつ、準強姦(ごうかん)
▽労働者健康福祉機構関西労災病院(兵庫県尼崎市)天野利彦=道路交通法違反、住居侵入、準強制わいせつ
▽レディスクリニック井上(大津市)井上省蔵=準強制わいせつ
▽神田北口クリニック(東京都千代田区)西銘伸蔵=強制わいせつ未遂、傷害
▽小西医院(堺市)小西聡=詐欺、補助金適正化法違反
【業務停止3年】
▽ 松福会診療所(大阪市)内海美穂子=覚せい剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反
▽九重歯科多摩センター(東京都多摩市)清水浩人=強制わいせつ
▽熊谷医院(北海道室蘭市)曽田光彦=診療報酬不正請求

妊婦搬送、4回以上受け入れ拒否が2件 岐阜県発表 indexへ

 岐阜県は26日、過去3年間で妊婦の救急搬送時に受け入れ要請を4回以上断られ、病院収容までに約1時間かかったケースが同県内で2件あったと発表した。
 県消防課によると、04年5月15日未明、妊娠が疑われる可児市の女性(当時41)が出血し、救急車を呼んだが、「かかりつけ医ではない」などの理由で5医療機関に受け入れを断られた。通報から63分後、救命救急センターに指定されている県立多治見病院に運ばれ、1日入院した。
 05年2月12日には、各務原市の女性(同38)が妊娠9カ月で陣痛と思われる腰痛を訴えたが、4医療機関に受け入れを拒否された。通報から52分後に地域の中核病院である松波総合病院(同県笠松町)に運ばれ、そのまま入院した。
 いずれの女性もかかりつけ医がいなかった。県の担当者によると、医療機関側も、それまでの経緯がわからない妊婦を受け入れるのは危険が大きく、対応できないと判断する場合が多いという。 04〜06年の同県内の妊婦の救急搬送件数は計1524件で、うち96.7%にあたる1473件が受け入れを拒否されずに搬送された。

薬効かないサルモネラ菌増加 33件確認、重い食中毒も indexへ

 年間に約3000〜5000人の食中毒患者を出しているサルモネラ菌で、特効薬の抗生物質が効かない新型耐性菌が増えていることが、厚生労働省の研究班の調査で分かった。日本で01年に初めて1件報告されて以降、これまでに少なくとも33件が確認された。乳幼児の患者が多く、薬が効かないため重症化する例が目立った。飼い犬や猫からも同型の菌が初めて見つかっており、研究班は監視を強めている。
 サルモネラ菌は、動物の便に汚染された食品を食べるなど主に口から感染する。細菌性食中毒の原因の1、2位を争う細菌だ。治療の切り札(特効薬)はニューキノロン系の抗生物質だ。だが、00年に大阪で食中毒になった乳児の便から、このニューキノロン系を含む大半の抗生物質が効かない耐性菌が見つかり、01年に初めて報告された。
 厚労省研究班(班長、渡辺治雄・国立感染症研究所副所長)は、全国の衛生研究所などの協力を得て調査を開始。01年の報告後、ニューキノロンが効かない新型耐性菌が毎年確認され、06年は10件に上った。新型耐性菌は同年までに計33件確認され、そのうち16件は10歳以下の乳幼児か子供で、ニューキノロン系のほか7〜10種類の別の抗生物質も効かなかった。
 生後11カ月の女児の場合、下痢、発熱、血便の症状が出て2週間以上入院した。菌は、9種類の抗生物質に耐性を持っていた。父親が獣医師で、女児は室内犬とよく遊んでいた。犬が先に下痢をしており、犬からも同型の菌が見つかった。
 退院して4日目に発熱、便から耐性菌が見つかった新生児の例でも、直前に室内犬が下痢をしていた。別の調査では、飼い猫から同型の菌が見つかった例もあった。
 ニューキノロンの基礎になった抗生物質に対する耐性を獲得した菌も増えていた。この抗生物質は、感染性腸炎や膀胱(ぼうこう)炎などの治療に今も使われている。人から検出されたサルモネラ菌に対する耐性菌の割合は99年に0.5%だったが、06年は4.5%だった。この耐性菌は遺伝子のわずかな変異でニューキノロン耐性になってしまう。すでに「予備軍」が広がり始めていることになる。
 渡辺班長は「この耐性菌が広がれば、深刻な問題になる。ひとの治療現場だけでなく、ペットや、家畜でも抗生物質を適正に使用しているかどうか監視が必要だ」と警告している。

