第一三共は1日、抗インフルエンザウイルス治療薬「CS―8958」の製造販売について、厚生労働省に承認申請手続きを行った、と発表した。A型とB型のインフルエンザに効く成人と小児向けの吸入薬で、2010年度中の発売を目指す。 タミフルは1日2回、5日間服用する必要があるが、第一三共の薬は1回吸入すれば効くのが特徴という。第一三共はインフルの予防薬としての試験も実施中で、10年度に追加申請する方針。 製造販売が承認されれば、国内で開発された国産の抗インフル薬としては、塩野義製薬が1月に発売した「ラピアクタ(一般名ペラミビル)」に次いで2件目となる。
仕事や人間関係で落ち込んだり、不安を感じたりしたときに、うつ病にならないための技術を学ぶウェブサイトのサービスが始まる。考え方や行動を修正することで心を軽くする「認知行動療法」の手法を用いる。国内では例のない本格的サイトになるが、欧米ではこの手法を利用したネット療法が広がっている。 うつ病治療を受けている人は100万人を超え、生涯で15人に1人がかかるとされている。認知行動療法は、精神療法の中で高い効果が実証された療法で、英国では軽いうつ病患者に対して国がコンピューターによる療法を薦めている。日本でも厚生労働省が、専門家の養成や診療報酬の点数化に向け動いている。 「うつ・不安ネット」(http://www.cbtjp.net/)。サイト運営会社ウーマンウエーブ(東京)が31日に既存のこのサイトで一部サービスを始め、本格運用は4月。当面は無料で2月下旬以降に課金する。 例えば、「上司が自分だけにつらく当たる」と悩む人が、そのときの気持ちやそう考える根拠などを書き込むと、この文章をもとに、心が軽くなる思考法が自動返信される。活動記録をつけながら、気持ちが楽になる行動や落ち込みやすい心の癖の改善法などを学ぶ。 サイトを監修した精神科医の大野裕・慶応義塾大教授によると、先行する携帯サイトの利用者486人を調べた結果、20〜30代の女性が多く、恋愛や職場の人間関係の悩みが半数近くを占めた。約8割に改善がみられたという。
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会の医薬品部会は28日、抗がん剤「ジェムザール」(一般名・ゲムシタビン塩酸塩、日本イーライリリー社)について、再発・進行乳がんへの適応拡大を認めた。海外の多くの国は乳がんで使えるが、日本では、肺がんや胆道がんなどでしか認められていなかった。 今回のように、海外で承認された薬が日本で承認されるまでの時間差を「ドラッグラグ」と呼び、近年、解消を求める声が強まっている。
大阪府は28日、結核感染を調べる血液検査「QFT検査」で、府の4保健所が陽性者を陰性、陰性者を陽性と誤判定していた可能性があると発表した。本来使うべきではない培養プレートを使ったのが原因で、誤った手法による検査は昨年末までで5526人に上る。府は、うち2222人の中には誤判定が含まれているとみている。1月に誤った手法で検査した131人の結果は分析中という。 府保健医療室によると、府は2006年度にQFT検査を導入。保健所職員らの知識が乏しく、当初から本来使うべき「組織培養プレート」でなく、滅菌レベルの低い「微生物培養プレート」を使用し、今年1月20日まで誤った手法で検査してきた。 昨年10月に府北部の病院から検査結果に疑問の声が寄せられ、府が調査。府が使ったプレートでは正確に判定できないことが分かった。この間、陰性と判定されて発症した人は3人いるという。 府は27日に検査ミスをした全員におわびの文書を郵送。誤判定の可能性がある2222人には、健康状態を確認し、必要があればレントゲン検査や再度のQFT検査をするという。
全国健康保険協会は27日、中小企業の従業員らが加入する協会けんぽ(旧政府管掌健康保険)の新年度の保険料率を決定した。都道府県ごとに料率は異なるが、全都道府県で1ポイント以上アップした。全国平均は過去最高の9.34%。現行の平均8.2%から大幅な引き上げとなる。不況により保険料収入が大幅に落ち込んだことが影響した。 新しい保険料率は、この日の同協会運営委員会で了承され、厚生労働相の認可を受けて4月納付分から適用される。加入者数は約3500万人。平均的な年収(370万円)の場合、本人負担は年間2万1090円増える。 保険料率が最も高いのは北海道の9.42%で、今年度より1.16ポイント上がる。続いて佐賀の9.41%、香川、福岡の9.40%と続く。 急激な料率アップで、大幅な負担増となるのを避ける措置により、地域間格差は是正されているが、北海道と最も低い長野県(9.26%)との差は0.16ポイントで、現行の0.11ポイントより拡大。平均的な月収(28万円)では、月額150円の差が220円に広がる。 協会けんぽの財政は、金融危機など深刻な不況の影響で賃金水準が下がったことで、急激に悪化した。2009年度の赤字見込みは、積立金を崩しても約4500億円に上る。このため、政府は保険料率の急上昇を抑えるため、2010年度予算案に約600億円を計上した。これらに加え、大企業の従業員らが加入する健康保険組合と公務員らが入る共済組合に高齢者医療に関する負担を肩代わりさせ、現在13%の国庫補助率を16.4%に上げる。それでも、大幅な料率引き上げは避けられなかった。 今後も保険料率の引き上げが避けられない状況は変わらず、この日の運営委員会では12年度には保険料率が9.9%〜10.2%になるとの試算が示された。保険料率の上限は10%と法律で規定されており、厚労省は上限を引き上げる法改正も検討している。 また、運営委員会は「国庫補助率の更なる引き上げを含めた抜本的な対策が講じられるよう国などに積極的に働きかけていく」ことを協会に求めることも決めた。
【ワシントン】医療器具メーカー「ニプロ」(本社・大阪)が製造した輸液用の針で、人体に悪影響を及ぼす恐れのある製品があるとして、米食品医薬品局(FDA)は26日、該当品の使用を直ちにやめるよう医療関係者に通知したと発表した。具体的な健康被害は報告されていないが、最悪の場合、患者が死亡することもあり得る最も深刻な「クラス1」の基準に分類した。 厚生労働省によると、FDAの措置は、使用条件を通常より厳しくした場合の検査結果を受けたものとしているが、FDAが重大視したことから、ニプロに自主回収を含めた対応を要請。これを受け、ニプロは海外流通分も含めて回収する方針を決めた。 回収されるのは「ヒューバー針」と呼ばれ、がんの化学療法などで点滴を繰り返す患者らに使われる。FDAによると、患者の体内に、輸液用の針を刺す器具をあらかじめ埋め込む仕組みで、針を出し入れする際に器具のシリコーン樹脂がはがれ、患者の血管に詰まる恐れがある。 ニプロによると、該当の製品名はコアレスニードル、コアレスニードルセット、セーフタッチコアレスニードルセットの3種。日米のほか、カナダ、イタリア、ドイツ、イスラエルでも販売している。 厚生労働省によると、ニプロ製のヒューバー針の国内占有率は6割以上に上る。 FDAによると、2007年1月から09年8月に製造されたもので、米国内では別の企業が販売し、200万本以上が出ている。09年10月に日本国内の工場で製品の検査をしたところ、針の形などに問題があり、60〜72%の割合で接続部分の樹脂がはがれることがわかった。
