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先進医療の審査短縮…がん新薬など専門家に委託 indexへ

 厚生労働省は、保険外の治療だが入院費など一部に保険がきく「先進医療」の審査を、迅速に行う新制度を11月から始める。
 抗がん剤など特定の分野について技術面の審査を外部の医療機関や専門家に委託することで、審査のスピードアップを図る。
 同省ではこれまで、生物統計や小児科、消化器外科などの分野の専門家10人で構成する有識者会議で、有効性や安全性を審査してきた。しかし、先進医療の審査の対象になるのは、新しい薬から医療機器、手術などの治療法まで幅広い。専門的な審査を迅速に行うのは難しかった。各分野に詳しい専門家が集中的に審査することで、半年程度かかっていた審査を約3か月に短縮できると期待される。
 まず、海外で使われている国内未承認の抗がん剤などで新制度を適用。保険診療と保険外の診療を併用する「混合診療」を先進医療として認め、新しい抗がん剤治療を早期に受けられるようにする。同省は抗がん剤に続いて、来年にも再生医療や医療機器を新制度の対象に加える考えだ。

心の病…被災自治体職員、5か月で147人休職 indexへ

 東日本大震災後、岩手、宮城、福島3県の沿岸と東京電力福島第一原発事故で避難指示区域となった地域の計42市町村で、職員がうつ病など心の問題で休職するケースが相次いでおり、今年度も8月までの5か月で147人が1か月以上の長期休職をしていることが読売新聞の調査で分かった。
 復興事業の本格化で自治体業務は拡大し、職員の負担は増しており、震災から2年半が過ぎても厳しい状況は続いている。
 調査は、岩手県の12市町村、宮城県の15市町、福島県の15市町村が対象。11年4月から今年8月末まで、年度ごとに心の問題で長期休職した職員数を尋ねた。2011年度の長期休職者は286人、12年度は254人で震災前の10年度の177人を大きく上回った。
 震災後2年半での県別の休職者数(延べ人数)は、宮城県が461人、福島県が180人、岩手県が46人。市町村別(同)では、仙台市が207人で最も多く、次いで福島県いわき市が101人、宮城県石巻市が90人だった。いわき市では、今年度の5か月間で20人が休職しており、10年度の23人に近い人数となっている。

昨年、結核罹患率が大幅減 80歳以上割合は増加…和歌山 indexへ

 2012年に和歌山県内で新たに結核の発症が確認されたのは185人で、人口10万人当たりの新登録結核患者数を示す罹患率が全国ワースト3位だった11年と比べ、2割減ったことがわかった。
 ただ、高齢者を中心に32人が死亡。県や関係団体は結核予防週間(24~30日)に合わせ、啓発活動に力を入れており、担当者は「戦後の流行期に入った菌が、再び活動を始めることもある。決して昔の病気ではない」と注意を呼びかけている。
 県健康推進課によると、12年の罹患率は18・7で、11年(23・5)比で4・8ポイントの減。07年から11年まで全国ワースト3~7位と罹患率の高い状態が続いていたが、12年は統計を取り始めた1951年以降、初めて20を切った。
 結核は感染しても10人に1~2人しか発病せず、せきなどの典型的な症状がないと、発見が遅れるケースは少なくない。しかし、感染の有無が分かる血液検査が普及しつつあり、発病を予防することで、罹患率の減少につながったとみられる。
 ただ、高齢の患者は多い。12年の新登録結核患者のうち、65歳以上は7割を超え、特に80歳以上の占める割合は43・8%と、11年より4・5ポイント増えた。
 戦後の流行期には、多くの人が感染したとみられており、加齢による免疫機能の低下で、菌が活動を再開したことが増加の一因と考えられるという。
 同課の担当者は「統計上の短期的な改善だけでは、楽観できない。高齢化が進む県内では、いっそうの警戒が必要だ」と指摘する。
 そうした現状を知ってもらおうと、予防週間の期間中、県や結核予防会県支部の担当者らが、和歌山市のJR和歌山駅前などで、マスクやパンフレットなどを配り、十分な食事や睡眠を取るなど発病を予防することの大切さなどを訴えた。
 結核は、発症しても6~9か月間、薬を服用することで多くの人が治る病気。ただ、高齢者は症状が悪化して体力が落ちると、副作用の影響を受けやすくなる。
 県の担当者は「せきや全身の倦怠(けんたい)感が長引いたり、体重が減ったりしたら、発症の疑いがある。周囲への感染を防ぐためにも、早期に受診して治療を受けてほしい」と呼びかけている。

県立中央病院で向精神薬紛失…富山 indexへ

 富山市の県立中央病院(野田八嗣院長)は26日、精神病棟(50床)で入院患者向けに処方された向精神薬を含む62錠を紛失したと発表した。事故対策チームを設け調査を進めているが、盗難の疑いもあるとして富山中央署に届け出た。
 紛失したのは睡眠導入剤のハルシオン19錠、抗不安剤のレキソタン20錠の向精神薬2種類のほか、安定剤のデパス19錠、睡眠導入剤のアモバン4錠。いずれも看護師らが詰めるスタッフステーションで保管していた。女性看護師が25日、5人分の薬の紛失に気づいた。
 ステーションのドアには常時鍵が掛けられており、監視カメラも設置されているが、薬の保管棚は鍵付きではなかった。
 同病院は同日午後、医師や看護師ら約40人から聞き取り調査を実施。監視カメラの記録からはこの数日間、不審者の出入りは確認できなかったという。
 麻薬及び向精神薬取締法は、鍵をかけた場所での向精神薬の保管を定めているが、野田院長はステーションに鍵が掛かることを理由に「管理に問題はなかった」と説明。今後は、鍵の掛かる保管棚を利用するなど再発防止に努めるという。

子宮頸がんワクチン副作用、11病院で専門治療 indexへ

 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後、原因不明の痛みが続く患者が出ている問題で、厚生労働省研究班(代表・牛田享宏愛知医大教授)は、東京大病院など全国11病院で専門的な治療を行うことを決めた。
 同ワクチンを巡っては、強い痛みが生じるなど重い副作用のケースが報告されたため、専門的な治療態勢を充実させることが急務となっていた。ワクチン接種後、2~4週間が過ぎても痛みやしびれなどの症状が続いている患者に受診を呼びかける。
 厚労省によると、同ワクチンは今年3月までに国内で推計328万人が接種を受けた。ワクチンメーカーや医療機関から歩行障害やけいれん、失神、発熱など約360件の重い副作用報告があった。また原因不明の慢性的な痛みは43件あった。このため、同省は今年6月、ワクチンの接種は継続するものの、積極的に勧めることは一時的に差し控えると決定していた。
 研究班は、子宮頸がんワクチン接種後の副作用が問題になったことを受け、痛み治療の専門家らで発足。接種後に原因不明の痛みを訴える患者を実際に診察するなどしてきた。ワクチンと痛みの因果関係は不明なものの、従来の慢性的な痛みへの治療が、ある程度有効と判断した。

長崎大病院 駐車場混雑HPで公開 indexへ

 長崎大病院(長崎市坂本)は、車で来院する人向けに、駐車場の混み具合をホームページ(HP)で確認できるサービスを今月から開始した。
 事前に混雑の状況を知ってもらうことで、公共交通機関での来院を促し、駐車場待ちの渋滞の解消につなげるのが狙いだ。
 病院の外来用駐車スペースは約340台分ある。これに対し、通院や見舞いで出入りする車は1日当たり約1200~1600台に上っている。外来患者が集中する平日の午前中から正午過ぎにかけては、駐車場の空きを待つ車の列が敷地外の一般道路にまで及び、ピーク時には約1キロに達することもあるという。
 来院者からは「駐車場の待ち時間が長い」との意見が寄せられ、住民からの苦情を受けた警察署からは「渋滞が長くなり危険」などと対応を求められている。駐車場問題は、病院にとって悩みの種となっている。
 車での来院を減らそうと、これまで広報誌などを使った公共交通機関利用の呼びかけや、1日33便の無料シャトルバスの運行などを実施。しかし、駐車場利用は増加傾向にあり、2012年度は41万9605件に上った。駐車場の大幅拡張は、新たなスペースの確保が難しいことなどから、早期に着手するのは難しい状況となっている。
 病院は新たな改善策として、正門から駐車場に向かう道路と歯科の駐車場にカメラを1台ずつ設置。1日24時間稼働し、撮影された画像はHP上で30秒ごとに更新され、駐車場の状況が一目で分かるようになっている。注目度は高く、閲覧数は1日当たり1000~1500件という。
 同病院の担当者は「混雑している状況を見て、『マイカーで行くのはやめよう』と思う人が増えてくれると助かる。渋滞問題は深刻で、近隣住民や車でしか来院できない人のためにも、公共交通機関の利用をお願いしたい」と協力を呼びかけている。

乳がんなどの無料検診縮小へ…対象年齢絞る方針 indexへ

 子宮頸(けい)がん検診と乳がん検診の受診者に配布している無料クーポンについて、厚生労働省は対象年齢を来年度から絞り込む方針を決めた。
 定期的な受診を促して受診率を上げる効果は限定的と判断し、規模縮小に踏み切る。厚労省は今後、受診の呼びかけを強化したいとしている。
 クーポンは2009年度から、子宮頸がんでは20~40歳、乳がんでは40~60歳の5歳刻みの年齢の女性に配られているが、来年度は対象を、子宮頸がんで20歳、乳がんで40歳のみに限ることにした。大腸がん検診では40~60歳の5歳刻みの男女に引き続き配る。
 市区町村が実施した検診の受診率は、08年度は子宮頸がんで19%、乳がんで15%だったが、10年度までにともに4ポイント強伸びたものの、11年度は横ばいだった。

難病診断、ネットで専門家が助言…来年度にも indexへ

 難病対策の抜本的な見直しを進めている厚生労働省は、2014年度にも「難病医療支援ネットワーク」(仮称)を設立する方針を固めた。
 症例が少なく診断が難しい難病を対象に、専門家がネット上で医師からの質問に直接回答する。
 難病の迅速な診断・治療につなげるため、厚労省は14年度、各都道府県に1か所の「難病医療拠点病院」(仮称)を設けるほか、学会の研修を受けた「難病指定医」(同)が診断・治療にあたる制度をスタートさせる。
 難病指定医は患者の要請を受け、診断や病状の程度を判定、都道府県に置く審査会が難病に該当するかを審査する。難病指定医には全国で延べ28万人程度が委嘱されるとみられる。
 新たに設立されるネットワークでは、難病指定医向けに、検査方法や治療方法などをアドバイスする。アドバイザーとして、厚労省の難病研究班や国立高度専門医療研究センター、神経や血液など関係学会の研究者らが参加する予定だ。

HIV感染者数、世界で減少…予防対策が効果 indexへ

 【ジュネーブ】国連合同エイズ計画(UNAIDS)は23日、エイズウイルス(HIV)の感染状況に関する報告を発表した。
 世界全体の感染者数の減少傾向がはっきりと表れ、予防対策や治療薬の普及が効果を上げていることが示された。
 2012年の1年間に世界全体で新たに感染した人は約230万人で、国連エイズ特別総会で対策強化が宣言された01年(約340万人)より3割減少した。14歳以下の子供では、12年に新規感染した人数は約26万人で、01年からほぼ半減した。
 エイズが原因で12年に死亡した人は約160万人で、ピークの05年(約230万人)から3割減った。一方、12年時点の感染者総数は約3500万人で、このうち7割をサハラ砂漠以南のアフリカの感染者が占めた。

「見張りリンパ節」検査で胃がん転移の有無判断 indexへ

 胃がんの手術時に「センチネルリンパ節生検」という検査を行い、がんのリンパ節転移の有無をほぼ確実に判断できることを確認したと、慶応大外科の北川雄光教授らが発表した。
 転移を正確に見極めることで、切除範囲を減らし、後遺症の軽減につながる成果で、米医学誌に掲載された。
 センチネルリンパ節は、がんが転移する際に、がん細胞がリンパ管を通じて最初に流れ着くリンパ節のこと。センチネルは「見張り」を意味する。
 検査は、ごく微量の放射線を出す物質をがん病変部に注入。手術時に、この物質が到達したセンチネルリンパ節を探知機で特定し、病理検査でがんの有無を調べる。がんがなければ転移がないと判断し、切除範囲を最小限にとどめることが可能だ。

患部CT画像 体に映し肺がん手術…高知大 indexへ

 肺がん患者の骨や患部などをコンピューター断層撮影法(CT)で撮影した画像を、手術時に体の表面に投影する技術を高知大医学部の穴山貴嗣講師らのグループが開発した。
 手術を行う際にCT画像を直接映し出す方法は珍しく、最小限の傷で確実な手術ができるメリットがあるという。同大では「肺がん以外の手術にも使えるよう工夫したい」としている。
 肺がんの手術では、胸を切開する方法のほか、内視鏡を使った胸腔鏡
きょうくうきょう
手術が用いられる。初期のがん患者に対して一般的に行われる「完全胸腔鏡手術」では、胸の横などに開けた直径1~3センチの穴2、3か所から棒状の小型カメラや、手術用具を入れ、モニター画面を見ながら病巣を切除していく。切開手術と比べて傷口が小さく、術後の回復が早いのが特長だが、患部を正確に把握する必要があった。
 穴山講師は、3年ほど前から胸腔鏡手術がさらに安全で効率的に実施できるように研究を進めてきた。今回発表した手術方法では、投影装置を工夫し、手術前のシミュレーション(模擬手術)などで使用したCT画像を手術時に患者の体に直接映すことで骨や腫瘍、切開予定の位置などを示すことに成功したという。
 同大で19日に開かれた記者会見で、穴山講師は今年2月以降、7件の完全胸腔鏡手術で画像を使用したことを紹介。従来の手術に比べて手術時間が短縮し、患者の負担が減ったという。
 穴山講師は「多くの患者のメリットになるよう、他の分野の医師たちと、新しい技術や手法を共有していきたい」と話している。

救急患者断らない病院、全国100か所整備へ indexへ

 厚生労働省は、どんな場合でも救急患者を必ず受け入れるモデル病院を全国に100か所程度整備する方針を決めた。
 救急搬送される患者は、高齢化などにより、増加傾向にある。だが、医師などのスタッフや病床の不足などを理由に、医療機関から受け入れを断られるケースが少なくない。
 こうした事態を解消するため、同省は、手術や入院が必要な患者を受け入れる「2次救急医療機関」を対象に、救急患者の受け入れを断らない施設を整備する。来年度の概算要求に20億円程度盛り込み、病床の確保などに充てる計画だ。
 100か所の医療機関では、長時間にわたって搬送先が決まらない患者を一時的であっても必ず受け入れる。そのまま治療を継続するのが困難な場合は、新たな受け入れ先を探す役割も担う。

胃ろうへの誤解 苦痛少なく回復も期待 indexへ

 おなかに開けた小さな穴から胃へ栄養を注入する「胃ろう」。最近は終末期医療との関連でマイナスイメージが広がり、回復が期待できるケースで患者や家族が拒否する例も増えている。鼻のチューブや点滴にすると、かえって本人の苦痛が大きい。各種の栄養補給法への正しい理解が必要だ。
 胃ろうを造っても、ノドに問題がなければ、口から食べる訓練をしてよい。リハビリで食べる機能が回復すれば、胃ろうを外せることもある。
 奈良県五條市の大谷浪代さん(99)も、その一人だ。
 3年前に脳梗塞で倒れた。右半身がまひし、のみこみの障害も出た。搬送された病院では、鼻腔チューブからの栄養。鼻のチューブは不快感があり、自分で抜いてしまうため、動く左手にミトンをはめられた。「再び食べるのは無理でしょう」と言われた。
 3週間後に転院した県立五條病院で、勧められて胃ろうを造った。1か月間、食べる訓練を続け、その後、リハビリ専門病院で半年、口からの食事を併用した。発病の1年後には胃ろうを外した。
 今は平日は介護施設に滞在し、土日は自宅に戻って普通の食事を食べている。ハンバーグやウナギが好物だ。発語は不自由だが、相手の話は理解できている。「これだけ回復したのは、胃ろうを利用したおかげ」と家族は話す。
 五條病院では、摂食・嚥下チームがリハビリに力を入れている。担当する堀内葉月医師は「胃ろうで栄養状態が改善すれば、食べる意欲がわき、口やノドの筋力もつく。単に胃ろうを造るだけでなく、食べる訓練をしっかりやることが大切だ」と強調する。
◇        ◇        ◇
 口から食べられない患者への栄養補給法は主に4種類ある。日本静脈経腸栄養学会のガイドライン(指針)が示している考え方は、こうだ。
 腸から栄養を吸収できる場合は、胃や腸へ栄養剤を届けるのが基本。補給期間が4週間未満なら経鼻胃管(鼻腔チューブ)、4週間以上の見込みなら胃ろうがよい。
 腸が使えない場合は、血管に点滴で栄養を入れる。期間が2週間未満なら腕などの末梢静脈、2週間以上なら胸などの中心静脈から注入する。
 このうち鼻腔、末梢静脈は本人の不快感や苦痛が大きいため、自分でチューブを抜くことがよくあり、それを防ぐために身体拘束されることも多い。中心静脈栄養は長引くと感染のリスクが高くなる。
 もともと、そうした短所の少ない方法として開発された技術が胃ろうで、今は、内視鏡を使った簡便な手術で造設できる。外すのも容易で、穴は自然にふさがる。
 脳卒中に伴うのみこみの障害や認知症による拒食のほか、頭頸部や食道の腫瘍、神経難病の患者にも利用される。

◇        ◇        ◇

 ところが、胃ろうを患者・家族が拒み、鼻腔や点滴にするケースがこの1~2年、目立つようになり、医療現場から困惑の声が相次いでいる。
 草津総合病院(滋賀県)の伊藤明彦・臨床栄養科部長は「終末期の胃ろうと、そうでない胃ろうがごっちゃになり、過剰な拒否反応が起きている」と言う。「終末期ならともかく、まだ50歳代の脳梗塞で、胃ろうなら十分に栄養を補給できて回復が早いのに『絶対イヤだ』という患者もいる。多くの病院では主治医が栄養療法に詳しくないため、世間の否定的イメージに影響され、胃ろうを積極的に勧めない傾向も生じている」
 一方、療養型の病院では患者の状態によって診療報酬が違ってくる。「家族の意向に乗っかる形で、胃ろうより、入院料の高い中心静脈栄養にする病院が増えている」と大阪の民間病院長は明かす。
栄養補給 適切な方法で
 かつては患者が食べられなくなると、病院は胃ろうをどんどん造る傾向があった。その結果、寝たきりで意思疎通できず、死期の近づいた高齢者に栄養補給を続けるケースも増え、「尊厳を損なうのでは」という意見が出てきた。
 日本老年医学会は昨年1月にまとめた終末期医療に関する「立場表明」の中で「治療の差し控えや撤退も選択肢」とした。それと前後して、終末期の胃ろうの是非をめぐる報道が相次いだ。それらが「何となく胃ろうは良くないみたいだ」という印象をもたらし、終末期以外にまで影響を及ぼしているようだ。
 「胃ろうが適するのに鼻腔や点滴にするのは、ゆゆしき問題。胃ろうが良いか悪いかではなく、栄養補給をするなら最適な方法を選ぶことが肝心だ」。静脈経腸栄養学会のガイドライン作成委員長を務めた井上善文・大阪大学特任教授は、そう指摘する。
 終末期や重い認知症の患者への栄養補給をどうすべきかは、簡単に答えの出ないテーマで、深い議論を社会的にも重ねる必要がある。しかし胃ろう=終末期・延命治療ではない。それ以外の胃ろうは区別して考えたほうがいい。
 食べる機能が回復するかどうかを的確に予測できるか、いずれ認知機能が低下していく場合にどうするかなど様々な課題はあるが、胃ろうが回復の可能性を高めるケース、苦痛を減らせるケースでは、適切に活用すべきだろう。

はしか国内「排除状態」…土着ウイルス消滅 indexへ

 厚生労働省研究班(主任研究者=竹田誠・国立感染症研究所部長)は、麻疹(ましん)(はしか)について国内は「排除された状態になった」という見解をまとめた。
 乳幼児のワクチンの接種率が近年、95%と高く推移しているためとみられる。厚労省は報告書にまとめ、世界保健機関(WHO)の専門家会議に提出。2015年度までに排除認定を目指す。
 WHOによると、排除の定義は、国内で感染が1年以上続く土着のウイルスがないことなどがあげられる。患者は2008年に1万人以上出たが、10~11年は400人台、12年は290人余に減った。このうちウイルス遺伝子の検査をした2~3割の患者のデータを、研究班は分析した。
 その結果、10~12年はいずれも海外から持ち込まれた型で、感染は短期間で収まっていた。土着のウイルスは10年5月を最後に見つかっていない。こうしたことなどから研究班は排除状態と判断した。

認知症の原因物質、見えた!…海馬に「タウ」 indexへ

 アルツハイマー病など認知症の原因物質の一つとみられるたんぱく質「タウ」が、患者の脳内に蓄積した様子を可視化することに成功したと、放射線医学総合研究所(千葉市)のチームが発表した。
 発症の早期発見や症状進行度の評価への応用が期待できるという。米科学誌ニューロン電子版に19日、掲載される。
 樋口真人(まこと)チームリーダー(神経科学)らのチームは、タウと結び付いて弱い放射線を出す、特殊な化学物質を開発。これを注射して、放射線を体外から測定すると、タウの蓄積した場所が浮かび上がった。
 この技術で検査したところ、アルツハイマー病の患者は、記憶をつかさどる「海馬」という領域にタウが蓄積していた。症状が進行した患者ほど、脳内の広い領域でタウが増加していた。アルツハイマー病とは別の認知症の患者も、タウが脳内に蓄積していた。

患者情報、ネットで共有…山梨 indexへ

 山梨県の富士・東部医療圏(富士吉田市、都留市など12市町村)の医療機関の間で、患者の検査結果や処方のデータを共有する情報システムの試験運用が17日、始まった。
 医師不足などが深刻な同医療圏と峡南医療圏(市川三郷町など5町)で県などが推進する事業。医療連携を進め、医療圏内で効率的に初期医療から高度な医療までを提供できる態勢を目指すもので、峡南でも12月から試験運用が始まる予定で、ともに来年4月の本格運用を目指す。
 患者情報共有システムは、富士・東部の頭文字を取り「FT―Net」と名付けられた。システムでは同意の得られた患者を対象に、各病院での血液や尿検査の結果やいつどんな薬を服用していたかなどのデータを、富士吉田医師会に設けるデータセンターに集め、医師らは専用の端末で情報を確認できる。患者も違う病院を利用した際に同じ検査を省略できるなどのメリットがある。
 試験運用では、富士吉田、都留、大月、上野原の市立病院と山梨赤十字病院のほか、富士吉田、都留、北都留の医師会に属する診療所が参加。富士吉田医師会の刑部光太郎副会長は「情報共有を進めることで『地域を一つの病院』と捉えられるようになる」と話した。

皮膚の保護機能向上でアトピー改善…化合物発見 indexへ

 外部から体を保護する皮膚のバリア機能を高めることにより、アトピー性皮膚炎の症状を改善する化合物を発見した、と京都大の椛島(かばしま)健治准教授らが発表した。
 17日の米アレルギー専門誌電子版に論文が掲載された。
 アトピー性皮膚炎は、国内に約40万人の患者がいる。治療では、免疫反応を抑えるステロイド剤などが使われるが、感染症にかかりやすくなるなど副作用の問題がある。
 グループは、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚で、水分や強度を保つたんぱく質「フィラグリン」が減っていることに着目。約1000種類の化合物を調べ、フィラグリンを数倍に増やす効果がある「JTC801」という化合物を見つけた。
 この化合物を水に溶かしてアトピー性皮膚炎のマウスに毎日飲ませたところ、4~6週間で量がほぼ回復し、症状も改善した。目立った副作用はなかったといい、椛島准教授は「10年後をめどに臨床試験の実施を目指したい」と話している。

2040年 病床2224~7372床不足…千葉 indexへ

 千葉銀行系調査機関の千葉経済センターは、本県の人口推計に基づいて、将来の医療・介護施設の不足状況などをまとめたリポートを発表した。
 2040年時点では病床数が2224~7372床不足する見通しで、同センターは行政機関などに早急な対策を進めることなどを提言した。
 調査は40年時点の医師や介護職員数を10年時点と同程度として推計。現在と同じ医療・介護サービスを続けていく場合、病床数は25年には不足に転じて、現在も足りていない介護施設の定員は、40年には2万7824~3万3251人分が不足するとした。
 地域別では、特に急速な高齢化が予想されている東葛地域や千葉市などの都市部ほど、医師・介護職員ともに大幅に不足する見通しで、それらの地域では医師などが1人で担う患者や要介護者の人数も増え、負担感も増すとしている。
 本県は10年時点で10万人当たりの医師数や病床数、介護施設の定員数などが全国でも低い水準にとどまっている。
 同センターは医科系大学の誘致や医学部の定員増、在宅医療や在宅介護の充実などを提言。調査を担当したちばぎん総合研究所の森康棋氏は「介護予防のため、高齢者に毎日ラジオ体操をするように促すような取り組みも進めていくべきだ」としている。

産婦人科開業に2億円助成…香川・三木町が条例案 indexへ

 香川県三木町は、町内で産婦人科の医療機関を開く医師に対し、最高2億円を助成する制度を設ける。
 開会中の町議会に条例案を提出した。町は「診療所の誘致策としては、全国で最高額ではないか」としている。
 同町では年間200人前後が出生。町によると、高松市との境界近くに香川大病院があるが、それ以外に産婦人科はない。町が昨年、検診を受けた乳幼児の母親76人にアンケートを行ったところ、65人(86%)が「近くにあれば安心」「総合病院は待ち時間が長い」などとして必要性を訴えたという。
 助成対象は、産婦人科の臨床経験が5年以上あり、10年以上にわたって医療機関を営む意思がある医師。土地購入や施設建設、備品購入などの費用を、2億円を上限に2分の1まで助成する。上限は、12床程度の施設を建設する平均コストから設定したという。
 同様の助成は、静岡県富士市が1億円、京都府の亀岡、城陽両市が各6000万円を用意した例があるという。町は「子どもを安心して産み育てられる環境を整え、人口増につなげたい」としている。

向精神薬処方に課題、患者ネット販売 indexへ

 医師に処方された向精神薬の販売広告をインターネット上に出したとして、麻薬及び向精神薬取締法違反に問われた千葉市の女(27)と札幌市の女(48)の初公判が近く、静岡地裁で開かれる。
 2人は精神障害者認定を受けており、減免制度で安く購入した向精神薬をネット販売していたとされる。向精神薬が患者から流出した背景には病院や薬局による患者のチェック体制に課題があるようだ。
■100万円の利益
 札幌市の女の自宅に今年7月、県警薬物銃器対策課の捜査員らが捜索に入ると、未開封の向精神薬が大量に保管されていた。これらは医師の処方を受けた「正規ルート」で入手した向精神薬だった。千葉市の女も同様で2人の自宅から押収した向精神薬は18種類、計6000錠に上る。県警は、2人が半年間で約100万円の利益を得たとみている。静岡地検は、2人に責任能力はあると判断し、起訴したとみられる。
■「性善説で処方」
 厚生労働省によると、向精神薬の不正入手事件は2011年には63件あった。向精神薬を患者が服用したかどうかを確認するのは困難で、県内のある精神科医は「適切に服用したかは患者本人に聞くしかない。処方するかどうかや、処方量は性善説に基づいた診察で決める」と打ち明ける。医師の処方箋を手にした患者に向精神薬を手渡す薬局でも、服用したかどうかを確認するのは困難だ。処方履歴を確認する手段は薬剤師が記録する「お薬手帳」を患者に提出してもらうしかないが、あくまでも任意だ。
 こうした実態を踏まえ、厚労省は12年4月以降、「向精神薬を含む薬は、残薬の確認をしてから処方する」ことを求める通達を病院や薬局に出しているが、「確認するために空の容器を持ってきてもらっても仕方ない」(精神科医)との声も上がり、現状では確認のための有効な手段は取られていない。
■「組織犯罪の温床」
 診察そのものも形骸化しているようだ。国立精神・神経医療研究センター(東京都)が11年に実施した調査では、向精神薬の依存者のうち44%が診察を受けずに薬を処方された経験があったという。
 大阪市では10年、暴力団関係者らが生活保護受給者に入手させた向精神薬を、安く買い取って転売する同法違反事件が発覚。県警幹部は「向精神薬が簡単に手に入る現状は、これを資金源とする組織犯罪の温床となる恐れがある」と警鐘を鳴らす。
■複数の病院から入手
 患者が複数の医療機関から向精神薬を入手したことを見抜く仕組みも不十分だ。国民健康保険に加入している患者は、診療報酬の一部を負担し、残りは病院が市町に請求する。請求額が適切かを審査する県国民健康保険団体連合会(県国保連)は個々の患者の医療費を把握できる立場だ。
 だが、「市町の医療機関ごとに担当が違う」(県国保連)といい、市町を横断した複数の医療機関の受診記録をチェックする役割は限定的だ。
■ネット販売解禁で懸念
 また、今年1月、処方箋なしで購入できる市販薬のインターネット販売を一律禁止した厚労省令を違法とした最高裁判決が出されたことにより、市販薬のネット販売は事実上解禁された。政府はネット販売の規制を緩和する方針だ。
 これにより、市販薬に紛れた向精神薬の違法譲渡が横行する可能性は否定できない。県警幹部は「向精神薬が市販薬と偽ってネット販売されていても、中身の成分を調べなければわからない」と懸念している。(村上藍)
 向精神薬 脳の中枢神経に作用する薬物で、うつ病や統合失調症の患者に対し、精神安定などの医療目的で処方される。麻薬と同程度の依存性を持つ種類の薬もあり、乱用すると、幻覚症状が出たり、判断能力が低下したりする。麻薬及び向精神薬取締法は、医師の処方箋なしに譲り受けることや、販売目的で所持することなどを禁じている。

医療費38・4兆円…10年連続で最高額更新 indexへ

 厚生労働省は10日、2012年度の医療費(概算)の総額が38兆4000億円(前年度比1・7%増)に上り、現在の調査方法となった00年度以来の最高額を10年連続で更新したと発表した。
 国民1人当たりの医療費は30・1万円(同1・9%増)で、初めて30万円を超えた。
 概算医療費は、自由診療を除く医療費の合計で、伸び率は前年度の3・1%から鈍化した。1人当たりの医療費を比較すると、70歳未満が18・1万円だったのに対し、70歳以上は80・4万円、75歳以上は91・5万円だった。70歳以上の高齢者にかかった医療費は17兆4000億円と、全体の45・4%を占めた。
 医療費総額の伸び率を都道府県別に見ると、宮城県が4・3%で最も高かった。厚労省は「東日本大震災からの復興が進み、医療機関が再建されているため」と分析している。宮城県以外では、東京都(2・8%)、神奈川県(2・7%)、福島県(2・6%)、千葉県(同)などの伸び率が高かった。

臨床データ改ざん問題、英医学誌が論文取り消し indexへ

 高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究でデータが改ざんされていた問題で、英医学誌「ランセット」は6日、「信頼性が失われた」として、慈恵医大のグループが2007年に発表した論文を取り消すことを電子版で公表した。
 同誌は医学分野でトップレベルの雑誌で、日本の医学研究への信頼が大きく損なわれた。
 論文は、3000人の高血圧患者を対象にした試験で、ディオバンを使うと、従来の治療薬に比べて血圧の下がり方は同じでも、脳卒中や狭心症などの心血管疾患の発症が39%減るというものだった。販売元のノバルティスファーマの元社員(今年5月退社)がデータの解析を行っていた。
 同大の調査で、論文の血圧のデータとカルテの記載に多くの食い違いが判明。同大は「データが人為的に操作されたと考えられる」と結論付け、「科学論文として欠陥があり、信頼性を欠く」と指摘した。

中国、腎臓売買「野放し」…別荘を「手術室」に indexへ

 中国で、腎臓を違法に売買し、移植するケースが後を絶たない。
 8月には湖北省武漢で別荘を「手術室」とした犯罪グループが摘発された。当局は取り締まりを強化しているが、貧富の格差や蔓延(まんえん)する拝金主義を背景に、インターネット上には売買に関する情報があふれる。仲介業者も暗躍し、当局の対応が追いつかないのが実情だ。
 「膵臓(すいぞう)がんで入院中の妻の治療費20万元(1元は約16円)をどうしても工面できない。自分の腎臓を売るしかないんだ」。池州市郊外の山間部。喫茶店で待ち合わせた無職の男性(42)はあきらめきった表情だ。
 男性は今春、激しい痛みに頻繁に襲われる妻(40)の看病のため会社を辞めた。高額の治療費で貯金があっという間に底をつき、知人らからの借金も30万元を超えた。男性はやむなく最近、中国版ツイッター・微博に「腎臓を売ります」と書き込んだ。
 腎臓の相場は30万~40万元。仲介業者を通すと、ヤミの医師や業者の取り分が引かれ、手元に2万~3万元しか残らないことが多い。男性は「40万元での直接取引」を希望し、連絡を待つ日々だ。
 中国で臓器の売買は法で禁じられている。臓器提供は死後ならば第三者間でも認められるが、生体移植は基本的に親族間に限られる。そうした規制にもかかわらず売買が横行するのは、貧富の格差の存在が大きい。
 「腎臓を売るしかないまで追いつめられた人がいる一方で、臓器提供を待てない患者が、富裕層を中心に非合法な売買を求めている」。腎臓売買に詳しい報道関係者は事情を明かした。

