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医療施設「免震構造」でも医療機器転倒などの被害 indexへ

 医療施設では「免震構造」でも長周期地震動を受けると、人工透析装置などの医療機器が転倒するなど、施設内部では大きな被害が出かねないことが、防災科学技術研究所の実験で確認された。防災科研は、医療機器の固定など病院の地震対策を定めた指針作りを検討する。
 実験は、兵庫耐震工学研究センター(通称・Eディフェンス、兵庫県三木市)の震動実験施設で行われた。装置の上に、診察室や手術室などを模した免震構造の「病院」(4階建て、鉄筋コンクリート)を建てて揺らした。
 東海、東南海地震が同時に発生した際に名古屋市内で想定される震度5強、最大217ガルの揺れを起こしたところ、建物内部では入力値を上回る約240ガルの揺れが観測された。
 この結果、固定されていないベッドや手術用照明器具、診察台などが2〜3メートル動いたほか、透析装置が転倒した。一方、キャスターをロックした機器は、10センチ程度しか動かなかった。
 実験に立ち会った国立保健医療科学院の筧(かけひ)淳夫・施設科学部長は「今回の実験で、免震ではキャスターの固定でも大きな効果があることがわかった。震災直後でも病院が機能できるよう、対策を考え普及させていく必要がある」と話した。

過って肝臓刺し失血死 茅ケ崎市立病院、警察に届けず indexへ

 神奈川県の茅ケ崎市立病院呼吸器外科で9月下旬、患者の胸部に特殊な管を差し込む際に過って肝臓を刺し、患者が失血死していたことが病院側への取材で分かった。病院側は「出血は、通常の手術を行った結果、起きた合併症」として過失を否定、警察に届けていなかった。
 病院側の説明によると、死亡したのは60代後半の女性で、「気胸」を患っていた。肺の穴から空気が漏れ、肺と肋骨(ろっこつ)の間のすきま(胸腔=きょうくう)=にたまって呼吸が苦しくなる病気で、同病院で春から9月までに3回の手術を受けた。胸腔にウミがたまる「膿胸(のうきょう)」を繰り返していたという。
 このため、呼吸器外科の医師が、「ドレーン」と呼ばれる管を胸の表面から挿入してウミを出そうとしたところ、挿入口から血液があふれ出した。ドレーンの先端の針によって肺の下にある肝臓が傷つけられており、4時間後に出血によるショックで患者は死亡したという。死亡は、仙賀裕院長らに報告され、市幹部にも報告された。病院内の医療事故などを扱う安全管理委員会で、「重症の合併症」と判定され、警察に届ける必要はないと決めたという。
 失血死を重症の合併症としたことについて、安全管理委員長の望月孝俊・副院長は「担当医からの聞き取りや、カルテを調べた。医療の世界では、今回のような出血は、一般的に行われる医療行為、手術を行った時に起こる合併症とされており、ミスではない。止血の措置もちゃんとやっていた。家族にも原因を説明し、警察に届けないでいいと言われた」と説明している。

血液製剤投与、2病院で3人 「記録なし」調べ直し判明 indexへ

 厚生労働省は26日、国立病院機構青森病院で2人、同福岡病院で1人の患者に、C型肝炎に感染する危険がある血液製剤を投与していたことが判明したと発表した。いずれも昨秋、同省の調べに対し、「カルテなどの記録は保管していない」と回答していた。厚労省は記録がないと答えた同機構の46病院に職員を派遣して調べ直した。
 46病院のうち43病院で診療記録などが見つかった。さらに、メーカーの納入記録と照合するなどした結果、両病院での投与が分かった。青森の2人には連絡したが、福岡の1人は所在が分からないという。
 厚労省血液対策課は「さらに調べれば記録が出てくる可能性もある。国立病院以外も改めて自主的に調査を徹底してもらう」としている。
 厚労省は昨年11月、メーカーに血液製剤の納入記録のある約6600の医療機関を対象に、感染の危険性がある製剤が使われていた94年以前のカルテの保管状況を調査。半数以上の医療機関が「保管していない」と回答したため、被害者らから調査の徹底を求める声が上がっていた。

臓器提供者と患者を一括登録、追跡調査へ 移植学会 indexへ

 日本移植学会は来年から、腎臓などを生体で提供した人(ドナー)や移植を受けた患者の健康情報を一括登録し、その後の容体の追跡調査を始める。過去の患者らも登録し、移植の質向上とドナー保護を狙う。移植件数が最も多い腎臓について1月に開始し、来年度半ばに肝臓も対象とする。その後、心臓、肺など全臓器に広げる予定だ。
 1月から登録を始める腎臓では、親族に自らの意思で腎臓を提供した生体ドナーと移植を受けた患者のほか、脳死や心停止後の遺体から提供を受けた患者を対象とする。
 過去に腎移植した経験を持つ約230の医療施設から、1月以降順次、ドナーや移植患者の性別、病気、手術状況、健康状態など150項目について電子データで報告を受ける。その後は毎年、情報を更新する。学会が一括管理することで、全国の状況を把握。各病院は治療の質向上などに役立てることもできる。
 これまでドナーの健康情報は各病院が個別に調べても一括管理はされていなかった。国際移植学会は今春、生体ドナーの健康保護を求める宣言をまとめており、国内の対策が急務となっていた。腎臓移植は年約1200件あり、うち約8割が生体移植のため、まず取り組む。患者の情報管理は、すでに同学会が行っているが、追跡調査が3年に一度で不十分だった。
 登録システムの計画責任者の湯沢賢治・国立病院機構水戸医療センター移植外科医長は「ドナーのQOL(生活の質)の詳細な経過追跡は世界的にもない。全体として何が起こっているのか、適切に把握したい」と話している。

内視鏡手術、出血後に患者死亡 富山赤十字病院 indexへ

 富山市の富山赤十字病院(小西孝司院長)で10月に胃がんの内視鏡手術を受けた50代の男性患者が、手術で出血した後に死亡していたことが23日、分かった。病院側は医療事故として調査を始め、富山中央署に報告。同署も詳しい事情を調べている。
 病院側によると、患者は10月27日に早期の胃がんで内視鏡の電気メスを使う手術を受けた後に胃などから出血。2度の開腹手術で出血は止まったが、意識がなくなって症状が徐々に悪化、11月8日に多臓器不全で死亡したという。
 小西院長は「遺族には謝罪している。内視鏡手術は経験のある専門医が担当した。出血などはまれにあり得ること。県警の判断を待って対応したい」としている。

血液型を誤り輸血、直後に男性死亡 大阪府立病院 indexへ

 大阪府東大阪市の府立中河内救命救急センターは、20日に重体で運ばれてきた同府門真市の男性(31)に誤ってこの男性の血液型とは違う血液を輸血した。センターが23日明らかにした。男性は輸血の約3時間後に出血性ショックなどで死亡した。司法解剖の結果、輸血ミスと死亡との因果関係はなかったという。
 センターや府警によると、男性は20日朝、同府守口市の5階建てビルの屋上から転落。府警は現場の状況などから、自殺を図った可能性が高いとみている。
 男性は全身を強く打って意識がほとんどなく、大量に出血していたため、センターは心肺蘇生術とともに緊急輸血をした。その際、男性の血液型と同じO型の赤血球濃厚液と凍結血漿(けっしょう)計5040ミリリットルのほか、A型の赤血球濃厚液約130ミリリットルも投与した。男性の死亡後に後片付けをした看護師がミスに気づいた。
 センターは、検査技師が誤って保管庫から別の患者用の輸血用血液を取り出し、手渡された看護師や輸血をした医師もチェックを怠ったのが原因としている。輸血用血液には血液型ごとに色の違うラベルが張ってあったが、見過ごしたという。
 センターは輸血ミスについて遺族に謝罪。守口署の司法解剖の結果、A型の輸血は比較的少量で血液の凝固は認められず、死亡との因果関係はないと判断されたという。センターの塩野茂所長は「あってはならない初歩的なミス。患者の血液型を輸血装置などに掲示するなど、再発防止に努めたい」としている。

大衆薬のネット販売、規制強化固める 年明け省令改正へ indexへ

 インターネットや通信販売での大衆薬(一般用医薬品)の販売について、厚生労働省は、年明けにも省令を改正し、規制を強化する方針を固めた。来年6月から、風邪薬や鎮痛剤などリスクが比較的高い薬はネットで販売できなくなる。
 現在は、薬事法に明確な規定がなく、ネット販売が事実上黙認されている。省令改正後には、リスク別に3分類した大衆薬のうち、最もリスクが高い第1類とそれに次ぐ第2類の医薬品がネット販売できなくなる。H2ブロッカーや一部の毛髪薬のほか、胃腸薬や風邪薬など計約700成分が該当する。一方、ビタミン剤や整腸薬などリスクの低い第3類医薬品約700成分は販売できる。
 規制強化を巡っては、厚労省が案を示した今年7月以降、政府の規制改革会議やネット事業者が強化に鋭く反対。だが厚労省は今回、「安全性の担保に不可欠」と判断した。薬害被害者や消費者団体も規制強化を支持していた。
 同会議側は「改正されれば、撤回のために会議で最重要テーマとして議論する」(松井道夫委員)としており、改正を巡って、さらに紛糾する可能性もある。

麻酔薬残液を使い回し 大阪の美容外科、市立ち入り調査 indexへ

 大阪市北区の美容外科「エールクリニック」で、美容手術を受けた患者に投与した麻酔薬の残液を別の患者に使い回していたことが22日、大阪市保健所の立ち入り検査でわかった。同クリニック側がこれまで2回使い回しがあったことを認めているという。この麻酔薬は細菌増殖の危険性が高くメーカーが使い回しを禁じており、同保健所は医薬品の使用法について改善を指導した。クリニックの関係者は朝日新聞の取材に「使い回しが常態化していた」と話している。
 同保健所によると、使い回しされていたのは、全身麻酔薬「プロポフォール」(販売名フレゾフォール)。同クリニックで使っていたのは主に50ミリリットル(約5千円)の瓶詰で、脂肪吸引や豊胸手術の際に使っていた。
 メーカー(東京)によると、この麻酔薬は防腐剤を使わず、栄養価の高い脂肪乳剤を溶液としているため、一度開封すれば、敗血症の原因になるセラチア菌などの細菌が繁殖しやすい。メーカーは添付文書の「重要な基本的注意」に、1人の患者に1回のみ使用する▽使用した残液や注射器は手術終了時の早い時点で廃棄する――などと明記している。メーカーは「医師であれば細菌増殖の危険性は当然認識しているはず」と話している。
 同保健所の立ち入り検査に対し、診察や手術をほとんど手がける院長(39)は「一度使った麻酔薬の残液をいったん保管し、翌日の別人の手術で使い回したことが、3〜4月に計2回あった」などと説明。その理由について「薬品の基本的な知識を欠いていた」と話しているという。
 同保健所は「不適当な使用」として、改善を指導するとともに、再発防止策を定めるよう求めた。
 一方、クリニックの複数の関係者は、朝日新聞の取材に「麻酔薬の使い回しは頻繁にあった」と言う。使い回しをした直後、関係者がその内容を書き留めたというメモには、院長が使い回しを認めた2度以外の日付と患者名、手術内容、麻酔薬名とともに「○○様分の余り使用」「前日分のフレゾフォールを使用」などと記されている。
 関係者によると、スタッフが院長に注意したことがあったが、「まだ使えるのに、捨てるのはもったいない。どこでもやっていることだ」などと聞き入れられなかったという。
 同クリニックは今後、使い回しをした患者に対し、血液検査などをして健康被害がないか調べる。同クリニックは今年1月に開業し、この麻酔薬を使う手術は月に数件あったという。

たばこが原因で死亡、年間20万人 対策に増税必要? indexへ

 たばこが原因で病気になり、死亡する人は、年間20万人近くにのぼるとみられることが、厚生労働省研究班(主任研究者=祖父江友孝・国立がんセンター部長)の調査でわかった。研究班は「健康対策として、増税を含めたたばこ対策がもっと必要だ」と指摘している。
 国内の四つの疫学調査データを解析した。80〜90年代に40〜79歳の男女約29万7千人に喫煙習慣などを尋ね、約10年間追跡。2万5700人が死亡していた。喫煙率は男性54%、女性8%。
 たばこを吸っていて病気で亡くなるリスクを、吸わない人と比べると、男性では(1)消化性潰瘍(かいよう)(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)7.1倍(2)喉頭(こうとう)がん5.5倍(3)肺がん4.8倍(4)くも膜下出血2.3倍。女性では(1)肺がん3.9倍(2)慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)3.6倍(3)心筋梗塞(こうそく)3倍(4)子宮頸(けい)がん2.3倍などだった。
 また、過去に喫煙歴がある人も含めると、男性のうち27.8%、女性の6.7%が、たばこに関連した病気で死亡していた。
 こうしたデータをもとに、05年の死亡統計にあてはめて計算すると、年間死亡者108万4千人のうち、たばこ関連の死亡者は男性16万3千人、女性3万3千人。05年時点の喫煙率は男性39%、女性11%のため、たばこに関連した病気になり死亡する人は今後、男性で減り、女性で増えると予想される。
 解析の中心となった同センターの片野田耕太・がん対策情報センター研究員は「増税のほか禁煙治療をもっと広めるなど、総合的な対策を進める必要がある」と話している。

ダイエーの39店、無許可で医薬品販売 3年半近く indexへ

 大手スーパーのダイエー(本社・東京)は22日、子会社を含む全国の39店で3年近くにわたり、必要な許可を受けずに医薬品を販売していたと発表した。本部が、該当店舗が許可を取っていると思い込んで発注していたといい、詳しい原因を調べている。
 本部の社員が4日、ダイエー湘南台店(神奈川県藤沢市)を巡回した際、許可を受けずに医薬品を売っていたことが判明。グループの全約340店を調べたところ、06年3月〜08年12月14日の2年9カ月の間に、栄養ドリンクや目薬など106品目、販売点数にして1121点を販売していたことがわかった。調査をしていない06年3月以前にも無許可で販売していた可能性があるという。
 記者会見した葛城輝之広報部長は「小売業としてあってはならないこと。原因調査を進め、再発防止策を策定する」と話し、社内処分も検討する考えを明らかにした。
 薬事法24条では、薬局開設者か販売の許可を受けたものでなければ、医薬品を販売できないとされている。これに違反すれば、3年以下の懲役か300万円以下の罰金が科される。厚生労働省監視指導・麻薬対策課は今回のケースについて「同法違反に該当するかどうかを含めて調査する」としている。

新タイプ抗がん剤で副作用死? 厚労省が注意喚起を指示 indexへ

 がん細胞だけを狙い攻撃する新しいタイプの抗がん剤「ソラフェニブトシル酸塩」(販売名ネクサバール錠)を今年12月までに使った腎細胞がん患者2人が、副作用が疑われる急性肺障害で死亡していたことが19日わかった。厚生労働省は同日、医師らに注意喚起するよう販売企業に指示した。
 同剤は「分子標的薬」の一つ。進行して切除が不可能だったり、転移したりした腎細胞がんに使われる。05年12月に米国で初めて承認され、現在は世界78カ国で承認。日本では今年4月に発売された。製造販売元のバイエル薬品などによると、使用患者数は11月までで約2千人。
 同社が厚労省に報告した内容によると、投与患者4人が間質性肺炎などを発症し、うち2人が亡くなった。急性肺障害は承認前には見つかっていなかった副作用と考えられるとして、厚労省は同社に対し、薬の添付文書に「重大な副作用」として追記するよう指導した。

34都道府県で保険料率アップの見通し 協会けんぽ indexへ

 中小企業のサラリーマンが加入する協会けんぽ(旧・政府管掌健康保険)の保険料率について、厚生労働省は19日の自民党の会合で、都道府県別の試算を示した。現在は全国一律の料率(8.2%、労使折半)だが、来年9月までに都道府県別に設定される。試算では34都道府県で、現在より高くなる。
 厚労省や協会けんぽは、料率上昇を抑えるため、積立金を1500億円程度取り崩す方針。この場合、現在より料率が高くなるのは21道府県にとどまる。料率は来年2月に決まる見通しだ。
 試算は07年度の医療給付受給者状況調査などからはじき出した。最も高いのは北海道(8.88%)で、最も低いのは長野県(7.84%)。
     ◇
■試算で保険料率が現在より高くなる都道府県
 北海道、佐賀、徳島、福岡、香川、広島、長崎、大分、熊本、山口、大阪、石川、岡山、鹿児島、高知、秋田、和歌山、奈良、青森、島根、兵庫
 ※積立金を投入すれば高くならない
 宮崎、鳥取、福井、神奈川、愛媛、福島、沖縄、宮城、富山、京都、岐阜、愛知、東京

心肺停止の79歳女性、6病院が拒否し死亡 福島・矢祭 indexへ

 福島県矢祭町小田川の国道118号で17日、同町関岡の無職高沢ソメさん(79)が歩行中に軽ワゴン車にはねられ、頭や全身を強く打って意識不明になった後、県内や県境を越えた茨城県内の計6病院から計7回、救急搬送を断られていたことが分かった。57.7キロ離れた8病院目に約1時間14分後に搬送されたが、死亡が確認された。
 白河消防本部によると、事故は同日午後6時20分過ぎに発生した。1分後に地元の棚倉消防署矢祭分署の救急車が到着し、隊員が心電図モニターや脈を確認したところ心肺停止だった。同消防署は3分後に最初の病院に連絡したが、近隣病院や当日の当番病院を含めて「急患対応中」「外科医不在」などと受け入れを断られたという。

治験での人工心臓手術後に植物状態 1年後に少年死亡 indexへ

 国立循環器病センター(大阪府吹田市)で昨年春、臨床試験(治験)で補助人工心臓の埋め込み手術を受けた当時18歳の少年が、手術後に植物状態になり、1年後に死亡していたことが分かった。国循は、医療事故ではないと説明している。一方で、植物状態になった後も、治験のデータを取り続け、今年10月の研究会で「重大な故障は0。優れた長期信頼性を実証」と発表していた。
 国循などによると、少年は拡張型心筋症で、07年春、国循で補助人工心臓「エバハート」を体内に埋め込む手術を受けた。この人工心臓は未承認で、治験として手術が行われたが、約2週間後に容体が急変。心停止の時間が長かったため脳障害が残り、植物状態になったという。国循はその後も治験を続行。少年は、人工心臓を付けた状態で約1年後に死亡したという。国循は「医療事故ではなく、機器の不具合ではない」と説明している。
 治験には、インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)が必要で、手術の前には、少年本人と家族が、文書で同意していた。植物状態になって以降、治験を継続する際には、国循側は家族にあらためて、同意の代筆をしてもらっていたという。しかし、家族は同意文書に署名したものの、「この文書の内容を理解(納得)することはできません」との趣旨も手書きで添えたという。
 国循臓器移植部の中谷武嗣部長や、開発者の東京女子医科大の山崎健二准教授は今年10月に東京都内で開かれた日本心臓移植研究会で、3年間の治験成績として、18〜65歳の計18人に埋め込み手術を行い、1年間の生存率は83%と発表。治験中に4人が死亡したことにふれながらも、「重大な故障は0であり、優れた長期信頼性を実証した」と報告した。
 治験中の死亡について、国循の友池仁暢病院長は会見で「治験は薬事法で定められた方法で実施した。患者さん、家族にも十分、納得してもらったうえで行った」と話した。
◆病院側「治験に問題ない」「危険性も十分説明」
 国立循環器病センターでは17日、友池仁暢(ひとのぶ)院長と山本晴子治験推進室長らが記者会見した。友池院長は「薬事法で定められた方法にのっとって治験を実施した。治験の安全性と危険性は十分説明した」として、今回の治験に違法性や倫理的問題があるとは考えていないと強調し、「患者との感情的な問題があるのは分かっているが、その時点で最善の治療をすることが大切」と説明した。
 山本室長は「(本人、家族の)同意は3度確認している」と説明。患者の家族は3度目の同意書に治験への不満を書き込んでいたが、「自発的に日付も名前も書いている。家族の心情の吐露と認識している」として家族が反対しているとは受け取らなかったという。
 病院側によると、治験を続けなければ高額の医療費がすべて自己負担となることも家族に説明していたという。一方で、「患者には治験を強要したわけではなく、中止は可能とも説明した」と語った。患者が植物状態となった際には外部委員らを交えて検証し、エバハートの不具合でなく医療事故でもないと判断したという。

電気メス引火、帝王切開の女性やけど 山梨県立中央病院 indexへ

 山梨県立中央病院(甲府市富士見1丁目)で11月下旬、県内の30代の女性が、電気メスによる帝王切開の手術を受けた際、太もも付近から火が出て、右足に全治1カ月のやけどを負ったことが13日、分かった。出産に影響はなく、女性は退院。病院側はミスを認め、女性に謝罪した。
 病院の説明によると、手術は2人の産婦人科医が執刀。女性の腹部を切開する直前に、下半身付近から火が出たという。やけどを負った右足は氷や水で冷やし、処置後は手術を続け、無事出産した。
 病院が調査したところ、事故原因は、女性の体に塗ったエタノールを含む消毒液「イソジンフィールド」が気化して、高温に熱せられた電気メスに引火したため、という。イソジンフィールドは、揮発性が高く引火の恐れがあることが「注意事項」に記載されていたが、執刀医は電気メスを使う前に、液体を十分にふき取るなどの注意を怠っていたという。
 同病院では10月、虫垂炎などで入院した50代の女性が、誤った鎮痛剤を投与され、一時心肺停止になる医療過誤があったばかり。

病院PFI、初の契約解除 近江八幡市、違約金20億円 indexへ

 公共施設の建設や運営に民間の資本や経営手法を活用するPFI方式を採用した滋賀県近江八幡市立総合医療センターについて、同市は違約金約20億円を支払ったうえで、民間会社とのPFI契約を来年3月末で解除する方針を決めた。06年の開院以来、赤字が続いており、直営に戻した方がいいと判断した。開会中の市議会に関連議案を提案する。PFI方式の病院は計画中も含め全国に11(今年1月現在)あるが、契約解除は初めて。
 違約金は、病院建物を建設して所有する、大手ゼネコン「大林組」出資の特別目的会社(SPC)に支払う。約20億円の内訳は、SPCの逸失利益や、建物の建設資金を融資した金融機関への損失補償など。市は、うち約16億円を財政調整基金を取り崩して支払い、残る約4億円はSPCにすでに払った建物修繕費の未使用分を充てる。
 センターは前身の市民病院の老朽化に伴い、06年10月に新築移転して開院した。経営効率を上げると同時にサービスを向上させるとして、PFI方式を全国で初めて設計から運営まで採用。SPCと06年に30年間の長期契約を結び、市は患者が払う医療費などの収入を得る一方、SPCに給食や検体検査など医療以外の病院運営費を払う形にした。
 ところが、外来患者数は想定の6割に、9割を超すとみていた病床利用率も8割ほどにとどまった。センターの収益が予想を大きく下回る一方で、契約に基づいて市がSPCに支払う額は固定化されているため、07年度には約27億6千万円の赤字を計上した。
 市は今後27年間、契約通りにPFI方式を続けるより、契約を解除して直営にした方が、負担が約110億円軽くなると試算した。

子宮頸がんウイルス検査「勧めない」 指針案に異論も indexへ

 がん検診に関する厚生労働省の研究班は8日、子宮頸(けい)がんを起こすウイルス(HPV)の検査について「死亡率を下げるという証拠が不十分」とし、住民検診に含めることは「勧めない」とする指針案を公表した。欧米の指針などとは異なっており、議論を呼びそうだ。
 子宮頸がん検診は、現行の厚労省指針で、20歳以上の女性を対象に2年に1度実施。頸部をへらでこすって細胞をとる「細胞診」を行う。ただ、細胞診だけでは、頸がんの8割程度しか発見できない欠点がある。
 このため、HPV検査もするのが欧米では一般的。HPVは感染してもほとんどの人は自然にウイルスが消えるが、1割ほどが持続感染。そのうち1割の人で細胞の異変があり、がんに進行する恐れもある。感染者を注意深く経過観察すれば、がんを早期に発見できる可能性がある。
 細胞診とHPV検査の両方を実施すると、見逃しはほぼなくなるとされており、英米やイタリア、オランダなどで採用されている。
 だが、厚労省研究班は、国内外の論文約300本を検討した結果、「(HPV検査の)死亡率減少効果を証明した研究はない」などとし、HPV検査を行えば「過剰な診断につながる可能性もある」と勧めない理由を述べた。
 これに対し、指針案が公表された8日の会議では、異論が続出。日本産婦人科医会の鈴木光明・常務理事は「頸がんは他の部位と異なり、がんになる前に見つけられる。早期で治療すれば子宮を摘出をしなくてすみ、生活の質が確実に上がる」と指摘している。

ニセ医者30年、なぜバレず?免許はコピー、独学で診療 indexへ

 30年近く他人の医師免許を使って診療行為をしていたとして、千葉県船橋市の診療所に勤める男が11月、県警に医師法違反容疑で逮捕された。男は家族にも自らの仕事を語らず医師としての名前と本名が違うことを隠し続け、免許のコピーと独学の知識だけで長年、医師になりすましていた。
 千葉県市川市の住宅地にある長谷川幸夫容疑者(65)の自宅近くに住む男性は「国産の高級車に乗り、朝早くに出かける日もあれば、昼から出て明け方に帰ってくる日もあった。20年近くご近所でも、何の仕事をしているのか全くわからなかった」と話す。周辺住民だけでなく、妻や別の場所に住む息子、娘など家族でさえ長谷川容疑者の仕事について知らなかったという。
 県警のこれまでの調べや長谷川容疑者の供述では、同容疑者は高校卒業後に職を転々とし、人工植毛会社に勤めていた77、78年ごろ、毛髪の専門治療を行う高知県内の病院に派遣された。そこで当時の院長の医師免許を、気づかれないようコピーしたという。
 80年ごろからは東京都墨田区の診療所で、巡回健康診断を行う健診車の運転手として働いた。間もなく、免許のコピーにある医師名で問診などの医療行為を開始。カルテや医学書を見ながら、勤務医の診察を観察して勉強した。「全くの独学だった」と話しているという。
 86年6月ごろからは船橋市の診療所に非常勤の整形外科医として入り、今年10月末まで毎週月曜に勤務した。カルテの残る04年からは延べ2400人を診療し、投薬や注射をしていたという。
 診療所は無床で手術設備もないため、重傷患者を診る機会は少ない。捜査関係者によると、長谷川容疑者は骨折の治療もしたことがなかったという。このことも発覚を遅らせたとみられる。
 収入の多くは、この診療所から派遣された企業の巡回健診で、年1千万円近くの報酬があったとされる。ほかに週1回の整形外科勤務で月約30万円。船橋市夜間休日急病診療所の当番医も務め、同医師会によると98年から10年間に約760人を診療していた。1回の夜間勤務の報酬は7万〜10万円。それらを合わせると年収は約1500万円に上っていたらしい。
 長谷川容疑者は診療所などに対し、長谷川という自らの本名を「マネジメント会社の担当者名」と説明したうえで、給与を自分の口座に振り込ませていた。
 長谷川容疑者は家にはいっさい仕事道具を持ち帰らず、家族は「仕事については『聞くな』と怒られ、何も聞けなかった」と県警の調べに答えている。県警も、家族は長谷川容疑者が医師として働いていたことを知らなかったとみている。診療所側も「忘年会のつきあいだけでプライベートについては何も知らない」と話す。長谷川容疑者は同僚らに家族の話もせず、日常生活と仕事を切り離して隠し通していた。
 一方、医師免許の確認は、末端の病院管理者に委ねられていて、原本の確認が徹底されていないのが実情だ。
 船橋市の同診療所も03年に法人化した際、長谷川容疑者から免許のコピーの提出を受けていた。それも「精巧で見抜けなかった」と院長はいう。さらに診療所内では長谷川容疑者が最も在籍期間が長く、採用時の院長は故人となっていた。職員らは「来てもらっている側として、先生に免許原本を見せてくださいということ自体、失礼という雰囲気があった」。
 医師法違反容疑で逮捕後、長谷川容疑者は「最初はただ金がほしかった。高収入が得られ、やめられなくなった」と話しているという。
     ◇
 〈医師免許〉 医師国家試験の合格者に与えられ、更新の必要はない。写真はなく、氏名と住所、登録番号にあたる「医籍」が記載されている。医籍は名簿管理が目的で本人確認などには使われていない。開業時や病院採用時は、自治体や病院管理者が免許と大学の卒業証明書の両方の原本を確認することが原則、と厚生労働省は指導している。

