厚生労働省は、乳幼児が重症化しやすい「ロタウイルス胃腸炎」の発生動向調査を今年度から、全国約500か所の医療機関で始める。
この病気を防ぐワクチンの接種が2011年に国内で開始され、その効果を評価するのが目的だ。
ロタウイルス胃腸炎は、5歳までにほぼ100%が感染し、下痢や嘔吐(おうと)を繰り返し、脱水症状を起こすこともある。重症化すると意識障害を起こし、まれに死亡する。毎年、約80万人が医療機関を受診し、その1割が入院しているとされている。
調査は、300床以上の病床があり、小児科や内科の診療を行う医療機関を対象に10月から始める予定。入院した重症患者数を調べて、その推移を見ることでワクチンの効果を評価する。
徳島県は退職した保健師を登録し、県内外で大災害が起きた際、被災地にチームとして派遣する取り組みを始めた。
県によると、退職した保健師の組織を都道府県が設けたのは全国初といい、それぞれを「プラチナ保健師」と名付け、まずは22人を登録した。メンバーらは「これまでの経験を生かし、被災者の健康を支えていきたい」と意気込んでいる。
避難所で健康相談 「第一線でリーダーに」
今回、プラチナ保健師となったのは、県や各市町村の保健所などで長年活動し、地域住民の健康相談などを行ってきた県内各地に住む40~60歳代の女性たち。災害が起きた際、全員で被災地に向かい、避難所などで相談に乗るなど、被災者の健康増進の手助けをする。また、災害時以外でも市町村や消防本部の依頼で健康相談活動などを行う。
東日本大震災では、地震発生の5日後から1年以上、延べ120人の保健師が県内から被災地へ。避難所や仮設住宅で、運動不足に悩む高齢者らに阿波おどりの動きを取り入れた体操を伝えたり、「プライバシーが守れずに眠れない」といった相談に乗ったりしてきた。
しかし、保健師間で情報共有がうまくいかなかったこともあり、各保健師を統括し、効率を高めた組織づくりの必要性が叫ばれていた。今後、災害での活動時には県がとりまとめを行う。
任期はなく、県は来年度以降も退職した保健師らに声をかけて、規模を拡大していく予定。23日に県庁で結成式が行われ、出席者一人ひとりに登録証を手渡した飯泉知事は「第一線でリーダーとなり、人々の健康のため、避難生活を支えてもらいたい」と激励した。
県の保健師として37年間活動してきた石井町石井の主婦冨士原晴己さん(60)は「避難所などでの健康づくりに取り組み、活力ある暮らしを取り戻せるよう貢献したい。県内では日頃から地域住民の健康把握を行い、災害時の心のケアに生かせれば」と話していた。
島にお医者さんを 香川県が経費支援…12島対象 |
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島のお医者さん募集します――。香川県は今年度から、島嶼(とうしょ)部の医師不足解消に向けて、県外からの転入を希望する医師に対し、旅費と支度金を支援する事業に取り組む。
都道府県では初めての試みだ。
対象は、小豆島にある公立2病院と1診療所、広島や佐柳島、志々島など11島のへき地診療所に赴任する医師。
医師と家族が現地を下見をする際の旅費や宿泊費などを25万円を上限に全額支援。さらに転入が決まった場合、100万円を上限に、当該市町が負担する支度金の半額を助成する。
滋賀県もへき地の医療機関に転入する医師に支度金を支給しているが、離島を対象にした制度を都道府県が設けるのは例がなかったという。
県内の医師数(2010年)は人口10万人あたり253・7人で全国平均(219人)を上回っている。しかし、五つの保健医療圏のうち、小豆保健医療圏(土庄、小豆島両町)は147・1人で最も少ない。中西讃地域のへき地診療所は、非常勤医師が週に何日か巡回しているケースがほとんどだ。
県は昨年度、医師を対象にした無料紹介所「県地域医療支援センター」を県庁内に設け、インターネットでも医療機関の求職情報の提供を開始。さらに今月、東京で開かれた「県移住フェア」でも医師向けの相談コーナーを設け、勧誘活動に注力している。
県医務国保課は「島嶼(とうしょ)部は都市部より高齢化が進んでおり、これからますます医療需要が高まる。青い海に囲まれ、地域医療に貢献したいという人材にぜひ来てもらいたい」とPRしている。
上小阿仁村で唯一の医療機関「村立上小阿仁国保診療所」で所長を務める岸部陞(すすむ)医師(76)が、今月30日付で退職することが25日、わかった。村は後任の医師を公募中だが、応募はない。このため、5月から診療時間を大幅に縮小せざるを得ず、村民の健康への影響が懸念されている。
元北秋田市長でもある岸部医師は昨年11月、当時所長を務めていた医師が健康上の問題を理由に退職したため、後任が見つかるまでの臨時で所長に就任。内科と外科を担当してきた。
村によると、岸部医師は3月下旬、村長に直接辞意を伝えた。北秋田市の介護福祉施設で施設長に就任するためで、所長就任前から打診されていたという。
加賀谷敏明・副村長は読売新聞の取材に対し、「多方面から引き合いがあるなか、村の窮状を理解して来ていただいたので、退職はやむを得ない」と話した。
後任が決まるまで、月曜だけ診察している泌尿器科の佐々木秀平医師(70)が、臨時で所長を務める。だが、内科と外科の専門医がいないため、5月以降、毎週火曜-木曜は休診となる。金曜日は外部から医師を招き、2時間だけ内科と外科の診察をする。村民への影響を懸念し、村は希望者を北秋田市内の医療機関まで無料で送迎するバスを運行する。
加賀谷副村長は「せめて1日おきに外部から医師が来る態勢が整うまで、送迎を続ける。できる限り柔軟に対応し、村民の健康に影響が出ないようにしたい」と話した。
同村は人口2697人(3月末時点)で、高齢化率は県内最高の45・3%。同診療所を巡っては、2011年5月、所長の女性医師が一部村民からの中傷を受けて辞めるなど、公募で任命された所長医師4人が08年12月-12年11月、連続して自ら退職した。岸部医師は公募ではないが、4年4か月で所長医師5人が辞めることになる。
コンタクトの診療報酬不正請求 3診療所の指定を取り消し |
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厚生労働省近畿厚生局は24日、コンタクトレンズを処方する際の診療報酬に不正請求があったとして、ふじいクリニック(神戸市北区)▽くわしまクリニック(姫路市)▽やましろクリニック(加古川市)―を事実上の保険医療機関の取り消しにした。不正請求の金額は計約48万円。今後、返還を求める。いずれも既に閉院しているが、5年間は保険医療機関の再指定を受けられない。
がん検診実施の千葉市、見落とし調査せず、義務化の内規に反し、女性死亡 |
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千葉市が実施する肺がん検診で、担当医ががんを見落としたために手遅れとなり、市内の女性(当時59歳)が2007年に死亡していたことが分かった。医療機関側は見落としを認めて遺族に和解金を支払ったものの、市は内規で義務づけられた調査をしていない。遺族側が繰り返し調査を要望しても、市は千葉県警が立件を見送ったことを理由に拒否。医療事故調査の専門家は「再発防止のために調査は必要で、刑事責任の有無とは関係ない」と市の対応を疑問視している。
遺族や市によると、女性は05年6月と06年6月、市の肺がん検診の委託先となっている医療機関でX線検査を受け、いずれも肺に陰影がみられた。06年は前年より直径が8割程度大きかったが、医師から「異常なし」と判定された。その後、背中の痛みを訴えて別の病院を受診すると、末期の肺がんと診断され、07年11月に死亡した。
県警は業務上過失致死容疑で関係者を事情聴取するなど捜査に乗り出したが、10年3月ごろに立件を見送った。一方、医療機関側は見落としを認め、同12月に1200万円を支払うことで遺族と和解した。
当時の肺がん検診は、旧老人保健法に基づく健康診査の一環として市が40歳以上の住民に実施しており、遺族は市側とも話し合いを望んだが、理由を示されることなく拒否された。市と市医師会が結んだ契約書には「事故が起きた時は事故調査特別委員会を設置して速やかに調査する」と定められているにもかかわらず、調査委も設置されなかった。設置を求める遺族に対し、市は昨年9月に「事実確認などを行ったが、捜査が始まったことなどから結論を待つことにした。捜査結果が不送致(立件せず)とのことなどから調査委は開催しなかった」と回答した。
毎日新聞の取材に市は「遺族と医療機関の和解の際、事実関係を公表しないと決めた」などとして、詳しい説明をしていない。
◇「異常なし」4カ月後「余命1年」 再発防止、検証訴える夫
「余命は3カ月から1年です」。06年10月、女性と夫(67)は医師の言葉に耳を疑った。がんは広く転移し、手術や放射線治療も既に不可能だった。
その4カ月前に受けた肺がん検診では「異常なし」だったはずなのに……。2人が検診時のカルテを取り寄せると、「乳頭の陰影。昨年より大きい!!」と書かれてあり、肺がんの陰影を乳頭と誤認したことが疑われた。「転移がなければ手術できた可能性がある。5年間の生存率も9割近かったはず」。相談した専門家にそう言われ、夫婦は落胆した。
検診を担当した非常勤医は「右肺の異常陰影に気づいていたが、近く(乳がん発見のための)乳腺検査があることを理由に、早急の精密検査の指示を出さなかった」と手紙で謝罪。和解協議の中で医療機関側は「陰影は乳頭や肋骨(ろっこつ)と重なり、特に見つけがたい場所」と釈明した。
夫はミスを認めた医療機関側より、肺がん検診の実施主体である千葉市の姿勢に不信感を募らせる。医療事故が起きた際に調査委設置まで義務づける内規は「珍しい」(厚生労働省)とされるが、市が設置したケースはゼロ。市健康支援課は「規定ができた経緯は分からない」と言う。
夫は「市が真相究明に乗り出さないので、警察の捜査に期待したが、捜査結果を逆手に取られた。市は規定の義務を果たし、検証すべきだ。そうすることなく、検診の質の向上や再発防止ができるのか」と話している。
二審も病院が全面敗訴 心疾患見落とし、乳児死亡 |
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生後1カ月余りの女児が死亡したのは医師が先天性の心疾患を見落としたためだとして、栃木県の30代の両親が清水産婦人科クリニック(東京都江戸川区)の運営法人に5880万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は24日、一審東京地裁判決に続き全額の支払いを命じた。
判決によると、女児は07年11月、大動脈弁狭窄症で死亡した。病院側は「産婦人科医には診断が困難な心疾患だった」と過失を認めなかったが、坂井満裁判長は「遅くとも1カ月健診で心雑音を聴けば、適切に診断して他の病院に転送できた」と否定した。
父親は「ずさんな診療が命を奪った」と病院側の対応を批判した。
「てんかん危険伝えず」 小学生6人死亡事故、母親にも賠償命令 |
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栃木県鹿沼市で2011年、小学生6人がクレーン車にはねられ死亡した事故をめぐる損害賠償訴訟の判決で、宇都宮地裁は24日、当時てんかんの発作で意識を失っていた元運転手の男性(28)=自動車運転過失致死罪で懲役7年確定=と同居の母親、元勤務先の会社に対し、小学生の親計11人に計約1億2500万円を支払うよう命じた。
岩坪朗彦裁判長は判決理由で「母親には会社に(発作の危険性を)通報する義務があったのに、しなかったのは違法」と賠償責任を認定した。原告側弁護士は「成人への監督責任を認めた例はあまりなく、画期的だ」と評価した。
元勤務先の小太刀(こだち)重機(鹿沼市)は使用者責任を争わなかった。
一方、小学生の祖父母ら残る原告23人の請求は「民法の定める請求権の範囲に入らない」として棄却した。原告側は総額約3億8千万円の賠償を求めていた。
判決によると母親は元運転手に乗用車を買い与え、医師には運転していないなどとうそをついた。元運転手が以前起こした事故の刑事裁判では、てんかんについて隠していた。
さらに、事故が起きた11年4月18日の前夜に元運転手がてんかんの薬を飲んでいないことを知っていたが、会社に通報しなかった。
岩坪裁判長は「会社に通報することは容易で、事故を回避できた」と指摘した。ただ、母親は元運転手に暴力を受けたことがあることなどから「出勤をやめさせるまでの義務はなかった」と述べた。
発作で事故 三重、愛知でも
てんかん発作に関する交通事故は、2010年12月に三重県四日市市でも起きた。てんかんの持病がある歯科医師が車を運転中に発作で意識を失い、踏切待ちの男性3人に追突。2人が踏切内に押し出されて列車と衝突して死亡、1人が転んでけがをした。
判決では、歯科医師は事故前の2年間余に20回の発作を起こし、主治医から運転を控えるよう指導されていたとして、「危険性を容易に認識できた」と指摘。自動車運転過失致死傷の罪で禁錮2年10月が確定した。
愛知県岩倉市で11年7月に起きた母子2人死亡の事故も、追突した車を運転していた男性が、てんかん発作で意識を失ったのが原因だった。ただ、事故当時は男性本人もてんかんと知らず、予見が難しかったとして不起訴になった。
厳罰以外の対策も
交通裁判に詳しい高山俊吉弁護士の話 今回のケースは、母親の運転への関与が強いように見受けられ、賠償責任が認定されたのも理解できる。一方で、てんかん患者の周囲にいる人々が「自分もペナルティーを受けるのでは」と過度に運転を控えさせたり、患者自身も運転ができなくなることを恐れて症状を明かさなくなったりする事態を招く可能性もある。具体的な発作の危険がある患者は少なく、予兆がある場合も多い。厳罰や高額賠償は事故防止策の一つだが、症状をとらえて車を停止させる装置の開発なども考えるべきだ。
埼玉県吉川市と松伏町の医師でつくる吉川松伏医師会(会員76人、平井真実会長)がインフルエンザ予防接種の料金でカルテルを結んでいた疑いが強まったとして、公正取引委員会は23日、独禁法違反(事業者団体の禁止行為)の疑いで同医師会を立ち入り検査した。
医師会は「立ち入り検査を受けているのは事実だが、詳細は分からない」としている。
関係者によると、吉川松伏医師会は数年前から、季節性インフルエンザの予防接種料金について13歳以上は「4450円以上」、接種が2回必要な13歳未満の初回は「3700円以上」と下限を決めて会員の医師らに通知し、守らせていた疑いが持たれている。医師会の会合の場で料金を決めていたとみられる。
医師会関係者によると、毎年インフルエンザが流行する前の10月ごろに医師会から会員に文書が送られ「推奨価格」として下限の料金が記されているという。別の医師会関係者は「目安と言っても従わざるを得ない。会の和を乱さないためだろうが、やり方が強引だ」と話した。
厚生労働省によると、65歳未満のインフルエンザ予防接種の料金は原則として各医療機関で自由に決めることができる。
インフルエンザの予防接種料金をめぐっては、公取委が2004年、同様に価格カルテルを結んでいたとして、三重県の四日市医師会に排除勧告を出している。
心と体の性が一致しない性同一性障害の人たちでつくる「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」(東京)が23日、性別適合手術を健康保険の対象とすることを求める要望書を厚生労働省に提出した。
同会によると、性別適合手術の費用は男性から女性で150万~200万円、女性から男性で300万~440万円とされ経済的負担が大きい。社会的な性と戸籍上の性別が違うことで就職に影響し、アルバイトや派遣など不安定な仕事をしている人も多いという。
要望書では保険適用のほか、適合手術を受けた人については、健康保険証に記載される性別を適合後のものに合わせることなども求めた。
記者会見した同会の上野柚季恵理事は「性同一性障害の人は皆さんの周囲に、見えない形でたくさんいます。そういった人たちを助けてもらいたい」と訴えた。
横浜市瀬谷区の産婦人科「堀病院」で2009年、次女を出産後に母親が死亡したのは出産促進のために腹部を強く押され、肝臓破裂による多量の出血を放置されたためだとして、遺族が23日、病院を運営する「医療法人産育会」に、約7500万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。
訴状などによると、死亡した母親は神奈川県の中島里加さん=当時(39)。中島さんは09年9月17日、妊娠37週で堀病院に入院した。翌18日午後、助産師が中島さんの腹部に両手を当て、腹の上から胎児のお尻を押して分娩(ぶんべん)を促す「クリステレル胎児圧出法」を施して出産した約2時間後、心停止した。別の病院に搬送されたが出血性ショックで死亡、司法解剖で肝臓破裂が確認された。次女は無事に生まれた。
原告側弁護士は「病院側は母体に過剰な力を加えない注意義務があったのに守らず、出血性ショックを見落として救命が遅れた」と主張。堀病院の長野雄介事務長は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。
堀病院は昨年2700人のお産を扱うなど出産数が国内有数。中島さんの死亡をめぐっては、神奈川県警が業務上過失致死容疑で捜査している。
賞味期限改ざんの疑い 長野県警、菓子卸会社を捜索 |
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仕入れた菓子の賞味期限を改ざんした疑いがあるとして、長野県警は24日、食品衛生法違反(食品包装の表示基準)容疑で、同県岡谷市川岸東の菓子卸売会社「天龍堂」を家宅捜索した。
県警によると、本社と社長宅など3カ所を約20人で捜索。同社は3月下旬、同県諏訪郡の店から賞味期限が切れて返品された商品の期限を改ざん、同じころ再び店に卸した疑いが持たれている。
天龍堂は60年以上の歴史がある老舗で、売上高は年に2、3億円。かりんとうなどを仕入れ、県内各地の小売店やスーパーなどへ出荷していたという。
県によると、返品された商品の期限の書き直しなどは昨年11月から続けていたとみられる。3月下旬に小売店が気付き、同社が自主回収。健康被害は報告されていない。
自主回収の対象となった菓子の製造元には名古屋市など愛知県内の3社も含まれ、うち1社の担当者は「自主回収したという話も連絡を受けていない」と困惑した様子だった。
同社によると、2月末で依願退職した元従業員の男性が改ざんに関与したという。花岡俊博社長(48)は本紙の取材に「管理責任によりこのような事態を招き、申し訳ない。非常に経営が厳しく、返品は受け取らないよう指示していた」と語った。
政府の社会保障制度改革国民会議(会長・清家篤慶応義塾長)は22日、首相官邸で会合を開き、医療・介護分野について主な論点をまとめた。
費用や必要性を度外視した診療を避け、「必要な時に適切な場所で、最小の費用で受ける」医療への転換を打ち出した。また、病院だけに頼らず、「地域全体で治し、支える医療」への転換の必要性も盛り込んだ。
22日にまとめた「論点整理」は、急速な高齢化で社会保障費が膨らむ中、その伸びの抑制と、信頼、安心できる医療制度の実現とを両立させる狙いがある。
会議では、〈1〉国民健康保険の財政基盤を安定させるため、国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県に移管する〈2〉都道府県に対し、ベッド数や救急医療体制などを盛り込んだ地域医療計画や、地域医療の「将来ビジョン」の策定を求める〈3〉75歳以上が加入する後期高齢者医療制度への現役世代の拠出金は、賃金が高い大企業ほど負担が増す「総報酬割」を全面導入する――などの具体策で大筋一致した。
待機医師のカルテ閲覧可能に、タブレット端末配備…鳥取県立中央病院 |
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鳥取県立中央病院(鳥取市)は22日、時間外の救急診療の際に迅速な診断や医師の負担軽減が図れるように、自宅などで待機している医師が、救急搬送された患者の症状やレントゲン画像、既往症など電子カルテに記録された情報を、タブレット型多機能情報端末やスマートフォン(高機能携帯電話)から閲覧できるシステムの本格運用を始めた。
同院によると、救急外来には昨年度、月平均1320人が受診。うち救急搬送は230人に上るという。診療時間外に救急搬送された場合、当直医が専門外でも、院外から担当医が電子カルテを閲覧できれば、手術の準備などを素早く的確に指示できるほか、急を要しない場合、毎回病院に駆けつけていた医師の負担軽減にもつながるという。
神経内科や脳神経外科など12診療科の医師26人に、タブレットかスマートフォンを1台ずつ貸与。事業費約980万円で、予備機も含めて計30台を配備した。電子カルテに27万1066人分(18日現在)の医療データが登録されており、初診の患者にも対応可能。暗証番号入力などの防犯システムを導入、個人情報の保護にも配慮したという。同院は「東部の救急医療を担う病院として、迅速な対応につなげたい」としている。
松原元教授チーム、降圧剤の全論文を撤回 大規模臨床で異例 京都府立医大元教授の論文不正疑惑 |
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降圧剤「バルサルタン」の臨床試験を巡る京都府立医大の論文撤回問題で、松原弘明元教授(56)=今年2月末に辞職=のチームが、2011~12年に海外の心臓病専門誌2誌に発表した臨床試験の関連論文3本が、いずれも撤回されていたことが分かった。大学が取材に明らかにした。大学によると、元教授のチームがこの薬の効果に関して発表した論文は計6本あり、既に撤回が判明していた3本を含め、全てが撤回された。3000人の患者対象の大規模臨床試験の結果が、何ら論文として残らない異例の事態となった。
撤回が判明した3本は、米国とアイルランドの心臓病専門誌に発表されていた。冠動脈疾患や慢性腎臓病などのある高血圧患者に対するバルサルタンの効果を検証した内容。掲載誌は撤回の理由を明らかにしておらず、大学も「理由は把握していない」としている。
チームは08年、試験の実施要綱を論文にして英医学誌に発表。この論文には、薬の販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」の社員が、統計解析の責任者として名を連ねていた。だがノ社名の記載はなく、この社員の所属は兼任する「大阪市立大」となっていた。また、ノ社が08年以降、元教授の研究室に1億円余の奨学寄付金を提供していたことが毎日新聞の報道で表面化している。
元教授は、今年1月までの大学側の調査に「データ集計のミス」などと説明してきたが、単純ミスなら撤回せずに修正で対応するのが一般的とされる。
元教授を巡っては今月11日、大学の調査委員会が「元教授が関わった14論文に不正があった」と公表している。この14本はバルサルタンとは関係がない。
難病などの子どもに対し20歳になるまで医療費が助成される「小児慢性特定疾患治療研究事業」の対象患者で、成人後も治療を続けている人は最大で5万人近くいるとみられることが、厚生労働省研究班(代表者=尾島俊之・浜松医大教授)の全国調査でわかった。
患者の6割が医療費の助成を受けておらず、重い自己負担を強いられているケースも多いとみられ、切れ目のない助成制度のあり方が求められそうだ。
事業は1974年に始まり、2005年に児童福祉法に定められた。対象となる病気は514種類。10年度の総事業費は251億円で、約11万人が給付を受けた。自己負担は所得に応じ、入院の場合は月最大1万1500円、外来では5750円で済む。成人後に国の難病対策の助成対象となる「特定疾患」は56種類。小児の対象の病気と重なるのは15種類しかなく、多くは支援対象から外れる。
調査は研究班が11年、全国の1万2678の医療機関に郵送で実施。5640施設(回収率44%)から回答があった。
20歳以降も治療を続けている患者がいると報告したのは640施設(回答施設の11%)で、計6356人いた。研究班が推計した結果、こういった患者は全国で最大4万7476人にのぼると算出された。
さらに、969人の患者を対象にした追加調査に、839人(回答率87%)が回答。患者は20歳代が77%と最も多いが、30歳代も18%、40歳以上も5%おり、治療が長期にわたるケースもあることがわかった。
日本の医療機器や医薬品、医療サービスの海外展開を支援するため、官民共同で設置する新組織の概要が判明した。
2011年に設立された社団法人「メディカル・エクセレンス・ジャパン」(MEJ)を改組し、同名の組織として近く活動を開始する。政府は医療産業を成長戦略の柱と位置づけており、海外の医療制度の情報提供などを通じ新MEJを支援する。
新MEJは今月23日にも発足する予定で、島津製作所や富士フイルムといった最先端医療を支える医療機器メーカーなど23社が参加する。海外で病院などの建設事業が行われることを視野に、大手ゼネコンも参加に意欲を示している。
政府は、先端的な医療機器や新薬の開発を進めるため、米国立衛生研究所(NIH)にならった日本版NIHを設立する方針をすでに固めている。NIHは開発、MEJは販売をそれぞれ支援することで、医療産業の発展につながることを期待している。
現在のMEJは、日本に治療に訪れる外国人患者のビザ取得支援や病院紹介などを業務としている。政府はこれを「医療産業の海外展開の中核的役割を担う組織」(政府筋)に改める方針だ。
医師が立ち会わないがん検診車でのX線撮影を厚生労働省が「違法」と判断し、山口県下関市が検診車の運用を中止している問題で、県市長会は18日、医師不在でも撮影できるように法改正することを同省に要望することを決めた。
山口市で開かれた定例会議で法改正などを求める議案を全会一致で可決した。同省には、法改正までの間は、これまで通りの運用を認めることも要望し、県には、県独自の判断で検診できる見解を出すよう求める。
議案は、下関市と、一部で検診を中止する可能性がある周南市が「法律が現状に即していない」などとして提出。市長会長の白井博文・山陽小野田市長が「非常に低いレベルの違反で、独自に運用できる問題だ」との見解を示した。一方で、「法令に抵触するのは事実。職員に(検診を)実行するようには言えない」(岩国市)などとする意見も出たため、結論が出るまでは、各市の判断に任せることを確認した。要望は、白井市長が上京して同省の担当者に伝える。
厚生労働省の医療事故の調査のあり方を議論する検討部会は18日、医療行為に関連した死亡事例の原因究明について、病院内の調査を原則とし、新たに設置する第三者機関への届け出を義務づける方針を示した。
厚労省は今夏までに意見をとりまとめ、今秋に予定している医療法改正に盛り込む考えだ。
検討部会では、医療事故の原因究明と再発防止に向け、昨年2月から議論を続けている。
18日までの議論では、原因究明は院内調査を先行させ、遺体の解剖や画像診断などを行った上で、結果を遺族に説明する。院内に設置する事故調査委員会の中立性や透明性を高めるため、必要に応じて、医師など外部の専門家をメンバーに加えることができるとした。
沖縄県浦添市の医療法人・八重瀬(やえせ)会が運営している同仁病院で、13日に行われた生体腎移植の腎臓提供者の女性(65)が、手術中に死亡していたことが、関係者への取材でわかった。
日本移植学会によると、生体腎移植はこれまでに約2万件行われているが、腎臓提供者が死亡したのは初めて。
関係者によると、女性は13日、息子(43)に腎臓を提供するため、腹部に小さな穴を開けて、腎臓を取り出す腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を受けた。しかし、手術中に腎臓とは別の部位から出血し、死亡。医師が立ち会っていた家族に状況を説明したところ、移植手術の継続を希望したため、手術は最後まで行われ、息子への移植は成功した。その後、息子の容体は良好だという。
同病院によると、これまでに生体腎移植手術は27例あり、事故はなかった。病院は14日に県警に事故を届け出て、院内でも死亡原因などについて内部調査を始めた。日本移植学会にも事実関係を報告した。
細胞のイオン動き 直接観察できる装置を開発…世界初 |
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豊橋技術科学大学(愛知県豊橋市)は17日、同大大学院工学研究科の沢田和明教授(49)が、これまで間接的にしか見ることができなかった細胞のイオンの動きを、直接観察できる「イオンイメージセンサー」の開発に世界で初めて成功したと発表した。
生物の体内では、細胞の水分量調節に関わるナトリウム、カリウムイオンや呼吸の調節に関係する水素イオン濃度など、イオンの動きが生命維持や健康に欠かせない働きをしている。だが、こうした化学物質は目で見えず、これまでは蛍光物質で“標識"を付けるなど間接的にしか観察することができなかった。
沢田教授の研究は、イオンが帯びている微弱な電気を窒化ケイ素膜という特殊な材質のセンサーを用いてとらえ、ビデオカメラの映像のように動画として可視化するもの。水の中に入れても正常に作動する集積回路の開発に最も苦労し、着手から実現まで13年かかったという。
生きた細胞を装置に載せてイオンの動きを直接観察できるのが特色で、この技術を使い、同大学で新たな顕微鏡開発の研究が始まったほか、国立長寿医療研究センター(大府市)ではアルツハイマー病の超早期診断に向けた検査装置の開発を進めているという。
研究成果はイオンイメージセンサーシステムとして一連の技術を包括した特許を取得。今年度の文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞した。沢田教授は「医療機器や新薬の開発など、幅広い分野に寄与できれば」と期待している。
政府は17日、日本製の医薬品や医療機器を東南アジアなどの新興国に効率的、継続的に輸出するため、医療システムやサービスなどとパッケージにして売り出す方針を固めた。
官民が連携する体制を新たに作り、「日本式の医療」を丸ごと輸出する。新興国の健康維持に貢献するとともに、医療産業を国内の成長分野に育てる狙いがある。