震災・原発事故で流出…福島の医師数ワースト2 indexへ

 厚生労働省が4日発表した2012年の医療施設動態調査・病院報告(10月1日時点)で、福島県内の人口10万人あたりの病院の医師数は122・5人となり、埼玉県に次いで全国ワースト2位だった。
 全国平均(159・1人)より30人以上少なく、震災と原発事故の影響が暗い影を落としている。
 病院の医師数は、週5日の診療のうち1日だけ勤務する非常勤医師も「0・2人」などと数えて算出する。福島県は元々、慢性的な医師不足で、震災前の10年も40位(124・7人)と低迷していた。
 県によると、県内の非常勤を除いた全医師数は、11年3月1日時点で2024人だった。震災と原発事故で県外への流出が相次ぎ、12年8月1日時点で1945人となり、79人も減少。その後は回復傾向を見せ、今年8月1日時点で1989人まで戻した。各病院から寄せられた求人情報を県がホームページで一括掲載・募集する事業「ドクターバンクふくしま」や、今年5月の県立医大会津医療センター(会津若松市)の開所に伴う医師採用などが主な理由だ。
 それでも震災前より35人少なく、地域別では会津地方が41人増えた一方で、避難指示区域が設定された相馬地方は5人減、双葉地方が37人減と、浜通りの医療環境は依然として厳しい。
 県が3月に策定した第6次県医療計画では、病院や診療所などを含めた人口10万人あたりの医師数を、震災前より17人あまり多い200人という目標を掲げている。
 県地域医療課は、「復興には医師の確保が不可欠。関係機関と協力し、県内外の学生に医師免許を取得後、県内の病院で臨床研修をしてもらう取り組みなどを進めたい」としている。

新治療開発へ「がんバンク」開設…京大病院 indexへ

 京都大病院は4日、がん患者の血液や組織の一部を集め、電子カルテのデータとともに保存する「キャンサーバイオバンク」を開設すると発表した。
 9日から患者登録を始め、5年間で約5000人分を集める方針。保存する試料やデータは、新しい治療法や早期診断技術の開発などに役立てる。
 計画では、症例の多い胃がんや大腸がんなどを中心に、同病院の患者から同意を得た上で、定期的に採血し、検査や手術で切除した組織の一部の提供を受ける。試料は凍結保存し、症状や検査データ、治療内容などの患者情報を匿名化して登録する。研究利用の希望があれば、国内外の研究者や製薬会社にも提供する。

産婦人科・産科病院が減少…22年連続 indexへ

 厚生労働省は4日、昨年10月1日時点で産婦人科・産科を開設している病院は前年より8施設少ない1387施設だったと発表した。
 産婦人科・産科病院の減少は22年連続となる。
 小児科も43施設減の2702施設で19年連続の減少となり、いずれも過去最少を更新した。同省の2012年の医療施設調査・病院報告の集計結果で、同省は「少子化による出生数減少や医師不足に加え、夜間・休日の患者集中や訴訟リスクの増大などの厳しい環境が影響している」と分析している。
 病院数全体も1年間で40施設減少し、8565施設となった。一方、人口10万人あたりの病院の医師数は全国平均で「159・1人」となり、前年より3人増えた。都道府県別の最多は「227・2人」の高知で、最少は「109・9人」の埼玉だった。

集団移転先に医療廃棄物 宮城・山元町計画 indexへ

 宮城県山元町が計画する集団移転先の一つである宮城病院周辺地区の造成予定地で、点滴のビンや針などの医療廃棄物が見つかっていたことが3日、分かった。
 土地を所有する独立行政法人国立病院機構宮城病院は「予定地にある井戸の水質調査を毎月しており、汚染の可能性は低いと考えているが、速やかに適正に処理していきたい」としている。
 町や同病院によると、移転先として病院が市に売却予定の山林で5月、造成のための文化財調査の際に試掘したところ、約1メートルの深さから、点滴のビンやチューブ、針といった医療廃棄物がジュースの缶などの生活ゴミとともに発見された。その後の試掘で、医療廃棄物は半径十数メートルの範囲わたって埋められている可能性が高いことが分かった。
 缶に書かれた日付などから約30年前のものと推測され、医療廃棄物の処理方法が厳格化される1992年の廃棄物処理法改正前の可能性が高いという。町の計画では、宮城病院周辺地区8・5ヘクタールに、130戸の災害公営住宅や分譲宅地を整備する。町は「2014年度中の造成予定は、極力、遅らせないようにやっていきたい」としている。

出産受け付け きょう再開 茨城・水戸赤十字 indexへ

 水戸赤十字病院は3日、茨城県庁で記者会見を開き、休止してきた来年3月以降の出産予約受け付けを4日に再開すると発表した。
 産婦人科医8人を派遣している昭和大(東京都品川区)と県などが交渉した結果、6人が同病院に残ることが決まったため、来年3月以降も出産に対応可能と判断した。医師は2人減るが、正常経過の妊婦を近隣の開業医に任せるなどの役割分担で、リスクのある出産などを受け入れる「地域周産期母子医療センター」の機能を維持する。これまで妊婦10人が来年3月以降の出産予定日と判明し予約を断っていたが、再度希望があれば受け入れるという。
 同病院の満川元一副院長兼産婦人科部長は「妊婦や関係医療機関に迷惑を掛けたことをおわびしたい」と謝罪。「知事を先頭に、色々な大学にあたってもらうなど随分助けられた」と、行政の支援に謝意を表した。
 水戸市の高橋靖市長は「リスクのある妊産婦も診てもらえる方向で、安堵(あんど)している」とのコメントを発表した。

奈良県葛城市、医療費助成 中3まで拡大へ indexへ

 奈良県葛城市は、小学6年生までが対象の子供の医療費助成を、来年4月から中学3年生までに拡大する方針を決めた。入院だけでなく、通院も助成するのは、県内12市では初めてという。6日開会の定例市議会に条例改正案を提案する。
 同市は現在、6歳までの乳幼児医療費に加え、小学6年生までの入院と歯科診療を助成している。1医療機関あたり通院は1か月500円、入院は同1000円の自己負担が必要。
 来春からは、小学生の通院、中学生の通院と入院、歯科診療も助成する。市内の中学生は約1100人おり、年間約3000万円の支出増が見込まれ、事務経費の削減などでまかなう。
 山下和弥市長は「子育て世代の負担を軽減し、近い将来、経済活動を担う子供たちに多く住んでもらいたい」としている。
 県によると、県内では山添村が高校卒業まで、斑鳩町など14町村が中学3年まで助成。奈良市など4市は中学生について、入院のみ助成対象にしている。

「さい帯血移植」世界で初めて1万例超える indexへ

 日本さい帯血バンクネットワークは2日、白血病などの患者に対して行う「さい帯血移植」の治療数が先月、世界で初めて1万例を超えたと発表した。
 さい帯血とは、へその緒(さい帯)や胎盤に含まれる血液。白血球や赤血球、血小板など様々な血液の成分を生み出す「造血幹細胞」が含まれており、白血病など重い血液の病気の治療に使われる。
 国内では1997年2月に始まり、現在は年間約1000例が行われている。先月29日、移植の累計数が1万例を突破した。
 同ネットワークは今月28日、東京・田町で医師や患者を交えた記念のイベントを行う。

H7N9型鳥インフルワクチン開発へ…厚労省 indexへ

 厚生労働省は2日、中国で今春、感染が広がった鳥インフルエンザ(H7N9型)のワクチンを開発することを決めた。
 同日開かれた専門家会議で了承された。今後、ワクチンメーカーに協力を求め、早ければ今月中にも開発を始める。
 H7N9型ウイルスの人への感染は今春、中国で初めて見つかった。先月11日までに中国と台湾で135人が感染し、44人が死亡したと報告されているが、人から人へと持続的に感染する状況にはなっていない。
 だが、厚労省は今後、パンデミック(世界的大流行)が起こる可能性は否定できないとしている。対応できるワクチンの大量生産や備蓄について計画を公表している国は現時点ではなく、同省は、緊急時にH7N9型のワクチンを製造できる体制を整える必要があると判断した。

医療事故報告の徹底を…総務省が厚労省に勧告 indexへ

 総務省は30日、医療事故の分析を行う公益財団法人「日本医療機能評価機構」の情報収集事業の調査結果を公表した。
 17の医療機関で2011年度に発生した事故(7150件)のうち、3%(229件)しか同機構に報告されていなかったことが判明し、総務省は同日、厚生労働省に対し、医療機関への指導徹底などを求める改善勧告を行った。17機関はいずれも大規模病院で、医療事故が発生した場合、同機構への届け出が義務づけられている。
 また、12年に126の医療機関を調査した結果、人工呼吸器が導入された64機関中34機関(53%)で定期的な研修が実施されず、呼吸器関連の医療事故が5件確認された。総務省は同日の勧告で、呼吸器を使用する全機関に研修を要請するよう求めた。

医療・介護費5兆円圧縮へ…予防や後発薬推進で indexへ

 厚生労働省は29日、2025年度までに約30兆円の伸びが見込まれる国民全体の医療・介護費を、5兆円程度圧縮して70兆円未満とする新目標を掲げることを決めた。
 生活習慣病の予防や、情報通信技術(ICT)活用の効果などにより、抑制を図りたい考えだ。
 医療・介護の給付費は、12年度現在約44兆円。団塊世代がすべて75歳以上になる25年度には、1・7倍の74兆円まで膨らむと推計されている。
 特定健診(メタボ健診)の受診率を向上させるとともに、健診結果と、治療内容が記録されたレセプト(診療報酬明細書)を分析し、生活習慣病の早期発見、治療につなげる。禁煙も推進して計2・4兆円を抑制する。価格の安い後発医薬品の使用促進で、1・1兆円の削減も見込む。

カルテ記載漏れで教授ら処分、リウマチ治療で死亡 indexへ

 学校法人産業医科大学(北九州市八幡西区)は29日、関節リウマチの治療中に悪性リンパ腫を発症するなどして患者10人が死亡する事例があったと発表した。
 医療行為としては問題なかったが、うち5人で患者へのインフォームド・コンセント(十分な説明と同意)として求められるカルテへの記載が不十分だったとして、診療責任者の医学部教授ら計8人を28日付で処分したことを明らかにした。教授は学内のセクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)とパワーハラスメント(職権による人権侵害)の問題と合わせ、9月11日から3か月の出勤停止処分とした。他の処分対象は、主治医4人と担当医3人で、いずれも口頭で厳重注意した。
 発表によると、患者10人が死亡したのは2009年6月~昨年9月。いずれも産業医科大学病院で抗リウマチ薬の標準治療薬である「メトトレキサート(MTX)」を使用した。専門医や弁護士ら5人による第三者委員会が5月10日付で同大に提出した調査報告では、「悪性リンパ腫発症の主たる原因は、免疫異常に起因するもので、MTXの影響は付随的なものに過ぎず、今回の使用は標準的治療の範囲内で、医療行為として不適切にはあたらない」とされた。
 ただ、同病院の医療安全対策マニュアルでは、MTXを増量する際、患者に説明して同意を得たかについてカルテに記載しなければならなかったが、患者5人(60代2人、70代3人)について記載していなかった。主治医らは同大の調査に対し、「カルテに書いていないだけで、本人には口頭で説明し、同意を得ている」と説明。担当の看護師や薬剤師も、同意を得ていることを文書に残していたという。
 また、教授は女性医師に対し、約10年前から酒席に誘って手を握ったり女性の誕生日に食事に誘ったりしたほか、過剰な労働を強制するなどした。教授はセクハラ・パワハラ行為は否定しているが、「本人に嫌な思いをさせたとすれば、不徳の致すところ」と話しているという。

薬投与量ミス・転倒…医療事故、最多2882件 indexへ

 医療事故防止などに取り組む日本医療機能評価機構は28日、2012年1年間に報告された医療事故の件数が、全国926医療機関で計2882件に上ったと発表した。
 同機構が1年分の報告件数をまとめ始めた05年以来、最多という。主な事故内容は、薬の投与量の間違いや移動時の転倒などだった。
 患者に影響はなかったものの、医療事故につながりかねない「ヒヤリ・ハット事例」の報告は昨年、559医療機関から計69万109件寄せられ、同じく過去最多となった。

手術ミスで患者死亡 和解…箕面市立病院 indexへ

 大阪府箕面市の同市立病院で昨年6月、肺がん手術中に男性患者(当時71歳)が死亡する医療事故があり、同病院は27日、遺族側に約3600万円の示談金を支払うことで和解が成立した、と発表した。9月4日開会の市議会に示談金支払いに関する議案を提出する。
 発表によると、昨年6月26日、男性の左肺の一部を切除する手術で、担当医が肺に空気を送るために気管支に針を刺した際、誤って針が気管支を貫通し、肺静脈に刺さった。しかし、ミスに気付かず、そのまま肺静脈に空気を送り、数秒後、男性は全身の血管内に空気が入り血流が止まる「空気塞栓症」を発症。約2時間後に死亡したという。

長崎大病院看護師の吉田さん、福島県立医大教員へ indexへ

 長崎大病院の看護師で、東日本大震災直後から福島県に入り、福島第一原発の原子炉建屋内の救護室で医療支援を行った吉田浩二さん(31)=写真=が、9月から福島県立医科大の教員に就任することになり、27日、長崎大の片峰茂学長に就任のあいさつを行った。
 長崎市出身で、祖父が被爆者の吉田さんは、2006年に長崎大病院に看護師として就職。10年からは同大大学院の放射線専門看護師養成コースで放射線看護について学んでいる。震災後は1年間で10回福島県に赴き、緊急被曝医療の支援を行ってきた。
 吉田さんは、福島に赴くたびに、放射線に関する医療従事者の知識不足を痛感していたが、1回あたり9日間の派遣期間では、十分な指導や知識の共有ができないことにもどかしさを感じていたという。福島県立医科大が、12年に開所した災害医療総合学習センターで、放射線被曝医療や放射線看護に関する指導者を募集することを知り応募した。
 任期は、15年3月までの1年半。同大の看護師や保健師、同大で被曝医療を学ぶ全国の医療従事者らへ講義を行う。吉田さんは「住民一人ひとりに寄り添える看護師を育成していきたい」と抱負を語った。

手足口病 福島県内でも流行 indexへ

 全国の乳幼児の間で猛威をふるっている手足口病が、福島県内でも流行している。
 夏に流行するウイルス性感染症の一つで、同じく代表的な病気「ヘルパンギーナ」も患者が増加。ほとんどは軽症で済むため、小児科医は「過度に心配する必要はないが、予防を心がけ、子供がぐったりするなど気になる症状が出た場合は受診してほしい」としている。
 福島市の「竹内こどもクリニック」の診察室。竹内真弓院長が、泣き声を上げる女児(1)の口の中をライトで照らし、喉の奥に水ぶくれを見つけた。「ヘルパンギーナですね」。同クリニックには、7月初めから手足口病とヘルパンギーナの患者が増え、現在も1日10人弱が訪れる。同じ保育所に通う子どもたちが連日、代わる代わる来院したこともあるという。
 集団生活を送る子どもは他人との接触機会が多く、感染が広がりやすい。この女児と姉(3)は保育所に通っており、姉も数日前に発熱し、喉の痛みを訴えていた。母親(35)は「食欲が落ちているのが心配。気をつけてはいたけど、完全に防ぐのは難しい」と話す。
 手足口病とヘルパンギーナは、いずれも「エンテロウイルス」というウイルスが原因で起こる。数種類の型があり、何度もかかる場合もある。毎年、夏から秋にかけて患者が増加する。
 今年は6月から手足口病の患者が増え始めた。県が18日までの1週間で県内45の小児科から報告を受けた患者数は452人。前週の1・2倍と勢いは止まらず、昨年同期の5倍となっている。特に郡山市(114人)やいわき市(102人)、県北地方(78人)で多い。1医療機関当たりでは10人と、深刻な流行レベルとされる5人を大きく上回る。
 ヘルパンギーナの患者も157人と前週より40人あまり減ったが、それでも昨年同期の4・6倍だ。県北地方(44人)や郡山市(37人)、会津地方(31人)で多く、1医療機関当たりでは3・5人と流行レベル(2人)を超えている。
 手足口病は、手足や口などに発疹が出るのが特徴だ。発熱を伴うことや、「EV71」という型の場合は脳炎など重症化することも。ヘルパンギーナは突然38~40度の発熱が2、3日続き、喉の奥に水ぶくれなどができるのが主な症状で、まれに髄膜炎や急性心筋炎を起こす。
 ともに有効な治療薬はなく、口内炎の薬や解熱剤などの対症療法となる。患者は子どもが中心だが、大人でも幼少時代にかかっていなければ発症し、症状も重くなる。県感染・看護室は、「今後も流行が続く可能性はあり、手洗いなど予防を心がけてほしい」と呼び掛けている。
 同じく夏に流行し、代表的なウイルス性感染症とされるのが咽頭結膜熱だ。プールを通じた感染が多いことから「プール熱」とも呼ばれ、結膜炎と発熱、喉の痛みを伴う。患者数は12人で、1医療機関当たりでは0・3人と多くはないが、感染力が強いため注意が必要だ。
 竹内院長は「手足口病などは子どもにとっての『通過儀礼』のようなもので、それほど心配する必要はない。症状が重くなることはまれだが、脱水症状を起こしたり物が食べられなかったりすることもあるので、様子を見て受診してほしい」と話している。
手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱

【特徴】
・患者のつばや、排せつ物を触った手を介して感染
・プールの水を介して感染(咽頭結膜熱に多い)
【主な予防法】
・流水とせっけんで十分に手を洗う
・タオルの共用をしない
・おむつ交換など排せつ物を扱う場合は、使い捨て手袋を使用


東京の国立病院、セレウス菌感染で2人死亡 indexへ

 国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)は22日、入院患者男女13人の血液中からセレウス菌の感染が確認され、うち2人が死亡したと発表した。
 同病院では院内感染とみて、感染源や感染経路を詳しく調べる。
 同病院によると、セレウス菌の感染が確認されたのは今年6月17日~8月21日の間。高熱の症状がある患者の血液を調べたところ、セレウス菌が確認された。
 感染した患者はいずれも進行がんで、抗菌薬の点滴や飲み薬などの治療を行ったが、男女2人が今月に入り死亡。7人は既に回復しており、4人は現在も治療を続けているという。
 同病院が今月14日から院内の医療器具などを調べると、感染者が発生した病棟などから、患者の体を拭くために使われる未使用のタオルからセレウス菌を検出した。この菌が、点滴時に挿入するカテーテル(管)を通じて、血液中に侵入した可能性もあるとみて、今後、外部の有識者も含めた調査委員会を作り、感染経路の特定などを進める。

「自家膵島移植」に成功 遺伝性膵炎で…阪大 indexへ

 希少な難病「遺伝性膵炎(すいえん)」の患者から膵臓を摘出し、インスリンを分泌する膵島だけを分離して患者の体内に戻す「自家膵島移植」に成功したと、大阪大病院(大阪府吹田市)の伊藤寿記・消化器外科兼任教授らのチームが21日、発表した。手術は今年7月3日、30歳代の女性患者に実施、経過は良好という。
 遺伝性膵炎は、遺伝子の異常が原因で、脂肪などを消化する膵液の働きが強くなり過ぎて膵炎を繰り返し発症、激しい腹痛を引き起こす。家族内で遺伝し、国内で数家系、計数十人の患者がいるという。
 患者女性は5歳の時から腹痛に悩み、膵臓の一部を摘出する手術や投薬を受けてきたが改善せず、食事ができないため静脈に栄養液を注入していた。
 手術では、膵炎の再発を防ぐため、女性の膵臓全体を摘出。そのままでは、インスリンの分泌ができず、糖尿病のように血糖値が乱れるため、特殊な薬剤で膵臓中に散在する膵島だけを分離し、肝臓につながる血管に膵島を注入した。その結果、膵島は肝臓内の細い血管に定着し、インスリンを分泌し始めた。自家膵島移植の実施例は国内で数例しかなく、遺伝性膵炎に対する治療は初めてという。
 記者会見に同席した患者女性は「口からものを食べられるのがうれしい。痛みから解放されてよかった」と話した。伊藤教授は「自家膵島移植は、膵炎を繰り返す患者に対する治療の選択肢となりうる」と述べた。
 国立国際医療研究センター研究所(東京)の霜田雅之・膵島移植プロジェクト研究長の話「欧米では慢性膵炎の治療で自家膵島移植が広まっている。遺伝性膵炎に限らず、慢性膵炎の治療手段として普及が期待される」
 ◆膵島 膵臓の中にあり、血糖値を下げるホルモン「インスリン」を分泌する細胞の塊。直径0・3ミリ・メートルの球状で、通常は膵臓全体に100万個程度が散在する。ランゲルハンス島とも呼ばれる。

精神科患者500人を州外に追い出す…米の病院 indexへ

 米ネバダ州が運営するラスベガスの精神科病院が、多数の患者を一方的に州外に送り出していたとして、隣接するカリフォルニア州のサンフランシスコ司法当局は20日、ネバダ州司法長官に対し、到着地の自治体が負担した医療費などの返還に応じなければ、ネバダ州を提訴すると通告した。
 サンフランシスコ司法当局は今年4月、他の自治体と共に調査を開始。2008年以降、約500人の患者が長距離バスの切符を渡され、カリフォルニア州の各都市に送られていた。
 多くは到着地に家も身寄りもなく、24人が送られたサンフランシスコは医療費などに約50万ドル(約4900万円)を使ったという。
 ネバダ州は「大部分の患者の退院は適切だった」と反論、今回の通告には「対応を検討中でコメントできない」(司法長官事務所)としている。

「1人看護師」打ち切りへ…宮城・石巻の事業所 indexへ

 被災地の特例措置により、看護師1人で開業している石巻市の訪問看護事業所について、特例措置が10月11日で打ち切られることが21日、決まった。
 特例措置の終了後も経過措置として当面、現在の利用者の介護保険を使った訪問看護は続けられる。ただ、看護師を増やして通常の基準である常勤換算で2・5人以上を目指すことを求められ、通常基準を満たすまでは新たな利用者の受け入れはできない。
 石巻市で開業している看護師佐々木あかねさん(29)は「今後の対応については、経過措置などの細かい点が明らかになってから決めるが、事業は何とか続けていきたい」と話している。
 特例措置の延長について検討する社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の介護給付費分科会が21日、東京都内で開かれた。現在、看護師1人の事業所が開設されている石巻市と福島県南相馬市が、「他の事業所で、新たな利用者の受け入れが可能」として、特例措置の延長を求めていないことなどから、厚生労働省が特例措置を10月11日までとする案を示し、了承された。

生後1か月女児に10倍の抗生物質、足の指壊死 indexへ

 兵庫県は21日、県立こども病院(神戸市須磨区)で、生後1か月の女児に誤って通常の10倍の量の抗生物質を投与し、副作用のために足の指3本を壊死(えし)させる医療ミスがあったと発表した。
 歩行に影響が出るとみられ、県は今後、補償する。
 県によると、先天性心臓疾患で入院し、発熱していた女児に対し、6月28日午前、30歳代の女性医師が抗生物質バンコマイシン40ミリ・グラムの投与を決めた。20歳代の女性看護師に準備を指示したが、正しく伝わらず、看護師は400ミリ・グラムを用意し、医師が右足首から全て点滴。1時間40分後、医師は女児の足の変色を見つけたが、ミスには気付かず、3日後に看護記録を調べて過剰投与が発覚した。バンコマイシンの血流を阻害する副作用のため、女児の右足の小指と薬指、中指の一部は壊死し、8月に切除した。

「1人看護師」存続危機…宮城・石巻 indexへ

 被災地の特例措置で、看護師1人での開業が認められた宮城県石巻市の訪問看護事業所の存続が懸念されている。
 9月末に期限を迎える特例措置の延長が、21日に東京で開かれる有識者の会議で了承されなければ、事業打ち切りを迫られる可能性がある。関係者は、地域で働く看護師を後押しできるとして、特例措置の継続を求めている。
 介護保険で訪問看護を行う場合、事業所には常勤換算で2・5人以上の看護師を置く必要がある。だが、震災後、1人で開業できる特例措置が設けられ、石巻市の看護師佐々木あかねさん(29)は今年1月、県内で初めて特例措置による開業が認められた。
 現在の利用者は9人。独り暮らしや、高齢の夫婦のみの家庭など「老々介護」も多い。佐々木さんは「被災し、うつの症状に苦しんでいる人もいる。震災で市立病院が病床を失い、訪問看護の必要性は高まっている」と語る。
 当初、2012年2月末までだった特例措置は、半年程度ずつ3回にわたり延長された。対象地域は段階的に狭められ、現在は今年3月時点で開業していた石巻市と福島県南相馬市のみとなっている。
 特例措置の延長は、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の介護給付費分科会で判断される。これまでの議論で、日本看護協会の委員らは「1人で24時間365日の対応ができるか疑問」などと延長に反対している。一方、認知症の家族会の委員らは「継続を希望する利用者や市町村がある以上、廃止すべきでない」などの意見を示している。
 21日の分科会は、利用者の要介護度や訪問看護の利用時間などの状況と自治体の意向を踏まえて決める。石巻市は「市内9か所の訪問看護事業所にアンケートを行い、今後は他の事業所で対応可能と判断した」と延長を求めていない。
 特例措置がなくなると、2・5人の人員基準を満たせなければ、事業を打ち切るほかない。佐々木さんは「病院やケアマネジャーを通じ、新たな依頼が舞い込んでくる。他の事業所の求人情報を目にすることも多く、訪問看護師が足りているとは思えない」と訴える。
 佐々木さんを支援する「開業看護師を育てる会」(神奈川県藤沢市)は約2万人の署名を集め、特例措置の延長などを厚労省に請願している。代表の菅原由美さんは「まずは1人でスタートし、利用者の増加に合わせ徐々に人員を充実させることが認められれば、開業しやすくなる。この仕組みを全国に広げ、地域で働く看護師を増やすべきだ」と話す。

甲状腺がん新たに6人 18歳以下検査 indexへ

 東京電力福島第一原発事故当時に18歳以下だった福島県内の約36万人に県が実施している甲状腺検査で、県立医大は20日、新たに6人が甲状腺がんと診断されたと発表した。これまでに公表した12人と合わせて、甲状腺がんが判明した子供は18人となった。
 同大の鈴木真一教授が福島市内で記者会見し、「腫瘍は成長の仕方から見て原発事故前からあったと考えられ、事故との関連性は低い」との見解を示した。既に18人全員が手術を受け、通常の生活を送っているという。
 甲状腺検査は2011年10月から始まり、今年7月までに21万6809人が受診した。超音波検査で一定の大きさのしこりが見つかった場合などに、より詳細な2次検査を行う。2次検査の対象者は0・6%の1280人。このうち44人が「悪性腫瘍」または「悪性腫瘍の疑い」とされ、18人ががんと診断された。

中津川市民病院が和解 昨年の医療事故2件で賠償…岐阜 indexへ

 中津川市民病院(安藤秀男病院長)は19日、昨年発生した2件の医療事故について、損害賠償を支払うことで和解したと発表した。
 同病院によると、昨年4月に致死率の高い重症尿路感染症・敗血症性ショックの治療を受けた恵那市の60歳代の女性患者が、手術後、薬の副作用で右足の一部が壊死(えし)した。また、同8月には、乳がんと診断された県内の50歳代の女性の左乳房を全摘する手術を行ったが、術後の検査で良性の腫瘍と分かった。薬剤を投与した後の経過観察が不十分だったことや、診断ミスが原因といい、安藤病院長は「患者さんやご家族に大変申し訳なく、深く反省している」と陳謝した。
 賠償額は、60歳代の女性が約1000万円、50歳代の女性は約450万円。同病院は「薬剤を使用した後の巡視確認、診断が難しい病変で複数の医師に意見を求めることなどを徹底し、再発防止を図りたい」としている。

不妊治療助成、42歳まで…16年度から indexへ

 不妊治療の公費助成の見直しについて議論している厚生労働省の検討会(座長・吉村泰典慶応大産婦人科教授)は19日、助成対象を「43歳未満」(42歳まで)とする制限を2016年度から全面実施することを決めた。
 現在は年齢に関係なく助成が受けられるため、治療中の人などに配慮した。同省では、これを受け、制度の要綱を改正し、来年度から段階的に新制度を導入する方針だ。
 現在は、年収730万円までの夫婦が、体外受精や顕微授精を受ける際に1回15万円(凍結した胚を移植する場合などは7万5000円)までの助成を受けられる。年齢制限はないが、初年度は3回、2年目以降は年2回、5年間で通算10回までの回数制限がある。

岐阜・大垣市民病院と医師会ネットで連携 新システム導入 indexへ

 岐阜県大垣市民病院で治療や検査を受けた患者の情報が、大垣市医師会に加盟する医師がインターネットを通じて見ることができる医療連携ネットワークシステムが始まった。
 県内の病院と医師会が、このような高度なネットワークシステムを導入するのは初めてという。
 大垣市民病院は、かかりつけ医に対し、紹介された患者のコンピューター断層撮影法(CT)や磁気共鳴画像(MRI)などの画像情報はこれまでも提供していた。ただ、データはCDに入力していたため、かかりつけ医に届くまで1週間程度かかっていた。
 新システムでは、検査結果や投薬情報のほか、市民病院に入院した場合の治療状況や退院後の治療上の注意点も入力される。患者がかかりつけ医に同意したデータについては市民病院が入力した時点で、すぐにかかりつけ医も見ることができるようになり、治療や相談に役立っている。
 昨年秋から試験的に始め、今年4月に本格的にスタートした。かかりつけ医16人が約1000人分の患者の情報を利用している。
 同医師会の山川隆司会長(63)は「長期間、患者さんを診ているかかりつけ医なら、システムを使って症状の進行状況などを的確に判断できる。市民病院退院後の治療や症状の変化の早期発見など、より質の高い医療を一貫して提供できる」と医師会内での広がりに期待している。

東京医歯大、国に免許登録前の6人が治療・調剤 indexへ

 東京医科歯科大は15日、国に免許登録される前の放射線技師4人と薬剤師2人に放射線治療や調剤をさせていたと、発表した。
 計1105人の患者が対象になったが、上司の指導の下で行われており、健康被害は出ていないという。
 同大は患者に謝罪し、6人と上司の処分を検討している。
 発表によると、6人は国家試験に合格して、4月に同大に採用された。7月までに放射線治療装置やレントゲン装置のスイッチを押したり、処方箋に押印したりするなど免許登録前にはできないことをしていた。
 同大による書類チェックで7月中旬に放射線技師1人の未登録が発覚、その後の調査で他の5人の問題もわかった。
 この5人は4~5月に登録を済ませたが、放射線技師1人は発覚まで未登録だった。同大は今後、免許登録の確認の徹底など再発防止策をとるとしている。

がん7000症例調査、22の特徴的変化を発見 indexへ

 世界7か国のがん約7000症例の遺伝子をしらみつぶしに調べ、がんでよく見られる22種類の遺伝子の変化を発見したと、国立がん研究センターなどの国際チームが15日、英科学誌ネイチャー電子版で発表する。
 がんのビッグデータを世界で共有し、解析した新しいがん研究の成果として注目される。
 解析したのは同センターの柴田龍弘・がんゲノミクス研究分野長ら、日欧米とオーストラリアの計7か国の研究チーム。肺がんや胃がんなど代表的な30種類のがん7042症例の遺伝子を網羅的に調べ、見つかった約500万個の遺伝子の変化の中から、各部位のがんに特徴的な遺伝子の変化を特定した。
 ほとんどのがんは、今回見つかった22種類中、いずれか2種類以上の遺伝子の変化が起きているという。肝臓がんと胃がん、子宮がんでは、主に6種類の変化が重なることがわかった。

心臓や目の手術でミス、病院は医師らに口頭注意…山形 indexへ

 日本海総合病院(山形県酒田市あきほ町)で昨年、心臓ペースメーカーを埋め込む際など、手術ミスが2件あったことが分かった。
 同病院によると、昨年4月、50歳代男性の心臓ペースメーカーの埋め込み手術で、器機を胸壁に固定しなかった。翌日、男性に事情を説明し、固定のための再手術を行った。
 同5月には、50歳代男性の白内障手術で、手術室にあった別の患者のレンズを移植した。手術中に間違いに気付き、正しいレンズと交換した。
 いずれも手術後、患者の日常生活に支障はみられないという。
 同病院は、手術を担当した医師や看護師に対し、手順の確認を徹底するように口頭で注意した。
 同病院は、手術ミスを6段階で評価し、ミスにより高度の後遺症が残るなどの「レベル4」以上を公表の対象としている。今回の2件は「レベル3」に該当するとして、公表していなかった。
 同病院医事課は「患者に苦痛を与えて申し訳ない。再発防止を徹底したい」としている。