医師不在中にリタリン処方 東京・江戸川区の診療所 indexへ

 薬物依存が問題視されている向精神薬「リタリン」を不適正に処方した疑いがあるとして、東京都と江戸川保健所は21日、江戸川区の診療所に医療法に基づく立ち入り検査をした。医師が不在中に薬を処方していた疑いが強く、診療の実態を調べるとしている。
 同保健所によると、20日に診療所の利用者から電話で「医師が休んでいるのに薬を処方された」との情報があったほか、「説明不足のままリタリンを処方された」といった苦情が数件寄せられていた。
 立ち入りの結果、カルテや診療所職員の証言などから、医師のいない状況で恒常的にリタリンが処方されていたことが判明。都などは医師法違反(無資格診療)の疑いがあるとみている。
 都は18日、新宿区の診療所にも、リタリン不適正処方の疑いで立ち入り検査をしている。

アルツハイマー病進行の仕組みを解明 熊本大など indexへ

 アルツハイマー病の治療に、神経細胞などの表面にある「受容体」というたんぱく質の活動を抑えることが有効とする研究結果を、熊本大、小野薬品工業(大阪市)などの研究チームが10日発表した。同病の治療は症状を和らげる対症療法的なものにとどまっていたが、研究チームは、同社が開発している受容体の阻害薬を活用すれば根本的な治療薬の開発の可能性も高まるとしている。
 水島徹・熊本大大学院医学薬学研究部教授によると、アルツハイマー病は体内の神経細胞にたんぱく質「βアミロイド」が蓄積し、情報伝達が妨げられて症状が進むとされる。研究ではβアミロイドの生成過程に注目。試験管実験の結果、症状が進む際、体内で炎症を引き起こす物質であるプロスタグランジン(PG)E2が、EP2やEP4という受容体と結合してβアミロイドが生成される、というしくみを明らかにした。

うつ病治療薬リタリン 乱用防止で効能取り下げへ indexへ

 うつ病などの治療薬として承認されている向精神薬「リタリン」(塩酸メチルフェニデート)による薬物依存が多数発生しているとして、製造販売元のノバルティスファーマ社(東京都港区)は20日、うつ病についての効能効果を取り下げる方針を固めた。近く薬事法に基づき厚生労働省に取り下げ申請する。同省によると、不適切使用を理由に製薬会社が薬の効能を狭める申し出をするのは、極めて異例という。
 同社はこれに先立ち、精神科関連の学会などに打診、理解を求めた。同省は取り下げ申請を受けた後、諮問機関の薬事・食品衛生審議会にかけるなどして正式決定する。
 取り下げが認められれば、うつ病患者への処方は医療保険が適用されなくなる。その後も保険外診療での処方は医師の裁量で可能だが、効能を外すことで安易な処方を食い止める狙いがある。
 リタリンは58年、うつ病治療薬として販売開始。現在は「難治性うつ病」「遷延性うつ病」のほか、日中突然眠くなる睡眠障害「ナルコレプシー」の効能が承認されている。同社はこのうちうつ病についての効能を外す方向で、準備を進めている。
 背景には、脳波検査などできちんと診断できるナルコレプシーに比べ、自覚症状に基づき診断されるうつ病に対しては、不適正な処方がされやすいなどの事情がある。またリタリンが使えなくてもうつ病治療には多様な新薬が登場しており、患者の不利益は限定的という。
 同薬は服用すると覚せい効果が得られることがあり、薬物依存の恐れが指摘されてきた。同社は90年代半ばから厳密な診断や処方を求める文書を医師に配布、注意を促している。
 だが日本精神神経学会に所属する医師らを対象に精神科医でつくる研究会が04年、実施したアンケートでは、回答医師の3割近くが「過去1年間にリタリン依存者や乱用者と思われる患者を診察した」と答えた。
 今月18日には東京都が、医師の不適正な処方で通院者が薬物依存症に陥った疑いがあるとして、新宿区のクリニックを医療法にもとづき立ち入り検査している。
〈キーワード:リタリン〉中枢神経に作用して、興奮や覚せい効果をもたらす。うつ病治療薬として承認され、58年の発売当初は軽症も対象だったが98年、「難治性うつ病」などに限定された。ナルコレプシーへの効能は78年に追加。子どもの注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療にも一般的に使われている。06年の販売実績は3370万錠で02年の1.2倍。