新興国では、結核やマラリアなどに対する医薬品の研究開発が遅れており、高度な医療サービスへの需要が高まっている。ただ、医薬品や医療機器を個別に輸出しても、他の先進国の医薬品や医療機器が先行している事例も多く、浸透が難しい面がある。
一方で、日本の平均寿命の長さや、乳幼児の死亡率の低さをもたらした保健制度に対しての世界的な評価は高い。パッケージでの輸出を推進することにした背景には、保健制度をはじめとする日本の医療システム全体のノウハウを新興国にもたらすことで、それに対応した病院の建設や、医療機器、医薬品、各種保険の安定的な輸出につながるとの考え方がある。
香川県立中央病院(高松市)の歯科口腔外科で昨年8月、患者に対し、抜歯予定だった歯とは別の歯を抜くミスがあったことがわかった。医療事故として院内調査を行っていたが、「命に関わるトラブルではない」として公表していなかった。
県の県立病院課によると、患者は別の医療機関で受けている歯列矯正治療の一環で、抜歯のために入院し、4本の「親知らず」を取り除く手術を受けた。しかし、医師が4本のうち1本について誤って隣の歯を抜いたという。
直後に医師らがミスに気づき、患者と家族に謝罪。翌月に院内の事故調査委員会で原因を調べた結果、抜くべき親知らずが歯茎に埋もれており、隣の歯が虫歯になっていたことから、確認が不十分になったと結論づけた。今後は手術前の確認を徹底するという。
患者は親知らずを残して歯列矯正を続行。性別や年齢について、同課は「個人情報保護の観点から明らかにできない」としている。
血液製剤の投与でC型肝炎ウイルスに感染したが、カルテなどの証拠がなくて法的救済を受けられていないとする患者らの弁護団は16日、過去に被害救済の給付金を受けた約1970人分の情報公開を国に求める訴訟を東京地裁に起こした。
弁護団は、開示情報を基に血液製剤の投与時期や場所などを分析すれば、患者らの立証に役立つとしている。
薬害C型肝炎の被害者には、症状に応じて1200万~4000万円が支給されるが、訴訟で投与の事実を示す必要があり、証拠に乏しい患者らの立証は難航している。
弁護団は今年1月、新たな証拠とするため、過去の救済事例の情報公開を厚生労働省に求めたが、同省は「個人情報に該当するほか、国の内部資料で、公にすると弊害がある」と拒否。これに対し、訴状では「具体的な支障が生じる可能性はなく、不開示には理由がない」としている。
兵庫県の基幹災害拠点病院の一つ、神戸大医学部付属病院(神戸市中央区)が今月5日から、新規の救急搬送患者の受け入れを中止していることがわかった。
救急部の常勤医ら9人のうち6人が、今月下旬から5月末の間に順次退職し、人手が足りなくなるため。同病院にかかりつけの患者の受け入れは続けているが、再開は早くても数か月後といい、地域医療への影響が心配されている。
16日に記者会見した杉村和朗病院長によると、6人は他病院への異動などで辞めるという。新規救急搬送患者の受け入れ制限を決めた病院は今月4日、県や神戸市消防局に通知した。
同病院の救急部では昨年、延べ約6600人の患者を受け入れ、このうち病院で一度も受診歴のない新規の救急搬送患者は約420人。杉村病院長は「一日も早く受け入れ制限を解除できるよう、後任医師の確保に最大限努力したい」と述べた。
同病院によると、3月にあった救急部の教授選で、救急診療体制の改革を掲げる他大学の医師が新教授に決まった。これに異議を唱える副部長が辞意を明らかにし、さらに5人が別の病院に移るなどするという。
徳島赤十字病院救急科の看護師・勝占(かつら)智子さん(31)(徳島市勝占町)が23日から2か月間、イラク北部の紛争地域の戦傷外科病院で、実地看護研修を受けることになった。
研修は日本赤十字社が2011年1月から続けており、県からの派遣は初めて。勝占さんは「紛争地域でも深い傷を負った人たちに寄り添いたい」と話している。
戦傷外科は、銃撃や砲撃、地雷の爆発などによる負傷者を専門に扱う。勝占さんはイラクの首都バグダッドから北に約300キロ離れたクルド地域の都市エルビルにある病床数約40の戦傷外科専門病院で、実際に傷を負った市民や兵士らの手当てをする。
勝占さんは鳥取大医学部保健学科卒で2004年から同病院で看護師として働いてきた。当時から海外志向が強く、09年には日赤が行うフィリピンの開発支援事業に参加。その経験から、「海外には過酷な現状があるが、どんな場所でも看護師は絶対に必要」と感じ、紛争地での医療支援などについて書かれた書物を読むうちに、紛争地域の医療に携わりたいと思うようになったという。
現地では、病院にいる約90人の看護師の中で、唯一の外国人となる。イスラム圏のため、体のラインを隠す服装や肌を見せないスカーフは必須だが、「その地域独自の決まりを尊重したい」と、異文化での生活にも前向き。現地語であるクルド語の習得にも意欲的だ。
8日に県庁で飯泉知事から「自己の安全にもしっかり気をつけ、日の丸を背負う思いも持って頑張ってきてほしい」と激励を受けた勝占さんは「しっかり準備をしてきたので怖くはない。周りの人たちと協力して困難に立ち向かいたい」と意気込んでいる。
<壮行会に120人>
勝占さんが現地に向かうのを前に、徳島赤十字病院で15日、職員約120人による壮行会が行われた。
冒頭、日浅芳一院長が「自己の安全を守りながら、病院の顔としてしっかり救護活動にあたってほしい」と激励。庄野泰乃副院長兼看護部長も「今回の経験でさらに成長してくれると思う。精いっぱい頑張ってきてほしい」と述べ、勝占さんに花束を手渡した。
勝占さんは「自分で見て体験し、困難な状況での看護を学び、得たものを帰国後、皆さんに伝えたい」と応じ、大きな拍手を受けていた。
福井・嶺南医療振興財団 奨学生2人初の病院勤務 |
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嶺南地域での医師確保を目的とした奨学金制度を運営する嶺南医療振興財団(福井県美浜町)は、奨学生2人が今月から公立小浜病院(小浜市)で勤務を始めた、と発表した。2007年度に奨学金制度が創設されて以来、初めてという。
財団は、原子力発電所が集中立地する嶺南地域の医師確保を目的に、関西電力などが出資して2007年3月に設立された。主要事業は奨学金制度で、将来的に嶺南の公的な病院や診療所に勤務する約束で医学生に最長6年間、1人あたり計約1080万円貸与している。
奨学生は、指定医療機関で一定期間勤務すれば奨学金の返済を免除される。財団事務局によると、今月から小浜病院に配属された福井大卒の男女2人は4年間、奨学金の貸与を受けた。他の奨学生は12年度までに計44人(辞退者を含む)おり、14、15年度に4人ずつが勤務を始める予定という。
財団事務局は「奨学生の活躍を楽しみにしている。今後も嶺南地域の医師不足の解消に少しでも貢献できれば」と話していた。
財団は5月2日まで今年度の奨学生を3人募集している。問い合わせは同財団(050・3565・5860)へ。
金沢大付属病院(金沢市宝町)は5月から、がん患者やその家族から不安や悩みの相談を受けて、精神的にサポートする専門外来「がん哲学外来」を開設する。精神療法の知識を持つ医師が週一回対応し、「生と死」に向き合う患者らを支援する。
担当する麻酔科蘇生科の山田圭輔医師(46)によると、哲学外来は、カフェで話をするような感覚で患者から話を聞き、苦悩を解消してもらう場を目指す。患者の家族からの相談も受け付ける。
開設は5月7日。患者が置かれている現在の苦境だけではなく、人生全体を客観的に見つめてもらうことで、病気への不安などから感情的になり、自分を見失わないよう助言などを行う。毎週火曜日の午後、2組の相談に応じる。1回当たりの時間は約40分。検査や薬の処方などの医療行為は行わない。
山田医師によると、がん患者を巡っては、身体や精神、経済的な苦痛のほか、死を身近に感じて生きる希望を見失うなどの「スピリチュアルペイン」と呼ばれる問題が指摘されている。投薬などで一定程度、対応出来る身体的苦痛などに対し、スピリチュアルペインへの専門的な対応は不十分なのが現状だという。
「哲学外来」はこうした患者の不安を和らげようと、順天堂大学医学部の樋野興夫
おきお
教授が提唱し、2008年に同大病院で期間限定で始めた。岩手県や長野県の病院で同様の取り組みが行われるなど、徐々に全国各地に広がっている。
山田医師は「がん患者には『何のために生きているのか』『何をしても楽しくない』と話す人も少なくないが、こうした点は医学だけでは解決できない」とし、「本人の答えを引き出す手伝いをしたい。患者とどう接していいか悩む家族にも気軽に訪ねてもらえれば」と呼びかけている。
金沢大付属病院の「がん哲学外来」は前日までの予約が必要。保険診療可。申し込みは同病院予約センター((電)076・265・2933)へ。
◇
厚生労働省によると、国内のがんによる死者数は年間約35万人(2011年)で、2人に1人が罹患
りかん
する可能性があると推計されるという。
国は、12年度に示したがん対策の基本方針「がん対策推進基本計画」で、治療の質向上などとあわせて、「患者と家族の精神心理的苦痛に対する心のケア」を重点課題に設定。「スピリチュアルな苦痛」緩和も対策充実が必要とした。
同省がん対策・健康増進課は「医療行為だけでなく、相談や情報提供など周辺支援も求められている」として、患者側の強い要請も背景にあるとする。
広島大病院(広島市南区)は12日、成人15人分の致死量に相当する筋弛緩剤「エスラックス」5本(計250ミリ・グラム)を紛失したと発表した。
同病院は「手術などで持ち出した際、間違った在庫数を帳簿に記入した可能性がある」と説明しているが、広島県警は薬事法違反の疑いもあるとみて管理状況などを調べている。
エスラックスは薬事法で毒物指定され、施錠した場所での管理が義務付けられている。病院の発表によると、同剤は入院棟1階の薬剤部にある保管庫で管理していたが、11日午前、薬剤師が治療で使うため取り出そうとしたところ、帳簿上は105本あるはずの在庫が100本しかなかった。
不妊治療患者の半数以上が、治療費に総額100万円以上をかけていることが、NPO法人「Fine」(東京都江東区、松本亜樹子理事長)がまとめた調査でわかった。
調査は昨年12月から今年3月にかけて、インターネットで実施、不妊治療経験者と治療中の患者計1993人から回答を得た。
これまで100万円以上の治療費がかかった人は55%で、3年前の前回調査(47%)より増えた。「経済的な負担を理由に、高額な治療に進むことをちゅうちょ、延期したことはあるか」との問いに、「非常にある」「ややある」と答えた人は81%に上り、「消費者金融からお金を借りている」という声もあった。
4人に1人が治療のことを職場の誰にも話しておらず、「派遣の契約に響く」「不妊への偏見が強い」などが理由だった。
長野県内のがん治療の新たな拠点となる「信州がんセンター」が信大付属病院(松本市旭)に設置され、11日に開設式が行われた。
院内のがん総合医療センターを発展させたもので、がん治療のほか、県内の病院との連携強化で治療データなどを共有し、県全体のがん医療のレベルアップを図る。
信州がんセンターは、化学療法や放射線治療など、複数の治療法を施す「集学的治療」、患者の心身ケアやカウンセリングを担う「支援」、患者データの収集や病院間でデータをやりとりする「がん登録」の3部門で構成。がん総合医療センターを発展整備させた。
県内のがん治療はこれまで、がん総合医療センターを中心に、同じ松本市の相澤病院や長野市民病院、飯田市立病院など県が指定する八つの「がん診療連携拠点病院」が担ってきた。しかし、患者や治療の情報の共有や発信が十分でなく、どの病院がどの治療を得意としているのかが患者側にうまく伝わらなかった。
信州がんセンターは、がん拠点病院間の連携強化を目的に、各病院から患者や治療のデータを提供してもらい、症状に適した病院や専門医を患者に紹介。各病院に指導や助言を行うことで県全体の治療レベルの底上げも図っていく。
県内で質の高いがん治療が完結できるようにと信大医学部は同時に「包括的がん治療学講座」を新設。化学療法や放射線治療、緩和医療の専門医が指導スタッフとなり、県内で活躍する専門医の輩出を狙う。信大付属病院がコーディネート役となり、各病院との人材交流も幅広く行う方針。
開設式で天野直二病院長は「私たちにとって悲願の施設。県全体のがん医療レベルの向上につなげられるようにしたい」と述べた。
がん患者の遺族らでつくる「がん医療を考える県民の会」の小原正久代表(70)は「各病院の強みを集約し、がんで苦しむ患者にとって希望となる施設になってほしい。信州のがん治療が全国のモデルケースとなることを期待してやまない」と話した。
放射線影響研究所(放影研=広島市・長崎市)の大久保利晃理事長は11日、被爆者団体からの調査資料公開などを求める質問状に対し、「正しい計画に基づいた研究には積極的に提供する」などと回答した。
放影研は昨年12月、原爆投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」を浴びた約1万3000人分の調査データを分析し、「黒い雨によるがんのリスク増加は見られなかった」と発表。これを受けて3月末、広島県原爆被害者団体協議会(金子一士理事長)と県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会(高野正明会長)が、「調査資料が恣意(しい)的に使われている疑念がある」などとする質問状を提出、資料公開を求めていた。
大久保理事長はこの日、「誰にでもデータを公開するのは、提供してくれた被爆者の本意ではない」とした上で、研究者らが計画を示し、放影研の審査をパスした場合には「積極的に(資料を)提供するのが義務だと考えている」と述べた。また、血液など数量が限られる資料の活用については、外部の研究者や有識者らによる議論が望ましいとの見解を示した。
強毒性の新型インフルエンザの発生に備え、政府が改定を検討している行動計画案が明らかになった。
13日の特別措置法施行に伴うもので、感染拡大を極力抑えながら、社会機能や経済活動の維持を図る。国の「緊急事態宣言」後、都道府県知事は医師らに必要な医療を行うよう指示でき、医師らが感染による被害を受けた場合には補償を行うことも明記。16日の有識者会議を経てパブリックコメントを募り、5月末にも閣議決定される見通しだ。
新型インフルエンザは、通常の季節性とは異なるウイルスで大流行を引き起こし、重症度の高いもの。今回中国で感染者が出ている鳥インフルエンザ(H7N9型)は、人から人への継続的な感染が確認されておらず、今のところ該当しない。
不妊治療への公費助成について、厚生労働省は、対象年齢に上限を定めることを含めた制度改正の検討を始める。
同省研究班(代表者=吉村泰典・慶大教授)が、40歳以上では医学的な有効性や安全性が低く、「公的助成に年齢制限を設ける場合、39歳以下とするのが望ましい」とする報告書を先月まとめたため。同省は産科医や患者らによる有識者会議を近く設け、助成のあり方について検討する。
不妊治療は保険がきかず、体外受精などの高度治療には、採卵を含む場合1回30万~40万円程度かかる。助成事業は2004年に開始された。国と都道府県などが2分の1ずつ負担し、1回最大15万円が補助される。
04年度約1万8000件だった受給件数は、11年度は約11万3000件と6倍以上に急増した。1件15万円とすると11年度は約170億円かかった。
今月から始まった新型出生前診断について、読売新聞が全国15の認定施設に対して実施状況をアンケート調査したところ、受け入れ可能な妊婦の数は、回答した13施設の合計で、月間最大約450人にとどまっていることがわかった。
調査は4月上旬に実施。1週間に対応できる妊婦の数は、施設によって2人から20人と幅があった。十分な遺伝カウンセリングの義務づけなどの認定条件から受け入れ人数が限られ、検査を断ったケースも見られた。従来の出生前診断である羊水検査は全国で年間約1万6000件、母体血清マーカー検査は約2万件が行われている。流産の危険がない新型検査は、潜在的な需要が多いとみられる。
昭和大病院(東京)は、1日から遺伝カウンセリングと採血を始めた。週10人の予約枠は6月上旬まで埋まり、予約がとれなかった妊婦もいた。
幹細胞移植:動物実験経ない臨床試験 不正5論文、倫理委パス 京都府医大・松原元教授が申請 |
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京都府立医大(京都市上京区)のチームが2004年、動物実験を経ずに心臓の血管再生を図る臨床試験をした問題で、責任者の松原弘明元教授(56)=2月末に辞職=が、学内の倫理委員会に臨床試験を申請する際、5本の「不正」論文を研究実績として示していたことが、大学側が公開した文書などから分かった。大学側は11日に記者会見し、この5本を含む01~11年に松原元教授が関与した14論文で計52カ所の不正があったと発表。副学長らが陳謝し、「臨床試験についてこれから検証が必要だ」とした。
毎日新聞の情報公開請求に大学側が開示した文書によると、松原元教授は、03年6月9日付の申請書を学内の「人間を対象とする医学研究審査委員会」(現在は医学倫理審査委員会に統合)に提出。この中に「申請責任者による関連する発表論文」の一覧があり、松原元教授が名を連ねた7本の論文が記載されていた。だが、このうち5本は、大学側が11日に「不正があった」と明らかにした論文だった。
倫理委は、申請から約1カ月後の同年7月17日付で臨床試験を承認したが、この間の審議については「議事録を作成していない」(大学総務課)ために不明なままだ。
松原元教授らは04年2月、急性心筋梗塞(こうそく)の患者の血液から血管の基になる幹細胞を採取し、失われた心臓の血管の働きの再生を図る「世界初」の治療を実施したと発表。しかし、論文不正疑惑を調べていた大学の調査委の聞き取りに対し、松原元教授は動物実験を行っていなかったことを認め、元教授が試験の「参考にした」とする慢性心筋梗塞のブタを使った研究論文は、血管を書き加えるなどの改ざんがあったことが分かった。
松原元教授を巡っては、降圧剤の「バルサルタン」の効果に関する論文3本が「重大な問題がある」として掲載誌から撤回された問題があり、大学が調査している。
◇副学長「倫理上も問題」
京都府立医大の伏木信次副学長は11日、今回の臨床試験を巡る問題について、「誠に遺憾。倫理上も問題がある」と記者会見で陳謝した。だが一方で、倫理委員会が松原元教授の臨床試験を審査した03年の経緯については、「海外で類似の(臨床)事例があるため、安全上は問題ないと考えた」と説明した。
伏木副学長は当時の倫理委の委員長だった。
倫理委が複数の不正論文を見逃していたことについて、会見に同席した、論文不正に関する調査委員会の木下茂・委員長は「当時は不正論文だと分からなかった上、ドイツの著名な研究者が類似の手法で行っており、仕方がなかった面がある」としながらも、「現在ならば、きちんと動物実験でも急性心筋梗塞(こうそく)のモデルでやらなければ認められない」と話した。
松原元教授は調査結果について、「基礎実験(動物実験)を実施していないことが倫理上問題ならば、それは許可した倫理委の問題だ」と、調査委に不服申し立てをしていたが、調査委は認めず、この日の公表となった。
また、大学側は松原元教授が関与した論文のうち、14本に計52カ所の捏造(ねつぞう)や改ざんなどがあったとの調査結果も公表した。今後、大学を運営する法人が元教授の処分を検討する。
木下委員長は「すべての論文に関与しているのは松原氏だけで、責任は重い。(我々も)もっと早く見いだせれば良かったが……」と話した。14本は2001~11年の発表。顕微鏡写真などの画像について、回転や拡大・縮小によって別画像に見せかけるなどの不正があったとした。
調査委は、外部から指摘を受けた大学側が11年12月に学外の有識者を交えて設置。元教授がかつて所属した関西医大在籍中(03年3月まで)に関与した論文を含む18本を調べた。
◇元教授の代理人「捏造事実ない」
松原元教授の代理人、藤田正樹弁護士(京都弁護士会)は11日、京都市内で記者会見し「(松原元教授が)改ざんや捏造(ねつぞう)をしたり、指示した事実はない」と反論した。松原元教授は心因性疾患で入院中という。
藤田弁護士は「調査対象の論文には多数の執筆者がかかわっている。一部に改ざん・捏造が指摘され、十分に監督責任を果たせなかったことは反省している」などと、松原元教授の主張を説明した。
また、調査委員会の調査は厳密さを欠くとして、今後、名誉毀損(きそん)などの法的措置を検討するとした。
薬を大量に服用した高校2年の女子生徒=当時(18)=の処置を怠り、死亡させたとして、福岡県警は11日までに、業務上過失致死容疑で産業医大病院(北九州市八幡西区)の神経・精神科に勤務していた男性医師を書類送検する方針を固めた。捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、主治医だった男性医師は同病院で生徒に適切な治療などをせず、死亡させた疑いが持たれている。
両親は産業医大などに計約1億円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁小倉支部に起こし、係争中。
訴状によると、2009年4月19日夜、うつ病などを患っていた生徒は薬を大量に服用したと両親に告げ、足元がふらつく状態となった。両親は車で同病院に運んだが、男性医師は車内で眠っている生徒を外から見ただけで病院内に運ぶなどの処置をせず、そのまま帰宅させたという。
翌日も容体が回復せず、両親は数回、診察を希望したが、男性医師は電話で「必要ない」などと回答。生徒は21日朝に死亡し、死因は急性薬物中毒とされた。
佐賀県は10日、昨年6月に死亡した県北部の農業男性(60歳代)がマダニを介して感染する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスの感染者だったと発表した。
県によると、国内の感染確認は11件目で、死者は7人目。
県によると、男性は昨年6月中旬、発熱や筋肉痛などの症状を訴え、近くの病院で受診。その後、症状が悪化し、別の病院に搬送されたが、同下旬に死亡した。死亡直前には海外への渡航歴はなかった。SFTSの特徴的症状が見られたため、血液を国立感染症研究所で調べた結果、感染が確認されたという。
今月から始まった新型出生前診断について、読売新聞が全国15の認定施設に対して実施状況をアンケート調査したところ、受け入れ可能な妊婦の数は、回答した13施設の合計で、月間最大約450人にとどまっていることがわかった。
調査は4月上旬に実施。1週間に対応できる妊婦の数は、施設によって2人から20人と幅があった。十分な遺伝カウンセリングの義務づけなどの認定条件から受け入れ人数が限られ、検査を断ったケースも見られた。従来の出生前診断である羊水検査は全国で年間約1万6000件、母体血清マーカー検査は約2万件が行われている。流産の危険がない新型検査は、潜在的な需要が多いとみられる。
昭和大病院(東京)は、1日から遺伝カウンセリングと採血を始めた。週10人の予約枠は6月上旬まで埋まり、予約がとれなかった妊婦もいた。
国際的に問題となっている偽造薬により健康被害を起こした人は、2005~10年に、世界で少なくとも1337人に上り、うち424人が死亡していたことが厚生労働省研究班の調査でわかった。
偽造薬は、不当な利益を得るため、正規の薬に似せて販売されているニセ薬のこと。調査は、10年までに発表された英語の学術論文で、偽造薬について記載のある1608件のうち健康被害とその原因が書かれたものを分析し、把握できた25件をまとめた。
それによると、被害の発生国は発展途上国64%、先進国36%。薬の種類は、解熱鎮痛・せき止め薬が36%と最も多く、次いで糖尿病治療薬と性機能改善薬がともに12%だった。
把握事例の4割を占める10件が2005年以降に発生。
具体例としては、抗がん剤の一種ベバシズマブの偽造薬で目の治療を受けた80人が急性眼内炎を起こした中国の例(10年)や、血液の凝固を防ぐ薬ヘパリンに中国産の偽造原料が使われたと見られ、785人がアレルギー反応を起こしたアメリカの例(08年)などがあった。
今回の調査結果に国内の被害事例はなかったが、調査に当たった金沢大の木村和子教授は「偽造薬の健康被害は表面化しないものが多く、今回の調査結果も氷山の一角。日本でも最近、インターネットの個人輸入で被害が出ており、危険性をもっと認識する必要がある」と警告している。
最高レベル感染症研究施設、長崎大構想に根強い不安感 |
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長崎大が、長崎市内の医学部キャンパスに、最も危険性のレベルが高い感染症も研究できる「高度安全実験施設(BSL4=Bio Safety Level4)」を建設する構想を発表してから、間もなく1年。中国で鳥インフルエンザによる死者が相次ぐなど感染症への備えは国際的な課題だが、安全性に対する地元の不安感は根強く、先行きは不透明なままだ。
「映画では患者がくしゃみをしただけで病原菌が広がり、死者がたくさん出ていたが、どうなのか」
「危険な病原菌が患者との接触やダニの媒介で感染することはありますが、くしゃみ1回で街中が感染することはありません」
長崎市中央部の住宅地にある医学部キャンパスから約550メートル離れた公民館で2月6日、住民約50人が出席して開かれたBSL4施設の説明会。同大熱帯医学研究所の堀尾政博教授は、わかりやすい言葉を選びながら質問に答えた。
建設予定地の発表は昨年4月25日。6日後に開かれた初の住民説明会では「安全神話が崩れた原発の二の舞いになる」「住み慣れた町を逃げ出すわけにはいかない」といった悲痛な声も上がった。
厚生労働省は、「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」と判定された人の医療費がその他の人に比べ、平均で年約9万円高くなっているとする調査結果をまとめた。
メタボと判定された人と、血糖など調査項目すべてで異常がなかった人との差が最大だったのは45~49歳の女性で、年18万130円多かった。政府は、国民の健康増進と医療費抑制のため、6月にまとめる「健康・医療戦略」で、メタボと判定される人を減らすための施策を盛り込む考えだ。
厚労省によると、メタボと医療費の関係を調査した国レベルの大規模調査は初めて。調査は、厚労省が2009年度の特定健診結果と、10年度の医療機関の治療実績を示したレセプト(診療報酬明細書)を突き合わせることができた約269万人について、男女別、年齢階級別に分析した。
厚生労働省は5日、ジェネリック医薬品(後発薬)の普及に関するロードマップ(行程表)を公表した。
2017年度末までに使用率を60%と、現状から20ポイント引き上げる目標を掲げた。医師や薬剤師への積極的な情報提供を図る体制を作り、品質への信用を上げる戦略だ。
同じ成分で価格が安い後発薬は、医療費抑制につながり患者負担も軽くなるとして、厚労省は普及を推進している。ロードマップでは、先発薬と後発薬の合計使用量のうち後発薬の割合を60%にするとした。普及が進むフランスやスペインの使用率を参考にした。
厚労省は12年度末までに50%強とする計画だったが、11年9月時点で40%。普及が進まない背景には、医師らが後発品の品質を心配している点がある。
大阪市北区の総合病院「北野病院」で昨年7月、成人15人分の致死量に相当する筋弛緩剤「エスラックス」5本(計250ミリ・グラム)が紛失した問題で、大阪府警曽根崎署は4日、管理がずさんだったとして、同病院と、麻酔薬管理を担当する男性医師(54)を薬事法違反容疑で書類送検したと発表した。
同署によると、同月4~7日頃、同法で毒物に指定され、施錠した場所での保管が義務付けられている筋弛緩剤を手術準備室の保管金庫内に無施錠のまま保管した疑い。男性医師は「頻繁に使うので鍵をかけないことがあった」と話しているという。同7日朝に紛失が発覚、病院が同署に届けていた。一般人は立ち入れない場所で悪用された形跡もなく、同署は誤廃棄された可能性が高いとみている。
医薬品の副作用の発生状況を的確にとらえようと、厚生労働省は今年度から、患者情報のデータベース化に取り組む。
薬の種類を問わず全国10医療機関から1000万人分の情報を集め、副作用の発生確率を算出して安全対策に生かすのが狙いだ。
データベースには、東京大、香川大、九州大などが参加し、電子カルテから薬の処方や患者の症状、検査結果の情報を集める。
同省は5日から、医師や薬剤師で作る検討会で情報の管理方法などの協議を行い、夏ごろ、すでにシステムの構築を終えた東大から運用を始める。2015年度までにのべ1000万人分の情報を集める方針だ。
情報は個人を特定できないように加工したうえで、厚労省所管の医薬品医療機器総合機構などが、薬を投与した場合としていない場合で異常行動の発生頻度を比べたり、二つの薬について副作用の発生確率を比べたりする。
妊婦の採血だけで胎児の染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断について、米国の医療機関と契約、国内での採血を予定していた都内の民間会社は4日、読売新聞の取材に対し、計画の中止を明らかにした。
中止した理由について、同社は「申し込む妊婦が想定より少なく、米国の検査会社も、日本国内での採血に難色を示したから」などとしている。
新型出生前診断を巡っては、日本医学会が認定する15施設で、1日から順次始まっている。これとは別に民間会社2社が独自に国内での検査事業を計画していた。もう1社もすでに中止を決めている。
国の難病対策が大きく見直されることになった。医療費の助成対象疾患を大幅に増やすのをはじめ、不公平感の解消を目指す。
ただ、支援対象の病名による線引きは変わらないだけに、対策の「谷間」に置かれる患者をいかに救うかが課題となっている。
厚生労働省は今年1月、難病対策の大幅な見直しを決めた。今秋にも国会に法案を提出し、早ければ2014年度の具体化を目指す。
主な見直しポイントは、医療費の助成対象を56疾患から300以上に増やすとともに、助成対象疾患の患者でも、症状の程度が一定以上の場合に助成することとし、全額公費負担だった重症患者にも所得に応じた自己負担を求めることだ。
助成対象を具体的にどうするかは今後、第三者委員会が検討する。患者の少なさや一定の診断基準があることなどの条件がある。
助成対象疾患が大幅に増えることは、これまで支援を受けられなかった患者にとって朗報だ。