献血でシャーガス病、国内初確認…製剤に使う indexへ

 厚生労働省は14日、中南米で流行しているシャーガス病が国内の献血で初めて確認されたと発表した。
 中南米出身の40歳代の男性から今年6月に採られた血から、シャーガス病を起こす病原体への感染でできる抗体や、病原体の遺伝子が検出されたという。
 同省によると、今回の献血分は出荷を差し止められたが、男性は昨年10月までに少なくとも9回献血しており、保存分を抗体検査したところ、いずれも陽性だった。9回分の献血は、赤血球製剤9本と血漿(けっしょう)製剤2本などに使われたといい、同省は日本赤十字社を通じて11本の製剤の使用実態を調べている。
 シャーガス病は、日本にはほとんど生息していないカメムシの一種のフンが傷口に入るなどして病原体に感染するといい、最大3割の患者は、10~20年後に重い心疾患や消化器疾患を発症するという。

診療情報共有システム始動下関市内の医療機関で試行運用 indexへ

 山口県下関市医師会などは、患者の同意を得られた診療情報を市内の医療機関が共有するシステムを構築し、12日、試行運用を始めた。
 医療機関の連携を促進しようと、地域医療連携情報システム下関協議会(会長=弘山直滋・医師会長)が国の補助金を活用し、専用のシステムを開発。「奇兵隊ネット」と名付けた。
 四つの総合病院(関門医療センター、県済生会下関総合病院、下関厚生病院、下関市立市民病院)が、患者の処方薬やレントゲン写真、血液検査の結果などを奇兵隊ネット上で公開。システムに参加する病院や医院などは、それらの情報を閲覧することができる。
 患者は自宅近くのかかりつけ医に行けば、総合病院で受診した内容や治療経過などを踏まえた診療を受けることができる。総合病院にとっても、患者の在院日数の短縮や病床の回転率の向上につながる利点があるという。
 協議会は9月から本格運用を始め、来年3月までに約100の病院や医院などが情報を閲覧することを目標にしている。弘山会長(58)は「医療機関が情報を共有することで、患者に安心感を与えることができれば」と期待を込める。

知っている人2割だけ…薬の副作用被害救済制度 indexへ

 薬の服用で副作用が出た場合に被害者に給付金が支払われる、国の「医薬品副作用被害救済制度」を知っている人は2割にとどまることが、医薬品医療機器総合機構の調査で分かった。
 知名度不足が、制度の利用が進まない原因になっており、同機構は「万が一、副作用被害にあった時に思い出せるよう、名前を知ってほしい」とPRしている。
 救済制度は製薬会社からの拠出金を財源に、被害者からの請求に基づき給付される。制度を運用する同機構は今年3月、20歳以上を対象にインターネットで、制度について質問した。3114人が答えた。
 その結果、制度を「知っている」は5・3%、「聞いたことがある」は15%で、79%は「知らない」と回答した。過去1年間に医療機関に行っていない615人では、87%が「知らない」と答えた。

入院患者の4割がん 日赤長崎原爆病院 indexへ

 日赤長崎原爆病院(長崎市茂里町)は、2012年度の被爆者診療の概況を発表した。入院患者で最も多い疾病は「悪性新生物(がん)」の780人で、全体の約40%を占め、1994年度以降の調査で最も割合が高くなった。朝長万左男院長は「被爆者の高齢化で、がんの発症が増加する兆候が見られる」と話している。
 病院によると、12年度の入院被爆者は、前年度より49人多い1960人。平均年齢は77・3歳(男性76・2歳、女性78・6歳)で、前年度を0・3歳上回った。
 疾病別では、がんに続いて、骨や関節の異常などの整形外科疾患283人、心筋梗塞などの心血管障害166人が多かった。
 がんの中で最も多かったのは肺がんの238人で、次いでぼうこうがん62人、前立腺がん57人と続いた。異なる臓器で発症する重複がんは30人で、うち29人が2重複がん、1人が3重複がんだった。
 朝長院長は「被曝(ひばく)線量が多い人に重複がんが発症する傾向にある。『もう治った』と思っても検診をしっかりと受けてもらいたい」とした。

風疹検査に希望者殺到、福岡市4か月で前年度の9倍 indexへ

 全国的な風疹の流行を受け、自治体の風疹抗体検査に希望者が殺到している。妊娠を望む女性や妊婦の夫らが対象で、福岡市では4~7月だけで2012年度の年間受検者数の9倍以上に急増。
 新たに無料の抗体検査を開始する自治体もあり、今月から始めた北九州市では予約が殺到して検査期間を延長するなど、各自治体が対応に追われている。
 5日朝、福岡市の西区保健福祉センター。午前9時の受け付け前から抗体検査の希望者が次々に訪れ、順番待ちは一時約20人に上った。近くの主婦(32)は「妊婦が風疹に感染すると胎児に障害が出る恐れがあると聞き、抗体があるのか不安になった。妊娠してからでは遅いので、検査に来た」と話した。
 市保健予防課によると、抗体検査は問診と採血で、民間の医療機関でも数千円で受けられる。市の検査料は760円で、市内7区の保健福祉センターで12年度に抗体検査を受けた人は226人。今年は4~7月の4か月で計2053人に上る。希望者の急増を受け、市は各センターで毎月1回行っていた検査を7月から2回に増やした。

長崎大での臓器摘出終了…15歳未満少女脳死 indexへ

 改正臓器移植法に基づき、脳死と判定された15歳未満の少女からの臓器摘出が10日、入院先の長崎大病院で無事終了した。
 日本臓器移植ネットワークによると、心臓が東大病院の10代男性、肺が東北大病院(宮城)の30代女性、肝臓が慶応大病院(東京)の30代女性、膵臓
すいぞう
と腎臓が名古屋第二赤十字病院の40代女性、もう片方の腎臓が国立病院機構長崎医療センターの50代男性に移植される。

5大学に寄付金11億円…高血圧薬データ改ざん indexへ

 高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究のデータが改ざんされていた問題で、真相究明などに当たる厚生労働省の有識者委員会(委員長=森島昭夫・名古屋大名誉教授)の初会合が9日、開かれた。
 データ操作を認めた慈恵医大、京都府立医大と、「意図的な改ざんの証拠はない」とする販売元のノバルティスファーマの調査結果の食い違いが改めて浮き彫りになった。
 また、元社員(今年5月退職)が研究に関与した5大学に、ノバ社から支払われた奨学寄付金が計11億円を超すことも明らかになった。
 会合には、5大学とノバ社の代表者らが出席。これまでの調査内容を報告した。京都府立医大と慈恵医大は「データ操作が認められた」「データ解析は元社員にまかせていた」などと説明。千葉大と滋賀医大からも「血圧のデータの4%でカルテとの違いがあった」「カルテからの入力ミスなど初歩的なミスがたくさん出ている」と調査の途中結果が報告された。一方、ノバ社は「元社員が意図的な改ざんを行った証拠は見つからない」と主張した。

15歳未満の少女を脳死判定…臓器提供へ indexへ

 日本臓器移植ネットワークは9日、脳に十分な酸素が供給されない低酸素脳症で長崎大病院(長崎市)に入院していた15歳未満の少女が改正臓器移植法に基づき、脳死と判定されたと発表した。
 15歳未満の脳死判定は国内で3例目で少女は初めてのケース。同病院で10日午前4時20分頃から臓器の摘出手術が行われ、心臓や肺、肝臓などの6臓器が移植される予定だ。
 同ネットワークによると、少女は先月31日、脳死とみられる状態になった。虐待の疑いはなく、家族が臓器提供の意思を示したことから、今月8~9日にかけ、2回、脳死判定を実施した。8日、両親ら親族が臓器提供の承諾書に署名した。
 少女の家族は、同ネットワークを通じ、「娘は看護師になりたいという夢があった。(本人が望んでいた)臓器提供で、人助けをしたいという願いに沿えるのではと家族みんなで考えた」などとコメントを発表した。

減胎手術の半数は08年以降…長野の産科医 indexへ

 主に不妊治療による双子や三つ子の多胎妊娠で、異常のある胎児を選んだ減胎手術を行ったことがわかった諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津八紘(ねつやひろ)院長は8日、大分県別府市で開かれた日本受精着床学会で、実施例の詳細を発表した。
 胎児の異常を理由に行った36件のうち18件(半数)が、日本産科婦人科学会(日産婦)が、体外受精での多胎予防を強化した2008年以降の5年間に行われていた。
 超音波検査などの出生前診断の普及で、胎児の異常が見つかるケースが増えていることが背景と考えられる。
 発表によると、同クリニックは1986年から2013年2月末までに1001件の減胎手術を実施した。921件(92%)は、他施設で多胎妊娠がわかり、受診したケースだった。

鳥インフル、ヒト間の感染を確認…中国が論文 indexへ

 【蘭州(中国甘粛省)】中国江蘇省の疾病予防コントロールセンターは6日、感染者が相次いだ鳥インフルエンザ(H7N9型)で、ヒトからヒトに感染したとみられる事例を確認したと英医学雑誌「BMJ」(電子版)に論文を発表した。
 感染力は弱く、感染拡大の恐れはないとしている。
 論文によると、江蘇省の60歳の男性から32歳の娘への感染を確認。男性は生きた鳥を扱う市場に出入りした後、3月11日に入院、5月4日に死亡した。娘は生きた鳥との接触はなく、3月21日に発症、4月24日に死亡した。2人が感染したウイルスを調べたところ、遺伝子がほぼ一致した。
 世界保健機関(WHO)は、家族の中で複数の感染者が出た事例はあるが、「ヒトからヒトに感染した証拠はない」としていた。

O157感染 女児が死亡…秋田県公表せず indexへ

 秋田県南地域に住む女児が7月、腸管出血性大腸菌O(オー)157に感染し、死亡していたことが7日、関係者の話でわかった。
 抵抗力の弱い子供などに起こりやすい溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発したという。県内でO157による死亡例は、2006年以来2人目。ただ、県は「県が策定したマニュアルに規定がない」として、死亡の事実を発表していない。
 県は、女児のO157感染が判明した段階で、感染の事実を発表している。それによると、女児は先月17日から腹痛や嘔吐(おうと)などの症状を訴え、22日に感染が判明。入院して治療を受けていた。
 その後、女児は死亡したが、県は死亡の事実、性別、年齢、居住地、死亡日時など一切を発表していない。県健康推進課の成田公哉課長は11年3月に改正した県健康危機管理感染症マニュアルで、腸管出血性大腸菌の場合、2人以上の死亡で公表すると定められた基準を説明。「死亡者が1人の場合の公開基準はマニュアルに書かれていない」と話した。
 さらに、遺族から「話してほしくない」と要望があったため、取材に対しても、死亡の事実以外は明らかにしないという。感染時の発表については、「公表の基準があるため」と説明した。
 現在のマニュアルでは、女児の死亡は発表されないままになる。成田課長は「健康福祉部内で議論した結果、公益性より個人情報保護が勝ると判断した。ただ、このままでいいのかは、マニュアル改正を含めて検討したい」としている。

腸管出血性大腸菌1か月36件感染、5年で最多…群馬 indexへ

 群馬県は6日、腸管出血性大腸菌感染者の届け出が7月の1か月間で36件に上り、過去5年間で最多だったと発表した。
 8月3日には、高崎市箕郷町上芝の介護付き有料老人ホーム「ベルジ箕輪」に入所していた90歳代の女性1人が死亡するなど引き続き流行しているとみられ、県保健予防課が注意を呼びかけている。
 O(オー)157、O26、O111などを含む腸管出血性大腸菌の感染者は、1月から8月4日までで53人。近年の1か月当たりの感染報告は、2009年8月の16件が最多だった。
 同課によると、腸管出血性大腸菌の潜伏期間は3~9日間で、発熱、下痢、腹痛、血便などが主な症状。少ない菌でも発症することがあり、抵抗力の弱い高齢者や子どもが感染すると重症化する可能性がある。
 よく手を洗い、肉は十分加熱し、調理器具も使用の度に洗浄することなどが予防策。同課は「下痢や腹痛などの症状のある人は速やかに医療機関を受診するなど、他人にうつさないように心がけてほしい」としている。

乱立指摘の専門医、統一認定の第三者機関発足へ indexへ

 学会ごとに認定しているため、質のばらつきや乱立が指摘されている「専門医」を、新たに統一して認定する第三者機関が10~11月に発足することが6日、準備委員会の初会合で決まった。
 組織名は「日本専門医機構」になる見通し。
 専門医については今春、厚生労働省の有識者検討会が、学会から独立した第三者機関で認定する仕組みに改める方針を決めていた。
 準備委員会初会合には、日本医学会、日本医師会などが参加。新たに専門医に加える「総合診療医」については、歴史が浅く、教育内容も確立していないことから、特化した育成委員会を設けることにした。
 新たな認定の仕組みは、「内科」「外科」「産婦人科」「小児科」などの基本領域と、さらに細分化した領域で構成される。具体的に、どの診療科を入れるかは第三者機関で議論する。2017年度に新研修制度をスタート、20年度の新専門医誕生を目指している。

異常胎児選んで減胎手術36件…長野の産科医 indexへ

 出産の危険が高まる双子や三つ子などの多胎児を妊娠した際、胎児の数を減らす減胎手術の実施を公表している諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町、根津八紘院長)で、異常が見つかった胎児を選んで手術を行ったケースが、これまでに36件あることがわかった。
 8日から大分県別府市で開かれる日本受精着床学会で発表される。母体保護法は減胎手術について定めておらず、国も具体的な指針を作っていないが、こうしたケースが初めて明らかになったことで、今後、議論を呼びそうだ。
 同クリニックによると、減胎手術の理由は、ダウン症などの染色体の病気が25件、胎児のおなかや胸に水がたまる胎児水腫などの病気が11件だった。31件が不妊治療による妊娠だった。
 いずれも、夫婦が「減胎できなければ、すべての胎児を中絶する」との意向を示したという。今回の減胎手術について、根津院長は「一人でも命を助けるために、やむを得ず行った」としている。
 ◆減胎手術=多胎妊娠となった場合に、母子の安全性を高めるための処置として始まった。超音波で確認しながら、子宮内で一部の胎児を心停止させる。通常、胎児の異常がほとんどわからない妊娠初期(12週未満)に行われる。

臨床研究の不正に罰則…政府が新法を検討 indexへ

 政府は、製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究でデータ改ざんが相次いで発覚した問題を受け、臨床研究を規制する新法を制定する方向で検討に入った。
 新法は、臨床研究のカルテなどのデータ保存や国への届け出を義務づけ、違反には罰則を設ける内容となる見通しだ。
 厚生労働省は、改ざんの実態解明と再発防止策を検討する委員会を設置し、9日から議論を開始する。政府は委員会の結論を踏まえ、新法に関する詰めの検討を行う。
 現行制度では、新薬の承認審査に必要な「治験」の場合、薬事法で国への届け出やデータ保存が義務づけられており、不正な行為には承認取り消しや治験の中止、罰金などが科される。だが、臨床研究には倫理指針があるだけで、規制する法律はなく、指針に反しても処罰されない。

患者の診療情報、全国で共有…ネットワーク構築 indexへ

 厚生労働省は、患者の治療歴や処方薬などの診療情報を病院・診療所で共有するネットワークの構築に乗り出す。
 医療機関で広く普及しているレセプトコンピューターを使い、全国の医療機関などで情報の閲覧が可能となる。データの共有化で、転院や在宅療養への移行がスムーズになり、患者の利便性の向上や健康増進につなげる狙いがある。2018年度までの展開を目指す。
 レセプトコンピューター(レセコン)は、医療機関や調剤薬局が医療費請求に使う情報端末。診療報酬明細書(レセプト)作成ソフトを搭載している。国内の病院・診療所の約8割にあたる約8万9000施設が保有し、患者名、病名、手術や治療法、処方薬などのデータを入力している。
 厚労省によると、まず地域で病院、診療所、薬局がネットワークを構成し、参加施設は患者の同意を得た上で、レセコンのデータの一部をネット上に登録。患者の治療を引き継いだ別の医療機関の医師などが、必要に応じて治療歴や処方薬などを閲覧できる。地域単位のネットワークを結べば全国での情報の共有が可能になる。

小児がん患者、3年で8902人…最多は白血病 indexへ

 国立がん研究センター(東京都中央区)は、2009~11年の3年間に、がん診療連携拠点病院を新たに受診した小児がん(受診年齢20歳未満)患者が8902人だったと公表した。
 最も多かったのは白血病(2454人)で、脳腫瘍(2025人)、リンパ腫(780人)、胚細胞腫瘍(737人)の順だった。
 わが国の小児がんはこれまで、大人のがん分類に基づいた集計しかなく、診療実態がよくわかっていなかった。今回初めて、国際小児がん分類に基づいた集計を行った。
 小児がんの年間発症者数は3000人程度と推定されている。拠点病院には小児専門の「こども病院」が含まれていないが、ほとんどの小児がん患者をカバーしているとみられる。また、拠点の病院の中でも、大学病院が小児患者の7割を担っている実態もわかった。

手足口病患者が急増10万人…最悪ペースに迫る indexへ

 乳幼児らの口の中や手足に発疹が出る「手足口病」が全国で猛威を振るっている。
 患者の報告数は10万人に達し、国が集計を始めた1999年以降、最悪だった2011年に迫るペースで増え続けている。4人に1人の割合で重症化につながるウイルスが検出されており、流行のピークを前に厚生労働省は手洗いなど予防策の徹底を呼び掛けている。
 厚労省によると、全国約3000の小児科医療機関からの報告では、今年に入ってから7月21日までの患者数は10万5936人。同日までの1週間だけで2万5000人以上が発症し、1医療機関あたりの患者数は、昨年同期の約8・3倍にあたる8・09人となり、過去最悪だった11年に次ぐ高水準になっている。

医療費の窓口負担増加へ…消費増税8%時に indexへ

 厚生労働省は2日、来年4月に消費税率が8%に引き上げられた場合、医療機関の負担を軽減するため、初診料や再診料などに診療報酬を上乗せする案を中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会に示し、大筋で了承された。
 増税れれば、2014年度から患者の窓口負担が増える見通しだ。
 保険医療機関の医療費は非課税のため、設備投資や仕入れで生じる消費税負担は医療費に転嫁できない。厚労省案は、増税分の診療報酬を上乗せし、税負担を和らげるものだ。
 消費税導入時と5%引き上げ時には、医療機関の消費税負担が大きいとみられる支出項目に絞って診療報酬を上乗せした。分科会では、この案と初診料などに上乗せする案とセットで実施する方向で検討する。

手足口病 猛威続く、大分・山口が突出 indexへ

 子供らの手や足、口に水ほうができる手足口病が流行する中、九州・山口8県の患者の多さが目立つ。
 8県の定点医療機関の平均患者数は、いずれも国の警報基準レベル(5人)を超え、大分、山口県が約12・6人、福岡県が約8・4人など。患者報告数を昨年同期と比べると山口県が約300倍、大分、福岡県が約40倍。多くは軽症で治るが、脳炎などになるケースもあり、国は「急にぐったりした場合はすぐ医療機関を受診してほしい」と呼びかける。
 国は手足口病について、全国に約3000ある定点医療機関からの患者報告数を毎週集計している。国立感染症研究所(東京)によると、手足口病はもともと夏場に増加する傾向が強いが、今年は例年を大幅に上回るペースで推移。過去10年間で最多だった2011年に次ぐ水準になっている。
 九州・山口8県はいずれも5月の時点では警報レベルを下回っていたが、6月上旬から急増した。特に大分県は7月8~14日の週の平均患者数が全国最多、山口県も2番目になった。7月15~21日の週は大分県が埼玉県や東京都に次いで3番目、山口県が4番目。この週は九州・山口8県のうち6県が全国平均(約8・1人)を上回っている。

低血糖起こす糖尿病患者、心筋梗塞リスク高い indexへ

 糖尿病患者が、服薬などで重い低血糖を起こした場合、起こさなかった人に比べ、心筋梗塞や脳卒中を起こす危険が2倍高まるとする研究成果を、国立国際医療研究センター糖尿病研究部の後藤温上級研究員らがまとめた。
 英国医師会誌に31日、発表した。
 研究グループは、米国などで行われた6つの研究の糖尿病患者計約90万3500人分のデータを解析した。その結果、血糖値が下がりすぎて意識を失うような重い低血糖を起こした人は、起こさなかった人より2・05倍、心筋梗塞や脳卒中を起こす危険が高かった。
 低血糖を起こす患者の中には、感染症などほかの重い病気を患う人もいる。研究グループは、これらの影響も考慮して分析したが、低血糖が、心筋梗塞や脳卒中の直接の発症リスクとなることは否定できなかった。

看護師4人 結核発病…千葉 indexへ

 国立病院機構千葉医療センター(千葉市中央区)は31日、20歳代の女性看護師4人が結核で発病したと発表した。患者への二次感染は確認されていないが、同センターでは入院患者692人に対し、今後無料で検査を行う。
 発表によると、昨年9月からせきをし、当初はマイコプラズマ肺炎と診断された女性看護師から6月10日、結核菌が検出され、同13日に結核と断定された。その後、同センターが同僚の医師や看護師ら54人を検査したところ、13人が結核に感染し、うち3人の女性看護師が発病した。感染の経緯は特定できていない。
 同センターでは今後、最初に発病した女性看護師が勤務していた病棟に入院し、勤務を続けていた期間に接触があった可能性のある患者計692人に対し無料で結核の感染検査を行う。同センターは電話相談窓口(043・251・5311)を開設。平日は午前9時~午後9時、土日、休日は午後5時まで受け付ける。

水俣病救済確定は年明け以降 申請締め切りから1年 indexへ

 水俣病被害者救済法に基づく救済措置の申請締め切りから31日で1年がたった。
 申請者は熊本、鹿児島、新潟の3県で当初想定の約3万人を大幅に上回る6万5151人で、うち県内は4万2961人。その分、いまだに審査が続いており、救済対象者の確定は年明け以降になりそうだ。
 救済法は2010年5月から12年7月末まで申請を受け付けた。手足の感覚障害など単一の症状でも、八代海沿岸部などの対象地域に一定期間住んでいたことを証明できれば、一時金210万円と、医療費が無料になる被害者手帳を交付している。
 熊本県の場合、医師ら10人による審査会が、申請者の資料と公的検診の結果を材料に救済の可否を判定している。
 ただ、申請者が予想を大幅に上回ったことに加え、対象地域に一定期間住んでいたことの証明となる資料を提出してもらう作業も審査に時間がかかる要因になっている。対象地域の周辺に住んでいた申請者の場合、汚染された魚を多食したことを示す必要もあり、さらに困難だ。
 申請者に資料の収集などについて助言している同県水俣病保健課田中義人課長は「戸籍謄本、勤務証明、母子手帳など八代海が汚染されていた40年以上前の資料を集めるのは容易ではない」と説明。このため、自分や近親者宛ての手紙、写真も状況証拠として認めている。
 田中課長は「できるだけ多くの申請者が救済されることが県としても理想。なるべく丁寧に、かつ、なるべく迅速に審査を完了させたい」と話すが、「年内に全て終えるのは困難」としている。
 一方、救済が認められなかった人の間では不満がくすぶっている。
 被害者団体「水俣病不知火患者会」(水俣市)からは約4000人が申請したが、救済されなかった人が続出したという。うち、48人は6月、国、県、原因企業チッソに損害賠償を求めて熊本地裁に提訴した。9月以降、数百人の会員が追加提訴する方針だ。
 同会の中山徹事務局長代行は「申請した多くの会員が、資料を正当に評価されずに切り捨てられたり、公的検診で症状をないものとされたりしている。県が言うような丁寧な審査が行われているとは、思えない」と批判している。

元社員のデータ改ざん濃厚…高血圧薬・研究論文 indexへ

 製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」の大規模臨床研究をめぐる問題で、慈恵医大の調査委員会(委員長=橋本和弘・同大医学科長)は30日、同大の研究論文に関する中間報告書を公表した。
 論文の基となった血圧に関するデータが、改ざんされたと結論づけた。
 調査委は「データの解析や図表の作製を同社の元社員(今年5月退職)1人に任せきりにしており、大学は関与していない」と説明し、「(データ改ざんに)元社員の関与が強く疑われる」と指摘した。元社員は今月下旬、調査委に、「解析のアドバイスをしただけ」と関与を否定しているという。
 調査委は2007年に英医学誌「ランセット」で発表した論文を「撤回することが妥当」と判断した。
 ディオバンの臨床研究は、血圧を下げる本来の効果とは別に、脳卒中や狭心症など心血管疾患への効果を検証するために国内5大学で行われた。慈恵医大では02~05年、循環器内科の望月正武教授(当時)が主導した。高血圧患者3081人について、ディオバンを使ったグループとディオバン以外の薬を使ったグループに分け、血圧を下げた。
 その後足かけ4年にわたり経過観察し、脳卒中や狭心症など重い心血管疾患が起きた割合を分析したところ、ディオバンを使ったグループが発症する割合は、他のグループに比べ39%少なかったとまとめた。
 同大の調査委が、研究に使ったデータと大学に残っていたカルテを照合したところ、大学が保管していた671件分の血圧のデータ中、最高血圧が86件(12・8%)で一致しなかった。二つのグループの血圧のばらつきを小さくし、研究の精度が高く見えるように改ざんした疑いがあるという。

高額療養費、高所得70歳未満の負担上限上げへ indexへ

 厚生労働省は31日、高額な医療費の自己負担を一定限度額に抑える高額療養費制度で、70歳未満の高所得者の負担限度額を引き上げる方針を固めた。
 低所得者に対しては限度額を引き下げ、負担を軽くする。新たな限度額は、同省の社会保障審議会で近く検討した上で、政令を改正し、2014年度の導入を目指す。
 政府の社会保障制度改革国民会議は8月上旬にまとめる最終報告書で、社会保障の負担を「能力別」の原則によって行い、高所得者には負担増を求める一方、低所得者の負担軽減を進めることを明記する見通しだ。高額療養費制度の見直しはこの方針に沿ったものだ。
 高額療養費制度は、所得水準と1か月の医療費に応じて、支払う上限を決めている。所得水準は70歳未満の場合、「高所得者」「一般所得者」「低所得者」の3段階で区分している。70歳未満で月収53万円以上(賞与は除く)などの高所得者の医療費が100万円だった場合、現在の1か月の負担限度額は15万5000円だ。窓口負担は3割の30万円のため、差額の14万5000円が公的医療保険から払い戻される。

「手足口病」患者、昨年の8.3倍に…感染研 indexへ

 乳幼児らの手や足、口内の粘膜に水ほうができる「手足口病」の患者が急増し、昨年同期の8・3倍に達していることが、国立感染症研究所のまとめで30日分かった。
 手足口病はエンテロウイルスが原因で起き、大部分は軽症で治る。だが、今年は髄膜炎や致死性の脳炎を引き起こすことがある「EV71型」のウイルスが4分の1を占めるため、同研究所は「急にぐったりした場合などはすぐ医療機関を受診してほしい」と呼びかけている。

肺がん検診結果 36人に誤通知…大阪・門真市 indexへ

 大阪府門真市は30日、6月に実施した肺がん検診の受診結果を取り違え、本来は精密検査が必要だったのに異常なしと記載するなど36人に誤った結果を通知していたと発表した。同市は全員に謝罪したという。
 同市健康増進課によると、検診は40歳以上の希望者を対象に委託業者が実施。6月26日の受診者237人と27日の218人の胸部X線検査の所見が入れ替わってしまったという。
 実際は経過観察が必要だった10人と、精密検査が必要だった8人に「異常なし」と伝えた。結果に異常がなかったのに「要精密検査」「経過観察」とされた人が18人いた。
 今月24日、要精密検査の判定を受けた受診者がレントゲン写真の貸し出しを求めた際、ミスが発覚した。
 市は「誠に申し訳ない。今後は業者への指導を徹底し、再発防止に努めます」としている。

不妊治療の助成見直し、年齢制限「42歳まで」 indexへ

 不妊治療の公費助成の見直しについて議論している厚生労働省の検討会(座長・吉村泰典慶応大産婦人科教授)は29日、助成対象を「43歳未満」(42歳まで)とすることで合意した。
 現在最大10回認められている助成回数は6回とする。近く開かれる次回会合で、実施に向けた移行期間を何年とするかを決めたうえで、報告書としてまとめる。
 この日の会合では、対象年齢を「43歳未満」とする場合と、「40歳未満」とする場合の2通りの案が示された。
 「43歳未満」とする案は、妊娠率は年齢とともに低下するのに加え、43歳以上では流産率が50%を超え、出産に至る割合は50回に1回となることや、お産での赤ちゃんや妊婦の死亡率も大幅に増えることなどが理由に挙げられ、会合で妥当とされた。

データ改ざん、「証拠見つからず」と製薬会社側 indexへ

 製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究をめぐる問題で、同社は29日、外部専門家による調査結果を発表し、同社の元社員がデータの解析や臨床研究計画だけでなく、論文の執筆にも関わっていたことを明らかにした。
 これまでに臨床研究でのデータ操作や改ざんが判明しているが、元社員の関与については、「証拠は見つからなかった」とした。
 この問題では今月11日、臨床研究を実施した京都府立医大が「明らかなデータ操作があった」としており、誰が、なぜ操作したかが焦点だった。だが、今回の調査でも手がかりは得られなかった。同社は、「臨床研究の信頼性を揺るがしかねない事態を生じさせた」などと謝罪し、今後、臨床研究を行った全5大学と協力して、真相究明を進めたいとした。
 調査は、スイスにある同社の本社が国際的な法律事務所に依頼し、今年4月下旬から実施。臨床研究に関係した元社員や当時の上司ら計17人から聞き取り調査をしたほか、会社のパソコンに残っていたメールやデータなど15万点以上の文書を調べた。元社員については、私有パソコンは調べておらず、5月に退職して以降は聞き取り調査をしていない。

iPS臨床研究、先端医療センターが実施を決定 indexへ

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)で目の難病「加齢黄斑変性」を治療する臨床研究について、細胞の移植手術を行う病院を運営する先端医療センター(神戸市)は29日、実施を決めた。
 国が19日に実施を了承したことを受けた。共同で研究にあたる理化学研究所は25日に実施を決めており、研究を始める条件が整った。
 臨床研究では、理研発生・再生科学総合研究センター(同市)の高橋政代・プロジェクトリーダーらが、患者の皮膚からiPS細胞を作製。網膜の細胞に変化させてシート状に加工し、患者の目に移植する。手術は来夏にも行われる。

C型肝炎治療薬を併用、悪性前立腺がんに効果 indexへ

 抗がん剤が効かない前立腺がんに対し、C型肝炎の治療薬を合わせて投与すれば、抗がん剤が効くようになる可能性が高いことがわかったと、慶応大と産業技術総合研究所の研究チームが日本癌(がん)学会誌の電子版に発表した。
 悪性度の高いがんの治療法開発に生かせると期待される。
 須田年生慶大教授らは、抗がん剤が効かない前立腺がんとの関連が知られる遺伝子「Oct4」に着目。Oct4の働きが強い悪性度の高いがん細胞を選び出し、通常のがん細胞と比べて悪性化にかかわる遺伝子を調べた。
 約1300の薬の候補物質によるがん細胞の遺伝子への影響をまとめたデータベースを活用し、がんの悪性化にかかわる遺伝子の働きを抑えられる見込みの候補物質を探し、9の候補物質を見つけた。その一つであるC型肝炎の治療薬「リバビリン」を、抗がん剤と合わせて、悪性度の高い前立腺がんを背中に移植したマウス6匹に投与。がんは2週間後、当初の平均150立方ミリ・メートルから同190立方ミリ・メートルに若干大きくなったが、抗がん剤だけ投与して同300立方ミリ・メートルになったケースよりも進行を抑制できた。

陽子線照射 がん治療…岡山大 indexへ

 岡山大と津山中央病院(岡山県津山市川崎)は26日、放射線の一種、陽子線を照射してがんを治療する「がん陽子線治療センター」を共同で同病院に設立すると発表した。
 同様の医療施設は中四国で初。2016年3月の開業を目指し、開業後は年間200~300人の治療を予定している。
 陽子線治療は、X線を使った従来の放射線治療に比べ、正常な臓器で放射線障害が起きにくく、副作用が少ないとされる。治療に健康保険は適用されず、費用も250~300万円かかるが、民間医療保険の特約を使って受ける患者が増えているという。
 岡山大は同大学病院でのセンター設置を検討していたが、資金面で難航。津山中央病院から設置の申し出があり、共同で設立することにした。
 センターは3階建てで、延べ約3600平方メートル。建設費と治療装置費など約50億円は同病院が負担する。また、同病院は大学に寄付講座を開設。寄付講座の大学教員ら約5人がセンターで治療や研究を行う。
 大学で開かれた会見で、津山中央病院を運営する財団法人津山慈風会の浮田芳典理事長は「津山に患者が滞在、治療することで、県北の活性化にも貢献できれば」と話していた。

iPS臨床研究、実施を正式決定…理化学研究所 indexへ

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)で目の難病「加齢黄斑変性」を治療する臨床研究が国の了承を得られたことを受け、理化学研究所は25日、研究の実施を正式決定した。
 手術を担当する先端医療センター(神戸市)が実施を決めれば、研究を始める条件がすべて整う。同センターの決定は今月末になる見通しだ。
 臨床研究では、理研発生・再生科学総合研究センター(同市)の高橋政代・プロジェクトリーダーらが、患者の皮膚の細胞からiPS細胞を作り、網膜の細胞に変化させてシート状に加工。隣接する先端医療センター病院で、患者の目に移植する手術を行う。