集団食中毒436人に 岐阜県 indexへ

 岐阜県御嵩町や可児市であった敬老会などで、弁当を食べたお年寄りらが食中毒の症状を訴えた問題で、県は19日、新たに250人の発症を確認し、発症者が計436人になったと発表した。入院した人はおらず、いずれも快方に向かっているという。16、17の両日に可児市の飲食店が作った仕出し弁当を食べており、県は同店を18日から5日間の営業停止処分にしている。

外径1.4ミリ、世界最細の治療用カテーテル indexへ

 心臓の血管(冠動脈)が狭まる狭心症などの治療に用いる細い管(カテーテル)で、外径1.4ミリという世界で最も細いものを国立循環器病センターの竹下聡・心臓血管内科医長やテルモなどが開発した。従来のものより断面積が半分以下のため、より細い血管まで治療できる。挿入する皮膚部分からの出血の危険性が低くなる利点もある。
 冠動脈が狭まったり詰まったりすると、そこから先に血液がうまく流れず、狭心症や心筋梗塞(こうそく)の胸痛発作が起きる。この治療に、カテーテルを冠動脈に通してその部分を広げ、ステントという、金属でできた筒状器具を血管の内側に挿入する方法が広く行われている。
 通常、治療に使われているのは外径2.1〜2.7ミリ程度。新たに開発したカテーテルの断面積はこの半分以下のため、冠動脈の曲がった部分や細い部分まで届き、従来より治療ができる範囲が広くなる。
 さらに、内径2.5ミリほどの手首の動脈からのカテーテル挿入にも適している。
 カテーテルは従来、足の付け根にある太い動脈から入れることが多かった。だが治療後に6時間程度は安静にしなければならず、その後も再出血することが多かった。
 一方、動脈の細い手首部分から入れれば出血の危険性が低く、安静時間も半減できる。
 竹下さんは「従来のものより軟らかいので操作しづらく、医師の技術力が要求される。だが治療の質を上げ、患者の負担も減らすことができる」と話している。

舛添厚労相「年内に解決したい」 薬害C型肝炎訴訟 indexへ

 舛添厚生労働相は14日朝、薬害C型肝炎訴訟への対応について「年内に解決したい」との意向を明らかにした。舛添氏は「いろんな方が努力して問題の解決にあたるのは大変結構だ」と述べ、国として和解協議に応じる考えを示唆した。同訴訟では14日午後、大阪高裁が当事者双方に和解を打診した。
 舛添氏は、大阪高裁からの和解打診について質問した報道陣に「正式に受けた段階で考える」としながらも、「省として頑張ってやりたい」と述べた。
 同訴訟では、5地裁のうち4地裁で国の責任を認める判決が出た。大阪高裁の横田勝年裁判長は12日、和解を成立させる方向で訴訟手続きを進めたい考えを原告弁護団に伝えている。
 協議が開始されても実際に和解に至るには、原告側が求める国の謝罪と原告全員への賠償問題や、地裁判決でもばらつきのある国の責任を認める理由や時期などについて原告団と合意する必要がある。

献血者、500万人割る 若者が激減 29年ぶり indexへ

 06年の献血者数が29年ぶりに500万人を割り込んだことが、厚生労働省と日本赤十字社のまとめでわかった。同省は「少子化などで若者の献血が激減しており、将来、慢性的に血液が不足する恐れがある」として来年度、検討会をつくり、対策を強化する。
 06年の献血者数は延べ498万人。前年より約33万人少なく、ピークだった85年(869万人)の半分強。500万人を下回るのは77年以来だ。年代別にみると、96年は10〜20代が272万人と全体の45%を占めたが、06年は157万人と31%に下がった。
 また10〜20代を対象に同省が05年度実施したネット調査では、「献血をしたことがない」と答えた5000人にその理由を聞くと、「針を刺すのが痛くて嫌」(29%)、「不安だから」(28%)などが上位を占めた。「献血(制度)を知らない」も26%いた。
 同省は、当面の輸血や血液製剤の供給に支障はないとしているが、将来に備えて若い世代への働きかけを強める。詳細な意識調査を実施し、PRの方策などを練る予定だ。