入院医療費の自己負担について、サラリーマンら現役世代は3割と法律で定められているが、建設業者らが加入する11の国民健康保険組合(国保組合)は実質無料にしていることが朝日新聞社の調べで分かった。5国保組合は月1万円程度に負担軽減している。これらの国保組合への国庫補助は2008年度は計1378億円で、医療費の4〜6割を負担している。国庫補助は医療保険の財政支援が目的。法定給付を大きく上回るサービスを提供する組合に税を投入し続けることを疑問視する声が出ている。 国保組合へのアンケートや内部資料をもとに集計した。高い水準の保険給付をしているのは、大工や左官、配管工など建設関連の業者らでつくる全国建設労働組合総連合(全建総連)の組合員と家族が加入する国保組合。医療機関の窓口で3割を負担した後で、国保組合から払い戻しを受ける。負担軽減の対象者は計91万人。 給付内容は組合ごとに異なり、東京土建国保組合(家族含めて加入者23万2千人)では本人、家族とも入院時の負担はゼロ。本人は通院時も月5千円以下。29都県の建設関連業者が入る中央建設国保組合は本人(14万9千人)の入院・通院時の自己負担を月5千円以下に抑えている。 通院時に負担軽減される対象者は全体で57万人。 厚生労働省によると、全建総連系の国保組合は22あり、保険給付に対する国庫補助率は平均47.5%。12組合が5割を超え、長崎県建設事業国保は60.3%に達する。ただ、高額療養費関連事業への補助など計約30億円や、都道府県の補助分が含まれておらず、実際の補助率はさらに高いとみられる。 全建総連の勝野圭司社会保障対策部長は「払い戻しの費用は(組合員が負担する)保険料だけで賄っている。払い戻しがあるだけで、裕福な組合だという議論は一面的だ」と反論している。 朝日新聞社の指摘を受け、厚労省国民健康保険課は「他の医療保険制度との並びもあり、問題がある可能性がある。国庫負担のあり方についても議論の余地がある」としている。
長妻昭厚生労働相は29日のテレビ朝日の番組で、医療行為や薬の公定価格である診療報酬について「全体のパイを上げたうえで中の配分を大きく見直すことが必要不可欠だ」と強調した。財務省が診療報酬全体を引き下げて配分の見直しを求めていることに反論した。 長妻氏は「日本の医療費、医師の数は先進7カ国で最低」と指摘したうえで、「今回の政権交代の大前提は、コンクリートから人。医療崩壊を立て直すためには、一定の金額が必要だ」と診療報酬全体の底上げを改めて求めた。一方で「配分も変える必要がある」とも述べ、開業医と勤務医の収入格差の見直しや、医師不足が目立つ産婦人科や小児科などへの重点配分を目指す考えを示した。
厚生労働省は27日、医療予算の圧縮を求める財務省の見解への反論をまとめ、ホームページ(HP)上で公表した。日本の医療費の水準は国際的に低いと主張。鳩山政権が目指す医療再生のため、十分な予算の確保を求めた。年末の予算編成に向けて論争が始まった。 発端は19日の野田佳彦財務副大臣の記者会見。物価や給与水準が下がる中で「ドクターだけ高止まりでいいのか」などと述べ、医療行為や薬の公定価格である診療報酬の引き下げを求め、財務省のHP上で見解を示す方針を表明した。 これに対し、厚労省の政務三役は「正しい情報を伝えないといけない」と、反論をまとめるよう指示した。 厚労省の見解では、日本の医療費が対GDP(国内総生産)比で経済協力開発機構(OECD)の30カ国の中で21位の低水準だと指摘。連立3党の政権合意の「医療費の先進国並みの確保を目指す」という記述を引用した。 さらに、診療報酬を医師の給料に結びつけた財務省に対して、「診療報酬=医師の報酬ではない」と記載。「公立病院の総費用のうち医師の給料は1割だけ」というデータで牽制(けんせい)したうえで、診療報酬の配分見直しだけで財源をひねり出すのでは不十分だとしている。
新潟県は27日、持病のため県内病院の同じ病室に長期入院中で、新型インフルエンザに感染した未就学の女児と小学生の男児=いずれも10歳未満=から、タミフルが効きにくい耐性ウイルスが見つかったと発表した。厚生労働省によると、同じ病室の2人からの確認は全国初という。 県の遺伝子解析で27日に判明。県は「人から人への感染が確実に起きたと把握されたわけではないが、感染の可能性も否定できない」としている。今後、国立感染症研究所で詳しい検査をする。 県によると、女児は10月9日に発症、翌日からタミフルが投与され、同月中旬に回復。男児は10月10日からタミフルの予防投与が続けられていたが、13日に発症。その後もタミフル投与が続けられ同月下旬に回復したという。 厚労省の担当者は病院内で感染が拡大していないとして「公衆衛生上の大きな問題はない」としている。 世界保健機関(WHO)によると、26日までに英国と米国の病院でも複数の患者からタミフル耐性ウイルスが見つかったという。
参院厚生労働委員会は27日午前、ウイルス性肝炎の患者支援と医療体制の整備を盛り込んだ肝炎対策基本法案を全会一致で可決した。30日の参院本会議で可決、成立する見込みだ。 ウイルス性肝炎の患者・感染者は全国に約350万人いるとされる。法案は救済対象を肝炎患者全体に広げ、国や自治体が肝炎患者の経済的負担の軽減措置や予防策の推進、治療レベルを全国で均一にする対策を講じることなどを定めている。26日の衆院本会議で可決された。 自民党は27日から再び審議拒否をしているが、同法案は「人命にかかわる問題」として例外扱いし、参院厚労委に出席、賛成した。その後、新型インフルエンザ対策特別措置法案の審議に移ると退席した。 また、参院の各委員会では自民欠席の中で審議が始まった。参院財政金融委では中小企業等金融円滑化法案の採決を強行し、公明、共産も賛成し、可決した。厚生労働委ではインフル特措法、法務委では裁判官の報酬法改正案など3法案、外交防衛委でも防衛省職員の給与法改正案を自民欠席のまま可決した。国家公務員の給与法改正案など3法案も同日中に総務委で採決され、可決する見通しだ。
09年版の消防白書が27日の閣議で了承された。08年の救急出動件数は前年より減ったものの、通報から病院収容までの時間が過去最悪となっていることから「消防機関と受け入れ医療機関の連携を強化する必要がある」としている。 白書によると、全国の救急出動件数は約510万件で、過去最多だった07年に比べ約19万件(3.6%)減った。一方、通報から病院に収容されるまでの時間は平均35.0分で、98年に比べて8.3分遅くなっている。 白書は中・長期的な課題として「医師不足や病床不足の改善など医療機関の充実強化」を挙げている。消防法の改正で都道府県に義務づけられた、患者の状況に応じた病院のリストづくりの強化も求めている。
鹿児島大医学部・歯学部付属病院が6月に50代の女性患者に行った手術で、体内に数センチ角のガーゼ1枚を置き忘れていたことがわかった。女性が19日に別の医療機関で検査を受けた際に判明したという。女性の体調には影響は出ていないというが、同病院は女性に謝罪した。今後、除去手術をする予定。 同病院によると、手術は6月1日に行われた。術後にガーゼの枚数を確認した際に看護師が数え間違えたうえ、確認のために撮ったエックス線写真でも医師が見落としたという。高松英夫院長は「今後このような事故が起きないよう病院全体で取り組んでいきます」との談話を発表した。
全国7714施設の一般病院のうち、小児科があるのは38%、産婦人科・産科が19%で、過去10年にわたり減り続けていることが、26日に厚生労働省が公表した調査でわかった。3年ごとに調べる診療所数でも、両診療科ともに減少。特に産科診療所は、3年前よりほぼ半減した。 08年の医療施設調査・病院報告概況によると、認知症患者の増加などで、需要が増えている精神科の救急医療体制がある病院は、全国の8794施設のうち10%だった。 小児科がある病院は、前年より110少ない2905施設。小児科の診療所は2万2503施設で、3年前より2815施設減っていた。 産婦人科・産科のある病院は1496施設で、前年より43施設減。産婦人科の診療所は3年前より67施設減の3555施設、産科診療所は359施設減の400施設。病院での帝王切開手術の件数が増えている傾向があった。 救急医療体制がある病院は4230施設。急患を受け入れられる地域の診療所は、全国の診療所約9万9千施設のうち20%にとどまる。
全国に約350万人いるとされるウイルス性肝炎の患者支援と医療体制の整備を盛り込んだ肝炎対策基本法案が26日、衆院厚生労働委員会に委員長提案の形で議員提案され、全会一致で可決され、同日午後の衆院本会議でも可決された。参院に送られ、今国会で成立する見込み。 08年1月に成立した薬害C型肝炎被害者救済法は、救済対象を、訴訟を起こしたC型肝炎の原告に限定していた。今回の法案は肝炎患者全体に対象を広げる意味がある。 自民、公明両党が今国会に提出した法案をもとに、与野党が委員長提案に向けて調整した。その結果、法案の前文に、B型とC型肝炎のウイルス感染について、「国の責めに帰すべき事由によってもたらされたものがある」との一文を加えることで合意し、自公案よりも国の責任を明確にすることになった。 法案では、国や地方自治体が、肝炎患者の経済的負担の軽減措置や肝炎の予防策の推進、治療レベルを全国で均一にする対策を講じることなどを定めている。厚労相には総合的な肝炎対策を進めるための基本指針をつくることを義務づけた。 肝炎対策について厚労省は、来年度予算の概算要求で金額を示さない事項要求にとどめた。今回の法案が参院でも可決され、成立すれば、患者の医療費支援の拡充に弾みがつくと期待されている。 法案提出を巡っては、C型肝炎原告・弁護団が10日に鳩山由紀夫首相と面会し、協力を要請。鳩山首相は「臨時国会の中で成立を図るため全力を尽くしたい」と発言し、衆院厚労委の与野党の代表者らが水面下で協議していた。
鹿児島県は25日、同県大隅地域の30代の女性看護師が新型インフルエンザによる脳症で死亡したと発表した。女性は10月下旬に、医療従事者として新型インフルのワクチンを接種していた。予防接種にはインフルにかかりにくくなったり、感染しても重症化を防いだりできる効果があり、一般に接種から3週間ほどで効果が出るとされる。厚生労働省によると、ワクチン接種後に新型インフルに感染して死亡した例は国内で初めて。 女性は21日、40度近い発熱とせきが出てインフルと診断され、タミフルを処方されたが症状が悪化し、22日に入院。その日のうちに心肺停止に陥り、25日午前4時ごろ亡くなった。遺伝子検査で新型インフルに感染していたことが確認された。 女性には06年に見つかった脳動脈瘤(りゅう)があり、甲状腺機能低下症の治療も同年から続けていたが、これらの基礎疾患の影響は不明で、脳動脈瘤にも異変はなかったという。 女性の家族や勤務先の医療機関などにインフルの症状を訴えている人はいないという。21日から出勤していないため、県は潜伏期間を考えても、周囲への感染の広がりはなかったとみている。 県健康増進課は「接種は重症化や死亡を抑える目的だが、感染したり脳症になったりすることが完全になくなるわけではない」としている。 女性は11月上旬に季節性インフルのワクチンも接種していた。 ◇ ■朝野和典・大阪大教授(感染制御学)の話 ワクチンを接種すれば感染と重症化を100%防げるというわけではない。しかし、重症化を防ぐ唯一の手だてなので、一人でも多くの人がワクチン接種をすることが望ましい。特に感染リスクの高い医療従事者はより多くの人が接種すべきだ。
京都大学の山中伸弥教授らが開発したiPS(人工多能性幹)細胞について、三つの遺伝子から作る方法と、iPS細胞から心筋などの体細胞を作る方法の二つの特許が国内で成立した。京都大が25日発表した。マウスだけでなくヒトも含み、昨年成立した4遺伝子による作製法に加え、特許の権利範囲が広がった。ただ、ほかの遺伝子や化合物で作る研究競争も盛んで、今後、どこまで権利が及ぶのか不透明な部分も残る。 今回、新たに二つの特許が成立した。一つは、皮膚などの体細胞に3遺伝子を入れて、特定の培養条件でiPS細胞を作る方法。がん遺伝子を使わず、より安全なiPS細胞ができる。もう一つは、三つまたは四つの遺伝子で作ったiPS細胞から、心筋などの体細胞を作る方法。 iPS細胞は心筋、肝臓の細胞などに分化させて、薬の効果判定や、移植医療へ応用される。分化させた細胞の利用でも、元の細胞がこれらの手法で作ったiPS細胞ならば、細胞の種類を特定せず、あらゆる体細胞作製法に特許の権利が及ぶことになる。 ただし、今回の特許は、遺伝子の種類が限定されている。ほかの遺伝子や化合物などで作る手法の研究も盛んで、今後、新たな特許が成立する可能性もある。ドイツの製薬企業バイエルも新生児の臍帯(さいたい)などから作る方法や3遺伝子と化合物で作る方法などの特許出願をしている。国際特許の取得も今後の焦点だ。 iPS細胞作りの特許について、京都大は05年に国内出願した後、06年12月に国際出願した。その後、国内特許を早く成立させるため、国際特許出願の一部を分割して、特許庁に出願していた。その一つが昨年9月、4遺伝子を使った作製法として成立していた。 山中教授は会見で「再生医療などで最終的にiPS細胞を使う時には何十、何百の特許が必要になり、一つの研究機関ですべてカバーできないが、重要な特許を押さえることができた」と話した。
【パリ】エイズウイルス(HIV)の新規感染者数がここ8年間で17%減少し、特にアフリカでの改善ぶりが目立つと、国連合同エイズ計画(UNAIDS)と世界保健機関(WHO)が24日発表した。ただ、両機関は引き続いて取り組みが必要だと強調している。 報告によると、08年の世界の新規感染者は約270万人で、01年と比べて17%減。サハラ砂漠以南のアフリカで、01年に比べ新規感染者が約40万人減っているのが顕著だという。世界での年間の死者は200万人。現在3300万人余りが感染したまま暮らしている。 UNAIDSは「感染減少は好ましい傾向だ。予防策が効果を上げているとみられる」との見解を明らかにした。
日本臓器移植ネットワークは、北海道内の病院で20歳代の女性が22日夕、臓器移植法に基づいて脳死と判定されたと発表した。23日に臓器の摘出を終えた。同日から24日にかけて各臓器の移植が行われる。97年10月の法施行以来82例目で、今年7月の改正法成立後初。脳死になった人からの臓器提供は今年2月から途絶えていた。空白期間は、1例目が出て以降、最長の286日間となった。 ネットワークによると、心臓は大阪大病院で50歳代男性、肺は東北大病院でいずれも50歳代の女性2人、肝臓は名古屋大病院で60歳代女性、腎臓の一つは市立札幌病院の50歳代男性、もう一つの腎臓は膵臓(すいぞう)とともに神戸大病院で50歳代女性に同時移植され、小腸は京都大病院で10歳代女性に移植される。
英大手製薬会社「グラクソ・スミスクライン」(GSK)がカナダで製造している新型の豚インフルエンザのワクチンの一部について、接種後にアレルギー反応が強く出るなど、想定以上の副作用が複数報告され、同社がカナダの複数の州政府に使用中止を要請していることが22日、関係者の話でわかった。日本政府は同社が同じ工場で作った製品を輸入する予定で、厚生労働省が本格的な情報収集を始めた。 ◇ これまでの計画では、早ければ12月下旬にも輸入が始まる予定だったが、特定の製造番号に限定した問題にとどまらない場合、GSK社からは輸入がストップする可能性もある。優先的に接種する5400万人のほとんどは国内産でまかなうが、1月以降、高齢者に輸入ワクチンが使われる見込みだ。因果関係は不明だが、今回の同社ワクチンは免疫補助剤が入り、筋肉に打つなど、国内産と違う製造方法や打ち方がされている。 厚労省などによると、GSK社がカナダの工場で製造したワクチンはカナダ国内で10月から接種がスタートした。このうち、マニトバ州では、アレルギー反応の一種で、急激に血圧が下がったり、呼吸が難しくなったり、意識障害が起きたり、重いと死亡する場合もある「アナフィラキシーショック」も複数起きており、同時期に同じ工程で作られた製品について同社が使用中止を州政府に求めているという。 カナダの通信社の報道では、GSK社が同州政府などに対し、使用中止を求めたのは、特定の製造番号をもつ約17万回分のワクチン。その理由について、カナダの報道機関に対する文書で「カナダ公衆衛生庁が、この製造番号のワクチンを打った人から、予想より高率でアナフィラキシーショックの報告を受けているとしているため、慎重な措置をとった」と説明しているという。症状の程度はわかっていない。 マニトバ州では、通常は10万人に1人の率で起こるアナフィラキシーショックが、2万人に1人の比率で起きているという。ただし、短期間で回復しているという。 今回の新型インフルワクチンの輸入をめぐっては、国はGSK社とノバルティス社の欧州2社と契約し、計4950万人分(2回接種)を輸入する予定。このうち3700万人分がGSK社製だ。厚労省は10月、同社からの承認申請を受け、審査を始めているが、今回は手続きを簡略化できる「特例承認」を初適用する。
医療機器製造販売会社、日本光電工業(本社・東京都新宿区)は20日、同社が販売した自動体外式除細動器(AED)の一部に心電図を解析できない不具合があったと発表した。同じ部品を使う機種は全国に約10万7千台あり、今月下旬にも点検を始めて故障が見つかれば修理する。厚生労働省によると、国内で設置済みのAEDは約21万台で、点検対象は約半数に上る。 同社によると、点検対象のAEDは米国製で、商品名は「カルジオライフ」。型式は「AED―9100」「同9200」「同9231」「同1200」の4種類で、国内外で約30万台が販売されている。心電図解析は心臓に電気ショックを与える前に必要な検査で、これまでに2件の不具合があったという。うち1件は奈良県で4月、80代の女性に使用した際のトラブル。女性はその後、死亡したが、AEDの不具合と死亡の因果関係は不明という。
財務省の野田佳彦副大臣は記者会見で、10年度に改定時期を迎える診療報酬を引き下げる方向で予算編成に臨む意向を明らかにした。予算編成の過程を公開する試みの一環として、財務省の主張をインターネット上のホームページでも同日公開。ほかの主な事業についても毎週、考え方を公表するという。 野田氏は、医師らの人件費や物件費について「民間給料が伸び悩み、(公務員給与を左右する)人事院の勧告もマイナス2.4%。ドクターだけが高止まりでいいのか」と指摘した。 記者会見やネット上では、病院の勤務医より開業医の年収が1.7倍も多いことを示すグラフを提示。全体として報酬を引き下げても、不足している勤務医や産婦人科などには手厚く配分するよう厚生労働省に求める方針を示した。 また、診療報酬の一部を占める薬価についても、成分が同じ後発品がある先発品の薬価を引き下げることで、数%のマイナス改定を要求する。 厚労省は診療報酬の引き上げを主張しており、財務省は今後、両論をネット上で公開する考え。野田氏は「(予算の)議論の経過とともに、(査定に関する情報)内容が厚くなっていくようにしたい」と話した。
金沢大学は19日、胃がんや大腸がん、膵臓(すいぞう)がんなど消化器のがんを採血だけで発見できる手法を開発したと発表した。消化器がんに特徴的な遺伝子群の異常があることを見つけ、がんの有無を判定できるようにした。従来の検査法より、がんを高率で見つけることが期待できるという。人間ドックなどで活用することを目指す。 同大医学類の金子周一教授(消化器内科)らは、消化器がん患者に特有の遺伝子群の異常を見つけた。この遺伝子群の特徴に着目して、がん患者40人と健康な人13人の計53人の血液で調べたところ、約9割の48人でがんの有無を正しく判定できたという。一方、「陽性」と判定した人の約1割で実際には、がんは見つからなかった。 がんを種類別に調べたところ、胃がん・大腸がん(患者40人)の7割、発見されにくい膵臓がん(28人)でも7割で判定できたという。ただ、早期がんをどの程度、発見できるのか検証はこれからだ。 一方で、がん患者150人を対象に、がん特有のたんぱく質などから判定する一般的な腫瘍(しゅよう)マーカーの精度を検証すると、「陽性」と正しく判断できたのは2割にとどまったという。 金沢大の判定法では採血だけで3〜4日で結果が出るのが利点。特別な薬の投与も不要なうえ、X線による被曝(ひばく)も心配なく、費用もがん判定に使われる陽電子放射断層撮影(PET)検査の半額程度の10万円以下ですむという。 金沢大の研究成果を事業化する目的で設立された「キュービクス」(金沢市)が、遺伝子の異常を判定できる専用の「DNAチップ」を委託製造し、来年末にも自費診療で検査をスタートさせたいとしている。 金子教授は「今回は消化器がんで検査したが、肺がんや子宮がんにも応用可能だと思う。健康診断や人間ドックで検査することで早期発見、治療につなげたい」と話している。