ディオバン研究データ保存…厚労省・文科省 indexへ

 高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究のデータ改ざんが問題となるなか、臨床研究の倫理指針見直しなどを議論する厚生労働省と文部科学省の有識者合同会議は25日、研究機関側に研究データの長期保存を求める方針を固めた。
 研究結果の信頼性に疑念が持たれた際に検証できるようにするのが狙いだ。
 両省では、臨床研究や疫学研究で研究者が守るべき事項を倫理指針で定めている。現行指針には、研究データなどの記録の保存を求める記載はないため、データの長期保存を求めるように見直すことで意見が一致した。有識者会議は8月に見直し案の中間取りまとめを行い、改正指針は来年度中にも施行の見込みだ。
 一方、ディオバンを巡るデータ改ざん問題の実態究明と再発防止策の本格的な検討は、8月上旬に設置される田村厚労相直轄の有識者委員会で行われる。

電子カルテ「天才肌」東大教授なぜ…業者密接か indexへ

 医療現場の効率化を図る電子カルテの「権威」とも呼ばれた東大教授に、国の研究費をだまし取った疑いが浮上した。
 25日、東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕された秋山昌範容疑者(55)。医療のIT化に情熱を注いできた教授の突然の逮捕に、大学や医療関係者からは「信じられない」と驚きの声が上がった。
 ◆斬新発想、天才肌
 「医療とITの世界をつなげた、まれな才能を持つ人。突然の逮捕で驚いた」。秋山容疑者と10年近い付き合いのあるIT企業の社員は、こう話す。
 出会った頃の印象は「エネルギッシュで、情熱的な人」。秋山容疑者がかつて勤務していた国立国際医療研究センター病院(東京)でIT技術を使った医薬品発注システムを導入したと聞き、話を聞きに行くと、「薬の発注から患者への投与までバーコードで管理する。入力不要だから、医療過誤をなくせる」とまくしたてるように力説したという。
 秋山容疑者が医療IT化の分野で有名になったのは、同病院で電子カルテの導入などに取り組んだ1990年代後半以降。電子カルテのシステム作りの専門家として、厚生労働省の検討会などにも参加した。
 会議では、専門知識の深さや斬新な発想で度々周囲を驚かせたといい、当時を知る同省関係者は「頭の回転が速く天才肌という印象。医師というより技術者のようで、システムにとても詳しかった。カネをだまし取るような人とは思えず、信じられない」と話す。ただ、歯に衣(きぬ)着せぬ発言も目立ち、「苦手意識を持つ人も多かった」という。
 秋山容疑者が提案したシステムは、医療現場の実態に合わず、普及しなかった。その後、国内の医療現場に広まったのは秋山容疑者が考えたものとは別のシステムで、ある同省職員は「数年前までは電子カルテと言えば、真っ先に秋山先生の名前が出てきた権威者だったが、最近はほとんど名前を聞かなくなっていた」と明かす。
 ◆研究費が激減
 秋山容疑者は仕事を通じてIT系企業にも人脈を広げていった。東大などから約2180万円をだまし取ったとされる今回の事件でも、架空業務の発注先として知り合いのIT関連会社などを利用した疑いが持たれている。2005年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)の客員教授に就任した際には、業者と密接な関係を持つ秋山容疑者の姿勢を危ぶむ一部の大学関係者らの間で「業者とのトラブルが米国行きの背景にあるのでは」とささやかれていたという。
 09年には東大教授に就任、医療現場をネットワーク化する研究を行っていた。知人の一人は「MIT時代と比べ、研究費が激減したことが事件の背景にあるのかもしれない」と話した。
 東大では25日夜、大和裕幸副学長らが記者会見。秋山容疑者が12年度までの4年間に物品や人件費など計26件、計約2億1600万円の研究費を請求していたことを明らかにしたが、問題の研究事業の中身などについては「捜査中で話せない」と繰り返した。

医師免許ない元助教授、がん患者に未承認薬注射 indexへ

 未承認薬をがん患者に投与したとして、警視庁が、元杏林大医学部助教授の男(74)の東京都八王子市内の自宅を医師法違反と薬事法違反の疑いで捜索していたことが捜査関係者への取材でわかった。捜索は24日。
 捜査関係者によると、男は昨年、医師免許がないのに、未承認のがん治療薬「カルチノン」をがん患者に注射した疑い。自宅は、男が経営する医薬品製造販売会社を兼ねていたという。
 杏林大によると、男は1976年に医学部講師として採用され、2005年3月に助教授で定年退職している。医学博士の学位は取得していたが、医師免許はなかった。
 男はホームページで、カルチノンを自身が開発した未承認薬だと紹介し、「安全性も含め実績のあるがん治療・予防薬で、副作用がない」などと宣伝していた。

血液型間違え患者に輸血…3日後、脳梗塞に indexへ

 大阪府羽曳野市はびきの、医療法人春秋会「城山病院」で4月、同市に住む80歳代の女性に間違った血液型の輸血をするミスをしていたことがわかった。
 同病院は「血液型検査で別の患者の血液と取り違えた可能性が高い」としている。
 同病院や藤井寺保健所によると、女性は心臓などに持病があり、3月31日に体調不良を訴え、同病院に入院。心臓手術後に貧血状態となり、4月14日にAB型の血液840ミリ・リットルの輸血を受けた。後日の再輸血時に、女性の血液型がA型とわかり、ミスが発覚した。
 女性は輸血直後、体調に変化はなかったものの、同17日に脳梗塞を発症。命に別条はないが、脳梗塞の後遺症で言語障害などがあるという。同病院では「輸血ミスと脳梗塞との因果関係は不明」としている。
 同病院の竹内一浩事務長は「あってはならないミスで、再発防止に取り組む」と話している。

子宮頸がんワクチン 副作用さらに4人…群馬 indexへ

 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に副作用とみられる症状が出ている問題で、群馬県内の医師らが今月12~19日、新たに4件の副作用とみられる症状を国に報告したことが22日わかった。
 国がワクチン接種の補助を始めた2010年11月以降の県内の報告例は、これで15件となった。
 県保健予防課によると、4件のうち3件は医師が、1件は接種を受けた女子の保護者が、それぞれ自治体を通じて報告。医師の報告例は全て重症で、それぞれ全身や手首、足首の痛み、めまい、貧血などの症状を訴え、うち1人は現在も回復していない。中には、接種後1か月以上たってから2か月近く入院した女子もいるという。3人が接種を受けたのは昨年3~4月で、医師は1年以上過ぎてから国に報告していた。
 一方、保護者による報告例は、ワクチン接種3日後に頭痛やめまい、視力低下の症状が出たと訴えているという。

新型出生前診断、大阪府立母子医療センターでも indexへ

 妊婦の採血で胎児の染色体の病気が高精度でわかる新型出生前診断について、日本医学会は19日、大阪府立母子保健総合医療センターを新たに認定施設にすると公表した。
 決定は16日付。実施病院は計24施設になった。

世界初のiPS臨床研究、厚労相が正式了承 indexへ

 理化学研究所などが申請していた、iPS細胞(人工多能性幹細胞)で目の難病「加齢黄斑変性」を治療する臨床研究について、田村厚生労働相は19日、実施を正式に了承した。
 山中伸弥・京都大教授が作製を発表してから約7年で、世界初のiPS細胞による再生医療の実施が確定した。治療は来年夏にも始まる。
 加齢黄斑変性は、目の奥にある網膜の一部に異常がおき、視界の中央がゆがんだり黒く欠けたりする病気だ。同研究所の高橋政代・プロジェクトリーダーらは、患者の皮膚の細胞からiPS細胞を作り、網膜の細胞に変化させてシート状に加工したものを、患者の目に移植する。対象患者は、薬などによる既存の治療法で効果がない50歳以上の6人。4年間経過を観察して、安全性と有効性を確かめる。

小児臓器提供、制度説明1割…実施は2例のみ indexへ

 15歳未満の子どもからの臓器提供を認める改正臓器移植法施行から17日で3年を迎えたが、実際に提供が行われたのは2例にとどまっている。
 読売新聞が全国の提供可能施設にアンケート調査を行った結果、脳死の可能性がある15歳未満で病院側が家族に臓器提供の選択があることを説明した事例は1割だったことが分かった。
 調査は6月、臓器提供が可能な全国361病院(2012年6月末現在)に行い、182病院から回答を得た(回答率50・4%)。法改正後の10年7月17日~13年5月17日に15歳未満で脳死の疑いがあったのは139例。うち病院側が臓器提供の選択肢を示したのは16例(11・5%)だった。
 脳死判定の手順などを定めた国の指針は、医師らが脳死の可能性があると判断した際に家族の状況をみて臓器提供の説明を行うこととしているが、「家族の心情を思うと治療の終了を意味する(臓器提供という選択肢の)提示はできない」との意見があった。

新型出生前診断、陽性29人…確定後2人中絶 indexへ

 妊婦の採血で胎児の三つの染色体の病気が高い精度でわかる新型出生前診断で、今年4月の導入から6月末までの3か月間に1534人の妊婦が検査を受け、29人(1・9%)が胎児に三つの病気のいずれかが疑われる「陽性」の判定だったことがわかった。
 実施施設の医師らによる共同研究組織「NIPTコンソーシアム」が、日本産科婦人科学会などに報告した。羊水検査などを受け、陽性と確定した妊婦のうち2人が人工妊娠中絶をした。
 陽性と判定された29人は、ダウン症が16人、18トリソミーが9人、13トリソミーが4人だった。
 29人のうち、陽性と判明した後の経過が、実施施設から共同研究組織に報告されたのは11人。
 このうち、1人は流産し、羊水検査などを受けた10人のうち、病気が確定したのはダウン症が3人、18トリソミーが3人だった。共同研究組織によると、確定した6人のうち2人は、すでに人工妊娠中絶した。

治療薬データ改ざん、元社員の聴取必要…厚労相 indexへ

 高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究のデータ改ざん問題で、販売元のノバルティスファーマの元社員が京都府立医大の調査に応じていないことについて、田村厚生労働相は16日の閣議後記者会見で、「身分を隠してデータ解析に関わった元社員の話が聞けないと実態解明が難しい。会社側にも再度努力いただきたい」と、元社員への聞き取りを強く望む姿勢を示した。
 同大は「解析データの作成段階で何らかの操作が行われた」との調査結果を発表したが、元社員の聴取はできず、「意図的(な改ざん)かどうか認定できなかった」とした。同社は「元社員の強い意志で聞き取りが実現しなかった」と説明している。
 これに対し、田村厚労相は「データの捏造、改ざんが強く示唆される調査結果。意図的に何らかのことが行われた可能性がある。ここに関わった人の話が聞けないと難しい。このままでは終わらない」と語った。

新型出生前診断1500人、研究予定の1・5倍 indexへ

 妊婦の採血だけで胎児に三つの染色体の病気がある可能性が、高い精度でわかる新型出生前診断について、今年4月の導入から6月末までの3か月間で、全国で約1500人の妊婦が受けていたことがわかった。
 診断を行う医師らによる共同研究組織「NIPTコンソーシアム」が15日、横浜市内で開いた会議で報告した。
 新型検査は現在、日本医学会が認定した国内23の病院で行われている。
 同研究組織は当初の予定として、臨床研究の調査・症例規模を約1000例としていたが、導入から3か月間でその1・5倍の検査が行われたことになる。ハイペースで検査が行われた背景には、高齢妊婦を中心に検査の希望者が多いことがある。臨床研究の開始後、問い合わせが相次ぎ、検査の予約も取りづらい状況が続いている。
 同研究組織は遺伝カウンセリングについて、妊婦が検査結果の意味や対象となる病気の説明をどれだけ理解したかなど、その効果を検証し、論文としてまとめる予定だ。
 また、検査の結果、染色体の病気が疑われる「陽性」と判定された数は、導入1か月で9人だったが、3か月間での陽性判定数など、具体的な検査結果については近く、日本産科婦人科学会(日産婦)に報告する。

世界初のiPS臨床実施を承認、6人の網膜再生 indexへ

 厚生労働省の厚生科学審議会科学技術部会(部会長=永井良三・自治医科大学長)は12日、理化学研究所などが申請していたiPS細胞(人工多能性幹細胞)で目の難病「加齢黄斑変性」を治療する臨床研究の実施を了承した。
 山中伸弥・京都大教授がiPS細胞の作製を発表してから約7年。世界初の再生医療が月内にも厚労相の承認を得て早ければ来年夏に始まる。
 加齢黄斑変性では、目の奥にある網膜の一部に異常がおき、視界の中央がゆがんだり黒く欠けたりする。
 理研の高橋政代・プロジェクトリーダーらは、患者の皮膚の細胞からiPS細胞を作り、網膜の細胞シートに変化させて、目に移植する臨床研究を計画。2月末、厚労省に申請した。対象患者は薬などによる既存の治療法で効果がない50歳以上の6人となる。

70~74歳の医療費2割負担明記へ…国民会議 indexへ

 政府の社会保障制度改革国民会議(会長・清家篤慶応義塾長)は12日、首相官邸で会合を開き、最終報告書の詰めの議論を開始した。
 これまでの議論を踏まえ、70~74歳の医療費窓口負担の1割から2割への引き上げや、国民健康保険(国保)の運営主体の市町村から都道府県への移管などが盛り込まれる見通しだ。国民会議は8月中に報告書を安倍首相に提出し、政府はこれを受け、関連法案の要綱を閣議決定する方針だ。
 この日の会合では、報告書の起草委員が作成した「目次」が示された。改革の基本概念や方向性を記した「総論」、年金・医療・介護・少子化対策の「社会保障4分野の改革」、「国民へのメッセージ」の3項目で構成されることになった。

高血圧治療薬のデータ操作、厚労相「大変遺憾」 indexへ

 製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究について京都府立医大が「何らかのデータ操作が行われていた」との調査結果を公表したことを受け、田村厚生労働大臣は12日、「データの捏造
ねつぞう
、改ざんが強く示唆される内容。先日閣議決定された『日本再興戦略』でも、革新的医療技術の実用化を進めるなか、大変遺憾に思う」との談話を発表した。
 田村大臣直轄で、問題の状況把握と再発防止策の検討に当たる有識者委員会を早急に設置。「臨床研究の倫理指針」の見直しに取り組むとしている。
 データ操作があった臨床研究は、同大が約3000人の患者を対象に、高血圧治療薬の効果を比較したもの。ディオバンについて「血圧を下げる効果は他の薬と同じでも、脳卒中や狭心症のリスクが減った」などと論文発表していたが、同社の元社員が身分を明確にしないままデータ解析に関与していたことが発覚。研究の信頼性が疑われていた。研究代表者の元教授は2月に同大を辞職している。

風疹ワクチン不足…大人は接種中止の医院も indexへ

 風疹の大流行で、関東地方を中心にワクチンが不足し始めている。
 自発的に予防接種を受ける人が急増し、例年の1年分以上が1か月で使われる事態が続いているためだ。妊婦が風疹に感染すると胎児に障害が出る恐れがある。感染防止には患者が多い20~40代の男性への接種が不可欠だが、子どもへの定期接種を優先するため、大人への接種を断念する医療機関も出ている。
 「当面、成人の接種を中止させて頂きます」
 横浜市戸塚区の「小川クリニック」は4日、ホームページ(HP)に「お知らせ」を掲載した。先月以降、ワクチン納入が減り、ストックをはき出してしのいできたが、今月初めに確保できたのは、70本の希望数に対してわずか10本。免疫がない1歳児の定期接種にしわ寄せが出かねないため、苦肉の策を取ったという。市もHPで「乳幼児の定期接種を優先させるため、希望者全員が接種するのは困難」と呼びかけている。

「薬論文で明らかなデータ操作」京都府立医大 indexへ

 製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」の効果に関する臨床研究で、京都府立医大は11日、同大学の松原弘明・元教授(56)(2月辞職)らによる論文6本について、「明らかなデータ操作があり、臨床研究の結論に誤りがあった可能性が高い」とする調査結果を公表した。
 脳卒中や狭心症のリスクを減らす効果があったように、意図的に改ざんされていた可能性がある。この研究では同社の元社員(今年5月退社)が患者のデータ解析を担当していた。
 論文は、高血圧患者約3000人を2グループに分け、一方にディオバン、他方に別の降圧剤を投与した2003~07年の臨床試験の結果を分析したもの。「ディオバンは、血圧を下げる効果は他の薬と大差なかったが、脳卒中や狭心症のリスクが大幅に減った」などと結論づけていた。
 調査結果によると、論文にデータが使われた患者のうち、カルテが確認できた223人のデータを調べたところ、論文に用いた解析データとカルテの記載事項が異なる例が34件あった。
 脳卒中などを発症したとカルテに記載されているのに、論文のデータ解析では「発症していない」とされた例がディオバン投与グループで9件、他の薬の投与グループで1件あったほか、脳卒中などを発症していないのに、データ解析では「発症した」とされた例が、ディオバンで4件、他の薬で20件だった。
 全体として、解析データはカルテの記載と比べて、ディオバンの効果が上がるようになっていた。この223人について、カルテの記載通りに解析すると、ディオバンには、脳卒中や狭心症のリスクを減らす効果は特に認められなかった。

副作用新たに3件 子宮頸がんワクチン…群馬 indexへ

 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に副作用とみられる症状が出ている問題で、大沢知事は10日の定例記者会見で、群馬県内の医療機関に対し、国への報告を徹底するよう通知したことを明らかにした。
 県保健予防課によると、10日までに県内自治体から報告例が新たに3件寄せられた。読売新聞の取材と合わせると、県内で2010年11月以降に副作用とみられる症状を訴えたのは計11人となった。
 国への報告を巡っては、接種の主な対象者が中高校生であるため、症状が副作用によるものなのか、思春期特有の心身の問題に由来するものなのか医師が判断できず、報告していないケースもあるとみられている。
 6月14日付で通知を出した大沢知事は、記者会見で「(医師は)できるだけ症例を国に報告すべきだ」と強調した。県保健予防課は「副作用を国へ報告するのは医師なので、症状が出た場合は、接種を受けた医師に相談してほしい」と呼びかけている。

救急車、別病院に到着…静岡・清水病院医療事故 indexへ

 静岡市立清水病院(清水区)で静岡市の男性(当時83歳)が医療ミスのために死亡した事故で、同院が意識不明となった男性を別の病院に搬送しようと市消防局に通報した際、連絡ミスで救急車が誤って市立静岡病院(葵区)に到着していたことが10日、市消防局への取材でわかった。
 男性の搬送は約10分遅れたという。同院と市消防局は遺族に「救急指令に誤りがあった」と認めて謝罪している。
 事故は今年1月、透析治療を受けていた男性の首から静脈に挿入された管(カテーテル)を抜き取る際、同院のミスで血液中に空気が入り込み、男性が脳空気塞栓(そくせん)症を発症し、約1か月後に死亡したもの。
 市消防局などが遺族に開示した記録によると、今年1月21日、同院は男性が意識不明に陥ってから約1時間半後に同症と診断。専門治療が可能な市内の別の病院へ搬送するため市消防局の一般電話に通報した。この際、対応した市消防局の職員から「市立静岡(病院)か」と念押しされ、同院は「そうです」と間違えて返答したという。市消防局は、救急車が市立静岡病院に到着後に間違いに気付き、別の救急車を出動させた。
 県内の複数の医師によると、同症は意識不明に陥ってから2~3時間以内に専門治療を施せば効果的とされる。記録によると、男性は意識不明になってから約3時間後、搬送先の病院で専門治療が始められた。
 男性の長男は「医療ミスが起きた後、迅速な対応がされていれば、父は助かったかもしれない」と話している。
静岡市長が定例会見「誠意もって対応」
 静岡市の田辺信宏市長は10日の定例記者会見で、静岡市立清水病院で起きた医療事故について「とにかく遺族に誠意をもって対応したい。医療事故後の危機管理について検討を深めなければいけない」と述べた。
 田辺市長は、同院が事故から約半年間、事実を公表しなかったことにも言及。「今までの公表基準にのっとって病院側が対応したと信頼している」との考えを示した。「院長が総合的に判断する」という同院の医療事故の公表基準の見直しについては「検討しておく」と述べるにとどめた。

70~74歳医療費窓口負担、来年度にも2割に indexへ

 田村厚生労働相は9日の記者会見で、特例で「1割」となっている70~74歳の医療費窓口負担を法律で定められている「2割」に戻す時期について、「来年度も視野に入れつつ、これから議論をしたい」と述べた。
 参院選後に与党と調整し、引き上げに伴う低所得者対策を検討する考えも示した。
 70~74歳の窓口負担は、2008年に後期高齢者医療制度が始まった際、75歳以上と同じ1割に抑える特例措置がとられた。このため毎年約2000億円の財源が必要となっている。
 政府の社会保障制度改革国民会議の議論では、医療費抑制の観点から、70~74歳の窓口負担引き上げを早期に実施すべきだとの意見が相次いでいる。安倍首相も国会答弁で、引き上げを検討する考えを示していた。

首の静脈の管、抜き取る際誤って空気注入し死亡 indexへ

 静岡市立清水病院(静岡市清水区)で今年1月、透析治療を受けていた静岡市の無職男性(当時83歳)の首の静脈に挿入された管(カテーテル)を抜き取る際、誤って静脈に空気を注入させる医療事故が起きていたことがわかった。
 男性は約1か月後、脳空気塞栓(そくせん)症で死亡。同院は遺族に医療ミスを認め、慰謝料など計約2000万円を支払う意向を示しているが、事故を公表していない。遺族は同院に損害賠償を求める訴訟を起こすとともに、県警に業務上過失致死容疑で刑事告訴する方針だ。
 同院が遺族に提出した資料によると、今年1月21日、急性腎不全を患い同院に入院していた男性の透析治療を終わらせるため、首の静脈に挿入されたカテーテルを抜いた。男性は約10分後、病室へ戻る途中に意識を失い、検査の結果、脳空気塞栓症と診断された。男性は市内の別の病院に搬送され、治療を受けたが意識は戻らず、2月22日に死亡した。搬送先の病院が作成した死亡診断書では、死因は「透析用カテーテルを抜いた時に発症した脳空気塞栓症」だった。
 遺族の代理人の青山雅幸弁護士によると、遺族は3~4月頃、市立清水病院側から「カテーテルを抜いた際の事故と考えている」と説明され、謝罪された。そのうえで、慰謝料や葬儀代を含む計約2000万円の賠償金を提示され、「今回の事故は和解でお願いしたい」と求められたという。
 同院医療安全管理室は9日、読売新聞の取材に対し、男性が院内で脳空気塞栓症を発症し、死亡した事実は認めたが、「個別の患者に関するコメントは差し控えたい」とした。
 同室によると、同院では医療事故の公表基準が明文化されておらず、公表するか否かは「調査結果を踏まえ、院長が判断する」という。今回の事案については「総合的に判断した結果、公表しなかった」と説明した。
 一方、男性の長男は「別の病院へ搬送する対応も遅かった。医療事故を慰謝料で片付けようとしている。『県警に事故を届け出る』と伝えても公表せず、誠実な対応ではない」と話している。

子宮頸がん接種8人副作用…群馬 indexへ

 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に慢性的な体の痛みなどの副作用が出ている問題で、群馬県内では、国が市町村にワクチン接種への補助を開始した2010年11月以降、少なくとも8人が副作用とみられる症状を訴えていたことが、県と各市町村への取材で分かった。
 このうち2人が重症という。医師が副作用だと判断できずにいるケースもあるとみられ、件数はさらに増える可能性もある。
 県保健予防課によると、県が把握している副作用は、小学6年から高校1年の女子児童・生徒への定期接種が始まった今年4月以降に、県内の医療機関が厚生労働省に報告した3件。県はこれ以前は把握していないため、10年11月以降の報告例について、読売新聞が県内の全35市町村へ取材した。
 その結果、高崎、渋川両市で各2件、伊勢崎市、安中市、藤岡市、中之条町で各1件の計8件(県が把握する3件を含む)の副作用が医療機関から国へ報告されていたことが分かった。
 このうち死亡や障害につながる恐れがあったり、入院したりする「重症」は2人だった。
 重症の2人はいずれも10歳代で、1人は1回目の接種で手足の震えが起き、もう1人は3回目の接種で、膝や肘、手首、指などの痛みを訴え、1週間ほど入院した。2人とも現在も症状が続いているという。
 ほかの6人は、接種後に肘の腫れ、けいれん、意識が遠のくといった症状を訴えたが、ほとんどが1日以内に回復したという。
 前橋市や東吾妻町などでは、副作用の報告例はなかったが、副作用を疑う保護者からの問い合わせが数件あったという。
 前橋市では、ワクチン接種後、「激しい痛みや吐き気、疲れなどで学校を休みがちになった」「登校しても保健室で休まなければならない」といった相談が複数寄せられているという。
 ただ、接種を受けるのは主として中高生であるため、同市衛生検査課は「副作用によるものなのか、思春期特有の心と体の問題に由来するものなのか、医療機関が判断できず、国への報告には至っていない」と打ち明ける。
 県は実態把握のため35市町村に対し、10年11月から12年度末までに発生した副作用の聞き取り調査を進めている。県教委も、県内の全ての公立中学校と高校などに対し、昨年度に副作用とみられる症状で年間30日以上欠席した生徒の有無などを調べている。いずれも今月中に結果をまとめる予定だ。
 子宮頸がんワクチンは1人3回の接種が必要で、県によると、県内では10年11月から12年3月末までに計13万5458回接種された。県保健予防課は「少しでも副作用だと疑われるケースは、医師から国に報告してほしい。多く症例が上がることが今後の検証につながる」としている。
子宮頸がんワクチン
 「サーバリックス」と「ガーダシル」がある。子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のうち、子宮頸がん全体の5~7割の原因とされる2種類の感染を防ぐ。今年4月、小学6年~高校1年の女子児童・生徒への予防接種が公費で受けられる定期接種になった。

誘発剤で多胎妊娠、年1000件…4割が飲み薬 indexへ

 排卵誘発剤を用いた一般的な不妊治療での双子や三つ子の多胎妊娠が、2011年1年間に少なくとも約1000件あり、うち約4割が、飲み薬の排卵誘発剤によるものだったことが、日本産科婦人科学会(日産婦)による初の実態調査でわかった。
 飲み薬は、注射薬よりも多胎妊娠の可能性が低いが、簡単で多くの患者に使われていることが件数の多い理由とみられる。
 調査は、昨年1月、全国産婦人科(5783施設)にアンケートし、3571施設が回答(回答率62%)した。排卵誘発剤を用いた不妊治療での多胎妊娠は、計1046件あった。注射薬が629件で、飲み薬が417件だった。
 多胎妊娠は、出産の危険が高まる。日産婦は、高度な不妊治療である体外受精では、子宮に戻す受精卵の数を1~2個に制限している。一方、排卵誘発剤を使った不妊治療には規制はない。飲み薬は一般の産科でも広く処方されている。

熱中症もう続出、6月末までに搬送148人…北海道 indexへ

 北海道内で6月末までの約1か月間に熱中症で救急搬送された患者数は、前年同期の2倍の148人に上ることが、総務省消防庁のまとめで分かった。
 低温で推移した春先から一転、5月下旬に気温が上昇したことが要因とみられる。
 消防庁は2010年から、気温の上昇が始まる5月末頃から9月末まで、全国の熱中症による救急搬送について調査している。今年は5月27日~6月30日の速報値をまとめた。
 道内では、猛暑に見舞われた10年が165人、11年は84人、12年は74人で推移していた。今年は、6月末にまとめた速報値が133人で、追加報告を加えた最新の集計では148人に増えた。100人を超えたのは3年ぶり。
 地域別に見ると、道央(石狩、空知、後志)が59人で最も多く、道北(上川、留萌、宗谷)は52人、道東(網走、十勝、釧路、根室)31人だった。道南(胆振、日高、渡島、檜山)は6人で最も少なかった。
 搬送者の年齢を見ると、高齢者(65歳以上)が91人で、全体の61%を占めた。消防庁は「急激な気温の上昇により、体力の衰えていた高齢者を中心に患者が増えたのだろう」と分析している。

肥満者の肝臓がん、腸内細菌深く関与か…がん研 indexへ

 肥満の人に肝臓がんが多い理由に、腸内細菌が深くかかわっている可能性があることを、公益財団法人がん研究会(東京都江東区)などのチームが動物実験で確認し、英科学誌ネイチャーに発表した。
 研究会の原英二・がん生物部長(分子生物学)らは、普通のえさを与えたマウスと、脂肪が多いえさを与えて肥満にしたマウスで、肝臓がんの発生率と腸内細菌の関係を調べた。すると肥満マウスは肝臓がんを発症しやすく、肝臓の細胞を老化させる細菌が普通のえさのマウスに比べ、約3000倍に増えていた。この細菌は、人間の腸にもいる。
 肥満したマウスも、抗生物質で細菌を殺すと、肝臓がんの発症数は3分の1に減った。この細菌は、人間の腸で胆汁酸を変化させて、肝臓を老化させる物質を作っており、肝臓がんを引き起こすらしい。
 理化学研究所の大野博司グループディレクター(腸管免疫学)の話「高脂肪の食事で細菌が増える理由などを解明できれば、肝臓がんの予防医療につながる可能性がある」

幼児3人からO157検出…佐賀 indexへ

 佐賀県は4日、伊万里保健福祉事務所管内(伊万里市と有田町)の保育所の幼児3人(男児2人、女児1人)から病原性大腸菌O(オー)157を検出したと発表した。
 県によると、女児が6月25日に下痢などの症状を訴えて医療機関を受診し、感染が判明。通っている保育所の幼児への検査で、男児2人の感染が確認された。3人とも症状は重くないという。

肝硬変で移植、2割が再び飲酒…誓約書書いても indexへ

 アルコール性肝硬変が原因で肝臓移植を受けた患者のうち、2割以上が手術後に再び飲酒を始め、うち7割近くが再び血液検査などで肝臓に障害が表れるほどの飲酒量だったことが、日本肝移植研究会の調査で分かった。
 国内での大規模な調査は初めて。
 調査は、1997年11月~2011年12月にアルコール性肝硬変が原因で肝臓移植を受けた37医療機関の患者のうち、退院できずに亡くなった人などを除く140人を分析した。その結果、32人(男性23人、女性9人)が移植後に再び飲酒を始め、うち21人(男性14人、女性7人)が血液検査などで肝臓に障害が表れていた。飲酒を始める時期は移植後1か月~1年半に多く、中でも半年後が最多だった。肝臓に障害を来すほど飲酒した人の生存率は5年で下がり始め、10年では飲酒していない人の3分の1以下だった。
 調査した東京女子医大消化器外科の江川裕人教授によると、移植前に患者は「再飲酒しない」と誓約書を書くが、管理が難しいといい、「患者の生活全般をサポートする体制が必要」としている。

大腸がん 血液検査で判別…三重大グループ indexへ

 三重大医学部の研究グループは3日、米国のベーラーメディカルセンター(テキサス州)と共同で、血液検査で大腸がんや大腸ポリープの患者を高い確率で判別できることを突き止めたと発表した。
 研究結果は米国の雑誌「ジャーナル・オブ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート」に掲載された。同センターが実用化を目指しており、三重大は「検査法が確立すれば、より早く大腸がん患者を診断できる」としている。
 グループの問山裕二・三重大助教(大腸外科)によると、大腸がん検診では便に混じる血液を調べる「便潜血検査」が行われるが、精度が問題となっていた。
 グループは、血液に含まれる遺伝物質のうち、大腸がん組織から多く分泌される「マイクロRNA―21」に着目。健常者、大腸がん、大腸ポリープ患者の計約300人について、この物質の血液中の量を比較した結果、がん患者は健常者の約5倍、ポリープ患者は約3倍に上った。データ解析で、がん患者は92%以上、ポリープ患者は82%以上の確率で判別できることも分かったという。
 兵庫医科大の冨田尚裕教授(下部消化管外科)は「大変意義のある研究だと思う。今後の臨床的検証を待ちたい」と話している。

がんの親玉を狙い撃ち…日本発新薬、米で治験 indexへ

 米シカゴ大学の中村祐輔教授は2日、がんの元となる「がん幹細胞」を狙った新しいタイプの抗がん剤の臨床試験(治験)を来月から米国で始めることを明らかにした。
 この薬剤は日本で研究・開発されたもので、米国での4~5年後の実用化を目指している。
 中村教授は東京大学在任中に、がん細胞だけで働く遺伝子を網羅的に検索。乳腺や肺、前立腺、膵臓(すいぞう)など幅広いがん細胞で活発に働き、がん幹細胞の維持に重要な働きをしているたんぱく質を発見した。創薬ベンチャー企業「オンコセラピー・サイエンス」(本社・川崎市)が、このたんぱくの働きを抑える薬剤を開発。人のがん細胞を移植したマウスにこの薬剤を与えると、がん幹細胞の増殖が抑えられ、がんが縮小した。
 治験は、オンコ社が実施。シカゴ大で、実際にがん患者に薬剤を投与して、安全性などを確認する。
 中村教授は「研究を始めて10年で、ようやくゴールが見えてきた。日本は、新しいタイプの抗がん剤で出遅れ、医薬品の大幅な輸入超過に陥っている。審査が早い米国でまず日本発の薬を実用化したい」と話す。
 がん幹細胞 がんの親玉となる細胞。増殖して自分のコピーを作るとともに、がん細胞を作り出す。抗がん剤が効きにくく、治療しても、再発する大きな要因になっている。