臓器移植法の改正で今月17日から親族への優先提供が認められることになったが、日本臓器移植ネットワーク(移植ネット)のサイトに親族優先提供の希望を登録した人は24日までに2670人になった。厚生労働省が25日、同法の運用を検討する臓器移植委員会で明らかにした。 移植ネットは今月15日から、臓器提供の意思表示を登録するサイト(http://www.jotnw.or.jp)で、親族優先希望の登録受け付けも開始。同日以降、新たに登録した700人のうち4分の1の170人が親族優先を希望した。また、以前から登録していた約5万3400人のうち、24日までの10日間に、約2500人が親族優先を追加登録したという。 登録は医学的な条件などを満たせば、移植が必要な親や子ども、配偶者に優先提供できる仕組み。意思表示カードの余白に優先提供の意思を記す方法も認められる。
愛媛県立新居浜病院(新居浜市)は24日、胸に水がたまる胸水貯留(きょうすいちょりゅう)で入院した同県四国中央市の80代の男性患者に誤って別の患者の薬を投与し、23日にこの男性が死亡した、と発表した。病院側は、医師と看護師が薬の袋などに書かれていた患者名の確認を怠ったことが原因とみている。病院から届けを受けた愛媛県警は、業務上過失致死の疑いもあるとみて遺体を司法解剖し、死因を調べる。 同病院によると、亡くなった男性は21日、胸の不調を訴えて来院し、胸水貯留と診断されて検査入院した。入院前から別の病院の泌尿器科で前立腺の投薬治療を受けており、新居浜病院は薬の管理のため、前立腺の薬を看護師に届けるよう伝えた。 この後、別の入院患者の家族がナースステーションに預けた血圧を下げる降圧剤と血を固まりにくくする抗血小板薬を、看護師が男性の薬と勘違い。主治医も薬の袋や添付されていた薬剤情報に記された患者名を確認しなかった。 病院は21日夕と22日朝、男性に降圧剤と抗血小板薬を飲ませた。男性は22日午後2時ごろ、胸の不調を訴えるとともに、入院時に140台だった収縮期血圧が60台まで低下。同6時過ぎに心肺停止状態となり、翌23日午後0時45分ごろ死亡が確認された。 同病院は、投薬ミスと死亡の関係について、男性に出血が認められなかったことから抗血小板薬が死因になったとは考えにくく、急激な血圧の低下が起きたことから、降圧剤による影響ではないかとみている。ただ、他の疾患の可能性もあるとしている。 同病院の事情聴取に対し、看護師は「薬の袋や薬剤情報の名前を確認しなかった」、主治医は「入院時に男性患者の血圧が高かったため、降圧剤の投与を疑わなかった」などと話しているという。 記者会見した酒井堅(けん)院長は「誤った投薬がなければ患者は死に至らなかったと考えられる。深くおわびしたい」と語り、陳謝した。
「高次脳機能障害を理解する 私たちにできること」講演会(朝日新聞厚生文化事業団、朝日新聞社主催)が23日、東京・有楽町朝日ホールで開かれ、突然、交通事故などで脳を損傷した人たちをめぐる話に満員の約700人が聴き入った。 帝京平成大教授の中島恵子さんが「高次脳機能障害の理解」と題して講演、自転車事故がもとで新しいことが覚えられない障害を持った青年と周囲との交流を描いた映画「ガチ☆ボーイ」のメーキングビデオが上映された。続いて、北京パラリンピック自転車競技の金メダリスト石井雅史さんと国立成育医療センター医師の橋本圭司さんが対談。石井さんは当事者の立場から理解を訴えた。 同講演会は2月28日、大阪市西区の大阪YMCA会館でも開かれる。
大阪府立急性期・総合医療センター(大阪市)に頭部外傷で入院中の40代男性が23日、臓器移植法に基づく脳死と判定された、と日本臓器移植ネットワークが発表した。同日午後から臓器の摘出を始め、24日までに移植を終える予定。1997年10月の法施行以来、86例目となる。 ネットワークによると、心臓は大阪大病院で10代男性、両肺は福岡大病院で20代男性、肝臓は東京大病院で30代女性、膵臓(すいぞう)と腎臓は九州大病院で40代男性、もう一つの腎臓はNTT西日本大阪病院で50代女性に、小腸は京都大病院で10代男性に移植される見通し。
新型の豚インフルエンザの輸入ワクチンをめぐり、初回出荷分に対する医療機関の納入希望は山梨県の200回分にとどまることが22日、厚生労働省の全国調査でわかった。政府は今後、欧州2社製のワクチンを計9900万回分輸入する予定だが、現状では国産ワクチンもだぶついており、大幅に余る可能性が出ている。 2社のワクチンは今月15日に緊急輸入に向けた特例承認が決定した。2月3日に234万回分、同5日に240万回分が出荷可能になる。この初回出荷可能量の474万回分に合わせて、厚労省が47都道府県を通じて調べたところ、山梨県からの200回分(成人換算で200人分)以外に納入希望はなかった。 また国産の納入希望も調査したところ、今月29日に出荷が予定される649万回分に対し、希望量は520万回分にとどまった。3月までにあと約1500万回分が出荷される予定だ。輸入の納入希望が少ない理由について、厚労省担当者は「国産が残っており予想されたことだ。今後、需要がどのように推移するかは分からない」と話す。 埼玉県の担当者は「3月まで順次出荷される国産で、在庫も含めて足りるという医療機関が多いようだ」と話す。今月19日から優先接種対象者以外にも打ち始めたが、県民から「国産を打ってもらえるのですよね」という問い合わせがあるという。輸入ワクチンは海外ではすでに使われているが、「副作用が心配なのか、輸入分は敬遠されているのかもしれない」と担当者。 患者の平均年齢が50歳代という川崎市の内科医院は、輸入ワクチンの1回目の注文は見合わせた。国産がまだ手元にあり、副反応の様子も見極めたいという。 長妻昭厚労相は今月15日の記者会見で、「(流行の)第2波が来る議論を勘案しても、余ることは想定される」と話した。厚労省は2社と、輸入の一部をキャンセルする交渉を進めるとみられる。