愛知県半田市の市立半田病院は19日、患者2人の検査検体を取り違えて本来は必要のない手術をしてしまった患者に、600万円の損害賠償金を支払う内容の和解案がまとまったと発表した。 同病院によると、同じ病気で入院している2人の患者に対し、同じ日に組織検体検査をした。その結果、悪性とされた患者に手術をしたものの、切り取った組織を検査したら悪性の組織がなかったため、検体の取り違えが分かったという。 同病院では、検体を取り違えないように複数の同種組織を連続処理しない規則になっていた。だが、検査技師(30)は、約20件あった各種検査の中から問題の2件を抜き出して連続処理し、検体に患者番号を書く際に取り違えた。技師は「作業効率を優先してしまった」と話したという。患者の経過は良好で、一方の患者も約1カ月後に手術し、良好な経過という。 同市は、19日付で技師を減給10分の1、3カ月の懲戒処分にしたほか、中根藤七院長ら上司3人を文書訓告などの処分にした。 一方、25日の臨時市議会に提案される和解案は、患者の性別や病名を含めて、患者が特定される一切を表に出さないことが条件。19日にあった市議会全員協議会では、議員から「これでは600万円が適正かどうかわからない」。「損害賠償額確認訴訟をして裁判所の判決を待つのも方法だ」などの意見が出た。 市側は「病院の100%ミスなので、裁判に持ち込むより患者の利益保護を優先した」としている。
厚生労働省は19日、大分県内の70代女性が、国産の新型インフルエンザワクチンを接種した2日後に死亡したと発表した。肺に重い持病があり、主治医は「持病で死亡した可能性が高いが、ワクチン接種との関連も否定できない」としている。厚労省は今後、因果関係を調べ、ワクチンの安全性を評価する。 厚労省によると、女性は12年前から肺の組織が壊れ、心機能が低下するなどの持病を患い、10月から入院していた。入院先で11月16日午後に接種を受け、18日午後に容体が急変したという。
ウイルス対策をうたったマスクの効果は限定的――。国民生活センターは18日、「ウイルス・花粉99%カット」などと表示されていても、実際の遮断率はさらに低いマスクが多かった、とする商品テストの結果を発表した。表示の根拠が不明確なものもあり、消費者庁も景品表示法に基づき、業界に表示内容の改善を求めることにしている。 商品テストでは、市販のマスク15種類について、空気中に浮遊しているウイルスと同程度の大きさの食塩の微粒子をマスクに吹き付け、どの程度通過を防げるかを調べた。 その結果、95%以上防げたものは3種類しかなく、80〜95%と80%未満が6種類ずつだった。80%未満の6種類のうち3種類は、同様の実験での遮断率が95%以上の商品に対し、米国内で認定される基準の「N95」相当をうたっていた。 また、「99.9%遮断」という表示があっても、どのような実験をしたのかが明示されていないものや、ウイルスよりも大きな粒子を用いた実験結果でうたっていたものもあった。同センターは「表示された数値だけで商品の性能は比較できない。マスクの効果を過信しないでほしい」と呼びかけている。 厚労省は新型インフルエンザ流行時のマスクの使用について「症状のある人には、せき、くしゃみによる飛沫(ひまつ)の飛散を防ぐためにマスク着用を勧めるが、健康な人がマスクを着用することで飛沫を完全に吸い込まないようにすることはできない」とする見解を出している。
【ワシントン】米政府の予防医学作業部会は16日、乳房X線撮影(マンモグラフィー)による乳がん検診は40代の女性には勧められない、と勧告した。40代ではがんの検出の精度が低く、誤った診断で不必要な組織検査を受けさせられるなどデメリットが多いことが理由。米国と同様、40代でマンモ検診が勧められることが多い日本にも影響がありそうだ。 マンモグラフィーによる検診は乳がん早期発見の手段として使われている。同部会は02年、40〜74歳の女性で「死亡率を大きく下げる」として、大体2年に1度の定期的な検診の受診を勧告した。しかし、その後の新しい臨床試験の結果などから、40代については十分なメリットがないと判断した。ただし50代以上には勧められるとしている。 乳腺密度が高い40代でマンモグラフィーによる診断が難しいことは、これまでも指摘されてきた。だが今回の勧告に対し、米がん協会は「引き続き40代でのマンモ検診を勧める」との声明を発表した。
奈良県生駒市で7日、自宅で低血糖発作を起こした男性(69)が県内や大阪の9病院に搬送を断られ、通報から約1時間20分後に大阪府の民間病院に運ばれたことがわかった。男性は今も治療中。同市では3月と10月にも患者が6〜7病院に搬送を断られ、その後死亡しており、県地域医療連携課は「根本的な救急受け入れ態勢を整備する必要がある」と話している。 市消防本部などによると、7日午後11時45分ごろ、男性の家族から119番通報があった。救急車は6分後に到着。救急隊員は脳卒中の疑いもあるとみて、2次救急の当番病院や県内、大阪府の病院などに照会したが、「処置中」などの理由で断られた。10回目の照会で大阪府大東市の民間病院に搬送が決まり、8日午前1時6分に収容された。 奈良県は5月、消防が受け入れ病院を検索するシステムに、従来の診察科別のほか「心筋梗塞(こうそく)」「脳卒中」など症状別の可否情報を加えた。市消防本部は今回、「脳卒中」を受け入れ可とした県内2病院に照会したが、いずれも「処置中」で断られたという。
世界保健機関(WHO)は、世界的に流行している新型の豚インフルエンザで入院したり、死亡したりする人の割合が日本では他の国より低いと、疫学週報最新号で報告した。 北半球と南半球のそれぞれ5カ国の入院率や死亡率などを6日現在でまとめた。人口10万人当たりの入院患者は日本が最も低い2.9人。米国は3人で、最も高いのはアルゼンチンの24.5人だった。人口100万人当たりの死亡者でも日本は最低の0.2人。オーストラリアは8.6人。最も高いのはこれもアルゼンチンで14.6人だった。 WHOの分析では、北半球は流行が始まってすぐ夏になったが、本格的な冬を迎えていた南半球の数値の方が、インフルが本来流行するときの実態に近い。北半球が冬を迎えれば、南半球の状態に近くなるかもしれないという。 入院患者のうち妊婦が占める割合も日本(0.3%)が最低で、次いでチリが2.4%。それ以外の国は5〜8.3%だった。 WHOは「新型インフルが季節性と大きく違うのは、持病がないのに重症化する人が多い点」と指摘。入院患者で持病がない人は、一番少ない米国でも27%に達し、ブラジルの79%が最高だった。 国立国際医療センターの工藤宏一郎・国際疾病センター長は「日本では発熱して具合が悪くなればすぐに医療機関を受診し、抗ウイルス薬をのむ人が多い。医療保険制度が異なる海外では、発熱だけでは受診せず、かなり重症化してから受診するケースが多いことが、死亡率が高い一因だろう」と話す。
新型インフルエンザで亡くなる乳幼児が11月に入ってから急増していることが、日本小児科学会新型インフルエンザ対策室(室長=森島恒雄・岡山大教授)の調査でわかった。森島教授は「子どもへのワクチン接種はできるだけ早く」と呼びかけている。 対策室の調査によると、新型インフルによる死者数は、11月1〜13日は18人でうち5歳以下が7人と約4割を占めた。国内初の死者が確認された8月15日から10月31日までは、死者42人のうち5歳以下は4人と1割に満たなかった。 森島教授によると、発症から短期間で死亡に至る例が多く、乳幼児の重症例の増加が懸念されるという。「発熱した子どもからは目を離さずによく注意してほしい」と話している。
不足する新型の豚インフルエンザのワクチンを効率よく供給しようと、全国で流通し始めた10ミリリットル入りの大瓶が、医療機関によっては容量が大きすぎ、ワクチンが余る事態となっている。24時間以内に使用しなければならず、一度に十分な人数が接種に集まらないと無駄が出るため、医療機関は対応に苦慮している。 14日から小児向け接種が始まる大阪府。豊中市のさもり小児科には12日、大瓶2本と1ミリリットルの小瓶15本が届いた。大瓶なら、1日に子ども40人前後に打てる量だ。現在、約100人の予約が入ってはいるが、佐守友仁院長は「この中から40人のスケジュールを調整するのは容易ではない」と嘆く。 思い余って大阪府に問い合わせたところ、回答は「余ったら捨ててください」。厚生労働省も、開封後24時間たって余ったワクチンは品質が保証できないとして廃棄するよう求めている。ただ、ワクチン不足から医療機関には要望量の3割程度しか配られていないのが現実。佐守院長は「廃棄しろなんて本末転倒」と憤る。 徳島市の城南公園内科には10月下旬、慢性疾患の小児用として大瓶が3本届いた。だが、予約が入っていたのは55人。これでは大瓶1本では足りず、2本では余ってしまう。急きょ、カルテを繰って予約のない患者に連絡、ちょうど大瓶2本分の約70人をかき集めた。 ただ、残された大瓶は1本。これでは70人全員の2回目の分に足りず、宮本泰文院長は「どうしたらいいか分からない」と思案に暮れる。 大瓶は梱包(こんぽう)などの手間が省け、生産量も増やせるとの意見もあって国が導入を決めた。ワクチンは国の配分で都道府県に届けられるが、その先でどう配るかは都道府県の判断。厚労省は、大規模な医療機関には大瓶を、個人病院や小児科には小瓶を供給するよう求めているが、思惑通りにはなっていない。 埼玉県には、県内の小児科などから「できるだけ小瓶がほしい」といった声が相次いでいるが、「すべての要望に応えることはできない」(疾病対策課)のが実情。小瓶に注文が集中しないよう、県は1医療機関あたりの小瓶の注文数に上限を設けた。 鳥取県の病院では、医療従事者用に配られた大瓶で残量が出たため、病院職員の親族に接種したことが表面化。だが、医療現場では「余った分は、優先順位の対象外ではあっても、その日に接種できる人に回す」と言い切る関係者も少なくない。 こうした中、東京都小平市の医師会では、集団接種の実施を決めた。鈴木昌和会長は「大瓶は本来、集団接種向き。なるべく余らせたくない」と話す。
厚生労働省は13日、肺に重い持病のある富山県の70代男性が、国内産の新型インフルワクチンを打った翌日に死亡した、と発表した。かかりつけ医の診断と県警の検視で死因は急性呼吸器不全と判断された。同省は「持病が原因の死亡で、ワクチンとは関連がない」としている。今後、念のために安全性を評価する。 同省によれば、男性は、肺の組織が壊れ呼吸が苦しくなる肺気腫。11日に、かかりつけの診療所で接種を受け、その後は特に変わった様子がなかったが、翌12日夜、自宅で亡くなっているのを家族がみつけた。
奈良県生駒市で10月24日、意識が低下した腎臓病の人工透析患者の男性(83)が、県内や大阪の7病院・医療施設に計8回受け入れを断られ、通報から約1時間45分後に大阪府の病院に搬送されていたことがわかった。男性は3日後に肝臓がんで死亡した。同県では救急患者の搬送不能問題が相次いでおり、県地域医療連携課は「今回のケースを調査し、対応を検討したい」としている。 生駒市消防本部などによると、男性は同市在住。24日午後4時半ごろ、家族から「発熱があり、体が震えている」と119番通報があった。3分後に救急車が到着。男性が診察を受けたことのある同市内の病院をはじめ、2次救急の当番病院や県立病院、大阪市内の病院などに照会したが、男性が透析患者だったため、「専門医がいない」「専門外」との理由で断られた。 9回目の照会で受け入れ先となった大阪府大東市の民間病院に午後6時15分ごろ到着したが、27日、持病の肝臓がんで死亡したという。 奈良県では06年8月、入院中に意識不明になった妊婦が同県や大阪府の19病院に受け入れを断られ、8日後に死亡。07年8月にも下腹部の痛みを訴えた妊婦が、11病院に断られて死産した。今年3月には意識を失った男性が6病院に断られ、約1時間半後に大阪府の病院で死亡した。
妊娠した女性の4割が流産の経験があり、流産を繰り返す不育症も16人に1人の割合でいることが、厚生労働省研究班による初の実態調査でわかった。不育症の女性の4割は強い心のストレスを抱えていた。一方、専門外来で検査、治療した人のうち8割以上が無事、出産できていた。研究班は夫婦だけで悩まずに専門医を受診するよう呼びかけている。 研究班には、富山大、名古屋市大、慶応大などが参加。発生頻度は、名古屋市大の杉浦真弓教授らが調べた。愛知県内で健康診断を受けた一般女性(35〜70歳)503人から回答を得た。このうち、妊娠経験のある458人中、流産した経験がある人は190人(41%)いた。2回以上流産し不育症とみられるのは28人(6%)、3回以上の習慣流産も7人(2%)いた。 原因は様々で、夫婦の両者か一方に染色体異常がある場合のほか、子宮の形の異常、免疫異常で胎盤などに血栓ができやすい抗リン脂質抗体症候群などが考えられた。 専門外来を受診した1676組の不育症の夫婦を分析すると、9割で夫婦に染色体異常がないほか、女性の子宮の形にも異常がなく、ほかの原因が考えられた。杉浦教授によると、夫婦に明らかな異常がない場合の多くが、胎児の染色体異常が疑われるという。 子宮の形に異常がある人は3.2%いたが、うち重症の42人中25人が手術後に出産できた。別の分担研究では、抗リン脂質抗体症候群の場合は血を固まりにくくするアスピリンなどが効果的だった。 不育症の夫婦全体の8割以上が後に無事、出産に結びついていた。 しかし、不育症で悩むカップルは多かった。慶応大の丸山哲夫講師は専門外来を受診した150組の心への影響を調べた。77組の夫婦のうち、女性の33人(43%)、男性の11人(14%)に抑うつ傾向が見られた。その原因として、長期の医療機関受診や、高額な治療費などを挙げた。 研究代表者の斎藤滋・富山大教授(産科婦人科学)は「流産を繰り返すと二度と妊娠したくないと考える人も多い。しかし、最近は、不育症の原因を突き止める方法や治療法もかなり進歩して、多くの人が出産に結びついている。夫婦だけで悩むのではなく、専門医を受診して欲しい」と話す。
厚生労働省は11日、インフルエンザで休校や学年・学級閉鎖をした保育所や小中高校などが、7日までの1週間に全国で計1万5149施設だったと発表した。前週の0.85倍で、約2700施設減った。大都市圏での減少が影響した。担当者は「祝日の影響もあるかもしれない。流行が頭打ちという段階ではない」という。 同省のまとめでは、10月26日〜11月8日に新型インフルのワクチンを接種した人は推定で最大123万人。暫定的なまとめでは1万人当たり2〜3人に副反応が出た。
新型の豚インフルエンザの国内産ワクチンについて、厚生労働省は11日、20〜50代の健康な大人では、2回接種しても1回接種の効果を上回ることはないとする臨床試験の結果をまとめた。長妻昭厚労相ら三役は同日午前に始まった専門家や患者団体代表らとの意見交換会の議論をふまえ、同日中にも1歳未満の子どもの親を含む健康な成人の接種回数を、「1回」にする方針を決める見通しだ。 接種回数は、現行では医療従事者だけが季節性ワクチンと同じ1回で、あとは原則2回だった。妊婦や10代の小児については、11月下旬以降に出る別の臨床試験の結果を待って検討する。 臨床試験は国内の4医療機関で9〜10月に健康な男女計200人に2回接種し、1回目と2回目の免疫の反応を比較。通常量を打った集団では、1回目も2回目もウイルスへの抵抗力を示す指標(抗体)が国際評価基準に照らして「効果あり」レベルになったのは7割で、2回目を打っても効果がある人の割合は変わらなかった。通常の倍量の集団でも同じ傾向だった。1回目と2回目で副反応があった人の割合はほぼ同じ。 政府は来春までに2回接種を前提に、7700万人分のワクチンを確保する方針で、このうち国内産は2700万人分。1回接種の対象者が広がれば、ワクチンが節約できて、小児などの接種時期の前倒しもしやすくなる。 輸入ワクチンは2社が国内で承認申請している。厚労省などが特例承認に向け審査中で、安全性など問題がなければ年末以降に輸入が始まる。
国立感染症研究所感染症情報センターは9日、インフルエンザ患者の年齢群別割合で、流行の中心が、これまでの10代前半から、9歳以下に低年齢化しているとの分析結果を発表した。ほとんどが新型の豚インフルエンザという。同研究所は、流行のピーク時期と、新型インフルワクチンの接種時期が重なって、小児科医の負担がさらに増えることを懸念し、早期のワクチン接種を求めている。 同研究所の8月24日〜11月1日の週別のまとめでは、夏休み明けには5〜19歳の割合が増え、特に10〜14歳が流行の中心だった。その後、9月28日〜10月4日の第40週以降は9歳以下の患者の報告割合が増え、最新の10月26日〜今月1日の1週間では、5〜9歳が36.7%(5万8533人)となり、10〜14歳(33.4%、5万3268人)と逆転した。0〜4歳も11.9%(1万9053人)と増加傾向にある。 厚生労働省は今月6日、新型インフルのワクチン接種について、1〜9歳の健康な子どもの接種時期を従来のスケジュールよりも早めるように都道府県に求めている。
長妻昭厚生労働相は9日、75歳以上が対象の後期高齢者医療制度(後期医療)の来年度からの保険料が、全国平均で09年度に比べて約12%上がるとの見通しを明らかにした。参院予算委員会で小池晃氏(共産)への答弁。 厚労省は先月26日、全国平均で約10.4%の負担増との試算を明らかにしていたが、不況などによる所得減の影響で、さらに2.0%上積みされた。保険料率の改定は2年ごとで、来年4月に初めての改定が予定されている。 長妻氏は「概算要求でも盛ったが、負担を少しでも抑制していく措置などをとって、緩和に努めていきたい」と述べた。
平野博文官房長官は9日の参院予算委員会で、医療機関による診療報酬のオンライン請求について、「医療に従事している方々の気持ちを十分に斟酌(しんしゃく)し、過度な負担をかけない制度設計にしていくことが非常に大事」と述べ、希望者にとどめることを容認する考えを明らかにした。 桜井充氏(民主)に対する答弁。オンライン請求について、民主党は政策集で、完全義務化から原則化に改めることを打ち出している。 平野氏はこの日、現場の医師が「診療時間を割いてオンライン請求のための時間を取らないといけない。本末転倒だ」と訴えている声を紹介。オンライン化は否定しないものの、現場の意見を重視すべきだとした。 厚生労働省は、請求義務化の例外措置を定める省令改正について、先月23日までパブリックコメントを募集。現在、省内で改正内容を検討している。
生体肝移植で、重い肝臓病の子に自分の肝臓を一部提供した両親らの半数近くが「疲れやすい」などの体調不良を感じていることが、国立成育医療センター(東京都世田谷区)の調査でわかった。気分の落ち込みなど精神的な問題を抱える親もおり、家族を支える態勢づくりが必要なことも浮き彫りになった。 同センターでは100例以上子どもへの生体肝移植を実施しており、国内最多。笠原群生(むれお)医師らが05年11月から今年6月までに、生体移植で肝臓の一部を提供した94人に健康面の調査を行い、79人から回答があった。1人を除いて両親が肝臓を提供していた。 移植手術後の気になる症状(複数回答可)について尋ねると、最多の36人(46%)が「疲れやすい」と答えた。他に「傷の痛みやひきつれ」が31人(39%)▽「腹部の膨満感や違和感」が20人(25%)▽「感覚の麻痺(まひ)やしびれ」が10人(13%)だった。 また「不安・気分の落ち込み」(10人)や「不眠」(5人)、「脱毛」(5人)の精神的不調を訴える人もいた。移植を受けた子どもについて「発育が遅い」「傷跡が原因でいじめを受けないか不安」と心配する声もあり、69人が肝臓提供の体験者同士で情報交換したいと感じていた。 症状の多くは医学的には深刻ではないが、子どもの将来への不安など精神的な影響が関係しているとみられる。
慢性的な医師不足が「塀の中」にも影を落としている。全国の刑務所で常勤医が不足し、定員の1割以上が欠員状態だ。医師がいないと、受刑者を外の病院に連れて行かなければならず、付き添う職員の負担は大きい。何とか所内で診察できるよう、各施設は非常勤や派遣の医師を活用してしのいでいる。 法務省によると、刑務所や拘置所など全国188の刑事施設(支所を含む)で常勤医がいるのは90施設。定員は226人だ。05年4月に16人だった欠員は徐々に増え、今年4月では30人に。 法務省は今年度初めて、350万円の予算を付けてインターネットで医師募集の求人広告を出した。これまでに4人を採用できたが、退職者も出たため、9月1日現在でまだ29人の欠員だ。 医師不足は、04年度に研修制度が変わり、若手が地方に派遣されなくなったことが要因とされる。常勤医は取り合い状態になり、その影響をもろに受けた形だ。 東北地方の刑務所で勤務した経験がある矯正局幹部は、地元の医師会に紹介を頼むと、こう言われたという。 「その報酬じゃ、塀の外の半分にも満たないですよ」 幹部は「それ以上の話をさせてもらえなかった」と悔しがる。 刑事施設ならではの不利な要素もある。患者となる受刑者らは高血圧や糖尿病など生活習慣病が多く、最新の医療設備もないため、医師の技量向上にはつながりにくい。受刑者とのトラブルが心配という本音もあるようだ。 刑務所はまず非常勤医師を集めてしのぐが、報酬の安さから週1、2回が限度。確保できなければ、所外の病院に連れて行くしかない。受刑者1人に職員2、3人は必要で、ただでさえ人手不足の刑務所には頭が痛い問題だ。 医師不足を何とか解消しようと、各地で模索が続く。月形刑務所(北海道)では、医務室を「民間病院」扱いにして外部の病院に入ってもらった。患者は受刑者のみだが、病院にとっては安定した利用者数が見込め、診療費をとりはぐれない利点がある。 喜連川社会復帰促進センター(栃木県)は、労働者派遣法に基づき外部から医師の派遣を受ける。美祢(山口県)と島根あさひ(島根県)の社会復帰促進センターも、周辺の公立病院などに医務室を運営してもらっている。