一方、対象疾患でも軽症者や、自己負担ゼロだった重症者は負担増となるが、厳しい財政事情を考えると、受け入れざるを得ない面があるだろう。
ただ、医療費助成をはじめとした支援の対象を病名で決める仕組みは変わらないだけに、困難な状況でも支援が受けられない患者を残すことにもつながる。
実際、多くの患者が不安を抱いている。例えば、現状では対象でない血管奇形を患う神奈川県の男性(25)。右足の血管奇形で10回以上の手術や治療を繰り返してきた。21歳で右足を切断。ようやく障害者福祉制度の対象になったが、「そこまでいかないと何の支援もなかった」。
皮肉にも、姉は医療費助成の対象である潰瘍性大腸炎で、助成を受けて治療し、症状は改善した。「姉も大変だったが、もっと大変な病状なのにサポートがないのは疑問だった。病名による線引きには矛盾を感じる」と、男性は訴える。
やはり助成対象外の線維筋痛症で、疲労感や激しい痛みの症状がある大阪府の女性(39)は「せめてホームヘルプなどの生活支援があると助かる。病名より、生活の支障の程度によって支援が受けられるようにできないか」と話す。
医療費や研究費の助成対象疾患かどうかは、福祉サービスなど他の支援が受けられるかどうかをも左右してしまう。難病患者の生活支援制度としては、ホームヘルプなどのサービスが受けられる居宅生活支援事業がある。しかし、これも受けられるのは医療費や研究費の助成対象130疾患と関節リウマチの患者に限定され、利用率は1~2割に低迷していた。
今月施行された「障害者総合支援法」の対象に難病患者が入ったことで、この事業は廃止されたが、同法に基づく福祉サービスの対象も、当面は同事業と同じとされている。
日本難病・疾病団体協議会の水谷幸司事務局長は「病状の客観的評価ができない病気に医療費助成が難しいのはわかるが、福祉サービスは生活実態に合わせて受けられるようにすべきではないか」と指摘する。
病名がわからない患者はさらに救われない。地元に詳しい医師がおらず、診断がつかずに何年も病院を転々とする患者は少なくない。
新たな対策の下では、各都道府県に難病治療の拠点病院を指定し、地域の情報共有を進めるという。情報網を生かし、さまよう患者を減らさなければならない。
助成対象に指定されない疾患だと、医療費だけでなく福祉サービスや就労支援などあらゆる支援からこぼれ落ちるのでは、不公平感の解消は難しい。
幾重もの支援網があり、最低でもそのどれかで救われる柔軟な対策が求められている。
富山県砺波、南砺、小矢部3市の医療機関が患者の情報を共有する「となみ野メディカルネット」の運用開始式が2日、砺波市立砺波総合病院で開かれた。
受診内容をコンピューターのクリックひとつで共有でき、外出先で救急搬送された患者が、行きつけの病院と同じ情報を持つ別の病院で治療を受けられるなどの利点がある。運用するのは砺波広域圏事務組合で、市町村を越えて情報を共有するシステムは県内初という。
メディカルネットは、患者のレントゲン画像、心電図、処方した薬などを、インターネットを通じて各医療機関で見ることができる仕組み。同事務組合が昨年度、県から2億1300万円の補助を受けて導入したもので、砺波総合、北陸中央(小矢部市)、南砺市民、公立南砺中央の4病院と砺波医療圏急患センターが参加した。情報の登録には患者の同意が必要となる。
これまでは患者を別の病院へ紹介する際、医者同士がメールやファクスで連絡を取り合わないと情報が伝わらないため、同じ検査を繰り返したり、患者が服用しているものと類似の薬を処方したりする可能性があった。
砺波総合病院の伊東正太郎院長は開始式で、「医療のIT化が進んでいるが、情報共有はまだ黎明(れいめい)期。多くの機関に加わってもらい、互いに意見を出しながら、よりよいシステムにしていきたい」と語った。
同事務組合は今後、転院する患者などに登録を勧めるほか、地域内の病院や診療所にシステムへの参加を呼びかける予定だ。
山梨大学医学部付属病院(山梨県中央市下河東)は2日、内視鏡手術を行うロボットを県内で初めて導入したと発表した。
3億3000万円で購入したロボットは、人の手よりも複雑な動きができ、患者の出血量や術後の痛みの軽減につながるという。同大は6月以降、ロボットによる前立腺がん手術を始める方針だ。
同大によると、ロボットの名は「ダヴィンチSi(エスアイ)」。メスやハサミを先端に付けた金属製の3本のアームと、内視鏡カメラを付けたアームがあり、手術台から離れた場所に置かれた装置で、医師がモニターを見ながら操作する仕組みだ。アームは人の手首以上の可動域があり、より精妙な動きができるため、人の手では高い技術が必要な縫合作業が簡単になるのが最大の特長という。
ロボットは世界でも最新の型で、全国の国立大学病院でもまだ導入例は少ないという。昨年4月、このロボットを使った前立腺がん手術が健康保険適用の対象となったことを受け、同大でも導入を決めた。
現時点でダヴィンチを使った手術が健康保険の対象となっているのは前立腺がんのみだが、実費負担すれば、腎細胞がんや子宮摘出などの手術も薬事法上は認められているという。同大は6月頃までスタッフの研修を積んだ後、主に前立腺がん患者に対し、ロボット手術を勧めていく方針。
同病院の島田真路院長は「山梨の患者さんに最新の医療が提供でき、うれしい」と話した。
患者医療情報共有ネット…広島県医師会、5月にも開始 |
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広島県医師会は、患者の同意を得られた診療情報を県内の医療機関が共有できるシステム「ひろしま医療情報ネットワーク(HMネット)」を構築し、早ければ5月から運用を始めると発表した。
患者が異なる病院で同じ検査を受けるといった無駄を省けるとともに、災害時にも迅速な対応が期待できる。初年度は20病院が診療情報を提供し、500の医療機関が情報を閲覧することを目標にする。
東日本大震災では、津波被害に遭った医療機関でカルテが流出し、迅速な診療再開に支障が出た。また、普段から飲んでいる薬が流され、種類がわからなくなった患者が続出したという。
県は2011年11月に策定した「県新地域医療再生計画」で、診療情報のネットワーク化を提言。県医師会が国の補助金で、整備を進める。事業費は7億3200万円。
システムでは、ネットワークに参加する総合病院などが、患者の個人情報や入院の有無、検査結果、投薬状況などを専用サーバーで公開。閲覧希望の登録をした医療機関が情報を見ることができるようにするとともに、県医師会のサーバーにも情報を蓄積して災害時に備える。
患者には「診療情報開示カード」が渡され、ネットワークに参加する別の医療機関を受診する時にカードを提示すれば、その医療機関は患者の診療情報を閲覧することができる。あわせて、投薬情報などを確認できる別のカードも発行する。
診療情報を提供するのは、広島赤十字・原爆病院(広島市中区)、中国労災病院(呉市)、広島西医療センター(大竹市)、福山市民病院(福山市)で先行実施し、今年度中に計20病院にまで広げる。
ネットワークに参加する医療機関数は200程度の規模になる見通しで、将来的には調剤薬局からも投薬情報を集約する。県医師会の平松恵一会長は「健康安全を守るネットワーク。県民はもちろん、多くの医療機関に参加してほしい」と呼びかけている。
山梨県立中央病院(甲府市富士見)が厚生労働省の特定共同指導を受け、診療報酬の誤請求や薬剤の不適切な投与、カルテの記載漏れなどの不備を指摘されていたことが1日、わかった。
誤請求の金額は不明だが、同病院は早急に点検し、返納が必要なものは自主返納する方針。他の不備についても同省から正式に通知が届き次第、改善を図るとしている。
特定共同指導は、厚労省が全国の大学病院や臨床研修病院などの高度医療機関を抽出して、カルテや事務書類などの閲覧を通じ、適正に医療や診療請求が実施されているかなどを調査するもの。県立中央病院では、今年1月30、31日と3月22日に行われ、昨年9月~11月の3か月分の資料が調査された。
今回の調査では同省保険局医療課が、▽多数の診療報酬の誤請求▽不適切な薬剤の投与▽カルテに傷病名の記載漏れや医学的根拠のない傷病名の記載▽入院患者数に対する看護師の不足――など数十件の不備を指摘。中には、治癒した病名や診察時に疑いがあった病名をカルテに残し、最大25の傷病名を記載したままだった例もあったという。
診療報酬の誤請求については、同省は同病院に対し、調査対象の3か月を含む過去1年分を遡って自己点検し、保険者に返還するよう指導。同病院医事課は読売新聞の取材に対し、「慣例的、または認識不足だったものもあり、不備は認めざるを得ない。今後の指導に従い、体制を改善していく」としている。
南海トラフ巨大地震などによる津波に備えようと、和歌山県は和歌山市紀三井寺の県立医科大付属病院について、建物や敷地の出入り口を防水構造にするなどの浸水対策の実施を決めた。
28日に公表された県の津波浸水想定では、東海、東南海、南海の3連動地震でも、1~2メートル程度浸水すると予測されており、非常用の自家発電など病院の基本機能の維持を図る。2013年度の一般会計当初予算に設計費を計上しており、14年度中の完成を目指す。
県の新しい津波浸水想定では、県立医科大付属病院は、マグニチュード(M)9級の巨大地震で3~5メートル、100~150年周期で起きると見込まれるM8・7の3連動地震でも1~2メートル浸水すると予測している。
計画では、非常用自家発電機を備えたエネルギーセンター(標高1・8メートル、3階建て)について、浸水が予想される1階に発電機に燃料を送るためのポンプが置かれているため、入り口や物資搬入用の扉十数か所を、防水性の高い構造に変更し、天井部分を走る送電線についても念のために予備を設ける。
また、病院敷地内への浸水を防ぐため、東側にある出入り口(標高1メートル)や通用門など計3か所に、可動式の防潮ゲートを設置。病院の地下に通じるスロープにも同様の対策を施す。
県医務課の担当者は「巨大地震の場合は浸水対策に限界があるが、患者を階上に避難させ、速やかに診療を再開できるよう電源を守りたい」と話している。
妊婦の採血で胎児の3種類の染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断について、日本医学会は1日、国立成育医療研究センター(東京)など15の認定施設を公表した。
準備の整った施設から臨床研究として順次、開始される。検査の意味を十分理解しないままの人工妊娠中絶を防ぐため、染色体の病気や検査の内容を説明する遺伝カウンセリング体制の充実した施設に限定して実施される。
対象は、超音波検査などで染色体の病気が疑われた場合や高齢妊娠などの妊婦。費用は約20万円かかる。
認定施設の一つ、昭和大(同)では同日、染色体の病気を持つ子どもを妊娠したことのある妊婦や高齢の妊婦など5人が、検査前の遺伝カウンセリングを受けた。その結果、全員が検査を希望し、採血を行った。
脳を磁気で刺激することで、脳卒中後の激しい痛みを和らげることに、大阪大の斎藤洋一・特任教授(脳神経外科)らが成功した。
国際疼痛学会誌に近く発表する。
脳や脊髄の神経が傷つくと、手や足に、やけどや針で刺した時のような激しい痛みが続くことがある。「神経障害性疼痛」と呼ばれ、脳卒中では患者の約3%にこの症状が表れる。
研究チームは、治療薬などの効果がない20歳以上の61人の患者を対象に、手や足の動きを制御する脳の部位を、強い磁気で1日10分間ずつ10日間刺激して効果を調べた。その結果、最も痛い場合を100点とする自己評価で、平均75・6点だった痛みが、磁気刺激で平均4・9点下がった。一方、偽の装置で磁気を出さなかった時は1・8点下がっただけだった。
献血と輸血の需給バランスが大きく崩れ、2027年に100万人分以上の血液が不足する恐れがあるとして、日本赤十字社(東京)が若者に献血を呼びかける取り組みを強めている。
事故や病気で輸血が必要な高齢者が増える一方、若者の人口減と献血離れに歯止めがかからないからだ。
選抜高校野球大会が開かれている甲子園球場(兵庫県西宮市)のバックスクリーン横に今月上旬、高さ約2メートル、幅約10メートルの看板が登場した。日赤の近畿ブロック血液センター(大阪府茨木市)が「若い野球ファンや球児たちに訴えたい」と年間契約した。
看板下で観戦していた兵庫県明石市の高校1年猪飼真さん(16)は「血液が足りなくなるなんて知らなかった。これからはできるだけ協力したい」と話した。
日赤によると、輸血用血液製剤の約85%は50歳以上の患者が使用。高齢化を踏まえた推計人口などから試算すると、輸血を必要とする人は27年に延べ549万人とピークを迎える。これに対し、同年の献血者数は、献血可能人口(16~69歳)に占める割合(献血率、09年実績5・9%)から延べ448万人と推計され、101万人分が不足する。
妊婦の採血だけで胎児の染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断について、医療機関向けに検査の受託事業を案内していた東京都内の民間会社は30日、読売新聞の取材に対し、事業の中止を明らかにした。
同社は今月中旬、全国の産科医院に「出生前健診サービス」とうたった勧誘はがきを送付。日本産科婦人科学会(日産婦)の指針では対象としない性染色体の病気も検査できるとしていた。
これに対し、日本産婦人科医会が、産科医に対し、勧誘に乗らないよう注意を呼びかけ、日産婦も指針の順守を改めて呼びかけていた。
がん治療 新型放射線装置 鳥取県中部唯一県立厚生病院が導入 |
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鳥取県倉吉市東昭和町の県立厚生病院は、県中部では唯一となる放射線治療装置「リニアック」を更新し、5月7日からがん治療を始める。
既存の装置に比べて出力が高く、より精度を高く放射線を照射でき、治療効果が高まると期待されている。
X線を照射し、切開せずにがん組織を小さくしたり、消滅させたりする装置で、がんの痛みを緩和させる治療にも使われる。同病院では2002年に導入したが、放射線の出力が弱く、事前に撮影した写真を基に照射場所を決めるため、精密な照射が難しいなどの課題があった。
新しい装置は、出力が向上して体内の奥深くのがん組織にもX線が届きやすくなり、コンピューター断層撮影法(CT)で、がん組織の位置を画面で確認しながらミリ単位で照射できる。スウェーデン製で、機器などの整備費は計5億4100万円。
同病院で27日に記念式典があり、前田迪郎(みちお)院長が「年間100件以上のがん治療を行っているが、新装置で様々ながんに対応でき、県中部のがん治療は大きく前進する」とあいさつした。
鳥取県や医師らで作る「食物アレルギー対策検討会」が県庁で開かれ、鳥取大医学部付属病院に専門外来を設置し、できるだけ早く専門医を確保し、受け入れ体制を整備すべきだとする意見をまとめた。
県内には現在、アレルギー診療で中心的な役割を果たす専門医療機関がなく、各病院が個別に対応している。緊急時の体制が整っておらず、食物アレルギーで血圧低下や意識障害などを引き起こす「アナフィラキシーショック」を起こすような重症患者については、十分に対応できていないという。
検討会では、県学校栄養士協議会が県内の学校給食調理施設46施設に対して行ったアンケートの結果を公表。除去食や代替食を行っているのは30施設(65・2%)で、16施設(34・8%)は対応できていなかった。現場ではアレルギーを起こす原因が多様化し、問題を生じさせないため調理員らへの負担が増しているなど課題も多く、研修での情報共有や相談窓口の設置などを求める意見が紹介された。
サンプル校17校の児童、生徒に対する調査では、県内で食物アレルギーと申告したのは184人(3・8%)だが、医師の診断がなく、保護者の判断で申告した事例も61人(1・3%)あった。検討会では、統一した調査方法や診断基準を整備することなどを継続的な課題とした。
東日本大震災の被災者に対する国民健康保険や介護保険利用料などの減免措置が今月末、宮城県で打ち切られる。
岩手県や、福島県の一部の自治体は継続する方針。震災から2年がたち、福祉支援の濃淡が出てきた。
宮城県では、他の被災地と比べて対象者が多い。負担を肩代わりする県や各市町村の財政負担が重く、一斉に打ち切る方針。医療費だけでも、対象者は昨年10月末時点で約18万人に上り、来年度も継続するためには年間約30億円が必要になるという。
岩手県は4月以降も、国保と後期高齢者医療制度、介護保険の加入者に対する医療費や利用料の減免措置を続ける。2013年度一般会計当初予算には4~12月の関連費約4億7000万円を盛り込んだ。
福島県は、各市町村の意向を尊重し、継続する自治体には財政負担を続ける。新地、相馬、南相馬の3市町は、津波の被災者らの生活再建が進んでいないとして、国保については、来年3月まで自己負担免除を続ける予定。
比較的被害が少なかった内陸部の川俣、桑折、国見の3町は、2月末で国保の自己負担免除を終了し、須賀川、白河、鏡石、天栄、棚倉、矢祭、西郷、泉崎、中島、矢吹の10市町村は今月末で打ち切る。
原発事故で設定された警戒区域と各避難指示区域、旧緊急時避難準備区域、特定避難勧奨地点(解除済み地点も含む)の住民については、国が、加入保険の種類にかかわらず、来年2月までの自己負担免除を決めている。
東京都内の11の私立大付属病院に勤める医師や看護師ら約2万人のうち、2011年12月までの1年間に、患者やその家族らから暴行や暴言などの「院内暴力」を受けた人が4割に上ることが、私立大学病院医療安全推進連絡会議の調査でわかった。
同会議は「診療の妨げになりかねない。院内暴力への対応体制の充実が急務だ」としている。
調査は11年12月、慶応大病院や慈恵医大病院など都内11病院の本院に勤務する全職員2万9065人を対象に行い、2万2738人から有効な回答を得た。
「院内暴力」を受けた人は1万79人(44・3%)に上った。暴力の内容(複数回答)では、「暴言」が41・5%で最も多く、「身体的暴力」(14・8%)、セクハラ(14・1%)が続いた。院内暴力に不安を感じる人は、86・3%に上った。
厚生労働省は29日、1999年以降に承認された新タイプの抗うつ薬の投与について、18歳未満へは慎重に検討することを添付文書に記載するよう、日本製薬団体連合会に指示した。
海外での臨床試験で有効性が確認できなかったための措置。対象となる抗うつ薬は6種類。商品としてはレクサプロ、ジェイゾロフト、サインバルタ、レメロン、リフレックス、ルボックス、デプロメール、トレドミンの8種類ある。
厚労省は「すでに服用中の患者は自己判断で中止せず、医師の指示に従ってほしい」としている。
子宮頸(けい)がんなどを予防する子ども向けの3ワクチンを、2013年度から定期接種化するための改正予防接種法が、29日の参院本会議で賛成多数で可決、成立した。
10年度から緊急事業として公的接種が実施されていたが、4月からは定期予防接種の対象となり、恒久化される。
4月から定期接種となるのは、子宮頸がん、インフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)、小児用肺炎球菌の3ワクチン。同法では、国が予防接種に関する基本計画を策定することや、医療機関に対し、予防接種による副反応が疑われる健康被害が発生した場合の国への報告を義務づけている。
費用は原則、自治体負担となり、無料化する自治体が多くなるとみられる。
子宮頸がんは若い女性に増えているほか、ヒブと肺炎球菌は小児の細菌感染症の2大病原菌で、髄膜炎などを起こし、死亡や後遺症につながることもある。
妊婦の採血だけで胎児の染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断について、複数の民間企業が独自の検査あっせん事業に乗り出すことがわかった。
4月にも始まる臨床研究は、十分な遺伝カウンセリングを行える施設に限定して行われるため、希望する妊婦全員に対応できそうにないことが背景にある。しかし、命にかかわる検査が商業的に行われることを問題視する声もあり、法規制を含めた議論を呼びそうだ。
グアムや米西海岸などに提携の医療機関がある東京都内の民間会社は、現地の医師が「往診」の名目で4月下旬、短期的に来日。妊婦の採血は都内のクリニックが行う。サンプルは米国の検査会社に送られ、検査価格約35万円のほか、採血費用に2万5000円かかる。結果は10日から2週間でわかるという。
秋田県医務薬事課は28日、北東北3県で4月10日から、ドクターヘリの広域連携運航の試行を始めると発表した。
ヘリが天候不良や出動要請の重複などで出動できない場合、連携先の県が代わってヘリを出動させ、救急搬送にあたる。半年程度の試行期間で運航実績と課題を検証し、本格運航に移る予定。
対象となるのは、秋田赤十字病院(秋田市)、青森県立中央病院(青森市)、八戸市立市民病院(青森県八戸市)、岩手医科大学付属病院(盛岡市)の4基地病院のドクターヘリ計4機。
多数の傷病者が発生し、対応できないと医師が判断した場合や、気象条件などで出動・対応できない場合などに、各基地病院が他県の基地病院に出動を要請できる。
出動対象地域は、原則として各基地病院のヘリポートから100キロ・メートル圏内で、ヘリなら30分前後でカバーできる。秋田県では、主に県境の内陸部が対象になる。
県内のドクターヘリは、昨年1月23日に運航を始めた。県医務薬事課によると、1年間の出動要請は209件。出動件数は162件で、天候不良や出動要請の重複などで出動できなかったのは、47件だった。
同課は「広域連携により、出動できない事案を減らせる可能性がある。多数の傷病者が発生する事故などの迅速な対応にもつながる」と話している。
官民ファンドの産業革新機構が出資する創薬ベンチャー「アネロファーマ・サイエンス」が、ビフィズス菌を利用した抗がん剤新薬の臨床試験(治験)を米国で開始した。
胃がんや肺がんなどの患者に投与して安全性や薬効を調べた上で、2020年代前半の実用化を目指す。
臨床試験は米国内の治験施設で実施している。ビフィズス菌を人体の静脈に注射するのは世界で初めてで、他の抗がん剤の薬効改善などにつながる可能性もある。28日発表する。
長野県安曇野市豊科の安曇野赤十字病院は4月1日から、2006年から休止していたお産の扱いを再開する。
当面は、正常分娩のみを扱い、未熟児が生まれる可能性がある場合は、市内の県立こども病院に搬送する。市は地域の産科医療安定化の第一歩と位置づけている。
赤十字病院は10年ほど前まで常勤医が4人おり、年間600~700件のお産を受け入れていた。しかし、開業などを理由に常勤医全員が離れ、06年4月に出産の受け入れをやめていた。その後、非常勤医3人が、ローテーションで妊婦検診や婦人疾患などの外来に対応していた。
昨年3月、名古屋市で開業していた駒井宏医師(59)が、赤十字病院の産婦人科部長として赴任。約1年、お産に必要な医療器具の購入や、助産師の教育など受け入れ再開に向けた準備をしてきた。
駒井医師と助産師10人が3交代制を取り、24時間体制で勤務する。里帰り出産も受け入れる。今のところ、赤十字病院が対応できるお産は月平均9件で、すでに10月までのお産は予約で埋まっている。駒井医師は「総合病院としての力を発揮し、地域医療に貢献できるよう態勢を整えていきたい」と話している。
安曇野市の出産件数は年間約700件。市内でお産に対応できる病院は穂高病院と、主に低体重児の出産などハイリスク分娩を取り扱うこども病院のみ。穂高病院が扱えるのは200件程度で、大半は松本市の病院に頼っている。
安曇野赤十字病院事務部の内川暢子総務課長は「今はスタートラインに立ったばかり、地域のお産を支える病院としてより充実させていきたい」と話す。
神奈川県厚木市消防本部は4月から、市内の3病院に救急隊員と救急車を派遣し、重症患者の発生時には、医師を同乗させて、救命活動を実施することになった。
プロジェクト名は「派遣型救急ワークステーション」。土日、祝日、年末年始を除く毎日、午前9時から午後5時までをカバーする。
同消防本部は職員248人。うち消防隊員や救助隊員らを除いた救急隊員14チーム56人が派遣の対象になる。現在、その中で救急救命士の資格を持つのは33人。平日1チーム3人が派遣されるが、派遣先と曜日は、月曜が湘南厚木病院、火曜と金曜が東名厚木病院、水曜と木曜が市立病院となる。
同本部の鍛代高治・救急救命課長は「派遣された消防隊員は病院実習で技術や知識向上に励むことになる。救急車は4月から1台増えて全市で7台になるが、この1台を充当する。そして、心肺停止前の深刻な事態が発生した場合、そこの病院の医師に同乗してもらい、駆けつける」と説明する。
特定の医療行為ができる救急救命士の制度は1991年にでき、ブドウ糖投与や乳酸リンゲル液の輸液などを施せるようになった。しかし、この救急救命士法は時限立法で、この3月末で切れてしまう。プロジェクトは同法の更新を目指していく狙いがある。
同じ取り組みはすでに横須賀市が昨年から実施し、4月からは平塚市も本格的に取り組むが、厚木市の場合、救急車出動回数の増加や生存率の低下がプロジェクト推進の強化につながっている。
同市の出動回数は昨年1年間で1万201件。61年の本部発足以来の大台突破となった。うち心肺停止状態による出動は200件。一昨年より17件減ったものの、生存率は9・8%から7・7%に低下した。これは11・4%だった一昨年の全国平均を大きく下回る。
「医療機関と消防本部の連携を強化し、傷病者への迅速な対応を図っていきたい。医師も『現場を知るいい機会』と賛同している」と鍛代課長は意気込みを語った。
外国人看護師受け入れ、2人試験合格…兵庫・南あわじ市 |
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経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の受け入れ事業で、兵庫県南あわじ市内の2病院で働くインドネシアとフィリピン出身の2人が、看護師国家試験に合格した。
全国の受験者311人のうち合格は30人。難関を突破した2人は「患者さんに笑顔で接し、日本の看護技術を学びたい」と意気込む。
2人は、インドネシア出身で平成病院(同市八木養宜中)のリアナファレンティナ・ナインゴランさん(31)と、フィリピンから来た南淡路病院(同市賀集福井)のジャンマイケル・フマンイトさん(27)。母国で看護師の経験があり「高い技術を学びたい」と日本にやって来た。
ナインゴランさんは2009年に来日。何度も漢字と読み方を書いて覚えた。試験は今回が4回目の挑戦。受験は原則3回までだが、昨年の試験は合格点にわずか1点足りず、合格点の6割以上得点していたことから、希望し1年の延長が認められた。年末年始は1日10時間以上勉強した。
フマンイトさんは11年に来日し、2回目で合格した。昨年は、漢字の意味を推測しながら解いたが、電子辞書で、分からない言葉が出てくるたびに調べるなど努力を続け、今回は自信を持って臨んだ。
教育担当の看護師から指導を受けるなど、職員にも支えられて乗り切った。
明るく、朗らかなナインゴランさんは、患者から「息子の嫁に」と言われることも。「患者さんから笑顔をもらえる看護師になりたい。母国に帰ったら、技術を広めたい」と話す。
フマンイトさんは心配りや仕事の早さが、看護師長らに評価される。「患者さんを家族と思って接したい」といい、「いずれは日本の大学で学び医師を目指したい」と夢を膨らませている。
重粒子線がん治療施設補助金、鳥栖市議会が全額削除 |
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佐賀県鳥栖市議会は25日、市の2013年度一般会計当初予算案に計上された「九州国際重粒子線がん治療センター」(5月開業予定)を運営する公益財団法人への補助金4億5000万円について、全額削除する修正議案を賛成多数で可決した。
市は開業後の数年間、単年度赤字が見込まれるため、補助金支出を打ち出したが、この日の本会議で「切迫性や必要性の説明が十分ではなく、市民の理解を得られない」「財団の財政状況が把握できていない」などの批判が相次いだ。
橋本康志市長は市議会閉会後、「理解を得られず残念。県と調整しながら、市議会の指摘を検討し、できるだけ早く再提案したい」と語った。
子宮頸(けい)がんワクチンの接種で副反応を起こした女子生徒の家族らが25日、「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」を設立した。
接種後に体の痛みやしびれが出るなど重い副反応を起こす被害者が相次いでいるとして、国に対し、症状の治療法の研究・開発や、被害者に対する補償を求めていく。
会員は、被害者と家族、支援する市・区議会議員ら約50人。
経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師候補者の受け入れ事業で、厚生労働省は25日、インドネシア人20人とフィリピン人10人の計30人が看護師国家試験に合格したと発表した。
今年は311人の候補者が受験。合格率は9・6%で、昨年より1・7ポイント低下した。2008年度の事業開始以来、日本語に不慣れな外国人候補者の合格率低迷が問題視され、今回は、試験時間を延長したり、問題のすべての漢字にルビを振ったりする特別措置をとったが、合格率は改善しなかった。
同省では、「全体の合格率も約1ポイント下がっており、問題の難易度が影響したのではないか。特別措置の効果については、今後検証したい」としている。
新築工事が行われていた愛媛県立中央病院(松山市春日町)の本館が完成し、報道陣に23日公開された。
災害時には県内の医療の中心を担う「災害基幹拠点病院」に指定されており、地下の免震装置や屋上のヘリポートなど、いざというときに役立つ機能が設けられた。5月4日に新本館へ入院患者を移し、7日から一般外来の診察を始める。
◇工事完了、免震装置やヘリポート
1974年に建てられた現本館の老朽化に伴い、建て替えのため2010年から工事が行われていた。総工費約210億円。個室数を240室と86室増やした。カテーテルや外科など手法の異なる手術に対応できる最新の「ハイブリッド手術室」を備えた。
建物の中央に設けた吹き抜けは、日当たりを良くするだけではなく、目印となって患者が自分の位置を分かるようにする狙いもあるという。食事や家族との面会で使われる「デイルーム」や病室は、外の景色を眺めやすくするため、窓をやや低くした。施工会社の担当者は「少しでも患者さんが利用しやすい病院を目指して工夫を凝らした」と胸を張った。