欧州2社製の新型の豚インフルエンザのワクチンを緊急輸入することが決まり、2月から使われる。予定量は9900万回分(成人換算で9900万人分)だが、国内では昨年10月から流通が始まった国内産ワクチン(同5400万人分)さえだぶつき気味だ。 年間約1800件のお産を扱う愛育病院(東京都)は年明け、新型ワクチン接種を案内する張り紙を掲げ、チラシを配り始めた。700人分余の在庫を抱え、1月以降の入荷予定はキャンセルした。 昨年11月は品薄感が強かったが12月に余り気味に。妊婦向けワクチンの使用期限は国の検定合格後6カ月。「5月までに使わないと」と病院。 東京都江東区では、昨年12月に区内2カ所で4回ずつ集団接種したが、申し込みの8〜9割程度だった。 余り気味の要因は接種回数の変更。当初、人類に感染経験のないインフルなので1回では十分でなく2回必要だと考えられていた。ところが欧米の臨床試験の中間報告が昨年9月に出始めると、成人は1回で十分な免疫がつくとわかった。日本でも、11〜12月に接種回数が見直され、13歳未満以外は妊婦も含めて1回接種に変わり、1人の量で2人打てることになった。 子どもが大勢、感染して予防策の需要が減ったこともある。厚生労働省によると、1月3日現在で4歳以下は約4割の205万人、5〜14歳は約8割の960万人が感染したとみられる。 流行も下火だ。国立感染症研究所の15日の発表では全国5千カ所の定点医療機関を受診した患者は1医療機関あたり9.18人。「注意報発令」の目安の10人を下回った。 今回のワクチンは、国が買い上げて医療機関に配分している。同省は適正な管理が難しくなるため返品を認めていない。別の医療機関への譲渡なども禁じられている。 ワクチンが余る状況は欧州も同じ。世界保健機関(WHO)と製薬企業が癒着しワクチン需要を作りだした、という疑惑さえ起きるほどだ。 長妻昭厚労相はワクチン輸入の承認を表明した1月15日夕の記者会見で「(流行の)第2波が来る議論を勘案しても、余ることは想定される」との認識を示した。輸入の一部のキャンセル交渉は正式には、「始めていない」としたが、水面下で交渉の準備は進めているとみられる。 会見に同席した足立信也政務官は、契約交渉当初は返品や契約変更はないという認識で動いていたことを明かし、「あの時点での(キャンセル)交渉開始は早計だったであろうと思う」と振り返った。春以降に流行すれば不足する事態もあるなど想定は何種類もあり「多く確保できたのは一つの利点」と話した。
症状が軽いのに救急外来を受診する患者から特別料金を徴収できるよう、中央社会保険医療協議会(中医協=厚生労働相の諮問機関)が15日、検討を始めた。救急医療に携わる病院勤務医の負担を軽くする狙い。2010年度の診療報酬改定に合わせて、4月から導入される可能性がある。 救急医療の現場では、軽症患者が自分の都合で休日や夜間に受診することが問題化している。07年中に救急搬送された約490万人の過半数は軽症と診断された。高齢者の軽症患者は07年までの10年間で2.5倍近くになった。こうした状況が医師らの負担を増やし、医療崩壊を招いたと指摘されている。 中医協で検討されている案では、救急外来に来た患者の状態を医師らが事前に確認し、軽症の場合には特別料金がかかることを説明する。それでも患者が希望して受診すれば、特別料金を徴収することができるようにする。 対象機関は、重度の患者を受け入れる救急救命センター(全国で221施設)に限定。救急外来での診療の優先順位を決める「トリアージ」を参考に各医療機関が判断基準を決め、値段もそれぞれ設定する。 現在も200床以上の大規模病院では初診料への上乗せが認められているなど、特別料金を導入している医療機関もある。例えば、昨年8月から診察料とは別に5250円の「時間外診療特別料金」を徴収し始めた鳥取大学医学部付属病院では、軽症患者が減っているという。 中医協では、幅広く特別料金を課すことで救急医療現場への軽症患者を抑制する方向で検討する。ただ、中医協の患者代表ら支払い側委員には導入に慎重な意見が強い。
厚生労働省は15日、肺の病気やその後遺症のため、高濃度の酸素を吸入する在宅酸素療法をしている患者や家族に、たばこなど火気の扱いについて注意を喚起するよう、都道府県に通知を出した。 日本産業・医療ガス協会の調べでは、03年以後、自宅で酸素を吸入中に火災で死亡した患者は26人、重症やけどが1人。患者のほとんどが高齢者だ。集計に表れない軽症被害はさらに多いとみられる。 正しく器具を使えば事故は起きない。被害の多くは、鼻にチューブをつけたままたばこを吸ったり、仏壇の線香に近づいたりして起きている。在宅酸素療法を続ける人は全国で約15万人。
建設業や小売業などの自営業者らがつくる国民健康保険組合(国保組合)に対して、公表されている補助金制度とは別枠で、総額229億円の補助金が出ていた問題で、長妻昭厚生労働相は6日、2011年度予算の概算要求に向けて、この補助金の内容を調べ、不要と判断される分については減額・廃止することを決めた。 朝日新聞の報道を受け、厚生労働省は同日、個別の国保組合に対する国庫補助率を初めて公表した。これまで補助率について、「医療機関に払う医療費の55%が上限」と説明してきたが、実際は、このほかに「財政力以外の特別の事情」(厚労省)を考慮した「特別調整補助金」が出ていた。165組合中19組合が上限を超え、最高は京都府酒販の70.6%。 07年度の国民健康保険事業年報に基づく試算では、医療機関に払う医療費に対する補助率で見ると、30組合が上限を超えていた。厚労省が今回公表したデータは、直接の医療費支払いではない高額療養費共同事業分も含んでいる。 この日の会見で厚労省は、特別調整補助金について「1970年に政治運動により建設国保の設立が認められた時に増額され、その時にある一定の考え方に基づき各組合に配分した。その後は前年実績を重視して支払い続けてきたが、そもそもの配分の根拠は分からない」と説明。「特別調整補助金は疑念を招きかねず、11年度概算要求に向け精査・検討する」とした。 一方で、すでに閣議決定された10年度予算案分については「いきなり変更すると国保組合の保険料が跳ね上がるなど影響が大きい」とし、見直しは見送るとした。 法律で加入者は原則、医療費の3割(現役世代)を負担すると定められているが、全国建設労働組合総連合(全建総連)系の11国保組合で入院時の自己負担を実質無料としている。厚労省によると、このほかに奈良県歯科医師国保など4歯科医師国保、2医師国保と1建設国保でも実質無料としていた。 厚労省は「自己負担無料化についても国民の疑念を招く可能性があり、各国保組合に是正するよう指導する」としている。