心臓の大動脈の付け根にある「大動脈弁」が狭くなり、血流が悪くなる大動脈弁狭窄(きょうさく)症で、太ももから管を入れて弁を置き換える手術に大阪大のチームが国内で初めて成功した。患者は国内に推定で2万人以上。この手法では胸を開く手術が不要で患者への負担が少なく、高齢者や合併症患者にも使えるという。 阪大心臓血管外科によると、新たに入れる弁は長さ約1.5センチ直径2センチ強の筒状。海外では7千件ほどの実施例があるという。 10月上旬に90代の男性に、胸から管(カテーテル)を差し込み、大動脈の付け根に新たな弁を置いた。同下旬には80代の女性に、太ももからカテーテルを差し込み、同様に弁を置いた。いずれも経過は順調で近く退院する。 これまでの治療は、心臓を切り開くため、血流を体外から循環させる大がかりな手術が必要だった。カテーテルを使うことで手術時間も大幅に短縮された。
激しい関節痛を伴う生活習慣病、痛風の主要な原因となる遺伝子の変異を、防衛医科大や東京大、東京薬科大など11機関のチームが突きとめた。患者の8割がこの変異を持ち、ない人に比べて26倍痛風になりやすい変異もあった。個人差に応じた予防や治療法の開発につながるという。 4日付の米科学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン電子版に掲載される。 痛風は血液中の尿酸の濃度が高い状態が続いて起こる。07年の国民生活基礎調査によると、痛風で通院している人は約85万人。関節などに尿酸が結晶化してたまり、炎症が起こって痛みを生じる。まれな先天性の代謝異常で起きる場合を除き、多くは原因が不明だった。 チームが見つけたのは、腎臓や腸管から尿酸を体外へ排出する働きをもつと考えられる「ABCG2」という遺伝子。この遺伝子の配列のうち、尿酸が排出されにくくなる変異を5カ所突きとめた。 痛風患者を含む尿酸値の高い人と正常値の人計1千人以上の男性を対象に、変異の様子を調査。五つの変異のうち重要な変異は2カ所で、患者の8割がどちらかの変異を持っていた。 変異の組み合わせによって、尿酸の排出機能が4分の1以下に減る患者が1割おり、全く変異を持たない人よりも26倍痛風になりやすいことも分かった。 松尾洋孝・防衛医科大助教は「遺伝子変異があれば必ず痛風になるわけではないが、二つの変異があるかどうかで、なりやすさが分かる。リスクの高い人は食事療法をするなど、早期の予防や治療に役立てることができる」と話している。
【ソウル】韓国で新型インフルエンザの感染が急速に広がり、同国保健福祉家族省は3日、感染の広がりを示す警戒レベルを4段階で最高の「深刻」に引き上げた。 06年に導入された警戒レベルの制度下で「深刻」への引き上げは初めて。韓国では最近、学校での集団感染などで1日平均9千人近い感染者が出ており、死者は3日までに42人。韓国政府は「今後4〜5週間が流行のピークを迎える重要な時期」としている。
全国の飼い犬の4匹に1匹が日本脳炎に感染しているとの調査結果を、山口大の前田健教授らがまとめた。豚から人や犬にウイルスを広げる蚊が、養豚場周辺から市街地まで飛んでいるためのようだ。犬から人には感染しないが、媒介する蚊が身の回りにいて、人への感染拡大の危険性を示すものとして、専門家は注意を呼びかけている。 西日本に多い日本脳炎は体内でウイルスが増える豚の血を吸った蚊を介して、人などに感染する。犬や人からは蚊を介しても人に感染しない。感染者の発病率は1%以下だが、重症化すると高熱、意識障害を起こす。脳症になると2〜4割が死亡する。感染した犬が発症した例は報告されていない。 前田教授(獣医微生物学)らは06〜07年に47都道府県の動物病院にかかった犬652匹の血液をとり、日本脳炎ウイルスの抗体ができているか調べた。その結果、25%に抗体があり、感染していた。 地域別では、四国が61%で最も多く、次いで九州が47%だった。ほかは中国26%、近畿23%、関東17%。市街地で24%、住宅地で21%の犬が感染、室外犬は45%、室内犬も8%が感染していた。 ウイルスを運ぶコガタアカイエカは30キロ移動するため、豚の血を吸った蚊が都市部まで飛んでいるようだ。 ワクチンの集団接種により60年代に感染者は激減し、最近の感染者は年間数人しかいない。ワクチンの副反応による重症者が出たことで、05年に厚労省は接種を積極的に勧めることをやめ、現在は大半の子が受けていない。 感染で重症化すれば、効く抗ウイルス薬がないため、解熱剤で熱を抑え、炎症を抑える薬を使う。ワクチンは今年から、副反応が出にくいとされる新しいタイプも使えるようになった。 前田教授は「今後、ワクチンを打っていない子どもを中心に感染が広まる可能性もあり、警戒が必要だ」と話す。
新型の豚インフルエンザについて、厚生労働省は30日、全国で本格的な流行状態となったと発表した。累計患者の7割超が14歳以下だったことも判明した。季節性インフルより子どもが重症になりがちで、日本小児科学会(会長=横田俊平横浜市立大教授)は、健康な子どもに早くワクチン接種するよう求める要望書を厚労省に出した。 国立感染症研究所によると、定点医療機関(5千カ所)で1医療機関あたりのインフル患者数は24.62人(前週17.65人)になった。ほとんどが新型と見られ、来週の集計では30人の「警報レベル」を超えそうな勢いだ。全都道府県で前週を上回り、42都道府県で「注意報レベル」の10人を超えた。このうち21都道府県で20人を超えた。 さらに北海道、愛知、福岡、兵庫、秋田の5道県が30人以上だった。昨季の季節性の1月に匹敵する状態だ。 7月6日〜10月18日の患者累計でも、73%は14歳以下。なかでも、5〜14歳で6割を占め、学校などで感染していると見られる。季節性も学校から広がる傾向があり、従来は3学期が始まる1月以降、一気に患者が増える。今季は、夏休み明けの2学期に「前倒し」となった形だ。同省は「明らかに全国規模の本格的な流行。今後も患者は増える」とみている。 さらに、7月末から10月27日までの入院患者の累計3746人のうち、14歳以下が3055人で8割を占める。 厚労省の計画では、子どものワクチン接種は12月からだが、こうした状況から、前倒しすべきだという声が専門家から強まっている。日本小児科学会は重症児の3分の2は持病がないことから対策強化を求めている。日本産科婦人科学会内には「妊婦は予想外に重症例が少ない。むしろ小児の接種を優先した方がいい」という意見もある。 日本政府は現時点では医療従事者以外は「2回接種」としているが、東京大医科学研究所の河岡義裕教授は「小児の接種が早められるかどうかは、(11月に始まる妊婦や持病のある成人が)1回接種でよいかどうか、ということとも密接に関係する」と指摘している。
厚生労働省は30日、病院や診療所の経営状況を調べた医療経済実態調査をまとめた。09年の1病院当たりの収支は、前回調査時(07年)より改善したものの、195万円の赤字。診療所は128万円の黒字だった。月額給料は、開業医の平均約207万円に対して、介護収益2%未満の病院の勤務医は約107万円で、倍近い差となった。 中央社会保険医療協議会(中医協)で公表した。調査は、原則として2年ごとの診療報酬改定にあわせて実施される。長妻昭厚労相は来年4月改定で病院の報酬を手厚くしていく方針を示しており、この日は病院勤務者を増やした中医協の体制に変更して初めての会合だった。 調査結果によると、民間や国公立の病院全体の利益率はマイナス0.8%。08年度診療報酬改定の効果で前回より0.9ポイント改善したが、依然として厳しい経営状況にある。とりわけ収益に占める介護の割合が2%未満の病院では、1249万円の赤字になる。 一方、診療所の利益率は、12.5%の黒字。前回より4.9ポイント悪化したが、病院と比べると格差は歴然としている。 調査は今年6月時点で、全国の1619病院と2378診療所を対象に実施。有効回答率は病院が56.6%、診療所が44.0%だった。
日本とフィリピンの経済連携協定(EPA)に基づき、今年5月から東京と大阪で約半年間の日本語研修を受けてきたフィリピン人の看護師候補者88人が28日、修了式に臨んだ。今後、全国44カ所の医療機関で働きながら、国家試験合格を目指す。3年以内に合格できなければ、帰国を余儀なくされる。 東京都内の研修施設で行われた修了式には、34人が出席。候補者代表のミルドレッド・リベラ・カラアンさん(37)が「辛抱強く教えてくれた先生方に感謝します。言葉や国が違っても日本の医療に役立つと信じている」とあいさつした。式の後は、半年をともに過ごした仲間と、涙を流して別れを惜しんだ。
がんなどで摘出された腎臓を別の患者に移植する「病気腎移植」を手がけていた宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(69)が、日本移植学会の幹部ら4人を相手に、名誉を傷つけられたとして総額4400万円の損害賠償を求める訴えを松山地裁に起こした。徳洲会グループが28日、明らかにした。 訴状などによると、日本移植学会など4学会は07年、病気腎移植は医学的に妥当性がないとし、厚生労働省も同移植を原則禁止とした。学会の見解は移植に使える腎臓なら治療を施した上で元の患者に戻すべきだとする考えを前提としているが、腎がんの治療は部分切除でなく全摘するのがよいとする意見もあり、十分な検討や議論もないまま、4人は病気腎移植や万波医師を批判したとしている。 厚労省が今年1月、臨床研究であれば、がんを含めて対象疾患を制限しないとの見解を公表したことから、徳洲会グループは近く病気腎移植を再開する方針。 日本移植学会の幹部は「訴状を読んでいないので何も言えないが、理解に苦しむ」と話した。
新型の豚インフルエンザの流行は、全国平均で注意報レベルを超え、1週間に受診した推定患者は約80万人、7月からの累積で300万人に達した。流行期間中に国民の2割(約2500万人)が発症と厚生労働省が想定する流行の拡大で、ライフラインの影響はどうなるのか。電力や大手ガス会社は2割以上の欠勤でも通常供給できることを確認、鉄道、コンビニなども事業継続に向けた対策を本格化させている。 ■鉄道 運行減も想定 鉄道会社は欠勤者対策が難しい。車両や路線によってブレーキ感覚や混雑に応じた扉の開閉など、部署ごとに異なる技能や経験が必要だからだ。 JR東日本は「ぎりぎりまで運行を減らさない努力をするが、他路線の運転士が訓練なしに応援に入ることは難しい」と説明する。どこまで応援が可能かを含めた対応策を検討中だ。 東急電鉄は「万一に備えたシミュレーション」としながらも、平日に休日ダイヤで運行することも想定。京成電鉄も「安全運行に必要な人員が確保できない場合は、運行を減らすことも検討している」とする。 国土交通省は9月に鉄道など管轄の企業向けの「新型インフルエンザ対応マニュアル作成の手引き」を公表した。社員の2割が休んだ場合を例に、事業継続に必要な業務の優先付けや応援態勢の整備を求めた。 国交省鉄道局は、各鉄道事業者の事業継続計画の作成状況は把握していないが、「社会機能の維持が基本。通常ダイヤでの運行を可能な限り求める」と話している。 ■電力・ガス 通常の供給維持 電力、ガスは影響が少なそうだ。東京電力は、発電所や中央給電指令所など各職場で何%の職員が欠ければ影響が出るか調べ、対応マニュアルの改訂作業を進めている。 ただ、「今回は、電力供給には影響しない」とみる。鳥インフル想定のシミュレーションで、40%の社員が2週間欠勤しても、研修など不急な業務の延期、職場間の応援などの緊急的な態勢で通常通りに電力供給できたからだ。 東京ガスは、ガス製造工場や供給指令センターなど「供給維持」、ガス漏れや引っ越しの対応など「最低維持」の業務区分で優先順位を定めた。「2割の社員の10日間欠勤を想定しても、通常業務に支障ない」という。 経済産業省は「電力は各社とも供給に影響がでない態勢を整えた。燃料は地方のLPガス企業やガソリン販売業者など中小企業の対応が遅れており、今後も情報を集めて対応策作りを指導する」としている。 ■コンビニ 営業継続へ本部が応援 生活に欠かせないコンビニエンスストアも対応を急ぐ。 1万2千店のセブン―イレブンを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスは、鳥インフル用の想定で、30%の社員が休んでも部門間応援などで本部業務は継続できると試算。弁当工場、物流業者など取引先の対応策の確認も始めた。食品や飲料など緊急時に品不足が予想される商品の在庫確保を進める予定だ。 同社広報は「店に指示はできないが、過去の災害では地域のためにぎりぎりまで踏ん張るオーナーが多かった。店員の確保が難しくなれば本部からの応援も検討する」と話す。04年の新潟県中越地震では数十人の社員を派遣した。ただ、欠勤者が多くなれば、営業時間を短縮する店舗が出る可能性もあるという。 9500店を展開するローソンでは、リスク管理委員会に、新型インフルの小委員会を設置した。商品配送の回数減や店舗への社員の応援で、半数の社員が休んでも生活必需品の販売はできる態勢作りを進めるという。
【ワシントン】オバマ米大統領は24日、新型インフルエンザ(H1N1型)の対策促進のための国家緊急事態宣言を発表した。 急速にインフルエンザ患者が増えた場合、医療機関などに対する現行の法律や規制を一部緩和して対応しやすくするのが狙い。米疾病対策センターによると、新型インフルエンザによる米国内の死者は4月以降1千人を超え、入院患者も2万人を超えたという。
国立感染症研究所によると、18日までの1週間に全国の医療機関を受診したインフルエンザの患者は推計で約83万人で、前週より約19万人増えた。ほとんどは新型インフルとみられる。7月上旬以降の累積患者数は約317万人と推計されている。 約5千カ所の定点医療機関からの報告では、18日までの1週間に1医療機関が診察したインフル患者は、全国平均で17.65人。24都道府県は10人がめどの「注意報レベル」を超えている。昨季では1月中旬のレベルで、異例の早さで流行が広がっている。さらに、北海道57.93人、愛知31.78人が、30人が目安の「警報レベル」を超えた。北海道ではすでに昨季のピークを超えた。 ほかに、福岡、神奈川、大阪、埼玉、東京など大都市圏での流行が目立つ。今後、地方都市でも報告が増えるとみられる。 新型インフルのワクチンは19日からインフルの診療にあたる医師、看護師、救急隊員約100万人に対し、接種がスタートした。厚生労働省の計画では、接種対象者は来春までに計約5400万人。 11月以降、妊婦、免疫不全や慢性腎臓病の患者ら基礎疾患(持病)のある人、1歳以上の子どもへと順次、接種が始まる予定だ。ワクチンの効果が高くないとされる1歳未満や、アレルギーなどでワクチン接種ができない子どもの場合は、家庭内での感染を抑えるねらいで、その親などに対して接種する。 いまのところ、中高生、65歳以上の高齢者は年明けにならないと接種が始まらない。希望者全員をカバーできるほどのワクチン量は準備できておらず、大学生を含め、健康な成人は接種の対象外だ。
インフルエンザ流行シーズンの冬が日本より先に来た南半球では、新型インフルエンザ流行時の死亡率が低めだったとの分析が、22日付の欧州の専門誌ユーロサーベイランス電子版に発表された。 豪州などの研究者が、豪州、南アフリカ、ブラジル、ペルーなどのデータを分析。人口10万人あたりの死亡率は多くの国で1人以下と報告されていた。新型インフル患者の致死率は、「アジアかぜ」として1957〜58年に初めて流行したH2N2型インフルの約0.5%に匹敵すると考えられていたが、それほどでない可能性もある。 豪州ニューサウスウェールズ州でのインフルエンザや肺炎による死者数は、新型が流行した今年は季節性だけだった近年に比べて少なかった。 アボリジニーなど先住民や妊婦、持病がある人の重症化リスクは通常の人より高かった。南半球の各国では4月から7月にかけて新型ウイルスが最初に確認され、患者数はすぐに季節性インフルより多くなった。
今月19日に医療従事者を対象に始まった新型の豚インフルエンザのワクチン接種について、厚生労働省は23日、追跡調査で、4人の重い副作用の報告があったと発表した。接種後に発熱や動悸(どうき)、意識低下などがあったが、接種との因果関係は不明だという。全員が回復するか症状が軽くなっており、厚労省は発生率の問題は別にして、副作用自体の重さについては「季節性インフルと同程度」としている。 ワクチン接種の安全性を確認するため、国立病院機構の67病院で接種した医師や看護師など約2万2112人を追跡調査した。重い副作用の発生率は約0.02%。軽い副作用の報告は3人。 季節性インフルのワクチンの場合、08年度は約4740万人(推定)に接種し、121人から重い副作用の報告があった。発生率は約0.0003%。今回は相当高い率だが、厚労省は「季節性は厳密な追跡調査をしておらず、一概には比較できない」としている。 重い副作用の4人のうち入院は3人。4人とも接種当日に嘔吐(おうと)や下半身の筋肉痛、動悸などが起きた。副作用が起きやすいとされるアレルギーの病歴があるのは1人だけ。 一方、追跡調査対象ではないが、医療従事者の接種施設から、重い副作用2人、軽い副作用23人の計25人の報告があった。重い副作用は、急激に血圧が下がる「アナフィラキシーショック」や吐き気で、既に症状は軽くなった。 インフルに詳しいけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫小児科部長は「健康な成人2万人に重い副作用4人は多い印象だ。断定的なことは言えないが、子どもや高齢者に接種を広げるにあたっては、副作用事例を十分観察する必要がある」と話している。
国立感染症研究所は23日、全国5千の医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が18日までの最新の1週間に1医療機関あたり17.65人になったと発表した。ほとんどが新型インフルとみられる。前週は12.92人。1週間に全国の医療機関を受診した患者は約83万人と推計している。 都道府県別では、北海道が57.93人と最多。北海道によると、99年以降、1週間の報告では2番目に多く、例年の冬季のピーク時を大きく上回っている。愛知も31.78人と「警報」レベルを超えた。 ほかに、報告が多いのは、福岡(29.08人)、神奈川(25.19人)、大阪(23.25人)、埼玉(22.97人)、東京(22.20人)。相変わらず大都市圏で感染の広がりが目立つ。
抗うつ薬「パキシル」(グラクソ・スミスクライン社、東京都)について、民間医薬品監視団体「薬害オンブズパースン会議」は21日、妊娠中の服用で「先天異常などのリスクが高まる」とし、妊婦や妊娠の可能性がある女性への警告をより強めるよう求める要望書を厚生労働省に提出した。 国内で延べ100万人が服用。妊婦へのリスクは06年、「添付文書」に使用上の注意として追加された。 要望書によると、妊婦が服用した場合、新生児の心臓に穴が開いたり、肺高血圧症になったりする割合が、同じような作用の抗うつ薬より高いという海外の疫学データがある。同日、記者会見した同団体の水口真寿美弁護士は、「依存性や(薬をやめた時に症状が悪化するなどの)離脱症状がある。このため、妊娠に気づいてもすぐにはやめられない。妊娠適齢期の人には原則投与しないか、投与する場合はリスクの説明を十分するよう、もっと注意喚起すべきだ」としている。
青森県西目屋村は20日、村民全員が新型インフルエンザワクチンを無料で接種できるよう全額補助することを決めた。接種対象外になっている1歳未満の乳児6人を除く1582人。過疎化の進む村に医療機関がないため、幼児への優先接種が始まる12月からはバスで隣の弘前市の医院まで無料送迎もする。厚生労働省は「自治体の住民全員が無料接種というのは聞いたことがない」としている。 村の負担は約800万円と見込んでおり、08年度一般会計の繰越金をあてる。関和典村長は「人口が少ないからできたこと。住民の健康を第一に考えた」と話す。 19日から医療従事者への接種が始まっているが、11月までに接種の順番が回ってくる妊婦や基礎疾患のある人はかかりつけ医などで個別に接種してもらう。1〜6歳の幼児の接種が始まる12月7日からは、希望者全員をバスで20〜30分の距離にある弘前市の医院まで送迎する。1歳未満の乳児も誕生日を迎えしだい、無料で受けられるようにする。