手術、年4百件以上…がん拠点病院の要件厳しく indexへ

 がん診療体制を議論する厚生労働省の有識者検討部会は2日、専門的ながん医療を行う「がん診療連携拠点病院」の指定要件について、年間手術件数400件以上などを加え厳しくする方針で合意した。
 がん医療の質を高める狙いで、来年度にも導入される見通し。
 拠点病院は、肺、胃、肝臓、大腸、乳がんなどの専門的な治療を行う医療機関で、全国に397施設ある。これまでは、年間のがん入院患者がのべ1200人以上などを指定の目安としてきたが、診療実績などの差が大きく、十分な役割を果たしていない病院もあると指摘されてきた。
 検討部会では、年間〈1〉手術件数400件〈2〉薬物療法1000件〈3〉放射線治療200件――などを新たに指定要件に加え、満たさない場合は指定を取り消すとした。ただし、もともとの人口が少ないなどの地域事情は考慮する。

新型出生前診断「賛成」48%…本社世論調査 indexへ

 妊婦の血液を調べるだけで胎児の染色体異常が高い精度でわかる新型出生前診断について、読売新聞社は全国世論調査(6月28~30日、電話方式)を実施した。
 新型出生前診断の導入には「賛成」が48%と、「反対」の30%を上回った。賛成の割合は30歳代が67%、40歳代が59%で、若い年代ほど高かった。
 診断が受けられるのは現在は約20の認定病院に限定されているが、今後どのように行われるのがよいと思うかの質問に対し、「どの施設でも受けられるようにする」(34%)と、「施設は限定するが、数を今よりも増やす」(33%)がほぼ同数で、7割近くが実施施設の拡大を望んでいた。「今のまま、なるべく施設を限定して行う」は23%だった。
 出生前診断などの生殖医療は、医学会などが独自に定めたルールに従って行われ、法律による規制はないことについて、46%が「国が法律を作って何を認めるかなどを定める」のがよいと答えた。「今のまま、自主的なルールで行う」が22%、「原則、自由に行えるようにする」が20%だった。
 斎藤有紀子・北里大准教授(生命倫理学)の話「立場や経験で意見が分かれる問題だ。何を法で決めて、何を個人の領域におくべきか、誰の権利を守るのか、議論を熟成させるべきだ」
「信頼関係ある産院で」「定期的に実態公表を」妊婦や医師 葛藤
 読売新聞の世論調査で、新型出生前診断に対し、賛成48%、反対30%という結果が出た。4月以降、全国の施設で行われた検査は1000件を超える。診断を受けた妊婦らや医師、ダウン症の人とその家族の会からは、複雑な声が上がった。
■万能ではないが
 今年5月に新型診断を受け、陰性だった新潟県内の女性(36)は、「診断が身近に受けられるのはよいことだけれど、カウンセリング体制が整った病院に限定すべきだ」と話した。
 高齢出産に伴う不安があった女性は、約1時間、医師らから説明を受けた上で検査を受けることを決めた。
 おなかの赤ちゃんはすくすく育っているが、心配がなくなったわけではない。検査の対象は、ダウン症など3種類の染色体の病気だけ。「検査は万能でない。カウンセリングで限界もしっかりと分かった上で受けるべきだ」と思う。
 「半数以上が実施施設を増やした方がよい、と答えた意味は大きいと思う」。関東地方の女性(39)はそう語った。2人目を妊娠中、胎児が18番目の染色体が1本多く長期生存が難しい病気と分かり、今年2月、人工妊娠中絶した。
 通院先の院長は、丁寧に説明し、気持ちも聞いてくれた。同じ病気の子どもを持つ親が書いたブログなども読み、愛情を注ぎ、大切に育てている様子を知ったが、出産は考えられなかった。長男(5)が病弱なことや、共働きであることなどからだ。長男にきょうだいをとの思いは今もあり、その時は、新型出生前診断を受けたいとも考えている。「よかったと言える決断をするためにも、信頼関係がある身近な産院で受けられるのがよいと思う」
■「命の選別」心配
 一方、日本ダウン症協会の玉井邦夫理事長は、賛成、反対について「22%が『答えない』と回答した事実は重い」と話し、「半数以上の人が賛成とはいえない難しい問題で、十分な議論が必要だ。回答者を含め、新型診断の技術を誤解している人も多い。正確な知識を周知しなければならない」と強調した。「ダウン症に限らず、出生前診断で判明するようになる症状などで命の選別が行われかねないことを広く知ってほしい。ダウン症の子の親たちは、社会が我が子の生存を認めてくれなくなるのではないかと不安を感じている」
 新型出生前診断を行う医師らで作る共同研究組織の北川道弘代表(山王病院副院長)は、賛成が反対を上回ったことについて、「十分な説明を受け、誤解や混乱がないならとの条件つきで賛成とした人が少なからずいるのではないか」と指摘。22%が「答えない」としたことには「始まったばかりでよく分からない人もいるだろう。定期的に検査の実態を公表していく必要があると改めて感じた」と調査の意義に触れた。
 出生前診断とその後の対応については、新たな検査が登場するたびに、精度や安全性、倫理を巡る議論が繰り返されてきた。
 今回の新型診断は、従来よりも簡易で精度が高いことから、安易に検査を受ける妊婦が増えるのではないかとの懸念もある。日本産科婦人科学会は今年3月、遺伝カウンセリング体制などを条件として、日本医学会が認定・登録した施設に限定して行うなどとした運用指針をまとめた。

 調査は、無作為に作成した番号に電話をかける方式で実施。有権者在住が判明した1821世帯の中から1061人の回答を得た(回答率58%)。

3歳男児に生体肺移植…岡山大病院 indexへ

 岡山大病院(岡山市北区)は1日、重度の呼吸不全に陥った関西地方の男児(3)に母親の右肺の一部を移植する生体肺移植を実施したと発表した。同病院によると、肺移植としては国内最年少で、母子ともに容体は安定しているという。
 手術は1日午前10時頃から行われ、午後9時に終了した。男児は自発呼吸しているという。
 肺は表面の深い切れ込みで区別され、右肺は上葉と中葉、下葉、心臓のある左肺は上葉と下葉に分かれている。肺移植では、肺活量が最も大きい下葉を用いるのが一般的で、同病院で過去に実施した脳死も含めた110例も下葉を移植した。
 しかし、幼児の場合、大人の下葉ではサイズが大きすぎるため、今回は肺の中で最も小さい中葉が移植された。同病院によると、中葉は手術数の多い下葉と血管や気管支の配置が異なり、移植手術が難しい。中葉の移植は米国で1例あるが、移植を受けた4歳児が亡くなったという。
 男児は2011年秋、白血病治療で骨髄移植を行った際、肺で拒絶反応が起き、機能が著しく低下。肺移植しか助かる方法がなかった。海外では、乳幼児に対して脳死肺移植が行われているが、国内ではこれまで乳幼児の肺の提供者は出ていない。
 手術終了後の午後9時半から記者会見した大藤剛宏(おおとうたかひろ)准教授(呼吸器外科)は「手術は成功した。国内でこれまで助ける方法がなかった乳幼児に対する肺移植に、光を当てられる結果を示せた」と述べた。
 肺移植に詳しい京都大病院の伊達洋至教授(同)は「中葉の大きさは下葉の半分以下なので、サイズとしては幼児への移植に向いている。肺を切る切断面が大きくて手術に時間がかかり、提供者、移植患者双方への負担は大きいが、幼児への生体肺移植の道を開くうえで意義がある」と話している。

熊本・天草の86歳女性がマダニ感染死 indexへ

 熊本県は1日、天草市の女性(86)がマダニを介して感染する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスに感染して死亡した、と発表した。県によると、国内で26人目の感染確認で、死者は12人目。
 発表によると、女性は5月25日に発熱や下痢、食欲不振などの症状を訴え、同27日に入院。その後も症状が改善せず、6月4日に死亡した。

無視・無関心…院内感染対策、4割「非協力的」 indexへ

 院内感染対策について、病院の担当者の42%が、現場の医師ら医療スタッフが非協力的だと感じた経験があることが読売新聞のアンケートでわかった。
 アンケートは3~4月、厚生労働省の院内感染対策サーベイランス事業に参加している病院のうち450施設を対象に実施。289施設から回答を得た。
 それによると、院内感染対策で「現場の協力を得られないと感じたことがあるか」との問いに、「ある」としたのは、全体の42%を占める122施設に上った。
 具体的な問題点として、院内感染対策の基本である手や指の消毒に対し、「忙しくてできないと反発される」「無視される」「指摘するといやがられる」といった例や、「研修会の参加率が低い」「無関心なスタッフが多い」「危機感がない」などが挙がった。

ダウン症薬、初の治験へ…生活能力低下を抑制 indexへ

 思春期以降のダウン症の人に見られる日常生活能力の低下を抑えることを目指す初の臨床試験(治験)を、製薬会社「エーザイ」(本社・東京都)がアルツハイマー型認知症治療薬を用いて始める。
 効能が認められれば初のダウン症薬となる。研究が遅れている成人期ダウン症の人の生活の質を高める可能性がある。
 薬は、1999年から、認知症治療薬として広く使われている「アリセプト」(一般名・塩酸ドネペジル)。治験は8月から全国10病院で、能力低下症状の見られる15~39歳のダウン症の人数十人を対象に行い、3~4年かかる見通し。結果を踏まえて厚生労働省がダウン症の症状を抑える薬として認めて良いか審査する。
 2011年の厚労省研究班報告書によると、中学を卒業した年齢以上のダウン症の人の6%で、動作が緩慢になる、睡眠障害が起きる、会話が減る、閉じこもるなど、短期間のうちに、これまでできた日常生活ができなくなる症状が表れる。

子宮頸がんワクチン副作用、北海道内では38件 indexへ

 子宮頸がんワクチンの副作用が相次いでいるとされる問題で、北海道は28日の道議会予算特別委員会で、副作用の報告例が18市町38件に上っていることを明らかにした。
 自民党・道民会議の川畑悟委員の質問に答えた。
 道地域保健課によると、国が自治体に補助を始めた2010年度から2年間で、医療機関から独自に報告を受けていた道内26市町村のうち、旭川市を含む17市町で計35件の症例が報告された。今年4月から定期接種となり、副作用の報告が制度化されてからも、道に3件の報告があった。
 主な症状では、筋肉注射へのストレスによる血圧低下、湿疹、発熱などの症状がみられたという。

乳がん検診「要精密検査」も心理的負担に indexへ

 乳がん検診で「要精密検査」とされて受診した人の7割が「不安・抑うつ状態」になっていたことが、聖路加国際病院の北野敦子医師(腫瘍内科)らの調査でわかった。
 精密検査でがんが見つかる人は約1割で、多くは実際にはがんではないにもかかわらず、大きな心理的負担を感じていた。浜松市で27日から開かれている日本乳癌学会で発表した。
 調査は乳がん検診で要精密検査と告げられ、2012年3~10月に同院を受診した女性320人に対し、不安・抑うつ状態を調べるアンケートを実施し、312人(回答率97・5%)が答えた。
 42点満点で、不安・抑うつ状態とされる8点以上の人が約7割(221人)に上った。平均は11・1点で、ほかの様々ながんで治療中の患者に聞いた別の研究での平均値(8・7点)よりも高かった。

胃ろうや人工呼吸器、7割が望まず…厚労省調査 indexへ

 末期がんや認知症が進行して衰弱した場合、一般人の約7割が、おなかに穴を開けてチューブで栄養を送る「胃ろう」や人工呼吸器を希望しないことが、厚生労働省が27日発表した終末期医療についての意識調査でわかった。
 調査は3月、20歳以上の男女5000人に調査票を郵送し、2179人(回答率44%)から回答を得た。
 末期がんの場合、水分補給の点滴は61%が「望む」だったが、胃ろうは「望まない」が72%、人工呼吸器も67%が「望まない」と回答。認知症の場合は、点滴も「望まない」が40%で「望む」は47%。胃ろうや人工呼吸器は、7割以上が「望まない」だった。
 治療方針などをあらかじめ記載しておく「事前指示書」は、70%が賛成した。ただし、実際に作成している人は3%だった。

乳製品での乳がん再発リスクを否定…診療指針 indexへ

 日本乳癌学会は27日、2年ぶりに診療指針を改訂した。
 乳製品や、大豆製品に多く含まれるイソフラボンの影響を恐れて避けている患者も多いが、乳製品は発症予防効果がある可能性があり、再発や死亡への影響は証拠不十分とした。イソフラボンについても、再発の危険性を減らす可能性があるとした。
 乳製品は、最も少なく摂取した群よりも、最も多く摂取した群は発症の危険性が15%減少するとの研究報告を示した。低脂肪乳や閉経前の女性でより強く傾向が見られ、逆に脂肪含有量が多い乳製品は危険性を高める報告も示した。
 また、乳製品が再発や死亡に与える影響は、小規模な研究しかないうえ、摂取が多いほど死亡リスクが低いとの報告もあり、結論づけられないとした。

子宮頸がんワクチン接種 少女、めまいや頭痛…秋田 indexへ

 子宮頸(けい)がんワクチンの接種を受けた秋田県内の10代の少女が、めまいや頭痛の症状を訴えていたことが27日、わかった。県は、このワクチンの副作用の可能性があるとして、厚生労働省に報告した。
 厚労省は14日、子宮頸がんワクチン接種後に重い副作用が表れた事例があることを受け、積極的に接種を勧めることを一時的に控える、と発表したばかり。
 県健康推進課によると、少女は昨年度、子宮頸がんワクチンを接種した後、めまいと頭痛を訴えるようになった。症状は重くないという。少女の保護者が、居住地の自治体に相談し、自治体が21日、県に報告した。県は同日、厚労省に報告した。少女の症状が、このワクチンによる副作用かどうかは、厚労省が今後、調査して判断するという。
 同課は、少女の年齢や居住地域、接種を受けた日付や回数などを明らかにしていない。
 子宮頸がんワクチンは今年4月、小学6年~高校1年の女子が公費で接種できる定期接種になった。ただ、県内では以前から、県と市町村の全額負担で接種を受けられることになっていた。同課は副作用の可能性がある今回のケースを把握したが、公表していなかった。成田公哉課長は取材に対し、「予防接種法で公表する規定になっていないため」と話している。

電気自動車の充電器、ペースメーカー誤作動恐れ indexへ

 厚生労働省は、心臓ペースメーカーが電気自動車(EV)の充電器から発生する電磁波で誤作動を起こす危険があるとして、製造販売業者に対し、充電器に近づかないなどの注意事項を添付文書に記載するよう指示した。
 電気自動車の充電器には、高速道路のサービスエリアやガソリンスタンドなどに設けられる急速充電器と、長時間駐車する自宅などに設置される普通充電器がある。これらが発する電磁波の心臓ペースメーカーへの影響について検証試験をしたところ、急速充電器の場合、53センチまでの距離で影響が確認された。普通充電器の場合は12・5センチだった。
 除細動機能付きの製品では影響が確認されなかった。
 これを受け、添付文書の「使用上の注意」に〈1〉電気自動車の急速充電器は使用しない〈2〉急速充電器の設置場所には可能な限り近づかない〈3〉普通充電器の充電スタンドなどには密着しない――などと記載するよう求めた。

世界初iPS臨床研究実施を了承…厚労省審査委 indexへ

 厚生労働省の「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」(委員長=永井良三・自治医科大学長)は26日、理化学研究所などが申請していたiPS細胞(人工多能性幹細胞)で目の難病「加齢黄斑変性」を治療する臨床研究の実施を条件付きで了承した。
 厚生科学審議会科学技術部会や厚労相の承認を経て、来年夏にも治療が始まる。山中伸弥・京都大教授が2007年に人のiPS細胞作製を発表してから約6年で、iPS細胞を使った世界初の再生医療の実施に向け、大きく前進した。
 対象となるのは、50歳以上で薬など既存の治療法が効かない患者6人。理研の高橋政代・プロジェクトリーダーらは、患者の皮膚の細胞からiPS細胞を作り、網膜の細胞に変化させてシート状に加工したものを目に移植する。4年間経過を観察して、安全性と有効性を確かめる。先端医療センター(神戸市)とともに2月末、厚労省に臨床研究の承認を申請した。

ネット薬、都道府県の監視専従ゼロ…確保厳しく indexへ

 政府は一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売を原則解禁する方針を明らかにしたが、ネット上での不正監視を担う都道府県のうち、専従の監視職員を置いている自治体は「ゼロ」であることが読売新聞の調べで分かった。
 監視の目は行き届いておらず、事実上の“野放し状態"にある。厚生労働省は秋頃をめどに販売のルールを決めるとしているが、監視態勢の整備が大きな課題となりそうだ。
 市販薬は副作用のリスクに応じて1~3類に分類されている。リスクが最も低い整腸薬やビタミン剤などの3類は2009年6月からネット上での販売が正式に認められ、その監視は販売業者の許認可権限を持つ都道府県などが行っている。業者の届け出の有無だけでなく、未承認の医薬品やニセ薬、ネットオークションでの無許可販売もチェックしなければならない。
 ところが、読売新聞が各都道府県に監視態勢について取材したところ、専従職員を配置していると答えた自治体は一つもなかった。「警察OBの職員1人が医薬品まがいの商品などを監視している」(京都)など積極的な自治体もあったが、大半は脱法ハーブなど違法薬物を取り締まる職員らが兼務し、「外部から苦情があれば確認する」(愛知、新潟、広島など)という対応が一般的。中には「担当者はいない」(青森、茨城)という自治体もあった。

子宮頸がんワクチン副作用 県内3人…和歌山 indexへ

 厚生労働省が、接種を積極的に勧めることを一時的に控えるよう都道府県に通知した子宮頸(けい)がんワクチンについて、和歌山県内でも3人から副作用の報告があったことが分かった。
 県健康推進課によると、副作用を訴えたのは、2011年7月~13年4月に接種を受けた15~21歳の3人。このうち、足に痛みが残った女性と、関節炎の症状が出た女性は現在も治療を続け、接種後に強い痛みを感じて失神した後、倦怠(けんたい)感を訴えた女性は、すぐに回復したという。入院したケースはなかった。
 同課は「いずれも接種と症状の因果関係は不明」としている。
 ワクチンへの困惑が広がる一方、子宮頸がんの早期発見のため、検診の重要性を指摘する声が上がっている。国はワクチン接種の有無にかかわらず、20歳以上の女性に2年に1度の検診を推奨。県内の自治体は経費を公費で負担するなど支援しており、関係者は積極的な受診を呼び掛けている。

子宮頸がんワクチン副作用37人 5人は重症…新潟 indexへ

 子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に慢性的な体の痛みなどの重い副作用が出ている問題で、新潟県内では国が市町村に補助金を出し始めた2010年11月以降、37人に副作用とみられる症状が表れていたことが市町村への取材で分かった。
 そのうち5人は重症だった。市町村が把握しきれていない症例もあり、副作用を訴えたケースはさらにあったとみられる。
 県健康対策課は、同ワクチンが4月に定期接種化され、厚生労働省などから情報が伝えられるようになってからの副作用の症例は県内で4件あったとしていた。ただ、市町村の多くは3月までの症例についても接種費用を一部助成していた関係から、医療機関から独自に報告してもらっていた。
 市町村別では新潟市が17人と最も多く、長岡市7人、上越、妙高市各3人、加茂市2人と続いた。
 重症者5人のうち、11年3月に2度目の接種を受けた当時16歳の新潟市の女子高校生は3か月後に足や腰の痛みで立てなくなり、一時入院したという。上越市では同年10月、当時15歳の少女が1度目の接種を受けた5分後に意識を失った。当日中に回復し、入院はしなかった。長岡市でも3人が頭痛や発熱、けいれんなどで一時入院した。
 一方、湯沢町では、医療機関からは副作用があったケースは報告されていないが、副作用を疑う保護者からの問い合わせが数件あったという。こうした件数を含めると、副作用を訴えたケースはもっとあった可能性がある。
 県は問題を受け、実態把握のために、30市町村に聞き取り調査を進めている。厚労省がワクチン接種の積極的勧奨を一時的に控えるよう都道府県に通知していることについて、県健康対策課の永瀬吉彦課長は「市町村や医療現場が混乱するので、勧めるべきなのか控えるべきなのか国の方針を速やかに示してもらいたい」と話している。
 子宮頸がんワクチンは一人につき3回の接種が必要で、同課によると、県内では、10年11月から13年3月までに15万6473回接種されている。
 08年に県内で子宮頸がんになった人は142人で、死亡した人は44人だった。10万人当たりの罹患(りかん)率は39・5人で、乳がん(38・1人)や肺がん(37・6人)と同程度の水準になっている。

人工乳房に保険適用…「しずく形」早期承認課題 indexへ

 乳がんの全摘手術後に膨らみを再建するための「人工乳房」が、7月から保険適用される。患者の費用負担が大幅に減り、安全管理体制も整えられる。
 ただし、今回認められたのは旧型で、手術できる医療機関もまだ限られるなど課題は多い。
 乳房再建の方法は、膨らみを作る素材によって大きく二つに分けられる。一つはおなかや背中の筋肉、脂肪、皮膚を切り取り、胸に移植する「自家組織再建法」、もう一つが人工物を入れる方法で、これまでは自家組織再建のみ保険がきいた。
 保険がきかない人工乳房を入れる場合、一つの乳房で費用は100万円前後かかる。一方、保険がきく自家組織再建法には、健康な部分にメスを入れ、体の負担が大きい欠点がある。
 乳がんの治療は、手術後のホルモン治療など長期にわたることが多い。通院など様々な費用を含めると、がんの治療だけで数百万円かかることもあるという。
 人工乳房の保険適用を求める署名活動をしてきた「KSHS(キチンと手術・ホンネで再建の会)」の溝口綾子代表は「治療による収入減や家族への遠慮から、費用の大きさで断念するケースも多い。乳房再建は女性として前向きに生きるための支えになる。保険適用で選択肢が広がる」と喜ぶ。
 人工乳房が長年、保険適用されてこなかった理由には、安全性が度々問題になってきた歴史がある。
 1940年代から主に豊胸手術で使われたが、素材の質の悪さから異物反応を起こすことも多く、60年代には死亡事故も発生。初期のシリコーン製の人工乳房は、その周囲に硬い膜ができるトラブルや破損などが相次ぎ、92年に米食品医薬品局(FDA)が使用の一時停止を要請。日本も薬事承認を取り消した。米国は2006年、安全と認めた別の製品を認可している。
 11年には、仏政府が仏製の粗悪な人工乳房を摘出するよう世界中の使用者に呼びかける事態も起こった。ところが医師の個人輸入で使っていた日本では、使用実態さえ把握することが難しく、対応は不十分だった。
 この反省を踏まえ、国は今回の薬事承認に当たり、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会など関連学会に対し使用指針を作ることを要求。学会は、形成外科専門医や乳腺専門医が共同して手術できることなど、施設や医師の基準を設け、講習会の受講を義務付けた。メーカーには、異例の10年間にわたる追跡調査を課した。
 指針を作成した大慈弥裕之・同学会副理事長(福岡大形成外科教授)は「安全に使う体制が整えられ国民の信頼が高まれば、人工乳房を使う人も増え、価格の低下にもつながる」と語る。
 だが、施設認定を受けた病院は今のところ全国で4か所。審査・認定する同学会によると、施設は毎月増えるとしているが、全国に広がるのは時間がかかる。そもそも乳がんを手術する乳腺外科医と、再建を担当する形成外科医の連携が十分な施設は少ない。
 今回保険適用されたのは、既に普及している弾力が強くて自然な膨らみを作りやすい最新の「しずく形」ではなく、柔らかくて丸い旧型。人工乳房の形やしわが表に出やすいのが難点だ。シリコーンが漏れやすい点も指摘され、同時に保険適用が決まったしずく形の組織拡張器とは形のずれがあるため一緒に使いづらい。がん研有明病院(東京都)形成外科の矢島和宜副医長は、「乳房の形態には個人差があり、より左右のバランスが取れた再建を目指したい患者には勧めにくい場合もある」と語る。
 最新の「しずく形」は昨年8月に薬事承認が申請され、審査中だ。米国では今年2月に承認されている。
 安全性の確認はもちろんだが、きれいな乳房を取り戻したいという患者の願いに応えられるよう、最新型の承認と手術ができる体制の充実が急がれる。

国の勧奨中止 現場困惑…子宮頸がんワクチン indexへ

 厚生労働省が、子宮頸(けい)がんワクチンの接種を積極的に勧めることを一時的に控えると発表したことを受け、和歌山県内の市町村や保護者らに戸惑いが広がっている。
 接種後、体の痛みなどを訴える事例が相次いだことを受けた措置だが、同ワクチンは小学6年~高校1年の女子への予防接種が公費で受けられる定期接種のままで、関係者からは「市民にどう説明したらいいのか」などの声が上がっている。
 「医学の素人なのに接種するかどうかの決断を託されても、どうしていいかわからない」。中学1年の娘を持つ和歌山市在住の母親(43)は、そう不安そうに話す。
 子宮頸がんを患った友人がおり、子どもにはワクチンを接種させたいと考えていたが、厚労省の発表を受け、迷い始めた。母親は「せめて判断するための材料がほしい」と国に情報提供を求める。
 県によると、これまでにも国が補助金を出すなどしてワクチン接種を勧めており、2010年11月から12年3月までに、小6~高1の4分の3に当たる1万4974人が接種した。
 さらに国が今年4月、子宮頸がんワクチンを定期接種に位置づけ、自治体はそれぞれ啓発を強化。だが、突然、はしごを外された格好になり、現場には困惑が広がる。
 厚労省は今回、各家庭への案内を控えるよう都道府県に通知したが、県内で最も対象者の多い和歌山市は4月、中学1年の女子生徒1750人の保護者宛てに、接種を呼びかける通知書を配布したばかりだ。
 市民から「どう対応したらいいのか」という相談もあり、市は近く厚労省の方針を伝える文書を配る。
 御坊市では10年7月から、独自の補助金制度を始めるなどワクチンの普及に積極的に取り組み、接種率は98%(2011年度)に上る。担当者は「国の対応はわかりづらい。限られた情報しかなく、市民に説明のしようがない」と嘆く。
 県立医大産科婦人科学講座の井箟一彦教授(50)は「厚労省には安心してワクチンを接種できよう早急に対策をとってほしい」と話している。

新型検査、出生前診断に追加…日産婦が指針改定 indexへ

 日本産科婦人科学会(日産婦)は22日、出生前診断全体の指針を改定した。
 妊婦の採血で胎児が3種類の染色体の病気かどうか高い精度で調べる新型出生前診断を新たに対象に加えた。超音波(エコー)検査の一部を出生前診断に位置づけた前改定(2011年)からわずか2年での見直しで、技術の進歩によって登場した新しい検査に対応した。
 新型検査は今年4月から臨床研究として始まった。日産婦はこれに先立って3月に、日本医学会が認定・登録した施設に検査を限定するなど、新型検査だけを対象にした運用指針を示している。
 今回改定されたのは、羊水検査や母体血清マーカーなどすべての出生前診断に関する指針で、これに新型検査を加えた。

内視鏡手術を3D化…医師の頭部にディスプレー indexへ

 内視鏡による3次元(3D)映像を、複数の医師が頭部に装着したディスプレーに同時に映し出す手術システムを、東京医科歯科大の木原和徳教授(泌尿器科)とソニーが共同開発した。
 日本発の次世代の手術システムとして注目されそうだ。
 3D映画を見る自宅用の市販ディスプレーを活用。木原教授が考案したおなかに開けた2~4センチの一つの穴から、内視鏡や手術器具を差し入れて行う「ミニマム創内視鏡下手術」に組み入れた。従来の映像ではわからなかった「深さ」が立体的に見えることで、体の深い場所にある血管や組織の手術もより安全で確実に行えるようになった。
 執刀医や助手、内視鏡を操作する医師がそれぞれディスプレーを装着して、映像を見ながら手術を行う。一つの大きなモニターの映像を見ながら行う通常の内視鏡手術と違い、顔を向け続ける必要がない。ディスプレーの下側は広く空いており、手元や手術台の患者の様子を確認できる。

子宮頸がんワクチン接種見合わせ…千葉 indexへ

 厚生労働省が子宮頸(けい)がんワクチンの予防接種推奨を一時的に控えるように各都道府県に勧告したことを受け、千葉県野田市は18日、予防接種を原則的に一時見合わせると発表した。
 市は国が推奨再開の是非を判断するまでの間、予防接種を見合わせるとしており、「市民に副作用のリスクを判断させるのではなく、安全性を最優先した」としている。
 ワクチン接種を強く希望する場合は、運転免許証や保険証など申請者の住所が確認できるものと、予防接種を受ける子供などの母子健康手帳を持参し、保健センターで副作用のリスクなどに関する説明を受けた上で接種できるとしている。

男性の痛風リスク、遺伝子変異で最大22倍に indexへ

 激しい関節痛などを起こす痛風について、特定の遺伝子に変異があると、30歳未満の若い男性の痛風を発症するリスクが、最大22倍高まるとの研究結果を、防衛医科大などのチームが18日、科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に発表した。
 痛風は関節に尿酸が沈着して生じるもので男性に多い。研究グループはこれまでに、尿酸を排出するポンプの役割を持つたんぱく質の遺伝子に変異があると、発症原因になることを突きとめていた。
 研究グループは今回、男性患者705人の遺伝子を解析、発症年齢との関係を調べた。この遺伝子変異がある患者の平均発症年齢は、変異のない患者に比べて最大で6・5歳若かった。30歳未満で発症した患者では88%に遺伝子変異が見つかった。
 さらに、痛風を発症していない1887人と遺伝子を比較したところ、遺伝子に変異があってポンプ機能が低下していると、変異のない人に比べて、30歳未満で痛風を発症するリスクが最大22倍高かった。

子宮頸がんワクチン接種 勧奨一時中止に戸惑い…高知 indexへ

 厚生労働省が子宮頸(けい)がんワクチン接種の積極的勧奨を一時的に控えるよう、各都道府県に通知したことに対し、高知県内で戸惑いが広がっている。
 ワクチンの有用性を認めながら、積極的には勧めないという玉虫色の措置に、対象者の保護者らは困惑し、自治体の担当者は説明に追われている。
 同ワクチンについて、県は2011年1月、国の補助金などで中学1年~大学1年に相当する年齢を対象に無料接種を開始。小学6年~高校1年が定期接種となる今年4月までに、約2万2000人(対象者の79%)が受けたという。
 副作用の件数について、厚生労働省は「都道府県別の数字は公表していない」とする。県は統計を取っていないが、昨年、副作用が表れたとみられる子どもの保護者から、居住自治体に保障制度の問い合わせが1件あったという。
 県は同省の通知を受けた14日夜、34市町村と県医師会、247の指定医療機関などにメールなどで内容を通達。各市町村は、接種を呼び掛けるホームページの書き直しや、接種を受けていない人に文書を送る準備を進めるなどしている。
 ただ、新たに対象となる小学6年と中学1年には、市町村から接種の案内が送られた後だけに、県にも「受けていいのか、はっきりして」といった問い合わせがあるという。健康対策課は「保護者を惑わせるくらいなら、いっそ定期接種を中止してくれればよかった」とする。
 また、同ワクチンは3回の接種が必要で、まったく受けていない子どもと、1回は受けた子どもとに分かれる。「2回目以降をどうすればいいのか」と相談を受けた高知市の担当者は、「同省の通知には接種回数が違う人への対応が明記されておらず、現状を説明するしかない」。
 南国市は、高校1年の女子生徒全員に「9月30日までに接種を受けて」と呼びかける文書の送付を中止。担当者は「判断を親任せにしたままだと、定期接種の対象年齢を過ぎてしまう子どもが出かねない。国はその場合の補助なども考えてほしい」と訴える。
 高知大医学部産科婦人科学講座の深谷孝夫教授(64)は「ワクチンの効果は海外でも認められており、副作用も元々わかっていたはずで、勧奨の一時中止は晴天の霹靂(へきれき)だ。国は迅速に調査を進め、明確に方針を決める必要がある」と話す。

C型肝炎訴訟 間接事実で証明、和解…札幌 indexへ

 血液製剤「フィブリノゲン」の投与が原因でC型肝炎になったとして、札幌市の女性(57)が国を相手取り、損害賠償を求めた訴訟があり、札幌地裁で18日、和解が成立した。
 女性には投与を示すカルテなどの直接証拠がなかったが、「自分が担当であれば投与していた」とする医師の証言などの間接事実から、国側は、投与が原因でC型肝炎ウイルスに感染したことを認めた。女性の代理人弁護士は「間接事実の積み重ねで和解が成立するのは珍しい」としている。
 訴状によると、女性は1985年に札幌市内の病院で出産した際に大量出血した。止血のためフィブリノゲンが投与されてC型肝炎になったとみられるが、カルテは廃棄されていた。
 原告側は、投与に関与したとみられる麻酔医を捜し出し、証人尋問を実施した。この医師は「女性を担当した記憶はないが、もし担当だったら投与していただろう」と証言した。その後、同じ病院に麻酔医として派遣された可能性のある医師十数人にアンケートを行い、数人から同様の回答を得た。
 C型肝炎を巡っては、2008年に被害者救済法が成立し、和解交渉が進められているが、カルテなどが廃棄されていた場合、投与を証明することは難しい。女性は「患者が証拠を集めるのは難しい。国が積極的に病院などに働きかけて情報を集めるべきだ」と話している。女性には同法に基づき、2000万円が給付される見通しだ。