医者のトレードマークとも言える白衣を診察室で着ない医師が、小児科や心療内科を中心に増えている。患者の緊張感を和らげる効果や動きやすさ、衛生面など狙いは様々。中には「患者中心の医療を阻む」として白衣を全廃した病院も。ポロシャツやワイシャツで診察する姿は、患者からも好評だ。 東京都東村山市の西武東村山駅前に、昨年10月に開業したばかりの小児科「どんぐりキッズクリニック」。石井ちぐさ院長(41)はアンパンマンなどアニメのキャラクター入りのシャツで診療にあたる。 約15年間の勤務医時代は白衣を愛用していた。だが、「白衣姿を見ただけで怖がる子どもさんが多かった。開業を機に、少しでもお子さんの心の負担を軽くしたいと思って白衣を脱いだ」。看護師と事務員もおそろいのキャラクター入りシャツを着用。柄は5種類あり、毎日替えて子どもたちを楽しませている。 大阪市中央区の心療内科「なかがわ中之島クリニック」の中川晶医師(57)がワイシャツで診察するのは、「白衣は医師と患者の間に壁を作る」と考えるからだ。 白衣の医師の前では緊張して血圧が上がる「白衣高血圧症」という症状がある。中川さんは「心療内科では患者さんにリラックスしてもらい、話してもらうことが大事。医師と患者の壁は低ければ低い方がいい」と話す。 「いけだこどもクリニック」(堺市北区)の池田和茂院長(47)が2006年10月の開業以来、「脱・白衣」路線を貫いてきた理由の一つは意外にも「衛生上の問題」だ。約20年間の病院勤務時代、週に2回程度しか白衣をクリーニングしてもらえず、衛生面で疑問に思ってきた。「今は私服だから毎日洗濯し、清潔な服で診察出来る」と話す。 院長は白と水色のしま模様のポロシャツ、看護師や事務員も柄物の半袖シャツ姿。4人の子が同クリニックのかかりつけという地元の主婦、中尾理恵さん(34)は「子どもも看護師さんの可愛い服が気に入っている」と歓迎する。 病院全体で白衣を廃止したのは、兵庫県姫路市の中谷病院。医師、看護師だけでなく事務職も含め約100人の職員全員が、おそろいの半袖シャツとカーディガン、ユニクロのチノパン姿だ。 中谷裕司院長(42)は「医師は医師同士、看護師は看護師同士で固まりがちだったが、より良い医療を目指すという目的は同じ。同じユニホームにすることでチーム意識を高めたかった」と話す。 明治大学国際日本学部の中野香織特任教授(服飾史)によると、西洋で医師が白衣を着るようになったのは19世紀後半から。それまでは黒いフロックコートを羽織っていた。コートは在職中、洗濯することなく診察室に置かれた。その後、衛生面が重視されるようになり、科学者が実験室で着ていた白衣が洗いやすいとして医師の間でも定着していったという。 ただ現在、実際に白衣を毎日洗濯する医師は少なく、私服の上に着る「作業着」的存在になりがち。白衣メーカーの国内大手ナガイレーベン(東京)によると、病院など大規模な医療機関では今も圧倒的に白衣が主流だが、診療所レベルではここ数年、小児科などで少しずつ「脱・白衣」が広がっているという。 大阪府羽曳野市の島田病院は1995年、「動きやすさ」を重視して白衣をいったん全廃したものの、その後復活させた。病院スタッフ全員がポロシャツを着用したところ、患者から「誰が看護師か分からない」などの苦情が出たためだという。看護師は01年にナース服を復活。医師も03年から自由選択に変え、事務職は制服に戻した。 現在、医師14人のうち11人が白衣、3人がポロシャツなど。島田京子常務理事は「うちは『脱・白衣』に取り組むのが10年ほど早すぎた。試行錯誤した結果、服装はいろんなバリエーションがあっていい、という結論に達したわけです」と話す。
突然、心停止した人を市民が目撃した際に、心臓に電気ショックを与えて救命するAED(自動体外式除細動器)を実際に市民が使ったケースは、2008年の1年間で2%にとどまっていた。総務省消防庁の全国調査でわかった。関係団体は、設置数が急増する一方で、周知が進まず、使用に不安を抱く人も多いことなどが原因とみている。 AEDは04年から一般市民の使用が可能となった。 消防庁が全国の消防本部や消防局からデータを集めてまとめたところ、08年に心筋梗塞(こうそく)などで患者が心肺停止した6万3283件のうち、病院以外の一般市民の前で起きたケースは2万769件。このうちほぼ半数の9970件で市民により心肺蘇生がなされていたが、AEDが使われたのは429件(2.1%)にとどまっていた。05年の46件に比べると10倍近く増えていたが、まだ使用率は低い。 消防庁によると、AEDを使わなかった場合、患者の1カ月後の生存率は9.8%だが、使用した場合は43.8%で、4.5倍にアップする。1カ月後の社会復帰率も未使用では5.6%だが、使った場合は38.2%で、6.8倍の高率だ。調査結果について消防庁は「救急隊員が到着するまでに、少しでも早く処置をしてもらうことが救命につながる。もっと多くの人に使ってもらえるよう啓発したい」としている。 厚生労働省研究班によると、AEDの設置台数は約20万台(08年12月現在)。医療機関や消防署以外では、市民が使える場所として公的施設や商業施設、マンションなどに約15万台ある。1台数十万円するが、自治体や、中小企業庁が「商店街活性化事業の一環」などの補助事業で普及に取り組んでいる。 NPO法人「AED普及協会」(埼玉県熊谷市)は「設置数を考えれば、使用件数がもっと増えてもおかしくない。使う人の数が、設置数に追いついていない」と話す。使用法を学べる機会は各地の消防署で開かれる「講習会」などに限られているのが現状だ。AEDは、救命できなくても責任を問われないことが法律で定められている。「AEDを使うのに資格はいらないが、不安で使えないという人が大半。体験できる機会を少しでも増やすことが急務」と指摘する。 兵庫県医師会では独自に「認定証」を発行して「教える人」を増やし、すそ野を広げている。中心メンバーの河村剛史医師は講習ではあえて「現場ではパニックになってください」と話すという。「必死になれば、初めてAEDを見た人でも十分使える。人を救うのはAEDではなく、使う人の『命を助けたい』という気持ち」と呼びかけている。
日本臓器移植ネットワークは2日、金沢医科大病院(石川県)に低酸素脳症で入院中の40代の女性が臓器移植法に基づく脳死と判定され、同日夕までに臓器の摘出を終えたと発表した。1997年10月の法施行以来、84例目の臓器提供となる。 ネットワークによると、心臓は国立循環器病センターで30代女性、肺の一つは大阪大病院で40代女性、もう一つは東北大病院で40代女性、膵臓(すいぞう)と腎臓は東北大病院で30代男性に、もう一つの腎臓は金沢医科大病院で40代男性に移植される見通し。