香川県立中央病院(高松市)で昨年不妊治療を受けた際に、体外受精卵を取り違えられた疑いで人工妊娠中絶をせざるを得なかったとして、同市内の20代の女性と夫が同県に慰謝料など約2200万円の損害賠償を求めた訴訟の和解協議が19日、高松地裁(和食俊朗裁判長)であり、同県が夫婦に820万円を支払うことで和解が成立した。 夫婦は2月、「深刻な精神的苦痛を受けた」として提訴。同県は不妊治療をした担当医師(61)の過失を認めたが、請求額が高額として請求棄却を求めていた。 高松地裁が7月、県が慰謝料など820万円を支払う内容の和解案を示し、双方が8月の和解協議で合意。同県議会は今月8日、和解金額を盛り込んだ県立病院事業会計の補正予算案を可決していた。和解を受けて同県は19日、担当医師を訓告処分にした。 訴状などによると、女性は08年4月、中央病院で不妊治療を開始。同9月に3個の体外受精卵の移植を受けた後に妊娠したが、受精卵の培養作業中に作業台のそばに置いていた別人の受精卵と取り違えた可能性があると担当医師から説明を受けたため、同11月に人工妊娠中絶した。 担当医師は複数個の受精卵の移植を原則禁じた日本産科婦人科学会の会告(指針)に反し、女性の別の患者にも複数個を移植していた。このため同会は担当医師から事情を聴いたが、処分は見送った。 担当医師は19日、「信頼して治療を受けられた患者様、家族の皆様に多大の身体的・精神的負担をおかけしたことを心からおわび申し上げます」とのコメントを出した。
新型の豚インフルエンザの国内産ワクチンと、季節性インフルのワクチンとの同時接種について、厚生労働省の薬事食品衛生審議会安全対策調査会は18日、安全面で問題がないことを確認した。今後、医療現場に周知する。 また、同調査会は、妊婦への新型ワクチンの接種について、改めて安全性を検討。「接種しても子どもの先天異常の発生率は上がらない」とする季節性ワクチンの海外の研究報告や国内で千人を超す妊婦への季節性ワクチンの接種経験から最終的に「問題ない」と判断した。 インフルワクチンの医療機関向けの注意書き「添付文書」に「原則、妊婦へは接種しない」とあるため、今後これを削除する。 また、一部の国内産の新型ワクチンに添加されている保存剤「チメロサール」について、季節性ワクチンでの使用実績などをもとに「使用に問題ない」とした。 一方、厚労省は新型インフルワクチンの副反応をできるだけ早く把握するため、19日から始まる医療従事者の接種対象者のうち2万人を追跡調査し、11月下旬までに結果を公表する。全体で30万人程度が接種した時点で、まれな副反応の頻度を確認し、死亡など重い事例には専門チームを派遣して調べるという。 調査会では、新型インフルの重症化予防策として注目されている成人の肺炎球菌ワクチンについても、医師の判断のもとで、新型インフルワクチンとの同時接種や、2回目以後の接種ができることを確認した。 国内産の新型インフルのワクチンは19日から、医療従事者を対象にした接種が始まる。妊婦については、11月半ばから実施される予定。
大阪市中央区の国立病院機構大阪医療センターで今月、火災でやけどを負って救急搬送された男性患者(69)が、カテーテルを血管に挿入する処置を受けた直後に死亡していたことが、同センターへの取材でわかった。司法解剖の結果、死因は血管損傷による出血性ショックとされ、大阪府警は業務上過失致死の疑いもあるとみて関係者から事情を聴いている。 府警や同センターによると、男性は今月5日、自分が経営する大阪市東成区の工場で起きた火災でやけどを負い、意識不明の状態で入院した。11日になって人工心肺装置を取り付けるため足から血管にカテーテルを通す緊急処置を施したが、直後に容体が急変し、数時間後に死亡したという。 センターは「処置で血管を傷つけた可能性がある」と府警に連絡、府警が司法解剖していた。府警は今後、過失により血管が傷ついたのかなどを調べる。 センターの斉藤三則・管理課長は「最善を尽くした医療行為の中で起きたことで過失ではないと考えているが、結果は重大で遺憾だ」と話し、院内に検証チームを設けるという。
Q 新型インフルワクチンはだれでも打っていいの? A 1歳未満は対象ではない。鶏卵アレルギーがある場合も打てないことがあるので主治医に相談を。いずれも保護者などに打って感染を防ぐ。 Q 新型インフルにすでに感染した人はどうすればいい? A 遺伝子検査などで感染が確定していれば今季に打つ必要はない。 Q 妊婦も打てるの? A 打てる。死滅させたウイルスしか入っていないので、胎児にも影響はないとされている。 Q 季節性ワクチンは打ったほうがいいの? A いまは新型がほとんどだが、これから季節性が流行してくる可能性は否定できない。新型の優先対象になっている人は、季節性でもリスクは高いとされるので、打っておいたほうが無難。 Q 季節性ワクチンを打ってから、新型を打ってもいいの? A 打てる。医師が必要と認めた場合、左右の腕など部位を変えて、同時接種することもできる。ただ、輸入の新型ワクチンとの同時接種は十分な情報がないため、当面は差し控える、というのが厚労省の考えだ。
新型インフルで重症化する子どもが目立つ。 厚労省のまとめでは、13日までに入院した2100人のうち14歳以下の小児が8割。5〜9歳が多く、全体の4割。国内の死者は27人(16日現在)。このうち16歳以下が3割近くを占める。10月に亡くなった7人のうち5人が16歳以下の子どもだ。 小児の死亡者のうち5人はインフル脳症だった。従来の季節性インフルでは、脳症は3歳以下の乳幼児に多い。しかし、新型では、16歳が脳症で亡くなるなど、高い年齢でも起こっている。 重い肺炎など呼吸障害を起こす子が多いのも季節性と違う点だ。都立府中病院小児科の寺川敏郎医長は「季節性インフルでは、よほど呼吸が苦しそうでなければ血中の酸素濃度を調べないが、今季は、様子が変だと思ったら調べた方がいい」と指摘する。 気管支ぜんそくにかかった経験のある子が重症化するのも今季の特徴。日本小児科学会によると、呼吸障害を起こした子どもの3割は、気管支ぜんそくの治療を受けた経験があった。 ただ、ぜんそくでも軽症で済む子が大半だ。都保健医療公社荏原病院小児科の松井猛彦部長は「怖がりすぎる必要はないが、ぜんそくの治療を終えて5年以内の子と、治療中の子が感染した場合、注意して観察して下さい」と呼びかける。 心臓が十分に動かなくなる心筋炎は、季節性インフルではほとんど報告されていないが、新型の場合、成人も含め3人が心筋炎で亡くなった。 季節性インフルの場合、重症化して入院するのは1歳未満の乳児が多く、健康な成人の40倍ほどとされる。新型は今のところ1歳未満は入院患者の2%強にとどまる。 小児科学会の感染症担当理事、野々山恵章防衛医大教授は「まだ感染の中心が小中高校生。今後、乳幼児に感染が拡大した場合、さらに重症化する子が増える可能性が高い。都道府県ごとに重症児を診る病院と軽症を診る医療機関の役割分担を決めるなど、準備が必要だ」と話す。 ◇ 新型インフルに限らず、子どもの病気の大半は発熱する。基本的に元気があるなら自宅で様子をみてもよい。しかし、下記のような症状があったら、インフルエンザ脳症や呼吸障害など重症化する恐れがある。すぐ受診しよう。 アスピリンやメフェナム酸、ジクロフェナクナトリウムの入った解熱剤は脳症を誘発・重症化するので、家にあっても子どもにのませてはいけない。 呼びかけに反応しない 意味不明のことを話す 行動がおかしい 15分以上けいれんが続く 呼吸が浅い 呼吸が速い のどがゼーゼーしている 顔色が青い 判断に迷うときは、小児救急電話相談(#8000)にかければ、各都道府県の相談窓口にいる小児科医や看護師につながる。
国立感染症研究所は16日、全国5千の医療機関から報告されたインフルエンザ患者数が、11日までの最新の1週間に1医療機関当たり12.92人になったと発表した。ほとんどが新型の豚インフルエンザとみられる。前週の6.40人から倍増した。 保健所の管轄地域単位で、1医療機関当たり10人以上の地域は「注意報」レベルとなる。全国で10人を超えたのは、舛添要一厚生労働相(当時)が8月に「本格的な流行開始」を宣言してから初めて。 都道府県別で報告が多いのは、北海道(38.96人)のほか、愛知(23.52人)、福岡(23.48人)、神奈川(21.63人)、沖縄(19.48人)の各県。東京都(18.98人)、大阪府(16.96人)なども多く、大都市を中心にした流行が拡大している。 管内で30人以上の医療機関が出て「警報」レベルになった保健所がある都道府県は、北海道、埼玉、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡、沖縄の8都道府県、注意報レベルの保健所があるのは21府県。 同研究所は新型インフル患者が増え始めた7月初め以降の累計患者数を約224万〜244万人とみている。
厚生労働省は15日、インフルエンザで休校や学年・学級閉鎖をした保育所や小中高校などが、10日までの1週間に全都道府県で計6476施設に上ったと発表した。大半は新型の豚インフル患者とみられる。前週に比べ施設は約2倍、患者は10万8961人で約3倍に増え、いずれも、08年から09年にかけて季節性インフルが最も流行していた今年1月下旬を上回った。 休んだ施設の約半分が小学校。小中学校で8割を占める。今年5月に高校が調査対象に加わっており、その分を差し引いても、1週間に休んだ施設数は、季節性インフルによる休校数などが過去10年で最も多かった00年1月の4131施設を上回った。 一方、同省には11日までの1週間に全国で8047件の集団感染が報告された。前週の約1.5倍に増えた。 休校などの数は9月のシルバーウイーク明けから急増している。同省は「流行の坂を上りつつある。一定以上に伸びが続くと、(流行は)止まらなくなる」として注意を呼びかけている。
ニキビなど皮膚科の治療法に、LED(発光ダイオード)を導入する医療機関が増えている。レーザー治療に比べ即効性はないが、熱を使わないため安全性が高く、光の色を変え様々な症状に対応できるのが特徴だ。 例えば青色LEDは、皮脂腺にたまりやすいポルフィリンという物質に働きかけ、活性酸素を発生させる。活性酸素は、皮脂腺の活動を抑えニキビができにくくなる。赤色はアンチエイジングなどに効果が見られるという。 大阪市中央区のトキコクリニックでは、従来の治療で効果が見られない患者らを中心に、LEDを使っている。ニキビなどが大幅に改善される例もあり、好評という。 光と肌の関係に詳しい同志社大スキンエイジング・アンド・フォトエイジングリサーチセンターの市橋正光教授(70)は「光には細胞の活性を引き出す可能性が秘められており、新しい治療法が確立される分野だ」と話している。
新型の豚インフルエンザの流行本格化に備え、夜間や休日に病院の救急外来に患者が詰めかけるのを緩和するため、開業医らが病院を支援するなどの態勢を取っている都道府県が少なくとも15に上ることが、地方自治体への朝日新聞のアンケートでわかった。態勢を取る方向の17府県を加えると、32都道府県で開業医らが支援する構えだ。 各地域では地方自治体と医師会などが新型インフル対策として医療態勢を話し合っている。そこで9月下旬〜10月上旬、都道府県などが把握している対策を聞いた。 すでに開業医らが何らかの支援をしていると確認できたのは北海道と宮城、山形、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、和歌山、高知、福岡、熊本、沖縄の各都府県。流行が広がっている都市部が目立つ。地域の医師会が中心になり、開業医の平日の診療時間を受診者の多い夜10時ごろまで拡大したり、開業医が輪番で担当する休日当番医の数を増やしたりしている。 17府県では自治体側が医師会を通じて開業医に協力を求め、流行が拡大したら支援態勢を取る方向でまとまっている。15県は地域医師会に任せていると答えた。「まだ患者があまり来ない段階。本当に応援を頼みたいときに備えたい」との理由もあるという。 一方、重症児の入院受け入れが可能かどうかについて毎日情報交換する仕組みを作ったのは4都府県。12府県は従来の救急医療情報のネットワークシステムを応用するなどして、近く情報交換を始めるという。愛知県などでは大学病院が中心になってメーリングリストを使ってやりとりする方針だ。 「病院同士、顔が見える関係なので、従来通り電話で足りる」(石川県)として、新たな態勢を考えていない自治体も10近くある。 新型インフル流行期に病院の救急外来に患者が殺到して診療機能がパンクする事態を避けるため、厚生労働省は9月、都道府県に対し、患者からの電話相談に応じる態勢の充実、開業医との連携、重症患者が出た場合の搬送・受け入れのルール作りなどを呼びかけた。
男性型脱毛症(AGA)の進行を抑える医療用飲み薬「フィナステリド(商品名プロペシア)」が承認されて4年。当時、初の「飲む脱毛抑止剤」として広く注目を集めた。現在は、その効果が認知されはじめ、治療を受ける人も増加中だ。「根活(毛根活動)で、婚活(結婚活動)を成功させたい」と、人生の新しいステップに向かう若い男性の姿もある。 「薄毛で失った自信を治療で取り戻すことができた」。運転手の高橋清勝さん(33)=名古屋市南区=は、1年ほど前に頭頂部に10円玉大の脱毛を見つけた。初めは円形脱毛症を疑った。皮膚科を訪れたが原因はわからないまま、瞬く間に頭頂部から前頭部へ広がっていった。 急激な進行に驚き、戸惑う日々。気持ちがふさぎがちになり、人前に出なくなった。たまの外出時は室内でも帽子をかぶって視線を避けた。特に女性への苦手意識が芽生え、出会いの機会が減った。 治療開始は今年3月。同市中区の「AACクリニック名古屋」でフィナステリドを中心とした薬の処方を受け、服用を続けたところ、数カ月後から回復を実感するようになった。現在は薄毛が目立たなくなり、帽子も手放した。高橋さんは「今はコンパにいきたい。婚活にも取り組めそうです」と笑顔で話す。 舞台俳優の中根健司さん(29)=同市中村区=は、22、23歳ごろから前頭部の生え際が薄くなり始めた。半年前から治療を受け、わずか2カ月で効果が出た。舞台に合わせて髪形をアレンジできるようになり、演じる役の幅が広がった。「気持ちや声が前にでるようになり、仕事にもいい影響が出た」という。 AGAとは遺伝的な要因を背景に、思春期以後の若年に始まる進行性の脱毛症。主に男性ホルモンの影響を受ける。日本では約650万人が薄毛に悩んでいるとされ、30代の1割がAGAを抱えているといわれている。 治療は、外用薬と頭皮マッサージを中心とした育毛サロンと異なり、医療機関で処方を受け、飲む薬の力で進行を阻止する。れっきとした医療行為だが保険は適用外。同クリニックでは初診の検査料と診料で計1万5750円。30日分の処方代が3万1500〜3万4650円のほか、ケア用品が月6千〜7千円ほどかかるが、「育毛サロンより断然安い」(中根さん)。薬の服用と頭皮への外用がそれぞれ1日1回あるだけで、通院は月1回のみと、手軽に治療できるのが特徴だ。 プロペシアを唯一、日本で販売する万有製薬によると、現在、処方医療機関は3万施設以上に増え、服用者数も18万〜19万人に達している。日本での売り上げは、06〜08年で67億円から127億円に急増。同社は「元々ニーズがあるところにフィナステリドが承認され、爆発的な広がりにつながった」と話す。 ただし、治療効果には個人差がある。同クリニックでは2割の人は効果を実感できていないという。 そもそもAGAとは、毛髪の成長サイクルの中で成長期が短縮され、毛髪が細く短くなること。治療は細く短くなった毛髪を太く長くするもので、いわゆる「発毛」ではなく効果は限定的だ。 毛髪が太く長くなれば、発毛と同様の実感を得られるものの、一定以上のレベルに達したあとは、その状態を維持するのが目的となる。服用をやめればまたAGAが進み、性欲減退や勃起(ぼっき)不全などの副作用も一部で確認されている。 同クリニックの平山信夫院長は「治療は最低6カ月は継続しなければ評価は難しい。効果発現に関してはかなり個人差があり、本人も納得の上で治療を開始するべきだ」と話している。 〈フィナステリド(商品名プロペシア)〉 97年に米食品医薬品局(FDA)の認可を取った世界初の経口男性型脱毛症用薬。薄毛の一因とされる男性ホルモンの働きを弱める。もともと前立腺肥大症や前立腺がんの治療薬に使われ、体毛が濃くなる副作用があった。日本では05年10月に厚生労働省に承認され、同年12月に発売された。FDAが認めた男性型脱毛症用薬は、フィナステリドとミノキシジル(商品名リアップなど)のみ。男性型脱毛症以外の脱毛症(円形脱毛症など)への効果はないとされている。
厚生労働省は9日、病院などが医療費を請求する際の診療報酬明細書(レセプト)のオンライン化を義務づけた政府方針を見直す方針を決めた。オンライン化に対応できない小規模医療機関や、高齢医師らだけの医療機関を対象から外す。 オンライン化は、経費削減など効率化を目的に、11年度までに原則すべての医療機関に義務づけられていた。しかし、「コンピューターに対応できず廃院する」などの反発を受け、年間のレセプト件数が3600件以下の診療所や常勤の医師が全員65歳以上の医療機関などを除外する。意見公募手続き(パブリックコメント)を経て、省令を改正する予定。 長妻昭厚労相は9日の閣議後会見で「100%オンラインを実現したいが、強引に進めて目標が達成できなくては元も子もない」と説明した。
北九州市小倉北区の健和会大手町病院(西中徳治院長)は9日、20〜90代の入院患者20人が、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に感染したと発表した。うち、67歳の女性と74歳の男性が死亡したが、VRE感染が直接的な原因ではないという。感染経路について調べている。市は同日、院内感染対策の実施状況を確かめるため、立ち入り調査をした。同病院はベッド数635の総合病院。
小学校入学前の就学時健康診断で全員に実施するよう定められている視力検査を、横浜、川崎、神戸、堺、福岡、北九州の政令指定市が実施していないことが朝日新聞の取材などでわかった。日本眼科医会の調査によると、約1割の自治体が実施していないと推定されている。弱視はみつかるのが6歳以降だと改善が難しくなるとされており、医会は全国一律の実施を求めている。 朝日新聞が取材したところ、西日本ではほかに、大阪の池田市、四條畷市、豊能町、兵庫の三木市、奈良の御所市、広島の三原市が未実施だった。 人の目は生まれた直後の視力は0.02ほどだが、5〜6歳までに1.0ほどになって視力の発達が完成するとされている。この成長過程で斜視や遠視、乱視などの屈折異常が放置されると視力の発達が不十分になり、眼鏡などで矯正しても十分な視力が得られない弱視になってしまう。このため、できるだけ早く視力の異常を見つけることが重要とされている。片方の目が弱視だと、視力の良い目にパッチをあてて悪い方の目を使わせることで視力を上げる治療法などもとられるという。 就学時健診は学校保健安全法で自治体の教育委員会に義務づけられ、視力については同法の施行規則で「国際標準に準拠した視力表を用いて左右各別に裸眼視力を検査」することと「目の異常の有無は眼位の異常等に注意する」などと検査基準が定められている。ただ、守られていなくても罰則規定などはない。 日本眼科医会によると、就学時健診で視力検査が実施されず、小学校入学後に初めて弱視がみつかる例が少なくないという。全国的なデータはまとまっていないが、横浜市だと06年の場合、市眼科医会の調査で6人がみつかった。 このため、医会は昨年11月、抽出した213の市町村と全国18の指定市に調査票を送付して調べた。回答があった190市町村のうち172(90.5%)は実施していたものの、大阪府で4、神奈川県、福岡県で各3、大分県、奈良県、和歌山県、青森県、秋田県、兵庫県、広島県で各1の17市町はおこなっていなかった。 調査では未実施の市町名は公表していないが、朝日新聞が取材したところ、横浜市や川崎市は幼児の視力検査は時間がかかることや、親から提出してもらう事前の調査書で視力の問題の有無をチェックしていることなどを理由に実施していなかった。堺市は内科医が全体的にチェックしていることから、視力検査はしていないという。 神戸市は「保護者からの相談に応じて対応している。幼児を一律に検査するのは難しいうえ、市立幼稚園などで実施している検査でカバーしている」。北九州市は「幼児は初めて学校にいくので緊張しており、右や左の理解力も不足していて判定は難しい。目の異常がある場合は親にその場で言ってもらい、学校医がみることになっている。小学校に入れば、4月から6月に健康診断があり、そこでは視力を調べている」としている。 「眼科医確保の費用が増えるので実施していない」(大分県津久見市)、「04年度まで実施していたが、幼児の視力検査は手間がかかるうえ、正確な診断も難しい。05年度からは校医らの問診でチェックし、必要とされた子のみに実施している」(神奈川県小田原市)という自治体もあった。 眼科医会の宇津見義一常任理事は「手間がかかることなどを理由に検査をしないのは、弱視の早期発見、早期治療の重要性が理解されていないためではないか。不利益を受ける子どもが出ないように、視力検査の実施を徹底してほしい」と要望している。 文部科学省学校健康教育課の担当者は「自治体には実施してもらうよう通知を出しているが、実情は把握していない。やっていないところがあれば、周知徹底したい」と話している。