糖尿病の合併症 目薬で治療…島根大が開発 indexへ

 糖尿病の合併症で、失明の恐れもある「糖尿病黄斑(おうはん)浮腫」を治療する点眼薬を、島根大の大平明弘教授(眼科学)らが開発したと発表、米国の眼科専門誌「IOVSペーパーズインプレス」に掲載された。
 様々な分子を取り込むオリゴ糖・シクロデキストリン(CD)を活用し、薬剤を目の奥の患部に届ける仕組み。従来の治療法より安全で早ければ3年後に実用化できるといい、試験を続けている。
 糖尿病黄斑浮腫は、網膜の毛細血管が血液中の糖分で傷み、水分や脂肪が漏れて網膜の中心の黄斑が腫れる病気。物がゆがんで見え、悪化すると視力が低下する。国内の糖尿病患者約890万人(推計)の4割に発症の恐れがあるとされる。従来は、血管にレーザーを当てて固めたり、ステロイド剤を眼球に注射したりして治療するが、注射ではまれに炎症が起きる。
 大平教授らは目薬による治療法を模索するなかで、水に溶けやすく、分子を取り込みやすいCDに着目。CDの内側は水に溶けにくいステロイドでもなじみやすく、目薬に含ませることが可能になった。CDには取り込んだ物質を少しずつ放出する性質もあり、ステロイドの量を調節して、網膜に達する頃に適量が出るよう工夫した。
 島根大病院(島根県出雲市)で患者19人に4週間、毎日点眼したところ、うち18人の腫れが軽減し、14人の視力が0・1程度改善した。現在、効き目の違いや副作用の表れ方の比較試験を実施中。大平教授は「目薬の性能をさらに高めたい」と話している。
 日本眼科学会指導医で網膜の病気に詳しい山本修一・千葉大病院副病院長の話「従来の治療は合併症の危険もあったので朗報。今後の研究に注目したい」
 シクロデキストリン ブドウ糖分子が直径100万分の1ミリほどの筒状に連なった化合物。バケツの底が抜けたような構造で、中に分子を取り込む。におい成分をとらえる消臭剤などに広く使われている。

風疹患者1万人突破、昨年1年間の4倍超す indexへ

 厚生労働省は18日、今年の風疹の患者数が、今月9日までに1万人を超えたと発表した。
 流行は首都圏や近畿圏を中心に全国に広がり、同省や専門家は、予防接種を受けるよう改めて呼びかけている。
 同省によると、9日までの1週間に新たに報告された患者数は517人で、年初からの合計は1万102人となり、昨年1年間の4倍を超えた。9日までの1週間では、都道府県別の最多が大阪(129人)で、東京(82人)、神奈川(59人)、兵庫(52人)、鹿児島(34人)が続いた。
 風疹は、妊婦がかかると胎児に障害が出ることがある。同省は、妊娠予定がある女性や、その夫ら同居家族が自主的に予防接種を受けることを勧めている。

停電時の人工呼吸器患者、搬送システム構築 indexへ

 山形大医学部付属病院と国立病院機構山形病院、県などは、震災で停電になった際、人工呼吸器をつけた在宅療養の難病患者を速やかに病院に搬送するシステムの構築を検討している。同大の加藤丈夫教授は「東日本大震災の教訓を踏まえ、秋頃までにシステムを確立したい」と話している。
 東日本大震災では、被災地以外でも広範囲にわたって停電が発生。県内でも在宅患者の人工呼吸器が動かなくなったため、家族が患者を病院に連れて行ったり、数時間持つ予備バッテリーで対応したりするケースが実際にあった。
 しかし、多数の負傷者が生じるような震災が県内で発生した場合、急性期病院は負傷者の対応で手いっぱいになることが予想される。予備バッテリーも1日以上の停電には耐えられないため、搬送システムを構築する必要性が提起された。
 具体的には、人工呼吸器を付けている患者の住所などの情報について、患者の同意の下、あらかじめタクシー会社などに提供。停電を伴う震災が発生した場合、直ちに担当する患者宅に駆けつけてもらい、自家発電設備のある慢性期病院に搬送する。
 対象となる患者は100人前後で、筋肉が動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者がほとんどだという。加藤教授は「個人情報の取り扱いが課題だが、震災直後に病院と電話がつながらなくても、自動的に搬送してもらえれる仕組みがあれば、安心できる」と話している。

風疹で胎児障害、11人目…9年前の流行上回る indexへ

 風疹にかかった妊婦の胎児に障害が出る「先天性風疹症候群(CRS)」が今月上旬、東京都内で新たに報告されたことがわかった。
 今回の流行が始まった昨年後半から11人目の報告例で、推定3・9万人の風疹患者が出た2004年の10人を上回った。
 風疹患者の増加に歯止めがかからないため、CRSの子どもを持つ親らが17日、国が費用を負担した臨時の予防接種を実施するよう、厚生労働省に申し入れた。
 同省などによると、新たなCRSの患者は今月9日までに東京都へ報告された。同省は近く、11人目の報告例として正式発表する。風疹の患者は昨年後半から増え始め、今年は今月2日までに全国で9408人の患者が報告され、今月中に1万人を超えそうだ。昨年1年間との比較でも、既に4倍近くに上っている。
 患者の8割近くは男性。中心は20~40歳代で、男性全体の8割以上を占める。今年4月時点で34歳以上は自治体の予防接種の対象外だったことなどから、特に患者が多い。子育て世代でもあり、夫が妊婦にうつさないよう、同省などは自主的に予防接種を受けるよう呼びかけている。

給食後に小1 一時呼吸困難…東京・町田 indexへ

 東京都町田市教育委員会は17日、市立小学校で給食を食べた1年生児童が、口の周りの発疹やかゆみ、せきなどの症状を起こし、病院に搬送されたと発表した。命に別条はなく、現在は通常通り登校している。
 発表によると、児童は14日、給食を食べ終わると、「気分が悪い」と訴えて保健室に運ばれた。食物アレルギー症状の疑いがあるとみて、救急車で病院に搬送。一時、呼吸困難となった。同日夕には状態が落ち着き、翌15日午後に退院した。
 この日の献立は、ご飯と肉じゃが、野菜のあえ物、果物、ふりかけ、牛乳。市教委が入学時に行った食物アレルギーへの対応を希望するかどうかを問うアンケートに、児童の保護者は「希望しない」と答えており、症状の原因は特定できていない。

風疹患者 昨年の1.5倍に…福井 indexへ

 福井県内でも感染拡大が続く風疹の今年の患者数(9日現在)は12人になり、昨年1年間の8人を既に上回った。
 県などは妊娠を望む女性や妊婦の家族らに予防接種を呼び掛けており、福井市と池田町は6月から、1回8000~1万円かかる予防接種の助成を始めた。
 県によると、23週(3~9日)に新たに患者4人が報告された。内訳は、20歳代女性、30歳代男性が各1人、40歳代男性2人。確実に免疫ができるまでには2回の接種が望ましいとされるが、今年4月1日時点で51歳以上の人はワクチンを接種しておらず、23歳以上は接種していないか1回しか受けていない可能性がある。
 福井市は1990年4月1日以前に生まれ、風疹抗体検査で陰性だった妊婦の同居人を対象に、3000~5000円を助成。池田町は95年3月31日以前の生まれで、妊娠を望んでいる女性やその夫、妊婦の家族が対象で、3000~6652円を補助する。いずれも来年3月末までで、妊婦は接種できない。

ウナギでピカッと肝機能検査…黄だん判定10分 indexへ

 ニホンウナギが持つ蛍光たんぱく質を使って、血液中の物質を光らせる試薬を理化学研究所などの研究チームが開発した。
 黄だんの原因となる血液中の「ビリルビン」を検出するもので、ビリルビンの量を調整している肝臓の異常などを簡単に検査できるという。米科学誌セル電子版に発表した。
 ニホンウナギが緑色の蛍光たんぱく質を持っていることは以前から知られていたが、光る仕組みは分かっていなかった。
 研究チームはウナギの稚魚の遺伝子を解析して蛍光たんぱく質の遺伝子を特定、ウナギにちなんで「UnaG(ユーナジー)」と命名した。UnaGは単独では光らないが、ビリルビンとくっつくと蛍光を放つことも発見した。
 ビリルビンが血液中に増えると、肌が黄色くなる黄だん症状が出る。現在の黄だん検査は結果が出るまでに数時間かかるが、UnaGの試薬にビリルビンの量が多い血液を加えると、緑色に強く光るため、10分ほどで判定できる。

ソフトバンク・大隣、国指定難病で21日手術 indexへ

 ソフトバンクは15日、腰を痛めて二軍調整中の大隣憲司投手(28)が国の指定する難病「黄色靱帯(じんたい)骨化症」のため、21日に東京都内の病院で手術を受けると発表した。
 復帰には4、5か月かかるといい、今シーズンは絶望となった。秋山監督は「今年は無理だな。治すしかない」と語った。
 黄色靱帯骨化症は、脊髄神経を保護する靱帯が骨に変わり、神経が圧迫されることで手足の痛みやしびれ、運動障害を引き起こす原因不明の難病。プロ野球界では、巨人の越智大祐投手(29)が同じ病症で昨年6月に手術を受け、今年2月に二軍戦で実戦復帰した。
 大隣は2007年に希望入団枠で近大からソフトバンクに入団。昨年までに40勝39敗の成績を残し、今年はワールド・ベースボール・クラシックの日本代表に選ばれた。

医療事故透明化求める声 兵庫県立病院、203件中、公表10件 indexへ

 全国で続発する医療事故だが、兵庫県立14病院は病院側の過失が明確ではない場合は公表を控えている。
 過失の有無を問わず再発防止策を公表する自治体もある中、患者サイドからは「市民とも情報を共有して透明化を進めてこそ再発防止につながる」と県の対応に批判も出ている。
■「閉鎖的」批判も
 昨年5月、県南部の県立病院のデイケアセンターで、エレベーター内に心肺停止状態の男性患者が倒れているのが見つかり、間もなく死亡が確認された。事故報告書には「医療事故時の患者搬送経路が想定されていなかった」「救急カートに医薬品が常備されていなかった」など改善すべき点が明記されたが、「やるべきことはなされており、『不可抗力。非公表』」と内部資料にとどめた。
 県病院局によると、県立病院での骨折や入院日数増、人工呼吸器装着などの処置を要する重大な事故が起きた場合、過失の有無を問わず報告を求めている。事故を公表するのは、医療過誤のほか、他病院の事故回避に役立つ場合などと定めるが、最終的には事故が起きた病院長の判断に委ねられている。
 現行の公表基準となった2009年4月から13年3月までで、14病院の医療事故報告は計203件あり、うち公表は医療過誤の10件にとどまる。
 医療事故の被害者らでつくる「医療情報の公開・開示を求める市民の会」(大阪市)の岡本隆吉副代表は「公表の最終決定権者が病院長では、おのずと閉鎖的になる」と批判する。
■過失なくても
 県病院局の斉藤芳樹企画課長は「病院長の判断を尊重し、医療関係者への影響も考慮した結果」と説明するが、「非公表の報告書も再発防止に役立つとの認識はある」と話す。
 神奈川県では11年度から、過失の有無を問わずに医療事故の内容と再発防止策を公表している。12年度までの2年間に県立9病院から公表されたのは計48件に上る。同県病院課の橋本和也課長は「医療過誤と事故はしゅん別が困難で、再発防止に役立つなら積極的に公表すべきだ」と話す。
 兵庫県では基準改定の動きはないが、変化が生まれつつある。県立光風病院が院内の医療事故防止対策委員会を開いていなかったことを踏まえ、各病院は4月から同委の開催を徹底。県への報告書に「医療事故防止対策委員会記入欄」を設け、発生経緯や原因を詳細に報告させることにした。
 医療事故防止に取り組む日本医療機能評価機構(東京)は「過失のない事故でも公表することで、医療事故を未然に防ぐことにつながるはず」としている。

「米粉100%」に小麦、男児アレルギー発症 indexへ

 神奈川県相模原市は14日、市観光協会が運営する物産品店で、「小麦不使用」と説明して販売していた米粉製のピザに、実際には小麦が一部使われており、口にした同市南区の男児(4)が今月7日、小麦アレルギーの症状を発症したと発表した。
 同店は11日、このピザの販売を中止。男児の症状は快方に向かっており、命に別条はないという。
 この店は、同市南区相模大野の大型複合施設「bono(ボーノ)相模大野」2階で市内の物産品などを販売する「sagamix(さがみっくす)」。今年3月13日にオープンした。
 市によると、男児は今月7日午後5時頃、母親と訪れた店内で米粉製ピザを二口ほど食べ、約10分後の帰宅途中、全身にじんましんなどの症状が現れた。男児は小麦にアレルギーを持ち、医療機関から処方されていた薬をすぐに服用し、約2時間後に症状は落ち着いたという。
 母親はピザを購入する際、店員2人に「子供には小麦アレルギーがある。小麦は使っていないか」と聞いたが、店員は「米粉100%で、使っていない」と回答。母親から11日に抗議を受けた市観光協会が、広島県内のピザ生地製造会社などに問い合わせたところ、小麦を使用していることが判明した。
 同店では開店前の3月上旬、アルバイト店員11人全員が、同社を紹介した東京都内のコンサルタント会社による研修を受講。店員らは「同じ製造ラインで他の製品も作っており、混入の可能性があるため『アレルギー対応』にはなっていない」と説明を受けていたが、「米粉100%使用」と聞かされ、小麦を使っていることは知らなかったという。
 また市によると、食品衛生法では、アレルギーの原因となる小麦などの特定原材料(7品目)が含まれる場合、出荷者が包装箱にその旨を表示し、使用者も表示の確認が義務付けられている。しかし、今回のケースでは、製造会社が表示をしておらず、同店も表示のないことを確認しないまま使用していたといい、市保健所が13日、同店を立ち入り調査し、同法違反の疑いがあるとして調べている。

子宮頸がんワクチン接種、推奨中止…副作用報告 indexへ

 子宮頸がんワクチンの接種後に体の痛みや歩行障害などの重い副作用が表れている問題で、厚生労働省は14日、「積極的な勧奨を一時的に差し控える」と発表した。
 同日の有識者検討会の議論を受けたもので、同省は、自治体から各家庭への接種の案内を控えさせる通知を都道府県に出した。こうした対応は2005年の日本脳炎ワクチン以来2例目で、極めて異例だ。
 副作用の頻度は少ないものの、原因不明の慢性的な痛みを訴える例が複数報告されていることを重視し、国民にリスクをわかりやすく説明する情報を整理するまでの暫定措置という。
 予防接種法で定められている定期予防接種は、その重要性から国が接種を勧めている。自治体などから各家庭に通知が届き、ほとんどは無料で受けることができる。

重粒子線がんセンター 患者77人受け付け indexへ

 佐賀県は13日の県議会で、1日に開院した九州国際重粒子線がん治療センター(鳥栖市)に関し、12日までに患者77人の診察を受け付けたことを明らかにした。古川知事は「いい反応。順調な船出でありがたい」と述べた。
 県によると、77人のうち、初診を終えたのは31人。紹介元の医療機関は、福岡県内が51人で最も多く、その他は九州全域にまたがっているという。センターでの実際の治療は、8月に開始される予定。
 センターは、開業4年目以降の患者数を年間800人と見込んでおり、一般質問で古川知事は「(診察の申し込みに関する)問い合わせが多く、十分に達成可能」との認識を示した。

プール熱 流行の兆し…静岡 indexへ

 静岡県は13日、発熱や喉の炎症、結膜炎の症状が表れる「咽頭結膜熱」(プール熱)が流行の兆しを見せていると発表した。
 6月3~9日に県内89定点医療機関を受診した患者の平均は0・98人で、同時期で比較すると過去10年間で最も多かった。
 県疾病対策課は「手洗いやうがいを徹底するとともに、患者とのタオルの共用などを避けてほしい」と呼びかけている。
 プール熱は、5~7日の潜伏期間を経て、38度以上の高熱が出て、喉の炎症による痛みのほか、目の充血やかゆみなど結膜炎の症状が表れる。患者の約6割は5歳以下という。

医師免許ないのにがん患者診察した放射線技師 indexへ

 医師免許がないのに医療行為を行ったとして、神奈川県警は13日、東京都八王子市館町、診療放射線技師塚本正人容疑者(47)を医師法違反(無資格医業)容疑で逮捕した。
 発表によると、塚本容疑者は医師免許を持っていないのに、昨年11月上旬~今年1月20日頃の計3回にわたり、がんを患う同県藤沢市の40歳代の会社員男性に対し、男性の自宅などで診察や投薬などの医療行為を行った疑い。塚本容疑者は容疑を認め、「約2700万円の借金があった」と供述しているという。
 塚本容疑者は「診察代は要らないので、薬代を払ってほしい」として、市販のサプリメントをがんに効く薬と偽り、計約270万円でこの男性に売りつけていたといい、県警は詐欺容疑でも捜査する。

市販サプリ、がんに効くと270万円で患者に indexへ

 医師免許がないのに医療行為を行ったとして、神奈川県警は13日、東京都八王子市館町、診療放射線技師塚本正人容疑者(47)を医師法違反(無資格医業)容疑で逮捕した。
 発表によると、塚本容疑者は医師免許を持っていないのに、昨年11月上旬~今年1月20日頃の計3回にわたり、がんを患う同県藤沢市の40歳代の会社員男性に対し、男性の自宅などで診察や投薬などの医療行為を行った疑い。
 塚本容疑者は「診察代は要らないので、薬代を払ってほしい」として、市販のサプリメントをがんに効く薬と偽り、計約270万円でこの男性に売りつけていたといい、県警は詐欺容疑でも捜査する。

医師・歯科医師24人、免許取り消しや医業停止 indexへ

 犯罪などの不正が明らかになった医師・歯科医師について、厚生労働省は12日、計24人の行政処分を決めたと発表した。
 同省は医道審議会医道分科会に計34人の審査を諮問し、その答申を受けて処分内容を決定した。残りの10人は厳重注意とした。処分の発効は26日。
 最も重い医師免許取り消し処分を受けたのは、覚醒剤取締法違反で実刑判決が確定した長田純医師。長田医師は、2006年にも医業停止3年の処分を受けており、同省では「今回は2回目の処分のため、厳正な対応となった」とする。
 2010年に豊胸手術を受けた女性(当時37歳)を麻酔の投与ミスで死亡させたとして、業務上過失致死罪で罰金100万円の略式命令が確定した深田民人医師は、医業停止1年6月の処分となった。
 医業停止1年以上の処分を受けた医師・歯科医師は次の通り。(敬称略、カッコ内は事件当時に所属していた医療機関と所在地)
 【医師免許取り消し】長田純(所属医療機関なし)【医業停止3年】榎本寛(榎本医院、大阪府大東市)▽垣内仁(かきうち耳鼻咽喉科・アレルギー科、兵庫県篠山市)【医業停止1年6月】深田民人(福岡コムロ美容形成クリニック、福岡市)
 【歯科医業停止1年6月】赤沢洋(岡山赤十字病院=岡山市、おおもり歯科=岡山県倉敷市)▽渡辺郁夫(柏スマイル歯科クリニック、千葉県柏市)

人工乳房、7月から保険適用…患者負担が大幅減 indexへ

 乳がんの全摘手術後の、乳房再建に使う人工乳房の保険適用が国内で初めて、12日開かれた厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で承認された。
 7月から保険が適用される。自費診療で100万円程度かかっていた患者負担が、大幅に軽減されることになり、患者にとって朗報だ。
 保険適用が認められたのは、米アラガン社の人工乳房(6万9400円、患者負担は通常その3割)と、人工乳房を入れるために皮膚を伸ばす組織拡張器(3万2100円)。昨年9月に薬事承認を受けていた。
 保険には月の負担上限額(一般的な所得の場合約8万円)を定めた高額療養費制度があるため、手術代などを含めた患者負担は大幅に軽減される。日本では1年に約6万人が乳がんを発症。うち約2万人が全摘手術による乳房再建の対象になるとみられる。

新医療拠点、発達障害診断・病児保育も実施…福岡・行橋 indexへ

 京築地区の新たな医療拠点となる行橋京都メディカルセンター(福岡県行橋市東大橋)が完成し、関係者向けの内覧会が開かれた。
 今月27日にも急患の受け入れを始め、発達障害の診察や病気になった幼児の保育などの体制も夏までに整える。
 メディカルセンターは、行橋京都休日・夜間急患センター(同市中央)の老朽化に伴い、京都医師会が約4億6000万円をかけて昨年7月から建設を進めてきた。運営は京築広域市町村圏事務組合が手がける。
 2階建てで、延べ床面積は既存施設の約3倍にあたる1946平方メートル。休日・夜間の急患対応として内科、小児科、歯科の各診療科や調剤コーナーを備えるほか、新型インフルエンザなどの患者に対応するため、発熱外来も新たに設けた。
 病気になった生後4か月~小学3年の子どもを預かる「病児病後児保育」も、2階の保育室(4室)で実施する。1階の発達障害診断と合わせ、子ども未来研究センター(福岡市)に運営を委託し、7~8月から業務を始める予定。
 国道10号行橋バイパス沿いの好立地に、140台分の駐車場もあり、利用者の利便性が高まりそうだ。
 内覧会には行政や議会、医療関係者らが参加し、施設内を見学したり、スタッフから説明を受けたりしていた。前田五十雄・看護師長(64)は「授乳やおむつ交換ができる部屋もあり、患者のプライバシーに配慮した作りになった」と歓迎する。行橋市の八並康一市長は「発達障害の診断は北九州市に行かないと受けられなかったので、役立つと思う」と話した。
 メディカルセンターの隣には、京都医師会館と同医師会看護高等専修学校が入居する棟(3階建て)も完成し、8月1日に業務を始める予定。

インフル流行対応4段階に…WHO、指針を改定 indexへ

 世界保健機関(WHO)は10日、インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)に備えて各国が取る対策に関する指針を改定して公表した。
 6段階の数字による対応レベルの分類を廃止するほか、重症度などのリスクを考慮して各国の状況に合わせた対策を求めている。
 改定指針は、インフルエンザの対応レベルを「通常期」「警戒期」「パンデミック期」「移行期」の4段階で連続的に表すことを定めた。警戒期は新たなインフルエンザウイルスが発生し、人への感染が始まった段階。パンデミック期は人の感染が広範囲に広がり、しかも重症者が多い状況を指す。移行期は、感染が峠を越えて終息に向かう時期を示す。現在の中国の鳥インフルエンザ(H7N9型)は警戒期にあたる。

心膜で大動脈弁形成手術…群馬・桐生厚生病院 indexへ

 桐生厚生総合病院(丸田栄院長)は5日、大動脈弁疾患の患者に対し、患者自身の心膜を使って大動脈弁を形成する手術を今年度から実施すると発表した。
 東邦大医療センター大橋病院(東京都目黒区)の尾崎重之・心臓血管外科教授(52)が非常勤医として執刀し、既に4月24日に70歳代男性に初の手術を行い、予後も良好としている。同種の手術を受けられる医療機関は「北関東で唯一」(桐生厚生総合病院)という。
 大動脈弁は、全身に血液を送り出す左心室と大動脈の間にある。大動脈弁の手術は、弁が硬化して狭くなる「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」や、弁が正常に閉まらずに血液が逆流する「大動脈弁閉鎖不全症」などの患者に対して行われてきた。
 従来は、機械弁などの人工弁を用いる手術が主流だったが、術後に拒絶反応を起こすリスクがあり、血栓ができて脳梗塞を発病する可能性もあるため、患者は血栓ができないようにする薬を飲み続けなければならなかった。
 尾崎教授は、患者自身の心膜を使うことで拒絶反応の恐れがない手術法を、第一人者として確立した。2007年4月の初手術以降、全国20以上の医療機関で、約1000件の施術例があるという。
 5日に記者会見した尾崎教授は「人工弁は約100万円かかるが、自己心膜を使えば(弁の)費用はかからない。自分の組織なので体にも優しい」と強調する。ただ、長期的な耐久性は不明で、「生体弁と同じく、15年ほどで耐久性がくると思われる」としている。
 桐生厚生総合病院での手術は、同病院の村岡理人・循環器科診療部長(49)が尾崎教授の元同僚だったことから実現した。尾崎教授は月2、3回来院、手術などに当たるという。尾崎教授は「この手術には名人芸がいるわけではない」とも述べ、後進を育てる考えを示した。

「無料」福祉医療を存続…愛知 indexへ

 愛知県は3日、2014年度からの見直しを検討してきた原則無料の子供や障害者などの福祉医療制度について、当面は存続させると発表した。利用者が一部負担する案を検討していたが、市町村の反発が根強いことなどから導入を見送った。
 県は1月、診療1回300円・入院1日100円などとする一部負担に関する3つの素案を作成し、市町村に示した。市町村からは「財政的な視点だけでなく、少子化対策など全体の視点が必要」「消費税増税の時期と重なることを考慮すべき」などの意見が出ていた。
 3日記者会見した大村秀章知事は「無料化は市町村の政策判断で行われている。足並みをそろえるような制度を今すぐ設けることは難しい」と語った。所得制限の導入については「研究を深めていきたい」と述べた。福祉医療費は県と市町村の折半。2月の県内受給者数は約145万人で、今年度の県予算額は240億円。現行制度で推移すれば県の補助額は増加の一途で、行革の観点から制度の見直しが検討されていた。

水戸刑務所 常勤医ゼロ…「メリットない」 indexへ

 水戸刑務所(茨城県ひたちなか市市毛)と少年院・水府学院(茨城町駒渡)で、本来1人ずつ配置すべき常勤医が長期間不在となっており、受刑者の日常の健康管理や急患への対応が不安視されている。
 非常勤医はいるものの、1人当たりの診察時間は激減し、緊急時の薬剤処方も不可能。背景には深刻な医師不足や矯正施設で働く利点の少なさがあり、打開策は見当たらない。
■診察時間激減
 同刑務所は2009年9月から、同学院は12年4月から常勤医の不在が続いている。非常勤の医師は同刑務所に5人、同学院には2人が派遣されているが、週1、2度、1日約4時間の往診にとどまり、常勤医にはとても及ばない。
 両施設は「今のところ問題は起きていない」としているが、健康状態を継続的に把握するのは難しい。また、医師法で薬剤の処方は医師に限られ、急患発生時は対応可能な非常勤医を探して職員が奔走せざるを得ない状態だ。
■「恐怖心拭えない」
 法務省矯正局や医療関係者は医師不足の原因として、〈1〉新臨床研修制度開始後、大学病院が研修医確保のために医師を引き揚げた〈2〉50歳前後の年収が約1000万円と開業医の半額〈3〉風邪など軽度な症例が大半を占め医療技術向上に直結しない〈4〉凶悪犯を含む受刑者の診察が不安――などを挙げる。
 水戸刑務所は収容者約530人の約4割が暴力団関係者で、3割以上が覚醒剤使用歴がある。ある医師は「受刑者からの暴行や不当なクレームへの恐怖心は拭えない」と話す。
 矯正環境の改善に取り組むNPO法人「監獄人権センター」事務局長の田鎖麻衣子弁護士(44)は「医師不在が続けば、刑務官が症状悪化のサインを見落とし、重症化や死亡につながりかねない」と指摘する。
■抜本的改革を
 両施設は「当直勤務無し。週休2日で、研究日も週2日」など待遇の良さを訴えるが、県医師会の小松満副会長(67)は「先端医療から隔離され、技術も知識も磨けない。刑務所で働くメリットはない」と断言する。
 国は医療業務の民間委託を進める方針だが、茨城県は10万人当たりの医師数が全国46位と深刻な状態だ。水戸刑務所の高橋哲也総務部長(56)も「民間委託は事実上無理」と声を落とす。
 受刑者らの処遇を検討する「水戸刑務所視察委員会」委員の手島研作・ひたちなか市医師会長(71)は「法務省が『刑務所専属医』の採用枠を新設するなど国を挙げた抜本的改革が必要。刑務所単体でどうにかできる状況ではない」と訴えている。
◆矯正施設の常勤医
 刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)92か所と少年院50か所、少年鑑別所21か所は医療法上の病院や診療所に分類され、最低1人の常勤医が必要。だが、このうち31施設では4月1日現在、常勤医が不在となっている。

薬の99%超、ネット販売解禁…政府方針 indexへ

 政府は一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売に関し、副作用のリスクが高いとされる第1類の一部を除き、解禁する方針を固めた。
 政府筋が3日明らかにした。全面解禁は見送るが、市販薬約1万1400品目のうち、99%超をネット販売可能にする。政府は利用者の安全性に配慮しつつ、消費者の利便性を向上させて経済活性化につなげたい考えだ。
 田村厚生労働相や稲田行政改革相ら関係閣僚が、近く最終調整を行う。副作用のリスクが最も高い1類のうち、安全性評価が確立されておらず、リスクが不明な一部の解熱鎮痛剤や鼻炎用薬などについては、ネット販売の対象外とする方向で一致。1類の中でも、一部の胃腸薬や発毛剤など、販売開始から一定期間が経過し、危険性が低いとされるものは解禁することにした。2類はすべてネット販売を解禁する。

重粒子線センターが開院…佐賀・鳥栖 indexへ

 九州初の重粒子線がん治療施設「九州国際重粒子線がん治療センター」の開院式が1日、佐賀県鳥栖市原古賀町の現地で行われた。
 別の病院で診断を受けた患者がセンターの医師から意見を聞くことができるセカンドオピニオン外来などの診察が始まり、8月からは前立腺がんを手始めに本格的ながん治療に着手する。
 センターは県と県医師会でつくる公益財団法人「佐賀国際重粒子線がん治療財団」が運営。患者の患部に光速の70%まで加速させた炭素イオンを集中的に照射し、がん細胞を死滅させる治療を行う。
 開院式には、古川知事や財団の十時忠秀理事長ら関係者約40人が出席。センター前でのテープカット後、十時理事長は「多くの方の期待が詰まった施設。一流のスタッフも集まっているので、日本一の診療施設になるよう、努力したい」とあいさつ。古川知事は「センターが(がん患者にとっての)希望の星となるよう、県としてもしっかり支え、訪れやすいような環境づくりをしたい」と述べた。
 センターでは、他の医療機関から紹介された前立腺がん患者が対象の「紹介外来」と、セカンドオピニオン外来(予約制)がスタート。この日は3人が診察を受け、すでに約30人の予約を受け付けているという。
 一方、センターの総事業費150億円は寄付や県の補助から賄うことにしているが、4月末現在で104億1000万円しか集まっていない。この点について古川知事は報道陣の取材に「最終的には(金融機関などからの)融資を受けずに150億円を集めるのが目標。今後3年間は県としても引き続き寄付を出す企業を探すなど努力したい」と語った。
 予約などの受付時間は平日の午前9時~正午、午後1時~5時。予約や問い合わせはセンター(0942・50・8812)へ。

薬ネット販売、結論出ず…新たな検討組織設置へ indexへ

 インターネットでの一般用医薬品(市販薬)の販売をどこまで認めるかを議論してきた厚生労働省の検討会は31日、結論のとりまとめを断念し、医療業界など慎重派とネット業者など推進派の意見を両論併記した報告書案を大筋了承した。
 これを受けて厚生労働省は、市販薬の成分などからネット販売の適否を個別に判断する新たな検討組織を設ける方針を固めた。
 新たな検討組織は、医薬品の専門家らを中心メンバーに、依存性など成分による効き方の特性や、子どもや妊婦など使用が禁じられている人がいるかどうかなどに焦点を当てて審議を進める。市販薬は副作用の危険性ごとに1~3類に区分けされているが、新たな検討組織では、より細かいグループ分けでどの薬のネット販売を認めるべきかが議論される見通し。

心臓3D画像でカテーテル…岡大グループ indexへ

 岡山大病院の赤木禎治准教授らの治療グループは30日、心臓内部で複数の穴が開いている状態の多孔性心房中隔欠損症について、3次元画像処理技術を用いることでカテーテル(管)治療が可能になったと発表した。
 同症患者の96%で治療が成功したといい、患者に大きな負担がかかる開胸手術を避けることができるとしている。
 心房中隔欠損症は、心臓の左心房と右心房を隔てる筋肉の壁(心房中隔)に、生まれつき穴が開いている病気。約1500人に1人の割合で見つかり、進行すると、心不全や脳梗塞につながる不整脈などを引き起こすことがある。
 岡山大病院では2005年以降、同症において国内最多となる700例の治療を実施。大半が直径約3ミリの細いカテーテルを足元から入れて穴を塞ぐ内科治療だが、患者の約9%は心房に複数の穴が開いている多孔型で、胸部を切開しない状態では各穴の位置を把握することが難しく、開胸する外科手術を選択することが多いという。
 同病院では、先端から超音波を発する管を口から食道に入れ、心臓内部を3次元画像化。その画像で穴の位置や大きさを正確に診断できるようになり、カテーテル治療が可能になったという。11年以降、27人の多孔性患者に実施し、26人で成功が確認された。
 赤木准教授は「2~3週間かかる入院が必要な外科手術を避けることができる。新たな診断方法を広めたい」としている。