新生児集中治療室、国立大の全病院に 文科省計画 indexへ

 脳出血を起こした東京都内の妊婦が大学病院を含む複数の病院に受け入れを断られ、出産後に死亡した問題などを受け、文部科学省は5日、国立大学病院の周産期医療体制を充実させる「整備計画」を発表した。09年度から4年間ですべての国立大学病院に新生児集中治療室(NICU)をつくり、半数の病院でNICUなどの病床を20床に増やす計画だ。
 現在、NICUがない国立大学病院は、弘前、山形、千葉、東京医科歯科、福井、山梨、岐阜、佐賀、長崎の9施設。計画では、1病院、最低6床のNICUを設置する。
 高齢出産などの増加でリスクの高いお産が増える中、高度な治療ができるNICUの重要性は高まっている。また国立大学病院の整備を重視する背景には、周産期医療を行っている大学病院を対象に実施した調査(11月1日時点)で、国立大の整備の「遅れ」が目立ったことがある。
 NICUがある大学病院(本院)は、公立は8病院中8施設、私立は29病院中27施設だったが、国立は42病院中33施設。平均病床数(施設がある病院の平均)も、公立8.3床、私立11.3床に対し、国立は7.4床だった。
 NICUに、リスクの高い妊婦に対応する母体・胎児集中治療管理室(MFICU)、NICUを出た子どもが入る継続保育室(GCU)を加えた平均病床数は、国立大学病院の場合、11.4床(施設がない病院も含む)。文科省はこうした施設についても、半数の21の国立大学病院で最低20床の確保を目指す。文科省は今回の整備で、国立大学病院のNICUとMFICU、GCUを240床程度増やしたい考えだ。
 一方、周産期医療の充実には、人材確保も重要課題となる。そのため、公私立も含めた全大学病院で、周産期医療にたずさわろうとする医師への教育環境の整備、産科や小児科への女性医師の復帰促進、院内助産所を活用した産科医の負担軽減などの取り組みを支援する。
 文科省は09年度予算の概算要求で、産科医や小児科医育成を促す費用として89億円を計上し、うち58億円をこうした計画の推進に充てる考え。
 文科省の調査によると、リスクの高いお産を扱う総合周産期母子医療センターは全国で75施設が指定され、大学病院が28施設を占める。大学病院が扱う分娩(ぶんべん)数は、分院も含めると07年度は5万47件で、05年度に比べて20%増。うちリスクの高い分娩は2万791件で24%増えている。

骨髄移植1万例、バンク始動から16年 なおドナー不足 indexへ

 日本骨髄バンク(骨髄移植推進財団)は4日、国内の骨髄移植が3日で1万例を超えたと発表した。バンクの活動開始から16年かかった。骨髄提供者の登録は32万7千人に増えたが、登録者と白血球の型が合わないなどで移植できない待機者は11月末で2360人。毎年、待機者の約2割が亡くなるため、さらに、登録を呼びかけている。日本さい帯血バンクネットワークも、臍帯血(さいたいけつ)移植が2日で5千例を超えたと4日に発表した。

「5年前より医師減」研修病院の4割 日本医師会調査 indexへ

 全国の研修病院の約4割が、5年前と比べて医師数が減っていることが3日、日本医師会が実施した病院アンケートで明らかになった。地域別では、東北と中四国地方で減った病院の割合が大きく、診療科では産婦人科と内科の深刻度が際だった。
 全国2668病院から回答があった。このうち新卒医師が最初に研修するなど地域医療の中核とみなされる研修病院(大学病院を除く)1018施設について解析したところ、5年前と比べて医師数が減ったと回答したのは41%。
 地域別で医師数が減った病院は東北(47%)、中・四国(44%)、近畿(42%)の順に多かった。診療科別では、産科・産婦人科(39%)、内科(38%)、精神科(34%)で医師数が減った割合が高かった。
 日本医師会は「内科では外来診療をやめる事例が、産婦人科では病棟閉鎖などが多くなった」と分析している。

札幌未熟児死亡 2病院はNICU持たず、5病院は満床 indexへ

 札幌市の女性が自宅で早産した未熟児が昨年11月、病院に相次いで受け入れを断られ、8カ所目となる搬送先の病院で数日後に死亡した問題で、7病院は、未熟児の治療に必要な新生児集中治療室(NICU)が満床だったり、備わっていなかったりしていたことが分かった。当時、「たらい回し」の末の妊婦や胎児の死が問題化していた。なぜ、教訓は生かされなかったのか。
 未熟児の受け入れを断った病院のうち、NICU病床を持つのは5病院(計42床)。
 高度医療の中核である総合周産期母子医療センターに指定されている市立札幌病院(NICU9床)は「当日夜は満床のうえ、当直医師も別の新生児の治療中で引き受けられなかった」と説明。翌日になってNICUに空きができ、搬送先となった手稲渓仁会病院に転院を打診したが、「動かせる状態になかった」という。
 札幌市内で最多の12床を備える天使病院は「当時の記録は残っていないが、満床で断ったと思う」、札幌医大病院は「満床だったので断った可能性が強い」と話した。北大病院は当日、院内感染対策でNICUを消毒中で、「受け入れ不能の状態だったはず」という。
 消防と病院の意思疎通の不足を思わせる事態もあった。
 7カ所目の要請先だった道立子ども総合医療・療育センターは、NICUは満床だったが「調整をしてみるので、後で連絡したい」と回答。だが市消防局は「それなら渓仁会に連絡する」とだけ答え電話を切ったという。同センターは「断ったという意識はない。最大限の努力はするつもりだった」と困惑する。
 NICUを持たない2病院も要請を受けた。
 札幌徳洲会病院は「この症状では当院での治療は無理という判断が当然。設備のある病院で手だてを作ってもらわなければ困る」と説明。KKR札幌医療センターも「毎晩産科医がいるわけではないし、そもそも急患は妊娠34週以降に限っている」と要請自体を疑問視する。
 市消防局は、これら7病院への搬送要請について「次々と断られたので範囲を広げるしかなかった」と説明している。

早産男児を7病院拒否、その後死亡 札幌で昨年11月 indexへ

 昨年11月、札幌市内の女性が自宅で早産した未熟児が、市内7病院で受け入れを断られ、1時間半後に新生児集中治療室(NICU)のない病院に搬送され、その後亡くなっていたことが分かった。札幌市が2日に記者会見した。
 市などによると、女性は昨年11月15日、妊娠27週の早産で男児を出産した。市消防局が同日深夜に119番通報を受け、約6分後に救急車が到着。女性のかかりつけ医の医院では手当てが難しいケースと判断され、消防局指令情報センターが病院探しを始めた。
 約20分後、救急車が搬送を始め、約10分後に市立札幌病院救命救急センターの医師が合流して車内で応急処置にあたった。指令情報センターは北大、札幌医大など7病院に受け入れを打診したが、断られた。NICUのある病院は「満床」だったという。
 このうち、新生児の高度医療の中核病院である総合周産期母子医療センターに指定されている市立札幌病院では、NICUが満床だったうえ、当直医も別の患者を治療中だったという。
 新生児は1時間半後にNICUのない同市手稲区の私立病院に収容された。市立札幌病院は翌日、NICUに空きが出たため、新生児の受け入れを私立病院に打診したが、「動かせる状態ではなかった」という。新生児はその後、亡くなった。
 会見した市立札幌病院の野崎清史・経営管理部長は「地域の周産期医療の中心として可能な限り受け入れたかったが、結果的にお子さんが死亡してしまったことは非常に残念だ」と話した。
 NICUのベッド数は各地で不足が指摘されている。札幌市には6医療機関で48床があるが、医療技術の進歩で救える未熟児が増え、長期に治療するケースが増え、満床となることが多いという。

インフルエンザ流行の兆し、例年より早く indexへ

 国立感染症研究所感染症情報センターは2日、インフルエンザが流行の兆しを見せ始めていると発表した。11月23日までの1週間の患者数は1施設あたり0.56人と、前週の0.31人から増加。この時期としては過去10季の中で、昨季に次いで多く、例年より早い立ち上がりという。
 全国約5千の医療機関からの報告をもとにまとめた。大阪を中心とした近畿地方で流行しているほか、山梨、島根の両県で報告が急増した。年齢別では5〜9歳が3割を占める。ウイルス型は、Aソ連型が20%、A香港型が42%、B型が38%。
 例年1〜2月が流行のピークで、同センターの岡部信彦センター長は「本格的な流行に備え、こまめに手を洗うなど予防を心がけてほしい」と注意を呼びかけている。

大阪府松原市、市立松原病院を来春に閉院へ 再建を断念 indexへ

 大阪府松原市は、来年3月末に市立松原病院(桑田博文院長、162床)を閉院する方針を決めた。医師不足や患者の減少により、07年度末の累積赤字は40億円近い。財政難で老朽施設の建て替えもできず、再建は難しいと判断した。
 総務省は全国の自治体に今年度中に公立病院の改革プランを策定し、経営を改善するよう求めているが、財政難の自治体が医師不足による病院経営の悪化を食い止めるのは容易でなく、閉院や機能の縮小が各地で進む恐れがある。
 同病院は大学病院の医師派遣の減少や激務による退職などで01年度に12診療科に38人いた常勤医が27人に減り、900人以上いた1日の外来患者も500人近くになった。24時間救急については、04年に内科、07年に小児科をやめ、病床も07年に221床から162床に減らすなどスリム化を図ったが、病床利用率は逆に70%を割り、「医師不足と患者減少の悪循環を断ち切れなかった」(長谷川修一事務局長)。
 老朽化した本館と北館など4病棟の建て替えも、約100億円かかる見込みで、財政上難しい。こうした現状から、同市は経営立て直しは現実的でないと判断した。
 中野孝則市長は「不採算でも必要な医療の確保に努めてきたが、これ以上の経営改善は難しい」と話す。12月議会に病院廃止を諮り、近隣病院と病床の割り振りなどについて調整するという。

便秘治療薬の副作用?高齢者2人死亡 厚労省が注意喚起 indexへ

 便秘や胃炎の治療などに使われる医療用医薬品「酸化マグネシウム」を飲んだ高齢者らが、意識を失うなど高マグネシウム血症を起こし、2人が死亡していたことが27日、わかった。厚生労働省は、薬の添付文書に「重大な副作用」として記すよう販売企業に指示、長期投与する場合は経過をよくみるよう医師に注意を促す文書を出した。
 酸化マグネシウムは便通を良くしたり、胃酸を抑えたりする薬。副作用として高マグネシウム血症があり、意識障害や呼吸抑制、不整脈などが起きうることは知られていたが、死亡など重篤例がわかり、措置をとった。
 05年4月から今年8月までに、高マグネシウム血症を起こしたと報告された15例を詳細に検討し、判明した。死亡した2人はいずれも長期服用者とみられる。厚労省は、長期投与の場合、患者の血中マグネシウム濃度を測るなど十分観察するよう医師に呼びかける。
 同薬は国内で50年以上使われ、販売企業は約20社、推計使用者数は年間延べ約4500万人。同じ成分が大衆薬にも含まれるため、厚労省は、該当製品を副作用リスクの高い医薬品として分類変更し、販売時規制を強化する方針。

タミフル備蓄 国の負担要求に、橋下知事「地方破綻」 indexへ

 大阪府の橋下徹知事は26日の記者会見で、厚生労働省が新型インフルエンザ対策としてタミフル備蓄のための財政負担を地方に求めていることについて「本当にバカげている。あきれる」と酷評した。
 同省は今秋、タミフル2660万人分を新たに備蓄することを決め、負担の半分を人口に応じて都道府県に配分。府も来年度予算で約25億円(92万人分)の財政負担が必要になっている。
 橋下知事はこうした措置を一方的と反発。「命を守るために備蓄せざるを得ないが、財政規律を守れと言いながら、必要だから準備しろというのはむちゃくちゃ。しまいには地方は破綻(はたん)するか、借金をしまくるかどっちかしかない。霞が関にいるのではなく、現場に来いと言いたい」などと批判した。
 この問題では全国知事会も先月、同省に「本来国で必要量すべてを確保すべきだ」との意見を表明している。同省結核感染症課の担当者は「国と都道府県が費用を分担するのは公共事業でもよくある。台所事情で色々な意見があるのだろうが、わかっていただきたい」と話した。

命救うAED、部品期限切れ 富山市施設 indexへ

 富山市が購入したAED(自動体外式除細動器)に部品の一部が使用期限が過ぎているものがあることがわかった。市は今年8月に指摘を受け、設置施設に交換するよう指示してきたが、26日現在も1台が未交換という。
 市によると、期限切れになっていたのは、胸や脇腹に張り付けるための「電極パッド」。2年ほどの使用期限が過ぎるとジェル状の中身が乾燥し、体にうまく張り付かなくなる恐れがあるという。
 市内の施設には現在374台が置かれている。このうち最も古い05年購入の58台分について、部品の交換を指示した。購入・設置時に各施設に期限を説明したが、担当者は「ふだん箱の中に入っているパッドの袋に記されており、わかりにくくなっていた」としている。

74歳女性に補助人工心臓 阪大病院が新治療法 indexへ

 大阪大学病院(大阪府吹田市)は26日、重い心臓病を患って入院していた女性(74)が、補助人工心臓の埋め込み手術で回復し、近く退院すると発表した。高齢者が長期使用目的で人工心臓をつけ、在宅治療に入るのは国内で初めてという。同様の高齢患者は国内に千人以上おり、新しい治療法として期待される。
 同病院によると、女性は、重症の虚血性心筋症を患った奈良県在住の南元子さん。07年7月に心筋梗塞(こうそく)で倒れ、今年5月から同病院で入院していた。国内では心臓移植を受ける患者は「60歳未満が望ましい」とされる。南さんが自宅療養を望み、今年9月に新型で小型の補助人工心臓の埋め込み手術を行った。装置は直径約2センチ長さ約5センチの筒状。耐久性があり、英国で7年半使用した患者がいるという。
 南さんは「これを付けて、世の中が開けた感じ」と喜びを語った。これまで病室に寝たきりだったという。
 心臓血管外科長の澤芳樹教授は「新しい治療法として、移植を待つ患者、受けられない患者の選択肢にできるようにしたい」と話した。
 国立循環器病センターの中谷武嗣臓器移植部長は「欧米では、同様の治療法は、長期の在宅治療として広まりつつある。移植以外の選択肢としても、国内でも検討すべき課題だ」という。

着床前診断の規制 根津医師の敗訴確定 indexへ

 遺伝性の病気などを調べるための受精卵診断(着床前診断)を、日本産科婦人科学会が自主規制しているのは違法だとして、長野県下諏訪町の根津八紘医師らが、学会規則(会告)の無効などを求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は25日、根津医師側の上告を棄却する決定をした。訴えを退けた一、二審判決が確定した。

「パートタイム看護師」も検討 不足解消策へ専門家会議 indexへ

 舛添厚生労働相は25日、閣議後の会見で、看護師不足に対応するため専門家会議を設置する考えを明らかにした。資格を持ちながら働いていない看護師の復職支援や医療機関へのパートタイム導入支援などを検討する。27日に初会合を開き、早ければ、年内にも対策を打ち出す。
 看護師不足は近年著しいが、特に人手不足で新生児集中治療管理室(NICU)を稼働できず、妊婦の搬送受け入れ不能につながっていると指摘され、注目されている。

私は過敏症」カードで治療間違い防止 患者団体考案 indexへ

 「私は過敏症です」。化学物質などに体が過敏に反応する症状に悩む人たちのグループが、こんな言葉を記した名刺大のカードを東海地方で普及させようと取り組んでいる。過敏症の人には、事故や急病などで緊急の治療をする際、適切な薬剤を使うなどの配慮をしないと症状を悪化させてしまう場合がある。カードは、自分が過敏症であることを周囲に知らせて、こうしたトラブルを防ぐのが目的だ。グループの人たちは「過敏症への理解も広がれば」と期待する。
 カードの普及を進めているのは愛知、岐阜、三重各県などに住む過敏症の患者ら約50人でつくる「サスティナブル21」。カードは二つ折りになっていて、表には「緊急の際のお願い」として化学物質や電磁波に対する過敏症の説明を記載。内面には自分の緊急連絡先やかかりつけの医療機関を記入する欄がある。紙やインクの過敏症患者に影響が少ない竹パルプの紙と石油系の溶剤が含まれないインクを使った。9月に神奈川県の患者らでつくる「CS和の会〜化学物質過敏症の仲間たち」が考案した。
 サスティナブル21の代表、小沢祐子さん(63)=岐阜市=は知人を通じてこのカードを知り、メンバーに配るため10枚を神奈川のグループに注文した。過敏症の人は、成人だけで全国に70万人ほどいるとみられている。小沢さんは「潜在的な患者は東海地方にもまだまだいる」として、必要に応じて注文を重ね、広く配っていく考えだ。
 小沢さんは十数年前、手術後に抗生剤を投与されてから過敏症に悩まされている。公共施設やスーパーでは、散布された薬剤の影響で湿疹ができるなどの症状が出ることがあるという。
 昨年9月には外出先で足を骨折し、救急車で運ばれた。「過敏症の説明に苦労したが、カードを携帯していればスムーズにいくはず。カードが過敏症に対する理解にもつながれば」と話している。
 サスティナブル21への問い合わせは小沢さん(090・9195・6629)。カードは1枚100円で、注文は「CS和の会」に、電子メール(cswanokai@yahoo.co.jp)か、郵便(〒221・0835 横浜市神奈川区鶴屋町 かながわ県民センター12階 かながわボランティアセンター気付 CS和の会緊急カード係)で申し込む。

シックハウス物質、イヌ並みに嗅ぎ当て 新センサー開発 indexへ

 シックハウス症候群の原因物質を、イヌの鼻に匹敵する高感度で検出する小型ガスセンサーができた。産業技術総合研究所東北センター(仙台市宮城野区)とセンサー会社の船井電機新応用技術研究所(茨城県つくば市)の共同研究。さまざまな有毒ガスや残留農薬の検出にも応用できるという。
 家具や塗料などから出るホルムアルデヒドは微量でも頭痛やめまい、アレルギーなどの健康被害を招き、シックハウス症候群の原因として問題になっている。
 産総研・ナノ空間設計チームの伊藤徹二研究員らは、ガラスの材料であるシリカ(二酸化ケイ素)に直径8ナノメートル(ナノは10億分の1)のストロー状の空間を無数に作る技術を確立。ホルムアルデヒドにだけ化学反応する酵素をその空間に閉じこめた。そのシリカを入れた容器に空気や水を流し、反応の電気信号が出ればホルムアルデヒドが存在することがわかる。
 検出システムを工夫したところ、訓練されたイヌしか感じない程度の、ごく薄いホルムアルデヒドでもわかるようになった。大学の実験室にある高価な大型装置と同じ能力を、安価な小型装置で達成したことになる。
 また、これまで開発されてきた酵素利用型のセンサーは感度が低いうえ、使うごとに感度が下がるのが欠点。たんぱく質である酵素が劣化するためだが、新センサーは酵素が微小空間で保護されており、20回使っても感度が落ちなかったという。
 船井電機研は「新築家屋や食材検査の現場に持ち込んで繰り返し使えるよう、携帯電話ほどに小型化したセンサーを実用化したい」という。
 一方、シリカの空間は自由に大きさを変えることができる。産総研の伊藤さんは「さまざまな有機化合物や殺虫剤などと反応する酵素に合わせたセンサーを設計し、応用の幅を広げていきたい」と話す。

薬害C型肝炎訴訟、全被告企業と和解へ 日本製薬とも indexへ

 薬害C型肝炎訴訟の全国原告・弁護団は24日、大阪市内で会議を開き、被告企業のうち1社だけ残っていた日本製薬(本社・東京都)が提示していた和解案を受け入れることを決めた。田辺三菱製薬(大阪市)、その子会社ベネシス(大阪市)とは9月に和解合意しており、これで製薬企業との訴訟は全面的に終結に向かう。
 12月14日に日本製薬との間で基本合意書を締結するよう調整している。合意書には、日本製薬が被害の発生・拡大を防げなかった責任を認めて謝罪する内容のほか、再発防止への取り組みが盛り込まれる見通しだ。

ハイリスク分娩、医師に手当 1件10万円さいたま方針 indexへ

 さいたま市は21日、ハイリスクな妊婦の分娩(ぶんべん)や妊婦の救急搬送の治療にあたる同市立病院(緑区)の産科の勤務医に、来年1月から1件10万円の手当を支給する方針を明らかにした。地域の基幹病院として産科の勤務医を確保したいねらいがある。
 厚生労働省によると、ハイリスクな妊婦らに着目した手当の創設は、民間病院を含め全国でも異例という。
 対象は研修医を除く産科の勤務医8人。妊娠22〜32週未満の早産▽同28週以降で出血などの症状を伴う前置胎盤▽40歳以上の初産▽妊娠高血圧症候群で他の医療機関から搬送されたケースなどに対応した場合に支給される。市は年間約200件を見込み、来年1月の開始を目指す。
 同病院は国の地域周産期母子医療センターに指定され、慶大医学部の医局から多くの医師の派遣を受けている。しかし、来春の異動で交代要員が補充されるか厳しい情勢という。今後、各方面から医師を確保したいという。
 ただ、ハイリスク分娩などの場合、産科医以外にも小児科医らも立ち合うため、「不公平感が生じるのでは」と懸念する医療関係者も少なくない。遠藤昌夫院長は「現場で不満が出ないように調整を進める」と話す。
 産科勤務医をめぐっては、厚労省が来年度から、民間・公立病院の医師を対象に、一般的な分娩1件につき1万円の手当を支給する方向で調整している。

100歳以上の医療費を無料化 藤沢市、来年度から indexへ

 神奈川県藤沢市は21日、100歳以上のお年寄りの医療費の自己負担分を無料化する「福寿医療費助成制度」を来年度から始めると発表した。同市内の100歳以上は、9月1日現在で109人。うち30人は障害の関係で自己負担がなく、予算規模としては約1100万円を見込む。
 市によると、申請に基づいて発行する「福寿医療証」を後期高齢者の保険証とともに医療機関に示せば、自己負担分を払うことなく、診療を受けられる。ただし、入院中の差額ベッド代などは別に必要になるという。
 同市によると、他の市町村では東京都日の出町が75歳以上を来年度から無料化する方針を決めているという。海老根靖典市長は「地域や社会に貢献した方々の健康と長寿を願う」と目的を説明した。

心臓移植、異性間だと生存率低下 米大の研究チーム indexへ

 米国で行われた心臓移植では、臓器提供者と患者の性が同じ場合、異性間の移植に比べて患者の生存率など手術後の成績が良いことがわかった。米ジョンズ・ホプキンス大の研究チームが米心臓協会の学術集会で発表した。
 98〜07年にあった1万8千例あまりの心臓移植の全米臓器分配ネットワーク(UNOS)の記録を分析し、移植後の生存率などを調べた。
 その結果、症例の71%を占める同性間移植では、手術から30日以内に患者が死亡する確率が、異性間移植に比べ25%低かった。手術から1年以内に拒絶反応が起きる確率も13%低くなるなど、さまざまな指標で同性間移植の方が成績がよかった。
 チームは、異性間移植では心臓の大きさに差があることが短期的な成績の差に関係しているとみているが、「長期的な差の原因は別にあるかもしれない」としている。
 チームのエリック・ワイス博士は「同性の提供者が現れるまで移植を待つべきではないが、1人の患者に対して複数の提供者がいる場合は、性を合わせたほうがよい」と言っている。
 日本の心臓移植患者選択基準では、提供者と患者の体重差が「マイナス20%からプラス30%以内」とされているが、性の組み合わせは直接には考慮されていない。

患者搬送断った経験7割 全国の周産期センター indexへ

 厚生労働省が、リスクの高い妊婦と新生児を診る全国の総合周産期母子医療センターを対象に調査した結果、回答施設の7割が、07年度中に母体搬送を受けられなかった経験があると回答したことがわかった。
 東京都内で容体が悪くなった妊婦が相次いで受け入れを断られた問題を受けて、厚労省が45都道府県の全75施設を対象に調べた。20日午後、周産期医療と救急医療の専門家でつくる厚労省の有識者懇談会で報告された。
 調査結果によると、厚労省が24時間複数体制が望ましいとしている7床以上の母体・胎児集中治療管理室(MFICU)がある22施設のうち、当直時間帯の医師が1人しかいない施設は6施設あった。
 母親の搬送については74施設が回答。72%にあたる53施設が搬送を断ったことがあると答えた。回答したセンター数は2年前の調査に比べて1.3倍になったが、搬送を断った施設の割合はほぼ同じだった。
 搬送を断った理由では、49施設(93%)が「新生児集中治療管理室(NICU)満床」、31施設(59%)が「MFICU満床」をあげた。
 新生児の搬送については70施設が回答し、60%にあたる42施設が搬送を断ったことがあると回答。このうち40施設(95%)が「NICU満床」をあげている。

1人感染で都道府県単位の学校閉鎖 新型インフルエンザ indexへ

 新型インフルエンザ対策として厚生労働省の専門家会議は20日、感染者が1人でも確認された時点で、都道府県単位で学校などを休校とする指針を決めた。ウイルスが流入した初期段階で、感染拡大を抑制する目的。年度内にも関係省庁との連絡会議に諮り、政府合意を目指す。
 同日の会議で案として示され、大筋で了承された。指針では、感染者が確認された場合、その地域を含む都道府県が管内のすべての幼稚園や小中学校、高校などに対し、臨時休校を求める。あわせてコンサートや映画館など不特定多数が集まる施設に対しても営業や活動の自粛を求める。
 近隣の県でも、感染者の通勤・通学状況などを踏まえ、休校などの措置を検討する。閉校措置の解除については、感染状況をみながら都道府県が厚労省と協議する。
 これまでの指針では感染者が出た場合、まず市町村単位で学校閉鎖を求め、さらに感染拡大があれば、休校措置を都道府県単位に広げることになっていた。だが、人との接触で広がる新型インフル感染をできるだけ食い止めるには、子どもらが集まる教育施設を、まず広範囲に閉鎖する必要性があると判断した。
 政府は、感染拡大の防止策として、外出を控えて自宅にいるよう国民に呼びかけており、約2週間分の食料やマスクの備蓄を推奨している。
 また指針は、流行時には、かかりつけ医のいる患者は、電話による聞き取りで感染疑いが診断された場合、治療薬の抗インフル薬の処方箋(しょほうせん)をファクスで受け取れる仕組みも提言した。感染疑いのある人が、医療機関や、特別に設置される「発熱外来」に集中するのを防ぐ狙いがある。
 入院治療については、感染が拡大した場合は重症者に限り、軽症者は自宅療養を勧めることも盛り込んだ。

自主回収もれの機器で医療事故 石川、乳児一時重体 indexへ

 自主回収されるはずの医療器具が使われ、乳児が一時重体に陥ったとして、東京都は19日、医療機器製造販売会社「五十嵐医科工業」(東京都)に麻酔器「OR ジャクソンリース セット」の回収命令を出した。
 都や厚生労働省によると、石川県内の病院で10月、この麻酔器を「人工鼻」と呼ばれる他の器具と接続して0歳の乳児に使ったところ、呼気を出す部分がふさがれ、呼吸困難に陥った。一時心肺停止に陥ったが、回復したという。
 この麻酔器は同種の他社製品で死亡事故が01年に起こったため、同年4月から自主回収が進められていた。都によると、97年4月〜01年3月に4290個が出荷されたが、回収は2347個にとどまっている。

誤って筋弛緩剤投与、患者死亡 徳島・鳴門の病院 indexへ


 徳島県鳴門市撫養(むや)町黒崎の健康保険鳴門病院(増田和彦病院長)は19日、誤って抗炎症剤ではなく筋弛緩(きんしかん)剤を点滴で投与された70代の男性患者が死亡した、と発表した。当直医が電子カルテに薬剤の名称を記入した際に誤表示され、そのまま薬剤師が用意してしまったのが原因で、蘇生を試みたが意識が戻らなかったという。病院から届け出を受けた県警は業務上過失致死の疑いもあるとみて、医師ら関係者から事情を聴いている。
 同病院によると、この男性患者は肺炎と胸膜炎で入院していた。17日午後9時ごろ、39度を超える発熱があったため、看護師が当直医に連絡。当直の30代の女性医師は、患者のアレルギー体質を考慮して抗炎症剤の副腎皮質ホルモン「サクシゾン」の投与を決め、電子カルテのパソコン端末に記入。その際、最初の3文字(サクシ)だけを入力して薬剤名を検索したが、同病院でサクシゾンは扱っていなかったため、画面には筋弛緩剤の「サクシン」だけが表示された。
 病院によると、医師は画面を見たが「サクシゾン」のことと思いこんだという。薬剤師は、投与の量が200ミリグラムと少なかったため不自然と思わず用意。点滴での投与を担当した看護師は、医師に「本当にサクシンでいいのですか」と口頭で確認したが、医師は「(点滴の時間設定を)20分でお願いします」とだけ答えたという。患者は投与から約2時間半後、意識不明の状態で見つかり、約2時間にわたって人工呼吸などを施したが死亡した。
 同病院は、両方の薬品名が紛らわしいため、5年ほど前にサクシゾンの常備をやめていた。だが、女性医師は半年前に同病院に勤めだしたため、知らなかった。処方した薬剤が正しいかどうかの医師による確認は義務づけていなかったという。
 記者会見した増田病院長は「カルテの入力だけで薬剤師に薬をオーダーしているのに、相互チェックの仕組みがなかった。医師の思いこみから、看護師による確認に気付かなかったのも誤りの原因。大変申し訳ない」と謝罪。電子カルテの表示の改善など再発防止に努める、と話した。