全国約5千の医療機関の定点調査で報告されたインフルエンザ患者が、北海道、福岡、沖縄、愛知の4道県で1施設当たり平均10人を超えたことが8日、4日までの最新の1週間の速報値でわかった。大半が新型の豚インフル患者とみられる。保健所の管轄地域単位で平均10人を超えた場合、「注意報」発令の目安となる。都市部を中心に新型インフルの流行が本格化している。 沖縄県は8月に46.31人を記録してから1施設当たりの患者が減っており、他地域が上回ったのは初めて。 8日までの集計では、北海道16.99人、福岡県13.34人、沖縄県10.47人、愛知県10.33人。9月にいったん10人を超えた東京都は9.60人だった。データを確定させたうえで国立感染症研究所が9日に発表する。 北海道は30保健所中、浦河(37.00人)、札幌市(同28.66人)など5カ所で20人を超えた。愛知県では春日井保健所管内が33.44人になり、県は8日、県全域に流行警報を出した。
お産で重い脳性まひになった子どもの介護費などの負担を軽減するため、今年1月に始まった産科医療補償制度で、9月末までに計5件が補償対象として認定されたことがわかった。制度を運営する「日本医療機能評価機構」は今後、原因を分析した上で、最終結果を保護者と医療機関に報告。再発防止委員会での審議後に公表する。 お産に関連して起きる脳性まひに絞った公的な医療補償制度は世界に例がなく、当事者となる患者、家族の救済だけでなく、産科での医療紛争を減らす目的がある。 同機構などによれば、8月下旬以後、全国の分娩(ぶんべん)施設を通して5件の申請があった。いずれも今年1月以後に生まれたゼロ歳児。 9月下旬に初の審査委員会が開かれ、いずれの事例も出生児の体重や障害の程度などが補償対象の条件を満たすと認定された。認定を受け、保護者には子どもの看護、介護費用として、一時金600万円と年120万円(最長20年間)が支払われる。 この制度は09年以降、原則として33週以上、体重が2千グラム以上で生まれた子のうち、身体障害者1、2級相当の障害がある子どもが対象。年間の申請数は500〜800人と試算されている。
堺市は6日、新型インフルエンザに感染した市内の40歳代の女性が4日午後に死亡したと発表した。新型インフルに感染した、または感染が疑われる患者の死亡は全国で21人目。直接の死因は、致死性が強い劇症型A群溶連菌感染症による多臓器不全で、新型インフル感染との関係は不明という。女性には高血圧症の基礎疾患があった。 市によると、9月29日からのどの痛みやせき、発熱などの症状があり、今月2日に入院。3日からタミフルを服用していた。インフルの簡易検査で3度、陰性だったが、死後の遺伝子検査で新型インフルの感染が確認された。
名古屋大病院(名古屋市昭和区)で亡くなった中国籍の1歳男児が2カ月半以上霊安室に置かれ続けている問題で、病院側が6日記者会見し、松尾清一院長が「放置したと言われても仕方がない。遺族の心情を踏みにじり、患者、市民にも不信感を与えた。心からおわびしたい」と頭を下げて謝罪した。 遺体安置が長期化したことについて、病院側は当初「解剖に立ち会う医師を連れてこられない遺族側の責任」としていた。しかし、会見で松尾院長は「解決に向けた行動をとらなかったのは紛れもない事実。遺族の気持ちを敏感に推し量ることができなかった」と病院側の落ち度を認めた。1日2万円の保管料を請求する内容証明郵便を送ったことについても「決裁のはんこを押したのは自分だ。心から反省している」と述べた。 「自分には重大な責任がある。解決がはかられたら何らかの責任をとる」とも話した。 病院側が判断を誤った理由を「第三者による解剖制度について問い合わせる際の確認不足」としたことについて、会見では質問が相次いだ。制度の運営事務局である愛知県医師会が「名大病院からの電話を受けた記録がない」と説明しているためだ。松尾院長は「やりとりした相手の名前は記録していないが、電話の交信記録は残っている。電話してないのに『した』ということはない」と釈明した。遺族が男児死亡の翌日以降も「何度も県医師会に確認するよう病院にお願いした」と話している点については、「翌日以降は聞いた記憶はない」と話した。 今後、遺体安置の長期化につながった病院のシステムについて検証する委員会を、病院外から委員を招いて作るという。 病院側は遺族に対しては、すでに2日、「遺族が希望する第三者機関による解剖はもっと早くできた」と謝罪したが、報道機関に対しては「事実関係を確認中」として説明をしていなかった。
強毒の鳥インフルエンザの変異による大流行に備えたワクチンの臨床試験で、接種した小児の6割が37.5度以上の熱を出していたことがわかった。入院などが必要になるほど重い副作用につながった子はおらず、ワクチンの効果は9割で確かめられた。 試験を実施した神谷斉(ひとし)・三重県予防接種センター長らのグループが、米微生物学会の会議で発表した。 神谷さんは「ワクチン接種後の一時的な発熱は欧米では許容されているが、日本の子どもの保護者は慣れていない。発熱を減らす製法の工夫などが必要だろう」という。 ワクチンは鳥インフルの患者が目立つアジア地域のウイルス株をもとに、国内2社が製造。海外企業と製法は違うが、小児の臨床試験は例がなく結果が注目されていた。 臨床試験は、国内2社のワクチンを対象に日本医師会の協力で、生後6カ月〜19歳の187人ずつ実施。打つ量は年齢によって異なるが、全員2回ずつ打った。 1回目に打った後、2歳以下の7割以上、3〜6歳の6割強が、37.5度以上の熱を出した。39度台、40度台の高熱の子もいたが、熱性けいれんなどの重症例はなかった。 1回目の後、頭痛の訴えは2割強。倦怠(けんたい)感や嘔吐(おうと)も1割前後いた。打った部位に痛みを感じた子は4割ほどで、赤く腫れたのは2割ほど。 これに対し、鳥インフルへの免疫力をみる指標(抗体)が、打つ前の4倍以上となり、効果があると判断されたのは9割を占めた。 今回のワクチンには、免疫補助剤が入っている。季節性インフルや、いま政府が打つ準備を進める国内産の新型の豚インフルワクチンには入っていない。免疫補助剤で効果が高まったが、発熱などの反応も強く出たと見られている。ただ、5500人の大人を対象にした臨床試験では発熱は2%。大人と違う理由ははっきりしない。
川端達夫文部科学相は、医学部生が卒業後に地域医療に従事すれば返済を一定期間猶予する国の奨学金制度を新設するよう、同省の事務当局に指示した。地方の医師不足を解消するきっかけにしたいといい、早ければ来年度の実施を目指す考えだ。 地方の医療現場では、勤務医が足りないことで個々の負担が重くなり、辞めて都市部の病院に移ったり開業したりしてさらに人手不足が進む悪循環が起きている。これに歯止めをかけるため、自治体ではすでに、独自の条件を付けた奨学金で地元に医師を定着させる動きが出ている。 例えば鳥取県では、地元の鳥取大学医学部の学生を対象にしたもののほか、15人の枠内で全国どこの医学部生であっても月に10万円を支給する制度を設置。奨学金は形式上は貸与だが、一定期間、県内の医療機関で働けば返済を免除することにしている。 文科省はこうした各地の事例を参考にしつつ、返済猶予だけでなく免除も視野に入れて制度のあり方を詰める。 一方、川端文科相は、医師や看護師が仕事と育児を両立できるよう、国立、私立の各大学病院への院内保育所の整備を進めることも指示した。女性の医師や看護師らが出産を機に現場から離れてしまうケースが多いことを踏まえ、職場環境を整え、地域医療の拠点である大学病院の人手不足解消につなげたいという。
季節性インフルエンザワクチンの予防接種が9月下旬から各地の医療機関で始まっている。新型の豚インフルの感染予防には効果がないとされるが、新型インフルに感染する子どもが多いため、予防接種への親たちの関心が高まっているようで、各地の医療機関に予約が殺到している。 10月1日の夕方、千葉市中央区のつばきこどもクリニックを、約80人の親子らが次々と訪れ、ワクチンの接種を受けた。 夫と長男長女の一家4人で接種を受けた橋川妙さん(38)は「夫は電車通勤、私は接客業。長男がぜんそく持ちなので、家族皆でブロックしないと」。同クリニックで予約の受け付けが始まった2週間前の夜、電話がつながりにくく、携帯電話4台でかけ続け、2時間かかって予約にこぎつけたという。 例年なら本格的な流行は12月以降で、幼児への接種に適するのは11月ごろとされる。今年は新型ワクチン接種が控えるため、医療機関も患者側も、混乱を避けるため、季節性のワクチン接種を早く済ませようとする流れが強まっているという。 厚生労働省によると、今年の季節性のワクチンは、新型ワクチン製造のため昨年の8割ほどしか製造されない。大人向けの接種量に換算して約2250万人分。多くの医療機関では納入量の見通しが立たなかったといい、ホームページには「診察券を持つ人限定」「完全予約制です」など、品薄を意識した断り書きが目立つ。既に予約を締め切ったところもある。
名古屋大病院で1歳男児の遺体が2カ月以上にわたり安置されている問題で、病院が2日、遺族が希望する他病院の中立的な立場の医師による病理解剖を、急きょ愛知県内の別の大学付属病院に依頼して行うことを提案し、これまでの対応を遺族に謝罪した。遺族側への取材でわかった。遺族は回答を留保した。 遺族によると、2日午前中に名大病院に呼び出されて伝えられた。病院側はこれまで解剖の引受先を探すのに手を尽くしたと強調してきたが、この日は「手違いで男児の死亡直後はできないと思っていたが、できる見通しになった」という趣旨の説明をして、謝罪したという。 母親(43)は「こんなにあっさり覆されても、納得がいかない。今までは何だったのか」と戸惑いを見せた。 関係者によると、新たに提案されたのは、県医師会が窓口になっている「県剖検運営システム」。県内の大型4病院(名大のほか、名古屋市立大、愛知医科大、藤田保健衛生大の各付属病院)が月ごとの輪番制で他病院の病理解剖を引き受ける仕組みだ。 名大病院は先月30日の記者会見で、「男児が死亡した際、県医師会や7月の当番だった愛知医大に解剖の相談をした。しかしシステムが自前の病理解剖ができない規模の病院を対象にしているとして断られた」と説明していた。実際には、このシステムは4大学を含む病院が申し込めばあっせんする仕組みだが、窓口の県医師会は当時、名大病院から相談などを受けた記録はないとしている。 この問題をめぐっては、肺高血圧症と診断された男児が手術後の7月15日に死亡。遺族が医療過誤を疑って名大病院医師による解剖を拒否して、中立的な立場の医師による解剖を要望。実現しないまま、遺体が病院の霊安室に冷蔵保管されている。病院側は、遺族に遺体を早く引き取るよう促し、「保管一日あたり2万円を請求する」などとする内容証明郵便を出していたが、病院はこの文書についても謝罪したという。
親の経済格差は教育格差にとどまらず、「健康格差」となって児童生徒に広がっている。治療費がなく学校の保健室で治そうとする子、健康診断で異常が見つかってもなかなか再検査を受けない子……。格差社会の広がりとともに状況は悪くなる一方だといい、現場の養護教諭らは改善を訴えるために全国の事例を集め始めた。 北海道立高校の養護教諭(41)によると、6月、体育の授業で足首をひねった2年生の男子生徒が保健室にやってきた。腫れ上がった患部を湿布で手当てし、「靱帯(じんたい)が切れているかもしれないから病院に行った方がいい」と言い聞かせた。 ところが次の日も、その次の日も「湿布はって」とやってくる。話を聞くと、生徒は母子家庭。「家には湿布なんかないし、買ってもらえない」「病院に行かなくてもそのうち治る」と言った。 保健室は本来、初期の手当てをして医療機関につなぐまでが役目だ。しかし、そんなことを言っていられない現実がある。 別の2年生の男子生徒は「頭痛がする」と言って、1年前から毎日、市販の鎮痛薬を飲んでいた。「薬ちょうだい」。そう言って、保健室にもよく顔を出す。心配で、母親に「一度検査を受けた方がいい」と手紙を出した。でも、返事はない。校医に治療勧告書を書いてもらい、母親はようやく生徒を病院に行かせた。幸い大事には至らなかったが、放っておけば脳梗塞(こうそく)を起こすおそれがある状態だったという。 この学校は、全校生徒の4割が生活保護を受けている。歯科検診では虫歯が8本以上ある生徒が1割を超え、中には20本ある子も。親は日々の暮らしで精いっぱいで、子どものころに歯磨きの習慣をつけてもらっていない生徒が多いという。 「何かあったら治療を受ける、という発想や習慣が全くない。学校を出て、この先ちゃんと暮らしてゆけるのか」 埼玉県の養護教諭(47)が勤務する県立高校も、生活保護世帯やひとり親の家庭が多い。授業料や生活費をアルバイトでまかなう生徒も多く、新入生の3分の1は初年度のうちに退学していく。 「おなかすいた」。こう言って保健室にやってくる生徒のために、この養護教諭はビスケットやアメを自腹で常備している。話を聞くと、前の日から食事をとっていない子がざらだ。体温や血圧が低く、体育の授業中、うずくまったり壁にもたれたりしてやり過ごす子も多いという。 学校の定期健診で再検査が必要になっても、生徒からまず出る言葉は「検査代はいくら?」。自己負担になる再検査では、例えば心電図だと5、6千円かかるという。再検査を促し、ようやく受診して問題がなかった生徒の保護者からは「お金が無駄になった」と苦情を言われたこともある。「お子さんのためにはよかったんです」と返すしかなかったという。 子どもたちが経済的に苦しんでいる様子は統計にもはっきり表れている。文部科学省の調査では、学用品や修学旅行費などを公的に負担する「就学援助」の対象となる小中学生は、この10年で約78万4千人から約142万1千人と1.8倍に増えた。都道府県立高校で授業料の減免措置の対象になっている生徒も、約11万1千人から約22万4千人へと倍増している。 7月に愛知県で開かれた全日本教職員組合の養護教員の会合でも、子どもたちの窮状が相次いで報告された。これまで埋もれていた親の経済状態と子どもの健康の関係について掘り起こそうと、各地の教員に報告を呼びかけている。
国立感染症研究所は28日、最新の1週間(9月14日〜20日)にインフルエンザで医療機関を受診した患者は、全国で約27万人にのぼったと発表した。約5千カ所の定点医療機関からの報告をもとに推計した。ほとんどが新型インフルエンザとみられる。前週(9月7日〜13日)は約18万人。インフルエンザの報告数が増え始めた7月以降、初めて20万人を超えた。
ふだん緑茶をよく飲む女性は、肺炎によって亡くなるリスクが半分ほどにまで下がるという調査結果を東北大公衆衛生学のグループがまとめ、米の臨床栄養学の専門誌で報告した。男性では差がなかった。緑茶に含まれるカテキンという成分が肺炎を起こすウイルスや細菌の働きを抑えている可能性があり、グループは今秋から、静岡県掛川市民の協力を得て、緑茶がインフルエンザを抑える効果があるかどうかを調べる。 94年に緑茶を飲む習慣や健康状態などについて聞いた宮城県在住の男女約4万人(40〜79歳)について、06年まで追跡した。この間に男性275人、女性131人が肺炎で亡くなっていた。 女性では、緑茶を飲むのが「1日あたり1杯未満」だった4877人のうち、肺炎で死亡したのは43人。一方、「1〜2杯」の4458人では死亡は24人、「5杯以上」の7208人で38人。 年齢や体力、結核感染の有無など、肺炎死亡と関係しそうな要因を考慮して比べると、1〜2杯飲む人たちは1杯未満に比べて41%、5杯以上では47%、肺炎で死亡するリスクが低かった。 男性では飲む量とリスクは関係がなかった。解析を担当した大学院生の渡辺生恵さんは「男性の8割以上は、肺炎と関連が指摘される喫煙歴があり、緑茶の効果が及ばなかったのかもしれない」という。 今回調べたのは季節性インフルエンザを含むウイルスやブドウ球菌などの細菌で起きた肺炎が主体。飲食物が気道に入って起こる誤嚥性(ごえんせい)肺炎などは除いた。
生まれた直後から赤ちゃんを母親の胸に抱かせる「カンガルーケア」(KC)を実施したところ、新生児の呼吸が止まるなどしたケースが全国で16例あったことが、27日に東京都内で開かれた日本母乳哺育(ほいく)学会学術集会で報告された。その後も増えているといい、報告者の渡部晋一・倉敷中央病院総合周産期母子医療センター長は、赤ちゃんの状態をきちんと観察するなどの実施基準を明確にすべきだと注意喚起した。 KCは、母乳育児促進に有用とされ、広く行われている。新生児医療の専門医のグループが昨年全国205の病院を調査。16例のうち1人が死亡、4人が植物状態という。渡部センター長はうち3例について説明。KC中に赤ちゃんの呼吸が止まるなどしているところを発見されたが、いずれも赤ちゃんの状態が観察されておらず、事前説明も母親には行われていなかったという。「KCは推進したい。だが、どう実施するかだ」と話した。 長野県立こども病院の中村友彦・総合周産期母子医療センター長も「(正常出産でも)出生直後は呼吸循環状況が危機的な状況となる可能性が高いことを認識して実施すべきだ」と強調した。
勤務医を中心につくる労働組合「全国医師ユニオン」(植山直人代表)は27日、「名ばかり管理職」や勤務医の労働条件に関する電話相談を受け付けた。長時間労働や頻繁な当直、残業代についてなど計29件の相談があった。 ユニオンによると、大学病院や外科の勤務医からの相談が目立った。大学院生が雇用契約を結ばずに無給で診療させられている▽医師としての勤務が厳しくて自殺したのに、過労死による労災が認められない▽患者の家族から脅迫があって精神的に参ってしまい働けなくなった、などの相談があったという。
日本医師会(日医)は、開業医の診療能力を患者が納得できる形で保証するため、生涯教育制度を大幅に改め、新たな認定制度を来年4月に導入することを決めた。診療能力を底上げし、患者の開業医離れを食い止める狙いがある。認定証に3年の有効期限を設け、更新のための試験を部分的に採り入れる。 開業医の診療の質がわかる仕組みがないことが、開業医離れの一因とみられている。新制度が定着すれば、患者が開業医を選ぶ際の判断材料になりそうだ。 これまで日医は、生涯教育で開業医の質を保証すると説明してきた。しかし、現行制度では、会報の中で印象に残った記事をはがきに書いて送り返したり、地域医師会の講習会に出たりするだけで修了証を得ることができ、3年続けて修了証を取得すれば無期限の認定証をもらえる。 実効性をめぐる批判が内部でも強まり、日医は2年前から改善策を検討してきた。新制度に先駆けて、日本プライマリ・ケア学会など3学会と合同で、初期診療に必要な84項目を網羅したカリキュラムを今春まとめた。症状に応じて患者に確認すべき事柄や必要な検査、可能性を疑うべき病気、専門医に紹介すべき病気か自分で診療を続けていい病気かの見極めといった、身につけておくべきポイントをまとめたものだ。 新制度では、84項目のうち30項目以上について、30単位以上を3年間で取得した医師に認定証を出す。日医の会報やインターネット上に掲載される問題を解いて6割以上正解した場合に単位を認める。従来通り、地域医師会などの講習会受講も単位に認めるが、1日に5時間で5単位までと制限する。従来より厳しくなるが、講習会受講だけで認定を受ける道は残る。 日医会員は約16万5千人で半数程度が開業医。全国の開業医の7割強が加盟しているとみられている。会員の7割以上が従来の制度で認定証を受けている。暫定措置として、今年度中に従来の要件を満たせば13年11月末まで有効な新たな認定証を出す。 日医で生涯教育を担当する飯沼雅朗常任理事は「認定制度の改定に当たっては、患者さんに納得してもらえる内容になるよう留意した」と話す。 ◇ 〈開業医〉 骨折にもぜんそくにも対応できる幅広い初期治療の知識が求められる。日本では、医師免許があれば麻酔科以外の診療科を自由に掲げて開業できるため、大病院で心臓手術ばかり手がけてきた医師が内科医院を開業して糖尿病やリウマチの患者を診ることもある。 欧米では、開業医も、日本の心臓外科の専門医などと同様、決められた初期治療の研修を数年間受け、試験に合格することが必要とされる。しかし、日本では、そうした初期治療の専門性を認定する仕組みはない。 日本の開業医の中で、欧米で初期治療医の資格を取るなど勉強熱心な医師が多く参加する日本プライマリ・ケア学会など3学会は来春合併し、日医とは別に認定医制度を始める。欧米にならった高いハードルがあるため、患者にとってはより有効な開業医選びの材料になり得る。