建物の最深部には、ゴムで揺れを吸収する高性能免震装置を据えた。東日本大震災や阪神大震災クラスでも耐えられるとの想定だ。屋上のヘリポートは重篤患者の搬送や医師の出動に使われ、エレベーターで14の手術室が並ぶ4階ホールまで乗り換えなく行ける。約72時間分の燃料を備蓄した非常用発電機を備え、エレベーターは停電時も運転できる。貯水槽には約1000トンの水が蓄えられ、浄化装置で飲料水にもなる。
三好利一・県新中央病院整備室長は「いざという時に県民のよりどころとなる病院にしたい」と話した。
病院や薬局、介護施設などが、施設利用者の病歴や薬の使用状況などを共有し、より効率的な医療や介護サービスの実現を目指す試みが4月から、宮城県の気仙沼、石巻両市で始まる。
ネットワーク化により、複数の病院で同じ検査を受けるような無駄が省けるだけでなく、どこの施設でもカルテや調剤記録が検索できるようになり、災害時などでの迅速な対応も可能になる。3年以内に全県に広げる計画で、全国規模での展開も視野に入れる。
新たな試みを始めるのは、東北大や県医師会などでつくる「みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会」。気仙沼、石巻両市で運用を開始し、8月までに病院や介護施設など73施設をネットワーク化する。その後、段階的に地域や参加施設を増やし、2015年度までに県全域をカバーする計画だ。
登録を希望する施設利用者には、16桁のID番号を割り振り、各施設が持つ電子カルテや介護サービスの利用状況などをクラウドサーバーで一括管理する。複数の施設の利用状況を把握することで、診療や投薬などの効率化が図れるほか、医療と介護の連携が進むことも期待される。
震災では、普段飲んでいる薬が津波で流され、種類が分からなくなった人が続出した。ネットワークの情報があれば、避難所などでも処方箋を発行できる。
さらに、ネットワークの情報を分析することで、どの地域にどんな持病がある患者がどれだけいるのかも把握でき、大規模災害時には、どの地域にどんな薬品が必要になるかを的確に判断することもできるようになる。
また、登録者には、主な病気や服用中の薬などの情報を記録するICカードも配布。病気や事故で本人が意識を失っていても、ICカードから情報を引き出すことで、適切な医療処置が可能になるという。
システムの開発に当たった東北大病院メディカルITセンターの中谷純部長は「震災の教訓から、ネットワークを早期に作り上げる必要があると考えた。生涯に渡って一貫した医療、介護を受けることができるようになる」と話す。
4月以降、内科を休診…宮崎・西都児湯医療センター |
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脳神経外科は継続
宮崎県西都市出資の第3セクターが運営する「西都児湯医療センター」の常勤医4人のうち3人が3月末までに退職する問題で、同センターは24日、内科医が不在になる4月以降、内科を休診することを決めた。
4月から1人態勢になる脳神経外科については、診療時間を短縮するなどして外来診療や入院患者の受け入れは継続する。
市内で非公開の理事会と評議員会を開き決定した。会合終了後、後藤有人理事長兼院長、浜砂亮一副院長、橋田和実西都市長が記者会見した。
常勤の脳神経外科部長として1人診療を続ける浜砂副院長は「このままでは健全な病院運営ができるとは思えず、今後、半年間で医師を確保しないければ、自分も体力的にもたない」と窮状を語った。
センターが県の災害拠点病院に指定されている点については「実際には機能しない状況」と明かし、県と今後協議する考えを示した。
センターでは、これまで循環器内科医2人と脳神経外科医2人の4人態勢だったが、内科医1人が2月末で退職。もう1人も3月末で辞める。内科の入院患者については他の病院への転院を進めている。
また、外科は宮崎大から派遣されていた医師が3月末で派遣期間を終えるものの後任が決まっておらず、浜砂副院長1人だけになる。
東北大の木村芳孝教授(産婦人科)のグループは22日、妊婦のおなかの上から胎児の心電図検査が出来る装置を世界で初めて開発したと発表した。
今後、同大病院で臨床試験を行う。現状の妊婦健診では、胎児の心拍数を測ることはできたが、心電図で心臓の動きをより詳細に調べることで、胎児の心疾患の有無だけでなく、ぜんそくなどの診断や早産のリスクを調べることも可能になるという。
臨床試験で使用する装置は、成人の心電図測定と同様、妊婦のおなかにセンサーを付けるだけで、検査の際の母子への負担はほとんどない。
木村教授らは2004年、妊婦の体からも出る様々な電気信号の中から、胎児の心臓が発するわずかな電気信号だけを抜き取る情報処理技術を開発。この技術をもとに09年から、国内の医療機器メーカーと共同で装置の開発に乗り出し、妊娠中のヒツジなどの腹部から、胎児の心臓が出す微弱な電流を測ることに成功した。
妊婦の採血で3種類の染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断について、日本ダウン症協会は21日、日本産科婦人科学会(日産婦)などに要望書を提出したと発表した。
要望書では〈1〉胎児がダウン症と診断された妊婦と家族を支援する「ピアカウンセリング」の実施〈2〉ダウン症の人の実生活を知ってもらうために、産婦人科医療に携わる医師や看護師、助産師向けのセミナーの企画・実施――の2点を求めた。
宮崎県立延岡病院 新しい救命センター完成 大災害対応、ヘリポートも |
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宮崎県立延岡病院(延岡市新小路2)にヘリポート付きの救命救急センター(竹智義臣センター長)が完成した。21日午後から運用を開始。
ドクターヘリを用いた患者の搬送時間が短縮するほか、2階の大半を大規模災害に対応できるフロアに充てるなど、県北部での救急医療の充実が期待される。
これまでは、病院の一角256平方メートルを救命救急センターとしていたが、手狭になったことやドクターヘリの需要が高まっていることなどから、県が8億5000万円(建物7億円、機器・備品1億5000万円)をかけて整備した。うち6億4000万円は国の交付金で賄った。
新しい救命救急センターは、鉄筋コンクリート3階建てで、延べ床2356平方メートル。診療スペースは1892・65平方メートルとこれまでの7倍以上の広さを確保した。
ドクターヘリはこれまで病院から約4キロ離れた大瀬川河川敷を離着陸に使っていた。新センター屋上のヘリポート活用で、搬送時間は15分程度短縮できるという。1000グラム以下の新生児やその子供を出産しそうな母親を宮崎市の宮崎大医学部付属病院に搬送したり、近隣から重症患者を受け入れたりする際に使われる見通し。
完成記念式典や防災ヘリによる発着デモンストレーションが20日行われ、河野知事は「地域住民の医療充実への期待に応えられる施設ができた」とあいさつした。
脂肪の蓄積を体内で調整することに関わっている遺伝子をマウスの実験で発見したと、大阪大の審良(あきら)静男教授(免疫学)らの研究グループが21日、英科学誌ネイチャー電子版で発表した。
この遺伝子が働かないマウスは、人間で言う「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の症状を示した。メタボを改善する薬剤の開発などに生かせる可能性があるとしている。
グループは、肝臓や脾臓(ひぞう)などで働く免疫細胞の中に、「Trib1」という遺伝子からの指令で作られるものがあることを突き止めた。この細胞は、免疫だけでなく、脂肪の蓄積をコントロールする役割を果たすことも確認した。
Trib1が働かないようにしたマウスは、高脂肪の食事を与えると糖尿病を発症し、血液中のコレステロールや中性脂肪の濃度も、正常なマウスに比べて高くなった。
40~60歳代の日本人が今後10年間に脳卒中になる確率を自分で簡単に予測できる算定表を、藤田保健衛生大学の八谷(やつや)寛教授(公衆衛生学)らの研究チームが開発した。
年齢や血圧などの数値を点数化し、合計点数を求めると確率がわかる。健康への関心を高めることにも役立ちそうだ。
算定表は、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の5県で1993年に40~69歳だった男女計1万5672人を平均14年間追跡した大規模調査に基づくもので、実際に脳卒中になった人(790人)の危険因子を調べ、発症確率を求めた。年齢、性別、喫煙、肥満度、糖尿病の有無、血圧と降圧薬を内服しているかを自分でチェックし、点数を合計して表と照らし合わせる。同時に血管年齢もわかる。
群馬県は新年度、県立4病院の経営責任者である病院管理者のポストを廃止する方針を決めた。
経営改善に一定の成果があったことや、組織のスリム化を図ることなどが主な理由。今後は、各病院長の経営管理力を強化することで専門病院としての機能を高め、現場目線で医師確保や地域の医療機関との連携にあたるという。
大沢知事が18日の県議会議会運営委員会の追加議案説明で明らかにした。
総務省によると、病院経営の責任明確化や柔軟な運営を可能とするため、地方公営企業法を全部適用して人事や組織、財務などの権限を知事部局から独立させているのは、2011年度末現在で群馬を含め26都道府県に上る。いずれも管理者を置いており、ポストを廃止するのは「極めて異例」(総務省公営企業課)という。
県は03年度、心臓血管、がん、精神医療、小児医療の4センターの経営責任者として病院管理者を設けた。初代には心臓血管センターの元院長が就任し、現在は2代目を元県健康福祉部長が務めている。
この間、病院の基盤整備などを進め、医業収益は03年度の134億円から、11年度には197億円に増加。最大約25億円(07年度)に上った赤字も約6億円(11年度)と改善傾向にある。今後は、大沢知事が管理者の権限を執行するという。
ドクターヘリの広域連携を進めるため、山形県は今月中に福島県と相互応援の協定を結ぶ。
県地域医療対策課は「県に1機ずつのドクターヘリを効果的に運用することで、両県の救急医療の質が高まる」と期待している。新年度には新潟県と同様の協定を締結する予定で、秋田県とも協議に入るとしている。18日に県村山総合支庁で開かれた県ドクターヘリ運航調整委員会で報告された。
半径100キロ圏内を約30分でカバーするドクターヘリは、県境を越えた出動が期待されている。重複した出動要請や多数の傷病者が発生した時など、県単位で対応できない場合に隣県のドクターヘリに出動してもらうのが目的で、こうした広域連携は全国的にも広まってきている。
山形県と福島県との相互応援協定は、両県の基地病院から半径100キロ圏内をそれぞれカバーする内容。県内では置賜、村山地域が、福島県では福島市や南相馬市、郡山市などが対象となる。両県は新年度から合同訓練を行い、具体的な運用方法を検討する。
この日の委員会では、昨年11月15日のドクターヘリ就航以降の運航状況も報告された。今年2月末までの出動要請は105件で、実際に現場に出動したのは44件だった。今後、搬送された傷病者が、社会復帰したかどうかなど予後の調査を行うことが確認された。
多発性硬化症 改善へ道筋…NCNP研究グループ |
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免疫の異常で脳や脊髄などの中枢神経に炎症が起き、視力低下や手足のまひなどを引き起こす神経難病「多発性硬化症(MS)」。この病気の発症メカニズムを国立精神・神経医療研究センター(NCNP、小平市)神経研究所免疫研究部の山村隆部長と大木伸司室長らの研究グループが解明した。専門家は「より効果的な新薬の開発につながる」と期待する。
山村部長らのグループはこれまでに、中枢神経を攻撃し炎症を起こすTリンパ球の働きに「NR4A2」というたんぱく質が関わっていることを明らかにしていた。しかし、「『事件の現場』に必ずいることはわかっていたが、NR4A2が犯人かどうかは、この時点ではまだわからなかった」と山村部長は話す。
今回は、このたんぱく質にさらに着目し、MSに似た症状を示すマウスに、NR4A2の合成を妨げる物質を注射したところ、症状に改善が見られた。この結果から、体内でNR4A2の合成を抑えることでMSの症状を軽減できることが明らかになった。
国内のMSの患者数は推定約1万3000人で、この30年間で20倍以上に増加したといわれている。山村部長によると、MSは元々、欧米人に多い病気で、近年の食生活の欧米化が原因の一つと考えられるという。
現在、ステロイド投与などの治療法があるが、すべての患者に効果があるわけではなく、より効果的な治療法の開発が待たれている。同センターには2010年、医師と研究者が連携してMSの治療と研究開発を進める「MSセンター」が開設され、全国から患者が訪れている。
MSセンター長でもある山村部長は「MSは20代を中心に若くしてかかる人が多く、一生病気を背負っていかなければならない。既存の治療薬が効かず絶望感を持っている患者も少なくない。今回の研究で新しい治療法の戦略が見つかった。臨床研究に発展させ、新薬開発につなげたい」と話している。
◆他の研究にも 広がる可能性
東北大大学院でMSの治療法を研究している藤(ふじ)原(はら)一男教授は「発症に直接関わるたんぱく質を見つけたことは、MSだけでなく似たメカニズムを持つ他の自己免疫疾患の研究にも役立つ可能性がある。人においてどのくらい有効かが気になるが、その臨床研究への道筋を示してくれた」と評価している。
大阪府富田林市向陽台の済生会富田林病院は、出産経験のある「経産婦」の分娩に限定していた「お産センター」で、初めて出産する「初産婦」の受け入れも始めた。
同病院は1977年の開院当初から産科が設けられていたが、医師不足から2006年に閉鎖。昨年6月から出産に助産師が立ち会い、緊急時に医師がサポートする「院内助産システム」を導入して再開したが、リスクの低い経産婦のみを受け入れていた。
しかし、「初産婦の受け入れもしてほしい」と市民の要望が多く、同システムで10人以上の妊婦が無事出産できた経験や、助産師を6人から10人に増員したことから、初産婦の受け入れも開始。妊娠初期からの継続的な妊婦健診の受診が条件になる。
同病院は「安心・安全の体制を確保し、当院で産声を上げる赤ちゃんがますます増えれば」としている。問い合わせは同センター(0721・29・9010)へ。
障害者グループホーム 防火基準柔軟に運用…鳥取 |
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鳥取県は、障害者グループホームやケアホームについて、県内の施設の9割が既存住宅を転用した小規模施設である実態を重視し、建築基準法の防火基準を決める建物の用途について、ホテルや旅館並みの「寄宿舎」の取り扱いから、火を使わないなど一定の条件を満たした場合は「住宅」として取り扱うことを決め、2月から運用を行っている。
同法を厳格に適用した場合、大規模な改修が必要となり、閉鎖を余儀なくされる施設が出てくる可能性があるという実情を反映させた運用だが、一方で小規模な施設でもスプリンクラーの設置は必要という声もあり、課題は多い。
建築基準法では用途に関する明確な規定がないが、国は「食堂や浴室などが1か所、または数か所に設けられているグループホームについては、原則、寄宿舎として取り扱われている」との見解を示している。
既存住宅を転用した小規模な施設にまで一律に同法を当てはめると、防火間仕切り壁や非常用照明の設置など、大規模な改修が必要になる。昨年、県西部の小規模な障害者グループホームで同法違反が指摘され、閉鎖になった施設もあった。
県は県内の認知症グループホーム74施設については、これまで長崎市や札幌市などのグループホームで死傷者を出す火災が起きていることを踏まえ、従来通り「寄宿舎」として防火基準を適用。スプリンクラーは消防法の適用面積にかかわらず、全施設で設置されている。
一方で、障害者グループホームやケアホームについては、昨年8月に145施設のうち、約4割に当たる55施設を抽出し、立ち入り調査を実施。「寄宿舎」とした場合、9割が基準を満たしていなかった。
県はこの調査を受け、福祉、建築、消防の関係機関で協議。「同法の用途については、建築主事が個々に判断する」とした国の見解を踏まえた上で、障害者が暮らす施設として安全性が確保された場合に限り、既存住宅の転用施設については「住宅」として取り扱うことを決めた。
用途を「住宅」とする条件としては▽2階建て以下(地下含まず)▽延べ床面積が200平方メートル未満▽全室で火気の使用がない――など、8要件全てを満たす場合に限定している。
ただ、長崎市の認知症グループホームで5人が死亡した火災では、リコール(回収・無償修理)対象の加湿器が火元とみられることなどを受け、2月25日の県議会福祉生活病院常任委員会では、小規模な障害者用施設でもスプリンクラー設置をさらに進めるなど、対策を求める声が上がった。
県によると、障害者の145施設のうち、これまでスプリンクラー設置の義務が課せられた施設はなく、簡易型を含め任意で21施設が設置を行っているという。既存住宅を転用した小規模施設の場合、費用面の問題のほか、賃貸物件は大家の理解が得られないなどの理由で、設置が進まないことも報告された。
県は「長崎市での火災報道を深刻に受け止めており、関係各機関で協議し、対応を考えていきたい」としている。
東京都は14日、妊娠前の19歳以上の女性と、妊娠中の妻を持つ夫を対象に、風疹の予防接種を受ける場合、費用の半額補助を行うことを決めた。
居住の区市町村で、風疹の予防接種ですでに助成制度があることが条件となる。都福祉保健局は「今回の措置を機に、助成制度がない区市町村にも制度の導入を促したい」としている。
風疹は妊娠中の女性がかかると、赤ちゃんの心臓や目などに障害が出る恐れがある。母胎への影響が心配されるため、妊娠中は予防接種が受けられない。男性の場合は同日から補助を受けられる。女性は4月から対象とする。
都内でも風疹が流行しており、今年初めから3月第1週までの都内の風疹感染者数は計762人。2008年以降で最多だった昨年1年間の672人を既に大きく上回っている。
印刷会社の従業員らが相次いで胆管がんを発症している問題で、厚生労働省は14日、大阪市の印刷会社について、印刷機の洗浄液に含まれていた化学物質「1、2―ジクロロプロパン」を原因物質と推定、「高い濃度に長期間さらされたことが原因で発症した蓋然性が極めて高い」とする報告書案を同省の専門家検討会に示して了承された。
同物質を使用する事業所に、排気装置の設置を義務づけるなどの対策に乗り出す。
同省によると、大阪市の印刷会社「SANYO―CYP」を巡っては同日までに、20~40歳代の従業員ら17人(うち7人死亡)が胆管がんを発症したとして労災が申請された。検討会の審議対象は、最近申請があった1人を除く16人。同省は報告書の了承を受け、今月中に労災認定する。
名古屋大病院は13日、口腔(こうくう)内のがんの手術が必要と判断した愛知県内の30歳代の患者を連絡の不備で3年間放置し、手術後に、患者はがんの肺への転移で死亡したと発表した。
同病院は手術の遅れががんの進行につながったとして、遺族に謝罪し、和解金支払いの手続きを進めているという。
同病院によると、患者は2008年3月に同病院歯科口腔外科を受診。初期の口腔内のがんの可能性が高く手術が必要と診断されたが、同病院は入院日の連絡を怠っていた。患者は11年4月に症状が悪化、同病院を再受診し、病院側も3年前の患者とわかったという。
患者は手術を受け、いったん退院したが、その後がんの転移がわかり、12年4月に死亡した。同病院は調査委員会を設置し、手術の遅れががん進行に影響していたと結論づけた。
厚生労働省の中央社会保険医療協議会は13日、患者本人の軟骨細胞を体外で培養して移植する再生医療製品に、4月から保険を適用することを承認した。
事故などで傷ついた膝関節の治療用で、実際の利用は今年夏頃からの見通し。
この培養軟骨は、「ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング」(愛知県)が製造・販売する「ジャック」で、価格は1回の治療あたり208万円。軟骨の欠損した部分が4平方センチ以上の場合が対象となる。高額療養費制度により、患者の負担は10万円ほどになる見込みという。
再生医療製品への保険適用は、同社製の皮膚に続き2例目となる。
埼玉県久喜市で救急搬送された男性が25病院から計36回にわたって受け入れを断られ、容体が悪化して死亡した問題を受け、埼玉県は12日、県内全ての救急車にiPadなどのタブレット型多機能端末を配備し、搬送先の病院を検索できるシステムの導入を検討すると県議会福祉保健医療常任委員会で報告した。
県医療整備課によると、県内では2011年、3回以内の問い合わせで89%が搬送先が決まったが、11回以上、問い合わせた件数は0・77%の計176件に及んでいる。
現在は朝夕2回、医療機関が空きベッド数などをオンライン上に入力して、救急隊はそのデータを印刷して携帯。医療機関に直接電話をかけて受け入れ先を探している。
システムが導入されればひと目で各病院の状況が分かるという。
佐賀県や奈良県など計8県で導入されており、県は2014年度中の導入を目指している。
東京都調布市は12日、チーズなどに食物アレルギーがある市立小5年の女児(11)が昨年12月、給食後に死亡した事故を巡り、市教委検証委員会による調査結果を公表した。
事故が起きた背景には、食物アレルギーに対する教職員の情報共有が不十分だったことなどがあったと指摘。教職員が食物アレルギーについて学ぶ校内研修の成果も十分に生かされず、「危機意識が欠如していた」と断じた。
事故は昨年12月、市立富士見台小で給食の時間中に発生。女児は、担任の男性教諭からお代わりで渡されたチーズ入りの料理を誤って食べ、約30分後に体調不良を訴え死亡した。検証委は、女児の死因について、食物アレルギーで血圧低下や意識障害などを引き起こす「アナフィラキシーショック」だったと断定した。
東京都板橋区の病院などで医師免許がない男が健康診断をしていた事件で、警視庁は12日、詐欺などの罪で公判中の無職黒木雅被告(43)が、昨年7月までの3年間に東京、神奈川、長野、千葉の14の医療機関で延べ約2万5000人に健康診断をして、給与名目で計約2900万円を受け取っていたと発表した。
これまでに健康被害は確認されていないといい、同庁はこれで捜査を終結させる。
野山にいるマダニを介して感染する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスによる被害が相次いでいる問題で、厚生労働省は12日、新たに男女3人がSFTSで一時、重篤な状態に陥っていたと発表した。
いずれも現在は回復している。国内で感染が確認されたのは8件(うち死亡5件)となった。
同省などによると、新たに感染が確認されたのは、高知県の80歳代女性と佐賀県の80歳代男性、長崎県の50歳代男性の3人。高知県の女性は2012年4月、佐賀県の男性は10年8月、長崎県の男性は05年11月に、それぞれ38度以上の熱や血小板の減少などの症状が出た。佐賀県のケースでは、男性にかみ付いた状態でマダニが見つかった。
国立感染症研究所で保存していた3人の血液などを調べたところ、ウイルスに対する抗体やウイルスの遺伝子が検出された。遺伝子型は他の国内確認例とほぼ同じで、国内で感染したとみられるという。
札幌医科大学は8日、脳梗塞患者の骨髄から取り出した幹細胞を使って、神経を再生し、まひなどの症状を改善する新しい治療法の治験を近く始めると発表した。
2年間で110人の患者を対象に有効性などを調べる。
同大の本望修教授らは、骨髄中に含まれ、神経細胞や血管に変化しやすい「間葉系幹細胞」という幹細胞に着目した。患者の腰の骨から骨髄液を採取、中に含まれる幹細胞を2週間培養して増やし、点滴で患者に戻す。本人の細胞を使うため、拒絶反応の心配がない。
同大が患者12人に行った研究段階の治療では、まひなどの症状が改善したといい、本望教授は「安全性、有効性を治験で確認し、脳卒中治療のモデルケースにしたい」と話している。同大学では、治療に使う幹細胞は、薬事法に基づく医薬品としての承認をめざす。
東京都杉並区が無料で行っている子宮頸がん予防ワクチンの接種で、区内の女子中学生が2011年10月に接種後、手足のしびれなどの症状が出ていたことがわかった。
1年以上通学できないほど重い副作用の症状だったことから、区はワクチン接種が原因として医療費などの費用を支給する。
生徒の母親によると、生徒は中学1年の時に、子宮頸がん予防ワクチン「サーバリックス」を区内の診療所で接種。直後に、発熱や嘔吐のほか、腕、肩、背中のしびれの症状が出て、翌日から10日間入院した。
退院後も足のしびれで車いすを使う状態が続き、今年1月までほとんど通学できない状態だったという。その後、症状が快方に向かっているため、通学を再開したが、関節痛と頭痛は続いているという。
厚生労働省によると、同ワクチンは2009年12月から使用が始まった。12年8月末までの間に、失神や発熱など956件の副作用が医療機関から報告されており、死亡例も1件あるという。
区の担当者は「任意の予防接種とはいえ、区も国も勧めている予防接種で副作用があった。お見舞いを申し上げ、誠心誠意対応したい」としている。
妊婦の採血だけで3種類の染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断について、制度の検討を進めてきた日本産科婦人科学会(日産婦)などは、実施病院の認定登録を日本医学会(高久史麿会長)が行うことで合意した。
日産婦は9日理事会を開き、実施に向けた指針をまとめる。医学の主要学会が加盟する日本医学会が担うことで、指針の影響を医学界全体に及ぼしたい考えだ。
日本医学会は、約110の医学系学会が加盟する。
実施病院の認定登録は、同会「遺伝子・健康・社会検討委員会」の下に部会を設置して行う。メンバーは、日産婦や日本小児科学会など関連学会を中心に構成。〈1〉実施施設の条件を満たしているかどうかの審査〈2〉検査会社との契約内容などの確認〈3〉認定施設から検査結果の報告を受け、定期的な施設評価――などを行う。
総務省消防庁は8日、2012年の全国の救急出動件数が580万2039件、搬送人数が524万9088人(ともに速報値)に上り、いずれも最多だった11年を更新したと発表した。
発表によると、出動件数は前年比1・7%、搬送人数は同1・3%増加した。同庁が、前年より出動が増えた全国521消防本部に要因を尋ねたところ、「急病の傷病者の増加」が70・8%で最も多く、「高齢の傷病者の増加」(66・8%)が続いた。
青魚などに多く含まれる「ドコサヘキサエン酸(DHA)」由来の物質に、インフルエンザウイルスの増殖を抑える効果があることを、秋田大学医学部(秋田市)の今井由美子教授らの研究グループが発見した。
重症のインフルエンザに対する有効な治療薬の開発が期待できるという。米誌「セル」の電子版で論文を発表する。
今井教授らは、インフルエンザウイルスには脂質でできている部分があることから、ウイルスと、体内で脂質が化学変化して出来る物質との関係に着目。ヒトの肺の細胞を使った実験で、体内などでDHAが主に酵素と反応して出来る「プロテクチンD1(PD1)」と呼ばれる物質が、ウイルスの増殖を抑えることを確認した。
三重県伊賀市立上野総合市民病院は6日、麻酔の際に用いる筋弛緩(しかん)剤のアンプル10本が箱ごとなくなったと発表した。
病院側は、誤って廃棄した可能性が高いとみているが、筋弛緩剤は毒薬のため、伊賀署に盗難の被害届を提出した。
筋弛緩剤は「スキサメトニウム」でアンプル1本の容量は2ミリ・リットル。人工呼吸器を装着して使用しないと呼吸ができなくなる。
発表によると、今月1日午後、手術室の期限切れの薬剤を交換する際、看護師が、薬局からリフトで届いた筋弛緩剤を一時的に空の段ボール箱に入れ、そのまま失念した。4日になくなっていることが判明。すでに清掃業者が段ボール箱類を回収しており、院内外を調べたが、見つからなかった。
薬剤は、本来は請求伝票に基づいて出すが、今回のケースでは、薬剤師が先に期限切れに気付き、請求がなかったにもかかわらず筋弛緩剤をリフトで手術室に送っていた。その際、「期限切れのため取りかえて下さい」とのメモ書きは付けたが、電話連絡を入れていなかったため、看護師はすぐに保管場所に移さなかったという。直後に手術があったことも影響した。
病院側は再発防止策として▽薬剤を出す際の請求伝票の徹底▽劇薬や毒薬はリフトでなく、薬剤師が直接届ける▽収納後は薬剤師と看護師でダブルチェックする――などを実施する。三木誓雄院長とともに発表した岡本栄市長は「職員の緊張感が欠落していた。危機感を覚醒させ、信頼回復に努めたい」などと述べた。
政府の規制改革会議(議長=岡素之・住友商事相談役)が、一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売の全面解禁を打ち出す方針を固めた。
8日の会合で厚生労働省に対し、全面解禁を前提にした〈1〉販売履歴の管理や購入量の制限〈2〉副作用や薬の効果などを薬剤師にメールや電話で相談できる仕組み――の策定と、薬事法改正を求めることを決める見通しだ。同省はネット販売のあり方に関し、有識者会議で年内に結論を出すとしており、6月の成長戦略に全面解禁を盛り込むとしている規制改革会議との調整が焦点となる。
ネット販売を巡っては、最高裁が1月に、副作用の強弱で3分類している市販薬のうち、特にリスクが高い「第1類」と比較的高い「第2類」を一律禁止した厚労省の省令を「違法で無効」とする判断を示している。
埼玉県久喜市の一人暮らしの男性(75)が今年1月、「呼吸が苦しい」と119番したが、25病院から計36回にわたって受け入れを断られているうちに容体が悪化し、約3時間後にたどり着いた病院で死亡したことが市などへの取材で分かった。
市や久喜地区消防組合消防本部によると、男性は1月6日午後11時25分頃、119番した。駆け付けた救急隊員は県東部や南部、茨城県の病院に受け入れを要請したが、「専門医がおらず処置が難しい」「ベッドが満床」などの理由で断られ続けた。3回にわたって断られた病院も2か所あった。