首相「医者は社会的常識欠落した人多い」 会議後に謝罪 indexへ

 麻生首相は19日の全国知事会議で、地方の医師確保策についての見解を問われ、「自分が病院を経営しているから言うわけじゃないけれど、大変ですよ。はっきり言って社会的常識がかなり欠落している人が多い」と語った。
 首相はさらに「(医師不足が)これだけ激しくなってくれば、責任はお宅ら(医師)の話ではないですかと。しかも『医者の数を減らせ減らせ、多すぎる』と言ったのはどなたでした、という話を党としても激しく申しあげた記憶がある」と続けた。その上で、医師不足の一因とされる臨床研修制度の見直しなどに取り組む考えを示した。
 首相は会議後、記者団に発言の真意を問われ、「まともなお医者さんが不快な思いしたっていうんであれば、申し訳ありません」と謝罪した。首相の地元・福岡県飯塚市には、親族が経営する麻生グループ傘下の飯塚病院がある。
 首相の発言に対し、日本医師会の中川俊男常任理事は記者会見で「信じられない。総理がそんなことを言うとは思えない」と語った。日本医師会の政治団体「日本医師連盟」は自民党の支持団体。ただでさえ、診療報酬などをめぐり両者の距離が広がっていると指摘されるだけに、党内には総選挙への影響を危惧(きぐ)する声も出ている。

医学生7割「医師不足地域で勤務OK」条件は給与・住居 indexへ

 医学生の7割は、医師不足地域での勤務も条件次第でOK――。全国160の大学と研修指定病院の医学生・研修医らを対象にしたアンケートで、こんな傾向が浮かび上がった。ただ公的機関による医師の計画配置には半数近くが反対。結果を分析した厚生労働省は「医師不足対策は、強制でなく勤務環境の整備が大切だ」としている。
 全国医学部長病院長会議と指定病院でつくる臨床研修協議会が共同で10月に実施。医学生、研修医ら約9千人から回答を得た(回収率61%)。
 医師不足地域での仕事に「条件が合えば従事したい」と答えたのは医学生が71%。だが卒後1〜2年の研修医は65%、卒後3〜5年の医師は59%、研修医らを指導する役割の指導医は47%と、年を重ねるごとに割合は減った。
 医学生が医師不足地域で働く条件としたのは、「処遇・待遇(給与)がよい」(67%)、「居住環境が整備されている」「自分と交代できる医師がいる」(以上、58%)と待遇面が目立つ。「他病院との連携がある」(45%)など、医療体制を重視する声も高かった(複数回答)。
 一方、国などの公的機関が医師の勤務地を決める「計画配置」について尋ねたところ、全体の52%が「反対」。特に卒後3〜5年の医師のうち58%、研修医の57%が反対し、医学生の49%より割合が高かった。

新たなHIV感染者、過去最多294人 7〜9月 indexへ

 厚生労働省のエイズ動向委員会(委員長=岩本愛吉・東大教授)は19日、7〜9月に新たに報告されたエイズウイルス(HIV)感染者数が294人だったと発表した。3カ月間の感染者数としては、統計を取り始めた85年以降、最多。累計感染者数も初めて1万人を突破した。
 新規のエイズ患者の報告数も、119人と過去2番目に多かった。HIV感染者の内訳は、同性間の性的接触によるものが211人(72%)と最も多く、日本人男性で97%を占める。岩本委員長は「全体的に右肩上がりだが、特に男性間の性的接触に対する啓発が課題だ」とした。

社会保障給付費、過去最高の89兆円 06年度 indexへ

 06年度に医療や年金、介護などに税金や公的保険から支払われた社会保障給付費は、過去最高の89兆1098億円となったことが18日、国立社会保障・人口問題研究所のまとめで分かった。前年度からの伸びは1.5%で、1950年度の集計開始以来、3番目に低かった。06年4月の診療報酬改定が、過去最大のマイナス3.16%だった影響だという。
 分野別では、全体の32%を占める医療は、28兆1027億円。前年度の28兆1094億円から微減した。53%を占める年金は47兆3253億円で2.2%増。福祉分野も、児童手当の支給対象拡大などに伴い、2.3%増の13兆6818億円になった。
 高齢者関係への給付が最も多く、62兆2297億円で、70%を占めた。一方、子育て支援費用が含まれる児童・家族関係は3兆5391億円で4%にとどまった。また06年度は、障害者自立支援法施行で障害関係に分類される費用が増えたため、15%増の2兆5618億円。
 国民所得に占める割合は23.87%。国民1人あたりの給付費は、1.5%増の69万7400円だった。

「先端医療特区」に24件選定 iPS細胞研究など indexへ

 政府は18日、最先端の医療技術、医薬品などの開発や実用化を後押しするために新設した「スーパー特区(先端医療開発特区)」の選定結果を発表した。143件の応募から、人の新型万能細胞(iPS細胞)を開発した山中伸弥・京都大教授を代表者とする「iPS細胞医療応用加速化プロジェクト」など24件の研究計画が採択された。
 スーパー特区では、5年程度にわたり、各省庁から配分された研究資金の一体的な運用や医薬品規制当局との優先的な相談、特許の早期審査などが可能になる。革新的な研究テーマに取り組む研究機関や企業などのグループが対象で、行政区域ごとに指定される従来の特区とは異なる。
 山中教授のプロジェクトには、京都大、慶応大、東京大、理化学研究所に加え、アステラス製薬、島津製作所、武田薬品工業も参加する。ほかには、細胞シートを使った再生医療や長寿命の人工関節、がんワクチン、先端医療機器などの開発、実用化をめざす研究計画が選ばれた。

薬のネット販売「全面禁止を」薬害被害者らが要望書提出 indexへ

 エイズやスモンなどの薬害被害者団体や消費者団体など24団体は17日、舛添厚生労働相と甘利規制改革担当相に対し、ネット上での大衆薬販売を全面的に禁止するよう求める要望書を提出した。
 薬事法では大衆薬のネット販売について規定がなく、販売が広がっているため、厚労省は、年内にも風邪薬などのネット販売を禁じる省令改正を検討。これに、政府の規制改革会議が反対している。
 舛添厚労相との面談後、会見した全国薬害被害者団体連絡協議会の花井十伍・代表世話人らは「消費者の命を軽視する横やりは絶対許さない」と訴えた。

搬送先探す専門病院、東京都が設置へ 来年度24カ所 indexへ

 急患の搬送先が長い時間決まらない事態を防ぐため、東京都は09年度、消防に代わって搬送先を探す2次救急病院「地域救急センター」を都内12医療圏に2カ所ずつ置く方針を決めた。東京消防庁の司令室に救急救命士らコーディネーターを常駐させ、広域で調整する仕組みもつくる。
 都内で119番通報があると、救急隊が現場到着後、救急車から搬送先を探す。重症者や時間がかかる場合は、東京消防庁も搬送先探しに加わる。しかし、都内で07年4〜12月に搬送された約46万件のうち、2万9千件は搬送先が決まるまで30分以上かかったり、5医療機関以上に連絡したりしていたという。
 新しい仕組みでは、搬送先決定が難航しそうなとき、救急隊が都が指定した地域救急センターに連絡、センターは地域内で搬送先を探したり、自ら受け入れたりする。
 また、東京消防庁が受け入れ可能な救急病院を探すために使っていたシステムも、救急病院に置く。
 それでも搬送先が見つからない場合、東京消防庁の司令室にコーディネーターとして常駐する救急救命士らが他地域のセンターと調整。応急処置の後、他の医療機関に転送する仕組みの導入も目指す。
 今回は一般の救急搬送が対象。妊婦の搬送は、従来通り総合周産期母子医療センターが搬送調整を担う。

5病院で9回、収容断られ82歳女性死亡 福島・郡山 indexへ

 福島県郡山市で今年2月、救急搬送された市内在住の女性(当時82)が市内にある救急指定の5病院から計9回受け入れを断られ、死亡していたことが14日わかった。郡山地方広域消防組合によると、各病院からは「ベットが満床」「処理が困難」と言われたという。女性は結局、市内から30分以上かかる福島市内の大学病院に運ばれたが、途中で意識がなくなり同病院で死亡が確認されたという。
 同組合総務課によると、2月5日午後11時21分に女性宅から「吐き気とけいれんの症状が出ている」と119番通報があり、4分後に救急車が到着した。救急車は受け入れ先の病院が近くにある、市中心部の同組合の前でいったん待機していた。
 だが、女性を受け入れてくれる病院が市内では見つからず、福島市の福島県立医科大学付属病院に連絡、受け入れを承諾された。同病院に着いたのは、通報から1時間45分後の翌6日午前1時9分だった。同組合は「市内で収容できなかった例は、最近では聞いたことがない」としている。

妊婦死亡「医師のモラル」 二階氏、抗議受け発言撤回 indexへ

 脳出血を起こした妊婦が東京都内の病院で受け入れを断られ、死亡した問題について、二階経済産業相が「医師のモラル」と発言し、医師らの団体などが反発している。二階氏は13日の参院厚生労働委員会で、経産省幹部にコメントを代読させる形で謝罪し、発言を撤回した。
 二階氏は舛添厚生労働相との10日の会談で、「何よりもやっぱり医者のモラルの問題だ。(医療界に)入った以上は忙しいだの人が足りないだのは言い訳に過ぎない。しっかりしてもらわないといけない」と話した。
 この発言に、勤務医らでつくる全国医師連盟は12日、「勉強不足で事実の誤認がある」と反発。日本医師会も「不用意な発言で心外。考えを改めていただきたい」との声明を出した。13日には市民団体からの抗議が寄せられた。
 二階氏は同委員会に「医療に携わる皆様に誤解を与えたことをおわび申し上げ、発言を撤回します」とのコメントを出した。

軽減後の保険料は平均6万5千円 後期高齢者医療制度 indexへ

 厚生労働省は6日、75歳以上が対象の後期高齢者医療制度で、6月に政府・与党がとりまとめた低所得者への軽減策を反映した保険料額を明らかにした。全国平均では1人あたり約7万2千円から約6万5千円になった。
 都道府県別では、北海道は7万3876円が6万4162円、東京は9万1100円が8万7318円、長野は5万5052円が4万6970円、愛知が8万4440円が7万6032円、大阪は8万8066円が7万9284円、福岡は8万3740円が7万3935円になった。
 政府・与党の軽減策では、保険料軽減率を最大7割減から85%減(来年度は9割減)に拡大、年金収入153万〜210万円の人の保険料所得比例部分を5割減とした。

急患断らぬ」貫き25年 千葉・柏の病院の医師確保法 indexへ

 救急患者の受け入れ拒否が社会問題になる中、「どのような急患も受け入れる」ことを開院以来25年間守り続けている病院が千葉県柏市にある。医師の住宅整備や研修・学会への参加支援など、仕事環境の充実を図ることで医師を十分確保できており、若い研修医の人気も高い。
 柏市の名戸ケ谷(などがや)病院は内科、外科など21科247床、中規模の民間総合病院で、2次救急を担う。ここを目指して年間5千台の救急車が走る。柏市内の救急搬送の4割前後を受け入れているほか、近隣の我孫子、松戸、野田市、さらに埼玉県から運び込まれる患者も少なくない。
 産婦人科はないが、妊婦も断らず、とにかく患者として受け入れる。患者は一般医が診断し、出産の場合は産科がある医療機関に転送するなど専門医の対応が必要ならば連携できる病院へ移す。「管制塔」のような役割もする。
 名戸ケ谷病院が患者を断らずに済むのは、医師の手厚い配置があるからだ。常勤医が35人で、法の規定より9人多い。各科1人は必ず病院から車で5分以内に住む。病院が借り上げ住宅を用意しているほか、住宅購入の優遇ローンなどもある。
 2人の当直医だけで対応できない場合は、いつでも医師の呼び出しが可能だ。副院長で外科医の高橋一昭さんの場合、こうした呼び出しの緊急手術は週に1〜2回という。
 年間1700件の手術があり、さまざまな症例を学べるとあって、研修医の人気も高い。今年は5人の枠に22人の応募があった。大規模な大学病院で研修医の定員割れが起きているのとは対照的だ。
 常勤医には研修日があり、週2.5日は現場から離れられるほか、10日間の夏休みもまとめ取りできる。国内外への留学や学会出張への援助もある。こうした取り組みで医師の定着が増えた。
 高橋副院長は「専門医志向が強まったことや訴訟リスクもあり、患者を診ずに電話口で断る病院が増えている。まず医師が患者を診ること。当たり前の役割を果たせば、日本の医療はちゃんと黒字経営できる」と話す。
 柏市消防局救急課の担当者は「救急車で行き先が決まらないのが、患者も救急隊員も大変つらい。名戸ケ谷は受け入れてくれる、というのは大変心強い」という。
 千葉県医療整備課によると、医療過疎の地域では5〜10回交渉して搬送先が見つかるケースも珍しくないが、病院がたくさんある都市部でも搬送に苦労する例はある。2次救急機関は県内に約150カ所あるが、名戸ケ谷病院のように「全件受け入れ」を表明している例は、「聞いたことがない」という。

脳出血の妊婦受け入れ断り、9月にも 搬送先まで4時間 indexへ

 東京都調布市の飯野病院に入院中の30代妊婦が、今年9月に脳出血を起こし、一報を受けた杏林大病院をはじめ6病院から受け入れを断られた末に、搬送先が見つかり運び込まれるまで約4時間かかっていたことが分かった。最終的に都立墨東病院で子どもは無事に生まれたが、「妊婦は入院して、意識がない状態」(杏林大病院)だという。都内では先月4日にも脳出血を起こした妊婦が8病院に断られ、死亡している。都は9月のケースも調査する。厚生労働省も事実関係を把握しており、都などに事情を聴く方針。
 総合周産期母子医療センターに指定されている杏林大病院(東京都三鷹市)の岩下光利教授(産婦人科)によると、かかりつけ医のいる飯野病院からの電話連絡は23日午前3時過ぎ。妊婦は出産予定日を過ぎており、前日に飯野病院に入院していた。「容体が悪くなって、軽いまひがある」という連絡だった。
 しかし、当時、杏林大病院の産科の当直医2人は、電話の前に救急搬送された別の妊婦の帝王切開中だったため、受け入れを断った。
 当直医が、受け入れまでに時間がかかると説明、かかりつけ医側は、「いつまでも待つ」と返事をしたという。
 岩下教授によると、当直医は、妊婦がそれほど緊迫した状況にあるとは思わず、陣痛の際にしばしば起こる、「(呼吸が過剰になる)過換気症候群などではないか」と判断したようだという。
 同大学病院は都内の他の周産期母子医療センターの状況がわかる情報システムで、受け入れ可能な病院をかかりつけ医に紹介。一方、当直医は多摩地区の3病院に連絡したが、断られた。
 飯野病院によると、杏林大病院には「緊急性と切迫性がある」と伝えていた。独自に杏林大のほか新宿や渋谷の病院に連絡をしたが、いずれも断られた。このとき、多摩地区の妊婦を杏林大病院が受け入れられない場合には都内の総合周産期母子医療センターが輪番制で受け入れるルールだと教えられたという。
 妊婦は午前7時10分に墨東病院に運び込まれ、帝王切開と脳の手術を受けた。
 東京都は「子どもは健康だが、母体については家族の意向もあり、言えない。搬送についてはこれから調査する」としている。

グーグルマップに患者情報流出 名古屋市の病院、誤操作 indexへ

 名古屋市天白区の医療法人「並木病院」の患者ら約80人の個人情報が、インターネットの地図情報サービス「グーグルマップ」で今年8月ごろから閲覧できる状態になっていたことがわかった。病院は情報をすでに削除し、該当者に謝罪した。
 並木病院によると、閲覧できたのは、人工透析の治療を受ける患者と、併設する介護老人保健施設のデイケアサービス利用者の計約80人分の氏名と住所、電話番号など。グーグルマップの機能を利用し、患者らの送迎ルートを決めていたが、個人情報が不特定多数に閲覧可能な初期設定のまま使用していた。
 病院の担当者は「地図を作製する際などにはパスワードが必要なため、秘密は保たれていると思っていた」と話している。

医学部定員、700人増 来年度、地域医療・産科確保へ indexへ

 来年度の大学医学部の定員を今年度より約700人増やし、これまでで最も多い8486人にすると文部科学省が4日発表した。政府の方針を受け、文科省は、医師不足の地方や産科、小児科などで働くことを条件に、特例措置として増員を認める通知を出していた。
 医学部定員は、81〜84年度が8280人と最多だったが、段階的に減らされ、07年度は7625人だった。しかし、医師不足が問題となり、政府は「緊急医師確保対策」を決め、今年度は168人増えた。また今年6月の政府の「骨太の方針08」で、定員を過去最大程度まで増やす方針が決まった。
 文科省は8月、地域医療に貢献することを条件に、79の国公私立大学長に定員増の通知を送ったところ、73大学が計画を提出。有識者で作る計画評価委員会が審査した結果、国立199人、公立49人、私立256人の計504人分が定員増となり、もともとの緊急対策による人数と合わせて693人分が今年度より増えることになった。
 地域医療への貢献策として、47大学が、県内出身者や地元に残る意思を示す学生を募る「地域枠」を設け、62大学が卒業後の一定期間に地域で働くことを前提に奨学金を出す。このほか、すべての学生が地域医療を学び、地域で実習する▽学部段階から産科・小児科の教育を強化する、などの対策にも取り組む。
 具体策として、ホームステイ型研修など地域住民とのふれあいを重視(福島県立医科大)、高校生の地域医療体験で目的意識を持たせて地域枠も設ける(旭川医科大)、4年生に産科、小児科、救急、外科で専修コースを設け大学と地域病院で専門医研修まで一貫した教育をする(山形大)などもあがっている。
 政府は、地域に医学生を定着させる仕組みを前提にした大幅な定員増で「医師不足解消の一歩にしたい」と期待している。
 ただ、医学部の学生が「一人前」になるには、学部の6年、臨床研修の2年と、通常でも8年かかる。産科や小児科などの教育を強化しても、学生が都市圏も含めて、絶対数が足りない診療科に進む保証はなく、どこまで現状が改善されるかは不透明だ。
 さらに定員増の条件の一つになった地域枠にしても、学生が勤務先を選ぶ際、大学が指定する地域にとどまる保証はない。この枠で合格した学生には、さまざまな面で制限がかかるものの、臨床研修や実際に現場で診療を行う際、大学の指定外の地域にある病院を選択することが禁じられていないからだ。
 今回の施策について文科省は「実効性のある取り組みにするために、今後、評価委員会で検証していく」としている。(上野創、林敦彦)
     ◇
 <医師不足と医学部定員> 政府の「骨太の方針08」で、医学部定員を過去最大規模まで増員するとの方針が示された後、厚生労働省の有識者会議は「定員を現行の1.5倍の1万2千人程度にまで増やすべきだ」との提言をまとめている。
 06年末の日本の医師数は27万8千人。提言では、日本の医師数は人口千人あたり2.1人(06年)と、米国の2.4人より少なく、これを経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の3.1人まで、引き上げる必要があるとした。
 有識者会議は今後10年間、毎年400人ずつ増員し、総定員を1万2千人にすると、20年後に千人当たりの医師数がOECD平均並みになると推計。今回の措置は「骨太の方針」に沿ったものだが、これらも増え続けるかは不明だ。

東北大病院助教、論文引き写し 専門誌に寄稿、厳重注意 indexへ

 東北大病院の助教が昨年、専門誌に寄稿した論文の大半が、他人の2論文からの引き写しであることが、出版社の指摘などで分かった。東北大も把握しているが、「(助教は)若くこれからもある」として、懲戒に当たらない厳重注意処分にとどめていた。
 問題の論文は胆嚢(たんのう)と膵臓(すいぞう)の専門誌「胆と膵」の昨年7月号に掲載。胆嚢につながる管のがんを解説している。
 発行元の医学図書出版によると、今年7月、助教本人からの連絡で問題を知った。調べたところ、過去に他社の専門誌に掲載された、他の研究者の2論文と内容が酷似していたため、「胆と膵」8月号で、「『盗用』に近い内容」と指摘し、今後、この助教の投稿を受け付けないことを表明した。
 助教の論文を他の2論文と比較すると、助教の論文の序文と、全6章のうち1〜4章が、2論文からほぼそのまま引き写したものだった。表もほぼ同じものが掲載されていた。
 東北大は今年7月に事実を把握。助教が認めたため、助教に口頭で厳重注意した。大学として公表しなかった。
 吉田隆幸・医学系研究科事務長は「軽い処分とは思わない。引用した論文の著者にもわび状を入れた」と話している。

253接骨院、請求に問題 都国保連がブラックリスト indexへ

 接骨院や整骨院が、肩こりや腰痛のマッサージを、ねんざなどのケガとして健康保険請求している問題で、東京都内の国民健康保険への請求を審査する東京都国民健康保険団体連合会(国保連)が都内の約4千のうち250余りの接骨院を「問題あり」として「ブラックリスト」化していることがわかった。21カ月で15回も指摘を受けている接骨院もある。指摘を受けて指導にあたる市区町村の対応にはばらつきがあり、監督のあり方が課題になっている。
 国保連は市区町村の国保の委託を受けて保険請求の内容を審査している。リストは、東京都国保連の柔道整復療養費審査委員会が、請求内容に問題がある接骨院の状況を把握するために作っている。
 毎月の審査で(1)3カ所も4カ所もケガをしたとする請求が多い(2)通院日数が不自然に多い(3)ケガの原因と負傷個所が整合しない――といった問題点を指摘する文書を作り、市区町村を通じて接骨院を経営する柔道整復師に注意をうながしている。
 9月の請求を審査したところ、253の接骨院がリストアップされた。「要注意施術者」の接骨院は20あり、昨年1月からの21カ月で15回の指摘を受けた接骨院もある。
 審査委には柔整師に指導や調査をする権限がなく、実際に治療費を支払う市区町村の国保に注意文書を送る仕組みになっているが、その活用方法は市区町村によって違う。
 要注意施術者が8人と最も多かった世田谷区では、35接骨院がリストアップされた。しかし、区は注意文書を柔整師が所属する団体にまとめて送るだけで終わっている。文京区、足立区は審査委の指摘をもとに独自に患者調査などをする仕組みがあり、悪質な場合は東京都の指導当局に具体的な処分を求める。その結果、文京区は1接骨院がリストに載るだけで、足立区も注意文書が1度の6接骨院にとどまっている。
 日本柔道整復師会は「審査委の権限強化も考えるべきだ」と話している。

お産扱う病院、1年で8%減少 産婦人科医会調査 indexへ

 お産を取り扱う病院が昨年から今年にかけて全国で8%(104施設)減ったことが1日、日本産婦人科医会の調査でわかった。同医会の中井章人・日本医科大教授が、日本産科婦人科学会(日産婦)と厚生労働省の研究班が東京都内で開いた市民フォーラムで報告した。同医会は、過重な労働などに伴う産科の医師不足が原因とみている。
 同医会が今年7月に実施した調査によると、分娩(ぶんべん)を取り扱う病院は、07年の1281施設から1177施設に減った。常勤の医師数は1施設当たり4.5人から4.9人に増えた。
 厚労省研究班の主任研究者を務める岡村州博・東北大教授は同フォーラムで、「産科医の数を増やすには数年かかる。今はとにかく医師たちが辞めない環境づくりが重要だ」と訴えた。
 吉村泰典・日産婦理事長は、東京都内の妊婦が8病院に受け入れを断られた後に死亡した問題に触れ、「年に約100万件のお産のうち、脳出血で亡くなる妊婦は約20人。欧米でもこのような妊婦を救命する体制はできていないが、日本でまず整備していきたい」と語った。

総合周産期施設の半数、受け入れできぬ経験 最近1カ月 indexへ

 リスクの高い妊婦を診る全国の総合周産期母子医療センターの半数近くが、最近1カ月間に妊婦を受け入れられなかった経験があることが朝日新聞のアンケートでわかった。新生児集中治療管理室(NICU)のベッドが空いていないことが主な理由だった。東京都内の8病院に受け入れられなかった妊婦が死亡した問題でもNICUの満床が一つの理由だった。
 都道府県が指定したセンター75施設に10月下旬に書面や電話で質問し、67施設(89%)から回答があった。
 ここ1カ月で受け入れられなかったことがあるか尋ねたところ、32施設(48%)が「ある」と答えた。NICUが満床で受け入れられないケースが大半だったと回答した施設が、7割近くを占めた。34施設(51%)は断ったことが「ない」、1施設は「確認中」と答えた。
 妊婦が救急搬送された場合、生まれた赤ちゃんが小さかったり、呼吸が安定していなかったりして、NICUでの管理が必要になるケースが多い。このため産科だけでなくNICUのベッドが空いていないと受け入れが難しい。
 43施設(64%)が調査時点で「NICUは満床」、あるいは、間もなく搬送されてくる赤ちゃんのためのベッドを含め「ほぼ満床」と答えた。
 東北、中四国、九州では、「リスクの高い妊婦を受け入れられる施設が地域でほかにない」といった理由から、「NICUが満床状態でも断らない」との答えが目立ったが、首都圏のほとんどの施設は「物理的に受け入れ不能状態にある」などと説明した。
 東京都内の妊婦の受け入れを最初に断った都立墨東病院では当時、産科の当直医が1人だった。アンケートでも43%の施設が産科の当直は「1人のことがある」と回答。厚生労働省の通知では母体・胎児集中治療管理室(MFICU)が6床以下で、呼び出しに対応できる医師がいれば、当直は1人でいいとされ、過半数の施設が該当する。このため「不十分な体制とは言えない」との声もあった。

産科医、月300時間以上病院内に 過酷な実態浮き彫り indexへ

 全国の大学病院や当直勤務がある一般病院に勤める産婦人科医が診察などで院内にいる時間は、平均で1カ月300時間を超えていることが分かった。日本産科婦人科学会(吉村泰典理事長)が31日、初めての調査の結果を発表した。医師は病院にいる時間のほとんどは働いていると同学会はみており、医師不足の一因にもなる過酷な労働実態が浮かびあがった。
 同学会は6月から750の医療機関を対象に調査。大学病院76人、一般病院221人の勤務医から回答を得た。
 調査結果によると、大学病院の医師が院内にいる「在院時間」は月平均341時間で、当直は5.8回。在院時間が最も長い人は505時間で、当直が15回あった。毎日16時間以上、病院にいることになる。20歳代の医師が最も長かった。
 当直勤務がある一般病院の医師は平均301時間、当直は4.2回。さらに、呼び出しに備えて待機する「オンコール」が月118時間あり、在院時間と合わせると400時間を超える。当直がない一般病院でも在院時間とオンコールを合わせると平均350時間に上った。
 海野信也・北里大教授は「労働環境を改善しなければ、周産期医療は崩壊してしまう」と話した。

医師8人が辞意、再び存亡の危機 大阪・阪南市立病院 indexへ

 医師の大量退職で内科が閉鎖されるなど、一時存亡の危機に追い込まれた大阪府阪南市の市立病院で、医師2人が病院側に辞意を伝えていることがわかった。辞意を伝えている医師の一人によると、ほかに6人が辞意を漏らしているという。26日の市長選で現職を破った新市長の病院運営方針への反発が理由とみられる。8人が退職すれば内科など主要な診療科の外来・入院がストップするのは避けられず、同病院は再び存廃を迫られることになる。
 辞意を伝えた医師2人は病院の立て直しを図る市側の勧誘に応じ今年2月以降に順次赴任した。
 11月12日に就任する新市長が当選後、医師確保のために現市長が導入した歩合制の給与体系の見直しや、特定の大学からの医師派遣ルートの確立など、新たな病院運営方針を表明。これまでの医師確保の経緯を無視して運営方針が変わることに、医師らは不信感を抱いているという。
 同病院は昨年6月末に医師9人が退職して内科を閉鎖。医師の平均年収を1300万円から2千万円以上に引き上げる給与改定などで医師確保を進め、今年9月から内科を再開していた。市は、医師の慰留に全力を挙げるとしている。

保険証ない中学生以下3万人 親が国保保険料を滞納 indexへ

 国民健康保険(国保)の保険料を滞納して保険証を返還させられ、公的医療保険を使えない中学生以下の子どもが全国1万8302世帯、3万2776人に上ることが28日、厚生労働省の調査で明らかになった。厚労省は、子どもが治療を受ける必要がある場合は、有効期限が1カ月程度の保険証を交付するよう国保を運営する自治体に求める方針だ。
 「無保険」の子どもの全国調査は初めて。病気になるなど特別の事情がないのに、親が保険料を1年以上滞納した場合、自治体に保険証を返還し、代わりに「被保険者資格証明書」が交付される。医療機関の窓口で全額自己負担となるため、子どもが必要な治療を控えるなど受診抑制につながると指摘されている。
 厚労省によると、国保の保険料を滞納している世帯は全国で約382万2千世帯(加入世帯全体の18.4%)。うち、資格証明書を交付されている無保険の世帯は約33万1千世帯(同1.6%)。
 無保険の世帯の子どもを年代別にみると、0〜6歳の乳幼児は5275人で、乳幼児被保険者全体の0.4%。小学生は1万6381人で1.1%、中学生は1万1120人で1.5%だった。
 資格証明書を交付するかどうかは自治体が決める。厚労省は近く、自治体に対して、資格証明書を交付する場合には「保険料納付義務は世帯主にあり、子どもには納付義務がないことに留意した取り扱いは許容される」との見解を示し、慎重な対応を促す。子どもの対象年齢は自治体の判断に委ねる。