医療法人「徳洲会」(本部・東京)は31日、腎臓がん患者から摘出した腎臓を別の患者に移植する「病気腎移植」を、国の指針に基づく臨床研究として宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)で実施したと発表した。同病院の万波誠医師(69)らによる病気腎移植が2006年に発覚。問題化して自粛して以来、3年ぶりの再開となった。 徳洲会によると、30日に呉共済病院(広島県呉市)で、腎腫瘍(しゅよう)(がんの直径が4センチ以下)の50代の男性患者から腎臓を摘出し、宇和島徳洲会病院へ搬送。腫瘍を除去した腎臓を、30日夜に万波医師らが慢性腎不全の40代の男性患者に移植した。移植を受けた男性は、順調に回復しているという。 徳洲会と呉共済病院によると、腎臓の提供側と移植を受ける側の双方から文書で同意を得たほか、呉共済、宇和島徳洲会の両病院の倫理委員会の承認を受けたという。移植を受ける患者は、徳洲会の移植事務室に登録された26人から、検討委が血液適合などを調べて選んだという。透明性の確保も課題とされていたが、再開実施を発表する会見は、手術終了から約14時間後の翌31日だった。 万波医師は会見で「修復腎移植(病気腎移植)は捨てる腎臓の再利用で私自身は良い方法と思う」と話した。徳洲会は今後5年以内に5例前後を実施する予定という。呉共済病院は取材に、腎臓を全摘出した妥当性について「専門医の判断と、患者本人の希望との兼ね合いによると思う」とした。 病気腎移植は、腎臓がんなどで摘出された腎臓から異常な部分を切除して、腎機能が低下している別の患者に移植する手法。万波医師らは91〜06年、病気腎移植を42件実施していたことが判明。だが、実施病院内に倫理委員会がなかったり、患者の同意書もとっていなかったりしたケースもあり、厳しく批判された。日本移植学会など4学会は07年、病気腎移植は「医学的に妥当性がない」との見解を発表した。 一方、厚労省は07年7月、臨床研究以外の病気腎移植を禁止したが、09年1月に「臨床研究で、対象疾患は特段制限していない」とする通知を出していた。これを機に、徳洲会は再開の準備を進めていた。
厚生労働省は28日、最新の1週間(12月14〜20日)に全国約5千カ所の医療機関を受診したインフルエンザ患者は1医療機関あたり22.44(前週27.39)人だったと発表した。ほとんどが新型の豚インフルとみられ、3週連続の減少となった。 福井43.22(前週53.78)人など9県で「警報レベル」の30人を上回ったが、44都道府県で前週より減った。1週間に全国の医療機関を受診した推計患者数は前週より約25万人少ない約107万人。7月上旬からの推計患者数は累計で約1653万人。 同省は28日、新型インフルの輸入ワクチンの特例承認について、一般から意見募集を始めた。1月11日まで。詳細は同省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/index.html)。
後発薬世界最大手のテバファーマスーティカル・インダストリーズと医薬品中堅の興和の合弁会社、興和テバ(東京都中央区)は24日、国内後発薬6位の大正薬品工業(滋賀県甲賀市)の発行済み株式の5割以上を年内に取得し、子会社化することで合意したと発表した。 興和テバは2008年11月に設立され、来年1月から国内で営業を始める予定。大正の工場や営業網を使って国内の事業基盤を強化し、2015年に売上高1千億円を目指すという。
人に感染すると6割近くという高い致死率を示す高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)について、人の間で感染しやすい特徴を持つ種類があるらしいことがわかった。H5N1の感染は、現状ではウイルスを持つ鳥と濃厚に接触した人などに限られているが、人から人に感染しやすくなれば、世界的な大流行(パンデミック)を起こす恐れがある。日本と中国の研究者が24日、米専門誌(電子版)に発表する。 研究は、東京大医科学研究所の河岡義裕教授や中国農業科学院ハルビン獣医研究所のホアラン・チャン教授らが、日本の「感染症研究国際ネットワーク推進プログラム」の一環として実施した。 どんな特徴があると、ウイルスが人から人に効率よく感染するかを見極めるため、2001〜05年に中国の野鳥や鶏から見つかった6種類のH5N1を、モルモットで調べた。 モルモットは、インフルウイルスがまず最初に感染する、鼻やのどの細胞のウイルスとくっつく部位(受容体)が人と似ている。6種類のうち、2種類だけが、モルモット同士で感染を起こした。この2種類を調べたところ、ウイルス表面にあるたんぱく質(HA)に特徴があった。 HAは受容体にくっつくために欠かせないが、一部のアミノ酸に変異があり、人型の受容体にくっつきやすいことがわかった。研究チームが遺伝子技術を使ってこの変異を元に戻すと、受容体にくっつかなくなり、変異がないと感染しにくいこともうかがわせた。 研究チームの河岡さんは「人に感染しやすくなる特徴は複数考えられ、今回見つかったのはその一つ。今回の変異があるウイルスはすでに野鳥や鶏の間で感染しているので、人に感染しないかどうか、注意して観察する必要がある」と話す。
来年度の予算折衝で23日、肝炎対策費は今年度の129億円から180億円に増える見通しとなった。先月成立した肝炎対策基本法に盛り込まれた患者の経済的負担軽減が実現する。 B、C型肝炎患者向けのインターフェロン治療の医療費の患者負担は、現在、世帯所得に応じて月5万、3万、1万円となっているが、原則1万円(上位所得者は2万円)とする。 また、B型の治療に使われる抗ウイルス薬を助成対象に加える。B型はインターフェロン治療が効かない人がC型より多いうえ、治療が長期間にわたる。そのため、抗ウイルス薬治療への支援を求める声が強かった。
【ニューヨーク】新型の豚インフルエンザがペットの犬に感染した例が米ニューヨーク近郊で見つかった。犬の感染例は米国初とみられている。米獣医学協会が21日、発表した。 この犬は13歳の雑種。飼い主が体調不良になった後、犬にもせきや発熱の症状が出て検査を受けたところ、新型インフルエンザ感染が確認された。犬は回復しつつある。 米疾病対策センター(CDC)でインフルエンザ対策を担当するアン・シュキャット博士は22日の会見で「まれに種を越えた感染が起きるが、心配はいらない。これまで通りペットをかわいがってよい」と話した。 新型インフルエンザは豚や鳥、フェレット(イタチの仲間)などに感染した例が知られている。犬への感染は、中国で11月に見つかったとの情報がある。
東京医科大八王子医療センター(東京都八王子市)は22日、生体肝移植を受けた患者52人の4割にもあたる23人が術後1年以内に死亡していたと発表し、外部の専門家らによる検証委員会の報告書を公表した。報告書は患者の死亡率が高いことを認め、「手術の技術や術後管理に問題があった」と指摘した。高沢謙二センター長は「医療過誤や不適切な医療行為ではないが、難しい症例が多く適応の判断などの配慮が十分ではなかった」とした。 担当の長尾桓(たけし)・臓器移植外科・一般外科主任教授を停職3カ月の処分、現場責任者の元准教授ら2人=いずれも退職=を厳重注意にした。 同センターは、地域の中核病院で腎臓移植に早くから取り組んでいた。健康な家族から肝臓の一部を取り出し移植する生体肝移植については、2000年10月から07年4月、重い肝臓病を患う18歳以上の52人に対し実施した。しかし、術後1年以内に計23人が合併症などで亡くなった。死亡率は44.2%。 手術中に亡くなった8人を含め19人が、手術後退院することなく死亡。4人が術後に退院したが、うち1人は3カ月以内に死亡していた。 