昭和大学病院(東京都品川区)で双子を出産後、院内感染で重い障害が残ったとして、都内の女性(38)と家族が大学側に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(石川善則裁判長)は25日、慰謝料など計約1億円の支払いと、女性が退院した場合の看護料として1日2万円を生涯払い続けるよう命じた。看護料は一審・東京地裁判決より5千円増額した。 判決によると、女性は96年6月に入院し翌月、帝王切開手術を受けて双子を出産。ところがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染して心停止となり、脳に損傷が生じた。現在も入院中。 高裁判決は「出産から3日後には感染症の原因菌がMRSAと認識できたのに、抗生剤を投与したのはさらに3日後だった。病院側は抗生剤の投与を開始する義務を怠った」として一審同様、病院側の過失を認定した。 その上で後遺症について「ある程度の回復がみられ、1人で歩行できるようになった」としながらも「身体能力が回復したためかえって常に行動を注意しなくては危険な状態にある」と指摘。退院した場合は常に介護する必要があるとして看護料を増額した。
長妻昭厚生労働相は、売却方針が決まっていた全国の社会保険病院(53カ所)と厚生年金病院(10カ所)を新機関に移行させ、公営で維持する方針を固めた。関連法案の臨時国会提出に向け、すでに検討を指示。地域医療の中核拠点を維持するため、全病院売却という自公政権時代の政府方針を大きく転換することにした。 社保病院は中小企業向けの旧政府管掌健康保険(現・協会けんぽ)の保険料で、厚生年金病院は公的年金の保険料で整備されてきた。しかし、保険料を使ったレクリエーション施設の整備などが「無駄遣い」と批判され、小泉政権時代の02年に保険料による施設建設は中止。それを受けて両病院も整理合理化の方針が決まった。 その後、整理合理化計画を策定する予定だったが、社会保険庁の不祥事が相次ぎ、策定は遅れた。昨年10月、独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」(RFO)に社保病院と厚生年金病院の管理を移管。今年3月から、厚労省が自治体や医療法人への売却手続きを始めた。同機構の設置期間は来年9月末までだが、これまでに譲渡先が決まった病院はない。 譲渡先が見つからない場合には廃院となる可能性もあり、地域の中核医療拠点が失われることへの懸念も出ている。現実に、診療科を縮小したり増床計画を凍結したりする病院もある。そこで民主党は、「地域医療推進機構(仮称)」を新設し、両病院を傘下に入れて管理、運営させる方針を総選挙前に提示。地域の医療体制を整備する一環として、両病院を公的に存続させることとした。 移行までの間に譲渡先が見つかれば売却するが、残りは新機構で管理運営させる考え。船員保険病院(3カ所)についても、同様に新機構に移す方向だ。 長妻厚労相や副大臣・政務官の政務三役は、19日にこの問題の対応を協議。病院の行く末が不透明で、このままだと地域医療の弱体化が加速しかねないため、臨時国会に法案を提出することで方針を明確にする必要があると判断した。07年度の収支は、厚生年金病院は4病院が、社保病院は13病院が赤字だった。病院の赤字補填(ほてん)など、財源問題が今後の課題となる。
厚生労働省の研究班(分担研究者=川名明彦・防衛医大教授)は、国内で発症した新型インフルエンザによる重症患者の症例集を初めてまとめた。20日、同省のウェブサイトで公表した。初期には、ほかの病気と区別がつきにくいほか、簡易検査で陰性になる例もあった。 同省によると、9月2日現在の重症例は生後10カ月〜80代の44人(死亡は10人)。症例集は6人の詳しい経過やポイントを紹介している。 急性脳症を起こした女子中学生(12)は最初は37度台で軽い頭痛があったが、簡易検査は陰性。3日目に熱が39度台になり簡易検査も陽性になった。抗インフル薬を使い自宅療養中に、「おばあさんがはさみを持って座っている」など異常な言動が始まり、けいれんが起きた。 別の女子中学生(13)。せきに市販のかぜ薬を使っていたが、3日目に発熱と息苦しさで受診し、肺炎とわかった。簡易検査で陽性とわかったのは翌日。呼吸困難がひどく人工呼吸器をつけて治療。発症から約2週間後に登校できるようになった。 いずれの中学生の例も周辺でインフル流行が見られた。症例集は、医師に対して地域、学校の流行状況の把握や簡易検査が陰性でも感染を常に疑うよう呼びかけている。 持病のない60代男性でウイルス性肺炎に発展した例では、悪寒から3日目に熱が39度台になって受診したが、簡易検査は陰性。しかし、熱やせきが改善せず、2日後に両肺の炎症がわかり入院した。簡易検査も陽性になり、薬や酸素吸入で改善した。 40代女性の場合、熱や下痢の症状が出て、後に重症肺炎に。日常に支障がない程度の慢性の肺気腫が治療中にみつかった。女性は20年以上の喫煙歴があった。こうした「隠れリスク」を見逃さないため、喫煙歴や日常生活で息切れがないかなどのチェックも診断に欠かせないという。
脳と機械を結ぶブレーン・マシン・インターフェース(BMI)技術を使って、脳卒中患者の機能回復を図る新しいリハビリ方法を慶応大のグループが開発に成功し、効果が確認された。体を動かそうと念じると、機械がその脳波を読み取り、強制的に体を動かす。こうした訓練で、脳からの命令が筋肉に伝わりやすくなるようにする。 慶応大大学院生の川嶋喜美子さん、牛場潤一専任講師(生命情報学)らは、脳卒中で、運動命令を出す脳の領域から脊髄(せきずい)までの神経回路のどこかが傷つき、手の指が2年以上動かせなくなった40〜60代の患者4人の脳波を計測。指を伸ばそうとした時と安静時の脳波を解析した。 さらに、指を伸ばす命令が脳から出た時に、強制的に指を伸ばす装置で患者の指を動かすように設定。うまく命令が出せたかどうかが、モニターの星印の動きでわかるようにした。うまく命令が出せているかどうかわかると、次第に余計な力が入らないようになると考えられるためだ。 この訓練を4〜7カ月、4人に受けてもらったところ、2人は指を伸ばせるようになった。残る2人は伸ばすことはできなかったものの、筋肉に神経から信号が伝わるようになった。訓練で新たな神経回路ができたのかどうか、詳しい仕組みはわからないという。 牛場さんは「BMIは、これまで方法がなかった慢性期の患者のリハビリに応用できる」と話している。
【ワシントン】抗インフルエンザ薬のタミフル、リレンザに次ぐ「第3の薬」として期待される「ペラミビル」ついて、塩野義製薬(大阪市)は、サンフランシスコで開かれた国際会議で「1回の点滴でタミフルを5日間飲むのと同程度の効き目が臨床試験(治験)で得られた」と報告した。11月までに厚生労働省に承認申請して、来秋の発売をめざす。 日本はタミフルとリレンザを備蓄しているが、いずれも輸入に頼っている。承認されれば、初の国産のインフルエンザ薬になる。タミフルには、耐性を持つ新型の豚インフルエンザウイルスがあることが報告されている。 飲み薬のタミフル、吸入薬のリレンザに対して、ペラミビルは点滴薬で、重症患者に対しても投与できることでも関心を集めてきた。 ペラミビルは、ウイルスの増殖を妨げる働きがあり、米製薬会社がインフルエンザ用の筋肉注射薬として開発し、実験では新型インフルに対して効果を示すことがわかっている。塩野義製薬は点滴薬として開発中で、日本、韓国、台湾で1099人の季節性インフルエンザ患者を対象にした最終段階の試験を行った。 その結果、症状の回復までかかった時間は、タミフルとほぼ同じかやや短い時間だった。 ペラミビルは06年、米食品医薬品局(FDA)から承認を急ぐべき薬の一つとして指定を受けている。
新型の豚インフルエンザの流行のピークを前に、医療機関を受診する患者が増え、インフルに感染したかどうかをみる簡易検査キットが不足し始めている。早めの検査を希望する「心配患者」が多いことも一因だ。キットを有効利用しようと、検査結果が出にくい段階では使わず、「節約」に努める医療機関も目立ち始めた。 東京都練馬区のわだ内科クリニックでは今月に入り、受診者が急増した。それに伴いキットが減り続け、一時は残り10人分を切った。和田眞紀夫院長(52)は「漫然とキットを使っていたらなくなってしまう」と語った。 医薬品卸会社「東邦薬品」(東京)によると、キットは8月中旬から品薄状態となっている。8月の販売実績(金額)は前年同月比で約120倍と大幅に増加。また、キットを生産している検査薬メーカー、ミズホメディー(佐賀県)の場合、フル稼働で3倍近い増産を続けているが注文に追いつかないという。 厚生労働省によれば、キットを製造・輸入する国内メーカーは15社。同省が8月、来年3月までの生産見通しを業界から聞き取ったところ、昨年同時期の2.2倍の2800万回分だった。発症者は約2500万人にのぼると推計されているが、「心配患者」を含めるとその2〜3倍が受診するとの予測もあり、キット不足が懸念される。 もっとも、タミフルなどの治療薬の処方にキットの検査は必須ではない。だが、平熱でも検査を受けないと心配だったり、勤務先に出社するため「陰性」の証明が必要だとして検査を求めたりする人が目立つようになった。 こうした事態を受け、キットの利用方法を工夫し始めた医療機関もある。発症初期はキットで検査しても「陽性」と出にくい。そのため、受診初日は帰宅させ、翌日も高熱やせきが続くなら再度訪れるよう指示。明らかに感染の疑いが強い濃厚接触者には検査をせずにタミフルを処方するなどしている。 キットは感染の有無を正確に見分ける能力はさほど高くなく、検査結果をあてにしすぎると必要な治療が遅れる可能性もある。厚労省新型インフルエンザ対策推進本部は「キットはあくまで補助的なもの。ただ、診断には役立つので供給態勢を維持していきたい」としている。
【サンマテオ(米カリフォルニア州)】米厚生省のセベリウス長官は11日の会見で、新型の豚インフルエンザのワクチンのこれまでの臨床試験(治験)の結果、大半の健康な成人には1回接種で十分な免疫が得られている、と発表した。米国で10月中旬に始まる見通しのワクチン接種は、成人へは1回になる可能性が高くなった。 18〜64歳の成人と65歳以上の高齢者の治験は、8月7日に始まった。今回は途中経過だが長官は「とても重要なニュースだ」と述べた。 会見に同席した米国立保健研究所(NIH)のアンソニー・ファウチ博士によると、治験は、協力者を二つのグループに分けて行われ、片方には1回分のワクチンを、もう片方には2回分を接種した。このワクチンには免疫補助剤は加えられていない。 検査の結果、健康な成人の8割以上で、1回接種でも8〜10日間で十分な免疫が得られ、重い副作用の報告もないという。ただ高齢者の免疫はやや弱かった。子どもや妊婦に対する治験は遅れて始まっており、結果はまだ出ていない。 ワクチンの接種回数は、限られたワクチンを使って接種できる人数に影響するため、「第2波」が近づくなか、各国の保健当局にとって大きな検討課題になっている。米政府はメーカー5社から年内に約2億回分のワクチンを調達する予定だが、1回接種か2回接種にするかは、「治験の結果次第」としてきた。 10日発行の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンにも、オーストラリアで行われた免疫補助剤入りのワクチンによる成人の治験で、1回接種で十分な免疫が得られたとの論文が発表されている。日本は今のところ、2回接種を前提に計画を進めている。日本が緊急輸入で確保しようとしているワクチンの一部は米国の治験でも使われているが、今回の途中経過の分には含まれていない。
新型の豚インフルエンザに感染した小児、妊婦、透析患者が重症化した場合に備えて、受け入れ可能な医療機関を把握して協力を要請していた都道府県が半数以下にとどまることが11日、厚生労働省の調査でわかった。患者の受け入れ態勢への整備費用を支援していると回答した都道府県も4割以下だった。流行が本格化するなか、医療態勢の確立が課題になっている。 同省が9月1日現在の状況を47都道府県に調査した。「重症者が発生した場合の、専門治療が可能な医療機関を把握し、事前に協力を要請しているか」との質問に、「既に行っている」と答えた都道府県は、小児と妊婦については21道県。透析患者については20道県だった。 ほかに「今後行う予定」という回答が多く含まれるが、対応の遅れが目立つ。人工透析を受ける患者や小児、妊婦は新型インフルの重症化リスクが高いため、新型ワクチンの優先接種者に予定するなど、厚労省は対策の充実を課題にしている。今後、問題点を洗い出し、自治体に改善を促していく予定だ。 また、透析患者らが感染した場合の受け入れ態勢の整備に対する費用の支援を尋ねたところ、支援していると答えたのは、妊婦と透析患者が15道府県。小児が17道府県にとどまった。 厚労省は8月末、特定の医療機関に限られていた補助対象を一般の医療機関に拡大。国と都道府県が半額ずつ負担し、医療機関の出費なしに必要な機材などを整備することも可能にしたが、09年度予算の補助金の残額は約7億円で不足する可能性も出ている。 厚労省は6月、流行の本格化に備え、「発熱外来」だけでなくすべての医療機関で患者を受け入れる方針に転換。各医療機関は、発熱患者とそれ以外の患者を分ける間仕切りや防護服などを導入する必要にせまられている。
大企業の会社員らが加入する健康保険組合1497組合の約7割が、08年度決算で赤字の見込みであることが11日、健康保険組合連合会(健保連)のまとめで分かった。全体の経常収支は3060億円の赤字で、赤字幅は78年度以降で2番目となった。昨春の医療制度改正で、高齢者医療への負担が急増したことが響いた。 経常収支は03年度以降は黒字が続き、前年度も600億円の黒字だったが、一気に悪化した。 健保連によると、赤字の組合は前年度より347組合増えて1030組合となり、全体の68.8%を占める。 08年度の保険料収入は、被保険者数が増えて全体で6兆1934億円と、前年度より2.4%増えた。しかし、08年度の制度改正で導入された前期高齢者(65〜74歳)の医療への納付金や、75歳以上の後期高齢者医療制度への支援金など、高齢者医療に対する負担額が総額2兆7461億円(前年度比4242億円増)に上り、組合財政に重くのしかかった。 高齢者医療などに対する負担が、保険料収入に占める割合は44.3%と過去最高になった。 この日の健保連の記者会見で、対馬忠明専務理事は「納付金などの増額が大幅な赤字につながった。財政悪化で解散せざるを得ない組合が次々と起こりうる。健保組合の存亡にかかわり、大変憂慮している」と話した。 実際に負担増で解散に追い込まれる組合も出ている。08年度は14組合、今年度も9月1日現在で11組合が解散した。今年4月に約2500人の健康保険組合を解散した東日本の企業は、中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)に移った。担当者は「これまでも負担してきた高齢者医療への拠出が、昨年になってドンと増えたことが一番大きい」と話す。 組合を維持するため保険料率を上げようとしたが、事業所の賛同が得られず、解散につながったという。 協会けんぽの運営には多額の国費が投入されており、健保組合が解散して、協会けんぽに移行すれば、国の財政負担が増えることになる。 政権与党となる民主党は、マニフェストで「被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的運用を図る」と示した。会見で対馬専務理事は、新政権の方針が「まだ具体的に見えていない」とした上で、「公費投入して健保組合の負担を軽減するのは必要不可欠。最終的には消費税の議論も避けられない」と話した。
日本産科婦人科学会(理事長・吉村泰典慶応大教授)は10日までに、妊婦が新型の豚インフルエンザに感染したと疑われる場合、かかりつけの産婦人科医が対応できるようにする項目を指針に加えたことを医療関係者に伝えた。これまでは、他の妊婦への感染予防を重視し、一般病院での受診を勧めていた。 新たに加えられたのは、(1)一般病院に通うことが難しい地域などでは、かかりつけ産婦人科医が対応(2)新型インフルの症状が重症化しておらず、出産や切迫早産の兆候がある妊婦は、かかりつけ産婦人科を受診する、など6項目。 学会は、出産間近の妊婦への投薬判断や切迫早産など合併症への対応が予想されるケースでは、産婦人科の専門医でなければ処置が難しいとの指摘を重くみて、指針の修正を決めた。妊婦からは、一般病院に電話で受診の相談をした時点で診療を拒否されるおそれがあるとの不安が寄せられていた。 海外の新型インフルの感染例をみると、妊婦は一般の人より症状が重くなる傾向がある。指針づくりの責任者を務めた水上尚典・北海道大教授は「妊婦が受診するまで時間がかかってしまうことを避けたかった。重症化を防ぎ、妊婦の死亡をゼロにしたい」と話す。 新型インフルの感染が拡大した場合、産婦人科の専門医が不足している一般病院で妊婦が受診するのは困難な状況が予想される。そのため、関東地方のある県では、不妊治療などを中心に扱う産婦人科医院にも受診の受け皿になってもらう仕組みづくりを検討している。
はしか(麻疹)予防のため、13歳(中学1年)と18歳(高校3年)を対象にした追加予防接種の接種率が、流行予防の目安となる95%に届かなかったことが9日、明らかになった。厚労省は12年度までにはしかを国内からなくす目標を掲げており、今年度以降も追加接種を呼びかける。 厚労省の専門家会議で報告された。3月末現在で13歳は85%、18歳は77%だった。都道府県別にみると、13歳では福井が最も高く95%。富山と茨城が続いた。最低は福岡の75%。18歳では95%を超える都道府県はなく、最高は山形の91%。最低は東京都の60%で、大阪や神奈川など大都市圏で低い傾向がみられた。 はしかワクチンは接種によって95%の人が免疫を得ると言われ、高い効果が期待できる。追加接種でさらに効果が高まるとされる。厚労省は接種率が目標に及ばなかったことについて「PR不足もあったかも知れない。今年度は目標に届くよう努力したい」としている。
新型の豚インフルエンザについて厚生労働省は9日、最新の1週間(8月31日〜9月6日)に全国で2318件の集団感染が報告されたと発表した。前週(8月24〜30日)に比べ1.7倍の増加で、同省は「新学期後の学校での感染が主体」と分析している。 1週間で100件を超す報告があったのは、いずれも大都市を抱える都道府県で、最多は東京の350件。次いで大阪316件、千葉170件、北海道と神奈川111件、福岡102件。流行が先行していた沖縄は、8月23日までの週を境に集団感染の報告は減る傾向で、今回は55件だった。 別の調査では、9月8日までの1週間に、保育所、学童クラブでの10人以上の集団感染が全国で8件報告された。 入院患者数は、お盆の時期をピークに減少傾向にあり、8日までの1週間では前週より23人少ない108人だった。20歳未満が大半を占める。4人が急性脳症を発症し、2人が人工呼吸器を着けて治療を受けた。
「おなかが痛いけれど救急車を呼ぶべきか?」「この時間に診察してもらえる病院はどこ?」。そんな悩みに医師らが24時間態勢で答えてくれる「救急安心センター」が10月1日、愛知、奈良両県と大阪市にできる。総務省のモデル事業で、急を要さない救急車の出動を抑え、救える命を増やすのが狙いだ。今後、全国での整備を目指している。 総務省消防庁は、救急車の出動件数が年々増え続ける理由の一つに、病院に行くべきかどうか判断できないまま、119番通報する人が相当数いると分析。専門家が緊急性について迅速に答えることで、搬送件数を減らせると判断した。 携帯電話や固定電話(プッシュ式)から「♯7119」へかけるとセンターにつながり、医師や看護師、相談員らが対応。自分で病院に行けるなどと判断された場合は、休日・夜間でも受け入れる最寄りの医療機関を紹介してもらえる。 搬送が必要と判断された場合、奈良県ではあらためて119番通報しなければならないが、大阪市では消防局の本部内にセンターが置かれ、センターへの電話で出動を手配。愛知県では各消防本部へのホットラインで手配してくれる。 センターが病院ごとの受け入れ状況を一元的に管理し、急病人を短時間で運べる利点も期待できる。愛知県では救急隊員が携帯メールを使って病院ごとの受け入れ情報を把握できるシステムをつくる。 センターと同様の取り組みでは、東京消防庁が07年から、同じ番号で「救急相談センター」を始め、医師と看護師が24時間対応している。08年の受付件数は1日当たり763件にのぼる。このうち85%は医療機関の問い合わせが占め、119番対応の負担軽減につながっているという。 総務省消防庁は当面、半年間で3億8千万円を投じて2県1市の窓口を整備。「モデル事業で効果や課題を整理し、全国に整えたい」としている。 ◇ 〈#7119〉 この番号にかけると、センターの看護師や救急救命士らが症状などを尋ねてくれ、より詳しい診断が必要な時は医師が相談に加わる。病院に急いで行く必要があれば、救急車での搬送が必要と教えてくれ、症状が軽く、自ら病院に行けると判断されれば、対象となる診療科のある最寄りの病院を紹介してくれる。