墨東病院と同じ医師6人以下、15施設 周産期センター indexへ

 脳出血を起こした妊婦が東京都内の8病院に受け入れを断られた後に死亡した問題を受け、厚生労働省は28日、全国の総合周産期母子医療センター75施設の医師数を公表した。産科の常勤医数が、妊婦の受け入れを最初に断った都立墨東病院と同じ6人以下の施設が15施設に上った。
 厚労省はこれまで正確な医師数を把握しておらず、問題発覚後に緊急に電話などで初めて調べ、同日の自民党社会保障制度調査会医療委員会で示した。
 厚労省の資料によると、産科の常勤医は計882人で、1施設に平均11.8人いる。常勤医6人以下の15施設は東北や関東、北陸、東海、四国にある。これらの施設について、1人当たりの一般産科病床数をみると、墨東病院が9.3床と最も多い。次いで、仙台赤十字病院(宮城県)が7.3床、岩手医科大付属病院(岩手県)と東京女子医大付属八千代医療センター(千葉県)が7床。全施設では平均2.7床。常勤医が少ない施設ほど、医師個人の負担が重くなる傾向がある。
 都は墨東病院の常勤医を4人と説明してきたが、厚労省は今回の調査では、後期研修医2人を含めて集計した。

「医師確保へ都・国が抜本策を」 江東区長が要望書 indexへ

 脳出血を起こした妊婦が東京都内の8病院に受け入れを断られた後に死亡した問題で、妊婦のかかりつけ医がある江東区の山崎孝明区長は28日、医師確保に向けた抜本的対策を都が区とともに国に働きかけるよう求める要望書を石原慎太郎都知事に出した。
 要望書では「医師不足の解消など周産期医療体制を支える施策は国が自らの責任で実施すべきだ」としている。今後、区長会を通じても国に働きかけたいという。

福岡大病院の医師が結核発病 職員・患者ら検査へ indexへ

 福岡大病院(福岡市城南区、内藤正俊院長)は28日、形成外科の40代の男性医師が肺結核を発病したと発表した。医師は昨年9月の健康診断で異常を指摘されたが、精密検査を受けておらず、今年9月の健診でも指摘されたという。院内感染は確認されていないが、同病院は接触の度合いの高かった職員や感染の危険性が高い患者を対象に調べるという。
 医師は昨年の健診で「要精密検査」と指摘され、今年4月ごろからせきなどの症状があったが、受診していなかった。9月の健診で「要治療」と通知があり、受診したところ菌が確認されたため10月1日に入院。現在の状態は安定しているという。
 病院によると、過去3カ月間で医師と接触したのは患者205人、職員294人、学生41人。このうち、接触の機会が多かった職員29人と、乳幼児など感染の危険性が高い患者や職員62人に検査を受けてもらい、陽性の割合が高ければ、さらに対象を広げるという。

2月に墨東病院体制改善要望 都に江戸川など3区医師会 indexへ

 脳出血を起こした東京都内の妊婦が8病院から受け入れを断られた後に死亡した問題で、最初に断った都立墨東病院(墨田区)の産科医不足について、地元の3医師会などが今年2月、文書で改善を求めていたことがわかった。
 命の危険がある患者が出た場合に同病院に送る墨田、江東、江戸川の3区の医師会と産婦人科医会が、同病院と都病院経営本部あてに出したという。
 文書では「難問の多い周産期医療だが、都民が安心できる体制を」と要望。その上で、「毎年(産科医が)減少している間になぜ補充をできなかったのか。書面で次回の会議までに(回答を)お願いしたい」としていた。
 一方、舛添厚生労働相は27日午前、江戸川区医師会幹部と懇談し、「総合周産期母子医療センターを守っていくには、医師がいないといけない。地元の医師会の医師や病院、都とも協力して、前向きにやりたい」と述べた。

受け入れ拒否、新生児治療室不足が一因 妊婦死亡問題 indexへ

 脳出血をおこし、8病院に受け入れを断られた東京都内の妊婦が死亡した問題で、病院側が転院搬送の受け入れを断った理由として最も多かったのが、新生児集中治療管理室(NICU)の不足だった。同様の事態は全国で頻繁に起きている。産科医がいたとしても、小児科の施設が確保できない関係で急患が受け入れられない実態が改めて浮き彫りになった。
 当時、NICUが満床だったことを理由に受け入れを断ったのは、総合周産期母子医療センターに指定されている日大板橋病院(板橋区)、地域周産期母子医療センターに指定されている東京慈恵会病院(港区)、そして東京大学病院(文京区)の3病院。
 総合周産期母子医療センターや地域周産期母子医療センターは、産科と新生児科医療を一体的に扱う機関。そのなかで、NICUは重い先天的な奇形児や未熟児、重症の黄疸(おうだん)をもって生まれた新生児らを治療するための施設だ。危険がある妊婦を受け入れる場合、新生児に問題があるケースも想定してNICUの病床確保が前提となるという。
 しかし、NICUで治療を受ける新生児は、体重が千グラム未満なら90日、千グラム以上1500グラム未満なら60日、1500グラム以上でも21日間保険が適用されるという具合に長い期間入らざるをえないケースが多い。そのため、ベッドに空きが出にくい状況だ。
 NICU9床がある愛育病院(港区)は今年4〜9月末、受け入れ要請があった117件のうち、77件(65%)を断った。その7割余りがNICUの満床が理由だった。15床ある杏林大学病院(三鷹市)も、ほぼ常時満床のため、妊婦搬送の6〜7割を断っているという。各病院では急患の場合、一時的にベッドを増やすなどしてしのいでいるのが実情だ。
 東京都内では年間10万人の新生児が誕生するため、都は200床を目標に整備を進めてきた。その数字は達成されたものの、早産が増えるとされる高齢出産の増加があり、「都内では300床は必要」と指摘する専門家もいる。
 都内の総合周産期母子医療センター9病院のNICUは現在、計105床。増設計画があるのは昭和大学病院(品川区)と東京女子医科大学病院(新宿区)だけで、今年度から来年度にかけて計6床しか増えない見通しだ。
 なかなかベッド数が増えない背景の一つには、専門医の問題がある。杏林大学病院産婦人科の谷垣伸治講師は「NICUの担当は、小児科医の中でも新生児を診られる医師に限られる。その医師が少ない」という。
 さらに、愛育病院の大西三善・事務部長は「NICUを増やすと、看護師がたくさん必要になる」と話した。保険診療上の施設基準では、3床に看護師1人を配置することなどが求められている。このため看護師増員という問題にも直面する。

60年で赤ちゃん6千人、ベテラン助産師「卒業」 高松 indexへ

 約60年間で6千人の赤ちゃんを取り上げたベテラン助産師が引退した。高松市多賀町3丁目の平野艶子(つやこ)さん(86)。戦時中は無我夢中でへその緒を切り、70年代のベビーブームには寝る間もなく妊婦の元に駆け付けた。小さな体から力いっぱいの産声が上がるたび、「命の尊さ」を実感した。引退を機に、自宅近くに子どもたちの安全と健康を祈る「お地蔵さん」を建て、毎日手を合わせている。
 1942年11月、20歳で香川県西部の三豊郡神田村(現三豊市)に保健師として赴任した。男性は次々と出征し、女性や子ども、お年寄りばかりが残っていた。赤痢などが流行し、「死」と隣り合わせの日々。村に医師はおらず、助産師の資格も持つ平野さんに妊婦の世話が回ってきた。
 初めてのお産は真夜中だった。「生まれそうだからすぐ来て」と玄関をたたかれた。無我夢中でへその緒を切った。「新しい命に感激した」
 結婚して移り住んだ高松市内を45年7月、米軍機が襲った。道のあちこちに黒こげの死体が転がっていた。「地獄だと思った。人の命が簡単に失われるのが恐ろしかった」。命を大切に守り育てなければならないと誓い、助産師として生きていこうと決意した。
 スクーターで妊婦の家を回った。56年、自宅を改装して平野助産院を開設。71〜74年ごろの第2次ベビーブームでは、寝ずに1日7人を取り上げたこともあった。
 今年2月、心臓を患って入院し、「これ以上続ければ母子に迷惑がかかる」と引退を決めた。先月末、助産院を閉じた。これまでお産にかかわったのは約6千人。3代にわたり世話した家族もあれば、5人の子どもすべてを取り上げた母親もいる。「思い出の場所を残して」「再開して」との声は根強い。
 「新しい命に触れる感動を60年も味わえて幸せだった。子どもは宝物。引退はしたけれど、地域の安全に貢献したり、子育てに悩むお母さんの相談に乗ったりしたい」
     ◇
 分娩(ぶんべん)を助け、妊産婦や新生児の保健指導をする助産師は、産科医の不足もあって再び脚光を浴びつつある。厚生労働省などによると、助産師は06年で2万7352人。ピーク時の51年(7万7560人)に比べ、大幅に減った。だが、10年前と比べると約3千人増えている。
 日本助産師会(東京都台東区)の加藤尚美専務理事は「お産における大病院志向などもあり、地域の助産所は廃業が相次ぎ、一時なり手が減った。しかし身近な相談相手として再び見直されてきている」と説明する。

端末では3病院「妊婦受け入れ可」… 急患で更新遅れも indexへ

 脳出血を起こした東京都内の妊婦(36)が8病院から受け入れを断られた後に死亡した問題で、当時、都の周産期母子医療センターのネットワークシステムで「受け入れ可」と表示されていた3病院が、妊婦の受け入れを断った理由が明らかになってきた。他の急患への対応で情報更新が遅れたケースもあった。
 都のシステムは、24の病院が「空きベッドの有無」「ハイリスクな患者に対応できるか」「手術は可能か」など産科と新生児に関する9項目について端末に「○」「×」を表示させることで情報を共有する仕組み。情報の更新時間が表示され、1日2回更新しないと警報表示が出て、最新データが見られなくなる。
 都によると、妊婦のかかりつけ医が4日午後7時ごろ、都立墨東病院に搬送を求めた際、墨東病院の当直医はこのシステムで受け入れ可能の表示が出ていたとされる日本赤十字社医療センター(渋谷区)、慶応義塾大学病院(新宿区)、東京慈恵会医科大付属病院(港区)の3病院を紹介した。しかし、かかりつけ医が受け入れ要請をすると、3病院とも断った。
 日本赤十字社医療センターは当時の状況について、「本来は×にすべきだったが、急患対応と重なったため○のままになっていた」と説明。要請があったとき、別の母体搬送に対応していたところで、システムの更新まで手が回らなかったとしている。
 慶応義塾大学病院は「システム上は○でも、すべては受け入れられない」とする。当時、一般病床には空きがあったため○だったが、女性に下痢や嘔吐(おうと)の症状があったと聞いて感染症を疑い、個室が必要と判断した。しかし、個室の空きがなかったという。
 東京慈恵会医科大付属病院は「産科の受け入れが○だったとしても、新生児集中治療室(NICU)が満床なら受け入れられないという判断がある」という。同病院では今月3日に超未熟児の双子を受け入れたばかりで、「ネットワークのNICUの表示は×だった」としている。
 都は今回の経緯を病院側に尋ね、改善策を検討する。

妊婦死亡 墨東病院のみ当直医不足 都内の9センター indexへ

 脳出血をおこした東京都内の妊婦が八つの病院に受け入れを断られ、その後死亡した問題で、最初に受け入れを断った都立墨東病院(墨田区)だけが、都内9カ所ある総合周産期母子医療センターのうち、最低2人とされている当直態勢を確保できていなかったことが分かった。7月以降、当直が1人の土、日曜日、祝日の急患受け入れは原則断ってきており、「センターの機能を果たせていない」との声が出ていた。
 総合周産期母子医療センターとは、危険性が高い出産や母胎管理のための地域の砦(とりで)的存在の医療機関。都の指定基準によると、24時間体制で産科を担当する「複数の医師」が勤務していることが望ましい、とされている。
 都によると、墨東病院では6月に産科の非常勤医が辞めた後は2人での当直が維持できなくなり、7月以降は土、日曜日と祝日に限って1人で当直を担当していた。
 このため、土、日、祝日の妊婦の急患受け入れは原則断り、平日でも2人の当直医のうち上席の医師が外部からの非常勤医の場合は「ハイリスク分娩(ぶんべん)の受け入れが困難なことがある」と地元の墨田区・江東区・江戸川区の産婦人科医会会員に伝えていた。
 地元の医師たちは「医師不足のなかで、墨東病院も頑張っていた」としながらも、最近の状況については「センターとして機能しないのは異常」との声が出ていた。
 しかし、墨東以外の8病院に朝日新聞が取材した結果、全病院で2人以上の医師を当直に配置。最大4人の当直を置く病院もあった。
 都立病院の医師不足について、都病院経営本部は24日に開かれた都議会委員会で「都立病院は給与水準も低く、敬遠される傾向にあった」と説明。都によると、05年度の都立病院医師の平均給与は、47都道府県と14政令指定市の公立病院のなかで最下位だった。今年度から産科医については年収で200万〜300万円上積みしたが、それでも中位程度とみられるという。
 日本赤十字社医療センター(東京・渋谷)の杉本充弘・産科部長は「かつて都立病院医師の給与は平均的な在京病院より高かった。待遇が悪くて人がいなくなり、仕事がきつくなり、さらに人が来なくなっている」として、「こうした状況を招いた都の責任は大きい」と話した。
 都は当直の基準を満たせていない墨東病院を総合周産期母子医療センターに指定し続けていることについて、「望ましくない状況にある」との認識を示しつつ、「大学などに依頼し、一日も早く元に戻したい」としている。

妊婦の脳血管障害184人、10人が死亡 06年 indexへ

 お産に関連して脳血管障害を起こした妊産婦が06年に少なくとも184人いて、このうち10人が死亡したことが、厚生労働省研究班(主任研究者=池田智明・国立循環器病センター周産期科部長)の初の全国調査でわかった。脳出血では診断までに3時間を超えると死亡率が上昇。産科だけではこうした患者を救えず、脳神経外科との連携が課題として浮かび上がった。
 奈良県で06年8月に妊婦が19病院に搬送を断られ、脳出血で死亡したため、研究班は、全国1107カ所の病院で06年1〜12月、妊娠中か産後1年以内に脳血管障害を起こしたケースを調べた。
 184人の内訳は脳出血39人、くも膜下出血18人、脳梗塞(こうそく)25人など。妊娠中のけいれん、高血圧で嘔吐(おうと)や意識障害が起きる高血圧性脳症は82人いた。死亡の10人のうち7人は脳出血だった。
 脳出血の39人がコンピューター断層撮影(CT)による検査を受けて診断が出るまでの時間をみると、3時間以内に診断を受けた人で死亡したのは8%なのに対し、3時間以上では36%に達した。ただ、重い後遺症が残った人は3時間以内では7割にのぼり、3〜24時間がかかった場合の5割よりも高かった。研究班は「診断までの時間が短ければ予後が保たれるわけでもない」とみている。
 脳出血の26%に妊娠高血圧症候群が認められた。妊娠高血圧症候群の妊婦で、頭痛やけいれん、意識障害などの症状が出たら、脳血管障害を疑って搬送するなどの対処も求められるという。
 脳血管障害が起きる妊産婦は1万人に1人程度。妊娠中は胎児に血液をめぐらすために血液量が増えるなどして血管への負担が大きくなり、普通の人よりリスクが高まるとされる。
 池田さんは「妊産婦にはすべて産科で対応するという認識を改めなければいけない」と指摘。「総合周産期母子医療センターの指定要件として、脳神経外科との連携態勢を義務づけることなども検討すべきだ」と話している。

東大病院も受け入れ断る「ベッド満床」 妊婦死亡 indexへ

 脳出血を起こした東京都内の妊婦(36)が7病院に搬送を断られ、都立墨東病院(墨田区)で出産後、死亡した問題で、東京大学病院(文京区)も受け入れ要請を断っていたことが23日わかった。東大病院は、新生児を集中治療するベッドが満床だったため、と説明している。
 妊婦のかかりつけだった五の橋産婦人科(江東区)によると、妊婦は夫が呼んだ救急車で4日夜に来院。脳出血などを疑い、CTなどの検査機器や脳外科、産科・新生児科がある7病院に受け入れを要請し、次々断られた。その間に、東大病院にも要請が入ったという。
 東大病院はこの際、「他の病院から胎児に発育遅延があるという情報があり、新生児集中治療室(NICU)が必要と判断した」という。だが9床全部が埋まっており、受け入れられなかった、としている。
 五の橋産婦人科によると、受け入れ先を探している際、救急隊からいったん「東大病院が受け入れ可能」と伝えられたが、「妊娠35週でも大丈夫か」と再度確認を促した後、連絡がなかったという。 都救急災害医療課によると、東大病院は中程度の症状の患者を受け入れる「2次救急医療施設」の指定だが、実際には命の危機に直面した患者を診る「3次救急医療施設」に準じて運用されている。
 妊婦は結局、最初に断られた墨東病院に搬送され、帝王切開で出産、脳外科手術を受けたが、3日後死亡した。

尾辻氏「猟官運動だ」 医療制度改革案巡り厚労相を罵倒 indexへ

 「総裁選のさなかに、一候補者に過ぎない麻生さんに言った。だから猟官運動と言われる」。22日の参院自民党の政策審議会で、元厚労相の尾辻秀久参院議員会長が、後期高齢者医療制度の改革案を示した舛添厚労相を、数十人の議員らの面前で罵倒(ばとう)した。
 尾辻氏は厚労族議員として現制度の導入にかかわった一人。福田内閣の厚労相だった舛添氏が、自民党総裁選のさなかに党内論議を経ないで、麻生氏に改革案を直言したのが腹に据えかねたようだ。
 尾辻氏は「(現制度は)10年間議論し、国保は持たないと結論が出た。(財源が)絶対もたない」と指摘。口を極めた批判ぶりに、同席者からは「尾辻さんも大人げない」との声が漏れるほどだった。

都立墨東病院、搬送先探す役割果たさず 妊婦死亡事故 indexへ

 脳内出血を起こした東京都の妊婦(36)が都立墨東病院など7病院に受け入れを断られ、その後死亡した問題で、受け入れ要請を断った都立墨東病院が周産期医療センターとして搬送先を探す役割があったにもかかわらず、かかりつけ医に任せていたことが分かった。また、都の受け入れ病院を検索するシステムも機能していなかった。
 墨東病院は都指定の総合周産期母子医療センター。指定基準では「担当する地域の患者の搬送先確保に努める」とあり、同病院で患者を受け入れられない場合、他の周産期母子医療センターなどと連携して搬送先を探す役割が課されている。
 しかし、都は「今回はかかりつけ医が搬送先を探すと言っていたので任せた」と説明。墨東病院側も「当直医が1人しかいないこちらの事情を知っているかかりつけ医が、気を使ってくれたのではないか」としている。
 ただ、墨東病院はかかりつけ医に対し、都の周産期母子医療センターのネットワークシステム上で受け入れ可能となっていた東京慈恵会医科大付属病院、慶応義塾大学病院、日本赤十字社医療センターを紹介したという。
 このネットワークシステムには、危険度が高い出産に対応できる医療機関として都が指定する周産期母子医療センター(都内22カ所)と同程度の機能を持つ2病院が参加。各病院は「手術が可能か」「ベッドに空きはあるか」など変更があるたびに入力し、どこが患者を受け入れられるか端末で見ることができる。
 しかし、かかりつけ医が3病院に受け入れを要請したところ、いずれの病院も満床などを理由に拒んだという。都は、なぜ受け入れ可能となっていた病院が妊婦を受け入れられなかったのか、システムがうまく機能しなかった原因を調査する方針だ。
 都によると、4日夕、江東区の女性が自宅で下痢や嘔吐(おうと)、頭痛を訴え、救急車でかかりつけの江東区内の産婦人科医院・五の橋産婦人科に運ばれた。かかりつけ医は脳内出血の疑いがあると診断し、午後7時ごろ、墨東病院に受け入れを依頼。しかし、断られ、他の搬送先を探した。
 搬送先探しはかかりつけ医が担当し、7病院に断られ、午後7時45分に再度、墨東病院に要請し、午後8時ごろに受け入れが決まった。その間、妊婦の症状は悪化し、墨東病院に着いたときには意識不明に陥っていたという。

保険適用外の費用、患者に「寄付」求める 福島県立医大 indexへ

 福島県立医科大学(福島市)の付属病院で、公的保険が適用されない材料を使って手術した際、その費用に充てるため患者に寄付を求めていたことがわかった。治療の対価として寄付を求めたとすると、厚生労働省が禁じる「混合診療」にあたる可能性がある。同大側は否定するが、同省は「寄付金が実質的に治療費なら、支払った保険料の返還を求めたい」としている。
 問題の材料は「ステントグラフト」と呼ばれる人工血管と金属を組み合わせたもの。同大では96年ごろから、大動脈瘤(りゅう)などの治療に利用しているという。
 22日に記者会見した同大の丹羽真一副理事長らによると、04〜07年度だけで、この材料を使って手術を受けた患者28人の8割にあたる21人から、1人あたり17万〜57万円、計765万円の寄付を受け取っていた。21人は保険の適用を受けていた。
 同大付属病院は材料の購入費を大学の研究費から支出。手術の前後に患者に対し、材料費とほぼ同額の寄付を募っていた。竹之下誠一院長は「寄付は任意で、治療費ではない。寄付をしてもらわなくても適切な治療をしている。混合診療ではない」と主張。一方で「研究費だけで賄うのは限界があった」と話し、患者からの寄付で補填(ほてん)していたことを認めた。
 患者が材料費を負担すれば、すべてが自由診療になり、平均で約150万円とされる治療費全額を自己負担する必要がある。丹羽副理事長らは「患者の負担を軽減する策として、寄付という形をとった」と述べたが、今後については「誤解のないよう対応を検討したい」と話した。
     ◇
 〈混合診療〉医療機関で治療を受けた場合、公的医療保険が適用されて自己負担が軽減される保険診療と、適用されず全額自己負担になる自由診療がある。二つを併用する診療が「混合診療」と呼ばれ、厚生労働省は安全性などの観点から原則的に認めておらず、一部でも保険が適用されない診療があると、全額自己負担にすべきだとしている。だが東京地裁は07年11月の判決で「混合診療の禁止に法的根拠はない」と指摘、国が控訴している。

レセプトのオンライン義務化「撤廃を」 日医など3団体 indexへ

 11年度から原則義務化される診療報酬明細書(レセプト)のオンライン化をめぐり、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会の3団体は22日、地域の小規模な診療所などは機器購入などの設備投資の負担に耐えられないとして、義務化の撤廃を求める共同声明を出した。
 声明では「地域に根ざして医療を担ってきた医療機関等を撤退に追い込み、地域医療崩壊に拍車をかけることは明らか」と訴え、レセプトの請求方法は医療機関などの自主性に委ねるべきだとしている。
 医師会が3〜4月に全国約4万2千の病院・診療所から回答を得た実態調査では、義務化された場合、8.6%の医療機関が「廃院するしかない」と回答しているという。

妊婦搬送7病院が拒否、出産後に死亡 東京 indexへ

 出産間近で脳内出血の症状が見られた東京都内の女性(36)が7病院から受け入れを断られ、出産後に死亡していたことがわかった。手術を受けた病院に到着するまで約1時間15分かかっており、東京都は詳しい経緯を調べている。
 都によると、女性は今月4日、頭痛などの体調不良を訴え、江東区のかかりつけの産婦人科医院に救急車で運ばれた。かかりつけ医は脳内出血の疑いがあると診断し、午後7時ごろから電話で緊急手術ができる病院を探した。しかし、都立墨東病院(墨田区)など7病院から「当直医が他の患者の対応中」「空きベッドがない」などと次々に断られたという。
 かかりつけ医が午後7時45分ごろ、改めて都立墨東病院に電話したところ、受け入れ可能になったという返事が来たため、同病院に搬送。午後8時18分に到着した女性は帝王切開で出産し、脳内出血の血腫を取り除く手術も受けたが、3日後の7日に脳内出血のため死亡した。赤ちゃんの健康状態には問題がないという。
 都立墨東病院は、リスクが高い新生児と妊婦に24時間態勢で対応する総合周産期母子医療センターに都から指定されている。同病院の当直医は本来は2人体制だが、産科医不足で7月から土曜日と日曜日、祝日は1人になっていた。4日も土曜日で1人しかおらず、1人の時間帯は原則として急患受け入れを断っているため、最初の要請に対応できなかった。2度目の要請があった時は、当直以外の医師を呼び出して対応したという。
 都の担当者は「改善を検討していたが、都内でも産科医不足が深刻なため、十分な体制が確保できていなかった」と話している。石原慎太郎都知事は22日、救急搬送拒否について「そういうことのないために東京ER(救急室)をつくった。調べて対処します」と述べた。

医薬品の便覧で「著作権侵害」 医学書出版社が提訴 indexへ

 医師や薬剤師が医薬品の効能などを調べる際に使う便覧をめぐり、著作権が侵害されたとして、医学書を出版する「南江堂」(東京都文京区)が20日、同様に医学書を専門とする「じほう」(同千代田区)に、出版の差し止めと約6900万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。
 南江堂は、じほうが発行した「治療薬ハンドブック2008」について、収録する医薬品の選択や医薬品の分類方法が南江堂の「今日の治療薬(2007年版)」と類似しており、編集著作権を侵害したと訴えている。
 一方、じほうは提訴に対し「訴状自体を見ていないが、権利侵害はしていない」とコメントしている。

手術ミス賠償訴訟、患者側が勝訴 茨城・つくばの病院 indexへ

 茨城県つくば市の筑波メディカルセンター病院で99年に受けた直腸がん手術で後遺症が残ったとして、患者だった同市の男性が病院側を相手取り、慰謝料など約3515万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、水戸地裁土浦支部であった。中野信也裁判長は「手術に使う器具で腸管を損傷させた可能性がある」と手術ミスを認め、病院を運営する財団法人筑波メディカルセンターに約1367万円の支払いを命じた。
 訴えていたのは冨田善弘さん(死亡当時69)。冨田さんは06年10月、同病院の前で焼身自殺し、訴訟は遺族が承継人原告として引き継いだ。
 判決などによると、同病院は99年6月、腹部に数カ所の穴を開ける「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」と呼ばれる手法で、冨田さんの直腸がんを切除した。しかし、冨田さんは翌日に腹膜炎を起こし、緊急の開腹手術を受けた。一時危篤状態になり、回復後も1日に10回もトイレに行かなければならない排便障害が残った。
 争点になったのは、術後に腸に見つかった直径6〜7ミリの穴。病院側は「患部を切除後、腸管をつなぐ際の、偶発的な縫合不全の可能性が高い」と、過失はないと主張したが、中野裁判長は「腸管を持ち上げるか、つかんだ際に、主治医以外の医師2人のどちらかが誤って腸管を損傷させた可能性がある」と判断した。ただ「だれの過失か特定できない」とし、担当医への請求は棄却した。

歯治療の「補てつ物」、輸入急増 厚労省が実態調査へ indexへ

 歯の治療で使われる「補てつ物」に、中国や東南アジアからの輸入品が増えている。補てつ物の使用には規制がなく、外国製の輸入状況も不明で、歯科医らの間では材料の安全性や品質に対する不安の声が広がっている。厚生労働省は6千人を超える全国の歯科医に近くアンケートし、使用実態を調べる。
 補てつ物は、金属やセラミックが原料の、歯にかぶせる冠や入れ歯。歯科医や歯科技工士が製作してきた。だが、全国保険医団体連合会によると、近年は外国製が目立って増えてきた。
 外国製は国内製の半値ほどで、歯科医が個人的に輸入したり、歯科技工所が中国などの技工所に製作を委託したりするようになったという。
 こうした実情を把握するため、厚労省は近くアンケートを始めることになった。日本歯科医師会の約6万5千人の会員から、約1割の歯科医を無作為に抽出し、アンケートを配布。年末までの回収を目指す。
 調査項目は(1)海外に補てつ物を委託した数(2)委託した内容(3)委託して不都合はあったか――など。専門家6人を加えて、アンケート結果を検討する。
 歯科医が補てつ物を輸入し使用することは治療の一環とされ、法的な規制はない。また、「世界的に問題が生じたという報告はない」(厚労省歯科保健課)という。
 それでも、多くの歯科医が「健康被害が出てからでは遅い」と、外国製の補てつ物調査を求めてきた。
 厚労省が調査に取り組むのは、現場の不安の声に押されたためだ。それでも補てつ物の中身の分析に踏み込まない調査のため、どこまで実態が解明できるか不透明だ。
 歯科医でもある同連合会の成田博之理事は「中国製だから問題というのではなく、今のままでは安全性を確保できないことが問題だ。製作者の資格、材料や施設の基準、輸入時の安全検査が必要だ」と話している。(山本奈朱香)
■国内外とも調査を
 厚労省の研究班メンバーの阿部智歯科医の話 中国には、2千人規模の補てつ物工場もあり、一大供給地になってきている。中国製だから不安、日本製だから安心ということではなく、国内、海外どちらの製品も分析調査をすべきだ。厚労省研究とは別に調査したいと考えている。