当初、男性は意識があり会話ができたが、7日午前0時50分頃に意識がなくなった。救急隊員が心臓マッサージをしながら搬送先を探し、7日午前2時15分頃、いったん断った茨城県内の病院が受け入れたが、死亡が確認された。
米ジョンズ・ホプキンス大などの医療チームは4日、母親の胎内でエイズウイルス(HIV)に感染した女児に対し、出生直後から抗ウイルス薬を投与し続けたところ、血液検査で検出されないレベルまでHIVが減少したと発表した。
HIVの増殖を抑えて治癒した例はほとんどなく、小児では初めてだという。新たな治療法の開発につながると期待されている。
発表によると、医療チームは生後30時間から女児に3種類の抗ウイルス薬を組み合わせて投与し、生後29日には、HIVが検出されなくなった。1歳6か月まで投薬を続け、その後10か月間、家庭の事情で投薬が中断。2歳4か月の時に再検査したところ、やはりHIVは検出されず、治療が不要な状態になっていた。
富山市立富山市民病院(富山市今泉北部町)は今月から、新たに導入した最新鋭の磁気共鳴画像装置(MRI)の利用を始めた。同病院は「今後は救急患者や健康診断などにも活用し、質の高い診断を行いたい」としている。
導入したMRIは独シーメンス社製で購入価格は1億8800万円。同病院は1990年頃からMRIを導入し、今回で3世代目となる。新MRIは、患者が装置内で動いても画像を補正できるため、子どもや、痛みなどで体を静止できない患者も検査を受けられる。また、画像撮影に使う磁場の強さは従来の1・5倍で、短時間でより精密な診断が可能になった。
同病院では、これまで使用していた2台のMRIは緊急性の低い患者に、新MRIは子どもや緊急性の高い患者に使用する。3台を併用することで「患者の待ち時間が軽減され、精度の高い画像診断ができる。近隣の医療機関とも連携して地域医療に貢献したい」としている。
向精神薬処方、生活保護受給者678人が不適切…福岡 |
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生活保護受給者に対する向精神薬の処方を巡り、福岡県が、福岡、北九州、久留米3市を除く県内の実態を2010~12年度に調べたところ、複数の医療機関から処方を受けた受給者のうち、約8割が不適切な処方だったことがわかった。
県は、医療機関の協力を得ながら改善を進めたいとしている。
大阪府で向精神薬の不正転売事件が発覚したことを受け、厚生労働省が全国に調査を要請。県は、10年度に睡眠薬など約80種類、11、12年度は328種類に対象を拡大し、3市を除く医療機関から送られてくる診療報酬明細書について、医学的な観点から処方の適否をチェックした。
その結果、10年度は重複処方を受けた37人のうち、不適切だったのは30人(81%)。11年度は422人中328人(78%)、12年度は421人中320人(76%)に上った。3か年度の合計は、880人のうち678人(77%)だった。
県は昨年10月、県内8福祉事務所に、薬剤師数人を「適正受診指導員」として配置。不適切な処方が確認された場合、ケースワーカーや医療機関に指導や助言を行っている。
複数処方を受ける受給者について、県は「薬を多くもらうことで精神のバランスを保とうとする傾向がある」と分析。そのためケースワーカーが適切な受診を求めると、落ち込んだり、反抗したりすることも少なくなく、対応に苦慮しているのが実情だという。
県の昨年度の生活保護費は約912億3200万円。うち医療扶助費は約6割を占める。福岡市の実態調査でも、同じ3か年度に複数の医療機関から処方を受けた受給者のうち、約85%が不適切な処方だったことが判明した。
救急車iPadカメラ付きに…佐賀県、4月に新機種 |
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佐賀県は、全国で初めて2011年4月に導入した救急車への多機能情報端末・iPad(アイパッド)の配備について、4月からカメラ機能付きの新機種に更新する。
これまで受け入れ可能な病院の検索などで活用してきたが、新機種の導入に伴って現場の状況を画像で医師に伝達できるようになる。県は「救命処置の精度向上が期待できる」とみている。
県によると、救急搬送の患者の受け入れ先がすぐに見つからない事態が問題化していたため、県内の救急車全49台にiPadを配備。医療機関を登録するシステムも開発し、救急隊員が病状を入力すると、受け入れることができる病院や、病院ごとの当日の搬送状況などが瞬時に分かるようにした。
一方で、現在のiPadには、カメラ機能が付いておらず、救急隊員は口頭で医師に状況を説明しているが、医師側から「画像があれば処置に役立つ」との声が上がっていた。特に交通事故の際は、事故車両の破損状況や車内の画像が、衝撃の強さなどを推定する参考になるという。
県は、昨年9月の補正予算に、機器更新や新たに48か所の救急病院に配備するための費用などとして、約800万円を計上。救急隊員は4月以降、新機種を使って、現場などで撮影した画像を搬送先の病院で医師に示しながら説明する。
現在のシステムでは、画像のメール送信ができないため、県は新年度に補正予算を組んで、現場や搬送中の車内から病院に画像を送信できるシステムへの変更を目指す。
県医務課は「一刻を争う深刻な状況では、医師がひと目で分かる画像の情報が重要となる。今後も多機能端末の強みを生かせる仕組みを検討し、救急救命に役立てたい」としている。
広島県内の病院で、職員の子どもを対象にした院内保育所を設置する動きが広がっている。
女性の看護師らが育児と仕事を両立できる環境を整備し、出産や育児による離職を防ぐ狙い。看護師不足が全国的な問題になる中、県も運営補助金の支給などで設置を後押しし、看護師の確保につなげたい考えだ。
マツダ病院(府中町)は4日、院内保育所「にこにこキッズ園」を開設した。生後2か月から小学校就学前までの子どもが対象で、定員は25人。保育時間は月曜から土曜の午前7時45分~午後6時で、土曜以外は午後7時半までの延長保育もある。
同病院は、職員(約500人)のうち75%が女性。看護師の半数は20歳代で、奥平信義・院長は「女性の医師も増えている。女性に長く働き続けてもらう環境作りが必要」と話す。
日本看護協会が2011年に行った調査では、県内の常勤看護職員の離職率は8・9%。結婚や出産などを機に退職するケースも多いとみられ、県医務課は13年には看護職員が約1190人不足するとの見通しを持つ。医療現場では、看護師の離職に伴う人手不足が慢性化。「医療の質」の低下に懸念が強まる中、看護師の復職を促す必要性が増している。
1973年に院内保育所を開設した呉市医師会病院(呉市朝日町)は、24時間保育を実施。保育所の充実を理由に、他の病院を退職した看護師が「再就職」することもあるという。10年10月に開所した中国労災病院(呉市広多賀谷)は「育児休業を終えた若手の看護師らの利用があり、離職防止につながっている」と、効果を強調する。
県医務課によると、県内の248病院(12年9月現在)のうち、保育所があるのは約80。国と県から運営費の2分の1を補助される場合もあり、同課は「多様な勤務形態の導入を促すなどして、看護師不足の解消を図りたい」としている。
インプラント手術中に患者死亡 歯科医師に有罪判決 |
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東京都中央区の歯科医院で2007年、インプラント手術中に女性=当時(70)=の動脈を傷つけ死亡させたとして、業務上過失致死罪に問われた歯科医師飯野久之被告(68)に東京地裁は4日、「危険性の高い手術をしながら、医療水準に対応する努力を怠った」として禁錮1年6月、執行猶予3年(求刑禁錮2年)の判決を言い渡した。
インプラント手術では、術後に痛みや出血などを訴えるトラブルが多発。民事訴訟に発展する事例は多いが、刑事事件は初めてとみられる。被告側は控訴する方針。
動脈を傷つける予見可能性があったかが主な争点となり、弁護側は「歯科医師の間で当時、損傷の可能性は知識として共有されていなかった」と主張していた。
吉村典晃裁判長は、専門家の証言や文献の記述などから「口の底部の血管は人により多様な形状があり、底部を傷つけると出血などの事故につながる危険性は以前から指摘されていた」と判断。
下顎の骨に意図的に穴を開ける被告のやり方について「安全性や有用性に問題があると言われていたのに、血管損傷の危険性はないと軽信した」と過失責任を認めた。
一方、遺族との間で和解が成立したことなどを考慮し、刑の執行を猶予した。
判決によると、被告は07年5月22日、女性の下顎の骨を削った際、誤って動脈を傷つけて出血させ、血腫が原因の窒息による低酸素脳症などで翌日に死亡させた。
2月に岡山市南区青江の国道30号で、オートバイでツーリング中の女性(30)(大阪市)が転倒し、一時心肺停止する事故があり、通りがかった岡山市内の看護師と作業療法士の懸命の心臓マッサージ(胸骨圧迫)によって一命を取り留めた。
救命講習に参加経験のある2人の的確な処置で、女性に後遺症もなく、県は2人に県善行賞(人命救助)を贈った。
救助したのは、看護師の三宅理恵さん(29)(岡山市南区)と、作業療法士の川上孝昭さん(同市中区)。
岡山南署などによると、2月1日午後3時45分頃に発生。三宅さんは乗用車を運転中、前方で、狭い道から国道に左折するオートバイが倒れるのが見えた。運転していた女性はけいれんを起こしており、三宅さんは急いで車を止め、女性に駆け寄った。
「大丈夫ですか」と声を掛けたが、反応はなく、脈も呼吸もない。心肺停止状態とみられ、すぐに胸骨圧迫を始めた。
近くのガソリンスタンドの店員らが119番をしたり、自動体外式除細動器(AED)を持ってきたりと協力。事故による渋滞の中にいた川上さんも車を降り、一人胸骨圧迫を続ける三宅さんと交代した。川上さんは胸骨を強くリズミカルに押し続け、三宅さんも女性の手を取り、「分かりますか」「聞こえますか」と声を掛け続けた。
数分後、脈が戻って呼吸が確認できた。発生から8分後に救急隊が到着。その頃には意識も取り戻した。入院したものの、軽症ですぐに通常の生活に戻ることが出来たという。
2人とも過去に数回ずつ、勤務先などが実施する救命講習を受け、胸骨圧迫の手順などを学んでいた。三宅さんは「倒れている人を救助するのは、初めての体験だった。女性が無事で何より」と話している。
市民の応急処置 救命増加
AEDは心臓がけいれんして血液を送れなくなる「心室細動」の状態を正常に戻すための機械で、心肺停止には対応できない。このため、突然の心肺停止には胸骨圧迫が極めて有効だ。2月の東京マラソンで突然倒れた男性ランナーに別のランナーが圧迫を施すなど、市民が命を救う事例が増えており、専門家は圧迫の方法などを学ぶ救命講習への参加を広く呼びかける。
総務省消防庁の2011年のまとめでは、心臓に原因があり、一般市民が応急処置を行ったケースでの1か月生存率は14・2%で、応急処置がなかった場合の1・65倍に上る。社会復帰率では、「処置あり」が「処置なし」の2倍以上になる。
交通事故による外傷で心肺停止になった場合は、胸骨圧迫をしても救命に至らないケースも多い。しかし、心肺蘇生法の啓発を行っているNPO法人「NPO救命おかやま」(岡山市)の津島義正・副理事長は「交通事故の場合でも、もともと心臓に原因を抱えていて心肺停止になるケースもある。救急隊到着までに、市民ができることで最も有効なのは胸骨圧迫。今回の岡山市のケースで、あきらめずに懸命に圧迫をしたことは素晴らしい」と評価する。
一般向けの救命講習は各消防局・本部が実施しており、津島副理事長は「市民救助が増えることで、救われる命は必ずある。多くの人に講習を受けてほしい」と参加を勧めている。
奈良と三室、県立病院一体で独法化 来年4月めどに |
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奈良県は、県立三室病院(三郷町)と県立奈良病院(奈良市)について、2014年4月から一体的に独立行政法人化する方針を明らかにした。公立病院の独立行政法人化が実現すれば、県内では初めてとなる。
県北部の医療体制を向上させるのが狙いで、今後、両病院の機能や診療科の住み分け、09年から休止している三室病院での産科再開などを専門家の意見を反映しながら検討していく。新法人の理事長には榊壽右(さかきとしすけ)・県医療政策参与が就く予定。
県医療管理課の担当者は「医療機器・薬品の一括購入や、医師らの人事交流などで一体運営の利点を生かし、各病院が地域住民のニーズに合った独自の強みを持つようにしたい」としている。
金沢大は千葉大、長崎大と共同で、健康なうちから遺伝子解析で発症リスクのある病気を調べ、その予防法の提供などを実践する「スーパー予防医科学」の実現と人材輩出を目指す大学院を設置する。
2016年開校の予定。金沢大は、3大学の特徴と強みを融合させ、「QOL(生活の質)向上と医療費の大幅な削減につなげる」としている。
事業は、文部科学省が進める国立大学の改革推進事業に採択され、今年度から6年間で計約50億円(要求ベース)の補助を受ける見通し。4年間の共同教育課程(博士)を設け、学生は各大学を「本籍校」として拠点にしながら、他大学の単位も取得して、3大学連名の学位を得る。定員は未定。金沢大は、既存の施設を共同大学院用に改修して対応する。
予防医学は、高齢化に伴う医療費の増加などから、重要性が増している。従来、禁煙や食生活改善で病気を未然に防ぐ「1次予防」、検査などで病気を早期発見する「2次予防」、再発予防の「3次予防」の3段階で発症リスク減少を進めてきた。近年はDNAを調べ、生まれながらになりやすい病気や対策を探る「0次予防」の研究も始まっている。
病気の中には、糖尿病や花粉症といったアレルギーなど、親子間の遺伝によって発症しやすいものがある。0次予防では、個々人で違うDNAを幼いうちから調べることで、将来的に発症リスクが高い病気を特定し、食事などでの効果的な予防法を見つける事が目的だ。
3大学は今回、この0~3次予防の包括的な実践を「スーパー予防医科学」と位置づけ、研究、人材育成を行う。共同大学院では特に、0次予防の研究を進め、臨床への応用など0~3次の一体的な実践を図る。
3大学はそれぞれ、能登と長崎県・五島、千葉県・柏、西千葉をモデル地区としてフィールド研究を行っている。新年度からは、研究結果の共有データベースを構築し、大学院設置に向け連携を深めていく。
ロシアに日本式医療の波…高い技術、丁寧な看護評価 |
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医療の「近代化」をめざすロシアで、日本式医療が注目されている。日本製の医療機器や技術への信頼は高く、関係セミナーには多くのロシア人専門家が集まるようになっている。
モスクワの日本大使館で2月中旬、日本の先進的ながん治療への取り組みを紹介するセミナーが開かれた。会場に詰めかけた約180人のロシア人病院関係者からは、治療を受けるまでの待ち時間や費用などの質問が相次いだ。
昨年12月にはモスクワの病院で、工藤進英・昭和大教授が内視鏡を使った大腸の検査法を約40人の医師に手ほどきした。西シベリアから参加したイリーナ・スドブイフ医師(35)は「ロシアには、このような最新機器が少なすぎる」と嘆いた。
両セミナーを主催したのは、日本と海外の医療協力を橋渡しする一般社団法人「メディカル・エクセレンス・ジャパン」。山田紀子理事は「セミナーを開く度、日本との協力へのロシア側の期待の大きさを肌で感じる」と話す。
日本式医療について、ロシアでは「治療技術が高い上、看護は丁寧で手厚い」との評価が定着しつつある。日本へ渡って治療を受けることを希望するロシア人も増えている。
急速に経済成長したロシアだが、旧ソ連時代の1970年代に欧州から輸入されたレントゲン装置が今も使われるなど医療水準は高くない。病気の早期発見をめざす「予防診断病院」にしても、がんなどの早期発見に役立つ磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影法(CT)装置を備えた病院は多くない。このため、ロシア政府は2011年と12年の特別予算では医療機器の更新や医師の待遇改善などの医療分野に6300億ルーブル(約1兆9000億円)を割り当て、近代化を後押しする。
機器更新の際には、欧米などの関連企業が入札で参加するが、最近、日本企業も善戦している。デジタル式画像診断システムを中心に販売する富士フイルムロシアによると、12年の売り上げは10年の5倍増になったという。同社の岩崎哲也社長は「欧米企業は依然、知名度が高いが、日本の医療機器の性能の良さが入札審査で評価されてきた」と売り上げ増の要因を分析している。
南海トラフ巨大地震などの災害時に長時間停電するケースに対応するため、和歌山県は2013年度、在宅で人工呼吸器を使用している患者を対象に、無償で非常用発電機を貸し出す制度を創設する。電力不足による計画停電なども想定して、今夏頃から、県内の難病患者ら約60人が自宅で利用できるようにする。
県健康推進課によると、貸し出しの対象となるのは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとする神経性の難病や、肺気腫などの肺疾患の患者ら。
患者たちが自宅で使用している人工呼吸器は、外部バッテリーなどの予備電源を使った場合には作動時間が6~12時間程度に限られている。
大災害時には、各市町村などが患者を医療機関に緊急搬送するが、東日本大震災では交通網の寸断で搬送が遅れるケースも発生。停電時でも自宅で長時間、人工呼吸器を使用できる環境を整備する必要に迫られた。
一昨年の紀伊水害もあり、県は昨年3月、各保健所に災害時に貸し出すための非常用発電機を設置。今後は普段から自宅に常備してもらうことにした。
配備する発電機はカセットコンロ用の小型ガスボンベ2本で約2時間作動する。複数のボンベを買い置きしておけば、長時間発電することも可能という。1台当たり10万円を全額補助して医療機関に購入してもらい、患者に無期限で貸し出してもらう。
県は13年度当初予算案に患者60人分にあたる600万円を計上。夏場の電力不足に備えるため、7月頃までの配備を目指している。
県健康推進課の担当者は「停電時の不安を解消するには、自宅に発電機を置いてもらうのが一番と考えた。家庭にある小型ガスボンベを使うタイプであれば扱いやすい」と説明している。
最新医療ロボ導入、腹腔鏡手術を支援…愛知・刈谷豊田総合病院 |
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刈谷豊田総合病院(愛知県刈谷市住吉町)は、米国製の最新鋭医療ロボット「ダヴィンチSi」を導入し、27日、報道陣に公開した。
前立腺がんなどで、腹部に開けた小さな穴からカメラやメスなどを入れて行う「腹腔
ふくくう
鏡手術」を支援する装置で、三河地域で初めての導入となる。費用は約3億6000万円。
医師は、患者が横たわるベッドから少し離れた操作台に座り、体内に入れたカメラの立体映像を見ながら、3本のロボットアームを遠隔操作し、患部の切除や縫合を行うことができる。アームは人間の手以上に精密で柔軟な動きが可能という。
従来の開腹手術と比べて、患者の傷口や出血量、入院期間を少なくすることができる。また、緻密な手術が可能なため、神経など体の様々な機能を温存することも期待される。
ひと足早く出た機種「ダヴィンチS」を含めて全国で85台目(県内9台目)となるが、三河地域にはなかった。
保険が適用される前立腺がん手術で4月中旬以降、年間約50人の患者に使う予定。早川哲史
てつし
・副院長は「胃がんや大腸がんなどの手術にも順次広げてゆき、県内医療に貢献したい」と話している。
毒ガスとして知られる硫化水素が、体内で生成され腎臓や脳などの組織の保護機能を担っている――。
そんな研究が国立精神・神経医療研究センター(NCNP)で進んでいる。同センター神経薬理研究部の木村英雄部長らの研究グループは、硫化水素が体内でより効率よく生成される新たな経路を発見し、1月22日、英国のオンライン科学誌に掲載された。
硫化水素が哺乳類の脳に存在することは、1989年にカナダの研究者により初めて発表された。この報告をきっかけに、当時、米カリフォルニア州の研究所にいた木村部長が、ラットの脳で硫化水素が生成され、海馬での記憶増強に関わっていることを突き止めた。
現在進めている研究で、木村部長のグループは、腎機能に障害を持つマウスに、D―システインというアミノ酸を与えたところ、腎臓で硫化水素が生成され、症状が著しく軽減したことを発見した。
これまで、体内でL―システインと呼ばれるアミノ酸から硫化水素が生成されることはわかっていたが、D―システインは、腎臓内でL―システインよりも80倍効率よく硫化水素を生成し、しかも副作用が少ないこともわかった。
腎不全の重症化を防止し、人工透析の導入を遅らせる治療薬は世界的にもまだない。現在、L―システインを使った新薬開発が、オランダで進んでおり、昨年末に治験の最終段階が終了している。D―システインの臨床試験が始まれば、より有効な新薬開発への期待が高まる。
すでに、カナダの腎臓移植の研究者から木村部長らの研究グループに共同研究の打診があったという。木村部長は「今後研究が進めば、慢性の腎不全や糖尿病による腎機能低下の治療薬、さらに移植される腎臓の保護薬としても応用できるはず」と自信を見せる。
この成果について、硫化水素が心筋細胞の老化を抑えることを九州大の研究グループと共に解明した熊本大大学院の赤池孝章教授は「新しい経路が発見されたことで、(腎不全など)臓器の障害に対して、予防的な治療につながる価値の高い研究だ」と評価している。
医師として、広島を“えっと"楽しみましょう――。広島県地域保健医療推進機構(広島市南区)は、県内の最新の医療環境や先輩医師の声、暮らしぶりを紹介する医学生・研修医向け情報誌「ETTO(えっと)」を創刊した。
全国で2番目に無医地区が多い県では、若手医師の確保が課題。県外で働く研修医や若手医師に広島で働く魅力をアピールし、地域医療の担い手確保を狙う。
「えっと」は広島弁で「たくさん」の意味。「広島で医師人生を送れば、医師も県民も『たくさん』幸せ」という思いを込めた。
地域医療は従来、大学病院の医局が派遣する若手医師が担うことが多かったが、広島大医学部の定員減や、2004年度に研修先を自由に選べる臨床研修制度が導入されたことなどで、県内の研修医は年平均180人から約140人に減少。無医地区は県北部を中心に53か所(2009年10月末現在)あり、北海道に次ぐ多さとなっている。
また、県内に医学部のある大学が広島大しかないため、医師を志す高校生らは毎年100人以上、県外に進学。卒業後は大学がある地域の病院や、「最先端の現場で経験を積みたい」と都市部の病院を選ぶ傾向にあるという。
雑誌は、県外進学者が帰りたくなり、ゆかりがない人でも「行ってみたい」と思う情報を発信しようと発刊。地域医療の現場を具体的にイメージしてもらうため、現場の医師のインタビューを中心に構成する。
創刊号では、中山間地域にある10病院で構成する地域医療連携ネットワーク「南斗六星研修ネットひろしま」のメンバー5院長による対談と、研修医の勉強会「広島グリーンサミット」への参加者にインタビューした内容を掲載。生活環境も勤務先を決める大きな要因になるため、広島市内のショッピング事情についての特集を組んだり、身近にある自然を取り上げて暮らしやすさをアピールしたりしている。
デザイン事務所に構成やレイアウトを依頼し、“いまどきの若者"が手に取りたくよう工夫。初回は1万5000部作成し、西日本各地の医学部や臨床研修先の合同説明会などで配布する。今後は年1回程度の発行を目指し、県内の病院や県内で研修後に国内外で活躍する先輩医師らの声を掲載する予定だ。同機構医監の古川正愛医師は、研修で初めて広島に来た医師の6割程度が終了後もとどまっていることなどから「来てみたら、広島には魅力が“えっと"あることがわかるはず。ETTOが、『行ってみたい』と思うきっかけになれば」と話している。
抗インフルエンザ薬の一つ「リレンザ」を2009~12年に使った患者3人がアレルギー性ショックを起こし、このうち1人が死亡したと、厚生労働省が27日発表した。
薬の添付文書の副作用欄に「ショック」を書き加え、患者を十分に観察するよう医師に求めた。
厚労省によると、死亡したのは30歳代の女性。12年、家族がインフルエンザに感染したため、医療機関で予防のために吸入したが、数分後に呼吸困難となり、間もなく死亡した。気管支ぜんそくの発症歴があり、当日は発熱や感染性胃腸炎の症状があった。
09年には、インフルエンザと診断された10歳代の女性が、リレンザを吸入した6時間半後、一時的に意識を失った。もう1人は10歳代の男性で、同年、一時的に呼吸困難となった。
乗用車型のドクターカー導入へ…千葉・松戸市立病院 |
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千葉県の松戸市立病院は26日、重症患者などが出た場合に医師を乗せて緊急出動する乗用車型の「ドクターカー」1台=写真=を3月から導入すると発表した。
同病院によると、ドクターカーは心肺停止状態の重症患者や、救出に時間がかかる事故などで重傷者が出た場合、市消防局の要請に応じて同病院の医師を乗せて出動する。事故現場や救急車内など病院への搬送前に患者を診療できるため、救命率の向上や後遺症の軽減などが期待できるという。
車両には心臓マッサージや血液検査、超音波検査などのための医療機器や医薬品が積まれる。フロントや屋根には赤色灯が付いており、サイレンを鳴らしながら緊急自動車として走行できる。
出動は平日午前8時半~午後5時で、出動先は市内が対象。同病院救命救急センターの医師4人が当番制で担当する。植村研一・市病院事業管理者は「いち早く医師を現場に届けることが大切。将来的には、対応する時間や地域を拡充したい」と話している。
「国側有利な証言 医師に依頼」認定訴訟で弁護団指摘 |
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熊本県が水俣病の患者と認定しなかったのは不当として、大阪府豊中市の女性(87)が患者認定を求めている訴訟で、女性の弁護団は26日、来月15日の上告審弁論を前に記者会見を開き、環境省が控訴審で証人として出廷を依頼した医師に対し、本人の見解と異なる証言をするよう繰り返し働きかけたと指摘、医師名で経緯を説明する書類を最高裁に提出したと発表した。
弁護団によると、同省の担当官が2011年6月、国立国際医療研究センター(当時は国立精神・神経センター)国府台病院の佐藤猛元院長(80)に女性の症状に関する意見書を作成し、県側証人として出廷するよう依頼。カルテなどから佐藤氏が「女性は水俣病」と診断すると「当時の知見では水俣病ではないとの判断は妥当だったと証言してほしい」と繰り返し要請したという。
佐藤氏が拒否すると、証人の話はなくなり、県側は別の医師の意見書を同高裁に提出。昨年4月の控訴審判決で女性が敗訴したことを知り、納得できなかった佐藤氏から、今年1月、弁護団に情報提供があったという。
宮崎県西都市が出資する第3セクター「西都児湯医療センター」の常勤医4人のうち、内科医2人を含む3人が3月末までに退職することが分かった。
医師確保のめどは立っておらず、4月以降は内科の診療ができなくなる恐れがあるという。
同センターの常勤医は循環器内科医2人と脳神経外科医2人。センターによると、循環器内科医の1人が1月中旬、「一身上の都合で2月末で退職する」との辞表を提出。宮崎大医学部から派遣されている脳神経外科医は3月末で派遣期間が終わるが、同大から後任の派遣予定はないという。
さらに、常勤理事の内科部長を務める循環器内科医が22日付で辞表を提出。3月末で辞めるとしており、辞表には「17日の緊急理事会が非公開になり、医師確保に向けた具体的な対応策が議論されなかった。市民には申し訳ないが、この先、市民目線での病院運営は難しい」という趣旨の内容が書かれていたという。
同センター関係者は「このままでは内科は休診にせざるをえない。脳神経外科も1人になれば急患の受け入れは難しくなる」と話している。同センターはベッド数91床で、年間の外来患者数は約1万5000人。
名古屋市が最先端のがん放射線治療を目指して同市北区平手町の西部医療センターに開設した「名古屋陽子線治療センター」が25日、治療を開始した。
前立腺がんの治療から始め、7月頃から肺がんや肝臓がんなどの治療を始める予定だ。
市によると、陽子線治療は放射線治療の一種で、X線などに比べて周囲の正常な細胞を傷つけることが少なく、体への負担が軽減できる。陽子線治療ができる病院は東海3県で初めて。
同施設は総事業費245億円で、主に前立腺がん治療に使われる固定照射室1室=写真=と照射角度が360度回転するガントリ照射室2室の計3室を備える。ガントリ照射室は肺がんや肝臓がんなどの治療に使われる。
保険適用外のため、治療費は自己負担で288万3000円(市民は268万3000円)。市は2013年度に180人程度の患者を見込み、将来的には年間800人程度の受け入れを目指している。
同センターの整備を巡っては、河村たかし市長が09年9月、「医療費が高く、利用者は想定の半分程度。年間数億円の赤字が出る」として建設を約4か月間凍結。このため、日立製作所から4億8600万円の追加負担を求められている。
体内で免疫反応が過剰に働くことが、慢性関節リウマチといった自己免疫疾患だけでなく、メタボリック症候群やアルツハイマー病など幅広い病気の発症に関わっている可能性があると、大阪大の平野俊夫学長、村上正晃・准教授らの研究グループが、米科学誌セル・リポーツに発表した。新しい治療法の開発につながる成果という。
細胞はウイルスや細菌に感染すると、インターロイキン6(IL6)というたんぱく質を放出し、病原体と戦う免疫細胞を呼び集める。本来は一時的な反応だが、IL6の放出が止まらず、正常な細胞まで攻撃させる場合があり、それが自己免疫疾患につながると考えられている。
グループはマウスの培養細胞を使って、全遺伝子の7割にあたる約1万6000個の遺伝子の機能を一つずつ停止し、どの遺伝子がIL6を活性化するのかを調べる実験を行い、約1000個が関与していることを発見した。これらを人間の遺伝子データベースと照合した結果、人とマウス共通の約800個が、糖尿病などにつながるメタボリック症候群やアルツハイマー病、多発性硬化症などの発症に関与していた。