脊柱側彎症の関連遺伝子発見…理研、慶大などのグループ indexへ

 理化学研究所と慶応大整形外科などのグループは、思春期に起きる原因不明の脊柱側彎症の発症にかかわる遺伝子「GPR126」を発見したと発表した。
 脊柱側彎症は、背骨が横にねじれて「く」の字に曲がる病気。生まれつきの変形などでも起きるが、思春期に発症する原因不明のタイプが最も多く、日本人の約2%に起きるとされる。
 研究チームでは、このタイプの側彎症の日本人患者と、病気のない人の計約2500人の全遺伝情報(ゲノム)を解析して比較。関係しそうな部位を絞り込み、別の約2万5000人のゲノムと比較して、遺伝子を特定した。
 思春期の側彎症には複数の遺伝子が関わっており、遺伝子の変異部位によって、症状が違う可能性が指摘されている。研究にあたった慶応大整形外科准教授の松本守雄さんは「将来的には、遺伝子検査に基づいた症状予測と治療法の選択、さらには新治療法の開発につなげたい」と話している。

HIV感染 過去最多6人…和歌山 indexへ

 和歌山県は2012年の県内のエイズウイルス(HIV)感染者とエイズ患者数を発表した。
 感染者は6人で過去最高となり、人口10万人当たりでは、全国の都道府県で8番目に高かった。県や和歌山市はHIV感染の無料検査を強化するなどして、早期発見に力を入れる。
 県によると、12年のHIV感染者は前年より1人増。感染後の潜伏期間を経て、何らかの症状を発症したエイズ患者数は3人だった。厚生労働省の調査によると、県内の人口10万人当たりのHIV感染者数は0・603人だった。
 県内の感染者数は近年、増加傾向にあり、逆に患者数は07年の6人をピークに減少しつつある。県健康推進課は、県内でHIV検査の利用が広まり、感染が発覚しやすくなったと分析。発症を遅らせる治療法の発達も患者数の抑制につながっているという。
 県内の各保健所は随時、健康相談の窓口で検査を受け付けており、県立の7保健所で12年に検査を受けた人は、10年前の4倍以上となる305人だった。
 県などは「HIV検査普及週間」(6月1~7日)に合わせ、2日に和歌山市内で、8日に田辺市内で休日検査を実施。いずれも無料で、匿名で予約することができる。約1時間で検査結果が判明するという。
 先着順で、予約は和歌山市(073・433・2261)と田辺(0739・26・7933)両保健所。

意識障害など8人で副作用 子宮頸がんワクチン indexへ

 厚生労働省は28日、グラクソ・スミスクライン社製の子宮頸(けい)がんワクチン「サーバリックス」の副作用で最近3年間に意識障害などを伴う急性散在性脳脊髄炎(ADEM)が3人、手足のまひなどを伴うギラン・バレー症候群が5人あったと発表した。
 同省によると、死亡例はない。この3年間で推計273万人が接種を受けた。これらの症状はMSD社の子宮頸がんワクチン「ガーダシル」やインフルエンザワクチンなどの接種後にも確認されている。
 厚労省の担当者は「予防接種では一定の割合で副作用の出るリスクは避けられない。子宮頸がんワクチンに限らず、接種後に異常を感じたら医療機関に相談してほしい」と呼び掛けている。

医師免許なしに診療容疑 埼玉の男ら2人逮捕 indexへ

 神奈川県警は29日、医師免許がないのに医療行為をしたとして医師法違反と詐欺などの疑いで、さいたま市中央区、元医師でアルバイト河村直樹(かわむら・なおき)容疑者(59)と、東京都世田谷区、医療コンサルタント山形精隆(やまがた・きよたか)容疑者(48)を逮捕した。
 県警によると河村容疑者は東京、千葉、神奈川の病院で2012年9月~今年1月、約50人に内科診療や死亡診断交付などを行ったと供述。約25万円の報酬があったとみて調べている。
 河村容疑者の逮捕容疑は12年11~12月、実在する医師の医師免許証のコピーを、神奈川県茅ケ崎市に提出して同市内の病院に勤め、給与約5万円をだまし取るなどした疑い。山形容疑者は紹介役だった。
 県警によると、医師免許証のコピーを使われた医師からの届け出で発覚した。厚生労働省によると河村容疑者は10年12月、準強制わいせつ罪で有罪となり、12年3月、医師免許を取り消された。

「降圧剤」で厳重注意 販売元に厚労省 バルサルタン 臨床試験問題 indexへ

 降圧剤「バルサルタン」をめぐる臨床試験問題で厚生労働省は27日、製造・販売元の「ノバルティスファーマ」に対し、口頭で厳重注意した。この問題で国が行政指導したのは初めて。
 同省は、京都府立医大や東京慈恵会医大など5大学での臨床試験の統計に関わったノ社の社員(すでに退職)が、社名でなく、当時所属していた大阪市立大非常勤講師の肩書で論文に名を連ねていた点を問題視。「信頼を揺るがし、業界に与える影響が大きい」(経済課)として、ノ社に再発防止策を要求。専門家から論文不正の疑いも指摘されているため、問題の全体像の検証を求めた。
 ノ社は28日、「極めて深刻に受け止めており、引き続き調査を進めたい」と話した。
 この問題をめぐっては田村憲久厚労相が24日の閣議後記者会見で「強く指導せざるを得ない」と述べ、行政指導を示唆。日本医学会も同日、「許し難い行為」と強く非難していた。

仏で新型コロナウイルス、初の死者 indexへ

 フランス保健省は28日、新型コロナウイルスに感染した男性が死亡したと発表した。
 このウイルスによるフランスでの死者は初めて。
 AFP通信によると、死亡した男性は65歳。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイから帰国後、感染が発覚し、先月23日から仏北部で入院していた。仏ではこの男性を含む2人の感染が確認されている。
 23日付の世界保健機関(WHO)の発表によると、新型コロナウイルスの感染はサウジアラビア、UAE、ヨルダン、カタール、チュニジアの中東・北アフリカ各国のほか、欧州でも英国、フランス、ドイツ3か国で確認されている。感染者数は計44人、うち死者は22人だった。WHOは加盟各国に監視の継続を呼び掛けている。

不妊治療 助成回数制限を撤廃…鳥取県が独自負担方針 indexへ

 鳥取県は、体外受精などの不妊治療での県の公費助成の回数制限を撤廃し、国の上限回数を超える治療には、県が独自に1回7万8000円を助成する方針を決めた。
 不妊に悩む人たちの経済的負担の軽減を図っていく。6月定例県議会に1192万円の補正予算案を提案し、可決されれば7月から回数制限を撤廃する。
 公費助成は、保険がきかない高度治療(体外受精、顕微授精)が対象で、国が2分の1、県が2分の1を負担。県はさらに1回最大2万5000円を上乗せし、助成額は1回最大17万5000円となっている。
 国の助成制度には年度ごとに回数制限があり、利用1年目は3回まで、2~5年目は年2回までで、通算5年で10回となっている。国などによると、不妊治療で妊娠した人のうち、治療6回目までに9割の人が妊娠しているといい、県内では「治療は続けたいが、助成がないと、自費だけでは4回目以上は踏み込めない」との声も上がっていたという。
 県内では、助成制度が始まった2004年度の申請件数は114件だったが、昨年度は990件に増加している。
 県は「期間を空けずに継続して治療を行うことが大切。回数制限をなくし、妊娠できる機会が増えるように支援していきたい」としている。

病児保育所 奈良県内4か所に全国最低水準 indexへ

 病気になった子供を預かり、看護師や保育士が世話をする病院併設型の「病児保育所」が県内で今年度、新たに生駒、桜井両市でオープンした。すでにある奈良、橿原両市の施設では年間利用者が約200人に上り、「子供は急に病気になる。安心して預けられるので本当に助かる」と感謝する声が寄せられている。ただ、県内の施設の数は4か所と全国で最も少ない水準で、運営も既存の2施設はいずれも赤字と、課題は多いようだ。(守川雄一郎)
 「約2年の準備を経て、この日を迎えた。ただ、極めて難しい仕事。油断すると、あっという間になくなってしまうのでは、と危惧する」
 10日、桜井市の済生会中和病院で開かれた病児保育所「さくらんぼ」の開所式。運営責任者の柴田優・小児科部長は出席した約40人にこう語りかけた。
 病児保育所は同病院の小児病棟に併設され、保育士2人、医師3人、看護師14人が多い場合で1日3人の病児(10歳未満)を保育する。保育ルームは33平方メートル。絵本や人形があり、感染症対策の仕切りも備えている。
 一方、態勢を整えるためには相応の運営費がかかる。全国の多くの病児保育所が同じ問題を抱えている。
 1日の利用料は2000円。市と県からあわせて最大728万円の補助金が支給されるが、初年度は「赤字の見通し」という。
 柴田部長は「病児保育所は、働く女性らの子育て支援には欠かせない施設。どうすれば息長く運営できるのか考えたい。ここからが正念場」と力を込める。

 奈良市の市立奈良病院に昨年4月に開所した「いちご保育園」。12年度は0~10歳の231人が利用した。今年度も多い日は5人の定員がすぐに埋まる。「子供の急な体調変化に対応してほしい」という母親らの声に、今年度からは当日受け付けも始めた。多くの利用者が喜んでいる。
 市によると、国と、市独自の補助金を合わせて、昨年度は830万円を支給した。しかし、経営は赤字だ。谷美幸園長は「風邪の流行期といった季節による利用のばらつきもあり、運営には難しい点が多い。より多くの子供を預かれるようにしたいのだが」と話す。
 熱を出した2歳の長女を預けていた市内の会社員の女性(36)は「仕事先の都合もあり、急に休めないのですごく助かっている。5歳の長男とあわせて、2か月に1回はお世話になる」と感謝する。
 また、大阪市内の会社に勤務し、これから、9か月の長男を預けるつもりという女性(33)は「大阪まで子供を連れて行けないので、奈良市内に病児保育所があるのは安心」と話す一方で、「遅刻や早退をしないと送り迎えが間に合わない。これで延長保育があればうれしいのだが」と話す。

 県子育て支援課の担当者は県内の現状について、「病児保育施設は都市部だけではなく、県内にバランスよくあるのが理想。ただ、開設する市町村や病院の財政負担が大きいため、なかなか広がらない」と明かす。
 専門家は普及しない背景として、国の基準に合わせた設備と人員配置にコストがかかることや、子供の容体が変わりやすく、急なキャンセルが多いことなどを挙げている。鈴木亘・学習院大教授(社会保障論)は、全国病児保育協議会が加盟350施設を対象に11年度実施した調査で74%が赤字経営だったことをふまえて「特に地方では、市場原理に任せた経営は成り立ちにくい。保険制度を創設し、県民全体で支え合う仕組みづくりが必要だ」と指摘する。
 Q 病児保育って何?どんなタイプがあるの?
 A 働く女性や一人親世帯の子育て支援策として、1994年に国の補助金制度が開始されて広まった。医療機関が設置する「病院併設型」のほか、保育所が設ける「保育所併設型」、独立した「単独型」などがある。
 Q どんな症状の時に預かってもらえるの?
 A 「病児対応型」の施設では入院は必要ないが、風邪にかかったり、けがをして安静にしなければならなかったりする子を受け入れる。隔離保育スペースを持ち、風疹やインフルエンザなどの感染型疾患にも可能な限り対応する。
 このほか、回復途中の子供用の「病後児対応型」、保育中に発病した場合に保育園などで緊急対応する「体調不良児対応型」がある。
 Q 今後の展開は?
 A 首都圏では2000年代以降、NPO法人が運営する「自宅派遣型」の病児保育事業が「個人の事情に応じて、きめ細かく対応してくれる」と人気を呼んでいる。子育て世代の多い地方の都市部でもサービスを望む声は多い。

宮城・石巻地域の救急 夜間休日ピンチ indexへ

 震災で医療機関にも大きな被害が出た宮城県石巻地域で、夜間や休日の救急医療が危機に直面している。
 高度な救命治療を行う地域唯一の医療機関、石巻赤十字病院(石巻市蛇田)に、軽症患者まで押し寄せているためだ。自治体や医師会などは「軽症は石巻市夜間急患センター(同市日和が丘)や当番医へ」と呼びかけているが、患者の受診行動を変えるのは難しいようだ。
■2時間待ち
 5月21日午後7時過ぎ。石巻赤十字病院の救命救急センターに救急車3台が相次いで到着した。脳卒中や交通事故、病状悪化による他病院からの搬送など、午後10時を過ぎても救急車は間を置かずに来る。この日夕方から翌朝までの救急車での搬送は13人。石橋悟センター長は「救急車が集中する時間があったが、きょうは医師が3人いたので何とかなった」と話した。
 1階ホールでは、午後10時を過ぎても外来患者や付き添いの家族ら50人以上が待っていた。近所の女性は「きょうは2時間かかった」と疲れた様子だった。
 同病院の救急患者は震災後、増加している=グラフ=。中でも午後5時から翌朝午前8時半までの「時間外」患者をみると、震災前の2010年は月800人前後だった。それが12年は1200人~1600人と2倍近くに増えた。今年に入って1100人前後で推移しているが、時間外の救急車担当の医師は5月から原則2人へと1人減った。時間外の外来は原則医師3人で対応する。
 時間外の外来で、入院が必要になる病状の患者は1割に満たない。石橋センター長は「軽症患者が増えれば、重症患者の対応が手薄になりかねない。軽症患者にとっても、長時間待つなど良いことはない」と話す。
■一方は閑散
 一方、前日の20日の市夜間急患センターは、午後7時時点の患者はゼロ。午後8時頃になると10人ほどが来院した。時々、赤十字の時間外を利用している中2男子の母(50)は初めて来院し、受付から30分以内に支払いまで済ませた。「小児科の専門医もいて安心した。こんなに早く診察が終わるなんて知らなかった」と話す。
 翌朝までの外来患者は17人。同センターの田中裕太副所長(内科、小児科)は「センターの存在が認知されていないのかもしれない。もっと来ていただきたいのだが……」と苦笑した。
■募る危機感
 石巻市や周辺自治体、医師会などは昨年12月、「自分で歩ける夜間、休日の患者は市夜間急患センターや当番医へ」と呼びかけるチラシを作成した。「赤十字がパンクしてしまう」という危機感があったからだ。
 同センターは震災前、沿岸部にあった市立病院に併設されていたが、津波で被災。11年12月、市中心部の石巻中央公民館隣に移転して再開した。
 同センターの1~4月の合計患者数は、12年、13年とも約3300人で、1日平均30人弱。医師は内科、外科、小児科の3人で、態勢は赤十字の時間外外来とほぼ変わらない。田中副所長は「歩いて来られる病状のほとんどは急患センターで対応できる」と話す。
 2016年夏までに石巻駅前で開院予定の新市立病院は、軽症からある程度の重症までの「1・5次救急」を担う予定だ。それまでの3年間、石巻の夜間救急を破綻させないためには、住民のマナーに頼るしかないのが現状だ。

製薬元社員の臨床試験関与、日本医学会が批判 indexへ

 製薬企業ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」を巡る利益相反問題で、日本医学会(高久史麿会長)は24日、東京都内で記者会見を開き、京都府立医大などが実施した薬の効果を調べる臨床研究に同社の元社員(今月退職)が深く関与していたことについて、「許しがたい行為で二度とあってはならない」と厳しく批判した。
 同学会は、再発防止のための運用指針を強化し、加盟する医学系の118の学会や大学に徹底させる。
 同大の研究は、3000人の患者を対象に、ディオバンを使うと血圧の低下が同じでも、従来薬に比べて脳卒中や狭心症が45%減ったという内容。元社員はデータ解析など中心的役割を担ったが、関与そのものや社員であることを伏せて論文が発表され、同社は宣伝材料に使っていた。

ウイルス特許「治療の妨げ」、WHOで問題提起 indexへ

 サウジアラビア政府は23日、ジュネーブで開催中の世界保健機関(WHO)総会で、新型ウイルスの特許権が治療法開発を阻害していると問題提起した。
 WHOも事態を重視し、ウイルスの知的財産権が情報の共有を妨げることがないよう、規制を強化したい考えだ。
 サウジアラビアのジアド・メミシュ保健省次官が、同国で感染が拡大した新型コロナウイルスの特許権はオランダのエラスムス医療センターが昨年9月に取得していたと公表した。昨年6月、サウジの医師が原因不明の肺炎で死亡した患者の検体を独断で同センターに送付したという。
 メミシュ次官によると、同センターは特許権取得後、製薬会社とワクチン開発に向けた契約を締結。外国政府がウイルスの提供を受けるには、知財権などに関する煩雑な取り決めに同意しなくてはならなくなった。同次官は「このため対策に遅れが出た」と批判した。

薬事法改正案と再生医療新法案、閣議決定 indexへ

 政府は24日午前の閣議で、薬事法改正案と再生医療新法案(再生医療安全性確保法案)を決定した。
 今国会に提出する。
 iPS細胞(人工多能性幹細胞)などを使った再生医療製品や、医療機器の承認について、審査手続きを簡素化し、早期の実用化を可能にする内容だ。
 薬事法改正案では、再生医療製品について、医薬品や医療機器とは別に「再生医療等製品」を新たに定義し、審査手続きを設ける。安全性などが確認されれば、販売期間を限定し、販売先を専門医に限るなどの条件をつけて早期に承認できる仕組みを導入する。安全対策についても、使用成績に関する調査や感染症の定期報告などを行うことを義務づける。
 政府の成長戦略の柱となる医療機器については、民間の第三者機関による認証を拡大し、迅速な普及を図る。法改正に伴い、薬事法の名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保法」に変更する。
 再生医療新法案では、医療機関が患者から採取した細胞の加工の外部委託を認める。

製薬会社元社員の臨床研究、厚労相「強く指導」 indexへ

 製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」を巡る利益相反問題について、田村厚生労働相は24日の閣議後の記者会見で「人(元社員)が入って研究等々に加わっていたにもかかわらず、その情報を公開していなかったのは公平ではない。強く指導しなければならない」と述べた。
 京都府立医大や慈恵医大などで実施した薬の効果を調べる臨床研究に同社の元社員が関与し、上司もそれを支援していたことが問題になっている。両大学は、ディオバンが従来の薬に比べて脳卒中や狭心症を大幅に減らすとする論文を発表。論文は、ディオバンの宣伝にも利用されていた。
 田村厚労相は「利益相反が起こる恐れがあるものに対しては、しっかり情報開示をするよう、それぞれの製薬会社にしっかり対応していただきたい」と強調した。

マダニウイルス、特効薬なし対症療法…山口 indexへ

 国内で初めて重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスを保有するマダニが確認された、と発表した国立病院機構岩国医療センター(山口県岩国市)は23日、タカサゴキララマダニが女性患者に付着していた時の状況などを説明した。
 国内でSFTS感染が確認された15人のうち、3人が県内の患者。専門家は「付着したら、医療機関で取り除いて」と呼びかけた。
 同センターでは、守分正・主任診療部長や消化器内科の谷岡大輔医師ら3人が記者会見。谷岡医師は、女性の右腕に付着していた体長約3ミリのマダニを見つけた時の状況について、「最初は黒いホクロかと思ったが、よく見るとマダニと分かった。ニュースで(症状などを)知っていたので、SFTSに考えが及んだ」と説明した。
 SFTSは有効な治療法が確立されていないため、国立感染症研究所(東京)と相談して決めた治療方針に沿って、利尿薬の投与や点滴などの対症療法を行ったという。谷岡医師は「女性は亡くなる可能性もあった。特効薬がないので、対症療法を積み重ねた。今回は貴重な生存例といえる」と話した。守分部長は「マダニにかまれた時の処置や感染予防、治療方針の決定などでは保健所や国との連携が必要と感じた」と述べた。

臨床研究に身分隠し参加、製薬会社の上司後押し indexへ

 製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバン」を巡る利益相反問題で22日、同社が京都府立医大や慈恵医大で実施した薬の効果を調べる臨床研究について、元社員(契約社員を経て今月退職)の関与を認め、上司もそれを支援していたとする報告書を、日本医学会など3学会に提出したことがわかった。
 両大学から発表された論文は、ディオバンが従来の薬に比べて脳卒中や狭心症を大幅に減らすというもので、年間1000億円売り上げるディオバンの宣伝にも利用されていた。同社は、データが意図的に操作されたかは「確認できない」とした。
 同社の調査を外部の第三者委員が検証した。同社は「国際的な利益相反の基準に照らし合わせて極めて不適切な行為だった」とし、再発防止策の検討を急ぐ。
 同社によると、元社員は、京都府立医大の臨床研究で、研究の要となる患者の症例を確定させる内部委員会などに参加。実際に約3000人のデータがそろうと、解析を一手に引き受け、その結果が論文に使われていた。
 元社員は、同社との関わりを伏せて、論文に名前が出る場合は「大阪市立大」の肩書を使っていた。関係者によると、元社員は同社の調査に対し「自分の解析はあくまで一つの例のつもりだった。実際の解析は医師が行うと期待していた」と話しているという。

タカサゴキララマダニからウイルス確認…国内初 indexへ

 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に感染した山口県内の60歳代の女性に付着していたマダニから、SFTSウイルスが検出されたことがわかった。
 関東以西に広く生息するタカサゴキララマダニ。同ウイルスを保有するマダニが確認されたのは国内初。
 山口県によると、女性は4月、国立病院機構岩国医療センター(山口県岩国市)に救急搬送され、右腕の皮膚下から体長約3ミリのマダニが見つかった。国立感染症研究所(東京)に送ったところ、タカサゴキララマダニと判明。個体から同ウイルスが検出された。女性は一時、呼吸不全に陥ったが、既に退院している。
 同ウイルスの感染者は1月に国内で初めて確認され、今月17日までに15人が感染し、うち8人が死亡。発症すると発熱などの症状が出るが、有効な治療法は確立されていない。山口大共同獣医学部の高野愛准教授(マダニ媒介性細菌感染症)は「活動する時期や場所について注意喚起でき、予防につながる」としている。
 ◆タカサゴキララマダニ 国内最大級のマダニで、成虫の体長は5~6ミリになる。森林や田んぼなどに生息。春から秋にかけて活動し、イノシシや馬、鹿などに寄生する。

生体移植で腎臓提供、5人が命にかかわる合併症 indexへ

 沖縄県浦添市の医療法人・八重瀬(やえせ)会同仁病院で行われた生体腎移植で腎臓を提供した女性が亡くなった問題を受け、日本移植学会が緊急アンケート調査を行った結果、既に明らかになっている死亡例2例のほかに、腹腔(ふくくう)鏡手術によって腎臓提供した5人が命にかかわるような合併症を起こしていたことが分かった。
 同学会など関係5学会は生体腎移植の新たな指針を作る方針。
 学会は2011年に腎移植手術を行った138施設に調査票を送付。92施設が腹腔鏡手術で腎臓摘出を行っていたと回答した。うち5施設で5人がこれまでに、腎臓摘出時に腸や血管を傷つけて出血するなどして重症となった。
 一方、死亡例については、学会が施設名を公表していないが、手術34日後に提供者の男性が亡くなったことが既に明らかになっている埼玉医大国際医療センターとみられる。八重瀬会同仁病院は回答していない。

昨年報告のエイズ患者447人…前年比26人減 indexへ

 厚生労働省は22日、昨年1年間に新たに報告されたエイズ患者は447人、エイズウイルス(HIV)感染者は1002人だったと発表した。
 患者数は前年より26人、感染者は54人減り、患者と感染者を合わせた計1449人は調査開始の1985年以降で過去6番目に多かった。一方、保健所などでの検査や相談件数は減少傾向で、同省は「患者、感染者ともほぼ横ばいにとどまっている。HIVへの社会的な関心の低下が懸念される」として、自治体に啓発の強化のほか、検査や相談を受けやすくするよう呼びかけている。
 発表によると、保健所などでの検査件数は前年比8件減の13万1235件、相談件数は同9423件減の15万3583件だった。検査、相談ともにピークは08年で、検査は4万件以上少なく、相談も7万件以上減った。

無免許「まつ毛エクステ」、失明のおそれも indexへ

 まつ毛に人工毛を貼り付ける美容法「まつ毛エクステンション(エクステ)」の施術を無免許で行ったなどとして、静岡市の5店舗の経営者と従業員計9人が美容師法違反の疑いで書類送検された。
 背景には、行政側が無届け店舗を把握することが難しく、店側も違法性を認識しながら施術を続けている実態がある。女性の気軽なおしゃれとして人気を集める一方で、失明のおそれもあり、県や眼科医はこうした実態に警鐘を鳴らしている。
 ◆美容師法の美容行為◆
 まつ毛エクステは、美容師法で定められた美容行為。美容師免許を持った美容師が、保健所に開設を届け出た美容所に限り、客に施術できる。
 静岡市保健所によると、市内で登録しているのは約1500店舗だが、原則として美容所の届け出を必要としていないネイルサロンやボディーエステ店などでも、まつ毛エクステの施術を行っている店舗がある。
 捜査幹部によると、今回、書類送検された経営者の店舗のほとんどは、繁華街の雑居ビルやマンションの一室で、看板はなく、口コミで訪れる利用客が多いという。
 同保健所は「『まつ毛エクステの店を開きたい』という相談に対しては美容師法の概要を説明しているが、無届け店舗の実態を把握するのは困難。どう指導したらいいか分からない」と話し、手をこまねいている。
 ◆高い技術の施術者も◆
 まつ毛エクステの業界団体は厚生労働省に「まつ毛エクステの資格と美容師免許を切り離してほしい」と要望している。
 業界団体などによると、美容師の養成課程では、まつ毛エクステに関する知識や技術を習得する機会が少ないという。
 一方、まつ毛エクステに関わる業界団体の多くは筆記や実技を伴う検定試験を導入。高い技術で安全に施術できるか判定するなど、まつ毛エクステ専門の施術者の養成に努めている。
 一般社団法人「NEA日本まつげエクステ協会」(大阪市)の担当者は「まつ毛エクステに関しては、検定などにより、美容師以上に安全で高い技術を持つ施術者は多い」と話す。
 今回、書類送検された女性経営者の一人は「検定や講習を受けており、施術しても大丈夫と思った」などと話しているという。

肉食男性ご用心、糖尿病発症リスク4割アップ indexへ

 牛肉や豚肉の摂取量が多い男性は、糖尿病の発症リスクが4割高まることが、国立がん研究センターなどの調査でわかった。
 糖尿病やがんなどの病気がない全国の男女約6万4000人を約5年間追跡し、食肉の摂取量も尋ねた。
 追跡中、男性681人、女性497人が糖尿病を発症。肥満や喫煙などの影響を取り除いた上で、1日あたりの食肉摂取量ごとに4グループに分け、糖尿病発症との関係を調べた。
 その結果、男性では、食肉の摂取量が最も多いグループ(1日あたり100グラム以上)は少ないグループに比べて、糖尿病の発症リスクが1・36倍だった。中でも牛肉や豚肉は、糖尿病の発症リスクが1・42倍と高かった。鶏肉や、ハム、ソーセージなどの加工品との関連はみられなかった。
 一方、女性は、食肉の摂取量と糖尿病発症との関連はみられなかった。

風疹予防接種後の妊娠、中絶不要…厚労省研究班 indexへ

 風疹の流行拡大を受け、風疹や予防接種に関する二つの厚生労働省研究班は21日、「予防接種後に妊娠がわかっても人工妊娠中絶を考える必要はない」とする連名の緊急通知を日本産科婦人科学会などに行い、情報の周知徹底を求めた。
 風疹に感染した胎児は、白内障や難聴、心臓病などが起きる「先天性風疹症候群(CRS)」になることがある。
 通知では、予防接種後まもなく妊娠がわかったケースでCRSの子どもが生まれた報告は世界的になく、「人工妊娠中絶等を考慮する必要はない」とした。

治療薬の利益相反問題、千葉大が内部調査委設置 indexへ

 高血圧治療薬バルサルタン(商品名ディオバン)を巡る利益相反問題で、千葉大は21日、同大で実施した臨床研究や論文について調べる内部調査委員会を設置したことを明らかにした。
 研究は、高血圧患者1021人が対象。ディオバンを使った患者は、他の薬を使った患者と比べ血圧の下がり方は同等だが、腎臓を守る効果が高いとしており、2011年の日本高血圧学会誌に論文が掲載された。
 論文には、ディオバンを販売する製薬企業ノバルティスファーマの元社員(契約社員を経て今月退社)が、同社との関わりを伏せて「大阪市立大」の肩書で名前を載せている。
 元社員が関与したディオバンの研究は、京都府立医大の論文計6本が内容に不備があるとして撤回され、研究責任者の教授は今年2月に辞職。京都府立医大のほか、慈恵医大、滋賀医大が内部調査を進めている。

風疹で胎児障害、半年10人…大流行時の1年分 indexへ

 妊婦が風疹に感染したことで胎児に障害が出る「先天性風疹症候群(CRS)」の報告数が昨年10月からの約半年で10人に上ったことが、国立感染症研究所のまとめで分かった。
 大流行のあった2004年の1年間と同数だった。さらに増えることがないよう、同研究所はワクチン接種を呼びかけている。
 妊婦が風疹にかかると、胎児も感染して白内障や難聴など目や耳、心臓に障害が残ることがあり、CRSと呼ばれる。同研究所によると、風疹患者は12年前半から増え始めたが、同年10月半ばに兵庫県の女児でCRSが報告された。その後、13年4月半ばまでほぼ毎月、大阪府や愛知県、東京都などで報告され、過去10年で最多の04年1年分に並んだ。同研究所の多屋馨子室長(小児感染症学)は「女性は妊娠前にワクチンを接種してほしい。(持病を持ち)接種できない女性もいるので、周囲の男性も接種を検討してほしい」と語る。

医療機器・薬の審査を迅速化…5年で職員4割増 indexへ

 政府は、最先端の医薬品や医療機器の承認審査を担う独立行政法人の医薬品医療機器総合機構(本部・東京)の組織を強化する方針を固めた。
 職員を今後5年で約4割増の1000人規模に増員する。年内に大阪市に西日本事務所を新設し、研究開発施設が集まる関西圏での再生医療の実用化などを後押しする。新薬などの迅速な承認を可能とすることで、医療産業の国際競争力を高める狙いがある。
 政府は、6月にもまとめる健康・医療戦略にこうした方針を明記する予定だ。審査員増員については、年内に策定する同機構の「第3期中期計画」(2014~18年度)に盛り込む。
 同機構に関しては、発足後約10年と新しく、審査員の半数が30歳以下で、経験不足が審査の遅れの一因とも指摘されている。人員増員で、医師や民間の研究開発担当者といった経験者の採用も検討する。

乳がん「切らず完治」へ重粒子線治療の臨床試験 indexへ

 放射線医学総合研究所(千葉市)は今月、乳がんに対し、切らずに完治を目指す重粒子線治療の臨床試験を始める。
 従来の乳がん治療は、手術と放射線・薬物治療の併用が一般的だが、同研究所は「持病のために手術できない人や、手術を望まない人などに、体への負担が少ない治療の選択肢が広がる可能性がある」としている。
 重粒子線は、がんに強力なエネルギーを集中させられる特殊な放射線。同研究所によると、現在治療を行う施設は世界で6施設だけ。うち3施設が日本にあり、骨軟部腫瘍、肺がん、肝臓がん、前立腺がんなどに用いられているが、乳がんの完治を狙うのは初めてという。
 近年、欧米で照射範囲を絞った放射線治療の有効性を示す研究報告が増えたことや、がんへの照射位置がずれないように柔らかい乳房を固定する装具が開発されたことなどにより、乳がんへの応用が計画された。

羊水検査でダウン症を「異常なし」…賠償提訴 indexへ

 北海道函館市の産婦人科医院「えんどう桔梗(ききょう)マタニティクリニック」で2011年、胎児の染色体異常の有無を調べる羊水検査でダウン症との結果が出ていたのに、病院側が妊婦に説明する際に異常なしと伝えるミスがあったことがわかった。
 妊婦は同年9月に男児を出産、男児は合併症のため約3か月後に死亡した。両親は「出産するか、人工妊娠中絶をするかを自己決定する機会を奪われた」などとして、遠藤力院長らに1000万円の賠償を求める訴訟を函館地裁に起こした。提訴は今月13日付。
 訴状などによると、母親は11年3月、超音波検査で胎児に異常のある可能性を指摘され、同4月に羊水検査を受けた。遠藤院長は「結果は陰性」としてダウン症ではないと説明。しかし、出産後にダウン症とわかり、転院先の病院の医師が同クリニックの診察記録をみて、検査で染色体異常が見つかっていたことがわかった。

熊本大医学部付属病院に手術支援ロボ導入 indexへ

 熊本大医学部付属病院(熊本市中央区本荘1)は、最新鋭の内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」を導入し、報道機関に19日、公開した。
 患者の腹部に開けた穴からカメラと、細かい動きができるアームを挿入し、遠隔操作で前立腺がんの摘出などができる。早ければ6月から、実際に使い始める予定。
 ダビンチは米国の医療機器メーカーが開発。2012年4月からこの装置を使った前立腺がんの手術に保険が適用されるようになり、全国の医療機関で導入が進んでいる。最新型の「ダビンチSi」を導入したのは九州で同病院が初めてという。
 手術では、操作台に座った医師が立体映像を見ながら、手元のハンドルでアームを遠隔操作する。内視鏡手術は、開腹するよりも出血が少なく、患者の負担が小さい。アームは人間の手よりも細かい作業ができ、正確な手術が可能になるという。
 最新型には操作台が二つあり、2人の医師が協力して手術したり、熟練の医師が学生や経験の少ない医師と一緒に手術をしながら指導したりすることもできる。
 ダビンチの定価は3億8000万円。同病院はリースで導入した。将来的には胃がんや食道がんなどの手術にも活用する方針。
 谷原秀信・同病院長(52)は「ダビンチの導入で高度な医療を提供できる。次世代の医療人を育てるという使命も果たしていきたい」と話していた。