健保偽装脱退も関与 社保職員証言 レセプト隠蔽工作 indexへ

 社会保険事務所の職員が、厚生年金の記録改ざんだけではなく、公的医療保険(健康保険)の偽装脱退にも関与していたことが、複数の元職員や現役職員の証言で明らかになった。偽装脱退させられた加入者本人は無保険状態となり、医療費は全額自己負担となる。ただ、偽装が発覚しないよう社保事務所で組織的に隠蔽(いんぺい)工作し、本人負担分も医療保険財政で肩代わりしていたという。
 サラリーマンは、厚生年金に入ると同時に、公的医療保険への加入も義務づけられる。脱退の際も原則、同時に脱退する。手続きは事業主が社会保険事務所で行う。
 80〜90年代、関西地方の社保事務所で偽装脱退に関与した60代の元職員によると、厚生年金と政府管掌健康保険(当時)の保険料の支払いを滞らせた事業主が、3〜6カ月さかのぼって従業員を年金と健保から偽装脱退させるケースが多かった。
 滞納保険料は年金と健保で100万円以上のケースもあった。偽装脱退させると、この間の滞納分が相殺され、社保事務所側は徴収すべき保険料が減り、徴収率が上がるメリットがあったという。
 従業員が病院にかかった際は、医療費の3割は本人が支払い、残り7割は医療保険で負担する。しかし、無保険だと医療費は全額自己負担だ。
 例えば、Aさんが6月に病院にかかり、医療費の3割を払った。ところが、8月、事業主が半年さかのぼってAさんを偽装脱退させた。医療機関から医療保険側(社保事務所)に医療費を請求する診療報酬明細書(レセプト)が届くのは通常、診察した月の翌々月。Aさんが6月に受診した分のレセプトが2〜3カ月後、社保事務所に届く。6月時点でAさんは脱退し、無保険状態なので医療費の残り7割分はAさんに請求される。
 Aさんに請求が行くと偽装脱退が発覚するので、レセプトを抜き出したという。この結果、「無保険」のAさんが負担すべき残り7割も、公費が投入されている医療保険財政から支出することになる。
 90年代、関西地方の社保事務所でレセプト点検を担当する社会保険給付専門官を務めた別の60代の元職員は、偽装脱退手続きにかかわった徴収担当者から、「脱退」期間中のレセプトをすべて抜き取るよう依頼されると、点検対象外のレセプトを保管する箱に入れた。レセプトは事業所ごとにまとめられており、作業は簡単だったという。
 レセプト点検は98年ごろから、社保事務所から事務センターに移管された。
 元職員は「当たり前の事務としてレセプトの抜き取りをやっていた。今思えば恥ずかしいが、当時は罪悪感はなかった。従業員に記録の改ざんを知られないようにするためだった」と証言する。

人工妊娠中絶、過去最少25万6千件 07年度 indexへ

 人工妊娠中絶をした件数が07年度、過去最少を更新し25万6672件だったことが、厚生労働省が17日発表した保健・衛生行政業務報告でわかった。中絶件数は減少傾向が続いてきたが、前年度と比べた減少率も7.1%と過去5年で最も大きかった。
 女性1千人あたりで中絶した件数を示す人工妊娠中絶実施率(15〜49歳)は9.3件で、中絶件数とともに統計をまとめ始めた1955(昭和30)年以降で最も少なかった。55年当時の中絶件数は今回の4倍以上の117万143件、実施率も5倍以上の50.2件だった。
 厚労省人口動態・保健統計課は、ピルの普及などで避妊行動の変化が影響している、と分析。「性交頻度の低下を指摘する厚労省研究班の報告書もある」としている。

出産・妊婦健診無料化、前倒しの考え 舛添厚労相 indexへ

 舛添厚生労働相は17日、少子化対策の目玉である妊婦健診と出産費用の全国一律無料化について、「27日の週にまとめる次の経済対策に入れようと思っている」と述べ、これまで来年度の実施予定としていた計画を前倒しする考えを示した。さいたま市で開かれた講演会で語った。
 厚労省は09年度予算概算要求で、妊婦健診の助成を現在の5回分から14回分に増やす、健康保険から支払われる出産育児一時金(35万円)も地域の実情に合わせて増額する――を盛り込んでいる。麻生首相が16日に新しい経済対策の策定を指示したことを受け、舛添氏は少子化対策の実施を急ぐ必要があると判断した。

「不規則勤務で過労死」残業基準下回る看護師に労災認定 indexへ

 東京都済生会中央病院(港区)で勤務中に死亡した看護師、高橋愛依(あい)さん(当時24)について、三田労働基準監督署が過労死と認定していたことが17日、分かった。残業時間は過労死認定基準の月80時間を下回っていたが、不規則な勤務による過労と判断した。
 同日、埼玉県に住む遺族の代理人が会見し、明らかにした。認定は9日付。
 代理人の川人博弁護士らによると、高橋さんは手術部に所属。交代制勤務で、緊急手術などにも対応していた。07年5月の宿直明けの朝、仮眠していたストレッチャー(搬送用ベッド)上で意識不明となっているのが見つかり、同日夕、亡くなった。死因は「致死性の不整脈」。病院側が労災を否定したため、遺族は今年3月、労災申請した。
 死亡直前の残業時間について遺族側は「月100時間前後」と主張。労基署は「月平均80時間近く」で基準未満としたが、「交代制勤務や緊急手術などの過重性を総合評価した」と認定理由を説明しているという。
 川人弁護士は「残業時間数を重視する労災行政で、不規則勤務による看護師のストレスや過労を認めた意義は大きい」と評価。母親(48)は取材に対し、「職場で倒れた愛依が労災と認められたのは、ある意味で当然だと思う。これを機に看護師の労働環境が改善されれば」と話した。
 東京都済生会中央病院は「今回の決定を真摯(しんし)に受け止めている。ご遺族への対応について今後協議したい」と話している。

研修医、大学病院離れ続く 「マッチング」また半数割れ indexへ

 来春卒業予定の医学生と研修受け入れ病院の両方の希望をコンピューターで突き合わせる「マッチング」の結果が16日、発表された。大学病院で来春から2年間の臨床研修を受けることが内定した学生数は募集定員に対して49%と、4年連続で半数を割った。
 研修医の大学病院離れが指摘されているが、その傾向が定着している形だ。
 医師臨床研修マッチング協議会によると、卒業予定学生のうち8167人が研修を希望。うち今回、研修先が決まったのは7858人(96%)だった。研修病院は全国で1091病院。
 募集定員(計1万1292人)に対して研修予定者が決まった割合を都道府県別にみると、富山(39%)が最も低く、鳥取(43%)、長崎(49%)などが5割を切った。最も高かったのは東京(92%)。沖縄(84%)、神奈川(80%)、福岡(同)と続いた。

サリドマイドを治療薬承認 年内にも46年ぶり販売再開 indexへ

 服用した妊婦の子に重い障害を引き起こした薬「サリドマイド」(販売名サレドカプセル100)について、厚生労働省は16日、血液がんの一つ「多発性骨髄腫」の治療薬として製造販売することを承認した。年内にも46年ぶりに販売再開される見通しだ。
 薬害を引き起こした薬が再販売されるのは極めて異例。販売再開の条件として、関係者に対し、処方医師や患者の登録のほか、妊婦の誤用を防ぐために患者・家族に十分説明することなどを求めている。

子宮頸がん予防に新ワクチン 感染研開発、臨床試験へ indexへ

 子宮頸(けい)がんを防ぐ新ワクチンを国立感染症研究所が開発した。臨床試験に向けて準備を進めている。子宮頸がんはウイルス感染で起きるが、欧米などで使われているワクチンは、特定の型のウイルスにしか効かず、日本人の子宮頸がんの半数程度しかカバーできない。新ワクチンは、幅広い型に対して効果がある可能性が高い。
 子宮頸がんは、国内で年間約1万5千人が発症し、約2500人が死亡している。原因はヒトパピローマウイルス(HPV)感染で、これを解明した独の医学者に今年のノーベル医学生理学賞が贈られる。HPVは約100の型に分かれており、そのうち15種類の型が、がんの原因になる。
 感染研の神田忠仁(ただひと)・病原体ゲノム解析研究センター長らは、15の型すべてに共通しているウイルス表面のたんぱく質に注目。この一部を切り取って、ワクチンとしてウサギに注射し、ウサギの血液中からウイルスの感染を防ぐ抗体を得た。
 日本人の子宮頸がんの9割は、7種の型が原因で起こる。そのうちの6種の型に有効だった。残りの一つの型については試験中だが、同様の効果がある可能性が高いと研究チームはみている。
 これまでのワクチンは、各ウイルスの型特有のたんぱく質を利用しているため、効果は2〜4種類の型に限定されている。各国で認可されており、日本でも2社が承認申請ずみで、現在審査中だ。
 この研究は厚生労働省の第3次対がん総合戦略研究事業の一つで、製剤化ができ次第、関東の複数の大学病院と共同で臨床試験を始める予定。(編集委員・中村通子)
     ◇
 田島和雄・愛知県がんセンター研究所長の話 アジア地域では欧米に比べ、子宮頸がんの原因となるHPVの型の種類が多い。多数の型を幅広くカバーする新ワクチンは、非常に有効だと思う。第2世代のワクチンといえるだろう。
     ◇
 〈子宮がん〉 子宮の入り口で膣(ちつ)につながる部分にできる子宮頸がんと、子宮の内側の膜にできる子宮体がんの2種類を総称して子宮がんという。頸がんはウイルス感染が原因で、体がんはホルモンなどが関係しているとされている。頸がんの方が若い人に発症しやすく、死亡率が高い。

オリンパス、「カプセル内視鏡」販売 検査後、排出 indexへ

 オリンパスは錠剤のように飲み込んで使うカプセル内視鏡を15日から国内販売する。長さ26mm、直径11mmで小型のカメラとバッテリーを内蔵。従来の内視鏡が届きにくい小腸の診断用で、腸の動きで移動しながら毎秒2コマずつ撮影し高画質画像を無線で送る。約8時間の検査後に便とともに排出される。税込み8万9250円。

国立2病院で7千万円不明 職員が着服やデータ改ざん indexへ

 独立行政法人国立病院機構沼田病院(群馬県沼田市)と国立がんセンター中央病院(東京都中央区)で、患者から診察代などとして受け取った多額の現金がなくなっていたことが会計検査院の調べでわかった。2病院で計約7千万円にのぼるとみられる。窓口の職員が不正取得したり、領収金のデータを改ざんしたりしていたという。
 検査院は、機構とセンターに対し窓口の現金収納事務やデータ管理のあり方などに問題があったと指摘した。
 検査院や沼田病院によると、沼田病院では、窓口で会計事務を担当していた50代の女性職員が患者から受け取った現金の一部を不正に取得。コンピューター管理している領収履歴の一覧データから不正取得分の記録を削除し、データ上の残高と現金残高が一致するように装っていた。
 病院の説明によると、昨年12月に別の職員が履歴が削除されていることに気付いた。病院が調査したところ、02年3月〜08年1月の約6年間に毎月50万〜60万円ずつ、総額約4千万円が不正取得された可能性があるという。女性職員は病院側に「04年4月に独立行政法人へ移行して給料が減った。ほぼ毎日やっていた」と話し、04年4月以降の約4年間で総額約2500万円を不正取得したことについては認めているという。
 病院側は今年9月、女性職員に約4千万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。刑事告訴も検討している。
 一方、がんセンター中央病院でも、窓口で患者に交付した領収書の合計金額に比べて実際の現金残高が少ないことがわかった。不明金の総額は07年までの数年間で計約3千万円にのぼるという。
 検査院やセンターによると、現金の収納事務を担当していた複数の職員が、領収書の交付内容を記録している会計システム上の残高に比べて実際の現金残高が少ない場合、現金残高に合わせてシステムの記録を改ざんしたことを認めているという。ただ、不明金の行方は明らかになっておらず、すでに退職した職員もいるという。
 センターの会計担当者は「領収書の合計金額と現金残高が合わないことは日々の事務でよくあること。現在調査中のため詳細は答えられない」と話している。

がん拠点病院3割、「基準達成は困難」 本社調査 indexへ

 全国のがん拠点病院の3割近くが、厚生労働省が10年春までに達成を求める専門医の配置などの基準を満たすのは難しい、と考えていることが朝日新聞のアンケートでわかった。中国・四国や近畿、北海道・東北で著しい。要件を満たせなければ指定解除の可能性もあり、地域住民に医療格差の不安が募りそうだ。
 がん治療の中核となる全国351カ所の「がん診療連携拠点病院」を対象に8〜9月、放射線療法や抗がん剤治療を専門とする医師や専門職の配置状況、基準の達成見通しなどを聴いた。基準は、拠点病院としての指定要件で、10年春までの実施が前提。61%にあたる214病院から回答があった。
 結果では、達成見通しについて答えた213病院のうち7割にあたる154病院が、期限までに要件を「満たせる」「何とか満たせる」と答えたのに対し、27%にあたる59病院が「非常に難しい」「難しい」とした。
 全国6地方別に、「非常に難しい」「難しい」とした病院の割合をみると、関東は15%と比較的低かったのに対し、中国・四国は37%と高く、近畿36%、北海道・東北33%と続いた。九州・沖縄は29%だった。
 設立形態別では、大学病院で難しいと答えたのは7%にとどまったのに対し、赤十字や厚生連など公的病院では45%、市立病院では30%と高かった。民間医療法人は25%だった。
 要件では、治療開始時からの「緩和ケア」の充実も柱。だが、専任の医師や看護師でつくる緩和ケアチームは現在でも、4割にあたる82病院にない。
 達成が難しい理由で最も多かったのは、がん専門医らの不足。特に地方の病院からは「一般診療の医師確保さえ難しいのに」(北海道の市立病院)、「医療格差をなくすには、国が人員も各地に配分すべきだ」(静岡県の市立病院)と悲鳴が上がった。
 資金難を訴える声も多かった。「国が求める診療体制に比べ、補助金があまりにも少額」(中部の県立病院)、「専門研修の費用がかさみ、補助金は相談員の人件費で消える」(北海道・東北の厚生連)という。
 要件を達成できない病院は、指定が外れる可能性もある。「指定がなくなれば住民に不安を与える」(中国の県立病院)、「人手不足の地方から、指定外しが始まるのではないかと恐れている」(九州の国立病院機構)と不安の声が相次いだ。
 拠点病院指定について検討する厚労省の専門家会議のメンバーでもある山口建・県立静岡がんセンター総長は、「(基準は)最低条件ととらえていただけに、これだけの病院が難しいと考えているのは残念。ただ最初から百点でなくても、向上に努力する病院が増えることが大切だ」と話す。

大阪の病院、注射器使い回し 糖尿病治療用、延べ63人 indexへ

 糖尿病治療用薬のインスリンを自己注射するためのペン型注射器が、大阪市内の病院で複数患者に使い回されていたとして、厚生労働省は3日、医療機関に注意を促すよう求める通知を都道府県に出した。
 使い回しがあったのは大阪市都島区の明生病院。9月に同市保健所の立ち入り調査でわかった。少なくとも過去5年間で延べ63人に使い回していたという。健康被害は確認されていない。ペン型注射器は1人の患者で使うもの。複数患者で使うと感染症の恐れがある。

がん専門病院の「5年生存率」公表 施設差、5部位ごと indexへ

 がん専門病院でつくる「全国がん(成人病)センター協議会」(32病院)は2日、加盟施設別に五つのがんの患者の「5年生存率」を公表した。施設名を明らかにした生存率の公表は2回目。
 99年と00年に各施設で初めて入院治療した患者を、厚生労働省研究班が分析した。分析対象とした施設は、部位ごとに100人以上の患者を治療し、全患者の9割以上を追跡して予後を調べていることなどが条件で、胃がん20、肺がん21、乳がん18、大腸がん17。今年から対象となった、子宮下部にできる子宮頸(けい)がんは9施設だった。
 うち4〜1施設が施設名公表に応じず、5〜2施設は手術患者のデータしかないなど他施設との比較が困難だった。患者の年齢などによる影響は計算で除いた。生存率には重症患者の比率が影響するため、早期の「1期」と最も進行している「4期」の比率も示した。
 その結果、施設間の差が大きいのは胃がんで、最も高い新潟県立がんセンター(78.8%)と最も低い匿名施設(55.8%)の間に23ポイントの差があった。昨年の38.6ポイント差が15.6ポイント縮まった。肺がんは21.4ポイント、大腸がんは18.8ポイント、子宮頸がんは16.7ポイント、乳がんは10.2ポイント差があった。
 研究班は、これらの分析は患者が抱えるほかの病気や病期の違いの影響が排除できていないなどとし、「生存率と治療成績はイコールではない」と説明。「患者追跡率を95%以上にするなどさらに精度を高めたい」と話している。公表データは、各施設ごとに、全がん協のホームページ(http://www.gunma-cc.jp/sarukihan/seizonritu)に掲載する。

大衆薬の店頭販売、ファミマ開始 東京・神田に1号店 indexへ

 ファミリーマートは30日、大衆薬の店頭販売を始めた。1号店となった東京・外神田6丁目店では「ファミマドラッグ」と名付けたコーナーを新設。薬剤師が常駐し、風邪薬や目薬など大衆薬約230種類を扱う。
 今後、09年度施行の改正薬事法で新設される「登録販売者」の育成も進め、大衆薬の扱い店舗を増やす。登録販売者は、新入社員や嘱託社員を対象に11年度までに300人育成する。大衆薬販売を始めた店舗に1年間派遣し、実務経験を積んでもらうという。
 コンビニ各社は大衆薬で差別化を図ろうとしており、セブン―イレブン・ジャパンも調剤薬局を併設した店舗を拡大する方針だ。

キョーリン、肺炎治療などに使う抗菌薬の販売を中止 indexへ

 製薬中堅のキョーリンは30日、医師の処方で肺炎や気管支炎などの治療に使う抗菌薬「ガチフロ錠」の販売を中止したと発表した。米食品医薬品局が9月、糖尿病の患者が服用すると重い低血糖や高血糖になる副作用があることなどを理由に、事実上の承認取り消し処分をしたため。
 ガチフロ錠の発売は02年6月。420万人(推定)に投与し、血糖値異常の副作用が132例あったため、03年3月に糖尿病患者への投与を禁じた。その後も1050万人(推定)に投与し、122例の副作用が報告された。07年度の売上高は、子会社の杏林製薬と、共同販売した大日本住友製薬の両社で約35億円。
 米国ではブリストル・マイヤーズスクイブが販売していたが、06年6月に採算が合わないため販売を中止した。

乳幼児に髄膜炎起こすヒブのワクチン 12月に発売へ indexへ

 乳幼児に重い髄膜炎を起こすことのあるインフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)のワクチンが、国内でも今年12月から発売される見通しになった。先進国では日本だけ、使えなかった。毎年多くの子どもが死んだり、重い後遺症を残したりしていたが、ようやく対策の決め手が登場する。発売元の第一三共(東京)などが9月30日に発表した。
 07年1月に承認されていたが、生産に手間取り発売が遅れていた。
 Hibが、脳や脊髄(せきずい)を覆っている髄膜の中に入って炎症を起こす髄膜炎は、5歳までに約2千人に1人の確率でかかる。2歳未満がかかりやすく、5%が死亡、15〜20%に知能障害などの後遺症が残るという。早期診断が難しく、すでに世界の100カ国以上でワクチンが使われている。19世紀のインフルエンザ流行で、病原体と間違われ、この名がついた。
 標準では0歳から1歳時にうける3種混合ワクチンと同時に4回接種する。価格はまだ発表していないが、任意接種のため接種1回あたり7千円程度の自己負担になる見通し。患者団体などは、市町村が費用を負担する定期接種に含めることを厚生労働省に求めている。

千葉・銚子市立病院が休止、事実上閉鎖 医師不足深刻化 indexへ

 千葉県の銚子市立総合病院が30日、休止した。事実上の閉院となる。大学の派遣医師引きあげなどで2年前から医師不足の深刻化に加え、財政難もあり、岡野俊昭市長が7月、休止を表明していた。市は来春をめどに、公設民営か、民設で診療を再開したいとしている。
 存続を求める約5万人の市民の署名が寄せられ、市議会でも「来春まで休止を延長して代わりの医療機関を探すべきだ」との意見が出された。しかし、約千人の通院患者がいる精神神経科の診療所を10月に設置するなどの措置で、市議会も休止を認めた。
 同病院は51年に開院。約400の病床を持つ中核病院として、16科で40人を超す医師が診療した時期もあった。

埼玉医大、死因偽った診断書訂正せず5年 投薬ミス事件 indexへ

 医療過誤で亡くなった女子高生の死亡診断書に書かれた虚偽の死因が、5年間も直されないままになっている。埼玉医大総合医療センター(埼玉県川越市)で抗がん剤の過剰投与のミスが原因で亡くなった古館友理さん(当時16)の死亡診断書の訂正を求める法務局の要請を、遺族が病院側へ伝えたにもかかわらず、対応していないからだ。
 00年9月、高校2年生だった友理さん=同県鴻巣市=は、あごにできた滑膜肉腫というがん治療のため埼玉医大総合医療センターに入院し、抗がん剤の投与を受けた。ところが、耳鼻咽喉(いんこう)科の主治医のミスで、週1回と決められていた薬を7日連続で投与され、10月7日に亡くなった。
 当日、両親の文章さん(55)、恵美子さん(53)は、主治医が書いた死亡診断書を渡された。死因は多臓器不全で、死因の種類は「病死及び自然死」だった。
 その夜、センター所長、耳鼻咽喉科教授らが古館さん宅を訪れ、投薬ミスを告げ、「病理解剖させてほしい」と申し出た。文章さんは「ミスが隠されるかもしれない」と断り、警察に連絡。防衛医大(同県所沢市)で司法解剖され、死因は「抗がん剤過剰投与による多臓器不全」とされた。
 主治医は同年暮れに懲戒免職となり、耳鼻咽喉科教授と指導医は依願退職した。
 02年9月、埼玉県警は事故当時の耳鼻咽喉科教授、指導医、主治医、研修医を業務上過失致死容疑で、研修医以外の3人を死亡診断書にうその記載をした虚偽診断書作成・同行使容疑で、さいたま地検に書類送検。1カ月後、地検は教授、指導医、主治医の3人を業務上過失致死罪で起訴したが、虚偽記載については不起訴処分とした。
 さいたま検察審査会が教授の不起訴を「不当」とする議決をしたものの、地検は最終的に起訴しなかった。
 しかし、不起訴が決まった直後の03年8月、古館さん宅に、友理さんの本籍地である横浜市の横浜地方法務局長から通知書が届いた。
 それには、検察庁が、死亡診断書の記載が虚偽であることを法務局に連絡したことが記され、「虚偽記載のある診断書を保管するのは相当ではない。正しい死亡診断書を病院から取り寄せて提出してほしい」などと書かれていた。
 文章さんは03年10月に病院を訪ね、法務局からの要請内容を伝えた。
 文章さんはその後数回にわたって病院に問い合わせたが、今も死亡診断書は訂正されていない。
 裁判では3人の有罪が確定している。埼玉医大広報室によると、当時の大学の顧問弁護士と相談し、「訂正は診断書を書いた医師でなければできないと判断し、主治医の弁護士に連絡した」と説明。ただ、主治医の刑事事件の弁護士に、朝日新聞社が尋ねたところ、「(連絡があったかどうか)記憶が定かではない」と話した。
 医師法20条は自ら診察しないで診断書を交付することを禁じているが、厚生労働省医事課によると、診断書を書いた担当医と一緒に治療にかかわった医師がいれば、その医師が書き直しても構わないという。同課の担当者は「担当医が辞めているとしても、病院の責任で医師と連絡を取って書き直し、遺族に渡すのが筋ではないか」と話した。
 文章さんは「事故後の対応や民事訴訟での主張の、どれをとっても納得できないことばかりだったが、診断書の訂正すら行えないようで医師の養成機関の資格があるのだろうか」と話している。

お産中3時間半放置、胎児死亡 三重の医院、謝罪し賠償 indexへ

 お産の途中で約3時間半も放置されたため胎児が死亡したとして、三重県四日市市の若林真奈美さん(47)と一道さん(49)の夫妻が同市内の産婦人科医院と院長の男性医師(68)を相手取り、約8600万円の損害賠償を求めた訴訟の和解が26日、津地裁四日市支部(安間雅夫裁判長)で成立した。医師側が過失を全面的に認め、賠償金を支払うことで合意。院長は法廷で「本当に申し訳ございません」と謝罪した。
 医院と院長は01〜03年に4件の医療過誤で提訴され、2件で過失を認め和解、今回は3件目。麻酔薬の投与ミスで女性が死亡したとされる1件は係争中で、院長は業務上過失致死罪で罰金刑を受けている。
 和解条項などによると、真奈美さんは00年9月、出産のため同医院に入院。院長は胎児を吸引する分娩(ぶんべん)方法を試みたが成功せず、「自然経過を見る」として分娩室から外出するなど約3時間半も母子を放置した。このため真奈美さんは胎盤早期剥離(はくり)を発症、死産となった。
 和解について、真奈美さんは「医師の過失によるものだと分かってよかったが、おなかの中で40週も生きていたのに死亡ではなく死産とされたのはとても残念」と話した。
 原告側代理人の広田智子弁護士は「4件すべてで裁判上の責任が認められ、『リピーター医師』と裏付けられた意義は大きい」と話した。
 一方、院長は取材に対し「何も話すことはない」とした。

医師57人を処分 免許取り消しは5人 厚労省 indexへ

 厚生労働省は25日、医道審議会の答申を受け、刑事事件の有罪が確定するなどした医師、歯科医師ら計57人に対する行政処分を発表した。免許取り消しは5人で、1カ月〜3年の業務停止が47人、戒告は5人。10月9日に発効する。保険診療の指導監査をめぐる汚職事件で、出身大学の同窓会幹部からわいろを受け取ったとして有罪判決を受けた栃木社会保険事務局の佐藤春海元指導医療官も含まれる。
 主な処分は次の通り。(呼称略)
【免許取り消し】
▽牧瀬小児科(北海道釧路市)牧瀬好弘=殺人
▽栃木社会保険事務局(宇都宮市)佐藤春海=収賄
▽河野医院(東京都瑞穂町)河野公信=詐欺
▽三峰病院(群馬県太田市)越塚峰嗣=詐欺
▽田渡クリニック(愛媛県大洲市)河野世美子=詐欺
【業務停止3年】
▽ くろべ歯科医院(三重県松阪市)黒部桂二=覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反など
▽国立循環器病センター(大阪府吹田市)福田稔=麻薬・向精神薬取締法違反、窃盗など
▽みずほクリニック(千葉市)飯島淳=詐欺、詐欺未遂
【業務停止2年6カ月】
▽ 品川近視クリニック(東京都千代田区)増渕敦=児童買春・児童ポルノ法違反
【業務停止2年】
▽ 河北総合病院(東京都杉並区)吉野勝治=覚せい剤取締法違反

副作用で22人死亡 インターフェロン製剤8製品 indexへ

 厚生労働省は25日、慢性C型肝炎の治療に使われるインターフェロン製剤の7社8製品の副作用で間質性肺炎になったとの報告が04年4月〜今年5月に計223件あり、うち22人が死亡していたとする調査結果を公表した。
 同製剤で間質性肺炎の副作用が起きることはこれまでに知られており、製品の添付文書で警告されているが、同省は使用に際して改めて注意を呼びかけている。
 8製品の推計使用者数は計16万8800人。最も副作用報告が多かったのは、中外製薬の「ペグインターフェロンアルファ―2a」(商品名ペガシス)で、124人(死亡13人)だった。この124人のうち11人は過去に間質性肺炎を患っていた。
 次に多かったのは、シェリング・プラウの「ペグインターフェロンアルファ―2b」(商品名ペグイントロン)で、78人(同6人)だった。
 厚労省は「ペガシスについては既往歴のある患者に高い確率で副作用が起きる傾向にある」として、既往歴がある患者に投与しないよう添付文書に書き加えるよう指示した。

後期高齢者医療、麻生幹事長「抜本的に見直す」 indexへ

 自民党の麻生太郎幹事長は21日、フジテレビなどの番組で、75歳以上が対象の後期高齢者医療制度(後期医療)について「政府・与党として抜本的に見直す必要がある」と述べ、年齢による線引きや年金からの保険料天引きなどの問題点を見直す考えを示した。
 衆院解散・総選挙が迫る中、次回の天引きが10月15日に来るため、後期医療の見直しを早めに打ち出し、有権者の不満を抑える狙いがある。後期医療については舛添厚生労働相も20日、見直しに言及しているが、麻生氏は「後期で分けるのはどうか、天引き強制はいかがか、世代間で競うのはどうか、と言っている」と述べ、舛添氏の考えに同調した。
 今年4月に始まった後期医療は、対象となった高齢者らの反発が強く、同月下旬の衆院山口2区補欠選挙で自民党が敗れた一因となった。政府・与党は6月に低所得者の負担軽減などの改善策を打ち出したが、なお批判はくすぶっている。
 政府・与党はこれまで制度の根幹は維持したうえで運用面などで改善を図るとの立場をとってきた。75歳以上という年齢区分など、制度の根幹を見直す場合には、与党内からも反発の声が強まりそうだ。