生体肝移植は、これまで国内で約5千例が行われている。日本肝移植研究会の報告では、手術してから1年後の患者の生存率は8割、5年生存率でも7割ほど。今回の事例は単純計算で6割に満たないが、センターは「一般的な生存率を算定する方法をとっておらず、症例数も少ないので比較は難しいが1年以内の死亡率は高い」と説明した。 こうした事態を受け、センターは07年10月から生体肝移植の手術を中止し、外部の専門家らからなる検証委員会を設置。聞き取り調査をして、報告書をまとめた。 報告書は、同センターでの生体肝移植は、重い肝不全など肝臓の状態の悪い患者や、移植する肝臓と血液型が合わない患者など「リスクの高い症例が多く含まれていた」と指摘。特に、移植チーム立ち上げ初期の20例で8人が死亡していたことから「リスクの高い症例への手術を慎重にすべきだった。いったん移植を中断して再点検をすべきだった」とした。 52人のうち13人が血管がつまるなどの動脈合併症を起こし、うち9人が死亡に至っていた。報告書は「血管を縫い合わせる技術や合併症への対応に問題があると言わざるをえない」と手術の技術や術後管理に問題があったと結論づけた。さらに、一般的に認められていない方式の手術を採用した例も多く「今後、慎重な対応が望まれる」とした。 また、ホームページで、治療成績を「全国平均レベル」と、実際とは異なる内容を掲載していた時期もあり、報告書は「虚偽と受け取られる可能性もあり、十分な配慮が必要だった」と指摘した。 センターの移植再開のめどは立っていないという。
治療のための薬で健康被害を受けた入院患者が5人に1人に上ることが東京、京都、福岡の病院を対象にした調査でわかった。軽微な副作用から命にかかわる深刻な例まで計千件以上あり、重い被害が4割近かった。京都大などの研究グループによると、調査担当者を派遣し、病院の協力を得てカルテや検査データなどを綿密にチェックし、薬が関係した健康被害を拾い出す研究は国内初という。 3病院は入院ベッドが500床以上。大学病院ではないが、多くの診療科があり各地で中核的な役割を担う。研究グループの森本剛・京都大大学院講師(臨床疫学)らは他の医療機関でも同様の問題がある可能性があるとみて、被害の未然防止や重症化防止の仕組みづくりを訴えている。 研究グループは2004年1〜6月、産婦人科と小児科を除く3病院の全診療科で15歳以上の3459人について調べた。 薬の種類や量を間違えて症状が悪化したような明らかな間違いを始め、通常の治療の範囲内で、鎮静薬を多量に投与された高齢者の意識レベルが低下したり、消化管出血、アレルギー反応、下痢、腎機能の低下などが起きたりした例も含め「薬剤性有害事象」として集計。投与直後だけでなく継続的に観察した。 調査結果によると、726人に1010件の有害事象があった。このうち14人(16件)が死亡し、集中治療室での治療や人工呼吸器などが必要になる「生命にかかわる」被害が46人(49件)、消化管出血や発熱、血圧低下など「重度」の被害が272人(330件)に見られた。 死亡例では、抗菌薬の使用後にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症になり、治療が間に合わなかったケースや、抗菌薬による腸炎や下痢、非ステロイド系抗炎症薬を使った後の消化管出血などがあった。 グループは、有害事象の14%、141件が医師の指示や薬剤師のチェックなどの「エラー」によるもので、他のより良い手段で経過を変えられた可能性があると判定。うち83件は「防止可能」、58件は症状の緩和や期間の短縮ができたとみる。同じ効能の複数の薬が重複投与される前に薬剤師が点検するなど、医師以外が処方内容を検討すれば防げるものがあるという。 調査担当者が最初に気づいたのが141件中46件、院内報告制度で報告されていたのは19件にとどまった。 森本講師は「薬剤性の有害事象は見逃されやすい。把握のための一定の基準を作り、担当薬剤師らが日常的に患者の症状をチェックし、速やかに医師に伝える仕組みを導入すべきだ」と話す。
来年度の診療報酬改定を議論する厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は16日、2回目以降の診察にかかる再診料を統一することで合意した。現行は病院の600円に対して診療所が710円で、開業医に手厚いことが問題視されている。単価については今後、検討する。 前回の改定時に、勤務医の負担軽減策の財源確保の観点から診療所の再診料引き下げが検討されたが、中医協での発言力が強かった日本医師会の抵抗で見送られた。今回、政権交代でメンバーが入れ替わり、「国民に分かりづらい」との意見が強まって、統一することについては了承された。初診料は2006年度改定で統一されている。 一方、この日の中医協では、後発医薬品(ジェネリック)の使用を促進する環境整備を進める案も了承された。患者にジェネリックを使用するかどうかの意向を聞くことなどを医師の努力義務とすることが盛り込まれている。
洗浄から保存までを1種類で賄えるタイプのソフトコンタクトレンズ用消毒液の多くは、消毒力が不十分だった――国民生活センターは16日、日本コンタクトレンズ学会との共同研究結果を発表した。 同センターによると、コンタクトの装用でアカントアメーバと呼ばれる微生物による感染症トラブルが増加。全国224医療施設で入院治療を要した例が2007年4月からの約1年半で55件あったという。アカントアメーバは自然界に多く存在。目の表面の傷から内部に入り込むと角膜に炎症を起こす。発症すれば視力が衰えるなどし、失明の恐れもある。 同センターは、アメーバを繁殖させた液体に同消毒液を加え、一定時間後のアメーバの減少率を調べた。その結果、洗浄と保存が別々のタイプの消毒液と同等の効果を示したのは、8製品中2製品だけだった。 複数の液を使うタイプは、消毒力の高い洗浄液と、その力を中和する保存液の役割が分かれていることが多く、一体タイプと比べると、消毒性能が高かった。 現状の消毒液には、アカントアメーバの消毒についての規格基準はない。 薬害オンブズパースン会議(鈴木利広代表)は同日、連続装用できるソフトコンタクトレンズの使用者に、アカントアメーバ角膜炎が増えているとして、厚生労働省や消費者庁などに対し、消費者向けに、消毒液の正しい使い方の警告を出すよう要望書で求めた。