生体腎提供の男性、手術34日後に死亡 indexへ

 埼玉医科大国際医療センター(埼玉県日高市)は18日、今年1月に行われた生体腎移植で腎臓を提供した60歳代の男性が手術34日後に、重い肺炎を引き起こし、死亡したと発表した。
 同センターは「医療過誤はなかった」として公表していなかったが、匿名の情報提供を受けた日本移植学会からの問い合わせを受けて同学会に経過を報告した。
 生体腎移植はこれまで約2万件実施されているが、提供者の死亡が確認されたのは4月の沖縄県の1例のみ。同センターは「今回は手術後30日以内とされる『手術死亡』に該当しない」としているが、同学会は「手術との関連にかかわらず、報告してほしかった」と指摘している。
 同センターによると、男性は過去に喫煙歴はあったが、おおむね健康で、手術前に呼吸器の症状は見られなかった。胸部写真の結果、全身麻酔にも十分耐えられると判断したという。

チンパンジーのiPS細胞作製…慶大など世界初 indexへ

 慶応大と京都大霊長類研究所の研究チームは16日、チンパンジーのiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製したと発表した。
 大型類人猿での作製成功が公表されたのは世界初で、人類の進化の謎を解明する研究につながると期待される。
 岡野栄之(ひでゆき)・慶大教授らのチームは、国内の動物園で死んだチンパンジーの細胞を使い、人とほぼ同じ方法でiPS細胞を作製。安定して増殖し、神経細胞に分化することも確認した。
 人とチンパンジーのDNA配列は98・8%同じで、どの配列の違いが人との差を決めたのかは、十分に解明されていない。iPS細胞を使えば、世界的に希少なチンパンジーを傷つけずに遺伝子の働きを調べる研究が可能になるほか、人工繁殖にも応用できるという。

エコー画像 5分で立体化…大阪・循環器病センター indexへ

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は16日、超音波検査(エコー)の画像をもとに、心臓や血管の構造を立体的な画像で再現できるシステムを開発したと発表した。
 生まれつき心臓に異常のある患者や家族に病態をわかりやすく説明することに利用できるほか、医療関係者間で正確なイメージを共有することにも役立つとしている。
 先天性の心臓病患者の心臓は、血管の位置がずれているなど複雑な構造をしていることが多く、患者や家族に理解してもらえるように図示するのは難しかった。
 システムは、心臓や血管の横断面をとらえた4~5枚のエコー画像をもとに、血管の位置や太さなどのデータをコンピューターに入力すると、心室や心房、大動脈などが色分けされた立体画像が作成できる。入力は5分ほどで済むという。開発担当の原口亮・情報基盤開発室長は「多くの症例を画像化して蓄積し、データベースとしても活用したい」と話している。

風疹患者 昨年の4倍76人…茨城 indexへ

 風疹の感染拡大が茨城県内で続き、今年の患者数が17日時点で昨年1年間の4倍にあたる76人に達したことが分かった。
 2月以降、感染者が急激に増えたことを受け、県内では、ワクチン接種の費用を助成する自治体が増えているが、県は「他県に比べて本県はワクチンの接種率が高く、患者も少ない」と助成に消極的だ。
 県によると、医療機関から報告があった風疹患者は昨年1年間で19人だったが、今年は3月末時点で2倍以上の43人となり、その後も増え続けている。
 感染拡大を受け、4月には県内で初めて、守谷市が市単独で風疹予防接種費用の助成を開始。県健康危機管理対策室によると、5月に入って、龍ヶ崎、神栖、取手、利根の4市町も同様の助成を始めたという。
 助成対象は、その自治体の住民で、かつ妊娠を予定している女性か妊婦の夫。妊娠している女性はワクチンを打てない。ワクチン接種費用の半額を上限5000円で助成する自治体が多い。龍ヶ崎市は生活保護世帯には全額を助成する。また、既に接種した人でも、4月1日以降など、ある程度の時期にさかのぼって助成を受けることができる。16日現在、5市町で計約240人が制度を利用した。
 このほか、水戸、常総、茨城、美浦の4市町村も6月1日から助成を始める。常陸太田、常陸大宮、下妻、古河市なども、6月頃からの開始を予定している。
 東京、千葉、神奈川、大阪の4都府県は、市町村の助成に補助金を支出している。助成する自治体を増やし、感染の拡大を抑えるのが狙いで、愛知県も同様の補助を始める方針だ。
 ただ、橋本知事は補助に消極的で、10日の記者会見で「8日現在の患者数は、東京の1800人、神奈川の740人、千葉の370人に対し、本県は64人。他の病気とのバランスを考えた場合、特に風疹だけ補助することは考えていない」と述べており、助成する自治体からは「東京都や千葉県のように補助してほしい」と不満の声も漏れている。

胃がんリスク検診20歳も無料 兵庫・篠山市40歳に加え indexへ

 兵庫県篠山市は、胃がん発症の可能性を判定する「胃がんリスク検診」無料化の対象を、従来の40歳に加えて今年度から20歳の市民にも拡大する。
 若い世代から予防に取り組むことで胃がんの発症を抑えるのが狙い。市によると、県内では三木市や明石市など5市町が検診費用の補助などを実施しているが、無料化は篠山市のみという。
 検診は採血し、胃がん発症につながるとされるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染の有無と胃の粘膜萎縮の程度を測定。胃がんになりやすい状態かどうかをA~Dの4種類に分けて判定し、危険度が高いB~D群では内視鏡による精密検査を勧める。さらに医師が必要と判断した場合、除菌の治療を行う。
 篠山市では昨年度、満40歳を迎えた市民を対象に検診の無料化を実施。対象となった492人のうち64人が無料受診した。この結果を踏まえ、今年度からは満20歳となった市民にも対象を広げた。年齢の基準日は4月1日時点で、今年度は20歳の442人と、40歳の558人の計1000人が対象となる。
 検診は毎月1回、同市網掛の丹南健康福祉センターで。対象者には今月、無料クーポン券を郵送しており、第1回は今月24日。20歳と40歳以外の住民も自己負担額2千円で受診できる。
 ピロリ菌は、乳幼児期に飲み水などから胃に感染し、国内の感染者は3500万人と推計される。胃がん患者の約9割はピロリ菌が原因との研究者の指摘もある。国も除菌への保険適用を2月から、胃、十二指腸潰瘍などに加え、慢性胃炎にも拡大するなど対策に乗り出している。
 市健康課は「20歳と40歳という節目に検査することで、早期の治療につながる。医療費の抑制も期待できる」としている。問い合わせは同課(079・594・1117)。

がん細胞だけ狙い撃ち、ウイルスで前立腺治療 indexへ

 東京大学病院は、前立腺がんの患者を対象に、がん細胞だけに感染するように人工的に遺伝子を組み換えたウイルスを使ってがんを治療する「ウイルス療法」の臨床研究を始めたと発表した。
 このウイルスは、同大の藤堂具紀教授らが開発したもので、口の周囲の疱疹(ほうしん)の原因になるごくありふれたウイルスの遺伝子を組み換え、正常な細胞には無害で、がん細胞だけに感染するようにした。がん細胞で増殖したウイルスが周囲のがん細胞に感染して、次々とがん細胞を破壊すると期待される。
 臨床研究の対象は、手術は受けずに、ホルモン療法で前立腺がんの悪化を抑えてきたが、悪化して有効な治療法がなくなった患者9人。前立腺に注射するウイルスの量を変えて、まずは安全性を確かめる。

放射性医薬品過剰投与 調査委員会が初会合…甲府 indexへ

 市立甲府病院(甲府市増坪町)で放射性医薬品が子供に過剰投与されていた問題で、病院を運営する甲府市が外部の有識者でつくる調査委員会を設置し、16日、同病院で初会合が開かれた。調査委は病院の管理体制や再発防止策を検討し、今年度中に報告書をまとめる方針だ。
 この問題は1999年から2011年5月まで、腎臓の疾患が疑われる子供などに放射性物質入りの医薬品を注射する「核医学検査」の際、日本核医学会の基準値を超える量の医薬品が投与されていたもの。同期間には145人が検査を受けた。検査を担当していたとされる技師らが医師法違反(無資格医業)で書類送検されたが、昨年12月、不起訴に。市は今年1月、押収資料が返却されたことから、調査委の設置を決めた。
 調査委は、同学会の関係者や医療の安全管理に詳しい大学教授ら計5人で構成。この日非公開で行われた会合では、病院側が委員に対して問題の概要や発覚の経緯などについて説明。今後、過剰投与が起きた理由や被害者に起こりうる健康被害などについて検討していくことを確認した。
 会合後、記者会見した委員長の長尾能雅・名古屋大学医学部附属病院副院長は「(過剰投与は)病院全体の問題。管理監督する病院の役割や、本来あるべき検査のあり方に何が足りなかったのかを明確にしたい」と話した。
 再三、第三者による調査委設置を求めてきた被害者の父親の1人は「これまでの内部調査では出てこなかった真相が明らかになれば」と話した。

糖尿病患者の血糖状態、治療目標値を簡素化 indexへ

 日本糖尿病学会は16日、血糖状態を表すヘモグロビンA1cについて、3段階の新たな治療目標値を発表した。
 6月から運用する。
 ヘモグロビンA1cは、過去1~2か月の平均的な血糖状態を示す指標で、糖尿病の診断・治療に使われる。これまでの基準は、優・良・可(不十分・不良)・不可と5段階に分かれ、複雑でわかりにくかったことから、簡素化を図った。
 今回の改定では、「糖尿病合併症を抑えるために推奨される治療目標」として、7・0%未満を基本目標値とした。食事療法や運動療法だけで達成可能か、薬物治療中でも低血糖の心配がない場合は、「副作用なく達成可能な場合の理想的な治療目標」として6・0%未満と定めた。一方、「低血糖などの副作用が心配され、高齢などで治療を強化するのが難しい場合」には、8・0%未満とした。

子宮頸がんワクチン、副反応情報を収集へ indexへ

 子宮頸がんワクチンの接種後に体の痛みや歩行障害などの重い副反応が表れた女子生徒の家族らが接種の中止を求めている問題で、厚生労働省の有識者検討会は16日、「現時点で中止を判断する科学的論拠は乏しい」との見解をまとめた。
 一方、さらに因果関係を調べる必要があるとして、医療機関などからの未報告事例も含め、情報収集に乗り出すことにした。
 厚労省によると、2009年12月の発売開始から今年3月までに、国内で864万回以上の接種があり、医療機関や製薬企業からの副反応報告は1968件。グラクソ・スミスクライン社製とMSD社製の2剤あり、副反応発生割合は、接種100万回当たり245件と156件だった。
 この日、被害者連絡会がまとめた24件の被害例も報告されたが、うち17件は医療機関などからの報告はなかった。検討会は「情報が乏しく因果関係が判断できない。さらに調査が必要」とした。被害者連絡会代表の松藤美香さんは「接種を続けることは、被害者を増やすことにつながり、納得できない」と話した。

新型コロナウイルス、サウジで医療従事者が感染 indexへ

 世界保健機関(WHO)は15日、新型コロナウイルスに関して、サウジアラビアで医療従事者2人の感染が新たに確認されたと発表した。
 共に40歳代の男女で、患者と接触した後に発症した。医療従事者が感染者からウイルスをうつされた初の事例という。
 感染者が確認された国はサウジ、ヨルダン、カタール、英国、フランス、ドイツの計6か国。同日までに感染者は、サウジを中心に40人に達し、このうち死者は20人になった。
 これまでにサウジに渡航歴のある患者とその家族内や、感染者と同じ病室内にいた患者での感染例が確認されている。

新型出生前診断で「陽性」…実は陰性のケースも indexへ

 妊婦の採血で胎児に染色体の病気があるかを高い精度で調べる新型出生前診断で、実際に異常はなかったのに陽性と判定されたケースが出たことがわかった。
 異常の有無を確定できる羊水検査では陰性だったことが15日、妊婦に伝えられた。新型出生前診断が4月に臨床研究として始まってから初のケース。実施施設の医師は「高精度でも確実ではない。慎重な対応が必要なことが裏付けられた」としている。
 検査を受けたのは、関東地方に住む40歳代の妊婦。4月上旬、昭和大病院(東京都)で受けた。その結果、検査が対象とする三つの病気の一つで、18番染色体が3本あり、心臓などに重い障害の出る18トリソミーについて、「陽性」と判定された。

人クローンES細胞作製…日本人研究者ら世界初 indexへ

 同じ遺伝情報を持つ細胞を作る「クローン技術」を使って、様々な細胞に変化する能力を持つ、人のES細胞(胚性幹細胞)を世界で初めて作製したと、米オレゴン健康科学大の立花真仁(まさひと)研究員らが15日、米科学誌セルに発表した。
 患者と同じ遺伝情報を持つ心筋や神経細胞などを作り出せれば、山中伸弥・京都大教授が作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)と同様に、再生医療に応用することが可能になる。
 研究チームは、健康な女性が提供した卵子から、遺伝情報の入った「核」を取り除き、別人の皮膚細胞の核を移植。150個ほどまで細胞分裂させた「胚盤胞(はいばんほう)」という状態に育て、ES細胞を作製した。マウスやサルでは成功していたが、人では核移植した卵子を胚盤胞まで育てるのは難しかった。既存の手法を改良し克服した。
 クローン技術を応用したES細胞は、2004年に韓国ソウル大の黄禹錫(ファンウソク)教授(当時)が作製に成功したと論文を発表したが、のちに捏造(ねつぞう)と判明した。

 今回作製した胚盤胞を子宮に移植すれば、クローン人間が生まれる可能性がある。しかし動物実験の場合、胚盤胞まで育てても流産率は高く、胎児の奇形も高頻度で見られる。国立成育医療研究センター幹細胞・生殖学研究室の阿久津英憲室長は「クローン人間作りは胎児だけでなく、妊婦も危険にさらすことになる。倫理的に許されないだけでなく、技術や安全の面でもクローン人間は現実的ではない」と指摘する。

がん発症リスク、糖尿病で高まる…学会の合同委 indexへ

 日本糖尿病学会と日本癌(がん)学会は14日、糖尿病が、がんの発症リスクを高める要因になると発表した。
 両学会は、野菜不足や過剰な飲酒、運動不足、喫煙は、糖尿病とがんに共通する危険因子だとし、適切な生活習慣を身につけるよう、呼び掛けている。
 両学会は合同委員会を設立し、2011年から糖尿病とがん発症との関係について検討を続けてきた。
 全国各地で実施された男性約15万人、女性約18万人分の健康状態の追跡調査のデータを解析。男性約2万人、女性約1万3000人が、がんになったが、糖尿病の人は、そうでない人に比べ、がんになるリスクが男女とも1・2倍高かった。
 中でも、大腸がんは1・4倍、肝臓がんと膵臓(すいぞう)がんは、それぞれ約2倍、高かった。子宮がんや膀胱(ぼうこう)がんも、糖尿病になるとがんのリスクが高まる傾向がみられた。一方、乳がん、前立腺がんは糖尿病との関連はみられなかった。

手術中動脈傷つけ死亡、長崎市民病院で70代男性 indexへ

 長崎市立市民病院は14日、肺がんの手術中に右肺上部の動脈を傷つけ、市内の70歳代男性が亡くなる医療事故が起きたと発表した。
 今後、外部の専門家らを交えた病院内の事故調査委員会で術中を撮影した映像を分析し、医療ミスがなかったかどうか原因を調べる方針。
 発表によると、手術は13日に行われ、呼吸器外科の男性医師(53)と助手の医師(45)が執刀。肺に小さな穴を開け、管を通す手術で、切断した肺動脈を縫合する際、ハサミ状の医療器具が大動脈に接触し出血。輸血や心臓マッサージなどの処置を行ったが、約3時間後に死亡したという。
 記者会見した兼松隆之院長は「亡くなった患者や遺族に心から申し訳なく思う。原因を明らかにし再発防止に努めたい」と陳謝した。

卵子仲介、3人に提供へ…NPO法人国 indexへ

 性染色体の異常などにより自分の卵子で妊娠できない女性を対象に、第三者の卵子提供を仲介するNPO法人「卵子提供登録支援団体(OD―NET)」(神戸市)が13日、東京都内で記者会見し、患者3人に卵子を提供することが決まったと発表した。
 国内では一部医療機関が、姉妹や知人から卵子の提供を受けて治療を実施しているが、仲介団体による第三者の卵子のあっせんは初めてのケースだ。
 同NPO法人は、医師や患者の支援者などで構成。1月以降、すでに子どものいる35歳未満を対象に、無償での卵子提供を募ったところ、100人以上から問い合わせがあり、42人が申し込んだ。このうち血液検査などを経て9人を第1弾の提供者として登録した。さらにターナー症候群などの病気で卵子がない待機患者13人のうち、年齢や不妊治療歴などを基準に3人を選んだ。
 提供者はいずれも、生まれた子どもが15歳になった時点で、希望すれば住所や氏名などが子どもに開示される条件を承諾した。
 治療は、不妊治療クリニック団体「JISART(日本生殖補助医療標準化機関)」加盟の国内3施設で行われる。各施設の倫理委員会での審議を経て、早ければ年内にも提供者の卵子の採取や体外受精に入る見通しだ。

企業出身者が創薬後押し…今月設立の支援組織 indexへ

 政府が今月に設立する、薬の実用化を進める「創薬支援ネットワーク」の概要が分かった。
 新薬開発に精通した民間出身の約30人を厚生労働省系の研究所に配置し、大学などの基礎的な研究成果を臨床応用につなげる戦略を策定する。糖尿病、精神疾患といった8分野に注力するが、がんでは今後4か年で10品の治験開始を目指す。創薬分野の「司令塔」として、成長戦略の柱である医療産業の育成を図る。
 ネットワークは、厚労省所管の医薬基盤研究所(大阪府)に本部となる「創薬支援戦略室」を置き、製薬企業出身で創薬や特許に詳しい50~60歳代のベテランを中心にスタッフをそろえる。首都圏にも支部を置き2拠点体制をとる。薬のもとになる化学物質を多く持つ経済産業省系の産業技術総合研究所や、薬の構造を調べられる文部科学省系の理化学研究所も参画する。

新型コロナウイルス、監視強化呼びかけ…WHO indexへ

 サウジアラビアなどで感染が広がる新型コロナウイルスについて、世界保健機関(WHO)は12日、一層の感染拡大が懸念されるとして、各国に監視強化を呼びかけた。
 サウジアラビアを訪問しているケイジ・フクダ事務局長補が「濃厚な接触がある場合、人から人へ感染するとの見方が強い」と指摘し、各国が警戒体制を緊急に強化する必要があると述べた。
 SARS(重症急性呼吸器症候群)の原因ウイルスとよく似た新型コロナウイルスは同日までにサウジアラビアのほか英国、フランスなどで計33人の感染例が確認され、このうち18人が肺炎などで死亡した。

18歳未満の男性、脳死で臓器提供…国内4例目 indexへ

 日本臓器移植ネットワークは11日、広島県の国立病院機構呉医療センターで10日夜、脳血管障害で入院中の15歳以上18歳未満の男性が、改正臓器移植法に基づき脳死と判定されたと発表した。18歳未満からの提供は国内で4例目。
 発表によると、提供は家族が承諾した。東大病院で10代の女性に心臓が移植されるほか、肝臓、膵臓
すいぞう
、腎臓が広島大病院などで移植される予定。

重粒子線がん治療センター、佐賀・鳥栖に29日開業 indexへ

 九州・山口では初めての重粒子線がん治療施設となる「九州国際重粒子線がん治療センター」(佐賀県鳥栖市)が10日、報道陣に公開された。29日に開業する。
 2011年2月に着工されたセンターの施設は、鉄筋コンクリート3階建てで、延べ床面積約7400平方メートル。炭素イオンを光速の70%まで加速させる直径20メートルの装置「シンクロトロン」や治療室を備え、体の深い部分にあるがん細胞へ超高速の重粒子線を照射できる。治療は8月に前立腺がん患者から始め、順次、肺がんや肝臓がん患者などに対象を広げていく。
 運営財団によると、総事業費は150億円。県の補助金や民間の寄付などで賄う計画だったが、調達が難航。3月末現在で104億円にとどまっており、金融機関からの追加融資を予定している。

新型出生前診断、1か月で441人…陽性は9人 indexへ

 妊婦の採血だけで胎児に3種類の染色体の病気があるかどうかが分かる新型出生前診断を、4月の導入開始から1か月間で441人の妊婦が受けていたことが分かった。
 札幌市で開かれている日本産科婦人科学会で10日、報告された。想定を上回る需要に、希望する妊婦が近くで検査を受けられない状況も起きている。
 実施施設の医師らで作る共同研究組織「NIPTコンソーシアム」が全国15の実施医療機関の実績調査をしたところ、研究として始まった4月から1か月間で検査を受けたのは、30歳から47歳の441人。検査を受けた理由は、「高齢妊娠」が91%と最も多かった。
 結果が判明した257人中、染色体の病気が疑われる「陽性」と判定されたのは9人で、「ダウン症」が6人、「18トリソミー」が3人。「13トリソミー」や判定保留はなかった。

医薬品と言えない…薬事法違反の元社長らに無罪 indexへ

 がんへの効能をうたった書籍を販売し、未承認の医薬品の宣伝をしたとして、薬事法違反(承認前の医薬品等の広告)に問われた出版社「現代書林」元社長武谷紘之(74)、同社社員川原田修(60)両被告と法人としての同社に対し、横浜地裁は10日、無罪判決を言い渡した。
 毛利晴光裁判長は「医薬品に該当するかどうか疑問があるうえ、書籍は出版から7年以上が経過しており、広告を行ったとは認められない」と指摘した。
 起訴状では、両被告と同社は2009年8月~11年9月、東京都内の書店などで、「直腸ガン、肝臓ガンに打ち克(か)つ」との効能や販売会社の連絡先などを記載した書籍を陳列、販売し、未承認医薬品「キトサンコーワ」を広告したとしていた。
 弁護側は「キトサンコーワは医薬品ではなく、薬事法違反には問えない」などと無罪を主張。判決は、検察側が出版から7年以上経過して行われた書籍の販売を同法違反とみなしたことに疑問を示した。
 判決を受け、横浜地検の中村周司次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とのコメントを出した。現代書林は「100%無罪を確信していたので当然の結果だ」とコメント。武谷被告も「長い時間が経過したが、判決を聞いてほっとしている」と話した。
 検察側は、武谷被告に罰金50万円、川原田被告に同30万円、現代書林に同50万円を求刑していた。この事件では、販売会社の社長(67)も同法違反に問われ、公判中。

「1類」医薬品、ネット販売に条件…発売4年超 indexへ

 厚生労働省は一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売に関し、副作用のリスクが高い第1類は販売開始後4年を経過したものを、リスクが中程度の第2類は全てを、条件付きで解禁する方針を固めた。
 1、2類のネット販売の一律禁止を「違法で無効」とした1月の最高裁の判決を受けて、厚労省は年内に解禁の是非の結論を出すとしていたが、首相官邸の意向により、今月中に結論を示すこととした。6月の成長戦略にも盛り込む方向だ。
 厚労省案では、1類のうち、解熱鎮痛薬「ロキソニンS」や鼻炎用薬「アレグラFX」など、原則として販売開始から4年以内のものは、薬剤師による薬局での対面販売を維持。胃腸薬「ガスター10」や発毛剤「リアップ」など販売4年超の1類と、2類全部は、薬剤師らが副作用の説明などを行うため、テレビ電話を使った「疑似対面販売」を義務づけた上で、原則解禁とする。3類は判決以前から、ネット販売が認められている。

飛び込み出産、最多307件…大阪府で昨年 indexへ

 大阪府は9日、府内で昨年、妊婦健診をほとんど受けずに出産する「未受診妊婦」が307人に上り、前年比1・2倍に増加したと発表した。2009年に調査を始めて以来、最多。
 貧困や望まない妊娠などが背景にあることが多いため、児童虐待につながる恐れが指摘されており、府は受診を呼びかけるとともに今年度、未受診妊婦の支援を強化する。
 未受診妊婦は「飛び込み出産」などとして問題になったため、大阪産婦人科医会が毎年、調査を実施。分娩(ぶんべん)を扱う府内の約150施設を対象に、受診回数が3回以下か、最後の受診から3か月以上で出産したケースを調べた。
 09、10年はともに150人前後だったが11年に254人に急増した。今回は300人を突破、府内の年間分娩数は約7万5000件で、妊婦250人に1人の割合に当たる。年齢は13~46歳と幅広く、未成年は19%。ほとんどが無職か非正規雇用で、住所不明も161人と半数を超え、生活環境の不安定さが浮き彫りになった。
 未受診の理由には、経済的問題や望まない妊娠、未婚などが挙げられ、厚生労働省の専門委員会が指摘する、児童虐待の背景と重なる部分が多いことも確認。調査を担当した光田信明・府立母子保健総合医療センター産科主任部長は「増加理由はわからないが、社会問題として考えなければいけない。育児ができる環境にないために虐待につながるリスクは高く、妊娠期からの支援が重要」と話す。
 こうした問題を受け、府は今年度、虐待予防として対策を強化。未受診妊婦の相談に乗れるよう、助産師向けの研修を行ったり、同医会と連携し、公的支援サービスなどを記したガイドブックを作成したりする。府健康づくり課は「妊婦を孤立させない仕組みを作りたい」としている。

福島・浪江町の診療所で恩返し 25歳看護師「故郷で力生かす」 indexへ

 4月に避難指示区域が再編された浪江町は9日、町役場内に「応急仮設診療所」を開設した。
 東京電力福島第一原発20キロ圏内の旧警戒区域で、医療機関が新設されるのは初めて。診察も始まり、再編を機に故郷へ戻った看護師の志賀隼(はやと)さん(25)も新たな一歩を踏み出した。
 志賀さんは同町大堀地区の出身。原発事故の影響で休校している公立双葉准看護学院と、東京の専門学校を卒業した。3月までの3年間、仙台市内の病院で働いていたが、再編に合わせて「故郷に恩返しがしたい」と決意。二本松市のアパートに1人で暮らしながら、同市の仮設住宅内にある町国民健康保険仮設津島診療所に勤めている。家族はいわき市などに避難中だ。
 転職には葛藤もあった。「高度な地域医療を学びたい」と就職した仙台の病院では、男性看護師は少なく重宝がられ、慕ってくれる後輩もいた。辞職の意向を伝えると、看護部長から「考え直してほしい」と説得された。思い悩んだが、「浪江町の自然や人が大好き。故郷が大変な時こそ、自分の力を生かすべきだ」と振り切った。上司や同僚も温かく送り出してくれた。
 看護師を志したのは高校3年生の時。祖母がパーキンソン病にかかったことがきっかけだ。手が震えたり、動作が遅くなったりした祖母を目の当たりにし、「自分は何もできない」と悔しい思いをした。
 それだけに、今も高齢者への気配りを忘れない。町役場の仮設診療所に通う日以外は、津島診療所で働く。仮設住宅での避難生活が長引いている高齢者について、「生活習慣が乱れ、体調を崩す人も多い。薬だけに頼らず、生活自体を見直すよう働きかけたい」と抱負を語る。

タミフル効かない症例も…H7N9型鳥インフル indexへ

 中国での鳥インフルエンザ(H7N9型)の感染者で、発症直後から抗インフルエンザウイルス薬タミフルで治療したにもかかわらず、効かない症例があることがわかった。
 中国の上海公衆衛生臨床センターなどのチームが8日、国際的な感染症専門誌に報告した。
 治療を受けたのは、4月2日に発症した上海市の56歳男性。先にH7N9型に感染した妻(4月3日死亡)の看病をしていたため、発症当日からタミフルの投与を開始した。しかし、急性肺障害を起こして、人工呼吸器を装着した。同月25日時点で患者は依然重体という。
 インフルエンザに詳しいけいゆう病院の菅谷憲夫医師は「この1例だけで、H7N9型にタミフルが無効だとはいえない。ただ、重症者も多く、死亡率も高いことから、早期治療はもちろん、タミフルの倍量投与や治療期間の延長も考慮する必要があるだろう」と話している。

復興へ一歩…旧警戒区域に初の医療機関新設 indexへ

 福島県浪江町役場で9日、「浪江町応急仮設診療所」の開所式が行われ、診察が始まった。
 東京電力福島第一原発20キロ圏内の旧警戒区域内で、医療機関が新設されるのは初めて。
 浪江町は4月1日に避難指示区域が再編されたが、原発事故前にあった23の医療機関は全て休業しており、一時立ち入りした住民から不安が寄せられていた。
 開所式では、原発事故前から計16年間、同町で診療に携わり、仮設診療所の実質的責任者となる関根俊二医師(71)が「避難先から帰町する町民のために役立つよう努めたい」とあいさつ。馬場有町長は「医療機関を整備しないと町民も安心して戻って来られない。仮設診療所は復興への大きな一歩」と話した。

誤診で人工肛門 大阪市などが和解へ indexへ

 大阪市は8日、検査で誤って肛門がんと判断され、市立総合医療センターで不要な手術を受けて人工肛門を装着された同市在住の女性(68)が市と検査会社、民間病院に計3720万円の損害賠償を求めた訴訟で、市と検査会社が計3000万円を支払って和解する見通しとなった、と発表した。6月下旬に女性と被告3者が大阪地裁で和解する予定。
 支払金の負担は市が900万円、検査会社「大阪細胞病理研究所」(大阪市東淀川区)が2100万円。
 市によると、女性は2007年6月、民間病院を受診。病院から依頼を受けた研究所が検体を調べて肛門がんと判断、病院が手術が必要だと記した紹介状をセンターに送った。センターの医師も触診で紹介状の内容と相違点がなかったとして、がんと診断。同7月に手術したが、術後の検査でがんでないことが判明した。
 大阪地裁は、誤診のきっかけとして研究所の誤った検査結果を重く見たうえで、センターについて「手術前の検査で異常が認められず、がんの診断を見直す機会が十分にあった」と判断したという。市は「結果を重く受け止め、深くおわびする」としている。

陣痛促進剤の過剰投与73%…脳性まひ児調査で indexへ

 出産時の事故で脳性まひになった子どもに補償金を支給する「産科医療補償制度」で、補償対象事例を専門家が分析した再発防止報告書が7日公表され、陣痛促進剤が使われた事例のうち、日本産科婦人科学会の指針を逸脱して過剰投与されたケースが73%に上ることがわかった。
 制度を運営する日本医療機能評価機構は、お産を扱う全国の医療機関に対し、適正使用を求める提言を出した。
 報告書によると、分析対象は、制度が始まった2009~12年の補償対象事例188件。うち陣痛促進剤が使われた56件では、1回の薬の投与量が多すぎたり、投与間隔が短すぎたりするなど、学会の指針が順守されていない事例が41件(73・2%)あった。指針の逸脱が脳性まひの主な原因と判定できない事例が多かったが、主因と考えられた事例が1件、影響があったとみられる事例も6件あった。

新型出生前診断、6施設追加認定…日本医学会 indexへ

 妊婦の採血で胎児の3種類の染色体の病気が高精度でわかる新型出生前診断について、日本医学会は7日、新たに認定施設を6施設、公表した。
 実施病院は計21施設になった。
 新たに認定された医療機関は以下の通り。▽札幌医大▽埼玉医大▽東京女子医大▽神戸大▽兵庫医大▽福岡大

体内に針、ドレーン置き忘れ…神戸 indexへ

 神戸市立医療センター中央市民病院(中央区)は30日、60歳代の男性患者2人の体内にステンレス製の針(長さ約2センチ、太さ約1ミリ)と塩化ビニール樹脂製のドレーン(長さ約20センチ、太さ約4ミリ)を置き忘れるミスがあったと発表した。いずれの患者にも後遺症などの健康被害はないという。
 同病院によると、患者は2008年7月15日、40歳代の男性医師から前立腺を摘出する腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた。摘出後に膀胱(ぼうこう)と尿道をつなぎ合わせる際、弓状の針を体内に残してしまったという。立ち会った女性看護師らも気付かなかった。
 昨年9月、この患者が「血尿が出る」と同病院を受診し、検査で発覚。血尿は別の疾患によるもので、針の影響ではなかった。
 また、昨年12月20日に行った腰椎椎体間固定手術では、血液などを体外に排出するドレーンを体内に忘れるミスがあった。執刀した医師が筋膜を縫合する際、誤ってドレーンを巻き込んで縫ったという。
 同病院は「今後は複数の看護師で確認を徹底するなど、再発防止に全力を尽くす」としている。

横浜市大病院で女性死亡、高濃度酢酸液を誤注入 indexへ

 横浜市立大学付属病院(平原史樹病院長)は30日、入院していた同市内の50歳代の女性が、医療ミスで死亡したと発表した。
 栄養チューブの詰まりをとる際、誤って酢酸液を通常の約25倍の濃度で注入したことが原因で、同病院は金沢署に届け出た。
 病院によると、女性は昨年8月、心臓や腎臓の異常で入院、集中治療室で鼻から小腸までチューブを通して栄養を摂取していた。4月7日、40歳代の看護師が、適切な濃度は約1%なのに約25%の酢酸液を作り、注入したという。女性は注入直後に腹痛を訴え、同24日、小腸炎を発症して死亡した。
 看護師は酢酸の瓶に手書きされていた割合通りに希釈したといい、病院で詳しく調べている。25%濃度だと、健康な人でも小腸に炎症が起きるという。