平野学長は「病気の仕組みを総合的に理解し、効果的で副作用が少ない治療法を開発するきっかけになるだろう」と話している。
弘前大学は22日、今年秋の医学部医学科学士編入学に設定している「県内枠」募集要項に、卒業直後の臨床研修から少なくとも12年間、弘大や県内自治体病院などで医療従事することを明記し、確約書提出も求めると発表した。弘大によると、卒業後地元での医療従事期間を明記するのは、国立大では初めてという。
同科の学士編入学は、いったん大学を卒業した人が、同科2年生の後期に編入学するもの。今年秋の募集人数は20人。このうち5人が本県の高校または大学出身者を対象とした「県内枠」。
県内枠は昨年秋もあり、出願資格は「卒業後、弘大医学部付属病院のプログラムに従って臨床研修を行い、その後、県内で医療に従事することを確約できる者」だったが、従事期間は書かれていなかった。今年秋は「臨床研修開始後、少なくとも12年間」と明記し確約書提出も求める。
同科入試専門委員長の鬼島宏教授は記者会見で、期間明記について、「将来県内で貢献できる医師数を把握できる一つの目安。県内枠でなくてもずっと県内で従事してほしい」と話した。
出願は5月1日~10日で、1次試験は6月2日、2次試験は6月29日~30日に実施される。
胃がんの発症につながると指摘される細菌「ヘリコバクター・ピロリ」(ピロリ菌)の感染による慢性胃炎について、厚生労働省は21日、除菌治療を保険適用として認めた。
これまでは、症状が進んだ胃潰瘍になってからの治療にしか認められていなかった。早期治療を促すことで胃がん予防につながると期待される。
保険適用されたのは、製薬企業12社が販売する、抗生物質と胃酸を抑える薬。呼気検査などで感染が見つかり、内視鏡で胃炎が確認されれば、患者は1週間ほど服用する。これまで、胃炎の治療として除菌すると、1人あたり数万円の費用負担があった。
関東信越地方社会保険医療協議会が20日、さいたま市で開かれ、診療報酬の不正請求で保険医療機関の指定を取り消された東京医科大茨城医療センター(茨城県阿見町)の保険医療機関再指定の是非を議論した。
会議は非公開だが、関係者によると、申請通り、19診療科で再指定が認められたという。関東信越厚生局が21日にも正式発表する。早ければ3月1日に通常の保険診療態勢に戻ることになる。
協議会は通常1~2時間で終わるが、今回は、早期の再指定に慎重な意見も一部委員から出たため約3時間半かかった。最終的に、指定取り消しが長引いた場合に地元の患者、地域医療に重大な悪影響が生じる恐れが強いことから再指定が受け入れられたという。
関東信越厚生局は昨年9月、協議会の答申を受け、同センターの保険医療機関指定を同12月1日から取り消すことを決定。県や地元自治体は早期の再指定を国に要望し、同センターは今年1月22日、診療科を取り消し前の24科から19科、病床数を501床から389床に削減して申請していた。
アフリカ東部のウガンダで、出産など母子保健に関する状況改善を支援しようと、日赤和歌山医療センター(和歌山市小松原通)の平田こずえ看護師(40)が派遣されることになった。
18日、同センターで出発式が行われ、平田看護師は「お母さんたちのニーズを掘り起こしたい」と意気込んでいた。
平田看護師は2003年から同センターに勤務。08年はフィリピンで住民の生活環境の改善に、11年にはハイチでコレラ対策に取り組んだ経験を有する。
ウガンダでは、自宅で出産する人が多いが、感染症などの問題があるという。平田看護師は今月下旬に出発し、来年3月下旬までの間、現地で妊産婦への知識の普及や出産に必要な物資の支援を行い、ボランティアの育成にもあたる。
式では藪本充雄・国際医療救援部長が、「乳児死亡率の低下や予防接種の普及を実現してほしい」と激励した。
小野、三木両市民病院が統合して10月に開業する「北播磨総合医療センター」(兵庫県小野市市場町)の完成を控え、小野市民病院の医師33人のうち、約半数の15人が4月末までに自主退職することが18日、わかった。
独立開業などが理由で、補充はしないため、開業まで5か月間は半数の医師で対応。同病院は「外来患者に支障はない」とするが、新たな入院患者の受け入れは困難で、近隣の病院に受け入れを要請する方針だ。
この日、三木市民病院で開かれた同センター企業団議会(企業長・蓬莱務小野市長)で企業団が明らかにした。
同企業団によると、小野市民病院の医師は昨年12月時点で33人いたが、「独立して開業したい」「自己都合」などの理由で退職が相次ぎ、4月末には18人になる見込み。特に内科医は15人から4人に激減する。
このため、3月から入院ベッド数は220床から109床、4病棟から2病棟に減らす。
同病院は「外来患者は対応できるが、入院患者は三木市民病院を中心に受け入れてもらう方針で、患者さんにご不便をかけ、申し訳ない」としている。
同医療センターの開業に合わせ、小野市民病院は医療法人に売却され、病院やデイケアセンターとして活用される。
30代以降は特に注意
通常は冬に収まる「風疹」の感染者数が、今年に入り第5週の2月6日現在、前年同期比で約14倍に上っていることが、国立感染症研究所の集計で分かった。専門家は警戒を呼び掛けている。
今年の感染者は同日現在、339人(前年同期25人)。このうち東京都が157人(同6人)で最多で、神奈川県50人(同1人)、埼玉県34人(なし)の順。中部地方では、愛知県11人、長野県2人、三重、静岡、石川各県は1人ずつで、いずれも前年はこの時期、感染者はゼロだった。
風疹の流行は昨年春に関西から始まり、夏以降は関東、中部地方へと広がった。昨年の感染者数は全国で2353人で、2011年の6倍以上に。今年に入っても流行は続き、男性は20~40代、女性は20代で感染が多い。
風疹は、せきやくしゃみでうつり、発疹や発熱、リンパ節の腫れなどを引き起こす。妊娠初期に感染すると、赤ちゃんが難聴や白内障、心疾患などの「先天性風疹症候群(CRS)」になる可能性もある。10、11年は、国内感染のCRSの報告はなかったが、昨年は5件、今年は1件出ている。
風疹の予防接種は現在、1歳と小学校入学前1年の計2回、麻疹も防ぐMRワクチンを打つ。ただ以前、女子中学生のみが接種の対象となった時期があり、未接種者が多い30代後半以降の男性は風疹の免疫が低く、感染もこの世代を中心に広がっている。
愛知県衛生研究所の皆川洋子所長は「定期予防接種の対象で、まだ接種していない未成年は早く接種を。成人は有料だが、CRSを防ぐため、必要に応じて接種を心掛けてほしい」と呼び掛けている。
奈良県は、県内の医師の不足や都市部の医療機関への偏りの解消を図るため、2014年度、県立医大に「医師派遣センター(仮称)」を設置する。
担当者は「各病院からの医師の派遣希望を一元的に管理し、学生らの希望をふまえて効率的に送り出したい」としている。
県立医大からは毎年、約100人が卒業して臨床研修に入るが、県内の医療機関を研修先に選ぶ割合は49%(2007~11年平均)と全国の公立6医大の平均(58・5%)を10ポイント近く下回っている。残りは大阪や京都などの病院を選択しているという。
原因について、県は「もともと多い県外の出身者が出身地の病院や都市部の著名な病院を選ぶため」と分析しており、人材流出に少しでも歯止めをかけようとセンター設置を決めた。センターのトップや事務局の体制は今後検討するとしている。
目標では、県立医大卒業生の県内就職率を2018年で全国平均並みの60%と設定。現在は、教授が個人的に行っている医師派遣の事務をセンターに一本化して情報を集約し、学生からも研修先の希望を聞き取って、双方の希望をできるだけ反映させていくとしている。
県医師・看護師確保対策室によると、県内の医師数は10年末で2994人。10万人あたり213人で、全国平均(219人)を6人下回る。
また、産科医(人口10万人あたり34・2人、全国平均39・4人)、小児科医(82・1人、94・4人)、麻酔科医(5・7人、6人)も慢性的に不足しているほか、県北部・都市部と比べて県南部・山間部で少ない南北格差も問題になっている。
同室の担当者は「県内の医療機関全体でバランスよく医師が確保できるよう、センターを機能させていきたい」と話している。
札幌市が4月の人事異動で、市保健所などに在籍する医師2人を市児童心療センター(札幌市豊平区)の配属とする緊急措置を講じ、センターの運営を維持する方針を固めたことが14日、分かった。
道内で唯一、児童精神科の入院病棟がある市児童心療センターを巡っては、常勤の児童精神科医5人のうち4人が3月末での退職を申し出ており、市は抜本的な対応策に迫られている。北海道大学医学部など外部からの医師確保の調整に失敗した責任を取って、渡部正行・元副市長が今年1月末で退任した事態に発展した。
市保健福祉局によると、医療法施行規則でセンターには最低3人の常勤医が必要とされており、市は保健所などに勤務する精神科医と内科医を常勤医として同センターに異動させ、要件を暫定的に満たす。異動によって保健所などの業務が滞ることはないとしている。
同局は「外部からの医師確保に引き続き取り組み、安定した運営を目指したい」としている。
奈良県天理市は、赤字経営が続く市立病院を2014年3月末で廃院とし、入院患者を受け入れない診療所「市立メディカルセンター」(仮称)とする方針を固めた。
129床あるベッドを廃止し、診療科も7科から3科に減らして経営を改善するとしている。ただ、市内で同病院など2病院にしかない産婦人科もなくなるため、市民からは地域医療の弱体化を心配する声が上がる。
同病院は1950年、二階堂診療所として開所し、76年、市立病院に衣替えした。患者数は90年代初めがピークで、91年には16万8740人、医業収入は19億9020万円に上った。
しかし、医師不足による患者の減少や競合する病院の開設・増床などで2003年度以降は赤字に転落。ベッドの利用率は11年度で60・6%と低迷し、患者は10万2317人と前年度より4762人減少。市は一般会計から支援を続け、11年度も約3億9000万円を繰り入れたが、累積赤字は12億3800万円に膨らんだ。
市の案では、整形外科、眼科、小児科、耳鼻咽喉科、産婦人科を廃止して、内科、外科、婦人科の3科に集約する一方、健診センターを併設して健康診断や、がん検診などを実施する。婦人科では出産前までの診察を行い、出産は、連携する近隣病院でしてもらう。
医師や看護師、検査技師は約80人態勢から4分の1程度に削減する。
センターの建物は、築38年と老朽化している鉄筋コンクリート造の東側部分(地上5階建て地下1階、5816平方メートル)は解体し、90年に増築した西側部分(同、2396平方メートル)を改修して利用する。
市は市議会特別委員会での議論を経て6月の市議会で条例改正案を提案し、指定管理者を選んで14年4月のオープンを目指すとしている。
病院事務局の阪原嘉章次長は「派遣元の大学の医師引き揚げや、近隣病院のベッドの増床などで経営が悪化し、有効な対策が打てなかった」と説明し、「入院はできなくなるが、今後も適正な規模で運営を続けて市民の期待に応えたい」としている。
市内の主婦(45)は「長女が昨年9月に利用した産婦人科があり、地元で産める安心感があった。市の財政を考えると仕方ないのかもしれないが、かかりつけの病院がなくなるのは心配」と訴える。
県市町村振興課によると、県内の市町村が経営する病院は大半が経営難で、11年度は7病院中、天理、奈良、宇陀、大淀の4病院が赤字。担当者は「医師や看護師らの人材難は中山間地域を中心に深刻で、小規模な公立病院は、特にしわ寄せを受けている」と話す。
ドクターヘリ導入検討、新年度予算案に調査費…奈良 |
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奈良県が、医師らを乗せて救急現場へ飛ぶ「ドクターヘリ」の導入を目指している。
これまで大阪、和歌山両府県が保有するヘリを共同運航する形を取ってきたが、県単独の運航に切り替えることで費用はかかるものの、より軽度の患者の搬送や災害時の積極的な活用が図れるとしている。新年度予算案で調査費約930万円を要求する。
2011年の台風12号で被災地の道路が寸断され、集落が孤立したことをきっかけに検討を進めてきた。現在は搬送対象を生命が危険にさらされている3次救急患者に限っているが、単独運航なら入院や手術が必要な2次救急患者にまで広げることができるとしている。また、災害時には陸路ではたどりつけない被災地に入り、患者を運ぶことが可能になる。
県は02年度に十津川村など南部7市村(五條市は一部)について和歌山県と、09年度に奈良市など北部33市町村(同)について大阪府と共同でドクターヘリの運航を開始した。出動回数は09年度15回、10年度20回、11年度13回。県が両府県に払う費用は年間約800万円という。一方、単独運航した場合の費用は推計年間約2億円。ただ、うち1億円は国の補助金で、さらに残りの一部に交付税を充てるため、県の支出額は年間約2000万~5000万円という。
厚生労働省によると、ドクターヘリは現在34道府県が計40機を導入している。救急要請から医師が治療を開始するまでの時間は09年度平均で14分と救急車より27分速い。県地域医療連携課の担当者は「導入で、道路網が整っていない地域でより多くの命が救えるようになることが期待できる」と話している。
乳幼児と一人親家庭、重度心身障害者を対象にした医療費の窓口無料化制度を巡り、山梨県が市町村に交付した補助金が不足していた問題で、県は13日、不足額は3億7906万円だったと発表した。
誤った補助額を算定する仕組みを作ったとして、県は同日付で、制度設計にかかわった職員や課長ら計14人に口頭訓告や厳重注意の処分を出した。
県児童家庭課と障害福祉課によると、無料化は2008年度から実施。医療費は、県と市町村が折半する仕組みだった。県の負担額は市町村が算出することになっており、県が誤ったデータを使うよう市町村担当者に指示してしまった。
このため、08年度からの4か年で、23市町村に対する補助金が計3億7906万円不足した。不足の内訳は乳幼児が28万円、一人親が88万円、重度心身障害者が3億7790万円。不足分は、2月定例県議会に提出する補正予算案に計上し、市町村に追加交付する。
山梨、甲斐、上野原、昭和の4市町は県が指定したデータとは別の正しいデータを使用し、不足はなかった。
県人事課は、07年度に制度設計をした児童家庭、障害福祉両課の当時の担当者や課長らのほか、決裁した08年度当時の担当者と課長ら計14人を処分した。既に退職した2人は処分の対象としなかった。
今後は、算出に正確なデータを使い、県と市町村で二重にチェックするなど、再発防止に取り組むという。
先端医療センター病院(神戸市)の倫理委員会は13日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)で目の難病「加齢黄斑変性」を治療する、理化学研究所(同市)チームの臨床研究の実施を承認した。
チームは理研の倫理委の承認も得ている。3月までに厚生労働省へ審査を申請する予定で、承認が得られれば、2013年度にも、iPS細胞を使った世界初の治療が始まる。
同病院倫理委によると、理研チームが現在実施している、安全性試験の最終結果が得られ次第、同倫理委へ報告することなどを条件に承認した。
臨床研究では、加齢黄斑変性のなかで、目の血管が異常に増えて、網膜の一部「色素上皮」が傷み、中心部が見えづらくなる「滲出型」の50歳以上の患者6人が対象になる。同センター病院で行う治療では、眼球に特別な注射針を刺し、傷んだ色素上皮や血管を取り除き、各患者のiPS細胞から作製した色素上皮の細胞シートを貼り付ける。
青森県立中央病院で2008年2月、超未熟児として生まれた女児の右腕が壊死して切断手術を余儀なくされたのは、主治医が必要な治療を怠ったことなどが原因だとして、女児の両親が病院管理者の県を相手取り、約9400万円の損害賠償を求める訴訟を青森地裁に起こしたことがわかった。
病院側は医療過誤を認めているが、和解に向けて協議中だとしてミスを公表してこなかった。
訴状によると、女児は同年1月、体重405グラムで出生。順調な経過をたどっていたが、主治医が2月、点滴のため右手の静脈にカテーテルを挿入しようとした際、誤って動脈を傷つけたことから急性動脈血栓症を発症。さらにこの主治医が発症を見逃して必要な投薬治療を怠ったため、右腕が壊死した、と主張している。女児は現在5歳。
同病院は手術後の08年3月、院内の医療事故対策委員会を開催。主治医らへの聞き取りなどの結果、「一定の過失がある」と結論づけ、損害賠償の支払いに向けた協議を始めたが、損害額の算出方法を巡って両親側と意見が折り合わなかったという。
同病院経営企画室は取材に対し、「訴状を精査している」と答えるにとどめ、事故対策委員会が結論づけた病院側の過失の内容や程度についてはコメントできない、としている。
埼玉県と県医師会は新年度、県内の医療格差を解消するため「県総合医局機構」を始動させる。
機構内に医師バンクを置き、定年退職後の医師を指導医として県内に呼び込み派遣したり、育児中の女性医師の現場復帰支援や、医師が最新技術を習得できる施設などを設置したりすることで、登録者数を増やし、医局の機能を担う。
機構は、さいたま赤十字病院(さいたま市中央区)とともに、2015年度にさいたま新都心に移転する予定の県立小児医療センター内に設立される予定だ。医師が最新技術を習得できるよう、医療技術のシミュレーター訓練室や模擬外来診察室などを設置する考えだ。
また、県立大学大学院保健医療福祉学研究科のサテライトキャンパス(同市浦和区)を、同センター内に移す方針。看護師らが勉強出来る環境を整えるほか、新都心という交通の便を生かし、出産や育児などで現場を離れている女性医師の復帰前の訓練を行うという。
機構の設置により、県内医師の能力向上と、県内で医師として働く環境を整備することを目指す。
県医師会などが、機構設置を急ぐのは、勤務が厳しい大学の医局などを離れ、「フリー」として民間の仲介業者に登録し、総合病院を流れながら働く医師が首都圏で増えているためでもある。県内には医師不足に悩む病院もあるが、ある県内の民間病院の医師は「仲介業者に頼むと、1人雇うのに1日約10万円かかる」と嘆く。県医師会の金井忠男会長は「勤務の厳しさや家庭の事情などから、フリーにならざるを得ない医師も多い。医師と病院の仲介役の役割も果たしたい」と述べた。
◇医局
大学医学部の講座や大学病院の診療科ごとにつくられ、教授をトップに医師や研修医、大学院生らが所属する任意の組織。教授が人事権限を握っているなど「閉鎖的」と批判されてきた一方で、地方の病院に医師を派遣してきた実績もある。2004年度の臨床研修制度の開始で、新人医師が自由に研修先を選べるようになったため、影響力が低下している。
肝がんなどの肝疾患の一因となる肝炎ウイルスへの感染を早期に発見し、治療につなげようと、栃木県は2014年度以降に「肝疾患コーディネーター」を養成する。
肝炎対策基本法に基づいて策定した「県肝炎対策推進計画」(13年度から5か年)の素案に盛り込んだ。肝炎ウイルスに感染していながら気付いていない人は県内にも多数いるとみられ、県は正しい知識の普及と啓発を進めていく。
コーディネーターは、肝疾患に関する相談や個々の病状に応じた支援を行う。未受検者にウイルス検査の必要性を説明し、肝炎ウイルス感染の早期発見につなげる。医療機関や市町の保健指導担当者などをコーディネーターとして養成する。13年度中に研修内容などを決める。
計画の素案では、「正しい知識の普及啓発」「ウイルス検査の受検促進」「肝炎治療の促進」「相談支援の推進」の四つの柱で、「肝疾患による死亡率で、毎年全国平均以下を目指す」としている。肝硬変による人口10万人あたりの死者は、全国平均6・7人に対し、栃木県は7・9人(11年)。検査の必要性を訴えるリーフレットなども作る。
肝疾患を予防するには、ウイルス検査を一度は受ける必要がある。11年に県内で検査を受けたのは延べ約4万人で、感染が判明したのは219人。肝炎ウイルスの感染者は県内に4万7000~5万8000人いると推定され、未受検者も多いとみられる。
厚生労働省は11年度に肝炎に関する意識調査を実施している。ウイルス検査を受けていない理由について複数回答で尋ねたところ、県内では「きっかけがない」(36・1%)が最も多かった。「自分は感染していないと思うから」も30・6%いた。県は「肝炎に対する正しい知識の普及が欠かせない」と話している。
厚生労働省が今国会に提出を目指している薬事法改正案の概要が9日、明らかになった。医療機器や医療製品の審査にかかる期間の短縮などが柱だ。
治療に不可欠な医療機器などを迅速に供給するとともに、国内メーカーの競争力を強化する狙いがある。
医療機器は人体へのリスクに応じ、日米や欧州諸国などが参加する「医療機器規制国際整合化会合(GHTF)」が定めた国際基準で四つに分類されている。現行の薬事法は、人体に埋め込むペースメーカーなどリスクが高いクラス4、人工呼吸器などクラス3に該当する医療機器について、厚労省所管の医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査が必要としている。
MRI(磁気共鳴画像装置)や超音波診断装置などクラス2の機器は、全国に13ある民間の認証機関が安全性を確認している。
理化学研究所分子イメージング科学研究センター(神戸市)と岐阜薬科大学などの研究チームは、緑内障となったサルの視神経を磁気共鳴画像装置(MRI)で撮影する方法で、緑内障の進行を予測することに成功した。
研究成果をまとめた論文は先月18日の米国神経科学専門誌の電子版に掲載された。
岐阜薬科大学の嶋澤雅光准教授(薬効解析学)のグループは、日本で一番の失明原因となっている緑内障となった目の眼圧が長期間高い状態にあると視神経などに悪影響を及ぼすことに注目した。人為的に緑内障にさせた5頭のサルの脳をMRIで2年間にわたって調べ、網膜と脳内の視覚野を結ぶ神経がどのように変化するかを分析した。
その結果、眼圧が高くなり時間が経過するほど、正常な神経が壊れ、視神経のダメージが拡大していく相関関係を突き止めた。今回の研究から、眼圧の異常がいつ、どの程度生じたかが判明すれば、脳内の神経が受けるダメージが予測できるという。
嶋澤准教授は「開発した手法を使えば、新しい治療薬や治療法の研究に役立つだけでなく、脳内の神経細胞が劣化する進行性の疾患であるパーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの予測にも応用できる」と話している。
千葉市は8日、市社会福祉事業団が運営する重症心身障害児者施設「千葉市桜木園」(同市若葉区桜木)で、7日までに入所者36人と職員11人がインフルエンザに集団感染し、入所者の40歳代男性が死亡したと発表した。
発表によると、男性は市内の病院に入院したが、インフルエンザが原因と見られる急性呼吸不全などで6日に死亡した。男性は重度の運動障害などで寝たきりだった。同園では11月~12月上旬にかけ、職員1人を除いてインフルエンザの予防接種を受けていたという。
済生会横浜市南部病院の研修医、木川智博さん(28)(横浜市港南区)が、電車内で突然倒れ、心肺停止状態に陥った60歳代男性の命を迅速な処置で救った。
バタン――。横浜市のJR京浜東北線関内―石川町駅間を走行中の電車内。大雪に見舞われた1月14日午後5時半頃、イスに座っていた60歳代男性が正面から床に倒れた。
木川さんは「倒れ方が危険だ」と思い、声をかけたが、返事がない。手首に触れると脈がない状態だった。乗客が非常停止ボタンを押し、電車が停止した。木川さんは男性をあおむけに寝かせた。
携帯電話で119番したが、つながらない。雪の影響で通報が相次ぎ、つながりにくくなっていた。他の乗客に「誰か、119番をかけ続けて下さい」と呼びかけた。車掌から自動体外式除細動器(AED)が電車内にないことを告げられ、「電車を動かして下さい」と頼んだ。
倒れて約5分後、石川町駅に到着。駅員が持ってきたAEDで男性に電気ショックを与えた。汗があると電気が分散してしまう。周囲の乗客が貸してくれたタオルで男性の体を拭いた。2度目の電気ショック。呼吸が戻った。「やった」。周囲の人たちから声が上がった。男性を搬送する救急車に同乗し、市内の病院まで付き添った。
男性は心筋梗塞と診断され入院し、6日に無事退院したという。JR東日本は7日、木川さんに感謝状を贈った。
木川さんは「人の命を救えて本当に良かった。命を救えたのは周囲の方の協力があったから。これからも医者として大勢の命を救えるようもっと勉強したい」と話した。
出産時の事故で脳性まひとなった子どもに総額3000万円を支給する産科医療補償制度で、補償対象の保護者と出産した医療機関に対するアンケートの結果、約6割が補償対象を拡大したほうがよいと考えていることがわかった。
制度を運営する日本医療機能評価機構が、2012年6月までに補償が決まった保護者326人(回答率69%)と294医療機関(同66%)を調べた。
補償対象になるには、妊娠33週以上で出生体重2000グラム以上といった基準を満たす必要がある。アンケートによると、「広げたほうがよい」「どちらかというと広げたほうがよい」と回答した保護者は56%。医療機関は、妊娠期間と出生体重の基準について、65%が拡大を望んでいた。
制度があって「よかった」としたのは保護者91%、医療機関83%。その理由は、「経済的負担の軽減」(保護者82%、医療機関91%)、「原因分析」(74%、75%)が多かった。また、保護者からは、「再発防止」(58%)や「産科医療の向上」(56%)という理由も多く挙がった。
制度は2009年に始まったが、対象が当初の想定より少なく、資金が余る見込みで、対象範囲の拡大も含め、見直しが検討されている。
自宅で生まれた男児を病院にすぐ搬送しようとせず、低体温症にさせたとして、神奈川県警は7日、同県二宮町の女性助産師(66)を業務上過失傷害容疑で横浜地検に書類送検した。男児は病院の治療でやけどを負い、足の指3本を切断しており、両親は女性医師(37)と男性研修医(30)を刑事告訴していた。県警は医師の行為については「救命上やむをえず行った措置」と判断した。
発表によると、助産師は2010年5月、同町の女性が男児を出産した際、男児が羊水をのみ込んで呼吸障害になったのに、すぐに病院に搬送せず、低体温症に陥らせた疑い。
男児は約2時間後、同県秦野市の病院に運ばれた。女性医師は研修医に指示して、保育器内をドライヤーで暖めさせたが、熱がこもっており、男児は足などに重度のやけどを負い、翌月、足の指3本を切断した。
神奈川県二宮町で2010年、自宅で生まれた男児を病院にすぐ搬送せず、低体温症にさせたとして、同町の女性助産師(66)が7日、業務上過失傷害容疑で書類送検された事件。
男児は病院で低体温症の応急処置を受けた際、やけどを負って足の指3本の切断を余儀なくされた。「すぐに救急搬送されていれば……」。そう悔やむ男児の父親は、今回の事件が多くの医療関係者の教訓になることを願っている。
助産師を書類送検
県警などによると、男児は同年5月28日朝、自宅分娩(ぶんべん)で出生。その際、胎便を含んだ羊水を吸い込むことで呼吸障害を引き起こす「胎便吸引症候群」に陥った。
助産師は異常分娩の場合、産科・産婦人科や小児科があり、入院設備も備えている提携先の医療機関に乳児を搬送することになっている。しかし、この助産師は提携先の小田原市の病院に男児を運ばず、自家用車で同町の診療所に搬送。診療所から「対応できない」と回答されると、秦野市内の病院に搬送した。この時すでに、出産から約2時間20分がたっていた。
男児は病院で低体温症と診断され、女性医師(37)は体温を上げるため、男児を入れた保育器内をドライヤーで暖めるよう男性研修医(30)に指示。研修医らは男児にタオルを巻き、直接温風が当たらないよう注意したが、温風が容器内を対流し、体温を測るために露出していた足などにやけどを負った。
男児はこの処置で一命を取り留めたが、最終的に搬送された横浜市内の病院で翌6月、右足の薬指と小指、左足の小指の計3本の欠損が確認された。
男児の両親が助産師の対応について大磯署に被害を申告し、医師2人についても秦野署に刑事告訴したため、県警は捜査を開始。助産師は助産師歴40年以上のベテランで、調べに対し、「何とかなると思った」と供述し、容疑を認めているという。
一方、医師2人は「命を救うためにやむを得ず行った」と話しており、県警は「これほど重度のやけどを負うことは通常、予見できず、刑事責任を問うのは困難」と判断した。
医師の対応について、小児救急医療に詳しい元長野県立こども病院副院長の田中哲郎氏は「ドライヤーを用いた点は検討すべき余地があり、湯たんぽを保育器に入れて容器全体を温めるなど、他の方法もあった」と前置きした上で、「原因は助産師にあり、病院側の措置に悪意はない。一命を取り留めた点は評価すべきだ」と指摘する。
男児は現在2歳。父親(36)によると、低体温症による後遺症は確認されず、元気に外を走り回れるほどにまで回復しているという。
父親はこの日、「命を救ってくれた医師には感謝しているが、息子が生まれた日、もしすぐに救急搬送されていればという思いは拭い切れない」と複雑な胸中を語った。
鳥取市湖山町北の医療法人社団「尾崎病院」(180床)は6日、入院患者19人が1月下旬からインフルエンザA型に集団感染し、このうち人工透析治療を受けていた82歳と75歳の男性2人が死亡したと発表した。
現在、他の感染患者は大半が回復したという。
発表によると、82歳の男性は2月4日、75歳の男性は同月5日、それぞれ死亡した。2人とも慢性腎不全を患って寝たきりの状態で、免疫力が落ちていたため、重症化したとみられる。
島根県江津市の済生会江津総合病院は6日、同病院でただ一人の常勤の男性小児科医(64)が3月末で退職すると発表した。
4月から常勤の小児科医が不在となる見通しで、後任の医師を確保できなければ、夜間の救急外来と入院治療の受け入れを休止する。産科の分娩(ぶんべん)は当面続けるが、「今後、場合によっては分娩制限することもあり得る」としている。
堀江裕院長らがこの日、同市役所で記者会見。医師は鳥取大医学部出身で、1984年から勤務。定年が1年後に控えており、早めに辞めるという。