消費者庁が同庁発足後、厚生労働省から通知された医療事故17件を一切公表していないことがわかった。同庁は患者のプライバシー保護などを非公表の理由に挙げているが、国立や大学病院での医療事故は別の機関がすでに公表しており、同庁も公表に向けた検討を始めた。 各省庁は、製品やサービスが安全性を欠き、死亡や全治30日以上の重傷、火災などを伴う重大事故を起こした場合、消費者安全法に基づいて、消費者庁に通知している。経済産業省は製品事故、国土交通省は乗り合いバスでの転倒や都市公園での遊具事故、文部科学省は学校での遊具事故などの通知が義務づけられている。消費者庁は原則水曜日に過去1週間の受け付け分を公表している。 同庁によると、同庁が発足した9月から11月に通知を受けた重大事故は157件。このうち厚生労働省から寄せられた病院での医療事故は17件あった。手術中の事故や院内での転倒事故が中心だったが、事故の内容や被害の程度はもちろん、発生日や病院のある都道府県、公立病院か私立かに至るまでまったく明らかにしていなかった。消費者事故の現状について確認するため、同庁が10日に非公開で開いた省庁間会議でも、医療事故だけが重大事故の一覧表から外された。 同庁消費者安全課は「患者の個人情報保護の観点や、因果関係の判断が難しいため、原則非公表としてきた」と説明している。 しかし、大学病院や国立病院など270施設で起きた医療事故については、財団法人・日本医療機能評価機構(東京)への報告が義務づけられており、2008年に報告があった約1400件については、事故内容や被害の程度などが報告書などで公表されている。 福島瑞穂・消費者担当相は11日の閣議後会見で、医療事故の公表について「検討したい」と前向きな考えを示した。
インフルエンザの患者が大幅に減ったことが10日、明らかになった。厚生労働省のまとめでは、最新の1週間(11月30日〜12月6日)に全国約5千の定点医療機関を受診した患者は、1医療機関あたり約31(前週39.63)人になった。8月上旬の流行開始以来、初めて明確な減少傾向を示した。 ほとんどが新型の豚インフル患者。8月3〜9日の週に流行開始の目安の「1人」に近づく0.99人を記録。当時の舛添厚労相が「本格的な流行が始まった」とした。その後もほぼ右肩上がりで増え、10月26日〜11月1日の週には警報レベルとされる30人を超えた。7月前半以降、前週までに医療機関を受診した累計患者数は約1260万人と推計されている。 厚労省によると、最新の1週間(11月29日〜12月5日)の休校や学年・学級閉鎖をした小中学校なども、前週より17%少ない1万2962施設。ただ、大都市圏では患者が減り始めているが、流行が続いている地域もある。 国立感染症研究所は、「季節性インフルの流行も交えた本格的な流行が再び到来することも考慮しておく必要がある。流行が再び拡大する可能性は低くない」としている。
宮崎市は10日、市内の男性(51)が新型インフルエンザで死亡した、と発表した。男性は慢性呼吸不全などの基礎疾患があったため、11月25日にワクチンを接種していた。市は「ワクチンによる抗体ができるには約4週間は必要なため、効果が十分に得られる前に感染したと思われる」としている。 新型インフルエンザによる宮崎県内の死亡は初めて。市によると、男性は今月8日夜に悪寒などの症状を示し、翌9日午前5時ごろ、呼吸困難に陥り市内の病院に搬送された。入院後、体温が38度台に上昇したためタミフルを投与したが、同日午後6時10分ごろ、肺炎を発症して呼吸不全が悪化して死亡した。
カナダ国内で新型の豚インフルエンザのワクチンの一部に想定より高い割合で副作用が報告された問題で、長妻昭厚生労働相は8日、「特定の部分が問題だったのではないか」と述べ、副作用は製品全体ではなく、一部に限定されているとの認識を示した。 この日の閣議後会見で調査結果の概要として報告した。 長妻氏は現地に派遣した調査団の報告を受けたことを明らかにしたうえで、「(カナダでは)特定のロット(製品群)以外では接種も続いており、通常より高い副反応は起きていない」と話した。 この問題では、英大手製薬会社「グラクソ・スミスクライン」がカナダ工場で製造したワクチンで、アレルギー反応の一種の「アナフィラキシーショック」が複数起き、同社が複数の州政府に使用中止を要請していた。日本は同じ工場の製品を輸入する予定。長妻氏は「専門家にも調査結果を見て頂き、特例承認を慎重にして頂くことが大原則だ」と話した。
8月15日に国内で初めて沖縄県の50代男性の死亡が報告されてから、4カ月近くで100人になった。 死亡者の報告は8〜9月は週2〜4人ほどで推移していたが、感染が広がるにつれ、10月下旬からは週10人ほどに。11月は死者44人にのぼり、12月もすでに13人だ。 厚生労働省の発表などによると、100人の年齢別でみると、18歳以下が29人で約3割を占める。そのうち9歳以下は24人。多くは持病のない子だ。 年齢が低いほど免疫機能が未熟で体力もない。さらに患者の8割が未成年で、感染が子どもを中心に広がり患者そのものの数が多い。 一方、40代以上の患者は全体の1割にも満たず、感染はまだそれほど広がっていないが、死者は58人いる。この年代は持病のある人が多く、いったん感染すると重症化しやすいためだ。 新型インフルが季節性と違うのは、重い肺炎などを起こしやすい点だ。死者の半数近くは、肺炎などの呼吸障害が原因。死者の持病で多かったのはぜんそくなどの呼吸器疾患と、糖尿病だった。 胎児を攻撃しないよう免疫力が低下している妊婦も重症化しやすいとされ、海外では死亡例があるが、国内ではまだ報告されていない。 国立感染症研究所の推計では新型インフルの患者は累計1264万人。単純計算すると現時点での致死率は0.001%ほど。季節性は、インフルで弱ったところに細菌性肺炎を起こした場合なども含めた数字でそのまま比べることは難しいが、0.1%とみられるシーズンもある。 国際的にも日本の死者は少ない。世界保健機関(WHO)の11月中旬のまとめでは、人口100万人当たりの死者数は日本は0.2人。米国の3.3人や豪州の8.6人より大幅に少ない。 欧州疾病対策センター(ECDC)によると、12月4日現在で、死者は世界で9634人。一番多いのは米国で1817人。次いでブラジルの1528人などが目立つ。 日本小児科学会の予防接種・感染症対策理事、野々山恵章・防衛医大教授は、日本の死者が少ない理由を「患者が医療機関を早く受診し、抗ウイルス薬も速やかに処方されているため」と分析する。 米医学誌の論文などによると、米国やカナダ、豪州などでは、発熱などの症状が出てから入院までの日数が平均3〜6日。これに対し、防衛医大病院など東京周辺の3病院ではわずか0.54日だった。 東北大学の押谷仁教授(微生物学)は、海外では成人の死亡例も多いが、日本では成人の発症が少ないことも、死亡率の低さに影響している可能性があるとし、「成人や乳児に感染が広がると、重症者が増えていく恐れがあり、注意が必要だ」と話す。