【ワシントン=勝田敏彦】米疾病対策センター(CDC)は8日、新型の豚インフルエンザに関する医療関係者向け新指針を発表した。薬剤耐性を持つ新型ウイルスが見つかっていることを考慮し、抗ウイルス薬タミフルやリレンザの発症を防ぐための予防投与は避けるよう求めた。 さらに、タミフルやリレンザの投与は、入院が必要なほど症状が悪い人や5歳未満の子ども、65歳以上の高齢者や妊婦らリスクが高い患者には勧められるとした。投与は発症から48時間以内が効果的で、場合によっては新型インフル感染が検査で確定する前でも投与するべきだと指摘した。
厚生労働省は8日、5日までの1週間で、インフルエンザが原因で休校や学年・学級閉鎖の措置を取った保育所や小中学・高校などが42都道府県の計772施設に上ったと発表した。前週の約2.8倍で、大半が新型インフルエンザとみられる。厚労省は「多くの自治体で新学期が始まったことから、今後さらに広がる可能性がある」という。 都道府県別では、東京127、大阪66、兵庫50、沖縄と千葉各45の順だった。
厚生労働省は8日、新型の豚インフルエンザワクチンについて接種開始時期や接種方法などの実施案を公表した。費用は全国一律とし、接種者や保護者が原則、実費で負担する方向。低所得者に対する負担の免除や軽減については「検討中」という。 この日開かれた都道府県などの担当者に対する説明会で厚労省が方針を示した。 接種回数は3〜4週間の間隔で2回、費用は不確定だが同省内には「8千円程度」との見通しもある。10月下旬以降、最優先予定のグループから始める。(1)医療従事者(2)妊婦、重症化リスクとなる持病がある人(3)1歳〜小学校入学前の小児(4)1歳未満の小児の両親、の順を想定。ワクチンの供給状況をみながら、健康な小学生、次いで健康な中高生や高齢者に広げる。 接種場所は、国の委託を受けた医療機関になるが、地域の医師会と市町村が決め、10月中旬に厚労省のウェブサイトなどで公表する予定。持病がある人や入院している人は現在、かかっている医療機関で受けることになる。 一方、季節性インフル用のワクチン接種も例年通りする方針。予防接種法で国が接種を勧めている65歳以上と60歳以上の持病がある人を対象に、供給を優先するよう医療現場に求める方針を示した。今季は新型用の生産のため、昨季の8割分にあたる2220万人分しかなく、季節性インフルが重症化しやすい高齢者での接種を確保するための措置だという。
総務省消防庁は8日、昨年1年間に全国で救急車が出動した件数は大幅に減ったものの、搬送者を病院に収容するまでにかかった時間は過去最悪だったと発表した。同庁は搬送時間について「医師不足や病院の経営難で受け入れ先が減った影響が出ているのでは」とみている。 救急車の出動件数は近年、増加を続け、救急車を病院へのタクシー代わりに使うなどの問題も指摘されていた。しかし、08年は全国で509万5千件で、過去最多だった前年に比べ19万4千件(3.7%)減った。搬送者数も22万5千人(4.6%)少ない467万7千人だった。件数、搬送者数とも、63年に統計を取り始めてから最も大幅な減少となった。同庁は「適正使用を呼びかけた効果が出てきた」とみている。 一方、通報から病院に収容されるまでの時間は平均34分30秒。過去最悪だった前年より1分余り遅くなった。
中外製薬は7日、インフルエンザ治療薬タミフルを来年3月までに1200万人分追加で生産、供給する計画を明らかにした。同社と卸業者が抱える国内の流通在庫の約200万人分(8月末現在)と合わせ、来年3月までに計約1400万人分が確保できる見通しだ。 例年の季節性インフルに加え、新型の豚インフルエンザがさらに流行することを見越した計画で、昨季に比べて3倍の供給量になる。今後、流行状況に合わせて、さらに追加を検討する。国内では、別の治療薬リレンザも含め政府と都道府県が計約4600万人分を備蓄している。 厚生労働省によれば、患者が絶えなかった8月中〜下旬に、タミフルを求める医療機関が増え、8月末の流通在庫は、政府が目安としている400万人分の半分程度になっていた。
新卒医師の臨床研修制度における来年度の募集定員は、全国で1万683人(新規病院分を除く)で、今年度より765人減ることが4日、厚生労働省の中間集計でわかった。若手を地方へ誘導しようと、都市部の定員枠を抑制したためで、04年度の制度導入以来、初めて1万1千人を下回る見通しだ。 同日午前、医道審議会の医師臨床研修部会で報告された。募集定員はこれまで、各病院の裁量に任されていたが、都市部への「医師偏在」を是正するため、来年度から都道府県別の定員枠を厳しく設定することになっている。 研修医を募集する臨床研修病院は今年度より63少ない、1051病院。都道府県別の定員は、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡の大都市がある6都府県の合計が4238人、それ以外の合計が6445人。 施設別では、大学病院の定員数は4966人。定員全体に占める割合は47%で、制度導入時の57%から年々減っていた割合が初めて下げ止まった。 都道府県別の定員枠が厳しく設定された背景には、医学部定員よりも研修先の定員が圧倒的に多い「売り手市場」が続き、「研修医の都市部への集中や大学病院離れを招き、地域医療崩壊の一因になっている」という指摘が地方や大学病院から上がっていたことがある。
病院勤務医の9%が、心身に疲れの兆候がみられ、医学的にメンタルヘルスの支援が必要な状態にある、という調査結果を2日、日本医師会が公表した。背景に、休日返上の長時間勤務など、勤務医の厳しい労働環境がある。 調査は、同会の勤務医の会員約8万人のうち、1万人(男性8千人、女性2千人)を対象に郵送で実施。3879人から回答を得た。 寝つきの悪さや、食欲の有無、集中力の低下など、精神的な疲れをみる16項目の回答を点数化した。その結果、9%が中程度以上の深刻な状態にあり、メンタルヘルスの支援が必要だと判定された。5%は1週間に何回も数分以上、自殺や死について考えていた。1%は「具体的な計画を立てたり、実際に死のうとしたりした」という。 1カ月の休日は4日以下が46%。8日以上は男性が18%、女性で32%。病院の規模が大きいほど、睡眠時間が短く、休日も少ない傾向だった。 53%は、自分の体調不良を「他人に相談しない」と答えた。理由として、「自分で対応できる」という自信や、「同僚に知られたくない」「自分が弱いと思われそう」と、孤立しがちな状況もうかがわせた。
【ニューヨーク】米司法省は2日、医薬品大手ファイザーが、違法な販売促進と公的な医療保険制度に対する詐欺行為があったことを認め、罰金と和解金を合わせ計23億ドル(約2100億円)を政府側に支払うことで合意したと発表した。 23億ドルの内訳は、罰金約13億ドルと和解金約10億ドル。司法省によると、罰金は米国刑事史上、最高額。また、製薬会社の詐欺行為をめぐる和解金としても最高額になるという。 発表によると、米国で製薬会社は、米食品医薬品局(FDA)に承認された医薬品の効能以外の目的での販促活動が禁じられているが、ファイザーは処方箋(せん)薬の消炎鎮痛剤ベクストラについて、承認されていない効能をうたいながら、違法に販促していたという。 また、ベクストラや抗菌剤ザイボックスなど四つの処方箋薬について、本来は公的医療保険が適用されないのに、不正に販促していたとされる。 米国では医療保険制度改革が佳境を迎えており、司法省は「今回の合意は、財源が限られ、医療費が高騰する中で司法省がいかに米国社会を助けられるかを示すものだ」とコメントしている。
日本さい帯血バンクネットワークは1日、東海大学内にある臍帯血(さいたいけつ)バンク(神奈川県伊勢原市)が血液疾患の移植用に提供された臍帯血入りの保存バッグを紛失した、と発表した。別の病院で待機していた患者の移植手術ができなくなっているという。 同バンクによると、紛失が発覚したのは8月下旬。採取した臍帯血をバッグに詰めて保存していたが、移植病院に搬送する際、紛失に気づいたという。現在もバッグは見つかっていない。 同バンクでは、移植を待っている患者と、移植病院に直接、謝罪。1日に東海大病院内に事故調査委員会を立ち上げた。同バンク代表の加藤俊一・東海大教授は「あってはならないことで心からおわびするとともに、事故原因の究明と予防策づくりを急ぎたい」と話している。 臍帯血移植は、血液の病気では、骨髄移植とともに有力な治療法として行われている。出産時にへその緒や胎盤から採れる臍帯血には、血球などのもとになる造血幹細胞が豊富に含まれており、白血病など血液のがんの治療に役立っている。
双日は、食べると生活習慣病予防に効果があるクロマグロの開発にめどをつけた。脂質の燃焼を進める成分をエサに混ぜて、魚の体内に蓄積する。長崎県にある子会社の養殖場で今秋から育成をはじめ11年秋の商品化を目指す。 開発に協力する東京海洋大学などの研究チームが、米ぬかに含まれる「オリザノール」という成分に、体内の脂肪をエネルギーに変えやすくする効果があることを発見。魚類は哺乳(ほにゅう)類などに比べオリザノールを体内に蓄積しやすいことも突き止めた。同成分には成長促進作用もあるため、養殖期間を2割程度短縮できる。こうした効果は、すでにブリやニジマスを使い確認しているという。 双日は昨秋からクロマグロの養殖をはじめた長崎県で、この秋から約5千匹の稚魚を対象にオリザノールを0.02%混ぜたエサを与える。11年秋には30キロほどに成長する。「生活習慣病を防ぐ効果」をうたった商品として市場に出す予定だという。
乳幼児の髄膜炎などを予防する肺炎球菌ワクチン「プレベナー」(ワイス社、東京都)が31日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会の部会で承認された。今後、上部に位置する分科会の審議を経て年内にも発売される見通し。同省によれば、海外90カ国・地域で承認されているが、国内は初めて。 成人向けの肺炎球菌ワクチンはすでに承認されているが、今回のワクチンは、免疫系が未成熟な幼い子どもに効くように作られた。国内の2〜6カ月の乳児181人を対象にした臨床試験では、ほぼ全員で抗体ができたという。 乳幼児の肺炎球菌による髄膜炎は極めて重い病気で、10〜30%が死亡し30%で後遺症が残るとされている。海外16カ国で国が推奨する「定期接種」の対象になっている。 同じく乳幼児に重い髄膜炎を起こす「インフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)」のワクチンは昨年ようやく日本で発売され、肺炎球菌ワクチンが残った課題となっていた。 一方、この日の部会で、子宮頸(けい)がんの予防ワクチン「サーバリックス」も承認された。
北海道は31日、新型インフルエンザに感染した40代の女性保健師が8月30日に死亡したと発表した。死因は急性心不全。女性は健康診断で高血圧症とされていたという。新型インフルエンザ感染が疑われる死亡例は全国で8例目。 女性は北海道利尻町在住の保健所職員。島内ではインフルエンザの集団感染が起きており、この女性は調査のため、患者や、その家族と対面していたという。29日に稚内市内の医療機関を受診し、インフルエンザA型陽性と診断された。タミフルを投与され、市内のホテルに1人で宿泊。翌日午後2時ごろ、ホテル従業員が意識のない女性を見つけ、医師が死亡を確認した。31日に遺伝子検査で新型インフルの感染が判明した。
厚生労働省は、若い女性を中心に増えている子宮頸(けい)がんを予防するワクチンについて、承認に向けた手続きに入った。31日午後の薬事・食品衛生審議会部会で審議され、異論がなければ承認されることになる。ワクチンは、すでに100カ国近くで使用されているが、承認されれば国内では初めてとなり、早ければ年内にも発売される。 ワクチンはグラクソ・スミスクライン社(東京都)が申請した「サーバリックス」。 子宮頸がんは子宮の入り口付近の頸部にできる。多くは、性行為によるヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)の感染が原因とみられている。 厚労省などによると、HPVは100種類以上の型があり、十数種類ががんを誘発するが、今回のワクチンはこのうち、最も頻度が高い16型、18型という2種類に対する感染予防に有効性が認められている。 接種対象は10歳以上の女性。子宮頸がんは、日本では30代後半から40代に多いが、最近は低年齢化が進んでいる。毎年約7千人が子宮頸がんと診断され、うち毎年約2500人が亡くなっている。
【ワシントン】血圧が高い中高年は、脳に何らかの損傷を受けて物忘れしやすい傾向にあることが米アラバマ大バーミングハム校の研究でわかった。高血圧は脳卒中や心臓病などの危険を増すことが知られているが、認知症予備群も生み出していることになる。25日発行の米神経学会誌ニューロロジーに論文が発表された。 研究チームは、脳卒中を起こしたことがない45歳以上の米国人約2万人の血圧データと、「今日は何日ですか?」といった認知機能テストの結果を分析。高血圧は「最高血圧140ミリHg以上か最低血圧90ミリHg以上、あるいは高血圧の薬を服用している」と定義されるが、最低血圧が10ミリHg上がるたびに、認知機能に障害が出る危険が7%ずつ上がることがわかった。 過去の実験研究では、最低血圧が高いと脳の細動脈が弱くなって神経細胞が損傷を受けることがわかっている。チームは「高血圧を治療することで、認知機能障害を防げる可能性がある」としている。 今回の研究では、最高血圧と認知機能の間には関連は見られなかった。 高齢者には高血圧と認知症が多くみられることから、関連があると考えられてきたが、これまで明確な結論は出ていなかった。
新型の豚インフルエンザのワクチン接種で副作用による被害が生じた場合について、舛添厚生労働相は26日、国による補償制度を検討していることを明らかにした。多くの人に接種してもらえるよう促すための取り組みだ。 厚労省は5300万人の接種を見込んでいる。ワクチン接種を巡る専門家との意見交換会で舛添氏は、「目の前の危機に対応する必要がある。特別立法も念頭に置いて作業したい」と述べた。 ワクチンには公費負担で受けられる「定期接種」や「臨時接種」と、全額自己負担の「任意接種」がある。厚労省は、新型インフルワクチンは任意接種とする意向。任意接種で副作用が起きた場合は医薬品医療機器総合機構を通じて給付金が支払われるが、国が補償する接種の場合、死亡一時金などの金額が数倍になる場合がある。季節性インフルエンザのワクチンでは、副作用の頻度は、100万人に2人程度という報告がある。 一方、意見交換会で舛添氏はワクチン接種の優先対象として、「妊婦、小児、基礎疾患のある人、医療従事者や学校の関係者なども入るのかなということもある」などと述べた。 厚労省は10月にも接種体制を整える予定で、それに間に合うよう9月にも接種の優先順位を決める方針だが、学校関係者や高齢者については、優先対象にすべきか意見が分かれる可能性がある。 日本小児科学会は、小児のなかでも、(1)小児がんや重症のぜんそくなど持病のある子(2)1〜6歳の就学前の子全員(3)1歳未満の子の保護者を優先させることを要望した。対象は約650万人。横田俊平会長は「経済的理由で不公平が出ないよう、無料化が必要」と指摘した。 輸入の際には、小児はけいれんなどを起こしやすいため、たとえ短い期間で対象は少数であっても、有効性と安全性を確かめる臨床試験(治験)を実施するよう求めた。 出席した日本産科婦人科学会の水上尚典・北大教授も、妊婦を優先対象とすべきだとしたうえで「補償制度を構築してほしい」と話した。
厚生労働省は26日、国内で12社が販売している抗うつ薬13製品について、服用で他人への攻撃性が増したり、激高したりする場合があるとして、注意喚起を促す安全情報を出した。成分の化学構造の特徴から「三環系」「四環系」などと呼ばれるタイプで、クロミプラミン塩酸塩など12成分。同省の指示で添付文書は改訂済み。 古いものは40年以上前から使われていて、同省によれば、年間約260万人が服用しているという。発売から今年5月までに、他人への敵意や攻撃性が増した105例のうち13例が、服用との因果関係が否定できなかったり、不明だったりした。 新しいタイプの抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)で、攻撃性が増す副作用が疑われる症例が相次いだことを受けて、同省は古くからの抗うつ薬についても改めて調べていた。
聖マリアンナ医科大学病院(川崎市宮前区)で、入院中の70歳代の男性患者がカテーテルの挿入ミスによる医療事故で死亡していたことが、25日分かった。 同病院医療安全管理室によると、心筋梗塞(こうそく)を患っていた男性に今月中旬、大動脈弁を人工弁に置き換える手術を行った。手術から5日後、別の医師が栄養補給のためにカテーテルを男性の首から挿入したところ、操作を誤ってカテーテルの先端が人工弁にあたり、弁が閉じなくなった。人工心肺を使う緊急処置をとったが、男性はその2日後に死亡したという。 同病院は24日に神奈川県警宮前署に事故を届け、ホームページでも公表している。
開業医や小規模病院の医師らでつくる3学会が、来年4月に合併することが23日、決まった。来年度中に、初期治療を担う能力を認定する制度を創設する。日本では、医師免許があれば麻酔科以外はどんな診療科でも開業できるため、質を担保する仕組みづくりが課題となっている。 合併するのは、日本プライマリ・ケア学会(会員数約4600人)と日本家庭医療学会(同約2千人)、日本総合診療医学会(同約1千人)で、合併後は「プライマリ・ケア連合学会」(仮称)になる。がんや内視鏡手術といった難度の高い技術が求められる医療ではなく、具合が悪いときにまずかかる初期治療を担う医師たちが加盟しており、多くは開業医だ。 欧米では、初期治療を担う医師は、決められた研修を受け、専門医試験を通る必要がある。一方、日本では、総合病院で長年、心臓外科の専門医としてやってきた医師が突然、内科や整形外科を開業することもできる。開業医の質の担保の仕組みが乏しいことが患者の大病院志向に拍車をかけ、各地の総合病院に軽症患者が押しかける要因とみられている。 新たに創設する認定制度について、日本家庭医療学会の山田隆司代表理事は「とにかく患者さんにわかりやすい専門医資格にしたい」と話している。
下痢を起こす腸内細菌の一種が、大腸のがん化を促進することを、米ジョンズホプキンス大のグループがマウスの実験で明らかにした。胃がんでは、胃の中にいるピロリ菌が原因の一つとされているが、この腸内細菌も、似たような役割を果たしている可能性を示している。23日付米医学誌ネイチャー・メディシンに発表される。 バクテロイデス・フラギリスという、人の腸内に常在している腸内細菌の一種。人によっては何の症状も示さないが、下痢を起こすことで知られている。毒素を作るタイプと作らないタイプがあり、グループは大腸がんを自然発生しやすくしたマウスに、それぞれを感染させて観察した。 すると、毒素型を感染させたマウスは下痢になり、大腸に炎症と腫瘍(しゅよう)が1週間以内にでき、がん化が早まった。非毒素型は下痢を起こさず、大腸の炎症も腫瘍も認められなかった。菌の毒素が免疫細胞を活性化させて炎症を起こし、がん化を促進しているとみられる。 また、毒素型を感染させたマウスは、炎症反応の引き金となる信号を送るたんぱく質が増えていた。このたんぱく質が増えると、特定の免疫細胞が活性化されてIL17という因子が作られることが、もともと知られている。IL17を働かなくさせたマウスで同様の実験をすると、腫瘍ができにくくなったことから、こうした因子を抑えることなどで大腸がんの治療につながる可能性も明らかになった。 今回の成果について、吉村昭彦・慶応大医学部教授(微生物・免疫学)は「人の大腸がんとの関係は今後
75歳以上が入る後期高齢者医療制度(後期医療)の09年度の保険料は、全国平均で約6万2千円と前年度より3千円下がったと、厚生労働省が18日発表した。都道府県別では、最も高いのが神奈川の8万5890円、最低は秋田の3万7108円で、2.3倍の差があった。 後期医療の財源は、加入者の保険料や税金、現役世代の負担金。保険料は都道府県ごとに設定される。 厚労省によると、09年度の全国平均額が前年度を下回ったのは、加入者の所得が下がったことや、低所得者に対する保険料の軽減率が引き上げられたことなどが影響しているという。 都道府県別では、神奈川に次いで平均保険料が高いのは東京8万4274円、大阪7万6833円。秋田の次に低いのは岩手3万8270円、山形3万8782円となっている。