現在、この医師のほか、島根、鳥取大など3機関から非常勤医を派遣してもらい、週5日の診療と、救急外来や入院、分娩などのための宿直体制をとっているが、常勤医がいなくなることで、4月以降は日中だけの診療に切り替える。市内唯一の病児保育室も休止。島根大からの派遣を増やし、週5日診療は維持する。
同病院の小児科の夜間の救急外来は月平均60人。入院治療は、五つのベッドが常にほぼ満杯という。夜間の救急外来、入院治療とも浜田医療センターなどに受け入れを要請したという。
同病院は今後も、全国公募するなどして常勤医の確保に努める。堀江院長は「少子化の中で小児医療、周産期医療は重要。その光を消さないよう努力したい」と語った。
医療ミスで重体女性側に賠償金…岐阜・中津川市民病院 |
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岐阜県中津川市民病院は6日、甲状腺がんの摘出手術をした同市内の女性(69)が意識不明の重体となったと発表した。
病院は医療ミスを認め、女性と家族に対し、賠償金4000万円を支払うことで示談が成立したという。
同病院の発表よると、女性は2008年3月23日、呼吸困難で救急外来の内科を受診し、甲状腺がんと診断されて入院。4月7日、外科の男性医師(47)が、がんの摘出手術をしようとした際、気道確保するため鼻からチューブを挿入したところ、鼻から出血した。出血の措置に手間取り、気道確保に約13分かかった。そのため、脳に酸素が供給されない低酸素状態で、女性は意識不明となったため、がんの摘出は中断した。
記者会見した浅野良夫院長は「医師の注意義務違反による過失が原因。本人と家族に深くおわび申し上げます。今後、再発防止に努めたい」としている。
「医師免許はコピーしか見ていないが、医師であることを信じ、敬意を持って接していた。おおらかで患者さんからの評判も良かったのだが……」。
医師免許のない男が診療をしていた疑いが5日発覚した東京都八王子市初沢町の診療所「高尾クリニック」。院長は同日、集まった報道陣に対し、困惑の表情を浮かべ、こう語った。八王子市は既に立ち入り調査を実施。警視庁は医師法違反容疑で同診療所を捜索し、カルテなどを押収、医療行為の実態を調べている。
市などによると、男は2011年12月から1年間、院長が休みを取る毎週水曜日、代診として腰痛やアトピー性皮膚炎などの診察に当たり、痛み止めの注射をしたり、採血の指示をしたりしていた。その際、他に医師はいなかった。今のところ、健康被害は確認されていないという。
男は同診療所の実質的な経営者というが、自ら院長にならない理由について、「公務に就いているので名前を表に出せない」と説明していた。同診療所は男の医師免許証の原本を確認していなかった。
「無資格ではないか」。発覚のきっかけは、同診療所に勤務する同僚医師の指摘だった。
院長は1月7日、男に医師免許証を提出させたところ、すかしの加工がないなど不審点があったことから、9日に市保健所に相談した。
保健所は同日立ち入り調査を行い、男が診察や処方箋の作成といった医療行為を行っていたことや、医師資格を持っていないことを確認した。男は同日、「医師免許証を持参する」と院長に約束したきり、連絡が取れなくなったという。
同診療所は2月4日から休診している。院長は「あってはならないことで、患者さんには申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と謝罪の言葉を述べた。
胃がん手術を受けて死亡したのは、担当医師らの医療ミスが原因だとして、長野市の男性(当時57歳)の遺族が、がん研究会(東京都江東区)を相手取り、慰謝料など計約1億6000万円を求める訴訟を長野地裁に起こしたことが5日、わかった。
男性は昨年1月5日、がん研究会が設ける「がん研究会有明病院」で胃の全摘出手術を受けた。術後、腹膜炎や敗血症などの症状に見舞われ、細菌感染による播種性血管内凝固症候群を併発し同18日に死亡した。
訴えによると、胃を全摘した後に腸と腸をつなぐ縫合にミスがあり、膵液(すいえき)が多量に漏れる症状が出たため男性は翌6日に緊急手術を受けた。この際は、担当医師らは縫合ミスに気づく機会があったのに、処置を怠った、と指摘。遺族側は、医師らの過失によって死亡したのは明らかとし、診療契約上の注意義務違反による債務不履行や不法行為に基づく損害賠償義務がある、と主張している。
がん研究会広報部は「訴状の内容を検討のうえ、今後の対応を考えたい。まずは患者の冥福を祈りたい」としている。
堺市消防局は5日、救急救命士の資格を持つ北消防署救急隊員の主幹(46)が、1日に119番で駆けつけた堺市東区の民家で倒れていた独居男性(84)について、死亡確認の手順を守らずに「死亡判断」を下すミスがあったと発表した。
この時点で男性が生存していたかどうかは不明だが、その後死亡が確認された。同消防局は主幹の処分を検討する。
発表では、1日午後4時40分頃、通報を受けた府警黒山署員が、ベッドから落ちて倒れている男性を発見し、119番。主幹と別の救急隊員2人が出動し、主幹は、体温が低下し、胸も上下に動いていないとして「死亡」と判断した。ただ、脈拍や呼び掛けへの反応の有無など、定められた手順で調べなかった。
主幹らは午後5時過ぎに引き揚げたが、同署員が17分後、「男性の口や胸が動いたようだ」と改めて119番。主幹ら3人が再出動し、男性を病院に運んだが、午後7時23分に死亡が確認された。搬送時、男性の心肺は停止していたという。
同消防局の奥野佳秀警防部長の話「あってはならないことでおわびしたい。適正な活動を徹底する」
東京都八王子市初沢町の診療所「高尾クリニック」に勤務していた男が、医師免許を持たずに患者を診察していた疑いのあることが5日、分かった。
市は1月9日に医療法に基づいて立ち入り調査を行い、警視庁が医師法違反の疑いで捜査している。健康被害は確認されていないという。
市などによると、男は2011年12月から約1年間、非常勤医師として週1回、整形外科や皮膚科の診察を行い、注射や採血をして、処方箋や他の病院への紹介状を作成するなどしていた。
同僚の医師から「男は無資格ではないか」との声が上がり、診療所が確認したところ、男の医師免許証にすかしがないなど不審点が見つかり、市に相談した。男とは、連絡が取れなくなっているという。
仙台市の仙台徳洲会病院(254床)は4日、70歳代と80歳代の入院患者2人がインフルエンザに感染し、死亡したと発表した。
同病院によると、1月29日以降、入院患者10人と看護師4人がインフルエンザに集団感染し、そのうち70歳代の女性が1日に、80歳代男性が3日に、急性呼吸不全で死亡した。
同病院では職員の9割以上がインフルエンザの予防接種を受けており、感染した看護師4人のうち3人も接種していた。入院患者は希望者のみの接種で、死亡した70歳代の女性患者は受けていなかった。
記者会見した福地満正院長は「重大な結果を招いてしまった」と述べた。
内視鏡手術に支援ロボ…埼玉・戸田中央総合病院が導入 |
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埼玉県戸田市本町の戸田中央総合病院(原田容治院長)は、前立腺がん摘出などの内視鏡手術で、アメリカ製内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を県内で初めて導入した。
昨年11月に稼働を開始し、これまで8人の患者の治療を行っている。
ダ・ヴィンチは、体内の患部を立体映像で拡大して映し出せるうえ、アームの動きで鉗子(かんし)を360度回転させることができる。コンピューター画面で患部に挿入された内視鏡の映す画像を見ながら、3本の鉗子の先端を遠隔操作で動かしており、人の手以上に精密な動きをする。これまでの内視鏡手術は、アームの動きが上下左右に限られ、映像が平面だった。手術時間は3~4時間から、2時間程度に短縮出来たという。国内では、昨年4月に保険適用されてから導入が進み、既に75台が稼働している。
同病院は今後、腎臓など、別の臓器の手術も検討していく予定だ。実際にダ・ヴィンチを手術で使っている泌尿器科の瀬戸口誠部長は「術後の経過も良く、退院までの時間が早くて驚いた」と語る。東間紘名誉院長は、「地元に根ざした医療を提供する病院として、県内で治療を完結出来るよう、導入に踏み切った。軌道に乗せていきたい」と話している。
横浜市鶴見区の汐田総合病院で3人が死亡したインフルエンザの集団感染。
2日に横浜市役所で記者会見した同病院の窪倉孝道院長は、「ウイルスが持ち込まれた経路は不明だが、病院での感染拡大は職員が原因だった可能性がある」と述べ、「患者の命に悪影響を及ぼしたことは誠に遺憾」と謝罪した。
同病院は計261病床で、現在の入院患者は209人。死亡した高齢者3人を含め、感染した患者13人は、同病院の5階フロアに入院していた。同フロアの患者は「おむつ交換や食事で職員の介助を必要とする人が多い」(同病院)といい、死亡した3人のうち2人は寝たきりの状態だったという。
同フロアで感染が拡大した理由について、窪倉院長は「フロアを歩き回れる職員が原因の可能性がある」と説明。同病院では職員の約9割と、希望した入院患者がインフルエンザの予防接種を受けていたが、死亡した3人は受けていなかった。感染者計15人のうち、職員1人と患者2人はすでに回復し、残る9人についても命に別条はないという。同病院は感染した患者を隔離する措置を取っており、感染が広がる可能性は低いとしている。
横浜市鶴見区の汐田総合病院(窪倉孝道院長、261床)は2日、入院患者と職員の計15人がインフルエンザに集団感染し、うち70~80歳代の男性入院患者3人が死亡したと発表した。
同病院によると、1月29日、患者と職員計2人の感染が判明。2日までに、5階に入院している70~80歳代の患者13人と、同階を担当する30歳代の看護師ら職員2人がインフルエンザと診断された。死亡した3人は29日頃から微熱などの症状を訴え、30日午後から31日朝にかけて肺炎で死亡した。3人は肺疾患や肺がんなどで入院中で、いずれもインフルエンザA型の陽性反応が出たという。
同病院では約9割の職員がインフルエンザの予防接種を受けており、感染した職員2人も接種していた。入院患者に対しては希望者のみの接種で、死亡した3人は受けていなかったという。2日に記者会見した窪倉院長は、「集団感染が起きたことは遺憾だ」と述べた。集団感染の発生を受けて、外部からの面会制限などの措置を講じているという。
病院や特別養護老人ホームなどでのインフルエンザが影響したとみられる死者は今冬、神奈川県のほか、長野県や静岡県などでも出ている。
厚生労働省によると、定点観測している全国約5000の医療機関から1月21~27日の週に報告された患者数は1医療機関あたり36・44人。1週間の推定患者数は、全国で約214万人に上るという。
「日本で研究が本格的に始まった40年前には解決の糸口がなかったが今や臨床試験を行うところまできたのは驚くべきこと。ネットワークを駆使して治療法の開発を進めたい」。
国内27医療機関による筋ジストロフィー臨床試験ネットワークが国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)内に設立された1日、樋口輝彦総長は、根本的な治療法が見つかっていない筋ジス医療の前進に期待を寄せた。
筋ジスは患者数が少ない上、遺伝子型や病態も多様だが、全国に推計で約5000人と最も多い「デュシェンヌ型」を例に説明すると、筋細胞内にあり、運動などの負担から筋肉を守る「ジストロフィン」というたんぱく質が合成できないため、次第に筋萎縮と筋力低下が進む。
人工呼吸器などの登場により、1976年に17歳だった平均寿命は2006年には30歳まで延びたが、根本的な治療法はなく、現在でもリハビリやステロイド投与など進行を遅らせるのが主な治療だ。
そんな中、10年ほど前から、遺伝子に着目した治療薬の研究が海外で始まった。「エクソン・スキップ」と呼ばれる技術はその一つで、異常な遺伝子を修復することで、筋細胞で正常に近いジストロフィンが作られるようになる。同センターでも、筋ジスの犬を使った実験で有効性が示され、設立されたネットワークを使って10人程度の患者を対象に、今夏にも治験を実施する予定だ。
しかし同センターの小牧宏文筋疾患センター長は、「エクソン・スキップだけでは、進行を遅らせることはできても根治は難しい」と話す。「今後、ネットワークが機能し、iPS細胞などを使った再生医療や、遺伝子治療の研究にも応用できれば、根本的な治療への道が開ける」としている。
一方、治療を待つ患者や家族の思いは切実だ。都内に住む会社員染谷恵美さん(43)は長男の夏輝君(7)を、筋ジス治療のため同センターに通院させている。夏輝君は生まれて間もなく、血液検査で筋ジスを疑われ、同センターでの遺伝子検査で診断を受けた。
現在は月1回、足や股関節の筋肉を伸ばすリハビリのため同センターに通う。夏輝君は、足腰の力が弱くスロープのない階段は上れない。これから病状が、どのように進行するのか染谷さんは心配を募らせている。
ネットワークが発足したことについて、染谷さんは「個人差があるのでこれからこの子がどうなっていくか分からないが、少しでも長く生きてほしい。新しい治験が始まるなら、他の希少疾患の患者さんたちのためにもぜひ挑戦したい」と話している。
厚生労働省は1日、この冬のインフルエンザの流行が最盛期に入ったと発表した。
1月21~27日の週に全国約5000の医療機関から報告された患者数は、前週の1医療機関あたり22・58人から36・44人、推定患者は前週の約1・5倍の約214万人になった。
同省によると、今季の患者数や流行の規模は平年並みで、小中学校など5107施設で学級閉鎖などが出ているという。ウイルスは昨季に続いてA香港型が最も多く検出されている。
都道府県別の患者数は、新潟53・81人、千葉53・22人、長崎50・91人など。今季の流行は北関東から始まり、関東、中部、九州に拡大。近畿、中国はこれからさらに患者が増えるとみられ、特に注意が必要だ。
国立感染症研究所の安井良則主任研究官は「20歳以上が半数を占め、大人の患者が多いのが今季の特徴。高齢者の入院も多い」と分析し、「手洗いやマスク着用の徹底のほか、家族で同じタオルを使わないといった工夫も効果的だ」と話している。
高知県は31日、旧県立宿毛病院(宿毛市)で女性患者の体内にガーゼを残す医療事故があったと公表した。
事故から18年後に発覚。昨年10月に摘出手術を行い、すでに回復しているという。
同病院などを統合した幡多けんみん病院によると、昨年8月、60歳代の女性が検査目的で受診した際、CT画像で不審な影を確認。女性の手術歴などから、1994年5月に受けた手術でガーゼを取り残した可能性が高いと判断し、本人と家族の了承を得て摘出手術を行い、ガーゼ1枚を取り出した。
使用した枚数の確認を誤ったのが原因とみられ、安岡俊作・公営企業局長と橘寿人病院長は連名で「ガーゼの確認手順を徹底するなど再発防止を図り、信頼回復に努めていく」とのコメントを出した。
ダニ媒介の新感染症で死亡 国内初、山口の成人女性 |
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厚生労働省は30日、中国で2009年ごろから発生が報告されていたダニが媒介するウイルス感染症で、昨年秋に山口県の成人女性1人が死亡したと発表した。この病気は「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)で、国内での確認は初めて。
厚労省は30日、各都道府県に対し類似の患者を診察した際の情報提供を要請した。
国立感染症研究所によると、患者には発熱や嘔吐(おうと)、血小板の減少などがあり、発症後約1週間で亡くなった。最近の海外渡航歴はなく、明確なダニのかみ痕も確認されなかったが、血液からこのウイルスの遺伝子が見つかった。遺伝子配列の一部が中国のものと異なっていたことから、日本にもこのウイルスはもともといたとみられる。
このウイルスはダニにかまれることのほか、患者の血液や体液との接触で感染した例もある。今回の患者の症状のほかに、食欲低下や頭痛などが現れることも知られている。感染研によると、有効なワクチンや治療法は現在のところなく、中国では数百例の感染報告がある。推定される致死率は12%程度。
厚労省によると、中国のウイルスはマダニの仲間から見つかる。マダニは血を吸う前の体長が3~4ミリと、屋内にいるイエダニより大型で、国内では青森以南の山野に広く分布している。感染を防ぐにはこうした場所に入る際に長袖の服などを着て、ダニにかまれないことが重要という。かまれた場合は病院で受診するよう呼び掛けている。
※重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
2011年に初めて特定された新種のSFTSウイルスを保有しているマダニにかまれることなどで感染して引き起こされる病気。主な症状は発熱や吐き気、下痢などで、血液中の血小板や白血球の減少が特徴。重症化して死亡する例もある。09年ごろから
中国で患者が見つかり、中国での致死率は12%という。米国でも似た症例の報告がある。有効なワクチンはなく、対症療法が主な治療となる。
(島根)救急部医師 7月からゼロ・・・松江赤十字病院 |
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<ドクターカーも3月末休止へ 「医療体制崩れ」危機感>
松江赤十字病院(松江市母衣町)は30日、同病院の救命救急センターで救急患者の診療を担当する救急部の医師が、7月からゼロになる可能性が高いと発表した。同部のただ1人の医師・佐藤真也救急部長(46)が6月末で退職する意向を示しているためだ。後任のめどはたっておらず、同病院は「松江の救急医療体制が崩れかねない」と危機感を抱いている。(寺田航)
同センターは、隠岐諸島を含む県東部の救急患者に対応するため、2004年4月に開設され、救急部の医師たちが24時間体制で診療に当たってきた。
しかし、毎年約2万人が受診するなど激務で、07年に6人いた担当医師は次々に辞め、昨年7月から佐藤部長1人になっていた。
病院側は、医師の負担になる「コンビニ受診」を減らすため、時間外の軽症の救急外来に求める時間外選定療養費を引き上げるなど改善を模索してきたが、佐藤部長は同9月、「軽症の患者が多くて疲れた」と辞意。病院側が慰留したが、意思は固いという。
後任が見つからない場合、7月以降は他の部の医師が交代で同センターで勤務する。また、救急部の医師が同乗して車内で医療行為をする救急車「ドクターカー」を昨年3月から運行してきたが、3月末で休止する。
同病院によると、松江・隠岐圏域(松江市、安来市、隠岐郡)の重症救急患者の受け入れは、同病院と松江市立病院、松江生協病院が担ってきたが、松江赤十字病院が患者の半数を受け入れているという。
この日、記者会見した秦公平院長は「救命救急センターはどんな形ででも維持しなければならない。自治体や医師会とも話し合い、松江の救急医療をどうするのか考えたい」と話した。
ダニ媒介の新感染症で死亡 国内初、山口の成人女性 |
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厚生労働省は30日、中国で2009年ごろから発生が報告されていたダニが媒介するウイルス感染症で、昨年秋に山口県の成人女性1人が死亡したと発表した。この病気は「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)で、国内での確認は初めて。
厚労省は30日、各都道府県に対し類似の患者を診察した際の情報提供を要請した。
国立感染症研究所によると、患者には発熱や嘔吐(おうと)、血小板の減少などがあり、発症後約1週間で亡くなった。最近の海外渡航歴はなく、明確なダニのかみ痕も確認されなかったが、血液からこのウイルスの遺伝子が見つかった。遺伝子配列の一部が中国のものと異なっていたことから、日本にもこのウイルスはもともといたとみられる。
このウイルスはダニにかまれることのほか、患者の血液や体液との接触で感染した例もある。今回の患者の症状のほかに、食欲低下や頭痛などが現れることも知られている。感染研によると、有効なワクチンや治療法は現在のところなく、中国では数百例の感染報告がある。推定される致死率は12%程度。
厚労省によると、中国のウイルスはマダニの仲間から見つかる。マダニは血を吸う前の体長が3~4ミリと、屋内にいるイエダニより大型で、国内では青森以南の山野に広く分布している。感染を防ぐにはこうした場所に入る際に長袖の服などを着て、ダニにかまれないことが重要という。かまれた場合は病院で受診するよう呼び掛けている。
※重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
2011年に初めて特定された新種のSFTSウイルスを保有しているマダニにかまれることなどで感染して引き起こされる病気。主な症状は発熱や吐き気、下痢などで、血液中の血小板や白血球の減少が特徴。重症化して死亡する例もある。09年ごろから
中国で患者が見つかり、中国での致死率は12%という。米国でも似た症例の報告がある。有効なワクチンはなく、対症療法が主な治療となる。
厚労省、看護師17人を行政処分 免許取り消しは3人 |
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刑事事件で有罪確定者
厚生労働省は28日、刑事事件で有罪が確定した看護師について、男女3人の免許取り消しを含む17人の行政処分を決めた。ほかは11人が業務停止3年~1カ月、3人が戒告。発効は2月11日。
免許取り消しは、兵庫県西宮市で女児を連れ去った未成年者誘拐などの罪で懲役7年が確定した看護師(31)=保健師、助産師の免許取り消しも含む=のほか、北海道旭川市などで女性2人に性的暴行をした強姦(ごうかん)致傷罪などで懲役10年の判決を受けた看護師(25)、岐阜市内の同僚が住むアパートへの現住建造物等放火未遂などの罪で懲役3年、執行猶予5年となった看護師(36)。
静岡県内では、院内で現金などの盗みを繰り返し懲役2年、執行猶予3年となった看護師(34)を業務停止3年、島田市で女性の下着を狙った窃盗と同未遂で罰金刑を受けた看護師(27)を戒告とした。
NPO、医療機関など連携/「耳傾ける大人」必要
性犯罪や性暴力被害に遭った若い女性を支援するため、民間団体などが行う面談や電話相談が広がっている。
性的虐待やレイプ被害など深刻な相談が寄せられており、医療機関や警察、児童相談所などとも連携している。
「本当は逃げたかった」
中部地方に住む病院勤務の20代前半の女性は昨年11月、NPO法人ボンドプロジェクト(東京)の代表、橘ジュンさんに会い、そう話した。女性は高校時代から父親に性的虐待を受け、援助交際まで強要されていたという。「誰にも話したことはなかったけれど、ジュンさんは私の話をちゃんと聞いてくれる」
同法人は若者が集まる東京・渋谷を拠点にし、10-20代の女性から相談を受けている。昨年、月2回の「面談日」を設けた。従来のメールや電話の相談に加え、じっくり話を聞くためだ。場合によっては、遠隔地での面談にも応じている。
性的虐待の対応は、行政では児童相談所が行っている。しかし、少女が自ら行政へ相談することは少ないため、同法人は、本人の希望を聞きながら、医療機関への同行や児童相談所への通報などの支援もしている。
橘さんは「寄り添って耳を傾ける大人が必要。少女たちは自分が悪いから性的虐待を受けたと思っている。あなたは悪くない、安心できる場所に行っていいんだよ、と伝えたい」と話す。
深刻な性被害を受けた女性を支援する体制が不十分なため、各地で相談機関が開設され始めている。
2010年に、病院内に開設された「性暴力救援センター・大阪」は、昨年4月から12月だけで4000件近い電話相談を受けた。相談者のうち産婦人科で診察を受けたのは189人。このうち約半数の103人が10代で、次いで20代が42人、10歳未満も17人いた。訴えの内容は、レイプや強制わいせつが111人、性的虐待が30人だった。
同センターの事務局を務めるウィメンズセンター大阪は昨年7月、未成年向けの電話相談「サチッコ」を始めた。被害が深刻になる前に相談してもらう狙いだ。
民間の電話相談「性暴力救援センター・東京」は昨年6月に開設。性的虐待による妊娠や中絶といった深刻な訴えが寄せられている。相談に応じるのは、専門的な研修を受けた看護師ら。産婦人科医療機関などと連携し、本人の希望によって緊急避妊や証拠採取の支援、警察への通報や弁護士の紹介なども行う。
事務局長の平川和子さんは、「被害者は誰にも言えず苦しんでいることが多い。被害を届け出るのさえ、精神的、肉体的な負担が大きい。一緒に手立てを考え、支えていきたい」と話す。
相談窓口は、愛知県、佐賀県、北海道でも開設されている。
宮城県石巻市は29日、同県内で初めて、看護師1人のみの訪問看護事業所の開設を認めることを決め、市内の看護師の申請を受理した。
事務手続きなどに1週間ほどかかるため、早ければ来週にも開業できるという。
訪問看護事業所は、常勤換算で2・5人以上の看護師などを配置しなくてはならないが、震災後の特例措置として人員基準が引き下げられ、現在は宮城、岩手、福島の3県についてのみ、市町村が認めれば看護師1人で開設できる。特例措置は当初、昨年2月末までとされていたが、2度延長され、現時点では今年3月末までとなっている。
申請が受理されたのは石巻市の看護師佐々木あかねさん(28)。一昨年8月に最初の申請を行ったが、同市は「既存の事業所でサービス提供が可能」として受理せず、その後の2回の申請も不受理とした。
4回目の申請で受理した理由について、同市介護保険課は、「訪問看護の需要の高まりで、既存の事業所では人手が足りないと判断した」と説明する。
佐々木さんは「地域に根づくよう、頑張りたい。特例措置がまた延長されることを期待している」と話している。
岩手、福島両県ではこれまで、看護師1人の訪問看護事業所の申請は計6件受理されており、そのうち岩手県一関市と福島県南相馬市の2人が現在も訪問看護を続けている。
様々な組織の細胞に変化できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)の開発でノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥・京都大教授(50)は27日、移植治療への使用を前提としたiPS細胞の作製を2月から始める方針を明らかにした。
山中教授が所長を務める京大iPS細胞研究所では、他人に移植しても拒絶反応が起きにくいiPS細胞を複数作って冷凍保存しておく「iPS細胞ストック」の構築を計画しており、実現に向けた第一歩となる。
山中教授は神戸市内で開かれたシンポジウムで、ノーベル賞受賞後としては国内で初めて講演。「iPS細胞を一人ひとりから作るのは大変な時間とお金がかかる。(計画が実現すれば)徹底的に品質管理し、できるだけ安全なものにできる」と意義を強調した。
同研究所によると、他人と適合しやすい特別な細胞の型を持つ人からiPS細胞を作り、75種類の型をそろえれば、日本人の80%に対応でき、患者に適合するiPS細胞から必要な組織の細胞を作って移植できる。1種類で20%の日本人に移植可能な型を持つ人が見つかり、協力の申し出があるという。早ければ2月上旬にも京大病院で採血を行い、作製を始める。
鳥取県東部の2次医療圏域の中核病院の整備を進めるため、同県と日本赤十字社県支部は28日、医療の高度化に向けた病床再編に関する連携協定を締結した。
高度医療を提供するには、一般的に500床以上の病床数が必要とされることから、県は今後、県立中央病院(一般病床417床)の病床数の再編計画を取りまとめ、国に同意を求める。
老朽化した鳥取赤十字病院(同438床)の建て替え計画に伴い、病床数の再編計画が浮上。両病院間で病床数を再編することで、県立中央病院で高度医療が行える態勢を整えることができるようになる。
赤十字病院の建て替え後の一般病床は350床。来年1月に着工し、2015年3月に1期工事を、18年3月に2期工事を終える予定で、災害に強い病院として生まれ変わるという。
この日の締結式で、同県支部の平林鴻三支部長は「東部の住民の医療体制について、日赤が大いに貢献できるようにしたい」と述べ、平井知事は「支え合うことで健康が広がる県にしたい」と話していた。
宮城県石巻市の石巻赤十字病院で2011年8月、心臓を包む心嚢に刺した針を抜き忘れたことが原因で、同県美里町の女性(当時53歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死容疑と医師法違反(異状死の届け出義務違反)容疑で、それぞれ書類送検された当時の勤務医2人を仙台地検が不起訴としていたことが26日、わかった。
同地検は不起訴の理由について「明らかにしない」としている。
2人が書類送検されたのは昨年9月。1人は11年8月13日、救急搬送された末期がんの女性を救命措置後、心嚢にたまった液を抜き取った際、針を抜き忘れ、翌14日早朝に針が心臓に刺さって女性を死亡させた疑いがもたれた。別の1人は、女性の死亡に不審な点があることを認識しながら、医師法で定める24時間以内の警察への届け出を怠った疑いだった。
若い女性で増えている子宮頸がんや乳幼児の死亡につながりかねない細菌性髄膜炎などを予防する三つの小児向けワクチンが、2013年度から定期予防接種に加わることが正式決定される見通しとなった。
27日に行われる田村厚生労働相と新藤総務相らの大臣折衝で最終合意する。厚労省は昨年、3ワクチンの定期接種化の方針を固めていたが、費用は原則的に自治体の負担となるため厚労省と総務省などの協議が続いていた。厚労省は通常国会に予防接種法改正案を提出する。
3ワクチンは子宮頸がんとインフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)、小児用肺炎球菌で、13年度から定期予防接種の1類疾病に加えられる。いずれも10年度から緊急事業として公的接種が実施されているが今年度末で終了するため、接種を途切れさせないよう厚労省が恒久化をめざしていた。今年4月以降も、現在と同様に継続実施される。
九州大農学研究院の立花宏文主幹教授(食品機能化学)らの研究チームは25日、緑茶に多く含まれるカテキンの一種「EGCG」と、勃起不全(ED)治療薬に含まれる低分子化合物を併用して投与すると、がん細胞を効果的に殺傷するという実験成果を得たと発表した。米科学誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版などに掲載される。