75歳以上の町民、医療費を無料化 東京・日の出町 indexへ

 東京都日の出町は来年度から、75歳以上の後期高齢者医療制度の対象町民が医療機関で支払う医療費の自己負担分を町が全額を負担する方針を固めた。自治体支援による自己負担無料化は珍しく、厚生労働省は「こういった取り組みは初めて聞く」としている。来年度予算案に約8500万円を計上するという。
 町は周辺医療機関と協議し、対象者が医療機関の窓口で現金を支払わないで済む仕組みを検討する。後期高齢者医療制度の保険料は、従来通り対象の町民が負担する。
 同町の人口は約1万6千人で、8月1日現在の対象者は1830人。07年11月に町内にオープンしたショッピングモールの固定資産税などで3億円の増収が見込めるため、財源の問題はないという。
 同町では07年度から、15歳以下の子どもたちの医療費を無料化している。

カプセルも宇宙服も不要 新型インフル対策で消防庁通知 indexへ

 新型インフルエンザの国内発生に備え、総務省消防庁は16日、患者の搬送時の留意点を市町村に示した。訓練でよく見られる患者隔離カプセル(アイソレーター)や「宇宙服」は不要としている。感染防止上の効果よりも、救急活動の足手まといになるとの判断だ。
 不要とされたのは、ほかに足の靴カバー。これらは訓練の時によく見られる「重装備3点セット」。専門家からも「科学的根拠はなく、ちょっと大げさ」との見方が出ていた。
 アイソレーターは、03年に中国で新型肺炎SARSが流行して問題となった以降、国が補助して都道府県に配備されている。消防庁と国立感染症研究所は(1)患者の容体が急変した時の対応が困難(2)運ぶのに時間がかかる(3)患者の精神的な不安も増す――などのデメリットから「不要」と結論づけた。
 国立感染症研究所・感染症情報センターの森兼啓太主任研究官は「新型インフルエンザは基本的には呼吸器の病気。全身からウイルスが舞い飛ぶわけではなく、患者のすぐそばに近寄らなければ感染リスクはそれほど高くない。カプセルは、使うデメリットのほうが大きい」と話す。
 鳥インフルエンザの発生時には、鶏舎に入った関係者が宇宙服のような感染防護服を着て、靴カバーをはいた光景が見られた。「宇宙服」は、患者のしぶきが飛んでくる体の前面にファスナーがあり、服を脱ぐ時にウイルスに触れる可能性がある。
 靴カバーは、大量のウイルスを含んだふんがあちこちに散らばる鶏舎では足元を守るために必要だが、新型インフルエンザの患者搬送では取り外す際に逆に手指を汚したり、滑って転倒したりする恐れなどデメリットが多いという。「通常のインフルエンザが靴から感染したという報告はこれまでない」(森兼さん)という。
 政府は新型インフルエンザが国内で流行した場合、最大200万人が入院し、うち140万人が救急車で運ばれるとみている。消防庁は救急隊員の感染防止や救急車の消毒方法についての具体的な手順を示す必要に迫られていた。

医療の中身分かる明細書、全国立病院で無償発行へ indexへ

 国立病院機構は12日、運営する全国146病院で受けた医療の中身が詳しく分かる明細書をすべての患者に無償で発行することを決めた。明細書の発行は4月、「医療の透明化」を目的に義務づけられたが、400床以上の病院に限られ、実施は一部にとどまっている。今回の導入で明細書発行に弾みがつきそうだ。
 明細書は、診察や検査、投薬などの項目ごとに医療費の診療点数を記載するもの。外来、入院とも会計の際に、すべての患者が領収書と一緒に受け取ることになる。機構によると、福岡、宮城の2病院で9月中にも発行を始め、年明けから段階的に全病院に導入する。
 明細書の発行は、医療情報の公開を求める患者団体などの要請を受け、今春の診療報酬改定で400床以上の病院での義務化が決まった。だが、希望する患者に対象が限られ、病院側が手数料を請求することも認めたことから、国立病院機構の病院も含め、すべての患者に無償で発行する病院はほとんどなかった。このため、患者団体からは無償発行を求める声が高まっていた。
 厚生労働省直轄の国立高度専門医療センター(ナショナルセンター)の計8病院では4月から、すべての患者に無料で明細書の発行を開始。厚労省は、国立病院機構の全病院に対しても、患者に無料で明細書を発行するよう求めていた。

健保組合の黒字急減 599億円に indexへ

 健康保険組合連合会は、大企業の会社員らが加入する健保組合の07年度決算見込みを発表した。経常収支は599億円の黒字となり、5年連続の黒字となったが、高齢者医療のために支出している拠出金が増え、黒字額は前年度の2372億円から急減している。
 今年3月末の組合数は1518組合(被保険者約1576万9千人)で、経営難に伴う解散などで前年同期より23組合減った。経常収支が赤字だった組合は前年度比12.2%増の680組合に達し、全体の44.8%となった。
 保険料収入は同3.15%増の6兆493億円だったが、医療給付費や退職者医療制度への拠出金が2兆3218億円と同約11%増え、黒字が大幅に縮小した。団塊の世代の大量退職が拠出金を押し上げた形だ。
 中小企業が加入する政府管掌健康保険(政管健保)の保険料率(8.2%)を超える保険料率を設定していたのは前年度より13少ない253組合。ただ、積立金などを除き、保険料収入だけで医療給付費や拠出金をまかなおうとした場合の保険料率についてみると、政管健保を超える組合は32増の114組合。これらの組合は今後、財政が厳しい状況になりそうだと、健保連はみている。
 4月からの08年度では、すでに西濃運輸(岐阜県)や京樽(東京)などが解散している。

研修医急死、県が8300万円賠償 奈良 indexへ

 奈良県は11日、04年に県立三室病院(同県三郷町)で研修中に急死した臨床研修医の男性(当時26)の遺族に対し、長時間にわたって過重な負担をかけるなど県の安全配慮が不十分だったとして、8300万円の損害賠償を支払う方針を明らかにした。9月定例県議会に提案する。
 県医療管理課によると、研修医は03年4月から同病院で内科の研修医として勤務。04年1月、敷地内の宿舎で心臓の発作を起こし、救急車で運ばれたが翌日死亡した。研修医の03年7〜12月の時間外の拘束時間は月68〜139時間にのぼっており、別に月3回、1回あたり8〜16時間の当直勤務もこなしていた。
 両親は06年5月、長時間かつ精神的緊張の高い労働が死因になったとして、奈良地裁に約1億5600万円の損害賠償請求を提訴。地裁は今年7月に和解を勧告していた。同課は「体調にあわせて勤務を制限するなど、研修医の健康状態への配慮に欠けていた」と話している。

薬物過剰投与で患者死なせた疑い 横浜の医師を書類送検 indexへ

 薬剤の過剰投与で患者を死なせたとして神奈川県警捜査1課と旭署は10日、業務上過失致死の疑いで横浜市旭区にある内科医院の男性院長(59)を書類送検した。
 同署によると、院長は昨年2月9日、通院中の同区の女性(当時86)に、抗不整脈剤「リドカイン」の点滴を過剰投与し、死亡させた疑いがある。女性は投与開始から約30分後、急性リドカイン中毒で意識を失い心停止状態になった。その後、心臓の拍動は再開したが意識は戻らず、同年9月7日に脳症で死亡した。
 同署によると、院長は投薬するアンプルに含まれるリドカインの量を確認していなかった。このため、本来15時間から24時間程度かけて投与すべきリドカイン点滴を、准看護師に1時間前後で済ませるよう指示したことが事故につながったとしている。

柔整師学校で無資格教員横行 厚労省、6校に補講指導 indexへ

 接骨院や整骨院で治療にあたる柔道整復師の養成学校がこの10年間で7倍に急増、教員不足から無資格者による授業が横行している実態が、関係者の話で分かった。今年に入り6都府県の7校で無資格教員が判明しており、厚生労働省の出先機関が補講の実施など指導に乗り出した。
 柔整師になるには、養成学校で一定の単位を取り、国家試験に合格することが必要。無資格教員による授業は無効となり、生徒は卒業に必要な単位が不足する「履修漏れ」に陥る可能性がある。
 無資格教員が発覚して補講を命じられたのは、東日本医療専門学校(仙台市)▽東京医学柔整専門学校(東京都北区)▽専門学校白寿医療学院(静岡県伊豆の国市)▽静岡医療学園専門学校(静岡市)▽大阪凰林医療学院(現・日本統合メディカル学院、大阪市)▽琉球リハビリテーション学院(沖縄県金武町)の6校。いずれも開設6年以内の養成学校だ。さらに愛知県内の学校も無資格教員を認めており、厚生労働省東海北陸厚生局が調査中だ。
 柔道整復師法に基づく養成学校の指定規則と指導要領は、教員の資格を担当分野ごとに定めている。医師や大学教員などが教えるべき科目を、柔整師や理学療法士、大学院生らが教えていた例が目立つ。
 補講が最も多い琉球リハビリ学院では、3年生44人が330時限(1時限は45分)、2年生14人が150時限を命じられている。解剖学や運動学などの教員が無資格だった。儀間(ぎま)智理事長は「他校に引き抜かれたり辞めたりした教員がいて、理学療法士などの資格を持つ教員で対応したが、誤りだった」と話す。
 2番目に補講時間数が多い白寿医療は、今月初めに指導を受けたばかり。東海北陸厚生局が調査に入り、運動学などを教えた大学院生ら2人を無資格と断定した。
 白寿医療は、厚労省には、運動学の担当は南風原(はえばら)英之学院長(帝京大医学部客員教授)と届け出ていた。南風原学院長は「教える知識があれば良いと考えていたが、甘かった」と話した。
 柔整師は、医師と同様、患者の治療代を健康保険請求でき、収入が安定していると、人気が高まっている。養成学校は「3年間で400万〜500万円という高額授業料でも生徒を集めやすい」(西日本の学校長)とされ、既存の学科での生徒減少に悩む専門学校などが次々に参入。ここ10年で14校から97校となり、ほかの医療・介護系人材の養成学校に比べても急増が目立つ。
 一方で教員のなり手はこれに追いつかず、教員不足が慢性化。「厚労省に届け出た教員と実際の教員が違うのは、業界の慣習として許されてきた」(東日本の学校の元幹部)とする証言もある。
 日本柔道整復師会は「利益優先で、学生募集のために国家試験対策を重視する学校が増え、まともに治療ができない柔整師が増えた。教員の質を上げるのは当然として、開業前の臨床研修制度などが必要だ」と指摘している。
     ◇
 柔道整復師 国の資格の一つで、取得するには、養成学校で3年以上の専門教育を受けたあと、国家試験に合格する必要がある。骨折、脱臼、打撲、ねんざ、肉離れを治療すれば、医療を補う行為として健康保険を請求できる。治療したケガの数が不自然に多いケースが増えており、治療日数を水増しするなどの不正請求も各地で発覚している。

病院の身体拘束違法〈判決の要旨〉 indexへ

 不要な身体拘束は違法だと訴えた入院患者側の主張を認めて、愛知県一宮市内の病院側に賠償を命じた5日の名古屋高裁判決の理由要旨は次の通り。
 ◆違法性の判断基準
 身体抑制や拘束の問題を見直し、行わないようにしようという動きは主に介護保険施設や老人保健施設を中心に見られたが、高齢者医療や看護にかかわることのある医療機関などでも問題は同様で、少なくともこれら医療機関では一般に問題意識を有し、あるいは有すべきだった。
 身体抑制や拘束が、厚生労働省がまとめた「身体拘束ゼロへの手引き」に示されているような身体的弊害、精神的弊害及び社会的弊害をもたらすおそれのあることは一般に認識されており、また当然に認識できる。
 そもそも医療機関でも、同意を得ることなく患者を拘束して身体的自由を奪うことは原則として違法だ。患者または他の患者の生命・身体に危険が差し迫っていて、他に回避する手段がないような場合には、同意がなくても緊急避難行為として例外的に許される場合もあると解されるが、その抑制、拘束の程度、内容は必要最小限の範囲内に限って許される。右記の手引きが例外的に許される基準としている切迫性、非代替性、一時性の3要件が判断要素として参考になる。
 ◆本件抑制の違法性
 本件抑制で、患者や家族から事前に同意を得た事実はない。抑制しなければ、転倒、転落により重大な傷害を負う危険性があったとは認められない。患者の夜間せん妄については、病院の診療、看護上の適切さを欠いた対応なども原因となっている。特に、おむつへの排泄(はいせつ)の強要や、不穏状態となった患者への看護師のつたない対応からすれば、本件抑制に、切迫性や非代替性があるとは直ちには認められない。
 当日の入院患者に格別重症患者もおらず、看護師がしばらくの間、患者に付き添って安心させ、排尿やおむつへのこだわりを和らげ、落ち着かせて眠るのを待つという対応が不可能だったとは考えられない。
 切迫性や非代替性は認められず、緊急避難行為として例外的に許される場合に該当するという事情も認められない。抑制の態様としても、様々な疾患を抱えた当時80歳の患者に対するものとして決して軽微とはいえない。従って、本件抑制は違法だ。
 ◆損害額
 抑制の結果としての傷害により患者が受けた身体的及び精神的損害に対する慰謝料は、病院の不適切あるいは違法な対応、傷害の程度から50万円が相当だ。弁護士費用は20万円が相当だ。

柔整師学校で無資格教員横行 厚労省、6校に補講指導 indexへ

 接骨院や整骨院で治療にあたる柔道整復師の養成学校がこの10年間で7倍に急増、教員不足から無資格者による授業が横行している実態が、関係者の話で分かった。今年に入り6都府県の7校で無資格教員が判明しており、厚生労働省の出先機関が補講の実施など指導に乗り出した。
 柔整師になるには、養成学校で一定の単位を取り、国家試験に合格することが必要。無資格教員による授業は無効となり、生徒は卒業に必要な単位が不足する「履修漏れ」に陥る可能性がある。
 無資格教員が発覚して補講を命じられたのは、東日本医療専門学校(仙台市)▽東京医学柔整専門学校(東京都北区)▽専門学校白寿医療学院(静岡県伊豆の国市)▽静岡医療学園専門学校(静岡市)▽大阪凰林医療学院(現・日本統合メディカル学院、大阪市)▽琉球リハビリテーション学院(沖縄県金武町)の6校。いずれも開設6年以内の養成学校だ。さらに愛知県内の学校も無資格教員を認めており、厚生労働省東海北陸厚生局が調査中だ。
 柔道整復師法に基づく養成学校の指定規則と指導要領は、教員の資格を担当分野ごとに定めている。医師や大学教員などが教えるべき科目を、柔整師や理学療法士、大学院生らが教えていた例が目立つ。
 補講が最も多い琉球リハビリ学院では、3年生44人が330時限(1時限は45分)、2年生14人が150時限を命じられている。解剖学や運動学などの教員が無資格だった。儀間(ぎま)智理事長は「他校に引き抜かれたり辞めたりした教員がいて、理学療法士などの資格を持つ教員で対応したが、誤りだった」と話す。
 2番目に補講時間数が多い白寿医療は、今月初めに指導を受けたばかり。東海北陸厚生局が調査に入り、運動学などを教えた大学院生ら2人を無資格と断定した。
 白寿医療は、厚労省には、運動学の担当は南風原(はえばら)英之学院長(帝京大医学部客員教授)と届け出ていた。南風原学院長は「教える知識があれば良いと考えていたが、甘かった」と話した。
 柔整師は、医師と同様、患者の治療代を健康保険請求でき、収入が安定していると、人気が高まっている。養成学校は「3年間で400万〜500万円という高額授業料でも生徒を集めやすい」(西日本の学校長)とされ、既存の学科での生徒減少に悩む専門学校などが次々に参入。ここ10年で14校から97校となり、ほかの医療・介護系人材の養成学校に比べても急増が目立つ。
 一方で教員のなり手はこれに追いつかず、教員不足が慢性化。「厚労省に届け出た教員と実際の教員が違うのは、業界の慣習として許されてきた」(東日本の学校の元幹部)とする証言もある。
 日本柔道整復師会は「利益優先で、学生募集のために国家試験対策を重視する学校が増え、まともに治療ができない柔整師が増えた。教員の質を上げるのは当然として、開業前の臨床研修制度などが必要だ」と指摘している。
     ◇
 柔道整復師 国の資格の一つで、取得するには、養成学校で3年以上の専門教育を受けたあと、国家試験に合格する必要がある。骨折、脱臼、打撲、ねんざ、肉離れを治療すれば、医療を補う行為として健康保険を請求できる。治療したケガの数が不自然に多いケースが増えており、治療日数を水増しするなどの不正請求も各地で発覚している。

病院の身体拘束「不必要で違法」 名古屋高裁、賠償命令 indexへ

 愛知県一宮市内の病院に入院していた女性(当時80)が、不必要に体を拘束されて苦痛を受けたとして、病院を相手取り600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が5日、名古屋高裁であった。西島幸夫裁判長は、拘束は正当だったとした一審・名古屋地裁一宮支部判決を変更。病院側に70万円の支払いを命じ、原告側逆転勝訴判決を言い渡した。
 訴えていたのは、岐阜県大垣市の故・吉田貞子さん=訴訟は遺族が承継。
 判決によると、強い腰痛などのため「一宮西病院」に入院していた吉田さんは03年11月16日深夜、必要もないのに看護師にミトン(抑制具)を使って拘束された。ミトンを外そうとして抵抗した際に傷を負った。
 判決はまず、旧厚生省令で明確な禁止規定がある介護施設だけではなく、医療機関であっても「同意を得ずに患者を拘束してその身体的自由を奪うことは原則として違法だ」と指摘。そのうえで、(1)患者への危険が迫っている切迫性(2)ほかに手段がない非代替性(3)長く継続しない一時性の3要件に照らして判断すべきだと述べた。
 この結果、吉田さんについては「ミトンによる抑制を行わなければ転倒、転落による重大な傷害を負う危険性は認められない」と認定した。当日の患者数についても、一審段階では、看護師3人に対して患者数は41人とされていたが、新たな証拠調べの結果、27人で重症患者もいなかったと認定。「看護師がしばらく付き添って落ち着かせることができた」と指摘し、今回のケースについては「切迫性や非代替性があると認められず、違法だ」と結論づけた。
 吉田さんは何度も看護師を呼ぶナースコールを押し、おむつの交換を要求したり、車いすで移動しようとしたりした。病院側は、吉田さんがせん妄(意識混濁)状態で転落の恐れがあり拘束が必要だったと主張。06年9月の一審判決は、病院側のこうした主張を認め、拘束は緊急避難のためで正当だったとして請求を棄却していた。

認知症の入院患者、9年間で倍増 6割が1年以上 indexへ

 認知症の入院患者が、96年から05年までの9年間で4万3千人から8万3千人と倍増したことが厚生労働省の調査で分かった。急速な高齢化で重度の認知症の人が増えているためだ。約6割が1年以上の長期入院で、退院後の受け皿不足による「社会的入院」が相当数いると見られる。
 厚労省は、社会的入院を解消することで、現在約35万床ある精神病床を10年間で7万床減らす計画だった。今回の調査結果を受けて、計画通り削減を進めると必要な治療を受けられない患者が出ることも考えられ、計画見直しの方針を固めた。3日開かれる厚労省の検討会で表明する。
 認知症の場合、主な症状の物忘れだけではなく、妄想や暴力、徘徊(はいかい)などの症状が重い時は入院治療が必要だ。
 重度の妄想や暴力は通常、1〜2カ月の治療で改善するとされるが、1年以上の長期入院患者は05年時点で57%、5年以上の患者も15%にのぼる。脳卒中や糖尿病などを併発して長期入院している人のほか、症状は回復しても、家庭や施設などの受け入れ先がなく、退院できない人も相当数いるとみられる。
 厚労省は来年夏までに、精神障害者の医療福祉に関する計画を策定する予定だ。在宅や施設での療養が可能な認知症患者はできる限り退院させて地域のケアに委ねる方針だが、医師が退院可能と判断しても、症状が不安定な人については老人保健施設なども受け入れに難色を示すことが予想され、「社会的入院」の解消は容易ではなさそうだ。
 認知症の高齢者の数は02年時点で149万人で、15年には推計で250万人に増える見通し。

国民医療費が微減 06年度、診療報酬マイナスが影響 indexへ

 06年度の国民医療費は、前年度よりも13億円少ない33兆1276億円だったことが28日、厚生労働省のまとめでわかった。06年度の診療報酬改定が過去最大幅のマイナス3.16%だったことが影響した。
 65歳以上の医療費が17兆1233億円で、全体の51.7%を占めた。65歳未満の1人当たり平均医療費が15万8200円だったのに対し、65歳以上は64万3600円だった。国民全体の1人当たり平均は25万9300円で、前年度と同額だった。
 国民医療費が前年度よりも減ったのは、06年度と同様に治療行為の公定価格である診療報酬がマイナス改定となった02年度以来。改定は2年に1度実施されるが、改定のない年は2〜3%の伸びとなることが多い。

二酸化炭素誤投与、病院側は死亡原因否定 福岡・八女 indexへ

 福岡県八女市高塚の公立八女総合病院で患者2人が酸素と間違って二酸化炭素を投与され、その後死亡していた問題で、病院の責任者である吉田博・企業長が27日会見し、「二酸化炭素は毒性が極めて低く、投与も短時間」「二酸化炭素は空気と混ざった状態で吸入されており、窒息する可能性はなかった」などと述べ、誤投与が直接の死亡原因でないと主張した。
 病院によると、24日午前3時50分ごろ大腸がんで入院していた70代の男性を、同午後6時ごろには頭部打撲で救急車で運ばれた80代の男性を、それぞれ緊急手術のためストレッチャーで手術室入り口から手術台まで約20メートル運ぶ間、20代の看護師が酸素ボンベと間違えて二酸化炭素ボンベを取り付け、二酸化炭素を吸入させた。最初の患者は手術直前に腹膜炎で、もう1人は25日午前に急性硬膜下血腫で死亡したという。
 酸素と二酸化炭素のボンベは黒、緑に色分けして、保管場所も別だった。病院側によると、ボンベを交換した看護師は「使用直前に空だと気付き、患者の状態が悪かったこともあって焦っていた。前日の手術で深夜まで勤務しており、疲労して注意力がなかった」と話しているという。
 病院は25日、院内に医療事故防止対策委員会を設置し、原因を調べている。ボンベ側の接続金具の口径が酸素、二酸化炭素とも同じだったことなどが明らかになっており、対策をとるとしている。

酸素と間違い二酸化炭素を投与、患者2人死亡 福岡 indexへ

 福岡県八女市と八女郡が設置する公立八女総合病院(同市高塚、吉田博・企業長)は27日、患者2人の手術の際に酸素と間違って二酸化炭素を投与していたと発表した。患者はいずれも死亡している。同病院は異状死の可能性があるとして八女署に届けた。ただ、吉田企業長は会見で「二酸化炭素は毒性が極めて低く、投与も短時間のため死亡との関係は薄いと考えている」と述べ、誤投与が直接の死亡原因でないと説明した。
 病院によると、24日午前3時50分ごろ、大腸がんで入院していた70代の男性患者が腹膜炎で危篤状態に陥った。緊急手術のため、ストレッチャーで手術室入り口から手術台まで二十数メートルを運ぶ間、20代の看護師が空になった酸素ボンベを過って二酸化炭素ボンベと交換して、患者に二酸化炭素を投与していた。
 この日午後6時ごろには、頭部打撲で救急車で運ばれてきた80代の男性患者に対しても緊急手術の前後の運搬の際、過って二酸化炭素を投与した。最初の患者は手術直前に腹膜炎で、もう1人は25日午前に急性硬膜下血腫でいずれも死亡した。同日に看護師長がボンベが違うことに気付いたという。
 酸素と二酸化炭素のボンベは黒と緑に色分けして、保管場所も別だった。病院側によると、ボンベを交換した看護師は「使用直前に空だと気付き、患者の状態が悪かったこともあって焦っていた。前日の手術で深夜まで勤務しており、疲労して注意力がなかった」と話しているという。

大阪府内の公立病院、不良債務246億円超 indexへ

 公立病院改革を考えるセミナー(朝日新聞社など後援)が24日、大阪市内であり、大阪府内の公立病院の不良債務が07年度見込みで246億円を超える実態が報告された。全国の2割を占め、北海道に次ぐワースト2。06年度より約49億円増加した。参加した自治体担当者らからは「このままでは、病院のために自治体がつぶれる。民間も含めた再編が急務」との声があがった。
 セミナーは、総務省が昨年12月に策定した「公立病院改革ガイドライン」に基づき、府の実情にあった「改革プラン」を考えるのがねらい。ガイドラインは、3年後の経常黒字達成や、病床利用率が70%を下回った場合の病床数削減などを求めている。
 総務省公立病院改革懇談会の長隆(おさ・たかし)座長は「府内の大半の病院で、経常収支比率、医業収支比率などが目標値に届いていない。大阪市立4病院の不良債務は128億円、一般会計からの繰入額は年116億円。はっきり言って夕張より厳しい状況だ」と指摘した。経営改善のために、独立行政法人化や民間譲渡など経営形態の変更を求めた。
 大阪府私立病院協会の田口義丈さんは「民間病院の数が多く、公的な役割も担っているのが大阪の特徴」とし、公立病院再編の議論に民間を加える必要性を訴えた。
 大阪府健康福祉部の高山佳洋医療監は「住民も利便性より、安全性、継続性が大事だと理解してほしい」と話した。

入管収容男性に誤投薬 頭のかゆみ止めを「便秘薬」 indexへ

 法務省の西日本入国管理センター(大阪府茨木市、収容者数117人)で今年5月、入国警備官が収容中のスリランカ国籍の男性(30)に、頭のかゆみ止めに使うステロイド薬を便秘薬として飲ませていたことがわかった。男性は体調不良を訴え、外部の病院で胃洗浄などの治療を受けた。センターでは、ほかの収容者に対しても回数や時間を誤る薬の配布があり、こうしたミスは1〜7月で、この男性を含めて5人計8件に上る。
 センターが朝日新聞の取材に明らかにした。センターや、収容者への面会を続けている市民団体「TRY(トライ)」(大阪府東大阪市)によると、スリランカ国籍の男性は07年8月に収容された。男性は今年4〜5月、頭のかゆみと便秘を訴え、センターの医師からかゆみ止めのステロイド薬と便秘薬を処方された。いずれも液体状で、ステロイド薬は塗り薬、便秘薬は飲み薬だった。
 薬は入国警備官が保管。5月6日、1回の服用分を配布用の容器に移し替える際、便秘薬の容器にステロイド薬を誤って入れ、男性に手渡した。誤飲した男性は直後に胸の痛みなどを訴えて嘔吐(おうと)したため、茨木市の病院に運ばれ、胃洗浄を受けた。体調不良はその後、数日間続いたという。センターは男性に謝罪したが、「一時的な体調不良で、命にかかわるものではない」としている。
 この男性には前立腺肥大症の持病もあり、症状を抑える薬も1日2回、センターから配布されていた。センターは今年5月と7月の各1日、この薬を男性に誤って1日3回配り、男性は服用していた。
 ほかの収容者4人への誤配布について、センターは「健康に影響はない」としている。今年、すでに計8件の誤配布が判明しており、昨年の7件を上回った。
 センター総務課の中鉢(ちゅうばち)昭子課長は「職員が薬の種類や用法を十分に確認しなかったため起きた。今後は薬を配布する際、収容者や医師の処方箋(せん)の確認を徹底するよう職員に指導したい」と話している。

がんと誤診、左乳房摘出 岡山の病院、別人と間違え indexへ

 岡山済生会総合病院(岡山市伊福町1丁目)の糸島達也院長は19日、記者会見し、昨年8月、岡山県内の40代女性を乳がんと誤診し、左乳房を手術で全摘出していたことを明らかにした。病院は医療ミスを認めて謝罪し、示談を申し入れたが、現時点で受け入れられていないという。
 病院の説明では、女性は昨年7月、乳がん検診を受診。同8月に「限りなくがんの疑いが強い」とされ、同9月に同病院で左乳房の摘出手術を受けた。だが、術後、摘出した組織の検査で、がんではないことが判明。内部調査の結果、病院の臨床検査技師が組織検査の検体を、同じ日に採取した別の乳がん患者の検体と取り違えていたことがわかった。病院は女性に経緯を説明し、謝罪したという。
 糸島院長は会見で「非常に申し訳ないことをした。二度と起こさないようにしたい」と話した。