国立感染症研究所は4日、最新の1週間(11月23〜29日)に全国約5千の定点医療機関を受診したインフルエンザ患者は、1医療機関あたり39.63(前週38.89)人だったと発表した。ほとんどが新型インフルとみられる。 都道府県別では、福井95.44(前週71.25)人、大分75.22(77.21)人、宮崎69.08(50.56)人、山口63.59(64.31)人、福岡63.35(58.23)人など。 40府県で「警報レベル」とされる30人を超え、北海道を除く46都府県で20人を上回った。一方、19都道府県では前週より減少しており、地域ごとに流行状況に違いがある。 都市部では、東京21.01(24.14)、神奈川28.52(33.84)、埼玉35.76(38.27)、兵庫29.17(31.01)などと減少傾向だが、祝日で休診した医療機関があったことも影響しているとみられ、研究所は感染予防などの注意を呼びかけている。累計患者は推計で1264万人。
インターネットを通じて購入した勃起(ぼっき)不全(ED)治療薬の55%が偽物だったことが2日、国内で本物を製造・販売する4社の調査でわかった。ED治療薬の偽物がネット経由で流通していると指摘されてきたが、4社によると、まとまった規模の分析結果が出たのは初めて。 正式に承認されたED治療薬「バイアグラ」(商品名)を扱うファイザー、「レビトラ」(同)を扱うバイエル薬品、「シアリス」(同)を6月まで扱った日本イーライリリー、7月から扱う日本新薬の4社が、調査会社を通じ2008年12月〜09年4月に購入し、分析した。 日本のほか、偽物の販売にかかわったとされる日本人が摘発されたタイで、ネット上でバイアグラ、レビトラ、シアリスと称する薬をそれぞれ約30点ずつ買った。紙の箱入りの薬のほか、樹脂製の容器入りのものもあった。タイでは現地を訪れる日本人向けの日本語サイトから購入した。 その結果、184点のうち102点は、有効成分の量が本物と明らかに違った。本物の1割しかなかったり、4倍もあったりしたケースや、まったく入っていないケースがあった。偽造した錠剤の表面を塗料で塗り、本物を装ったものもあった。 東京歯科大市川総合病院の丸茂健教授(泌尿器科)によると、偽物と知らずに飲んで、効果がないため自信を失う人もいる。本物であっても、狭心症の発作を起こしてニトログリセリン系の薬を服用している人が飲むと、血圧が下がり深刻な健康被害が出る恐れがある。丸茂教授は「EDは適切な治療で効果がある。医療機関を受診してほしい」と話す。 4社によると、シンガポールでは昨年、偽のED治療薬を飲んだ2人が死亡した。錠剤に含まれた血糖降下剤の影響で低血糖状態に陥ったためと報告された。血糖降下剤は、日本で承認されている1日最高服用量の4倍以上含まれていた。 4社によると、08年の正規のED治療薬の国内販売額は計約120億円。公的医療保険は利かない。服用には本来は医師の処方が必要だが、処方を受けずにネットで購入する人も少なくない。医師の処方なしで流通するED治療薬の販売額は、処方された分の2〜3倍とも見られている。
厚生労働省は2日、新型の豚インフルエンザに感染して入院した累計患者数が1万人を超えたと発表した。調査を始めた7月下旬から今月1日までに1万487人が入院し、そのうち14歳以下が8929人で85%を占めた。現在も約2千人が入院中とみられる。 入院患者のうち、持病のある人は35%の3697人。病気別では、ぜんそくなどの慢性呼吸器疾患が最も多く、続いて慢性心疾患や糖尿病など。妊婦は36人だった。 男女比は、男性(6708人)が女性(3779人)の1.7倍だった。厚労省は「男性が多い理由は不明」としている。 一方、インフルで休校や学年・学級閉鎖をした保育所や小中高校などは、11月28日までの1週間に全都道府県で1万5656施設だった。大半は新型インフル患者とみられる。前週(1万5682施設)とほぼ同じ。1週間の患者数は約23万2千人だった
厚生労働省は2日、来年度の診療報酬改定で薬の公定価格である「薬価」が1.3%程度引き下がるとの見通しを示した。今年9月の取引分を対象に市場価格との差額を調べた結果、市場価格の方が平均8.4%(速報値)低いことが判明。これをもとに試算すると、国庫負担分は約1200億円減ることになる。 この日の中央社会保険医療協議会(中医協)で示された。薬の市場価格は通常、年々下がっていくため、原則2年ごとの診療報酬改定に合わせて薬価も引き下げられる。 市場価格との差額から調整幅(2%)を引いた6.4%が引き下げ水準。国民医療費に占める薬剤費の割合(21%)を当てはめると、医療費ベースで1.3%の引き下げが見込まれる。来年度の薬剤費は約7.8兆円と予測され、国庫負担(4分の1)は約1200億円削減される。 診療報酬は主に、薬価のほか、医師の治療行為などにかかる「本体部分」で構成される。長妻昭厚労相ら厚労省の政務三役は医療再生の観点から、薬価のマイナス分を上回る本体部分の増額を要求する方針。財務省は本体部分のプラス改定にも否定的だ。 前回2008年度の改定では、医療材料を含む薬価がマイナス1.2%、本体部分がプラス0.38%、全体では0.82%引き下げとなり、4回連続のマイナス改定だった。
カナダ国内で新型の豚インフルエンザワクチンの一部に想定より高率の副作用が報告された問題で、製造した英製薬大手「グラクソ・スミスクライン」社の日本法人は1日、該当する製造番号群のワクチンについて、「現在のところ、副反応(副作用)との因果関係は見いだされていない」などとする同社調査の現状を公表した。 同社はカナダ工場で一緒につくり、同国内に出荷していた17万2千回分を医療機関に使わないよう要請したが、調査する間の「予防的、自主的な措置」と説明。「規格を逸脱する特徴は観察されていない」とし、同社の全製品に及ぶ問題ではないと強調した。 日本政府は、同じ製品を輸入する予定。国内産には使われていないアジュバント(免疫補助剤)が使われているが、同社は、今回の問題は「アジュバントと関係ない可能性が高い」との見方だ。 厚生労働省はカナダに調査団を派遣中。1日は同社の工場で聞き取り調査をしている。
製薬世界最大手のファイザーの日本法人は、2011年にも国内で後発薬を発売する。自社の特許切れ製品68品目のほか、他社の特許切れ成分を使った製品も扱う。1日付で日本法人社長に就任した梅田一郎氏は記者会見で「質の高いものを提供したい」と述べた。
入院時の医療費を実質無料にしている建設業者らの国民健康保険組合(国保組合)に対する国庫補助について、長妻厚生労働相は1日の閣議後会見で、165ある国保組合すべての給付内容を調査し、必要があれば国庫負担割合を変更する考えを示した。 16の国保組合が入院時の患者の自己負担をゼロから1万円程度に軽減し、国からは医療費の4〜6割の補助を受けていることが朝日新聞社の調べで判明している。長妻氏は「マスコミからの問題提起もあったので、すべてのそういう保険について国庫負担とサービスの内容が適正なのか現状把握をしたい」とし、建設関係以外にも医師や歯科医師、薬剤師なども含めて国保組合全体の一斉調査を指示したことを明らかにした。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||