EGCGは、悪性度の高いがん細胞表面のたんぱく質と結合し、がん細胞を殺傷する能力があることが分かっていたが、効果が出にくかった。
研究チームは、膵臓がんや前立腺がんなどのがん細胞内で増える「PDE5」と呼ばれる酵素が、細胞内でEGCGの抗がん作用を阻害していることを突き止めた。
ED治療薬には、この酵素の働きを抑える低分子化合物が含まれていることが知られており、ED治療薬とEGCGを併用して乳がんのマウスに投与する比較実験を行った。
症例が少なく治療法が見つかっていない難病患者の支援制度について、厚生労働省の専門家委員会は25日、医療費の助成対象の病気を現在の56から300以上に増やすべきだとする提言をまとめた。
対象となる具体的な病気は今後、別の第三者組織で検討する。
現在は病気の種類ごとに医療費が患者に一律に支給されているが、提言では、重症で生活への支障が大きい患者を絞り込み、都道府県の審査会が認定して医療受給者証を交付する制度に変えるべきだとした。
また、治療方法や医薬品の研究開発を戦略的に進め、専門医がそろった拠点病院を全都道府県に設置するよう指摘している。
秋田県の委託で秋田赤十字病院(秋田市)が運航するドクターヘリが23日、運航開始から1年を迎えた。
出動件数は運航前に想定された年間約300件の半数近い163件(試験運航期間含む)にとどまっている。出動を要請する各消防本部側が出動要請をためらったことなどが背景にあるとみられ、同病院は今後、改善策を検討する。
ドクターヘリは、脳や心臓の疾患、交通事故など重篤な患者を速やかに搬送できるため、救命率の向上が期待される。同病院が基地病院となり、国と県から補助を受けて運航を始めた。出動要請の基準は、脳卒中の疑いなど運用指針で示されており、県内各消防本部の要請で出動することになっている。
同病院のまとめによると、23日までの出動要請件数(試験運航期間含む)は212件で、実際に出動したのは163件だった。内訳は救急現場出動が91件、転院などの施設間搬送が64件、ヘリ離陸後の要請キャンセルが8件だった。要請を受けたが出動しなかったのは49件。理由別では天候不良が34件を占めた。
出動件数が想定を下回った理由について、同病院は「要請する消防側が判断に迷ったことが一因」と分析する。
鹿角広域行政組合消防本部の要請で患者をヘリで搬送したケースは3件。同本部警防予防課の田中章消防司令補(41)は「患者が胸の痛みを訴え、心筋梗塞などが疑われても、救急隊員は診断できない。『疑い』の段階で要請していいのか、判断に迷ったことがあった」と話す。
こうした実態を踏まえ、同病院は「迷ったら要請してほしい」と各本部に伝えている。田中司令補も「今後は、結果的に不必要になったとしても積極的に要請したい」と話す。
同病院は今後、医療や消防の担当者を交えた事例検討会を開き、改善策を検討していくという。
人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、毛髪を作る皮膚の組織をマウスの体内で形成させることに成功したと慶応大と京都大の研究チームが23日、発表した。
脱毛症の治療薬開発につながると期待される成果で、皮膚分野の米専門誌の電子版に掲載された。
加齢ややけどによる脱毛症は、「毛包」と呼ばれる毛髪を作る皮膚組織が壊れたり機能を失ったりして起きる。
大山学・慶応大専任講師(皮膚科学)らは、人のiPS細胞にたんぱく質などを加え、毛包の骨格部分のもとになる細胞を作製。この細胞を、毛の形成を促す働きを持つマウスの皮膚細胞と混ぜ、マウスの皮膚に移植した。移植した細胞は約3週間後、毛包を形作り、毛も生えた。毛包では、人特有の遺伝子も確認された。
辻孝・東京理科大教授(再生医工学)は「毛髪の再生に向けて一歩進んだといえる。今後は毛包のすべての細胞を人の細胞から作ることが課題となる」と話している。
膵臓がんの手術後、再発予防のために行う抗がん剤治療について、県立静岡がんセンターは23日、標準的に使われている抗がん剤より、消化器がんに広く使われている飲み薬・TS―1(ティーエスワン)のほうが生存率が上がるという臨床試験の結果を公表した。米国臨床腫瘍学会で発表される。
同センターによると、この臨床試験は2007年4月~10年6月、全国33医療機関で、膵臓がんの切除手術を受けた患者385人を対象に実施。現在の標準治療に沿って塩酸ゲムシタビン(製品名ジェムザール)を点滴する患者と、TS―1を飲む患者に分け、状態を調べた。その結果、TS―1は2年生存率が70%で、塩酸ゲムシタビンの53%より17ポイント高かった。再発のない生存期間の目安となる「無再発生存期間中央値」は、塩酸ゲムシタビン11・2か月に対し、TS―1は23・2か月と1年長かった。
副作用をみると、TS―1では、白血球数の減少があった患者が8・5%と、塩酸ゲムシタビンの39%より大幅に少なかった一方、食欲不振や下痢を起こす患者が見られた。
膵臓がんは進行して見つかることが多く、手術で切除できるのは20~30%で、手術しても70%は2年以内に再発するとされる。TS―1は胃がんの標準的治療薬としても使われている。
静岡県立こども病院(静岡市葵区)は21日、生まれつき気管が細い「先天性気管狭窄症」を患う生後4日の女児の手術に成功したと発表した。
女児は1777グラムで生まれており、同病院によると、海外も含め、公表されている中では最小体重での手術成功例という。
手術を受けたのは、昨年10月19日に生まれた県内の女児。通常4ミリある気管の内径が1・5ミリしかなく、全長40ミリの気管のうち15ミリにわたって狭窄があった。出生直後から自発呼吸が困難で、先天性気管狭窄症と診断された。
同病院は同23日、「スライド気管形成術」を実施。最も狭い部分の中央で気管を切り離し、上部気管と下部気管にそれぞれ縦10ミリの切り込みを入れて内径を広げた上で、上下の気管を一部が重なるようにスライドさせてつなげた。術後の経過は順調で、今月15日に退院した。ただ、女児は心臓病も患っており、体重が8キロ・グラム程度に成長してから同病院で手術を行う予定という。
先天性気管狭窄症は2万~3万人に1人の珍しい病気。同病院によると、スライド気管形成術はここ10年で広まった手術で、米国で1800グラムの赤ちゃんの手術に成功したとの報告(2003年)がある。
この手術を新生児(生後28日未満)に行った場合の死亡率は73%ともいわれており、この手術を行える病院は全国でも限られるという。
執刀した小児外科の森田圭一医師(32)=写真左=は「非常に難しい手術だったが、各科の連携でうまくいった」と話していた。
はしか無料接種、期限迫る…福島県内は実施率低く |
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国が2008年度から中学1年生と高校3年生を対象に実施している麻疹(ましん)(はしか)の予防接種の公費助成が3月末で終了する。
県内の麻疹ワクチンの接種率は中1、高3とも全国でも30位台後半で、就学前では全国最下位となっている。震災と原発事故で避難した人が多いことが影響しているとみられるが、麻疹は感染力が非常に強いため、県などは接種を呼びかけている。
麻疹は、つばなどによる飛まつ感染や、空気中を漂うウイルスを吸い込む空気感染、ウイルスが付着した手で鼻や口に触れたりする接触感染が感染経路。免疫を持たない人が感染するとほぼ100%発症する。鼻水やせきなど風邪のような症状を示した後、高熱と発疹が現れ、肺炎や中耳炎を合併する場合があり、患者1000人に1人の割合で脳炎を起こすとされる。
かつて麻疹の予防接種は幼児期に1回受けるだけだった。1回のワクチン接種で95%以上の人が麻疹ウイルスの免疫を獲得するといわれるが、年々低下する。2回接種すれば免疫が強固になるため、国は06年度から1歳(1期)と小学校入学前の1年間(5~6歳、2期)の2回接種制度に改めた。
07~08年には高校・大学生を中心に麻疹が流行して休校が相次ぎ、推定患者数は全国で1万人を超えた。これは幼い頃に1回接種制だった高校生らが十分な免疫を持たずに成長し、感染が拡大したとされている。そのため国は08年度から5年間の時限措置として、中1(3期)と高3(4期)を対象に2回目のワクチンの追加接種を無料で受けられるようにした。その結果、11年の患者は434人に減った。
県によると、11年度の県内のワクチン接種率は1~4期とも全国順位で下位に低迷。1、2期は47位。3、4期もそれぞれ39位、36位だった。それまでも下位グループが多かったが、震災と原発事故が追い打ちをかけた形だ。
県立医大小児科学講座の細矢光亮教授によると、現在の感染経路は海外から持ち込まれたウイルスで発症するケースがほとんどという。県内の12年(12月23日まで)の麻疹患者数は県北地方の7人で、これは1人がアジアの滞在先で感染し、帰国後に接触した人に次々と広がった。
県は2回目の接種を受けていない生徒にも無料接種の期限が迫っていることを周知しようと12年末にチラシを作成。高校、中学校に配って注意喚起し、ワクチン接種を呼びかける。県小児科医会の太神(おおが)和廣会長は、「麻疹は近年、患者が少ないが、ひとたび感染すれば一気に広がり、決して油断できない病気。死亡する場合もあり、有効な治療薬はなく、ワクチン接種が唯一の対抗策で、ぜひ受けてほしい」と呼びかけている。
インフルエンザの患者が急増し、患者数が昨年同期の2倍近くに上っていることが、国立感染症研究所のまとめで18日わかった。
専門家は本格的な流行に入ったとみて、マスクの着用や手洗いなど感染拡大の防止を呼びかけている。
感染研などによると、全国約5000か所の医療機関から今月7~13日の1週間に報告された患者数は、1医療機関あたり平均12・07人で、前週の3倍に増えた。20歳以上の成人が65%を占め、ウイルスの型はA香港型が8割強となっている。
都道府県別では、群馬県で同27・71人、茨城県で同25・88人、千葉県で同22・52人と、関東地方で患者が多い。佐賀県で同19・97人、愛知県で同14・14人など九州、東海地方も多い。9県で警報レベル(同30人以上)、38都道府県で注意報レベル(同10人以上)の地域がある。
医療法人社団「真匡会」(東京都新宿区)が、元本保証をうたうなどして医療機関債(医療債)を販売し、多額の金を不正に集めたとされる事件で、大阪府警は医療債の販売にかかわった約10人について詐欺容疑で立件する方針を固めた。
同会は約380人から10億円以上を集めたとみられ、府警は実態解明を進める。
捜査関係者によると、約10人は2011年4~10月、計15回にわたって発行した医療債(1口50万円)を、同会が運営する新宿区内の診療所「戸山公園クリニック」の改装費に充てるなどと偽って販売し、高齢者らから金を詐取した疑いが持たれている。
府警は昨年7月、出資法違反容疑で同会や、販売を委託された「共同医療事務センター」(東京)などを捜索。押収した資料を分析するなど捜査を進めた結果、医療債の発行名目とされた同クリニックの改装や新設に販売代金の大半が使われていないことがわかり、詐欺容疑にあたると判断した。
同会の医療債販売を巡っては、虚偽説明や強引な勧誘への苦情が全国の消費者センターに多数寄せられた。消費者庁から改善を求められた同会は11年10月、ホームページで新規発行の中止を表明。しかし、その後も勧誘が続き、同庁が昨年1月、同会と共同医療事務センターの名前を公表、消費者に注意喚起していた。
昨年末、横浜市緑区の横浜田園都市病院で入院患者4人が死亡したノロウイルスによる集団感染。感染自体は終息した一方、横浜市の感染症に対する危機管理体制に疑問の声があがっている。
病院から患者1人の死亡を含めた集団感染の連絡を受けた12月27日に保健所幹部らが懇親会を開いていた。
さらに同日に市内全ての福祉保健センター長を集めた会議が開かれていたにもかかわらず、市内で初のケースとなったノロウイルス感染による死者が出た事実を伝えていなかったためだ。
定例会議後に酒食
「飲酒していて、責任者としての適切な指示が出せるのか」「初動の危機意識が欠如しているのではないか」――。18日に行われた横浜市議会の健康福祉・病院経営委員会。出席した市議からは、集団感染の連絡を受けた昨年12月27日、保健所幹部らが酒食を伴う懇親会を開き、横浜田園都市病院を所管する緑福祉保健センター長も出席していたことを疑問視する声が相次いだ。
市によると、懇親会は、市内18区の福祉保健センターの責任者であるセンター長を集めた月1回の定例会議を開催後、横浜市中区の関内地区で行われ、センターを統括する豊沢隆弘・保健所長ら9人が出席した。山本敏昭・緑福祉保健センター長も参加し、その後、自宅へ直帰した。取材に対し、山本センター長は「緊急事態が発生しても連絡は取れるので、センターに戻る必要はなかった」と説明。「今振り返っても懇親会出席に支障はなかった」と話す。
一方、岡田輝彦・健康福祉局長は委員会で、今回の対応について、「拡大防止ができなかったとか、対応が遅れたということはない」とした上で、懇親会については「集団感染の報告を受けた当日というタイミングを考えれば、行わない方がよかった」と謝罪した。
集団感染死に触れず
今回の集団感染では、事案の迅速な情報共有という面でも課題を残した。
12月27日、市庁舎内で午後2時から約3時間半にわたって行われた定例会議で、市保健所はノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の患者数が増加し、感染症法に基づく警報を横浜市が発令したことを伝えた。
しかし、この時、入院患者1人の死亡が確認され、感染防止に必死になっていた横浜田園都市病院の集団感染については、全く触れなかった。これについて、市保健所の岩田真美医務担当部長は「警報発令を伝えており問題ない。個別の事案についての情報を共有する必要はない」とする。
結局、各区の福祉保健センターへの連絡は2日後の29日夜。報道各社に連絡したのと同時だった。この段階で死者は4人になっていた。テレビニュースで集団感染を初めて知った市保健所の関係者は「死者が出た集団感染にもかかわらず、組織内の連絡が遅すぎる。迅速な情報共有は危機管理の基本だ」と憤慨する。
感染症の危機管理に詳しい東北大学の賀来満夫教授(感染制御学)の話「29日の情報提供が遅すぎるとは言えないが、仕事納めの28日に福祉保健センターに情報を伝える必要はあったのではないか。横浜市だけの課題に終わらせず、国全体の危機管理のあり方を考える上で検証すべき事例。(個別事案を共有する必要はないとする横浜市の考えについては)情報共有が不要という考えはありえない」
ノロ感染死者、公表の基準外
横浜市の感染症の公表基準を定めるマニュアルでは、ノロウイルスによる感染性胃腸炎で死者が出ても公表されるとは限らない。今回の公表も、病院が市に対し「公表したい」と相談して、市保健所幹部の同席のもと病院が公表した。
市の公表基準では、感染症は重篤な疾患ごとに1~5類に分類される。1類はエボラ出血熱やペストなど。2類は鳥インフルエンザや新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)など。1類は、患者発生時点で公表され、3類までは2類の結核を除き、死者が出た時点で公表される。一方、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎は重篤性が最も低い5類で、死者が出ても公表することにはなってはいない。ただ、マニュアルでは「4、5類でも市民の関心が高いと思われる事例は公表する」とされている。
岡山県、インフルエンザ注意報「うがい手洗いを」 |
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インフルエンザの感染が拡大しており、岡山県は17日、インフルエンザ注意報を発令した。
昨季より1か月近く遅く、今季はA香港型が中心。2月がピークとみられ、県は、うがいや手洗いなどによる予防を呼びかけている。
定点観測している県内84の医療機関で今月7~13日、1機関あたりの罹患(りかん)者数が5・81人と、発令の基準(5人)を超えた。保健所単位の地域別では、倉敷市(9・69人)が最多で、岡山市(5・41人)、備中(5・25人)、真庭(5人)と続いた。年齢別では、10歳未満が36%を占め、10歳代が21%、20歳代が12%と、若い世代で感染が目立っている。
検体を採取した22件を遺伝子解析したところ、A香港型が19件、B型が3件だった。2009年に発生した「新型」はなかった。
県内では昨年11月~今月17日、36学校・幼稚園で学級閉鎖や学年閉鎖などとなり、有症者は466人、欠席者は343人出ている。
県はうがい・手洗いの他、人混みに出る場合はマスクをする▽十分な睡眠やバランスの良い食事で抵抗力をつける▽室内は適度な湿度を保つ――ことを推奨。かかった場合は「マスクをした上で、早めに医療機関を受診して」と呼びかけている。また、解熱剤の中には、まひや意識消失などの神経症状が起きる「インフルエンザ脳症」との関連が指摘されているものもあるため、自分の判断で使うのは避けた方がよいとしている。
岡山県美咲町は16日、同町吉ヶ原の特別養護老人ホーム「吉井川荘」で、入所者と職員計16人が嘔吐や下痢などの症状を訴える感染性胃腸炎を発症し、うち入所者の男性(91)が死亡し、女性(85)が重体と発表した。
男性ら入所者4人と職員1人からノロウイルスが検出され、県などはノロウイルスの集団感染とみて、感染経路などを調査している。
同町などによると、9日から入所者に嘔吐(おうと)などの症状が現れ、16日までに80~93歳の入所者12人と職員4人が症状を訴えた。死亡した男性は寝たきりの状態で、14日午後に発症し、15日午後に死亡した。死因は「出血性胃潰瘍」で、診断した医師は「ノロウイルスが引き金になった可能性がある」としている。
同ホームでは、発症者が増え出した10日から面会を制限し、12日からはショートステイを中止。部屋の消毒などを行っている。
赤木一生施設長は「感染防止などに努めてきたが、このような結果になり、申し訳ない。今後は医師などと連携しながら感染を拡大させないように努力したい」と話している。
同ホームは美咲町と赤磐市でつくる一部事務組合が運営。64~102歳の70人が入所している。
岩手県は16日、県内全域にインフルエンザの流行注意報を今季初めて発令した。
7~13日に県内の指定64医療機関を受診したインフルエンザ患者数の平均が、発令基準(10人以上)超の10・55人となった。昨年同時期(9・75人)を若干上回るペースで、30人以上で警報が発令される。
県内10の保健所管内別では、二戸14・33人、奥州12・57人、盛岡市12・27人、一関12・14人など。県医療推進課は、「症状がある場合は無理をして学校や職場に行かず、早めに受診を」と呼びかけている。
これに関連し、県は16日、一関学院高(一関市)で21人がインフルエンザに感染し、2学年1クラスで23日までの学級閉鎖措置を取ったと発表した。昨年9月以降の県内の閉鎖は12件となり、昨季同時期(6件)の2倍に上っている。
岩手医大付属病院はインフルエンザの流行注意報発令などを受けて、18日から入院患者への面会を原則禁止する。入院手続きや症状説明、家族の危篤などの場合、主治医が許可すれば入館できる。問い合わせは同病院感染症対策室(019・651・5111)。
愛知県は16日、県内にインフルエンザ警報を出した。発令は昨シーズンより1か月ほど遅く、県は「帰宅後のうがい、手洗いを徹底してほしい」と呼び掛けている。
県は、県内の医療機関195か所を発生動向調査の対象としており、13日までの1週間に半田保健所管内で、定点観測している1医療機関あたりの患者報告数が、警報基準の30人を上回り、30・33人となった。県下全域では14・14人だった。
大分県は16日、県内でインフルエンザが流行しているとして、今季初の注意報を発令した。
定点観測している58医療機関の1機関あたりの患者数が、基準値(10人)を超える11・98人に上ったためで、県健康対策課は1月下旬~2月上旬がピークとみて、予防対策を呼びかけている。
同課によると、58医療機関の7~13日の新規患者数は計695人。計179人だった12月31日~1月6日の約4倍に急増した。
保健所別に見ると、1機関あたりの患者数が最多だったのは、中津、宇佐、豊後高田各市の北部で19・50人。日田市や玖珠、九重両町の西部(16・50人)や大分市(13・0人)も基準値を上回った。残る4保健所では、5・67~8・85人だった。
性染色体の異常などで自分の卵子で妊娠できない女性に、第三者の卵子提供を仲介する取り組みを始めようと、不妊治療クリニックの医師らが14日、NPO法人「卵子提供登録支援団体(OD―NET)」を設立すると発表した。
国内では、一部のクリニックが治療を実施しているが、仲介する団体ができるのは初めて。
卵子提供は、すでに子供がいる35歳未満の女性を対象に無償で呼びかける。OD―NETが血液型などを基に希望者とマッチングする仕組みで、採卵時に一定のリスクがあるほか、子供が15歳になった時点で希望があれば、住所、氏名などが子供に開示されることを承諾する必要がある。
提供を受けられるのは、ターナー症候群などで卵子がなく、医師が妊娠に耐えられると判断した40歳未満の女性で、当面はすでに登録済みの患者20人が対象。新規には募集せず、加齢による不妊は対象外。治療は、不妊治療クリニック団体「JISART(日本生殖補助医療標準化機関)」加盟の5施設で行う。
香川県は14日、丸亀市内の病院で、入院患者と職員計10人が嘔吐や下痢などの症状を訴える感染性胃腸炎を発症し、このうち入院患者の70歳代の男性が死亡したと発表した。
県は「感染拡大の恐れがないことや、遺族感情に配慮して病院名は公表できない」としている。
県によると、男性は13日に慢性腎不全で死亡。10人は今月8日頃から症状を訴え、死亡した男性を含む5人からノロウイルスが検出された。60~80歳代の入院患者5人と職員4人の症状は比較的、軽く、快方に向かっているという。
県薬務感染症対策課の松本由美子課長は「集団感染が医療機関であった場合、病院名を公表するか、どうかはケースバイケースで判断している」と話している。
一般用医薬品(市販薬)のうち、副作用のリスクが高い製品のインターネット販売を一律に禁止した厚生労働省令は違法だとして、通販会社2社がネット販売できる権利の確認などを国に求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(竹内行夫裁判長)は11日、「省令の規定は違法で無効」として、国側の上告を棄却する判決を言い渡した。
2社の販売権を認めた2審・東京高裁判決が確定した。これにより、市販薬のネット販売は解禁状態となる。
判決を受け、原告の「ケンコーコム」(東京)は規制対象だった薬のネット販売を開始。同社の親会社の「楽天」や、「ヤフー」など他のネット業者も販売の準備を始めると発表した。田村厚労相は同日夕、「一律禁止は駄目だということなので、検討会で判断していただきたい」と述べ、ネット販売を規制緩和する方向で検討する方針を表明。薬事法を改正する可能性にも言及した。
埼玉県日高市下大谷沢の日帰り温泉施設「サイボク天然温泉『まきばの湯』」の利用客がレジオネラ症を発症した問題で、運営会社の埼玉種畜牧場・サイボクハムは8日、営業再開を断念し、閉館すると発表した。
県によると、昨年11~12月に施設を利用した50~80歳代の男女8人が、レジオネラ症で肺炎などを発症。うち2人の菌の遺伝子パターンが、浴室で採取した菌と一致。施設は同12月27日、公衆浴場法に基づき、営業停止命令を受けた。
同社は同12月6日以降、営業を自粛。再開を目指し、消毒方法や管理体制の見直しを進めていた。同社は「発症者の心情と事態の重大性、利用客を守れなかった責任から、閉館を決めた」としている。
取材に対し、同社幹部は「泉質の関係で塩素消毒が効きにくく、レジオネラ症を100%防ぐのは難しい。食を扱う会社として、もう一度問題が起きると、会社自体が立ち直れなくなる」と話し、閉館は経営的な判断だと説明した。
同社は、今月15日で残務処理を終えて施設を閉じ、温泉をポリタンクで持ち帰りできる併設の温泉スタンドも廃止する。建物の再利用については、現段階では白紙としている。
施設は2004年6月に開業。年間利用客は約30万人で推移した。
同社の笹崎静雄社長は「発症された利用客、家族、その他の利用客に多大な迷惑と心配をかけ、深くおわびしたい。患者の方々の1日も早い回復を祈るばかり。今後は原点に立ち返り、安全でおいしい豚肉やハム、ウインナーを届けていきたい」としている。
津市の病院「透析センター」、60人がインフル感染 |
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津市南新町の特定医療法人同心会「遠山病院」は8日、院内の透析センターで今月2~7日、透析患者と職員計60人がインフルエンザに感染したと発表した。患者8人が肺炎などを患い入院しているが、いずれも命に別条はないという。
同院によると、今月2、3両日に職員1人ずつがインフルエンザに感染したため就業を停止したが、センター内で感染が広がったという。7日までに透析患者48人、職員12人がインフルエンザ陽性と診断された。8日は新たな陽性患者はいなかった。
一方、インフルエンザ陽性だった透析患者の男性(69)が6日に心筋梗塞(こうそく)で死亡したが、同院は「インフルエンザとの関連は無いと考えている」と話した。日本透析医会に問い合わせた結果、これまでにこうしたケースでの死亡例はなかったとしている。
同院では昨年11月、全体の約97%にあたる透析患者と職員がインフルエンザワクチンを接種していたという。7日以降は新しい入院患者や救急患者の受け入れを制限して、感染拡大の防止を図っている。
記者会見した竹内敏明院長は「多くの患者にご迷惑をおかけしたことを、おわびしたい」と陳謝した。
チーズ入り料理、誤って配る 東京・調布の小5女児死亡 |
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東京都調布市立富士見台小学校で昨年12月、5年生の女子児童(11)が給食を食べて死亡した問題で、乳製品の食物アレルギーがあった女児に、担任教諭が誤ってチーズの入った料理を渡していたことが、市教育委員会の調査でわかった。
市教委によると、12月20日の給食にはチーズ入りの「じゃがチヂミ」が含まれていた。女児にはチーズを抜いたチヂミを出したが、女児がお代わりを希望し、担任が誤ってチーズ入りを配ってしまったという。
調布署による行政解剖の結果、女児の死因はアレルギーで起きるアナフィラキシーショックの疑いがあることが判明。同署は関係者から事情を聴いている。
インフル集団感染、80代の患者1人死亡 甲府の病院 |
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甲府市宝1丁目の甲府共立病院(大畑和義院長、283床)は5日、入院患者や職員がインフルエンザに集団感染し、80代の男性患者1人がインフルエンザとノロウイルスによる多臓器不全で死亡した、と発表した。ほかに患者と職員計13人がインフルエンザに感染しているが、全員が快方に向かっているという。
病院によると、昨年12月27日に入院した患者に発熱の症状があり、自由に出入りできるデイルームで他の患者に感染し、同じフロアに広がったとみられる。
1月1日に患者7人と職員2人、2~4日に患者5人の感染を確認した。1日からはデイルームの使用を禁止し、感染した患者を一つの病室に集めて面会を制限している。ノロウイルスについては数人の発症者がいるが、潜伏期間などから集団感染ではないという。
東京プリンスのレストラン、ノロウイルスで営業停止 |
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東京都は4日、ノロウイルスによる食中毒を起こしたとして、港区の東京プリンスホテルのレストラン「ポルト」に同区が3日間の営業停止処分を出したと発表した。
都によると、ポルトで先月12~13日に食事をした76人が下痢や吐き気などの症状を訴え、26人からノロウイルスが検出された。調理師ら従業員19人からもノロウイルスが検出された。いずれも回復している。
また、江東区の仕出し店「人形町今半フーズプラント」で先月18日に製造したすき焼き弁当を食べた35人が症状を訴えたことも発表した。同区はノロウイルスが原因の食中毒と断定、弁当工場を3日間の営業停止処分にした。
iPS、がんやエイズ治療に応用も 免疫細胞「若返り」 |
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iPS細胞(人工多能性幹細胞)の技術が、がんや感染症の治療に使える可能性が出てきた。免疫細胞を若返らせる実験に日本の二つの研究チームが成功し、免疫療法の効率を高められることがわかったからだ。
4日付米科学誌セル・ステムセルにそれぞれ論文を発表した両チームが注目したのは、T細胞と呼ばれる免疫細胞。がん化したり、ウイルスに感染したりした細胞が持つ目印(抗原)をアンテナ分子で認識し、これらを殺す働きがある。
免疫療法では、がん細胞や感染細胞を認識するT細胞を体外で増やして患者に戻すが、もともと数が少なく、1~2週間とされる寿命を終えつつあるものもあるため、効果は限定的だ。
ノロウイルス8人院内感染か、1人死亡 松山の病院 |
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新潟県佐渡市は1日、市が運営する養護老人ホーム「待鶴荘(たいかくそう)」に入所していた90代の女性が同日未明、ノロウイルス性腸炎で死亡したと発表した。他に10人が感染性胃腸炎の症状を示しているが、いずれも軽症で快方に向かっているという。
施設によると、12月7日から職員4人と入所者30人の計34人に嘔吐(おうと)や下痢といった症状が出て、このうち3人からノロウイルスが検出されていた。このため、患者の部屋を分け、食器を使い捨てにしてきた。
死亡した女性は28日に嘔吐の症状が出た。ノロウイルスの簡易検査は陰性だったが、31日に呼吸が苦しいと訴えて市内の病院に運ばれ、1日午前3時過ぎに亡くなった。