国立リハビリセンター元部長を逮捕 60万円収賄容疑 indexへ

 国立身体障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)が発注した医療機器の納入に絡んで現金約60万円を受け取ったとして、警視庁は18日、元同センター病院部長で開業眼科医師の簗島(やなしま)謙次容疑者(63)=東京都大田区=を収賄容疑で逮捕、大手眼科医療機器販売会社「ヤマト樹脂光学」(東京都千代田区、破産手続き中)社長久保村広子容疑者(74)=中野区=を贈賄容疑で逮捕した。
 捜査2課によると、簗島元部長は現金授受は認めたうえで、わいろ性を否認。久保村社長は授受も否認しているという。
 同課によると、簗島元部長は同センターが発注した医療機器の納入に関し便宜を図ったことへの謝礼などとして、07年1〜4月ごろ、ヤマト社の社長室などで、久保村社長から4回にわたり現金約60万円を受け取った疑いがあるという。
 簗島容疑者は、同病院の眼科部門を統括する眼科医長などの立場で、消耗品のほとんどをヤマト社から調達していたという。また、次年度に発注する100万円以上の機器について、必要な機種を決める医療機器等選定委員会の委員として、ヤマト社を推薦したり、発注に関する情報を同社に漏らしたりしていた疑いがあるという。
 同センターは01〜07年度の7年間で、合計1億8670万円の契約をヤマト社と結んでいた。
 同センターによると、このうち、07年度までの4年間では、消耗品を随意契約で1年あたり約1千万円納入。医療機器は入札で5件程度の契約があった。そのうち04年12月に1659万円で、07年10月には756万円でレーザー装置などを契約し、納入。いずれも一般競争入札だったが、入札に参加したのはヤマト社だけで、1回目の入札でそれぞれ99.9%と100%の落札率で落札していた。
 同センターは、障害を持つ人たちの運動機能や視覚、聴覚の回復を専門とし79年に設立。簗島元部長は、低視力者の機能回復が専門で、複数の著書がある。昨年6月に同センターを辞め、同年8月、大田区に眼科医院を開いた。

日本の高学歴女性、高い脳卒中リスク 厚労省研究班 indexへ

 欧米では女性の学歴が高くなるほど脳卒中にかかる危険性が減っていくとされるが、日本では逆に、高卒よりも短大・大卒の方が脳卒中にかかる率が高かった――。厚生労働省研究班が女性約2万人を対象にした調査で明らかになった。米専門誌ストローク電子版に掲載された。
 欧米に比べて女性の社会進出にともなう制度などが未整備だったため、ストレスがかかっていたのではないかと推測している。
 大阪大学の本庄かおり特任助教(公衆衛生学)と磯博康教授らが調べた。対象は岩手、秋田、長野、沖縄の4県に住み、90年に40〜59歳だった女性2万543人。このうち約7割の1万4744人が働く女性だった。最終学歴で中学、高校、短大・大学の3グループに分け、12年間の生活習慣や脳卒中などの病気を調べた。この間、451人が脳卒中を発症した。
 高卒を基準にすると、脳卒中の発症率は短大・大卒が1.4倍、くも膜下出血は2.2倍だった。働く女性の中で比べても1.5倍になった。欧米では中卒、高卒、大卒の順で発症率が下がるが、日本では、短大・大卒で再び跳ね上がるU字型を描いた。
 また、短大・大卒の働く女性の中で「母親」「妻」「娘」など家庭での役割が一つと二つ以上の場合で差が出た。役割が一つの場合は、高卒の働く女性に比べ2.6倍の発症率だったが、二つ以上の場合は1.1倍にとどまった。本庄さんは「仕事でストレスがあっても、家庭での役割が精神的によい効果をもたらしたのではないか」と話している。

国の医師給与11%増 人材確保へ改善策、人事院勧告 indexへ

 人事院は11日、08年度の国家公務員の給与について、現行水準で据え置く勧告を内閣と国会に提出した。一方、国の医療機関や刑務所に勤める医師については、人材確保のため、09年度に平均11%引き上げるよう求めた。1日の勤務時間について、1949年から約60年間続く「8時間」を09年度から民間と同水準の「7時間45分」に短縮することも勧告した。
 給与の引き上げ対象は、国立がんセンター(東京都中央区)など8カ所の高度専門医療センターや13カ所のハンセン病療養所に勤める医師らで今年4月現在、1311人。人事院によると、これほど大幅な引き上げ勧告は初めて。04年に独立行政法人「国立病院機構」の運営になった146病院の医師は含まない。
 人事院の調査では、国の医師の平均給与は1135万円(46.6歳)で民間病院より23%、国立病院機構より11%低かったため、20〜40代を中心に初任給調整手当を拡充。高度専門医療センターについては、各医師に適用される手当の区分を1段階引き上げ。これにより、国立病院機構と同水準の1261万円に引き上げるよう求めた。
 人事院によると、民間とは10年前ですでに10%程度の給与差があったが、国立病院は施設が充実し、専門的な症例を学べることから必要な医師を確保できた。しかし、近年は医師不足が深刻化。がんセンターの麻酔科医や国立循環器病センター(大阪府吹田市)の集中治療科の医師らが一斉退職するなど、手術に支障が出る事態も起きていた。
 国家公務員全体の年間給与は昨年度、4万2千円(0.7%)の増額勧告で9年ぶりに引き上げられており、据え置きは2年ぶり。今年4月の平均月給が38万7506円(41.1歳)、ボーナスが4.5カ月分で、民間とほぼ同水準だったためだ。ただ、中央省庁の人材確保のため、本省の課長補佐に月給の9.44%、係長に4%、係員に2%の「本府省業務調整手当」を新設する。
 勤務時間短縮については、残業が増えないよう人事院が各省から了解を得ており、人件費は増えない見通しだが、手当が支給されない「サービス残業」の増加につながる可能性もある。
 また、新しい人事評価制度が09年度に導入されるのに合わせ、役職はそのままで給与だけ下げる降給や、等級だけ下げる降格処分を新設する。従来も格下の役職につける降任や分限免職はあったが、処分を多様化することで、能力や実績を反映しやすくする。

採血器具使い回し、全国1万2593施設で 国調査 indexへ

 採血器具の使い回し問題を受け、調査していた厚生労働、文部科学両省は6日、同種器具を使っていた病院や診療所、老健施設のうちほぼ半数にあたる計1万2593施設で使い回しがあった、と発表した。大学も含めると、4施設では針も交換していなかった。現時点で肝炎感染などの被害報告はないという。
 4施設以外は、針は交換していたが、針周辺の先端カバーを交換していなかった。厚労省は「針の使い回しより危険性は低い」とするが、B型肝炎の恐れは残るとして7日から、ホームページで施設名などを公表。思い当たる人に検査や医師への相談を呼びかける。
 調査は約11万3千の医療機関と老健施設のほか、都道府県や市町村、健康保険組合、看護師養成学校などが対象。血糖値測定に使う同種の12社30製品の使用実態を聞いた。
 使い回しが判明したのは病院3291、診療所8458、老健施設844など。多くは、先端カバーを消毒するなどして使い回していた。調査対象以外に、特別養護老人ホームや訪問看護ステーションなど約530カ所についても報告があった。
 針の使い回しがあった診療所は「おちハートクリニック」(島根県益田市)と日本製鋼所広島製作所診療所(広島市)。松山看護専門学校(松山市)と徳島大学(徳島市)でも、学生の実習で使い回しがあった。
 また、90年以降これまでに、12府県2特別区443市町村の糖尿病教室や健康フェスティバルなどでカバー交換せずに使い回ししていた。健康保険組合では38。
 厚労省は06年3月、同種器具を使い回さないよう求める通知を出した。05年に英国で、カバー交換せず複数に使われた結果、2人がB型肝炎に感染した疑いがあると報告されたため。だが、都道府県などに出されたこの通知が多くの病院や診療所に伝わっていなかったことも今回、明らかになった。同省は通知のあり方を見直す方針だ。
 施設名などは厚労省ホームページ施設名などは同省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)で7日にも公表される。

「ならし研修」で看護師復職を支援 派遣会社と名大病院 indexへ

 看護師の資格を持ちながら、結婚や育児を機に離職した人の現場復帰を支援しようと、人材派遣のピープルスタッフ(名古屋市)と名古屋大医学部付属病院が手を組み、研修講座を10月に開設する。医療現場で深刻な看護師不足を緩和する狙いだ。
 名大病院に講座「名大ハローナースプラン」を開設。名大が採血や薬剤調合などの実践研修や座学を、ピープルスタッフが復職に向けたカウンセリングや就職情報をそれぞれ提供する。
 講座は週1回、計5日間で参加費用は1万円。定員は10人で、応募者多数の場合は面接による選考がある。復職先は名大病院に限定せず、地域の医療機関で活躍する人材を育てることを目指す。反響が多ければ第2弾の講習も検討するという。
 看護師の資格を保有しながら、現場を離れる人は全国で約55万人ともされる。ピープルスタッフが昨年、再就職を希望する資格者を対象にしたアンケートによると、現場復帰に際しては、日進月歩の医療技術に追いついていけるかに不安を感じる人が多かった。

セブン&アイ、調剤薬局最大手アインと資本・業務提携 indexへ

 セブン&アイ・ホールディングスは5日、調剤薬局最大手のアインファーマシーズと資本・業務提携すると発表した。処方箋(せん)窓口を備えたアインの店舗をセブン―イレブンと共同出店したり、イトーヨーカ堂でのドラッグストアの展開を拡大したりして、集客力を高める狙いだ。
 アインが26日付で実施する第三者割当増資をセブン&アイが引き受け、アイン株約8%(議決権ベース)を約16億円で取得する。薬剤師に準じる「販売資格者」を新設する改正薬事法が09年度に施行されるが、資格を取るには1年間の実務経験が求められるなど自前での育成は難しく、セブン&アイは提携先の確保を急いでいた。

09年度の医学部定員増へ、過去最大の8280人目標 indexへ

 文部科学省は5日、医学部の入学定員を増やすため、一定の条件のもとで09年度からの定員増を認める通知を、医学部がある79国公私立大の学長あてに出した。私立大では歯学部の定員の一部を医学部に変更することも初めて認める。「骨太の方針08」に基づく措置で、全体で過去最大規模の8280人(08年度は7793人)程度の入学定員を目指す。
 通知では、「医師不足が深刻な地域や診療科の医師を確保する観点から、入学定員を『早急に過去最大程度まで増員』することに努める」とした。その上で09年度の増員を希望する大学に、「条件」として地域医療への貢献策(計画)を今年9月22日までに出させ、文科省が計画の実効性や継続性を審査して増員を認めることにした。認可は年内にも行う。
 また、98年から10%の定員削減を求められている歯学部の定員を目標値以上削減した私大については、削減分を医学部定員に上乗せすることを認める。
 文科省医学教育課は「教職員の人件費や実習設備が必要になると思うので、大学の意向を聞き、それに基づく予算要求もしていきたい」としている。

新型インフルワクチン、事前接種開始 医師ら70人に indexへ

 新型インフルエンザに備えて多くの国民にプレパンデミック(大流行前)ワクチンを事前接種するための臨床研究が4日、始まった。今年度中に医師や検疫官ら6400人に接種する予定。有効性や安全性を確認できれば、政府は1千万人に広げる検討をするが、世界初の大規模な試みに疑問の声も出ている。
 ワクチンは、インドネシア、中国で採取された強毒性の鳥インフルエンザ(H5N1)の株からつくり備蓄している2千万人分の一部。同日には東京都内の病院で、医師や看護師、薬剤師ら約70人に接種した。今後、全国60の病院で6400人に各人2回ずつ接種。後に血液検査をして抵抗力が上がっているかを調べる。
 厚生労働省によると、大規模な事前接種は、世界初の試み。政府は問題がなければ09年度から、警察官や自衛官、電気や水道などライフライン関係者ら1千万人に接種を広げる。さらに10年度以降、子どもを含めた希望する国民にも拡大する方針だ。
 新型インフルは、鳥インフルのH5N1がもとになって起こると懸念される。今年6月19日までに世界で計385人に感染、うち243人が死亡した。人から人に感染しやすくなった新型インフルにはまだ変異していない。
 新型は、H5でなく、H7やH9など別の亜型から起こる可能性もある。この場合、備蓄ワクチンはほとんど効かない恐れがある。また、備蓄ワクチンは、H5から新型が起こったとしても、効くかどうか不明と指摘される。
 いま、このタイミングで事前接種が必要なのか。専門家の間でも見方は分かれる。賛成派、反対派の研究者が意見を交換しようと7月下旬には、シンポジウムも開いた。
 西村秀一・国立病院機構仙台医療センターウイルスセンター長は「大規模接種は、効果と危険性のバランスをよく考えるべきで、透明性ある十分な議論が必要だ」と慎重な実施を求める。
 一方、今回の接種に携わる国立病院機構本部の伊藤澄信・医療部研究課長は4日、「今回のはあくまでワクチンの安全性と持続性、効果をみる臨床研究の位置づけだ」と記者らに説明。接種拡大は研究結果による、との政府方針を強調した。

妊婦健診助成、13府県で助産所が対象外 地域で格差 indexへ

 妊婦健康診査(妊婦健診)の際に市町村から数千〜1万円が助成される「補助券」が、13府県の助産所で使えないことが、朝日新聞の調べでわかった。飛び込み出産や産科医不足が問題となり、厚生労働省は「助産所でも使用できるのが望ましい」としているが、助産所の少なさや財政難を理由に使用を認めない自治体が多く、格差が生まれている。
 妊婦健診は母子の健康管理のため、13〜14回受けるのが望ましいとされる。うち数回は子宮頸(けい)がん検診など医療機関での受診が必要な内容もあるが、それ以外は有床の助産所でも受けられる。1回数千〜1万数千円で、費用は自己負担。経済的負担を軽減するため、受診先に提出すれば一定額の助成が受けられる「補助券」を多くの自治体が妊婦に交付している。
 厚労省は07年1月、「公費負担の回数は5回以上が望ましい」と通達。同省は同年6月、「病院、診療所だけでなく、助産所も公費負担の対象となる」との見解を各自治体に文書で通達している。
 しかし日本助産師会が助産所での補助券の使用状況を調査すると、07年度末時点で21府県ではすべての市町村で使えないことが分かった。さらに朝日新聞が調べたところ、岩手、群馬、新潟、富山、石川、京都、和歌山、島根、岡山、高知、長崎、大分、沖縄の13府県では08年度に入っても、全市町村で使用できない状況が続いている(7月末現在)。
 助産所が対象外の理由として、助産所での分娩(ぶんべん)件数は全体の1%程度にとどまる▽医師の診断なしでは超音波検査などで異常を見抜きにくい▽財政難で補助回数を増やせず、医療機関に使用が限られる――などが挙がった。
 京都府こども未来課の川村しげる課長は「公費負担の回数が少なくニーズがなかった」と話すが、府内の50代のベテラン助産師は「出産する場所での健診を希望する妊婦は多い。助産所で健診を受けると5万円近く増えるケースもある」と指摘する。
 一方、07年8月に、かかりつけ医のいない「未受診妊婦」が10カ所以上の医療機関に受け入れを断られ死産する問題が起きた奈良県は、今年4月から、県内全域の助産所でも補助券が使用できるようになった。県健康増進課は「かかりつけの助産所で健診を受ける妊婦が増えれば、飛び込み搬送のリスクが減る」と話す。
 日本助産師会の加藤尚美専務理事は「助産所での健診は法的に認められた行為。助成に格差があるのはおかしい。妊婦が安心して健診を受けられる場を限定すべきでない」と訴えている。

インターフェロン医療費助成、1年半に延長へ 厚労省 indexへ

 薬害肝炎問題を受けて肝炎対策を検討している厚生労働省は1日、今春から実施しているインターフェロン治療への医療費助成の対象期間を、現在の1年から1年半に延長する方針を固めた。
 舛添厚労相が同日、薬害肝炎訴訟の原告・弁護団との定期協議で明らかにした。
 助成制度は、所得に応じて自己負担上限額を月1万〜5万円に抑えるもの。舛添氏は「48週(1年)から延ばすことで効果が出ている研究結果もある。72週(1年半)の助成を実現し、できれば来年4月からやりたい」と語った。
 また原告・弁護団が、肝硬変や肝がんなどの重度の肝臓病患者を身体障害者に認定するよう求めている件で、舛添氏は「肝疾患すべてはできないが、これから専門家に依頼し、障害者に位置づけられるか検討したい」と話し、対象範囲も含めて検討を進める考えを示した。
 身体障害者に認定されると、障害の種類や重さによって、医療費助成や公共交通機関の割引、税の控除などの公的支援が受けられる。

抗がん剤イレッサは「臨床的に有用」 厚労省の調査会 indexへ

 副作用死を多く出した肺がんの抗がん剤「イレッサ」(一般名ゲフィチニブ)について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会安全対策調査会は1日、輸入販売元のアストラゼネカ社による市販後の臨床試験などの報告を受け、「臨床的に有用である」との意見をまとめた。
 イレッサは02年の承認時に、市販後に臨床試験の実施を義務づけられていた。この日は、同社が人種や性別、薬剤投与後の治療の影響などを考慮した調査結果を報告。既存薬との比較試験の一部で延命効果が劣らないことが確認されたことなどから、調査会は「有用性を否定する理由は見あたらない」と結論づけた。
 イレッサの副作用報告は08年3月末までに1916件あり、うち734人が亡くなっている。結果について、薬害オンブズパースン会議事務局長の水口真寿美弁護士は「なぜ有用性を認めるのか、十分な議論が尽くされておらず、拙速だ」と話した。

ピロリ除菌で胃がん3分の1 北大教授ら研究 indexへ

 胃の粘膜にいる細菌ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を薬で除菌すると、胃がん発生が3分の1になるとの研究結果を浅香正博・北海道大教授(消化器内科)らがまとめた。2日付の英医学誌ランセットで発表する。
 胃がん予防目的の除菌は現在、公的医療保険の適用外。適用に向けた議論が活発化しそうだ。
 研究は国内51病院で実施。早期胃がん患者505人の協力を得た。内視鏡で治療した後、半分の患者に除菌の薬を飲んでもらった。半分は除菌しなかった。治療したがん以外の胃がん(2次胃がん)ができるか調べた。
 3年間に2次胃がんができたのは、除菌した群で9人、除菌しない群で24人。詳しく計算すると胃がんリスクは、除菌しない場合を1とすると、除菌した場合は0.34だった。効果が明らかだったため、除菌しなかった群も後ほど除菌した。
 これまで、除菌で「前がん状態」が改善したなどの研究結果はあったが、除菌するか否かの割り当てをくじ引きで決める「無作為化比較研究」で除菌による胃がん予防効果を示したのは世界初。初発の胃がん減少も期待できる。
 国内の胃がん新規患者は年約11万人、死亡は約5万人。富永祐民・愛知県がんセンター名誉総長(疫学)によると「胃がんの8割以上はピロリ菌感染が原因と考えられる」。感染率は若い世代は低いが、50歳以上は7〜8割。団塊世代ががんを発症しやすい年代に近づき、患者は増える可能性が高い。
 浅香教授は「除菌で胃がん発生を大幅に減らせる」と、現在は、胃潰瘍(かいよう)か十二指腸潰瘍の患者に限られている除菌の保険適用を、ピロリ菌感染者全体に広げ、胃がん予防に役立てるべきだとしている。
 保険適用外だと薬代と検査代で1万数千〜2万円ほど。日本ヘリコバクター学会も今回の研究結果をもとに今秋、指針を改訂し、除菌を勧める予定だ。

コンタクト消毒液、使用期限偽装の疑い ヤマト樹脂光学 indexへ

ソフトコンタクトレンズ用の消毒システム「ニューコンフォームSept」
 大手眼科医療機器販売会社「ヤマト樹脂光学」(東京都千代田区)が販売したコンタクトレンズを消毒するケア用品の一部で、製造番号などが改ざんされていたことが分かった。同社は「包装し直し、本来の製品と異なる製造番号等を付した」として30日、問題の商品7120個の自主回収に乗り出した。
 朝日新聞の取材に対し、同社関係者は「使用期限を先延ばしするため、日常的に改ざんしていた」と証言しており、使用期限切れのものが市場に出回っていた疑いがある。監督官庁の東京都は同社に立ち入り検査に入り改ざんの経緯を調べている。
 問題の商品はソフトコンタクトレンズ用の消毒システム「ニューコンフォームSept」。過酸化水素などの入った消毒液や、チオ硫酸ナトリウムなどの入った中和液でレンズを消毒する。製造販売元の徳島県の製薬会社から同社が仕入れ、関東地方の小売業者など24社150店舗に販売している。
 ヤマト樹脂光学によると、回収対象の商品は07年11月から08年7月に出荷した。製造番号は「J0608030 EXP2010―03」などの2種類で7120個。600人が1年間使用する量に相当する。同社は「番号は製造の順番などを示すものであり、使用期限の表示ではない」としている。しかし製造販売元によると、これらの番号は元々、製造側で記載したもので、EXPは使用期限を意味する。回収対象商品の場合、10年3月などが使用期限となる。
 取材に対し、同社関係者は「使用期限を先延ばしした日付を記載した箱とシールを準備し、元の箱や、中の消毒液や中和液にはられていたシールと取りかえる作業が日常的に続けられた」と話した。
 製造販売元によると、この商品は03年7月から製造を開始。すべてヤマト樹脂光学向けで、03年12月から06年3月までに13万6885セット売った。使用期限は製造から3年で、最後に製造した商品の使用期限を既に過ぎているという。
 使用期限が「10年3月」などとされた商品が首都圏の小売店に並んでいるが、これらの記載はでたらめで、商品は実際には期限切れになっていることになる。
 日本コンタクトレンズ学会の糸井素純常任理事によると、期限切れなどで消毒力が落ちれば、消毒の際に使う容器に外部から入り込んだ菌の増殖が止まらず、容器に入れたレンズ内にも菌が入り込み、角膜感染症が起きやすくなる。ひどい場合は失明することもある。
 日本眼科医会によると、国内のコンタクトレンズ使用者は1500万人を超え、このうち7〜10%が眼障害を発症している。眼障害の3人に1人は洗浄や消毒などの手入れ不足が原因という。
 同社は66年に設立。信用調査会社によると、コンタクトレンズや医療機器の販売、薬局経営などで業績が急伸し、06年度の売り上げは768億円にのぼる。
 同社は「改ざんは1人の社員がやった。原因究明を行うとともに管理体制の強化を図り、再発防止に努める」としている。

病院職員互助会、医薬品を無許可販売 岐阜 indexへ

 岐阜市の県総合医療センター(旧県立岐阜病院)の職員互助会が一部の医薬品を無許可で95年から12年間、販売していたことがわかった。岐阜県が30日、発表した。県医療整備課は昨年11月に外部からの指摘を受けて把握しながら問題の処理をせず、今年6月に再び指摘を受けて対応したという。
 販売されていたのは、血糖値を測定する血糖計に装着するチップ。医薬品の無許可販売は薬事法違反の疑いがあり、県は関係者の処分を検討している。
 県によると、センター総務課内の互助会事務局で95年10月から約1千箱を販売し、1箱あたり約600円の手数料収入を得ていた。手数料は人件費や互助会の運営費に使われていた。違法性を認識していた職員はいなかったという。販売が始まった経緯はわからなかったという。
 医療整備課が対応しなかった理由については「同時期に互助会に国税局の税務調査が入り、診療材料の販売などの収益事業を続けると法人税が生じることがわかったため、この時はチップを含む診療材料の販売を停止する対応でとどまった」などと説明している。

AEDに不具合、2万台無償修理 東京の販売会社 indexへ

 自動体外式除細動器(AED)「ライフパックCR Plus」に不具合が見つかったとして、医療機器輸入販売会社・日本メドトロニック(東京都)は29日、06年11月〜今年3月に全国の医療機関や学校などに販売した2万682台の無償修理を始めた。
 同社によると、配線に不具合があり、電源が入らなくなるケースが海外で3件報告された。同社や販売代理店から納入先に連絡し、無償で修理する。

産科医・救急医に手当支給 社会保障緊急対策を政府公表 indexへ

 政府は29日、社会保障分野の緊急課題をまとめた「五つの安心プラン」を公表した。医師不足対策として救急医療を担う医師や産科医への手当支給、ネットカフェ難民の就職支援措置など。着手可能な政策は09年度予算の概算要求に盛り込む。目玉とされた厚生労働省の組織改革の具体策は示されず、有識者による懇談会に委ねることになった。
 この日の閣僚懇談会で了承した。「安心プラン」は福田首相が通常国会終了後の6月23日の記者会見で表明し、(1)高齢者政策(2)医療(3)子育て支援(4)非正規雇用(5)厚労行政の信頼回復、からなる。
 中長期的な制度改革とは別に、短期的な改革メニューを示して政権浮揚につなげるねらいだったが、公表された政策メニューは既存の政策の列挙や、その延長線上にあるものが目立つ。政府は「1〜2年の間に着実に実行に移す」としているが、必要な財源の総額は現時点では不明だ。町村官房長官は閣議後の会見で、「これはまだ出発点。緊急に対応が必要なテーマばかりで、さらに煮詰めていく課題はたくさんある」と語った。
 子育て支援策では新機軸として保育所と幼稚園の機能を併せ持つ「認定こども園」への「こども交付金」を新設し、財政支援の拡大も検討するとした。
 働く高齢者の年金額を減らす在職老齢年金制度の見直しや、最低保障年金制度などの年金改革については「財源と併せ大きな検討課題」と位置づけた。来年3月までに結論を出す。

女性医師の半数、離職経験 出産・育児との両立困難 indexへ

 女性医師の半数以上が、出産・育児などを理由に常勤を辞めた経験のあることが、東京医大の泉美貴准教授らの調査でわかった。辞めた時期は「卒業後10年以内」が86%に達し、常勤医として復職したのは3割にとどまる。医師不足対策の観点からも女性医師支援が必要となりそうだ。
 25日、東京都内で開会した日本医学教育学会で発表した。
 調査では、同大(新宿区)と川崎医大(岡山県倉敷市)を卒業した全女性計1423人にアンケートを送付。50%にあたる711人から回答を得た。
 そのうち、常勤医を辞めた経験があるのは55%。理由は妊娠・出産が55%でトップ。育児(37%)、労働条件(33%)が次いだ(複数回答)。背景には24時間呼び出しがある働き方や、不規則勤務に対応した保育施設のないことを挙げる人が多かった。
 辞めた時は卒後10年以内が86%。25〜29歳だった人が44%と最も多く、30〜34歳が42%だった。当時の勤め先は、6割が大学病院だった。
 辞めた人の86%は「子どもがいても仕事を続けるべきだ」と労働意欲は高い。一方、常勤医として復職したのは33%、非常勤が60%。5%は復職していなかった。
 「若い医師は当直回数なども多く、育児を理由に短時間勤務を求めると同僚に迷惑がかかる、と辞める人が多い」と泉さん。自身は39歳で病理診断部の講師だった6年前、東京医大で初めて1年間の育児休暇を取得した。「経験を積んだ後だから取れた側面もある。女性医師の離職を防ぐには、若い時期も仕事と育児と両立できる環境づくりが必要だ」と話す。

射水市民病院の呼吸器はずし、元外科部長ら書類送検 indexへ

 富山県の射水市民病院で末期がんの入院患者ら7人の人工呼吸器が外されて死亡した問題で、県警は23日、外科部長だった伊藤雅之医師(52)と、外科第二部長だった医師(47)を殺人容疑で富山地検に書類送検した。
 対象になったのは00年9月〜05年10月に死亡した50〜90歳代の男女7人。うち6人の主治医が伊藤医師、1人が元第二部長だった。送検の理由について県警は「心停止前に呼吸器を外せば、患者が死亡することは分かっていた。現行の法体系では殺人罪に問わざるを得ない」と話した。
 ただ、遺族の処罰感情が薄く、延命治療中止に明確なルールがないことから、県警は書類送検するにあたり、会見で「厳重な処罰は求めるものではない」とも述べた。こうした状況を踏まえ、刑事責任の有無を地検が判断する。
 調べに対し、2人は呼吸器の取り外しを認めている。その上で伊藤医師は「延命治療の中止だった」などと説明。元第二部長は「安楽死や尊厳死にあたるものではない」と話し、脳死判定などはしていないという。
 県警は、病院関係者の事情聴取やカルテなどから、亡くなった患者の状態について、専門家に鑑定を依頼していた。また、延命治療中止が認められる要件として、95年に東海大学安楽死事件で横浜地裁判決が示した(1)回復の見込みがなく、死が避けられない末期状態(2)患者の意思表示か、家族から患者の意思が推定できる(3)治療中止による死期への影響を考慮し、医学的に無意味と判断される、の3要件や、厚生労働省、日本医師会のガイドラインなども参考に捜査していた。
 事件発覚後、一連の行為について自らマスコミに説明してきた伊藤医師は、この日、「人の道に従って医者として、どうあるべきかを考えて選んだ行為。(呼吸器を外すことが)一番いい方法であれば、やるべきで、やった以上は責任を負わなければならないと思う」と話した。
 射水市民病院の麻野井英次院長は「2人には倫理面で、問題があった」などと話した。