沖縄県によると、新型インフルエンザに感染した同県宜野湾市の男性(57)が死亡した。心臓病を患い、腎臓の人工透析を受けていたという。新型インフルで死者が出たのは国内では初めて。
猫から人にうつり呼吸困難を引き起こす新しい病気にかかる人がここ数年、相次いでいる。世界初の患者を報告した英国では死者も出ている。日本では届け出義務はなく、医師や獣医師でさえほとんど知らない。厚生労働省は潜在患者は多いとみて、先月22日に都道府県などに注意を呼びかける文書を出した。 今年1月、東京に住む50代の女性が、食事ができないほどのどが痛く、血の混じった鼻水が止まらなくなり、東京医科歯科大病院耳鼻科を受診した。診察すると、のどと鼻の奥に黄白色の塊がべっとりとこびりついていた。 この塊から、コリネバクテリウム・ウルセランスという細菌が見つかった。感染症法で2類感染症に指定されているジフテリアと同じ毒素を作る菌で、風邪症状に始まり、重症になると呼吸困難に陥り、死ぬこともある。 大学から連絡を受けた国立感染症研究所が調査し、この女性の家にしばしば立ち寄る5匹の野良猫のうち、2匹の鼻水から遺伝子タイプが同じ菌を見つけた。 英保健当局の統計によると、英国での感染者は86 ̄07年の間に死者2人を含む56人。仏、伊、米などでも報告例がある。日本では01年に千葉県で初報告があり、これまで計6人いる。1人は重症で集中治療室に入院したが、他は比較的軽症で、死者はいない。全員50代で、3人は猫を多数飼っていたり野良猫と接したりしていた。 ウルセランス菌は、抗菌薬が効く。1月に発病した東京の女性も4月にはすっかり治った。発病猫の鼻水やくしゃみのしぶきから感染する。人から人へ感染した報告はない。猫だけではない。大阪府公衆衛生研究所の調査では、犬から検出された例もある。猫や犬は屋外で感染すると考えられているが、詳しいことは分かっていない。 感染研細菌2部の高橋元秀室長は「飼っている猫や犬が風邪のような症状を起こしたら、すぐ獣医師に診てもらいましょう」と助言する。
米疾病対策センター(CDC)は6日付の週報に、新型の豚インフルエンザウイルス感染を調べる簡易検査では、本来、陽性と判定されるべき検体のうち6割を陰性と判断してしまう場合があるとする実験結果を掲載した。 簡易検査で陰性と判定されると、詳しい遺伝子検査(PCR検査)は行われないことが多いため、かなりの感染者が見逃される可能性がある。 CDCは今年4 ̄5月に患者から採取され、PCR検査で新型ウイルス感染がわかった45人分の検体を、市販の簡易検査キット3種類を使って判定した。 その結果、新型ウイルス感染を見逃すケースが31 ̄60%に上った。特にウイルス量が少ない検体では精度が低かった。一方、季節性ウイルス感染がわかっている20人分の検体を使った同じ実験では、見逃しは17 ̄40%だった。 日本では、少なくともこれらのうち2種類を含む16種類の簡易検査キットが使用されている。 簡易検査キットは、鼻やのどから採取した検体から、A型またはB型のインフルエンザウイルスの抗原を検出する。結果が出るまで数時間かかるPCR検査と違い、15分ほどで済む利点があるが、感染直後などに見逃しが起きるという指摘があった。
三重県教育委員会は4日、7月29日から今月2日まで三重県内で開かれていた第33回全国高校総合文化祭(総文祭)に参加した愛媛、三重県の高校生計4人が、新型インフルエンザに感染したと発表した。また、岐阜県も同日、総文祭に参加した高校生2人が新型インフルに感染したと発表した。 感染が明らかになったのは、愛媛県立内子高校郷土芸能部の3人、三重県立上野高校ギターマンドリン部の1人、岐阜県関市立関商工高の吹奏楽部の2人。 いずれも総文祭終了後に発熱などの症状を訴え、内子高と上野高の生徒は現在、自宅で療養している。関商工高の生徒も容体は安定している。 内子高の生徒は郷土芸能部門に参加、上野高の生徒は器楽・管弦楽部門の運営を手伝っていた。関商工高の生徒はマーチングバンド・バトントワリング部門に参加した。郷土芸能部門が開かれた伊賀市文化会館には3日間で延べ約9千人、器楽・管弦楽部門が開かれた桑名市民会館では2日間で延べ約2千人が来場している。
出産前後に心臓病を突然発症する「周産期心筋症」が2年で約100人に発生しており、亡くなった人も3人いることが、国立循環器病センター(大阪府)を中心とする厚生労働省研究班による初の全国的な実態調査の中間報告で明らかになった。2万人に1人程度の発生頻度で、研究班は今後、早期発見に向けた分析を進める。 周産期心筋症は心臓のポンプ機能が低下する。原因ははっきりしていない。海外の研究では半数は回復するが、半数は出産後も心機能の低下など後遺症が残るとされる。 解析した国循センターの神谷千津子医師によると、研究班は、全国の周産期、救命救急などの専門医認定施設(計1478施設)を調べ、07 ̄08年では、約100人の治療例が集まった。国内で出産する人は年間約100万人。調査対象の施設で、国内の周産期心筋症例をほぼ拾い出せると考えられ、現時点で2万人に1人の発生割合になる。昨年、脳出血した妊婦が複数の施設に救急搬送を断られ亡くなったことが問題になったが、妊産婦の脳血管障害(1万人に1人)に匹敵する割合だという。 詳細な解析が終わったのはこのうち5月末までに集めた22 ̄43歳の73人。発症時の症状(複数回答)では呼吸困難が60人と最も多く、せき29人、むくみ22人、全身のだるさ15人が続いた。重症例はショック症状や意識障害なども伴い、発症後まもなく3人が亡くなっていた。発症時期は産後が54人と7割以上。なかでも、産後1週間以上たってからの発症は半数を占めた。妊娠中の発症は18人だった。 慣れない医療機関が妊娠、出産に関連した心筋症と思わず、別の病気と考えて処置が遅れる恐れもある。 全体の4割近い27人が妊娠高血圧症候群を合併。多胎妊娠が11人、早産を防ぐ薬物治療経験がある人も10人いた。一方で合併症も既往歴もない人で16人が発症していた。 出産の高齢化や生殖補助医療に伴う多胎妊娠が増える傾向にある。研究班はこうした人たちは心筋症が起こるリスクが高い可能性があるとみて、さらに分析する。
緑茶に含まれるカテキンを加工してインフルエンザ治療薬に応用する技術を、大阪大学と横浜市衛生研究所の共同チームが開発した。季節性インフルエンザや鳥インフルエンザで効果が確認された。感染を防ぐ作用もあるため、鼻やのどに噴霧する予防薬への応用も期待できるという。製薬会社と実用化を目指す。 開発に利用したのは、緑茶に多く含まれているエピガロカテキンガレート(EGCG)というカテキンの一種。カテキンは茶の渋み成分で、EGCGがウイルスの働きを抑えるのは以前から知られていた。だが、そのまま飲むと、体内ですぐに分解され、効果がなくなってしまう。 このため、研究チームは、体内での分解、代謝を抑える作用のある脂肪酸と合成することで、EGCGが分解されずに、ウイルスの感染や増殖を抑える技術を開発した。 この加工したEGCGを季節性インフルエンザや鳥インフルエンザのウイルスに混ぜ合わせて、イヌの腎臓細胞にふりかけて感染力を調べた。すると、治療薬タミフルよりも約100倍、感染を抑える効果があった。鶏の有精卵を使った増殖実験でも、何もしない卵12個では中のヒナが70時間で4割、164時間で全数が死亡したが、加工したEGCGを投与した卵12個では全数が生き残った。 作用を調べると、ウイルスが細胞に侵入するのを防いだり、仮に侵入してもウイルスの遺伝子が増殖しないようにしたりしていた。 主任研究者の大阪大学の開発邦宏助教(有機化学)が08年に特許を出願。製薬会社など数社から、治療薬やマスク、スプレーなどを商品化したいとの引き合いが来ており、現在交渉中だ。数年内の実現を目指すという。 開発さんは「緑茶を飲んでも効果はないが、開発した成分は高い効果があった。作用からみれば、新型インフルエンザにも効果が期待できる。茶葉から大量に抽出でき、安価で副作用も少ない」と話す。
世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、日焼けサロンやスポーツジムで使われ、人工的に紫外線を出す「日焼けマシン」の使用は発がんリスクを確実に高めるとして、発がんリスク分類でもっとも危険性の高い「グループ1」に引き上げた。 IARCは、日焼けマシンと皮膚がん(メラノーマ)との関係を調べた19論文を分析。30歳未満で日焼けマシンを使った経験のある人は、使ったことのない人より75%もリスクが高いことがわかった。日焼けマシンの使用による、眼球の色素細胞にできるがんのリスクも高かった。 従来、紫外線のうちB紫外線(UVB)にだけ発がん性があると考えられていたが、A紫外線(UVA)もUVBと同じように発がん性があることもわかったという。地上に降り注ぐ紫外線の95%がUVAだ。 日焼けマシンは5段階の発がんリスク分類で危険性が2番目に高いグループだった。危険性が一番高いグループにはアスベストやたばこ、X線、太陽光などがある。 紫外線に詳しい名古屋市立大の森田明理(あきみち)教授(皮膚科)は、「黄色人種は白人に比べて紫外線によるがんのリスクは数分の1だとされるが、油断はできない。屋外で浴びる紫外線の量が、欧米の多くの都市よりもかなり多いからだ。外出のときは、皮膚が赤くなるような日焼けをしないように、日焼け止めや日傘で予防すべきだ」と警告する。
確立した治療法がない特殊なタイプの糖尿病患者を、胃の中にいるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を除くだけで完治させることに、東北大医学系研究科の片桐秀樹教授と岡芳知教授らのチームが成功した。胃潰瘍(かいよう)や胃がんの原因の一つとされるピロリ菌は、一般に糖尿病には関係ないとみられていた。英医学誌ランセットに発表した。 この患者は男性で、血糖値を下げるインスリンの働きを妨害する抗体を自分でつくってしまう「B型インスリン抵抗症」という糖尿病を発症していた。治療中にピロリ菌が見つかり、投薬して除菌した。すると4カ月ほどで抗体が消え、糖尿病の指標も正常になった。1年後も症状は現れず完治と判断された。 ピロリ菌感染で、抗体をつくる免疫機構に異常が起きた可能性がある。片桐教授は「この糖尿病は数万 ̄数千人に1人と推測される。除菌が根治の治療法になれば福音だ」と話す。
診療報酬明細書(レセプト)のオンライン請求が今春から義務化された400床未満の病院と薬局の一部について、厚生労働省は15日、少なくとも725病院と1352薬局が、6月請求時点でもオンライン化していなかったと公表した。 400床以上の大規模病院のうち、IT化が一定程度進んでいるところは昨春からオンライン請求が義務化され、全772病院で実施されているという。今年4月から義務化されたのはIT化が進んでいる400床未満の病院と薬局だが、厚労省は対象数を現時点では把握できていない。 レセプトは医療費の請求書。今回は、社会保険診療報酬支払基金への6月請求分について調査した。 政府は病院や薬局などを対象にオンライン請求の義務化を段階的に実施。11年度までに原則義務化するが、オンライン化は全体の25%(5月請求分)にとどまっている。
医療法人「徳洲会」は15日、患者から摘出した腎臓を別の患者に移植する「病気腎移植」を、臨床研究として再開すると発表した。提供者が出次第、7月中にも実施する。徳洲会グループ宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らによる病気腎移植が06年に発覚し、医学的な妥当性がなかったなどと指摘され、自粛していた。 同会によると、同会が外部の専門家にも呼びかけて作った共同倫理委員会が15日、東京西徳洲会病院(東京都昭島市)と宇和島徳洲会病院の病気腎移植の計画を承認した。 同会の病院や協力する7病院から提供患者を募り、院内の倫理委員会で審査し、親族以外に移植する。移植するのはがんの直径が4センチ以下の腎臓に限る。移植後1年間、患者の容体を観察する。 病気腎移植推進を掲げる愛媛県のNPO法人のネットワークに登録された患者の中で、移植を受ける優先順位を決めておき、提供者が出たら専門家らの検討委員会が患者を選ぶ。万波医師も移植にかかわる。親族間の移植については6月の共同倫理委員会ですでに承認したという。 同会の能宗(のうそう)克行事務総長は「5年以内に第三者間、親族間でそれぞれ5例実施し、定着を目指す」と述べた。 万波医師らの移植では、患者への説明が不十分だったことなども問題とされた。 厚生労働省は07年7月、臓器移植法の運用指針を改正、臨床研究の場合を除き病気腎移植を原則禁止した。同省が今年1月、病気腎の臨床研究は「がんを含め対象疾患については制限しない」との見解を示し、同会は臨床研究としての再開を検討していた。
60歳以上の高齢者の3 ̄4割は新型の豚インフルエンザウイルスに対する抗体を持っていて何らかの免疫があるという調査が日米で報告されていたが、60 ̄80歳代には抗体がなく、安心できないことがわかった。90歳代の人には抗体があった。サルなどの動物実験で、新型インフルエンザウイルスは季節性インフルより肺など体内で広く増殖することも確かめられた。13日、英科学誌ネイチャー電子版に発表された。 東京大医科学研究所の河岡義裕教授のチームが、新潟大や永寿総合病院(東京都台東区)、滋賀医科大などと共同で研究した。 国立感染症研究所や米疾病対策センターがこれまで、60歳以上の3 ̄4割は、新型インフルの抗体を持っていると発表していた。 河岡さんたちは、99年と今年4月に採取した250人分の血清を調べた。いずれの年でも、18 ̄19年に世界的大流行したスペイン風邪以前に生まれた90歳代以上の人の血清では、新型インフルへの抗体を持っている血清が多かった。一方、20年以降に生まれたそれ以下の年代の血清では、抗体がある人はほとんどいなかった。 河岡さんたちは、カニクイザル6匹に新型インフルを感染させ、他の6匹には季節性インフルを感染させた後、3日後の肺や気道などのウイルス量を調べた。どちらのウイルスも鼻腔(びくう)や気道では増えていたが、新型の方が増殖量が多かった。 一方、肺では、新型はあらゆる部位で増殖していたのに対し、季節性は、右肺の一部でしか増えておらず、増殖量が1万倍違うサルもいた。 河岡さんは「新型インフルは季節性と同じだという人がいるが、実際は肺などでより増殖し、それが重症化につながる恐れもある。秋以降の新型インフル流行に向け油断しないで備えるべきだ」という。
北九州市は9日、市立若松病院(若松区)で3月、同区の80代男性患者に鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)の手術をした際に患者の胃液が逆流して肺に入り、16日後に男性が死亡したと発表した。麻酔医が患者の胃の内容物の確認を怠ったことが原因の医療ミスだったとして、市病院局は麻酔医を口頭で厳重注意としたという。 同局の説明によると、男性は3月11日午後、開業医の紹介で同病院を受診。エックス線検査などで鼠径ヘルニアによる腸閉塞(へいそく)が起きていることがわかり、午後4時過ぎから緊急の開腹手術が行われた。手術開始から約30分後、口の中に胃液や胆汁が逆流してきていることに執刀医が気づいて処置したが、男性は胃液など強酸性の液体が肺に入ったことによる誤嚥(ごえん)性肺炎のため同27日に死亡した。 天野拓哉・病院長を委員長とする事故調査委員会が調査したところ、麻酔医が手術前にエックス線写真で胃に胃液などが残っていることを確認せず、適切ではない麻酔をしたことがミスの原因と判断した。麻酔医は50代の男性常勤医。当日は午前9時から別の2件の手術にもかかわっており、「緊急手術だったため、患者のエックス線写真を見る時間がなかった」と話しているという。 天野病院長はすでに遺族に謝罪し、損害賠償について話し合っているという。
厚さが市販のばんそうこうの10万分の1という超薄膜で肺などの軟らかい組織を接着できる手術用「ナノばんそうこう」を早稲田大、防衛医大などのグループが開発した。液晶などの基板技術に使うナノテクを自然分解性の高い生体材料に応用した。独専門誌アドバンスド・ファンクショナル・マテリアルズ(電子版)に発表した。 カニと昆布から抽出した2種類の糖類を使った。それぞれの糖類を、ほぼ1分子分にあたる数ナノメートル(ナノは10億分の1)の厚さに交互に積み重ね、約40層の薄膜シートを作った。2種類の糖類は電気的に引き合う性質があり頑丈。厚さ75ナノメートルと超薄膜で、組織にぴったりとくっつくため、強い接着力が得られるという。 イヌを使った実験では、肺の周囲を覆う胸膜にできた直径約6ミリの穴を、2センチ角のナノばんそうこうで覆うと、7日後には覆った傷口に血管ができはじめ、30日後にはきれいに治った。 従来の手術で使われてきた血液成分を使った生体のりでは、治療部分に癒着が起きやすい欠点があったが、傷口に密着するナノばんそうこうで癒着はおきなかった。 グループでは、さらに安全性の検証を続け、3年後の治験開始を目指す。開発した早稲田大理工学術院の武岡真司教授は「胃や肝臓など、軟らかく縫いにくい臓器や出血しやすい臓器に応用すれば、手術時間の短縮にもつながる」と話している。
新型の豚インフルエンザについて、日本人の一部の高齢者の血清から免疫反応が見つかった。新型インフルに似たウイルスに過去に感染した可能性があるという。国立感染症研究所の小田切孝人・インフルエンザウイルス研究センター第一室長が、東京都内で5日まであった研究者の交流会で明らかにした。 これまで米疾病対策センター(CDC)が、1957年以前に生まれた人の一部が新型インフルに何らかの免疫を持っている可能性を指摘していたが、日本人での研究報告は初めてだ。 小田切さんらは今回の新型インフルの発生前に医療機関が採取、保存していた60歳代から100歳代の30人の血清の免疫反応を調べた。すると、このうち4割の血清から新型インフルに反応する抗体が見つかった。 新型に似たウイルスに以前感染し、抗体をもった可能性があるという。ただ、新型の感染を防げる反応かどうかはわからないとしている。 小田切さんらは現在の季節性インフル用のワクチン接種後の人の血清も調べた。しかし、新型に対する抗体反応は上がらず、感染予防などの効果はなさそうだとしている。 もし高齢者に免疫があれば、新型用のワクチンができたとき、若い人に優先的に接種する対応が考えられる。しかし、今回見つかった高齢者の免疫反応は有効性がわからないうえ、調査人数もごく限られている。このため、感染研は今後、千人規模の調査をする計画だ。小な細胞は、がん細胞がそれを取り込んでしまうよう表面が偽装されている。治療は2段階で、最初に「トロイの木馬」でがん細胞の薬に対する抵抗力を失わせ、第2波の抗がん剤で殺す。 同社の研究者らは「ヒトのさまざまながん細胞を移植したネズミでの実験では、100%の生存率が得られた」と効果を強調、近く臨床試験を開始するという。今後、ヒトへの有効性や安全性が確認されれば、化学療法でがん細胞が薬剤への耐性を持つ問題を回避するとともに、副作用も軽減できると期待されている。
オーストラリアの研究者らがこのほど、細菌から作った薬剤入りの微小な細胞を「トロイの木馬」として、がん細胞に直接送り込んで殺す手法を開発したと発表した。ネズミなどの動物実験では明確な効果を上げており、がん治療に新たな道を開く可能性がある。 開発したのは豪バイオ技術ベンチャー、エンジェネイック社の研究者ら。薬剤入りの微小な細胞は、がん細胞がそれを取り込んでしまうよう表面が偽装されている。治療は2段階で、最初に「トロイの木馬」でがん細胞の薬に対する抵抗力を失わせ、第2波の抗がん剤で殺す。 同社の研究者らは「ヒトのさまざまながん細胞を移植したネズミでの実験では、100%の生存率が得られた」と効果を強調、近く臨床試験を開始するという。今後、ヒトへの有効性や安全性が確認されれば、化学療法でがん細胞が薬剤への耐性を持つ問題を回避するとともに、副作用も軽減できると期待されている
厚生労働省は2日、特定の年齢の女性を対象にした子宮頸(けい)がんと乳がんの無料検診を、来年度も続けていく方針を固めた。今年度の補正予算で認められた約216億円と同規模の額を、来年度の予算要求に盛り込む予定だ。来年度も続ける理由について、厚労省がん対策推進室は「年齢間の不公平感を少しでも減らすため」と説明している。 国が全額補助する子宮頸がんと乳がんの無料検診は、今年度の補正予算に初めて盛り込まれた。対象者は市区町村から無料クーポンを受け取り、検診機関で受診する。対象となる年齢は今年度と同様に、子宮頸がんが20、25、30、35、40歳、乳がんが40、45、50、55、60歳。子宮頸がんは約400万人程度、乳がんは約450万人程度が対象となる見込みだ。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||