「がん検出、尿検査で」無承認医薬品販売容疑の3人逮捕 indexへ

 尿検査でがん細胞が見つかるとうたった効果のない診断キットを無許可販売したとして、警視庁は18日、神戸市東灘区向洋町中1丁目、輸入代行業「プロジェクトキャンサー」代表南秀明容疑者(63)、東京都中央区佃2丁目、医療サービス会社「マリア・クォールホールディングス」社長飯田祐巳(ゆうみ)容疑者(37)ら計3人を薬事法違反(無承認医薬品の無許可販売)容疑で逮捕した。
 生活環境課と月島署などの調べでは、診断薬の名前は「CCDキット」。プロジェクト社などは、スポイトに尿を入れると9段階に色が変わり、15秒程度でがんかどうかが分かると宣伝していた。プロジェクト社が香港から輸入。同社は約3年間で、マリア社などに約3万セットを約3億2千万円で卸していたという。
 警視庁が鑑定したところ、CCDキットの含有成分は水銀とニッケルだけで、効果がないことが判明。購入者のなかには、結果が陰性だったため手術を中止し、その後死亡した患者もいるという。
 南容疑者らの逮捕容疑は06年12月〜07年12月、仙台市内の健康商品販売会社に国内では承認されていない診断薬1700個を計442万円で販売するなどしたというもの。

医師研修の工夫解禁 大学限定、地方に誘導 厚生労働省 indexへ

 医師の臨床研修制度をめぐり、厚生労働省は、大学病院に限って研修プログラムの変更を認める方針を固めた。地方の大学病院の研修医の少なさが、地方の医師不足の一因になっているとの指摘を踏まえた。今後、各大学がどれだけ魅力的なプログラムをつくるかがカギとなる。
 識者らが研修制度について話し合う18日の厚労省医道審議会に提案される。了承されれば、各大学病院は来春のプログラムの変更作業に着手。毎年10月にある医学部卒業予定者(約8千人)と、臨床研修ができる病院(約1100施設)の希望すり合わせに間に合うようにする。
 今回の措置は、モデル事業として実施。現在、「内科6カ月以上、外科3カ月以上」などと示されている研修内容の取り決めを、全国80の大学病院に限って弾力化する。
 具体的には、各大学病院の研修医募集の定員数をもとに算定した枠内で、特定の診療科に集中して臨床トレーニングを行う「特別プログラム」の策定を認める。
 対象となる特定の診療科は、「地域医療に影響がある分野」を想定。実質的には、地域医療で不足感の強い産婦人科や小児科、救急などが軸になるとみられる。
 逆に特別プログラムで特定の診療科で長期間研修すると、内科、外科などでの研修期間が短くなる欠点がある。だが厚労省は、「人材が豊富な大学病院では、教育担当の指導医の充実により、初期診療に必要な総合力を育てられる態勢がとれる」(幹部)と判断。医師が卒後2年間で備えるべき基本的な診療能力の水準維持を引き続き求める。
 厚労省によると、04年の臨床研修制度開始後、都市部で待遇のいい大規模病院に人気が集中。地方の大学病院からも都市部での研修を目指す新卒医師が増えた。あおりを受け、若手医師が不足した地方の大学病院が、派遣医師を引き揚げる事例が頻発。地域の自治体病院や中堅病院での医師不足を加速したという。
 08年度の大学病院の研修医募集定員の充足率は、弘前大(27.5%)、秋田大(32.6%)、岩手医大(37.1%)、三重大(23.1%)、岐阜大(35.1%)など。東北、東海地区で定員割れが著しい。厚労省は「魅力のある研修プログラムをつくってもらい、地方の拠点になる大学病院に人材が集まるよう期待したい」(幹部)としている。

07年度医療費、過去最高の33.4兆円 indexへ

 07年度の医療費は前年度より3.1%増の33.4兆円で過去最高だったことが、厚生労働省が16日に発表した概算医療費の集計で分かった。国民1人当たりの医療費は26万2千円で、いずれも02年度以降、増え続けている。
 概算医療費は、公的医療保険と公費から支払われた医療費。70歳以上の高齢者の医療費は14.5兆円と全体の43.4%を占めた。人口の高齢化にともない、高齢者の医療費は全体の伸び率を上回るペースで増えており、07年度も前年度より5.4%増えた。1人当たり医療費でみると、70歳以上は75万7千円で、70歳未満の約4.7倍だった。
 06年度の医療費は32.4兆円。診療報酬改定が過去最大の下げ幅(マイナス3.16%)だったことなどが影響し、前年度比0.1%増にとどまったが、07年度は大きな制度改正がなく、再び伸び率が上昇した。1日当たりの医療費も4.1%増加しており、厚労省は「医療技術の高度化で、1回あたりの治療にかかるコストが増えた」とみている。

出産事故で脳性まひ、補償3千万円 来年元旦から新制度 indexへ

 出産時の事故で重い脳性まひになった子の救済制度は、来年1月1日に生まれた子から対象に始まることが14日決まった。補償額は、一時金600万円と子が20歳になるまで毎年120万円で、計3千万円になる。
 制度を運営する財団法人・日本医療機能評価機構が同日、産科医療補償制度運営委員会を開き、方針を決めた。
 補償対象は、原則妊娠33週以降に体重2千グラム以上で誕生した子。医師の過失の有無にかかわらず支払われる。
 染色体異常など先天的な要因の場合は補償を受けられない。また出産した施設が、損害保険会社6社共同で扱われる「産科医療補償責任保険」に加入している必要がある。同機構は加入施設にシンボルマークの掲示を求める予定。
 保険料3万円は、妊婦が支払う出産費用に上乗せされるとみられる。このため厚生労働省は、健康保険の出産一時金を引き上げる方針だ。

甘い体制整備、倫理「個人任せ」 東大医科研虚偽論文 indexへ

 医学論文で研究倫理をめぐる虚偽記載が明らかになった東大医科学研究所(東京都港区)には、研究者が患者らの血液など検体を保管する際の規則や患者から同意文書をとるための決まった書式がなかったことが分かった。研究者を対象にした倫理研修も今年4月に初めて定期化したという。清木元治所長は「医科研は、倫理面の意識が薄かった。研究所全体として体制整備の必要性を認識するのが遅れていた」と言っている。
 医科研の内部調査担当者によると、研究倫理にかかわる手続きは、事実上、研究者個人の「倫理」に任され、組織としてはノーチェックだった。こうした環境が、今回発覚した東條有伸教授(52)の研究室による論文への虚偽記載につながったとの見方が研究所内では強いという。
 医科研幹部の一人は取材に対し、「東條教授は、共同研究者から『倫理審査委員会に出しましょう』と言われるなど、せっぱ詰まって出さなければいけなくなった時しか、(倫理委に)申請していなかったようだ」と話す。
 11日に記者会見した清木所長は再発防止策について、毎年、各研究室が行うプロジェクトを報告してもらい、それぞれがきちんと倫理申請されているかどうかを定期的に点検する考えを示した。
 同じ東大でも、医学部(東京都文京区)は対照的だ。ヒトから採取した検体を研究に使用する際の同意の取り方や個人情報保護の扱いについて統一的な手順を詳細に定めている。さらに03年からは臨床研究を行う医師や研究者に研究倫理セミナーの受講も義務付けた。研究計画について倫理審査委員会に申請する際には、原則としてこの受講証が必要という。
 世界医師会の「ヘルシンキ宣言」や厚生労働省の倫理指針が、個別の医学研究に倫理委の承認や患者からの文書による同意の取り付けを求めているのは、かつての「人体実験」が明らかになった経緯などを踏まえて、患者や検体提供者の意思に反して研究が行われたり、本人の知らないうちに自分の体にかかわる情報が出回ったりするのを防ぐためだ。
 医療倫理に詳しい東大関係者は「『患者のために』ということならすべて許されると考えるのは、研究者のおごりだ。身体の一部という究極の個人情報を扱う以上、十分な説明と意思確認は欠かせない。透明性確保のため文書で同意を得るのも当然だ」と指摘する。また、医療倫理にかかわる厚労省の担当者は「国内最高レベルの研究機関で研究倫理について虚偽記載がまかり通っていたとは信じられない。明らかに一線を越えており、研究所全体としても『意識が低かった』では済まない話だ」と話している。

血液凝固因子製剤を使用した可能性、2病院を追加公表 indexへ

 厚生労働省は11日、B・C型肝炎感染の危険性がある血液凝固第8、9因子製剤を、血友病以外の患者に投与した可能性があるとして、社会保険紀南総合病院(現・社会保険紀南病院、和歌山県田辺市)、愛媛県立中央病院(松山市)の2病院を追加公表した。

「倫理委承認」「患者が同意」と偽り3論文 医科研教授 indexへ

 東京大学医科学研究所で白血病など難治性の血液疾患を研究している分子療法分野研究室=東條有伸教授(52)=が中心となって発表した論文で、研究倫理をめぐる虚偽記載が繰り返されていたことが朝日新聞の調べでわかった。実際には受けていない倫理審査委員会の承認や血液などの検体の使用の同意を得たと偽った論文が、少なくとも3本あることが判明。教授は取材に対し、自らも虚偽記載をしたと認め、論文1本をすでに撤回した。
 医科研は、他の論文2本についても虚偽記載の疑いがあるとみて調べているが、今後、臨床研究にかかわるすべての研究室を対象に調査・点検を始める方針だ。医科研の清木元治所長は取材に「非常に不適切で残念。検体を提供してくださった患者やご家族に申し訳ない」と謝罪した。
 ヒトから細胞や血液を採取して使う研究は、患者の体に負担がかかるうえ、その個人情報保護にも特別な配慮が必要だ。各機関の倫理委による研究計画書の事前審査や、十分な説明に基づく提供者の同意がなければ研究を認めないのが国際ルールで、03年7月にできた国の指針もその順守を求めている。
 しかし、取材を機に始まった医科研の内部調査でも、指針が適用されて以降、国内外の医学誌に発表された論文5本に倫理面で虚偽とみられる記載が発覚。撤回された論文は白血病の悪性度の測り方が研究テーマで、今年5月にイタリアの医学誌「ヘマトロジカ」に東條教授を責任者とする研究室のメンバー4人の連名で発表していた。
 この研究では、医科研付属病院で89〜03年に急性骨髄性白血病の患者5人から採取された骨髄と末梢(まっしょう)血を使用。倫理委の承認を得たり、文書による患者同意を掲げた世界医師会のヘルシンキ宣言に従ってすべての患者から同意を得たりしたと記載していたが、東條教授によると、実際には倫理委を通さず、同意も一部からしか取っていなかった。
 また、同じ研究室の別の研究者が責任者のケースでも、04年に米血液学会の公式誌「ブラッド」に掲載された論文2本で倫理審査の虚偽記載が判明。実際は受けていないのに「医科研の倫理委に承認された」と記していた。現在、医科研が患者の同意文書の有無について調べている。
 医科研によると、さらに別の論文2本でも、研究用の同意文書をもらっていないのに「書面で同意を得た」と事実と異なる記載があった。倫理委で承認を受けながら、研究用の同意を得ずに研究を進めたケースも1件あった。
 こうした論文の基礎となる研究には、文部科学、厚生労働両省の科学研究費補助金の対象も含まれている。文科省は「倫理面の虚偽記載は論文の捏造(ねつぞう)にも等しい」との見方で、科研費の停止措置などに至る可能性もある。
 東條教授は医科研付属病院副院長や血液腫瘍(しゅよう)内科長も兼任。同科は臍帯(さいたい)血移植で世界有数の治療成績をあげている。(西川圭介、小倉直樹)
     ◇
 〈東京大学医科学研究所〉 1892年に細菌学者の北里柴三郎が創立した伝染病研究所を前身とし、生命科学の研究所としては国内で最大規模。東京都港区にあり、医学や農学、薬学など大学院の各研究科の学生も受け入れている。付属病院は医学部付属病院(文京区)とは独立した施設で、エイズなど難治性疾患の治療に取り組んでいる。

「異常行動とタミフル関連なし」 1万人調査で厚労省 indexへ

 インフルエンザ治療薬タミフルをめぐり、18歳未満の患者約1万人を対象に飛び降りなど異常行動との関連を調べていた厚生労働省の研究班(班長=広田良夫・大阪市立大学教授)は10日、「服用との関連はみられなかった」とする報告を公表した。
 調査結果では、07〜08年にインフルエンザで受診した9715人について解析。タミフルを服用した7487人のうち、異常が現れたのは11.9%の889人。一方、服用しなかった2228人でも12.8%の286人に異常があり、割合は変わらなかった。
 転落事故などを受けて昨年3月からタミフルの10代への使用を制限してきた厚労省は、今回の調査のほか、動物実験や臨床試験を実施。三つの調査ではいずれも服用と異常行動の関係は示されておらず、厚労省は今後、制限を継続するかどうか判断する。
 一方、飛び降りや突然走り出すなど重度の異常行動を起こしたインフルエンザ患者(30歳未満)が07〜08年に77人いたことが、全医療機関を対象にした厚生労働省の調査で分かった。約3割はタミフルを服用していたが、別の薬リレンザを飲んだ14%の患者でも異常行動がみられた。

大学病院に戻る新人医師微増、56% 外科は減少続く indexへ

 今春に臨床研修を終え、大学病院に戻った新人医師は56%だったことが10日、全国医学部長病院長会議(会長=小川彰・岩手医大学長)の調査でわかった。診療科別では、外科が2年続けて減少しており、外科が敬遠される傾向が強まっている。
 同会議の専門委員会が全国の計80医科大・医学部に聞いた。06年に医師免許を得て2年間の臨床研修を終えた新人医師のうち、大学病院での勤務を選んだのは55.9%。前年よりも3.9ポイント増えたが、臨床研修導入前の71.4%(02年)と比べると、15.5ポイント減っている。
 診療科別では、外科や麻酔科などの減少が目立つ。外科は8.4%で07年と比べて1.3ポイント減。麻酔科は6.5%と1.4ポイント減った。一方、産婦人科は5.3%(0.7ポイント増)、小児科は6.4%(0.6ポイント増)だった。
 会見した小川会長は「外科減少は手術などのリスク回避のためと思われる。偏在の解消が必要だ」と話した。
 地域別では、北海道が56.2%(17.5ポイント増)、九州が64.3%(17.6ポイント増)と前年を上回ったが、関東では82.3%(6.9ポイント減)と前年を下回った。

75歳以上医療費1人100万円超、福岡など6道府県 indexへ

 国民健康保険中央会は8日、07年度の市町村の国民健康保険の医療費(速報値)を発表した。75歳以上の高齢者1人当たりの医療費は、都道府県別で最も多いのは福岡107万5千円で、高知、北海道、沖縄、広島、大阪を含めた6道府県が100万円を超えた。全国平均は86万9千円で、最も低かったのは長野の71万5千円だった。
 被保険者は前年度より0.9%減の4723万人だったが、医療費総額は3.7%増の19兆497億円。1人当たりの医療費も4.7%増え、過去最高の40万3千円だった。

採血器具使い回し、名古屋市内で51施設 indexへ

 名古屋市内の病院や診療所など2140施設のうち、51施設で採血器具の使い回しがあったと市が8日、発表した。針は交換しており、健康被害の報告はないという。ただ、市の調査に対し、全体の約1割に当たる282施設は回答しなかった。
 51施設にはすでに発覚している市立の医療機関7施設も含む。残りはすべて民間だった。いずれも血糖値を測る器具のキャップを消毒して使い回していた。市は各医療機関に相談窓口を設けて対応するように求めた。

高血圧死の危険、40代男性突出 厚労省が18万人調査 indexへ

 高血圧の40代男性が死亡する危険性は、正常な血圧の人の3.4倍に上ることが、全国13の研究グループの調査を統合した厚生労働省研究班の初めての解析でわかった。高齢男性では1.5倍前後なのと比べてはるかに高く、「高血圧は中年ほど要注意」という傾向が出た。
 対象は40〜90歳の男性約6万5千人、女性約11万人で、同種の国内調査では過去最大規模。70〜90年代に血圧など健康状態をみて、その後約10年追跡したところ、男性約1万人、女性約8千人が死亡。血圧と死亡の関係を調べた。高血圧と関係が深い脳血管の病気がある人は除いた。
 その結果、収縮期血圧120未満/拡張期血圧80未満と正常な人たちに比べ、160以上/100以上の高血圧の人たちが死亡するリスクは、男性で40代が3.4倍、50代2.2倍、60代で1.8倍、70代で1.6倍、80代で1.3倍だった。
 女性は40代で1.4倍、50代1.9倍、60代2.1倍、70代1.5倍、80代1.2倍。男性では若い世代ほど危険性が高くなる傾向が際だった。これらの人がもし正常血圧であれば、全体の死亡者は男性で23%、女性で18%減る計算という。
 140以上/90以上と軽症の高血圧でも、危険性が高まることが確認された。
 高血圧は塩分の多い食事や肥満、飲酒、ストレスが招きやすく、働く世代の生活習慣と関係が深い。解析を担当した滋賀医科大の村上義孝・特任講師は「若い世代のリスクがこれほど高いとは驚いた。血圧の異常は放置しないでほしい」と話す。

薬販売に新資格、スーパー販売可能に 富山は戦々恐々 indexへ

 医薬品を販売する新たな制度として、09年度から「登録販売者」という資格ができる。都道府県が行う試験に合格すれば、薬剤師がいない店舗でもかぜ薬や胃腸薬など主な市販薬を売れるようになる。薬剤師不足に苦労するドラッグストアなどはこれを事業拡大につなげようとする一方、「置き薬」を扱う伝統的な配置薬業界には影響を懸念する声もある。
 新制度をいちはやく活用しようとしているのが、ディスカウントストア大手のドン・キホーテ(東京都新宿区)だ。子会社の従業員も含め約250人が、今年1月からインターネットなどによる「eラーニング」で資格試験に向けて勉強している。
 同社は多い時には全国約60店で薬を販売。だが、薬剤師不足のため現在は約150店中13店に縮小している。うち11店では薬剤師がテレビ電話で客に対応する方法で、深夜早朝も薬を売っている。
 薬局などが閉店している深夜早朝営業が同社の特徴だけに「医薬品販売へのニーズは強い」。そこで09年度以降は登録販売者を配置して、薬を扱う店舗を増やす方針だ。
 東海地方を地盤に約640店舗を展開するスギ薬局(愛知県安城市)も、グループ全体で約1100人の従業員が受験予定。子会社のディスカウントストアで医薬品を販売していない約70店に登録販売者を置き、薬も扱う新形態の店舗に転換するという。マツモトキヨシ(千葉県松戸市)も従業員約2千人の受験を計画している。06年度から大学薬学部が6年制となり、12年春までは新卒者が少ないことへの「備え」でもあるという。
 だが、大手スーパーが医薬品販売に参入してきたら「仕入れ価格などで太刀打ち出来ない」とスギ薬局。そこで最終的には薬剤師が常駐し、ハイリスクな薬の販売や調剤もできる店舗を増やして差別化を図る考えだ。
 ただ、現在は医薬部外品しか販売できないコンビニエンスストア各社は「(登録販売者の)人材確保が難しい」(ローソン)などとして、今のところは静観の構えだ。
 新制度の影響は、「売薬(ばいやく)さん」で知られる富山県の配置薬販売業界にも及んでいる。
 富山市の富山国際会議場で5月下旬、配置販売業者ら約400人が登録販売者資格の模擬試験を受けた。白髪頭の受験者も少なくなかったが、みな真剣な表情でマークシートの答案用紙に向かった。
 既存の業者は経過措置として09年度以降も薬を販売できるが、登録販売者に比べると扱える薬は限られる。厚生労働省が05年に作成した資料によると、一般用医薬品の代表的な485成分のうち、登録販売者が扱えるのは474成分。これに対し配置販売業者は270成分にとどまる。
 このため富山県薬業連合会は「消費者の信頼を得るには登録販売者の資格が必要」として受験を勧め、研修会や模擬試験を開催している。
 だが、県内を拠点とする配置従事者約1700人のうち約65%は60代以上(県くすり政策課調べ)と高齢化が進んでいる。関係者からは「資格取得が負担になって廃業を選ぶ人も出てくるのでは」との声も聞かれる。(増田愛子)
     ◇
 〈登録販売者〉 改正薬事法で09年度から、一般用医薬品の販売には薬剤師か登録販売者の配置が必要になる。医薬品のリスクに応じた消費者への情報提供や、販売者の資質確保が目的。登録販売者の資格試験では、医薬品の主要成分の効能・効果、副作用などの知識が問われる。受験には1年以上の医薬品販売の実務経験などが必要。第1回試験は8月から各地で始まる。

歯周炎治療の容器使いまわし 広島で推計8500人に indexへ

不適切な使い方が表面化した歯科用製品
 広島市中区の中電病院が4日、歯科で歯周炎の治療に使う軟膏(なんこう)を歯と歯茎の間に注入する容器を、1本につき平均4〜5人の患者に使い回ししていたと発表した。00年1月から8年以上続いており、対象者は約8500人と推計される。これまで感染例は確認されていないという。容器の説明書に「使用は1患者1回限り」との注意書きがあったが、同病院は「認識不足だった」としている。
 使い回されていたのはサンスターの「ペリオクリン歯科用軟膏」と、昭和薬品化工の「ペリオフィール歯科用軟膏」の2種。同病院によると、注射器型の容器に炎症を抑える抗生物質がそれぞれ0・5グラムずつ入っており、細いプラスチック製の先端部分を歯と歯茎の間に差し込んで注入する。1人の患者の上下の歯にすべて使ったとしても使うのは全体の半分程度とされ、同病院は容器をアルコール消毒し、中身がなくなるまで使い回ししていたという。
 2日に外部からの指摘で発覚した。今後、カルテをもとに使用の可能性がある患者に連絡し、感染の有無を調べる血液検査を無料で実施する。
 歯茎から出血しやすい歯周炎治療での容器の使い回しについて、厚生労働省医政局歯科保健課は「初めての報告に驚いている。一般的にアルコール消毒ではエイズウイルス(HIV)や肝炎などのウイルスは完全に除去できず、感染の可能性はゼロではない」としている。

リタリン仕入れ記録ずさん 京都の院長を書類送検 indexへ

 覚せい作用と依存性がある向精神薬「リタリン」を法定の記録を残さずに仕入れたとして、近畿厚生局麻薬取締部は3日、京都市の心療内科クリニックの院長(49)を麻薬及び向精神薬取締法違反容疑で京都地検に書類送検した。
 調べでは、院長は06年1月〜07年10月、医薬品卸売会社から74回にわたり、リタリン約9万7千錠などを仕入れた際、日時や数量などの記録を怠った疑い。麻薬取締部によると、同クリニックは06年11月から1年間で、京都府で最多の計約4万5千錠を仕入れていた。
 同取締部は昨年11月、同クリニックと院長宅を同法違反容疑で家宅捜索していた。院長は朝日新聞の取材に対し、「医薬品卸売会社からの請求書で代用できると誤解し、(日時や数量が記載された)納品書は捨ててしまっていた」と話している。

がん拠点病院、3割医師不足 国立がんセンターも indexへ

 都府県のがん診療拠点に指定された全国47病院のうち、3割弱にあたる13病院で、手術を担う外科医、麻酔科医のいずれかが不足していることが、朝日新聞社の調べでわかった。がん診療の頂点にあたる国立がんセンター中央病院(東京)では3月以降、麻酔科医の一斉退職から手術数を2割減らしている。手術数の減少や「手術待ち」の延長など、がん診療にも深刻な影を落としている。
 全国的に外科医、麻酔科医不足が問題となる中、今年4〜5月、47の「がん診療連携拠点病院」に05年以降の毎年4月時の人数などを尋ねた。東北大病院(宮城)、九州大病院(福岡)を除く45病院から回答を得た。
 定員に満たないと答えたのは青森、栃木、埼玉、山梨、長野、静岡、兵庫、島根、岡山、徳島、高知、熊本、大分の13病院。定員には達しているが、過去1年間に外科医または麻酔科医が減ったり、手術の増加に追いつかなかったりと、「不足感がある」と答えた病院も九つあった。
 不足に対する病院の対応では、「診断から手術までの待ち時間を延長」「非常勤医師の活用」が4病院、「胆石など、がん以外の手術をやめた」「外来を中止・縮小」が3病院、「麻酔科医や外科医に手当などを新設」が2病院あった。「全体の手術を減らした」「化学療法・緩和ケアを縮小・中止した」と答えた病院もあり、地域の病院、診療所への患者の「逆紹介」などでしのいでいる、という。

血液製剤使用の1825機関、厚労省公表 薬害肝炎 indexへ

 厚生労働省は1日、B・C型肝炎などに感染する危険性がある「血液凝固第8、第9因子製剤」を、血友病以外の患者に投与した可能性のある1825医療機関名を公表した(1825医療機関の一覧は下記関連リンクを参照)。
 これまで非加熱製剤は納入施設名を公表したことがあるが、今回は加熱処理した製剤についても「感染リスクは否定できない」として公表に踏み切った。
 対象製剤は第8、第9因子製剤と、そのいずれかが含まれる類似製剤で計28種類。72年から07年まで使われた可能性がある。これらの製剤は、凝固因子が生まれつき足りない血友病患者に使われる治療薬。だが大量出血を伴う手術や出産などで、止血目的で投与されたとみられる。
 厚労省調査では、1825施設のうち計185施設で計1622人への投与が確認された。だが本人や遺族に告知できたのは計419人と、全体の4分の1にとどまっている。
◆検査を受けた方がいいケース
 次の(1)〜(4)に該当する人は、今回調査対象となった血液凝固因子製剤を投与された可能性があり、肝炎ウイルス検査の受診が勧められる。
 (1)新生児出血症(新生児メレナ、ビタミンK欠乏症等)などの病気で、「血が止まりにくい」と指摘を受けた人
 (2)肝硬変や劇症肝炎で入院し、出血が著しかった人
 (3)食道静脈瘤(りゅう)の破裂や消化器系疾患により大量の吐血・下血があった人
 (4)大量に出血するような手術を受けた人(出産時の大量出血を含む)
 また、今回の調査対象製剤の投与以外にも、肝炎ウイルスに感染する場合はあるため、厚労省は、大きな手術を受けた人や92年以前に輸血を受けたことのある人らに特に、検査を勧めている。
◆調査対象の血液凝固因子製剤(カッコ内は流通、使用されたとみられる時期)
【第8因子製剤】
非加熱製剤
コンコエイト(78年8月〜88年4月)
プロフィレート(78年8月〜89年3月)
コンファクト8(79年4月〜87年2月)
ヘモフィルS(78年8月〜87年8月)
ヘモフィルH(80年3月〜87年8月)
クリオブリン(79年4月〜88年4月)
コーエイト(79年4月〜87年8月)
ハイクリオ(79年9月〜89年2月)
加熱製剤
コンコエイトHT(85年7月〜90年3月)
コンファクトF(85年8月〜92年12月)
ヘモフィルS-T(85年7月〜90年7月)
ヘモフィルH-T(85年7月〜90年7月)
コーエイトHT(85年8月〜90年6月)
ハイクリオHT(87年6月〜93年7月)
【第9因子製剤】
非加熱製剤
クリスマシン(76年12月〜88年4月)
PPSB-ニチヤク(72年6月〜88年12月)
コーナイン・ミドリ十字(72年4月〜79年9月)
コーナイン・カッター(78年4月〜87年11月)
プロプレックス(80年5月〜88年12月)
ベノビール(84年8月〜88年6月)
加熱製剤
クリスマシンHT(85年12月〜94年6月)
PPSB-HTニチヤク(87年2月〜00年3月)
ノバクトF(86年2月〜95年1月)
コーナインHT(85年12月〜94年3月)
プロプレックスST(86年4月〜07年3月)
【その他の類似製剤】
非加熱製剤
オートプレックス・非加熱(85年8月〜89年6月)
ファイバ・イムノ(84年6月〜88年2月)
加熱製剤
オートプレックス・加熱(88年3月〜03年7月)

タミフル効かない耐性ウイルス 国内では1.6% indexへ

 インフルエンザ治療薬「タミフル」が効かない耐性ウイルスは、国内で1.6%にとどまっていることが、国立感染症研究所などの緊急調査で分かった。報告書が世界保健機関(WHO)のウェブサイトに掲載された。欧州では4分の1が耐性化するなど国際的な問題になっている。
 WHOなどによる国際監視体制の一環。全国76の地方衛生研究所が07年9月から08年3月までのシーズンに患者から得たインフルエンザAソ連型のウイルス1360株を集め、感染研が解析した。その結果、1.6%にあたる22株が耐性だった。このなかには、今年1月に横浜市で日本で初の集団感染を起こしたウイルスも含まれている。耐性は非常に強く、普通のインフルエンザウイルスに比べ、300倍以上だった。
 日本は世界の生産量の7割を使うタミフル消費大国であり、耐性ウイルスが広まっているのではないかと懸念されていた。解析した感染研ウイルス3部の小田切孝人(おだぎりたかと)室長は「まだ欧州のような深刻な事態ではないことが分かったが、この耐性ウイルスが日本で広まると、医療現場へ大きな影響が出る。今のうちに手を打つことが大切だ」と話し、次のシーズンに向けて夏場も休まず監視を続ける。